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JP6437367B2 - モリブデン精鉱からのレニウムの回収方法 - Google Patents
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モリブデン精鉱からのレニウムの回収方法 Download PDF

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Description

本発明はモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法に関する。
レニウムは、銅鉱に付随して産出される輝水鉛鉱(molybdenite,MoS2)等のモリブデン鉱に含まれており、モリブデン鉱からのモリブデン回収の際に、レニウムも揮発させて回収することが従来から行われている。特に、モリブデン鉱中に含まれるレニウムの酸化物(特にRe27)は揮発性であるため、浮遊選鉱法により銅とモリブデンを選別して得られたモリブデン精鉱を酸化焙焼処理し、酸化焙焼処理によって揮発した酸化レニウム(Re27)を回収する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
モリブデン鉱は、銅の硫化物とともに産出されることが多いために、浮遊選鉱法により銅とモリブデンを選別した後、通常回収したモリブデン精鉱中には数%の銅の硫化物が混在している。銅は鉄鋼製品の性状を低下させるため、塩化鉄法によってモリブデン精鉱から予め銅を除去することが一般的に行われている。
例えば、米国特許第3674424号明細書(特許文献1)には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物を含有する水溶液を浸出液として使用し、モリブデン精鉱から銅を除去して純度を高める方法が記載されている。
特開昭58−189343号公報(特許文献2)には、モリブデン鉱選鉱物内に存在する不純物として含まれる銅を、塩化第二鉄を用いて浸出する方法が記載されている。
米国特許第3674424号明細書 特開昭58−189343号公報
伊藤尚、東敬、最近の研究 レニウムの回収、日本金属学会会報、第4巻、p.751−760
しかしながら、特許文献1及び2に記載されるような塩化鉄法を用いた場合には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物を含有する塩素ガスや高圧ガスを使用した高温処理を行うために処理に危険を伴い、コストや安全面での課題が残る。更に、特許文献1及び2には、モリブデン精鉱から銅を除去する具体的方法についての記載があるのみで、その後の焙焼処理により揮発して得られる酸化レニウムの回収に関する知見は一切されていない。
一方、非特許文献1には、酸化焙焼後のレニウムの回収方法の概要については記載されているが、レニウムの揮発率を向上させるための具体的方策については、記載も示唆もされていない。
上記課題を鑑み、本発明は、従来に比べてより生産性が高く安全な方法で、酸化レニウムの揮発率を向上させることが可能なモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法を提供する。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、酸性塩化浴、即ち塩化物イオンを含む酸性水溶液を用いてモリブデン精鉱中の銅とカルシウムとを除去する前処理を施し、前処理を施したモリブデン精鉱に対して、酸化焙焼処理をすることで、より生産性が高く安全な方法を用いて、酸化レニウムの揮発率を向上させることが可能となることを見いだした。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、塩化物イオンを含む酸性水溶液を用いてモリブデン精鉱に含まれる銅及びカルシウムを浸出する前処理工程と、前処理工程で得られたモリブデン精鉱処理物を酸化焙焼する酸化焙焼工程と、酸化焙焼工程において揮発した酸化レニウムを回収する工程とを含むモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法が提供される。
