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JP6428616B2 - 化学強化ガラスの製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、新規な化学強化ガラス及び該化学強化ガラスの製造方法に関する。
デジタルカメラ、携帯電話およびPDA(Personal Digital Assistants)といったディスプレイ装置などのカバーガラスおよびディスプレイのガラス基板には、イオン交換等で化学強化処理したガラス(以下、単に「化学強化ガラス」と称することがある。)が用いられている。ガラスは理論強度が高いものの、傷がつくことで強度が大幅に低下する。化学強化ガラスは、未強化のガラスに比べて機械的強度が高く、ガラス表面に傷がつくのを防ぐため、これらの用途に好適である。
また、近年では太陽電池用カバーガラスとして採用される例も増えてきた。既存カバーガラスを化学強化ガラスで代替することで、薄型化しても同程度の機械的強度を達成できる。ガラスの軽量化により、重量制限により従来設置できなかった場所への設置や、施工の負荷が軽減されるという利点がある。
イオン交換による化学強化処理は、ガラス中に含まれる小さいイオン半径の金属イオン(例えば、Naイオン)とより大きいイオン半径の金属イオン(例えば、Kイオン)とを置換することにより、ガラス表面に圧縮応力層を生じさせてガラスの強度を向上させる処理である。
また、各種のディスプレイなどにおいては、反射防止機能が要求されることが多く、イオン交換による化学処理によって強化された強化ガラスにおいても、反射防止機能を要求される場合がある。通常化学強化ガラスにおいては、反射防止膜を形成した後に、Kイオンをガラス内部に拡散させることができないため、強化処理を行うことが困難である。そのため、反射防止膜の形成を強化処理後に行わなければならない。
得られた化学強化ガラスに対し、低反射性を付与するために、ガラス表面に反射防止膜を多層膜として、または単層膜として形成することが行われている。多層膜の反射防止膜を基材表面に被覆する方法としては、基材上に相対的に高屈折率を有する膜と相対的に低屈折率を有する膜とをこの順に積層する方法や、前記積層方法で相対的に高屈折率と低屈折率を有する膜を交互に多数積層して多層膜を得る技術が知られている(特許文献1)。
反射防止膜を形成する方法としては、細粒子を含むコーティング液を塗布し、加熱処理によってゲル化する反射防止膜を形成するゾル−ゲル法が、生産コストが低く、生産も高いために、現在では主流となっている。このようなゾル−ゲル法により形成される反射防止膜としては、例えばケイ素化合物の加水分解縮合物と金属キレート化合物と低屈折シリカゾルとを含むものが知られている(特許文献2)。
一方、近年では反射防止膜を最適化することで、反射防止膜を形成した後に化学強化処理してKイオンをガラス内部に拡散し、ガラスの強化を行う反射防止性強化ガラスの製造方法が公開されている(特許文献3)。
また、表面に特異なテクスチャ構造を持たせることによっても、低反射性を付与することができる(特許文献4)。
なお、ガラスが低反射性であるということは、透過率が高いことを意味し、ガラス表面を低密度化すなわち低屈折率化することにより、透過率を向上することができる。
日本国特開平4−357134号公報 日本国特開2002−221602号公報 日本国特開2011−88765号公報 日本国特開2013−40091号公報
しかしながら、化学強化ガラスへ低反射性を付与する従来の技術では、特許文献1のように反射防止膜を2層以上の多層膜から構成する場合には、光学設計により確実に反射防止効果を奏することができるものの、反射率の入射角依存性があり、また膜のコーティング回数が二回以上必要となるために製造コストが高くつくのを免れない。一方、反射防止膜を単層で構成する場合には、一旦金属酸化物膜を形成した後、加熱処理とエッチング処理を施したり、一旦金属酸化物膜を形成した後、ガスとの化学反応処理を施すので、単層の反射防止膜でありながら、製造コストの低廉化を図ることが難しい。
また、特許文献2にあるような、ガラスを化学強化する前にゾル−ゲル法によって反射防止膜を形成する方法では、化学強化処理がなされた製品毎に反射防止膜を形成しなければならないため、その生産性は著しく低下してしまい、ゾル−ゲル法固有の高い生産性という利点が失われる。
一方で特許文献3のように、化学強化処理する前に反射防止膜を形成する方法であっても、化学強化処理工程の前に少なくとも次の3工程が必要となる。
(1)ケイ素化合物と中空シリカゾルと金属キレート化合物とから、あらかじめコーティング液を調製する工程。
(2)ガラスへコーティング液を塗布する工程。
(3)ガラスを乾燥および熱処理する工程。
これらのため、従来の化学強化処理装置の他に設備の新規投資が必要となる。
また、特許文献4においても、ガラス表面にテクスチャ構造を持たせるといった、ガラスの化学強化処理とは別の加工処理が必要となり、低反射性を付与した低反射化学強化ガラスを製造するためには、高いコストが必要となっていた。また、製造上の特質から、化学強化ガラスの両面への低反射処理や大面積への低反射処理をすることが非常に困難であった。
そこで本発明では、化学強化ガラスの表面を低密度化することで低密度層と呼ばれる改質層を形成し、表層に低密度層(低屈折率層)を有する化学強化ガラス及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研鑽を積んだ結果、化学強化処理に用いられる溶融塩に特定の塩を添加し、前記溶融塩におけるNa濃度を一定値以上に保つこと及び化学強化処理後のガラスを酸処理することの少なくともいずれか一方を行うことにより、一枚のガラスを原料として、その表層に低反射性が付与された化学強化ガラスを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>〜<7>に関するものである。
