本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
〔インプリントモールド用基板〕
図1は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図2は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板の薄板部の概略構成を示す斜視図であり、図3は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板の薄板部の対向面の概略構成を示す平面図であり、図4は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板の他の構成例を概略的に示す切断端面図であり、図5は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板の支持部の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係るインプリントモールド用基材1は、インプリントモールドの微細凹凸パターンが形成され得る主面2Aを有する薄板部2と、薄板部2の主面2Aに対向する対向面2Bを支持する中空筒状の支持部3と、薄板部2及び支持部3の間に介在してそれらを接合する、樹脂材料を含む接合部4とを備える。なお、本実施形態においては、接合部4として、溶剤及び上記樹脂材料を含む粘着剤組成物を硬化させてなるものを例に挙げて説明するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、接合部4は、溶剤を含まない粘着剤組成物を硬化させてなるものであってもよい。
薄板部2は、中空筒状の支持部3の開口一端31(図5参照)を閉塞するように、接合部4を介して支持部3と接合されている。このように、本実施形態に係るインプリントモールド用基材1は、支持部3の中空部30(図5参照)と、開口一端31を閉塞する薄板部2の対向面2Bとにより構成される凹部6を有する。そのため、薄板部2の対向面2Bは、インプリントモールド用基材1の凹部6の底面に要求される程度に平坦面として構成される。
薄板部2としては、例えば、石英ガラス基板、ソーダガラス基板、蛍石基板、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板等のガラス基板;ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板、その他ポリオレフィン基板等の樹脂基板等からなる単層基板や、上記基板のうちから任意に選択された2以上を積層してなる積層基板等の透明基板等を用いることができる。
なお、本実施形態において「透明」とは、インプリント樹脂としての光硬化性樹脂を硬化させることが可能な波長の光、例えば波長200〜400nmの光線を対象物(本実施形態においては薄板部2)の片側から照射した際、照射された側とは反対側へ光が到達することを意味する。透明であるのは光硬化性樹脂を硬化させることが目的であるのだから、好適な基準を透過率で示すならば60%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは96%以上である。
本実施形態において、薄板部2の形状(平面視形状)は略矩形状であるが、このような形状に限定されるものではなく、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じた任意の形状、例えば、略円形状等であってもよい。また、薄板部2の大きさ(平面視の大きさ)も、特に限定されるものではなく、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じた大きさに設定され得る。
さらに、薄板部2の厚さT2は、薄板部2の材質、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じて適宜設定され得るが、当該薄板部2が石英ガラスにより構成される場合、0.3〜1.5mm程度に設定され得る。本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10(図8参照)は、支持部3の中空部30の開口一端31が薄板部2により閉塞されることで形成される凹部6を有することで、インプリント処理時、特にインプリントモールド10の剥離時において、薄板部2のうちの微細凹凸パターンが形成されている領域を少なくとも湾曲させることができ、インプリントモールド10の剥離を容易にするという効果を奏する。そのため、薄板部2の厚さT2が薄すぎたり、厚すぎたりすると、インプリントモールド10の剥離時に意図したとおりに湾曲させるのが困難となるおそれがある。また、薄板部2の厚さT2が薄すぎると、インプリントモールド10の強度が低下するおそれもある。
本実施形態に係るインプリントモールド用基板1において、薄板部2の主面2Aに対向する対向面2Bのうち、接合部4に当接する領域である外縁部近傍の表面(接合部4に当接する面)2Cには、ガス透過性を有する構造(ガス透過性構造)21が設けられている。本実施形態に係るインプリントモールド用基板1の作製時(薄板部2と支持部3との接合時)に、溶剤を含む粘着剤組成物から当該溶剤を揮発させて除去する必要がある。当該溶剤を十分に揮発させないと、接合部4内に溶剤が残存してしまい、気泡発生の原因となるからである。また、当該溶剤が残存することで、インプリントモールド用基板1やそれから作製されるインプリントモールド10の耐熱性、耐薬品性が劣るおそれがある。このとき、本実施形態のように、薄板部2の外縁部近傍の表面2Cにガス透過性構造22が設けられていることで、粘着剤組成物から揮発した溶剤が当該ガス透過性構造22を通って接合部4の外に排出される。これにより、当該粘着剤組成物が硬化してなる接合部4内に溶剤を残存させることがない。