本発明に係るモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法は一実施態様において、塩化物イオンを含む酸性水溶液が、銅イオン又は鉄イオンの少なくともいずれかを含む酸性水溶液であり、前処理工程が、酸性水溶液に酸化剤を供給しながらモリブデン精鉱中の銅及びカルシウムを浸出し、次いで固液分離により浸出残渣と浸出後液を得ることを含む。
本発明に係るモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法は別の一実施態様において、前処理工程が、塩化物イオンを100〜200g/L、銅イオンを1〜30g/L、鉄イオンを1〜10g/L含有する50〜100℃の酸性水溶液に酸素含有気体を供給しながらモリブデン精鉱を接触させてモリブデン精鉱中の銅及びカルシウムを浸出する工程と、次いで固液分離により浸出後液と浸出残渣を得ることを含む。
本発明に係るモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法は更に別の一実施態様において、前処理工程が、塩化物イオンを100〜200g/L、銅イオンを1〜30g/L、鉄イオンを1〜20g/L含有する50〜100℃の酸性水溶液をモリブデン精鉱に接触させて銅及びカルシウムを浸出する工程と、次いで固液分離により浸出後液と浸出残渣を得る工程を含み、銅及びカルシウムの浸出終点における酸性水溶液の酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を400〜480mVとすることを含む。
本発明に係るモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法は更に別の一実施態様において、モリブデン精鉱が、銅を0.5〜10質量%、カルシウムを0.15〜5.0質量%、鉄を0.3〜10質量%、モリブデンを20〜60質量%含有する。
本発明によれば、従来に比べてより生産性が高く安全な方法で、モリブデン精鉱の酸化焙焼処理で得られる酸化レニウムの揮発率を向上させることが可能なモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法が得られる。
モリブデン精鉱の前処理の有無に対するRe揮発率の影響を示すグラフである。 焙焼対象処理物の原料Cu品位とRe揮発率との関係を表すグラフである。 焙焼対象処理物の原料Fe品位とRe揮発率との関係を表すグラフである。 焙焼対象処理物の原料Ca品位とRe揮発率との関係を表すグラフである。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
本発明の実施の形態に係るモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法は、(1)モリブデン精鉱に含まれる銅及びカルシウムを浸出する前処理工程と、(2)前処理工程で得られたモリブデン精鉱処理物を酸化焙焼する酸化焙焼工程と、(3)酸化焙焼工程において揮発した酸化レニウムを回収する工程とを含む。
本実施形態において処理対象とするモリブデン精鉱としては、レニウムを含むモリブデン精鉱であれば特に制限されず、例えば輝水鉛鉱、モリブデン鉛鉱、パウエライト、及び鉄水鉛鉱から選択される一種以上を含有する鉱石、とりわけ輝水鉛鉱を含有する鉱石を浮遊選鉱した後のモリブデン精鉱が好適に用いられる。
モリブデン精鉱中の銅は硫化物の形態、例えば輝銅鉱及び/又は黄銅鉱の形態で存在してもよい。モリブデン精鉱中の成分組成は浮選条件等によっても異なるが、一実施形態においてはモリブデン精鉱がCuを0.5〜10質量%含有し、典型的な一実施形態においてCuを1〜10質量%含有し、より典型的な一実施形態においてCuを2〜5質量%含有する。モリブデン精鉱は一実施形態においてMoを20質量%以上含有し、典型的にはMoを20〜60質量%含有し、より典型的にはMoを30〜60質量%含有し、更に典型的な一実施形態においてMoを40〜50質量%含有する。
更に、モリブデン精鉱は一実施形態においてCaを0.15〜5.0質量%含有し、より典型的にはCaを0.3〜2.0質量%含有する。更に、モリブデン精鉱は一実施形態においてFeを0.3〜10質量%含有する。モリブデン精鉱におけるRe含有量は特に限定されないが、典型的には200〜700質量ppm含有する。
(1)前処理工程
本実施形態に係る前処理工程ではまず、塩化物イオンを含む酸性水溶液(以下、「浸出液」ともいう。)を用いて、モリブデン精鉱中に含まれる銅及びカルシウムを浸出させる浸出工程と、浸出工程で得られた浸出反応液を固液分離する工程を含む。