<1>ガラス表面に、イオン交換した圧縮応力層を有する化学強化ガラスであって、前記圧縮応力層の表面を低密度化した低密度層を有し、前記低密度層の厚みが5nm以上200nm以下であり、かつ前記低密度層の密度(D1)とガラス中心部に存在し前記圧縮応力層に挟まれる中間層の密度(D3)との比(D1/D3)が0.5以上0.93未満である、化学強化ガラス。
<2>前記低密度層のH/(Na+K)モル比(C1)が前記中間層のH/(Na+K)モル比(C3)よりも大きい(C1>C3)、前記<1>に記載の化学強化ガラス。
<3>前記低密度層のH/(Na+K)モル比(C1)が1.0以上である、前記<1>又は<2>に記載の化学強化ガラス。
<4>前記ガラスがアルミノシリケートガラス又はソーダライムガラスである、前記<1>〜<3>のいずれか1に記載の化学強化ガラス。
<5>硝酸カリウムを含む溶融塩中にガラスを浸漬することによって、前記ガラス中のNaと前記溶融塩中のKとをイオン交換する化学強化ガラスの製造方法であって、前記溶融塩中にKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも1の塩を添加する工程並びに前記イオン交換の後にガラスを洗浄する工程を含み、さらに、前記溶融塩におけるNa濃度を500重量ppm以上にする工程及び前記洗浄の後にガラスを酸処理する工程の少なくともいずれか一方の工程を含む、化学強化ガラスの製造方法。
<6>前記溶融塩におけるNa濃度を500重量ppm以上にする工程及び前記洗浄の後にガラスを酸処理する工程を共に含む、前記<5>に記載の化学強化ガラスの製造方法。
<7>前記溶融塩におけるNa濃度を500重量ppm以上にする工程が、前記溶融塩にNa塩を添加する工程を含む、前記<5>又は<6>に記載の化学強化ガラスの製造方法。
本発明に係る化学強化ガラスは、イオン交換した圧縮応力層の表面が低密度化された低密度層を有することによって低反射性が付与されており、低反射性付与のために別の装置を用いた加工処理工程を別途必要としない。そのため、低反射性の化学強化ガラスを製造するに際して、従来と比べてコストの低減を図ることができる。
また、本発明に係る化学強化ガラスの製造方法によれば、一枚のガラスを原料とし、その表面に圧縮応力層及び低密度層を形成することで、低反射性の化学強化ガラスが得られることから、大面積のガラスやガラスの両面へ低反射処理を施すことができ、非常に有用である。
図1(a)〜(c)は、本発明に係る化学強化ガラスの製造工程を表す模式図である。 図2は、RBS−ERDA分析によって得られた、実施例1の表面から500nmまでの深さ領域のHおよびSiプロファイルを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
ここで、本明細書において“質量%”と“重量%”、“質量ppm”と“重量ppm”とは、それぞれ同義である。
また、本明細書において、「Na濃度」と表記した際は、Naとしての濃度を意味するものである。
<化学強化ガラス>
本発明に係る化学強化ガラスは、ガラス表面に、イオン交換された圧縮応力層を有する化学強化ガラスであって、前記圧縮応力層の表面がさらに低密度化された低密度層を有する。
本明細書において「圧縮応力層」とは、原料であるガラスを硝酸カリウム等の無機カリウム溶融塩に浸漬することによって、ガラス表面のNaイオンと溶融塩中のKイオンとがイオン交換されることで形成される高密度層のことである。
(溶融塩)
本発明に係る化学強化ガラスを得るために用いられるガラス強化用溶融塩(以下、単に「溶融塩」と称することもある。)は、無機カリウム塩を含有する。無機カリウム塩としては化学強化を行うガラスの歪点(通常500〜600℃)以下に融点を有するものが好ましく、本発明においては硝酸カリウム(融点330℃)を主成分として含有する溶融塩が好ましい。硝酸カリウムが主成分であれば、ガラスの歪点以下で溶融状態であり、かつ使用温度領域においてハンドリングが容易となることから好ましい。ここで主成分とは溶融塩における含有量が50質量%以上であることを意味する。
以下、溶融塩の無機カリウム塩として硝酸カリウムを主成分とする「硝酸カリウム溶融塩」を例に挙げて説明する。
溶融塩はさらに、KCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも1の塩を含有することが好ましく、中でもKCO、NaCO、KHCO及びNaHCOからなる群より選ばれる少なくとも1の塩を含有することがより好ましい。
硝酸カリウムの溶融塩に、Si−O−Si結合に代表されるガラスのネットワークを切断する性質を有するKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも1の塩(以下、「融剤」と称することもある。)を添加する。化学強化処理を行う温度は数百℃と高いので、その温度下でガラスのSi−O間の共有結合は適度に切断され、後述する低密度化処理が進行しやすくなる。
なお、共有結合を切断する度合いはガラス組成や用いる無機塩(融剤)の種類、ガラスを溶融塩に浸漬する温度、時間等の化学強化処理条件によっても異なるが、Siから伸びている4本の共有結合のうち、1〜2本の結合が切れる程度の条件を選択することが好ましいものと考えられる。
例えば融剤としてKCOを用いる場合には、溶融塩における融剤の含有量を0.1重量%以上とし、化学強化処理温度を350〜500℃とすると、化学強化処理時間は1分〜10時間が好ましく、5分〜8時間がより好ましく、10分〜4時間がさらに好ましい。
融剤の添加量は生産性の観点から溶融塩を使用する温度における飽和溶解度以下が好ましく、また、過剰に添加するとガラスの腐食につながるおそれがある。
溶融塩は、硝酸カリウム及び融剤の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の化学種を含んでいてもよく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のアルカリ塩化塩やアルカリホウ酸塩などが挙げられる。これらは単独で添加しても、複数種を組み合わせて添加してもよい。