ガス透過性構造22としては、粘着剤組成物から揮発した溶剤が透過可能な構造である限り特に制限はない。例えば、薄板部2が石英ガラス基板により構成される場合、当該ガス透過性構造22としては、薄板部2の対向面2Bの全面又は外縁部近傍の表面2Cに形成された微細ピラー構造体や微細スリット構造体、当該外縁部近傍の表面2Cに貼り合わされたガラスやSOG等により形成された多孔質膜等が挙げられる。薄板部2と支持部3との接合箇所に位置するガス透過性構造22が光を透過させる必要がないのであれば、例えば、赤外線よりも短波長の光を透過させない多孔質シリコン層を陽極化成法等により上記外縁部近傍の表面2Cに形成し、この多孔質シリコン層をガス透過性構造22として用いてもよいし、PDMS(ポリジメチルシロキサン)のように気体の溶解しやすい樹脂材料等からなる層を上記外縁部近傍の表面2Cに形成し、この層をガス透過性構造22として用いてもよい。
薄板部2のガス透過性構造22におけるガス透過係数は、好適には1×10-16cm3・cm/cm2・s・Pa以上、特に好適には1×10-13cm3・cm/cm2・s・Pa以上である。なお、ガス透過性構造22におけるガス透過係数は、簡単には圧力センサー又はガスクロマトグラフィを用いて求めることができ、その端的な例として「JIS K 6275−1」を参照することができる。当該規格に従うならば、試験片によって高圧側セルと低圧側セルとに分割することが可能な試験セルを準備し、そこへ試験ガスを高圧側セルに大気圧又は加圧状態で導入することで求めることができる。なぜなら低圧側セルとの間に生じる圧力差で、試験ガスが試験片内部へ溶解した後、試験片内部の試験ガス濃度勾配によって拡散し、試験片界面から低圧側セルへ放散するからである。こうして試験片を透過するガス量は、低圧側セルの圧力上昇を測定する圧力センサー(圧力センサー法)、又は試験ガス量の増加を測定するガスクロマトグラフィ(ガスクロマトグラフィ法)によって求めることができる。
本実施形態においては、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cの全面にガス透過性構造22が設けられていてもよいし、当該表面2Cの一部の領域にガス透過性構造22が設けられていてもよい。例えば、図3(A),(B)に示すように、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cのうち、薄板部2の4辺のそれぞれに接するガス透過性構造22や、当該表面2Cの内縁部23を超えてさらに内側に連続するガス透過性構造22が設けられていてもよい。すなわち、ガス透過性構造22の一部が、支持部3の中空部30を介してインプリントモールド用基板1の外表面に露出するように設けられていてもよい。このように、当該表面2Cの一部の領域にガス透過性構造22が設けられている場合、ガス透過性構造22の設けられている領域の一部がインプリントモールド用基板1の外表面に露出し、当該ガス透過性構造22を介してインプリントモールド用基板1の外表面と接合部4との間が連続していることを要する。ガス透過性構造22が粘着剤組成物から揮発した溶剤の流路として機能するため、インプリントモールド用基板1の外表面と接合部4との間がガス透過性構造22を介して連続していないと、当該ガス透過性構造22が溶剤の流路として機能せず、粘着剤組成物から溶剤を十分に除去することができなくなるという問題が生じる。
薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2C内の複数の独立した領域のそれぞれに、ガス透過性構造22が設けられている場合において、隣接する2つの領域の間隔は、粘着剤組成物から揮発した溶剤が当該ガス透過性構造22を介して接合部4の外に十分に排出され得る程度に適宜設定されていればよい。
また、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cの平面視における総面積に対するガス透過性構造22の占める比率は、大きいほうが好ましい。しかし、薄板部2と支持部3との接合に寄与する面(接合部4の面)のすべてからガスが発生する可能性を考慮すると、ガス透過性構造22は、上記外縁部近傍の表面2Cの面内に可能な限り均一に存在するのが好ましい。よって、上記総面積に対するガス透過性構造22の占める比率は、30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。さらに、上記外縁部近傍の表面2Cの面内においてガス透過性構造22が存在する密度の分布が50%未満であるのが好ましく、30%未満であるのが好ましい。粘着剤組成物中の溶剤の含有量や、溶剤の物性等にも依存するものの、上記比率が30%未満又は上記密度分布が50%以上となると、粘着剤組成物から溶剤を十分に揮発させることができない、又はガスを接合部4の外に排出することができないおそれがある。なお、後述するように、支持部3の主面3Aにガス透過性構造32が設けられている場合、上記薄板部2のガス透過性構造22の上記比率が30%未満又は密度分布が50%以上であったとしても、薄板部2の表面2Cの平面視における総面積と支持部3の主面3Aの総面積との合計面積(接合部4との接触総面積)に対し、薄板部2のガス透過性構造22の面積と支持部3のガス透過性構造32の面積との合計面積が30%以上、好ましくは50%以上であればよい。一方で、密度分布は、薄板部2と、後述する支持部3とで相補することにより面内全体を保障することができればよく、接合面(薄板部2の表面2C及び支持部3の主面3A)に対して薄板部2と支持部3とのガス透過性構造22,32の合計面内分布が50%未満、好ましくは30%未満であればよい。
本実施形態において、薄板部2は、図4(A)に示すように、主面2A側に凸構造部21を有する、いわゆるメサ構造を有するものであってもよい。また、図4(B)に示すように、薄板部2の主面2Aには、Cr、Crの窒化物等のクロム系材料;シリコン、シリコンを含む合金、シリコン酸化物、シリコン窒化物等のシリコン系材料等により構成されるハードマスク層5が形成されていてもよい。