酸性水溶液への塩化物イオンの供給源としては特に制限はなく、例えば塩化水素、塩酸及び塩化金属等が挙げられる。経済性や安全性を考慮すれば塩化金属の形態で供給するのが好ましい。塩化金属としては、例えば塩化銅(塩化第一銅、塩化第二銅)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)の塩化物、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)の塩化物が挙げられ、経済性や入手容易性の観点から、塩化ナトリウムが好ましい。また、銅イオンの供給源としても利用できることから、塩化銅を利用することも好ましい。
酸性水溶液は、塩化物イオンに加えて更に銅イオン又は鉄イオンの少なくともいずれかを含むことが好ましい。銅イオン及び鉄イオンは、塩の形態で供給するのが通常であり、例えばハロゲン化塩の形態で供給することができる。塩化物イオンの供給源としても利用できる観点から銅イオンは塩化銅、鉄イオンは塩化鉄として供給されるのが好ましい。塩化銅及び塩化鉄としては酸化力の観点から塩化第二銅(CuCl2)及び塩化第二鉄(FeCl3)を使用するのがそれぞれ望ましいが、塩化第一銅(CuCl)及び塩化第一鉄(FeCl2)を使用しても浸出液に酸素含有気体を供給することで、塩化第二銅(CuCl2)及び塩化第二鉄(FeCl3)にそれぞれ酸化されるため、大差はない。
モリブデン精鉱からその後の焙焼処理において効率良く酸化レニウムを揮発させて回収するためには、浸出工程で使用する浸出液は酸性とすべきである。特に、塩化物イオンの供給源としても利用できることから、塩酸酸性とするのが好ましい。浸出液のpHは、浸出した銅及びカルシウムの溶解度を確保する理由から、ガラス電極によって測定されるpHを0〜3程度とするのが好ましく、0.2〜2.5程度とするのがより好ましい。本実施形態においては、前処理工程に使用される浸出液として、塩酸、塩化第二銅、塩化第二鉄、及び塩化ナトリウムの混合液を使用することができる。
酸性水溶液の具体例としては、塩化物イオンを100〜200g/L、銅イオンを1〜30g/L、鉄イオンを1〜10g/L含有する50〜100℃の酸性水溶液を用いることが好ましい。すなわち、浸出工程における浸出液として酸性塩化浴を使用することで、モリブデン精鉱中の銅だけでなくカルシウムをもより効率的に除去できる。その結果、モリブデン精鉱の酸化焙焼処理で得られる酸化レニウムの揮発率を向上させることができる。更に銅イオンを浸出液中に存在させておくことで、銅の浸出反応も促進される。
浸出液中の塩化物イオンの濃度は、銅及びカルシウムの溶解反応を高い効率で実現する観点から、100g/L以上であることが好ましく、120g/L以上であることがより好ましく、140g/L以上であることが更により好ましい。しかしながら、経済性を考慮すると、過度に高濃度にする必要はなく、浸出液中の塩化物イオンの濃度は一般には200g/L以下であり、好ましくは180g/L以下である。
浸出液中の銅イオンの濃度は、銅及びカルシウム浸出反応の促進の観点から、1g/L以上であることが好ましく、5g/L以上であることがより好ましい。しかしながら、経済性を考慮すると、過度に高濃度にする必要はなく、浸出液中の銅イオンの濃度は一般には30g/L以下であり、好ましくは20g/L以下である。
鉄イオンは銅及びカルシウム浸出の促進に好適な成分であり、銅の溶解反応を高い効率で実現する観点から、1g/L以上であることが好ましいが、20g/Lを超えるとMoの浸出率が顕著に増加して逸損することから、浸出液中の鉄イオン濃度は20g/L以下とするべきであり、10g/L以下であることが好ましく、8g/L以下であることがより好ましく、6g/L以下とすることがさらに好ましい。
Moの浸出を防止するという観点からは、浸出液中の銅イオンと鉄イオンの合計が25g/L以下であることが好ましく、20g/L以下であることがより好ましい。
なお、上記の塩化物イオン、銅イオン及び鉄イオンの濃度は、酸性水溶液をモリブデン精鉱に接触させる前の浸出液中の濃度を指す。
浸出液とモリブデン精鉱の接触方法としては特に制限はなく、噴霧や浸漬などの方法があるが、反応効率の観点から、浸出液中にモリブデン精鉱を浸漬し、撹拌する方法が好ましい。