(溶融塩の製造方法1)
溶融塩は下記に示す工程により製造することができる。
工程1a:硝酸カリウム溶融塩の調製
工程2a:前記工程1aで調製した硝酸カリウム溶融塩への融剤の添加
(工程1a−硝酸カリウム溶融塩の調製−)
工程1aでは、硝酸カリウムを容器に投入し、融点以上の温度に加熱して溶融することで、溶融塩を調製する。硝酸カリウムは融点が330℃、沸点が500℃なので、その範囲内の温度で溶融を行う。特に溶融温度を350〜470℃とすることが、ガラスに付与できる表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)のバランスおよび強化時間の点からより好ましい。
硝酸カリウムを溶融する容器は、金属、石英、セラミックスなどを用いることができる。中でも、耐久性の観点から金属材質が望ましく、耐食性の観点からはステンレススチール(SUS)材質が好ましい。
(工程2a−工程1aで調製した硝酸カリウム溶融塩への融剤の添加−)
工程2aでは、工程1aで調製した硝酸カリウム溶融塩中に、先述した融剤を添加し、温度を一定範囲に保ちながら、攪拌翼などにより、全体が均一になるように混合する。複数の融剤を併用する場合、添加順序は限定されず、同時に添加してもよい。
温度は硝酸カリウムの融点以上、すなわち330℃以上が好ましく、350〜500℃がより好ましい。また、攪拌時間は1分〜10時間が好ましく、10分〜2時間がより好ましい。
(溶融塩の製造方法2)
上記溶融塩の製造方法1では、硝酸カリウムの溶融塩の調製後に融剤を加える方法を例示したが、溶融塩はまた、下記に示す工程によっても製造することができる。
工程1b:硝酸カリウムと融剤の混合
工程2b:前記工程1bで得られた混合塩の溶融
(工程1b−硝酸カリウムと融剤の混合−)
工程1bでは、硝酸カリウムと融剤とを容器に投入して、攪拌翼等により混合する。複数の融剤を併用する場合、添加順序は限定されず、同時に添加してもよい。容器は上記工程1aで用いるものと同様のものを用いることができる。
(工程2b−工程1bで得られた混合塩の溶融−)
工程2bでは、工程1bにより得られる混合塩を加熱して溶融する。硝酸カリウムは融点が330℃、沸点が500℃なので、その範囲内の温度で溶融を行う。特に溶融温度を350〜470℃とすることが、ガラスに付与できる表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)のバランスおよび強化時間の点からより好ましい。攪拌時間は1分〜10時間が好ましく、10分〜2時間がより好ましい。
上記工程1a及び2a又は工程1b及び2bにより得られる溶融塩において、融剤の添加により析出物が発生する場合には、ガラスの化学強化処理を行う前に、当該析出物が容器の底に沈殿するまで静置する。この析出物には、飽和溶解度を超えた分の融剤や、融剤のカチオンが溶融塩中で交換された塩が含まれる。
以上、上記工程1a及び2a又は工程1b及び2bにより、溶融塩を調製することができる。なお、以下、工程1a又は1bのことを単に「工程1」、工程2a又は2bのことを単に「工程2」と称することがある。
また、工程2に引き続き、必要に応じて下記工程2’を行ってもよい。
工程2’:溶融塩におけるNa濃度の調整
NaNOに代表されるNa塩を、製造した溶融塩へ添加することにより、溶融塩におけるNa濃度を調整することができる。工程2’の詳細については後述する。
(化学強化処理−圧縮応力層の形成−)
次に、化学強化処理方法を説明する。
化学強化処理は、ガラスを溶融塩に浸漬し、ガラス中の金属イオン(Naイオン)を、溶融塩中のイオン半径の大きな金属イオン(Kイオン)と置換することで行われる。このイオン交換によってガラス表面の組成を変化させ、ガラス表面が高密度化した圧縮応力層2を形成することができる。このガラス表面の高密度化によって圧縮応力が発生することから、ガラスを強化することができる[図1(a)〜(b)]。
なお実際には、化学強化ガラスの密度は、ガラスの中心に存在する中間層3の外縁から圧縮応力層表面に向かって徐々に高密度化してくるため、中間層3と圧縮応力層2との間には、密度が急激に変化する明確な境界はない。ここで中間層とは、ガラス中心部に存在し、圧縮応力層に挟まれる層を表す。この中間層は圧縮応力層とは異なり、イオン交換がされていない層である。
本発明における化学強化処理は、具体的には、下記工程3により行うことができる。
工程3:ガラスの化学強化処理
(工程3−ガラスの化学強化処理−)
工程3では、ガラスを予熱し、前記工程1及び2又は前記工程1、2及び2’で調製した溶融塩を、化学強化を行う温度に調整する。次いで予熱したガラスを溶融塩中に所定の時間浸漬したのち、ガラスを溶融塩中から引き上げ、放冷する。なお、ガラスには、化学強化処理の前に、用途に応じた形状加工、例えば、切断、端面加工および穴あけ加工などの機械的加工を行うことが好ましい。
ガラスの予熱温度は、溶融塩に浸漬する温度に依存するが、一般に100℃以上であることが好ましい。
化学強化温度は、被強化ガラスの歪点(通常500〜600℃)以下が好ましく、より高い圧縮応力層深さを得るためには特に350℃以上が好ましい。
ガラスの溶融塩への浸漬時間は1分〜10時間が好ましく、5分〜8時間がより好ましく、10分〜4時間がさらに好ましい。かかる範囲にあれば、強度と圧縮応力層の深さのバランスに優れた化学強化ガラスを得ることができる。
(低密度層)
本発明に係る化学強化ガラスは、圧縮応力層2の表面が低密度化された低密度層1をさらに有する[図1(b)〜(c)]。
低密度層とは、圧縮応力層の最表面からNaやKが抜け(リーチングし)、代わりにHが入り込む(置換する)ことによって形成されるが、先述した工程2’及び次の工程5の少なくともいずれか一方によって行うことができる。なお、工程5の詳細については後述するが、工程5の前に下記工程4を行う。