図1及び図5に示すように、支持部3は、外形が平面視略方形状の中空角筒状を有しており、平面視において略中心に略円形の中空部30が形成されてなる。支持部3の主面3Aが、支持部3の開口一端31を薄板部2(対向面2B)で閉塞するようにして、接合部4を介して薄板部2の対向面2Bに接合されていることで、有底略円筒状の凹部6が形成される。
支持部3を構成する材料は、特に限定されるものではなく、薄板部2を構成する材料と同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。支持部3が、薄板部2を構成する材料と異なる材料により構成される場合、当該支持部3を構成する材料としては、例えば、シリコン系材料;金属材料;石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス材料;ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、その他ポリオレフィン類等の樹脂材料のほか、低膨張セラミックス等のセラミックス材料等が挙げられる。
平面視における支持部3の外形の大きさは、薄板部2の大きさと略同一であってもよいし、薄板部2よりも大きくてもよい。それらの大きさが略同一である場合には薄板部2側から見たときに段差を有しないため、例えば、薄板部2と支持部3とを接合した後に端面部分の面取り等が必要な場合には容易に実施可能である。一方で、支持部3が薄板部2よりも大きい場合、例えば支持部3と薄板部2とを分離する際、支持部3を保持可能な領域として、大きさの差分が生じた箇所を保持することが可能となる。また接合時の位置ずれも許容される。
また、平面視における中空部30(薄板部2により閉塞される開口一端31)の大きさは、少なくとも、薄板部2の主面2A上に微細凹凸パターンが形成される領域を包含し得る大きさである。平面視において、中空部30が微細凹凸パターンを内包可能な大きさであることで、インプリントモールド用基板1から作製されたインプリントモールドを用いたインプリント処理時、特にインプリントモールドの剥離時に、微細凹凸パターンが形成されている領域を少なくとも湾曲させ、インプリント樹脂からの剥離を容易にするという効果が発揮され得る。
支持部3の厚さT3は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10の凹部6の深さの設計値に応じて適宜設定され得るが、例えば、3〜10mm程度に設定され得る。
本実施形態に係るインプリントモールド用基板1において、支持部3の主面3A(接合部4に当接する面)には、薄板部2と同様に、ガス透過性を有する構造(ガス透過性構造)32が設けられている。これにより、粘着剤組成物から揮発した溶剤が当該ガス透過性構造32を通って接合部4の外に排出される。
ガス透過性構造32としては、粘着剤組成物から揮発した溶剤が透過可能な構造である限り特に制限はない。例えば、支持部3が石英ガラス基板により構成される場合、当該ガス透過性構造32としては、支持部3の主面3Aに形成された微細ピラー構造体や微細スリット構造体、当該主面3Aに貼り合わされたガラスやSOG等により形成された多孔質膜等が挙げられる。また、支持部3がシリコン系材料により構成される場合、当該ガス透過性構造32としては、陽極化成法等により支持部3の主面3A上に形成された多孔質シリコン層のほか、上述した微細ピラー構造体や微細スリット構造体等が挙げられる。上記シリコン系材料と同様に、薄板部2と支持部3との接合箇所に位置するガス透過性構造32が光を透過させる必要がないのであれば、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)のように気体の溶解しやすい樹脂材料等からなる層を上記主面3Aに形成し、この層をガス透過性構造32として用いても良い。
支持部3のガス透過性構造32におけるガス透過係数は、薄板部2のガス透過性構造21と同様であればよく、好適には1×10-16cm3・cm/cm2・s・Pa以上、特に好適には1×10-13cm3・cm/cm2・s・Pa以上である。なお、ガス透過性構造32におけるガス透過係数は、簡単には圧力センサーまたはガスクロマトグラフィを用いて求めることができ、その端的な例として「JIS K 6275−1」を参照することができる。当該規格に従うならば、試験片によって高圧側セルと低圧側セルとに分割することが可能な試験セルを準備し、そこへ試験ガスを高圧側セルに大気圧又は加圧状態で導入することで求めることができる。なぜなら低圧側セルとの間に生じる圧力差で、試験ガスが試験片内部へ溶解した後、試験片内部の試験ガス濃度勾配によって拡散し、試験片界面から低圧側セルへ放散するからである。こうして試験片を透過するガス量は、低圧側セルの圧力上昇を測定する圧力センサー(圧力センサー法)、又は試験ガス量の増加を測定するガスクロマトグラフィ(ガスクロマトグラフィ法)によって求めることができる。
本実施形態においては、支持部3の主面3Aの全面にガス透過性構造32が設けられていてもよいし、当該主面3Aの一部の領域にガス透過性構造32が設けられていてもよい。このように、当該主面3Aの一部の領域にガス透過性構造32が設けられている場合、ガス透過性構造32の設けられている領域の一部がインプリントモールド用基板1の外表面に露出し、当該ガス透過性構造32を介してインプリントモールド用基板1の外表面と接合部4との間が連続していることを要する。ガス透過性構造32が粘着剤組成物から揮発した溶剤の流路として機能するため、インプリントモールド用基板1の外表面と接合部4との間がガス透過性構造32を介して連続していないと、当該ガス透過性構造32が溶剤の流路として機能せず、粘着剤組成物から溶剤を十分に除去することができなくなるという問題が生じる。
支持部3の主面3A内の複数の独立した領域のそれぞれに、ガス透過性構造32が設けられている場合において、隣接する2つの領域の間隔は、粘着剤組成物から揮発した溶剤が当該ガス透過性構造32を介して接合部4の外に十分に排出され得る程度に適宜設定されていればよい。