工程4:ガラスの洗浄工程5:工程4を経た後のガラスの酸処理
(工程4−ガラスの洗浄−)
工程4では工水、イオン交換水等を用いてガラスの洗浄を行う。中でもイオン交換水が好ましい。洗浄の条件は用いる洗浄液によっても異なるが、イオン交換水を用いる場合には0〜100℃で洗浄することが付着した塩を完全に除去させる点から好ましい。
ただし、先述した融剤を添加した溶融塩中でガラスを化学強化処理するのみでも、融剤を未添加の溶融塩中で化学強化処理する場合と比べて、化学強化ガラスの透過性を若干高くすることができる。これは、通常の水による洗浄工程のみでも前述のリーチングが起き、圧縮応力層の表面が低密度化するためであると思われる。しかしながら、その場合の低密度層形成の効果は弱く、後述する工程5によって該効果はより促進されるものと考えられる。
先述したように、化学強化ガラスの圧縮応力層表面が低密度化することによって屈折率が低下し、ガラスの透過率が向上した低反射性のガラスを得ることができる。
低密度層の密度はX線反射率法(X−ray−Reflectometry:XRR)によって測定した臨界角(θc)により求めることができる。また、XRRによって測定した周期(Δθ)によって低密度層の厚みを求めることができる。なお、簡易的には走査型電子顕微鏡(SEM)でガラスの断面を観察することによって、低密度層の形成と層の厚みを確認することも可能である。また、中間層の密度は、圧縮応力層を研磨、エッチング等で除去することによって、同様に求めることができる。
低密度層のNa/Siモル比とK/Siモル比はX線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)により、H/Siモル比はラザフォード後方散乱(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)−弾性反跳検出法(Elastic Recoil Detection Analysis:ERDA)により、それぞれ確認することができる。すなわち、低密度層のH/(Na+K)モル比はXPSおよびRBS−ERDAにより求めることができる。また、中間層のH/(Na+K)モル比は、圧縮応力層を研磨、エッチング等で除去することによって、同様に求めることができる。
低密度層の厚みはガラスを透過する光の最大波長と関係があることから、5nm以上200nm以下が好ましく、50nm以上200nm以下がより好ましい。
低密度層の密度(D1)と中間層の密度(D3)との比(D1/D3)は得られる化学強化ガラスの低反射性の観点から0.5以上0.93未満であることが好ましく、0.7以上0.85未満がより好ましく、0.7以上0.8未満がさらに好ましい。
また、低密度層のH/(Na+K)モル比(C1)と中間層のH/(Na+K)モル比(C3)の大小関係は、C1>C3であることが好ましい。
低密度層のH/(Na+K)モル比(C1)は1.0以上であることが低反射性付与の点から好ましく、10.0以上がより好ましい。
(工程2’−溶融塩におけるNa濃度の調整−)
工程2’では、必要に応じて前記工程3の化学強化処理に用いる溶融塩中のNa濃度を500重量ppm以上に調整する。
溶融塩におけるNa濃度を500重量ppm以上にすることで、ガラス最表面のネットワークの切断、低密度化処理が進行しやすくなり、低密度層が深化する。
溶融塩におけるNa濃度は、硝酸ナトリウムに代表される無機ナトリウム塩を添加することにより調整することができる。
(工程5−工程4を経た後のガラスの酸処理−)
工程5では、工程4で洗浄したガラスに対して、さらに酸処理を行う。
工程4の後に工程5を行う場合には、洗浄した化学強化ガラスを酸処理することにより、化学強化ガラスの圧縮応力層最表面の低密度化が促進される。また、工程2’によりNa濃度が調整された溶融塩で化学強化処理を行った後に工程5を行う場合には、低密度層のさらなる深化が可能となる。
ガラスの酸処理とは、酸性の溶液中に、化学強化ガラスを浸漬させることによって、化学強化ガラス表面のNa及び/又はKをHに置換する処理である。
溶液は酸性であれば特に制限されず、用いられる酸が弱酸であっても強酸であってもよく、そのpHに左右されない。具体的には塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸及びクエン酸等の酸が好ましい。これらの酸は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
酸処理を行う温度は、用いる酸の種類や濃度、時間によっても異なるが、100℃以下で行うことが好ましい。
酸処理を行う時間は、用いる酸の種類や濃度、温度によっても異なるものの、10秒〜5時間が生産性の点から好ましく、1分〜2時間がより好ましい。
酸処理を行う溶液の濃度は、用いる酸の種類や時間、温度によって異なるものの、容器腐食の懸念が少ない濃度が好ましい。
酸処理に用いる酸の種類、濃度、酸処理の温度、時間等により、形成する低密度層の厚みを制御することができる。
低密度層の厚みによって、ガラスを透過する光の最大透過波長が決まることから、化学強化ガラスの用途に応じて、酸処理条件を適宜決定すればよい。
先述したように、低密度層の厚みは5〜200nmが好ましく、50〜200nmがより好ましい。酸処理時間を長くする等、酸処理条件を強くするほど、透過率の増加幅は大きくなる傾向がある。
これらを踏まえて、酸処理条件を状況に合わせて適宜決定する。
また、工程5の酸処理によって低密度化処理を行う場合には、低密度層におけるNa濃度及びK濃度が共にH濃度よりも低くなることが、より低反射性の化学強化ガラスを得られることから好ましい。
<ガラス>
本発明で使用されるガラスはナトリウムを含んでいればよく、成形、化学強化処理による強化が可能な組成を有するものである限り、種々の組成のものを使用することができる。具体的には、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
ガラスの製造方法は特に限定されず、所望のガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を好ましくは1500〜1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することにより製造することができる。
なお、ガラスの成形には種々の方法を採用することができる。例えば、ダウンドロー法(例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウン法およびリドロー法等)、フロート法、ロールアウト法およびプレス法等の様々な成形方法を採用することができる。
ガラスの厚みは、特に制限されるものではないが、化学強化処理を効果的に行うために、通常5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
本発明の化学強化用ガラスの組成としては特に限定されないが、例えば、以下のガラスの組成が挙げられる。(i)モル%で表示した組成で、SiOを50〜80%、Alを2〜25%、LiOを0〜10%、NaOを0〜18%、KOを0〜10%、MgOを0〜15%、CaOを0〜5%およびZrOを0〜5%を含むガラス
(ii)モル%で表示した組成が、SiOを50〜74%、Alを1〜10%、NaOを6〜14%、KOを3〜11%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%およびZrOを0〜5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が75%以下、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス
(iii)モル%で表示した組成が、SiOを68〜80%、Alを4〜10%、NaOを5〜15%、KOを0〜1%、MgOを4〜15%およびZrOを0〜1%含有するガラス
(iv)モル%で表示した組成が、SiOを67〜75%、Alを0〜4%、NaOを7〜15%、KOを1〜9%、MgOを6〜14%およびZrOを0〜1.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が71〜75%、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス
ガラスを化学強化処理前に研磨する場合、研磨方法としては、例えば研磨スラリーを供給しながら研磨パッドで研磨する方法が挙げられ、研磨スラリーには、研磨材と水を含む研磨スラリーが使用できる。研磨材としては、酸化セリウム(セリア)およびシリカが好ましい。
ガラスを研磨した場合、研磨後のガラスを洗浄液により洗浄する。洗浄液としては、中性洗剤および水が好ましく、中性洗剤で洗浄した後に水で洗浄することがより好ましい。中性洗剤としては市販されているものを用いることができる。
前記洗浄工程により洗浄したガラス基板を、洗浄液により最終洗浄する。洗浄液としては、例えば、水、エタノールおよびイソプロパノールなどが挙げられる。中でも水が好ましい。
前記最終洗浄の後、ガラスを乾燥させる。乾燥条件は、洗浄工程で用いた洗浄液、およびガラスの特性等を考慮して最適な条件を選択すればよい。
上記洗浄を終えたガラスを、化学強化処理の前記工程3に適用する。
以上、本発明に係る化学強化ガラスについて説明したが、本発明に係る化学強化ガラスは、以下の工程1〜4並びに工程2’及び5の少なくともいずれか一方の工程を含むことにより製造することができる。中でも、工程2’を含むことで低密度層を深化でき、工程5を含むことで低密度層をさらに深化でき、工程2’及び5を共に含むことがより好ましい。なお、各工程における詳細は先述したとおりである。
工程1:硝酸カリウム溶融塩の調製(1a)又は硝酸カリウムと融剤の混合(1b)
工程2:前記工程1aで調製した硝酸カリウム溶融塩への融剤の添加(2a)又は前記工程1bで得られた混合塩の溶融(2b)
工程2’:溶融塩におけるNa濃度の調整
工程3:ガラスの化学強化処理
工程4:ガラスの洗浄工程5:前記工程4を経た後のガラスの酸処理
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は以下に示す分析方法により行った。
(ガラスの評価:透過率)
ガラスの透過率は、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 U−4100)を用いて300nm〜1000nmの波長領域の透過スペクトルを測定し、該波長範囲における透過率の最大値Tmaxを算出した。
(ガラスの評価:低密度層の密度D1、低密度層の厚みT1)
ガラス表面に形成された改質層の密度および膜厚の測定にはX線回折装置(リガク社製:ATX−G、X線源:Cu−Kα)を利用し、X線反射率法(XRR)により求めた。X線反射率パターンの臨界角(θc)より密度を、干渉周期(Δθ)より層の厚みを算出した。解析にはGlobalFit Ver.1.3.3(Rigaku社)を用いて算出した。
(中間層の密度D3の測定)
圧縮応力層を研磨、エッチング等で除去した基板を用意し、前記X線反射率法により中間層の密度D3を算出した。
(低密度層のH/(Na+K)モル比C1の測定)
ガラス表面に形成された改質層のNa/SiおよびK/Siモル比の測定にはX線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いた。XPS分析は、同装置に取り付けられているC60イオンスパッタ銃を用いて試料の表面汚染を除去した後に、実施した。