支持部3の主面3Aの平面視における総面積に対するガス透過性構造32の占める比率は、薄板部2と同様に大きいほうが好ましい。しかし、薄板部2と支持部3との接合に寄与する面(接合部4の面)のすべてからガスが発生する可能性を考慮すると、ガス透過性構造32は、主面3Aの面内に可能な限り均一に存在するのが好ましい。よって、上記総面積に対するガス透過性構造32の占める比率は、30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。さらに、上記主面3Aの面内においてガス透過性構造32が存在する密度の分布が50%未満であるのが好ましく、30%未満であるのが好ましい。粘着剤組成物中の溶剤の含有量や、溶剤の物性等にも依存するものの、上記比率が30%未満又は密度分布が50%以上となると、粘着剤組成物から溶剤を十分に揮発させることができない、又はガスを接合部4の外に排出することができないおそれがある。なお、上述したように、薄板部2の表面2Cにガス透過性構造22が設けられている場合、上記支持部3のガス透過性構造32の上記比率が30%未満あるは密度分布が50%以上であったとしても、薄板部2の表面2Cの平面視における総面積と支持部3の主面3Aの総面積との合計面積(接合部4との接触総面積)に対し、薄板部2のガス透過性構造22の面積と支持部3のガス透過性構造32の面積との合計面積が30%以上、好ましくは50%以上であればよい。一方で、密度分布は、薄板部2と支持部3とで相補することにより面内全体を保障することができればよく、接合面(薄板部2の表面2C及び支持部3の主面3A)に対して薄板部2と支持部3とのガス透過性構造22,32の合計面内分布が50%未満、好ましくは30%未満であればよい。
接合部4は、薄板部2及び支持部3を接着可能な粘着剤組成物であって、溶剤を含む粘着剤組成物を硬化させてなる粘着剤層により構成される。かかる粘着剤組成物としては、シロキサン結合、イミド結合を有する樹脂材料を含むものが最も好ましく、シルセスキオキサン骨格を有するものや、芳香族ポリイミド類等の樹脂材料を含むものが好ましい。特に好適な樹脂材料としては、ハイロドジェンシルセスキオキサン(HSQ)、ポリイミド等が挙げられる。これらの樹脂材料は、耐熱性、耐薬品性等に優れるため、これらを硬化させてなる接合部4であれば、耐熱性、耐薬品性に優れるインプリントモールド用基板1とすることができる。また、フッ素を含有する樹脂やフェノール樹脂、エポキシ樹脂等のように、使用する薬品によっては十分に耐性を有する材料を用いてもよい。かかる基板1から作製されるインプリントモールドを用いたインプリント処理時において光照射により生じる熱や、当該インプリントモールドの洗浄時の薬品の作用等に耐えることができる。特に、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1においては、接合部4内に溶剤が残存しないため、より耐薬品性に優れたものとすることができる。また、接着性を考慮するならば、上記粘着剤組成物として、アクリル基、エポキシ基等を有する樹脂材料を含むものであってもよい。このような樹脂材料であれば、UV照射により仮接合し、適宜に加熱することにより安定した接合強度を得ることが可能となる。また、粘着剤組成物に含まれる溶剤としては、上記樹脂材料の種類に応じて適宜選択され得るものであるが、常温又は適宜に加熱(低温加熱。例えば、400℃以下、好ましくは200℃以下で加熱)されたときに揮発し易い溶剤を用いるのが好ましい。例えば、上記溶剤として、アルカン類、ケトン類、トルエン、キシレン、ベンゼン、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、2−ブタノン、2−プロパノール、シクロヘキサン、メチルー3−メトキシプロピオネート、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、N−ビニルー2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、グリコールエステル、メチルイソブチルケトン等を用いることができる。
上記粘着剤組成物は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドをインプリント処理に使用しているときに、薄板部2と支持部3とが分離してしまわない程度の粘着力(被着体である薄板部2及び支持部3に対する粘着力)を有するものであればよく、当該インプリント処理時に硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の2倍以上、好ましくは5倍以上の力に耐えられるものであればよい。例えば、接合部4が上記粘着剤層により構成され、薄板部2及び支持部3がともに石英により構成される場合、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の最大値が20Nであったならば、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)と薄板部2との接触面積と同一面積で石英に接着させた上記粘着剤層を剥離するのに要する力の最大値が40N以上であるのが好ましい。ただし、実際のインプリント処理において、インプリントモールドを剥離するときに薄板部2が湾曲することで、接合部4には、垂直方向の力と薄板部2の湾曲による水平方向の力との合力が加わるため、インプリント処理での繰り返し利用や、インプリント処理以外の不慮の外力による剥離を防ぐために、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の5倍以上(100N以上)とすることが好ましい。
本実施形態において、薄板部2と接合部4との間又は支持部3と接合部4との間に、さらに剥離層7を有していてもよい(図6(A),(B)参照)。この場合において、剥離層7は、支持部3と接合部4との間に位置するのが好ましい(図6(B)参照)。剥離層7を有することで、薄板部2と支持部3とを分離して、支持部3を再利用することができるという効果も奏し得る。特に、薄板部2と支持部3とを分離したときに、接合部4が支持部3側に残存すると、支持部3を再利用する場合に当該接合部4を除去する必要があるが、支持部3と接合部4との間に剥離層7を有することで、接合部4が薄板部2側に残存しやすくなり、支持部3の再利用をより容易にすることができる。