H/Siモル比の測定にはラザフォード後方散乱(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)−弾性反跳検出法(Elastic Recoil Detection Analysis:ERDA)を用いた。RBS−ERDA分析にてH/Siモル比を求める場合、有機物による表面汚染の影響を考慮する必要がある。ここでは、表面汚染有機物量を3×1015atoms/cm、表面汚染有機物の密度を10×1022atoms/cmと仮定した。
なお、ERDA分析中に経時的にHカウントが低下する現象が認められる場合は、これを考慮した補正が必要である。XPS分析により得られたNa/Siモル比およびK/Siモル比、RBS−ERDA分析により得られたH/Siモル比から、H/(Na+K)モル比を求めた。XPSおよびRBS−ERDA分析の分析条件は以下の通りである。
(XPS分析)
装置:PHYSICAL ELECTRONICS社製ESCA5500
X線源:Al Kα
パスエネルギー:93.9eV
エネルギーステップ:0.8eV/step
検出角:試料面の法線に対して15°
表面汚染除去に用いたスパッタ銃のイオン種:C60イオン
解析ソフト:MultiPak Ver.9.3.0.3
(RBS−ERDA分析)
装置:National Electrostatics Corporation製Pelletron 3SDH
入射イオン:He++
入射イオンのエネルギー:2.3MeV
RBS散乱角:160度
ERDA散乱角:30度
入射角:試料面の法線に対して75度
試料電流:2nA
照射量:10μC
(中間層のH/(Na+K)モル比C3の測定)
圧縮応力層を研磨、エッチング等で除去した基板を用意し、上述した低密度層のH/(Na+K)モル比C1の測定と同様にしてXPS分析およびRBS−ERDA分析を行い、中間層のH/(Na+K)モル比C3を算出する方法が望ましい。しかしながら、ここでは後述する、ガラス組成から算出する方法を用いてC3を求めた。ガラス組成が既知であり、かつ低密度層より深い領域におけるH濃度がERDA分析の検出下限以下(1モル%以下)であることを確認すれば、圧縮応力層を研磨、エッチング等で除去した基板を準備しなくとも、C3の値を容易に推定することができる。
<ガラス>
化学強化するガラスには、下記組成のソーダライムガラス及びアルミノシリケートガラスの2種類のガラスを用いた。
ソーダライムガラス(モル%で表示した組成):SiO 72.0%、Al 1.1%、NaO 12.6%、KO 0.2%、MgO 5.5%、CaO 8.6%
アルミノシリケートガラス(モル%で表示した組成):SiO 64.4%、Al 8.0%、NaO 12.5%、KO 4.0%、MgO 10.5%、CaO 0.1%、SrO 0.1%、BaO 0.1%、ZrO 0.5%
上記ガラスは、化学強化処理を行う前に、研磨したものを用いた。研磨条件は発泡ポリウレタンパッドにLP−66、含有研磨材粒子にガラス用研磨剤ルミノックス(平均粒径0.75〜1.25μm、比重1.05〜1.15g/cmの酸化セリウム)を用い、研磨レートを0.07〜0.10μm/分、加工圧力を約0.15kg/cmとし、片面50μm以上、両面で合計150μm除去した。
<実施例1>
ステンレススチール(SUS)製のカップに硝酸カリウム2568g、炭酸カリウム321g、硝酸ナトリウム111gを加え、マントルヒーターで450℃まで加熱して炭酸カリウム8mol%、Na濃度が10000重量ppmの溶融塩を調製した。調製した溶融塩を撹拌モーター、4枚プロペラ翼を用いて2時間撹拌し、全体を均一に混合させた。
50mm×50mm×0.7mmのアルミノシリケートガラスを、200℃〜400℃に予熱した後、450℃の溶融塩に2時間浸漬して化学強化処理を行った。強化処理した後、ガラスを50℃〜90℃のイオン交換水で2回洗浄し、室温のイオン交換水で流水洗浄し、60℃で2時間乾燥した。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3およびC1を算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
<実施例2、12>
SUS製のカップに硝酸カリウム402g、炭酸カリウム47.9gを加え、マントルヒーターで450℃まで加熱して炭酸カリウム8mol%の溶融塩を調製した。調製した溶融塩を撹拌モーター、4枚プロペラ翼を用いて2時間撹拌し、全体を均一に混合させた。
実施例1と同様にしてアルミノシリケートガラス(実施例2)又はソーダライムガラス(実施例12)を強化処理、洗浄及び乾燥した後、酸処理を以下の手順で行った。
1mol/L(1M)の塩酸をビーカーに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整を行った。化学強化したガラスを調製した塩酸中に5分間浸漬させることで酸処理を行い、その後イオン交換水で3回洗浄した後、60℃で2時間乾燥した。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3を算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
<実施例3>
実施例1と同様にしてアルミノシリケートガラスを強化処理、洗浄及び乾燥した後、実施例2と同様にして酸処理を行った。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3およびC1を算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
<実施例4、5>
SUS製のカップに硝酸カリウム2568g、炭酸カリウム321g、硝酸ナトリウム111gを加え、マントルヒーターで450℃まで加熱して炭酸カリウム8mol%、Na濃度が10000重量ppmの溶融塩を調製した。調製した溶融塩を撹拌モーター、4枚プロペラ翼を用いて2時間撹拌し、全体を均一に混合させた。
化学強化処理時間を0.5時間(実施例4)、1.0時間(実施例5)とした以外は実施例1と同様にして、アルミノシリケートガラスを強化処理、洗浄及び乾燥した。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3を算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
<実施例6、7>
SUS製のカップに硝酸カリウム385g、炭酸カリウム48g、硝酸ナトリウム17gを加え、マントルヒーターで450℃まで加熱して炭酸カリウム8mol%、Na濃度が10000重量ppmの溶融塩を調製した。調製した溶融塩を撹拌モーター、4枚プロペラ翼を用いて2時間撹拌し、全体を均一に混合させた。
化学強化処理温度を430℃(実施例6)、470℃(実施例7)とした以外は実施例1と同様にして、アルミノシリケートガラスを強化処理、洗浄及び乾燥した。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3を算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
<実施例8、9>
SUS製のカップに硝酸カリウム394g、炭酸カリウム48g及び硝酸ナトリウム8g(実施例8)、硝酸ナトリウム33g(実施例9)を加え、マントルヒーターで450℃まで加熱して炭酸カリウム8mol%、かつ、Na濃度がそれぞれ5000重量ppm(実施例8)、20000重量ppm(実施例9)の溶融塩を調製した。それ以外は実施例1と同様にして、アルミノシリケートガラスを強化処理、洗浄及び乾燥した。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3を算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
<実施例10、11>
実施例1と同様にしてアルミノシリケートガラスを強化処理、洗浄及び乾燥した後、酸処理を以下の手順で行った。
1mol/L(1M)のHNO(実施例10)、クエン酸(実施例11)をビーカーに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整を行った。化学強化したガラスを調製した塩酸中に5分間浸漬させることで酸処理を行い、その後イオン交換水で3回洗浄した後、60℃で2時間乾燥した。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3を算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
<比較例1、5>
化学強化処理をしない、研磨後のアルミノシリケートガラス(比較例1)、未研磨のソーダライムガラス(比較例5)の諸物性の測定を行い、D1/D3を算出した。ガラス基板の測定及び算出結果を表2に示す。ここで、低密度層の密度D1とはアルミノシリケートガラス最表面の密度であり、中間層の密度D3とは[圧縮応力層に挟まれる中間層/前記ガラス中心部に存在する(イオン交換されていない)中間層]の密度である。
<比較例2、6>
SUS製のカップに硝酸カリウム450gを加え、マントルヒーターで450℃まで加熱して炭酸カリウム及びNa濃度が共に0の溶融塩を調製した。それ以外は実施例1と同様にして、アルミノシリケートガラス(比較例2)又はソーダライムガラス(比較例6)を強化処理、洗浄及び乾燥した。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3を算出した。また、比較例2についてはC1も算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
<比較例3>
比較例2と同様にしてアルミノシリケートガラスを強化処理、洗浄及び乾燥した後、酸処理を以下の手順で行った。
1mol/L(1M)の塩酸をビーカーに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整を行った。化学強化したガラスを調製した塩酸中に5分間浸漬させることで酸処理を行い、その後イオン交換水で数回洗浄した後、60℃で2時間乾燥した。
得られたガラスの透過率、低密度層の密度D1の測定を行い、D1/D3を算出した。
<比較例4>
SUS製のカップに硝酸カリウム402g、炭酸カリウム47.9gを加え、マントルヒーターで450℃まで加熱して炭酸カリウム8mol%の溶融塩を調製した。調製した溶融塩を撹拌モーター、4枚プロペラ翼を用いて2時間撹拌し、全体を均一に混合させた。
実施例1と同様にしてアルミノシリケートガラスを強化処理、洗浄及び乾燥した。
得られたガラスの諸物性の測定を行い、D1/D3およびC1を算出した。測定結果及び算出結果を表2に示す。
実施例1〜12及び比較例1〜6のガラス基板又は化学強化ガラスの処理条件を表1に、各種評価結果を表2に示す。
なお、表2に示す実施例1、3および比較例2、4のC3の値は、XPSおよびRBS−ERDA分析によって得られた実測値ではなく、以下に説明する方法で求めた。
実施例における<ガラス>の項で記載したとおり、本実施例及び比較例で用いたアルミノシリケートガラスのモル%で表示した組成は、SiO 64.4%、Al 8.0%、NaO 12.5%、KO 4.0%、MgO 10.5%、CaO 0.1%、SrO 0.1%、BaO 0.1%、ZrO 0.5%である。すなわち、Si 21.1%、Al 5.2%、Na 8.2%、K 2.6%、Mg 3.4%、Ca 0.03%、Sr 0.03%、Ba 0.03%、Zr 0.2%、O 59.2%である。
これより、中間層の(Na+K)/Siモル比は0.51と見積もることができる。
また、例として、図2にRBS−ERDA分析によって得られた実施例1の表面から500nmまでの深さ領域のHおよびSiプロファイルを示す。RBS−ERDA分析によって得られたプロファイルの横軸を深さで表記するためには、密度あるいは膜厚を仮定する必要がある。ここでは、密度を7.97×1022atoms/cmと仮定した。低密度層より深い領域のHは検出下限以下(1モル%以下)である。