接合部4の厚さT4は、可能な限り薄いのが好ましいが、接合部4や薄板部2を構成する材料に応じて適宜設定することができる。接合部4を形成するために上記粘着剤組成物を用いた場合、接合部4の厚さT4が薄くなると、薄板部2と支持部3との接合時に薄板部2に生じ得る内部応力が低減され、薄板部2の主面2Aの平坦性を維持することができる。例えば、接合部4の厚さT4は、3〜100nm程度とすることができる。薄板部2に生じ得る内部応力は、例えば、接合前後の上記粘着剤組成物の収縮率や膨張率、さらに熱膨張係数に依存する。このため、収縮率や膨張率が低く、または薄板部2の熱膨張係数に近い熱膨張性係数を有する粘着剤組成物を用いる場合には、接合部4の厚さT4を前述の数値範囲(3〜100nm)に比べて厚くすることができる。例えば、接合部4を形成するための上記粘着剤組成物として、樹脂のような弾性を有する材料を含むものを使用した場合、ナノインプリントを実施した際に剥離に要する応力を低減することができる。また、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを、薄板部2に生じ得る内部応力を無視することが可能な用途に使用する際には、上述の数値範囲によらず、例えばサブミクロン又はミクロン単位の厚さT4とすることができる。
なお、接合部4を形成するための粘着剤組成物として、光硬化性樹脂組成物や、熱硬化性又は熱可塑性樹脂組成物を用いることもできるが、熱硬化性又は熱可塑性樹脂組成物を用いる方が望ましい。光硬化性樹脂組成物は、一般にモノマー成分である主剤と、架橋剤(硬化剤)とを含むが、当該主剤が上記結合(シロキサン結合、イミド結合など)を有する樹脂材料であったとしても、接合部4のうち架橋剤(硬化剤)による結合部分の耐熱性や耐薬品性が低い場合があり、接合剤4全体として耐熱性や耐薬品性に劣るおそれがあるためである。ただし、上述のように、接着工程の安定化を図るために、仮貼り合わせをした上で加熱により接着強度を向上させるといった、光硬化性と熱硬化性とを有する材料を用いてもよい。
上述した構成を有するインプリントモールド用基板1は、薄板部2及び支持部3が接合部4を介して接合した構成を有することで、支持部3の中空部30とその開口一端31を閉塞する薄板部2(対向面2B)により、有底略円筒状の凹部6が形成される。そして、支持部3の中空部30は、容易な加工技術により高精度に形成可能であり、薄板部2の対向面2Bは、高い平坦度を有する面として構成可能であるため、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、高精度の凹部6を有することになる。また、薄板部2及び支持部3における接合部4と当接する面にガス透過性構造22,32が設けられていることで、接合部4を形成するための粘着剤組成物に含まれる溶剤を、当該接合部4から効果的に除去することができる。よって、接合部4内に気泡(ボイド)が生じ難く、十分な強度を有するインプリントモールド用基板1とすることができる。
〔インプリントモールド用基板の製造方法〕
上述した構成を有するインプリントモールド用基板1は、以下のようにして製造することができる。図7は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1の製造工程を断面図にて概略的に示す工程フロー図である。
図7(A)に示すように、まず、ガス透過性構造22,32を有する薄板部2及び支持部3を準備し、支持部3の主面3A上に、上記粘着剤組成物(溶剤を含む粘着剤組成物)を塗布して粘着剤組成物層40を形成する。なお、薄板部2の主面2A上には、予めハードマスク層5(図4(B)参照)が形成されていてもよい。
薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cにガス透過性構造22を設ける方法としては、例えば、当該ガス透過性構造22がピラーアレイ構造体や微細スリット構造体である場合、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2C上等にピラーアレイやスリットに対応するレジストパターンを形成した後、エッチングすることで、ガス透過性構造22としてのピラーアレイ構造体を形成することができる。また、当該ガス透過性構造22が多孔質膜である場合、別途作製した多孔質膜を、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2C上に貼り付けることで、当該表面2Cにガス透過性構造22を設けることができる。
支持部3は、所定形状の基材を準備し、当該基材の略中心に中空部30を形成することにより得られる。中空部30の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、切削器具等を用いて機械的に加工してもよいし、中空部30に相当する開口部を有するレジストパターン等を形成してエッチングしてもよい。
支持部3の主面3Aにガス透過性構造32を設ける方法としては、例えば、当該ガス透過性構造32が多孔質シリコン層である場合、シリコンウェハから作製された支持部3の主面3Aを、陽極化成法によりHF水溶液中で電界エッチングすることにより、当該支持部3の主面3A上に多孔質シリコン層からなるガス透過性構造32を設けることができる。また、当該ガス透過性構造32が微細ピラー構造体や微細スリット構造体、多孔質膜等である場合には、上述した薄板部2におけるガス透過性構造22と同様の方法で設けられ得る。
支持部3の主面3A上に粘着剤組成物を塗布する方法としては、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等の任意の塗布方法を採用することができる。本実施形態においては、粘着剤組成物の粘度を溶剤により調整可能であるため、容易に塗布することができ、また粘着剤組成物層40の薄膜化が容易となる。なお、接合部4と支持部3との間に剥離層7(図6(B)参照)を設ける場合、支持部3の主面3A上に剥離層7を形成し、当該剥離層7上に粘着剤組成物を塗布すればよい。また、接合部4と薄板部2との間に剥離層7(図6(A)参照)を設ける場合、支持部3の主面3A上に粘着剤組成物を塗布するとともに、薄板部2の対向面2Bにおける接合部4と当接する面2Cに剥離層7を形成すればよい。
次に、図7(B)に示すように、支持部3の開口一端31を薄板部2(対向面2B)にて閉塞するように、薄板部2の対向面2Bと支持部3の主面3Aとを、粘着剤組成物を硬化させてなる接合部4を介して接合する。これにより、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1を製造することができる。
粘着剤組成物を硬化させて、薄板部2の対向面2Bと支持部3の主面3Aとを接合する際に、粘着剤組成物層40から溶剤を揮発させる。このようにして揮発した溶剤は、薄板部2のガス透過性構造22及び/又は支持部3のガス透過性構造32を介して外表面に抜けるため、粘着剤組成物が硬化してなる接合部4内には溶剤が残存しない。そのため、接合部4内に気泡(ボイド)が生じ難く、十分な強度を有し、薄板部2の平坦性の高いインプリントモールド用基板を製造することができる。
粘着剤組成物層40から溶剤を効果的に揮発させるために、薄板部2と支持部3とを接合する環境を、溶剤濃度が低く、溶剤の分圧が低い雰囲気とするのが好ましい。また、当該雰囲気の温度を高くするのが好ましい。しかしながら、雰囲気温度を高くすることで粘着剤組成物層40からの溶剤の揮発が促進されるものの、当該雰囲気温度が高くなりすぎると、ガス透過性構造22,32におけるガス透過能力を超えて溶剤が揮発してしまい、粘着剤組成物層40(接合部4)とガス透過性構造22,32との界面に気泡(ボイド)が生じやすくなるおそれがある。そのため、上記雰囲気温度は、粘着剤組成物に含まれる溶剤の種類や雰囲気における溶剤濃度・分圧等に応じて、適宜設定するのが望ましい。
〔インプリントモールド〕
続いて、上述した本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製され得るインプリントモールドについて説明する。図8は、本実施形態におけるインプリントモールド10を示す切断端面図であり、図9は、当該インプリントモールド10を示す平面図である。
図8に示すように、本実施形態におけるインプリントモールド10は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1の薄板部2の主面2A上に、所望の微細凹凸パターン11が形成されてなる。微細凹凸パターン11の形状、寸法、アスペクト比等は、インプリントモールド10の用途に応じて適宜設定され得る。
図9に示すように、インプリントモールド10の平面視において、微細凹凸パターン11の形成されている領域PAは、支持部3の中空部30の外形により規定される領域HAに包含されている。したがって、当該インプリントモールド10を用いたインプリント処理時において、インプリントモールド10の薄板部2のうち、微細凹凸パターン11の形成されている領域PAを少なくとも湾曲させることができるため、被転写材としてのインプリント樹脂から容易に剥離することができる。
上記インプリントモールド10は、薄板部2と支持部3とを接合する接合部4内に、接合部4を形成するための粘着剤組成物に含まれている溶剤が残存していないため、接合部4内に気泡(ボイド)が生じ難く、十分な強度を有し、平坦性の高い薄板部2を有するものとなる。
また、上記インプリントモールド10は、複数回の使用により破損したときなど、当該インプリントモールド10を廃棄するときに、薄板部2と支持部3と接合する接合部4からそれらを分離することで、少なくとも支持部3を再利用することができる。
〔インプリントモールドの製造方法〕
上記インプリントモールド10は、例えば下記のようにして製造することができる。図10は、本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法の各工程を断面図にて示す工程フロー図である。
本実施形態におけるインプリントモールド10の製造方法においては、まず、金属クロム膜等のハードマスク層5が薄板部2の主面2Aに設けられているインプリントモールド用基板1を用意し、微細凹凸パターン11に対応するレジストパターン60を当該主面2Aの微細凹凸パターン11を形成する領域PA上に形成する(図10(A)参照)。
なお、ハードマスク層5の厚さは、インプリントモールド用基板1の薄板部2を構成する材料に応じたエッチング選択比、インプリントモールド10における微細凹凸パターン11のアスペクト比等を考慮して適宜設定され得る。
レジストパターン60を構成するレジスト材料としては、特に限定されるものではなく、従来公知のエネルギー線感応型レジスト材料(例えば、電子線感応型レジスト材料、紫外線感応型レジスト材料等)等を用いることができる。
レジストパターン60を形成する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法等によりレジストパターン60を形成することができる。
続いて、レジストパターン60をマスクとして用いてハードマスク層5をドライエッチング法によりエッチングし、ハードマスクパターン51を形成する(図10(B)参照)。そして、当該ハードマスクパターン51をマスクとして用いてインプリントモールド用基板1の薄板部2の主面2Aをエッチングし、微細凹凸パターン11を形成する(図10(C)参照)。
最後に、ハードマスクパターン51を除去する(図10(D)参照)。これにより、薄板部2の主面2Aに微細凹凸パターン11が形成されてなり、高精度の凹部6を有するインプリントモールド10を製造することができる。
なお、レジストパターン60を形成する際に電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法を用いる場合には、露光光源側から見たときに、薄板部2はたわみを持たず一様に平坦であることがより好ましい。そのため、薄板部2は大きさに応じた厚みを有するか、あるいは張力を有するように支持部3に貼り付けられていることが好ましい。