文献(S.Ilievski et al.,Glastech.Ber.Glass Sci.Technol.,73(2000)39.)に示される通り、一般的なガラスのバルク中のH濃度は1モル%以下である。従って、中間層のH濃度も1モル%以下と考えられる。上記の通り、ガラス中のSiは21.1モル%であるから、H/Siモル比は0.05以下と見積もることができる。
以上より、実施例1、3および比較例2、4における中間層のH/(Na+K)モル比は0.1以下と言える。
Figure 0006428616
Figure 0006428616
表1及び2に示す結果から、実施例の密度比はいずれも1.0未満であることから、化学強化ガラス表面が低密度化した低密度層を有することが分かった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2013年7月19日出願の日本特許出願(特願2013−151115)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明によれば、化学強化ガラスに対して、別の加工処理工程を要することなく低反射処理を施すことができる。さらには、該低反射処理が両面に施された低反射化学強化ガラスを大面積で得ることができる。その結果、低反射化学強化ガラスの生産が低コストで可能となり、高い生産性の実現が可能となる。
1 低密度層
2 圧縮応力層
3 中間層

Claims (11)

  1. 硝酸カリウムを含む溶融塩中にガラスを浸漬することによって、前記ガラス中のNaと前記溶融塩中のKとをイオン交換する化学強化ガラスの製造方法であって、
    前記溶融塩中にKCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO及びNaPO らなる群より選ばれる少なくとも1の塩を、前記溶融塩を使用する温度における飽和溶解度以下となる量添加する工程並びに前記イオン交換の後にガラスを洗浄する工程を含み、
    さらに、前記溶融塩におけるNa濃度を500重量ppm以上にする工程及び前記洗浄の後にガラスを酸処理する工程の少なくともいずれか一方の工程を含む、化学強化ガラスの製造方法。
  2. 前記溶融塩におけるNa濃度を500重量ppm以上にする工程及び前記洗浄の後にガラスを酸処理する工程を共に含む、請求項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  3. 前記溶融塩におけるNa濃度を500重量ppm以上にする工程が、前記溶融塩にNa塩を添加する工程を含む、請求項1又は2に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  4. 前記溶融塩は、硝酸カリウムの含有量が50質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  5. 前記イオン交換を、350℃以上前記ガラスの歪点以下で行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  6. 前記溶融塩にNa塩を添加して、前記溶融塩のNa濃度を500重量ppm以上に調整する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  7. 前記Na塩はNaNO である、請求項6に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  8. 前記溶融塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムの少なくとも1の物質を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  9. 前記酸処理の工程は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸及びクエン酸から選ばれる少なくとも1つの酸を用いる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  10. 前記酸処理の工程は100℃以下で行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  11. 前記ガラスは、モル%で表示した組成で、下記(i)〜(iv)のいずれかである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
    (i)SiO を50〜80%、Al を2〜25%、Li Oを0〜10%、Na Oを0〜18%、K Oを0〜10%、MgOを0〜15%、CaOを0〜5%およびZrO を0〜5%を含むガラス
    (ii)SiO を50〜74%、Al を1〜10%、Na Oを6〜14%、K Oを3〜11%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%およびZrO を0〜5%含有し、SiO およびAl の含有量の合計が75%以下、Na OおよびK Oの含有量の合計が12〜25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス
    (iii)SiO を68〜80%、Al を4〜10%、Na Oを5〜15%、K Oを0〜1%、MgOを4〜15%およびZrO を0〜1%含有するガラス
    (iv)SiO を67〜75%、Al を0〜4%、Na Oを7〜15%、K Oを1〜9%、MgOを6〜14%およびZrO を0〜1.5%含有し、SiO およびAl の含有量の合計が71〜75%、Na OおよびK Oの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス
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