本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法において用いられる、上述した本実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、接合部4内に溶剤(接合部4を形成するための粘着剤組成物に含まれる溶剤)が残存していないことで、当該接合部4内に気泡が生じ難く、十分な強度を有し、薄板部2の平坦性が高いものとなっている。そのため、本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法によれば、薄板部2の平坦性が高いことで微細凹凸パターン11を高精度に形成することができ、また十分な強度を有するインプリントモールド10を製造することができる。
なお、上記の方法ではレジストパターン60を電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法等により形成しているが、当該レジストパターン60に対応する微細凹凸パターンを有するインプリントモールドを用いたナノインプリントリソグラフィー法により、当該レジストパターン60を形成してもよい。
〔インプリントモールドの再生方法〕
続いて、上記インプリントモールド10の再生方法について説明する。図11は、本実施形態におけるインプリントモールドの再生方法の各工程を断面図により示す工程フロー図である。
本実施形態においては、まず、使用済みのインプリントモールド10の薄板部2と支持部3とを分離する(図11(A)参照)。薄板部2と支持部3とを分離する方法としては、例えば、接合部4に赤外線を照射して加熱することにより、接合部4を構成する粘着剤組成物層の粘着力を低下させ、薄板部2と支持部3とを分離する方法等を挙げることができる。このとき、支持部3と接合部4との間に剥離層7が設けられていれば(図4(B)参照)、接合部4を薄板部2側に残存させるようにして薄板部2と支持部3とを容易に分離することができる。
次に、必要に応じて支持部3の主面3Aに残存する接合部4を除去したり、主面3Aを清浄化したりするとともに、別途新たな薄板部2’を準備し、支持部3の開口一端31を当該薄板部2’にて閉塞するように、当該薄板部2’の対向面2B’と支持部3の主面3Aとを、接合部4’を介して接合する。(図11(B)参照)。これにより、使用済みのインプリントモールド10をインプリントモールド用基板1として再生することができる。
なお、使用済みのインプリントモールド10の支持部3の主面3A(薄板部2が接合していた面)に対向する面に、別途新たな薄板部2’を接合して、インプリントモールド用基板1として再生してもよい。
薄板部2’の主面2A’には、金属クロム膜等により構成されるハードマスク層5が形成されていてもよい(図4(B)参照)。薄板部2と支持部3とを、接合部4を介して接合する方法としては、上記インプリントモールド用基板1の製造方法において説明した方法と同様の方法(図7(B)参照)を採用することができる。
そして、再生されたインプリントモールド用基板1を用いて、図10に示す方法によりインプリントモールド10を製造することで、インプリントモールド10を再生することができる。
上述のようにして、本実施形態によれば、少なくとも支持部3を再利用することができ、使用済みのインプリントモールド10を再生することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態においては、薄板部2と支持部3とのいずれもがガス透過性構造22,32を有する例を挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、薄板部2と支持部3とのいずれか一方がガス透過性構造22,32を有している態様であってもよい。
上記実施形態においては、薄板部2と支持部3とを、接合部4を介して接合してなるインプリントモールド用基板1の薄板部2の主面2A上に微細凹凸パターン11を形成することによりインプリントモールド10を製造しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、主面2Aに微細凹凸パターン11が形成されてなる薄板部2と、支持部3とを準備し、当該薄板部2と支持部3とを、支持部3の開口一端31を薄板部2の対向面2Bで覆うようにして接合部4を介して接合することで、インプリントモールド10を製造してもよい。
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
薄板部2としての石英基板(152mm×152mm,厚さT2=1.0mm)と、石英ガラスにより構成される支持部3(152mm×152mm,厚さT3=5.35mm,中空部30の径=60mm)とを準備し、支持部3の主面3A上に、樹脂材料としてのHSQをメチルイソブチルケトン(以下MIBK)にて粘度を調整した粘着剤組成物をスピンコート法により薄板部2の対向面2Bに塗布し、粘着剤組成物層40を形成した。なお、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cの全面及び支持部3の主面3Aの全面のそれぞれには、多孔質シリコン酸化膜からなるガス透過性構造22,32を設けた(図1等を参照)。この多孔質シリコン酸化膜は、薄板部2の対向面2B及び支持部3の主面3Aのそれぞれにシリコン膜を形成し、陽極化成した上で酸化することによって得た。なお、陽極化成時の電流密度は80mA/cm2とし、化成溶液としては46質量%のフッ酸水溶液と、エタノールとを体積比7:3の割合で混合した溶液を使用した。得られた多孔質シリコン酸化膜の厚みは、約1.5μmであった。
また、上記ガス透過性構造22,32のガス透過係数は、中空部30を有しない以外は上記支持部3と同一の石英ガラス上に多孔質シリコン酸化膜を作製し、その多孔質シリコン酸化膜のガス透過係数を、下記のようにして測定・評価した。
まず、中空部30と同一の径を有するOリングを用意し、当該Oリングによって多孔質シリコン酸化膜を中空部30に相当する内側領域と、主面3A上のガス透過性構造32に相当する外側領域とに区分した。次いで、内側領域に対して揮発させたMIBKを供給し、外側領域から漏れ出てくるMIBKをガスクロマトグラフィにより検出することで、蒸気ガス透過係数を求めた。その結果、ガス透過係数は、1.3×10-16cm3・cm/cm2・s・Paであった。
次に、支持部3の主面3A上の粘着剤組成物層40に、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cを接触させて粘着剤組成物を硬化させ、支持部3の開口一端31を薄板部2(対向面2B)にて閉塞するように、薄板部2と支持部3とを接合した。このとき、粘着剤組成物層40から溶剤を揮発させるために、150度のオーブンで30分間加熱した。このとき、オーブン内が揮発した溶剤で充満されないよう、十分な排気を行うとともに、オーブン内に乾燥したN2を送りこんだ。また、薄板部2の対向面2Bへの粘着剤組成物のスピンコートの際に、薄板部2の対向面2Bにおける中空部30に相当する箇所に付着した粘着剤組成物は、薄板部2と支持部3との接合後、エッチングにより除去された。このようにしてインプリントモールド用基板1を作製した。なお、本実施例1において、中空部30から露出する薄板部2の対向面2Bに付着した粘着剤組成物は除去されているが、インプリントモールドとしての使用に差障りがない場合には、当該粘着剤組成物を除去しなくてもよい。
〔実施例2〕
支持部3の主面3Aにガス透過性構造32を形成しなかった以外は、実施例1と同様にしてインプリントモールド用基板1を作製した。
〔実施例3〕
薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cにガス透過性構造22を形成しなかった以外は、実施例1と同様にしてインプリントモールド用基板1を作製した。
〔実施例4〕
薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cの複数の独立した領域に、当該表面2Cの平面視における総面積に対して面積比率が32%となるように陽極化成しない個所には液が接触しないよう表面を保護してガス透過性構造22を形成した以外は、実施例1と同様にしてインプリントモールド用基板1を作製した。
〔実施例5〕
支持部3の主面3Aの複数の独立した領域に、当該主面3Aの平面視における総面積に対して面積比率が36%となるようにガス透過性構造32を形成した以外は、実施例1と同様にしてインプリントモールド用基板1を作製した。
〔実施例6〕
薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cの平面視における接合部となる領域の総面積に対し、面積比率が26%となるようにガス透過性構造22を形成し、支持部3の主面3Aの平面視における総面積に対し、面積比率が32%となるようにガス透過性構造32を形成した以外は、実施例1と同様にしてインプリントモールド用基板1を作製した。
〔比較例1〕
薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2C及び支持部3の主面3Aにガス透過性構造22,32を設けなかった以外は、実施例1と同様にしてインプリントモールド用基板を作製した。
〔試験例1〕
実施例1〜6及び比較例1のインプリントモールド用基板を用い、下記のようにして接合部4における気泡の有無、耐熱性及び耐薬品性の評価試験を行った。
[気泡評価]
実施例1〜6及び比較例1のインプリントモールド用基板の接合部4内の気泡の有無につき、光学顕微鏡を用いて接合部4を薄板部2の主面2A側から観察して評価した。結果を表1に示す。
[耐熱性評価]
実施例1〜6及び比較例1のインプリントモールド用基板の支持部3を固定冶具により固定し、薄板部2の主面2A側から中空部30側に向かって10Nの圧力を印加した状態のまま、600℃で30分間加熱した。その後、インプリントモールド用基板を冷却し、室温にまで冷却された後に加圧を中止した。インプリントモールド用基板の上記冷却後における薄板部2の略中心(中空部30に相当する箇所)の歪み量(加熱・冷却後の凹み量)を、TROPEL FLATMASTER FM200(コーニング社製)を用いて測定した。結果を表1にあわせて示す。
[耐薬品性評価]
実施例1〜6及び比較例1のインプリントモールド用基板の支持部3を固定冶具により固定した状態のまま、MIBKに3時間浸漬し、その後、当該薄板部2の主面2A側から中空部30側に向かって10Nの圧力を3時間印加した。加圧後のインプリントモールド用基板の外縁部において、光学顕微鏡を用いて薄板部2の主面2A側から見たときに空隙が生じているか否かを観察し、空隙の長さ(インプリントモールド用基板の外縁部からの空隙の長さ)をECLIPS L300にて画像を撮影し、その距離をACT−2U(いずれもニコン社製)を用いて測定した。この空隙が生じているということは、薬品により接合部4を構成する樹脂(HSQ)が侵されていることを意味し、耐薬品性に劣ると評価することができる。結果を表1にあわせて示す。
表1の耐熱性評価においては、歪み量の測定値が100nm以下を「変化なし」と評価した。また、耐薬品性評価においては、空隙長さが10μm以下を「変化なし」と評価した。
表1に示すように、実施例1〜6のインプリントモールド用基板においては、接合部4に気泡が存在しなかったのに対し、比較例1のインプリントモールド用基板においては、接合部4に気泡が確認された。
また、実施例1〜6のインプリントモールド用基板においては、耐熱性及び耐薬品性ともに良好な結果であったのに対し、比較例1のインプリントモールド用基板においては、耐熱性及び耐薬品性に劣る結果であった。
この評価試験の結果から明らかなように、薄板部2及び/又は支持部3と接合部4との間にガス透過性構造22,32を有することで、溶剤を含む粘着剤組成物により構成される接合部4から当該溶剤を揮発させて除去することができるため、接合部4内に気泡を有さず、耐熱性及び耐薬品性を向上させ得ることが確認された。