上記浸出処理においては、酸素含有気体を浸出液に供給することにより銅及びカルシウムの浸出速度を高めることが可能となる。酸素含有気体の流量を増大させることで、銅及びカルシウムの浸出速度が増大する傾向にある。これにより、モリブデンが浸出するよりも先に銅及びカルシウムの浸出が進行するため、モリブデンの逸損を抑えることが可能となる。酸素含有気体としては、特に制限はないが、例えば空気、酸素、酸素と不活性ガス(窒素や希ガスなど)の混合ガスが挙げられる。経済性の観点からは空気が好ましい。
酸素含有気体は上述した効果を有効に発揮させるという観点から前記浸出液1L当たり0.02slpm以上の流量で供給することが好ましく、0.04slpm以上の流量で供給することがより好ましく、0.08slpm以上の流量で供給することが更により好ましい。ただし、過剰に供給した場合は、気泡中への液の蒸発で奪われる蒸発熱を補償するために電力などのエネルギーを多く消費し、また、精鉱粒子が表面に塗された気泡の層(フロス)が大量に発生して反応槽からあふれるため、前記浸出液1L当たり0.5slpm以下の流量で供給することが好ましく、前記浸出液1L当たり0.25slpm以下の流量で供給することがより好ましく、前記浸出液1L当たり0.15slpm以下の流量で供給することが更により好ましい。
或いは、浸出工程は、浸出終点における浸出液の酸化還元電位(vs Ag/AgCl)が400〜480mVの範囲に入るようにして行うこともまた、Moの溶出を抑えながらCu及びCaをより効率的に浸出させる観点で有効である。酸化還元電位が480mVを超えるとMoの溶出が無視できなくなる一方で、酸化還元電位が400mV未満だと銅及びカルシウムの浸出速度が極端に遅くなってしまい工業的ではない。浸出終点における浸出液の酸化還元電位は好ましくは460mV以下であり、より好ましくは450mV以下であり、更により好ましくは440mV以下であり、更に好ましくは430mVであり、最も好ましくは420mV以下である。
浸出終点における浸出液の酸化還元電位は好ましくは410mV以上である。浸出液の酸化還元電位は、酸素含有ガスを吹き込む等の特別な操作を行わない限り浸出時間の経過に伴って徐々に低下することから、特別な操作を行わない場合に浸出終点における酸化還元電位をこのような範囲に制御するためには、浸出初期段階で酸化還元電位が十分に高くなるように液組成及びパルプ濃度を設定することが重要となる。
酸化還元電位は浸出終点のみならず、浸出最中においても上記の範囲に維持されることが望ましい。安定した浸出効果を得るためである。具体的には、浸出開始時点から2時間経過後から浸出終点まで上述した範囲の酸化還元電位に維持することが好ましく、浸出開始時点から1時間経過後から浸出終点まで上述した範囲の酸化還元電位に維持することがより好ましい。
浸出開始時点というのは浸出液とモリブデン精鉱の接触が開始された時点であり、浸出終点というのは浸出液をモリブデン精鉱から固液分離した時点をいう。
前処理工程に使用する浸出液の温度は浸出効率や装置の材質の観点から、50℃以上とするのが好ましく、60℃以上とするのがより好ましく、70℃以上とするのが更により好ましいが、高すぎると浸出液の蒸発や加熱コストの上昇あるので、100℃以下とするのが好ましく、90℃以下とするのがより好ましく、85℃以下とするのがより好ましい。浸出効率を高めることを目的として前処理工程を加圧下で実施することも可能であるが、大気圧下で十分である。すなわち高圧での浸出工程を行うための耐圧容器を必要とせず、より簡易な装置を用いることができる。銅及びカルシウム浸出を促進するため、処理対象となるモリブデン精鉱を予め粉砕・摩鉱しておくことが好ましい。
前処理工程では、使用する浸出液に対するモリブデン精鉱の量を大きくして実施する方が浸出コストの低減の観点から好ましい。そのため、本発明の一実施形態においては、50g/L以上のパルプ濃度で浸出工程を行うことができ、本発明の別の一実施形態においては、150g/L以上のパルプ濃度で浸出工程を行うことができ、本発明の更に別の一実施形態においては、300g/L以上のパルプ濃度で浸出工程を行うことができる。一方で、浸出速度を高めるという観点からは使用する浸出液に対するモリブデン精鉱の量は小さい方が好ましいことから、本発明の一実施形態においては、800g/L以下のパルプ濃度で浸出工程を行うことができ、本発明の別の一実施形態においては、600g/L以下のパルプ濃度で浸出工程を行うことができ、本発明の更に別の一実施形態においては、500g/L以下のパルプ濃度で浸出工程を行うことができる。ここで、パルプ濃度とは使用する浸出液の体積(L)に対するモリブデン精鉱(乾燥重量(g))の比である。
銅及びカルシウムの浸出工程は一段階で実施することもできるが、モリブデン精鉱中の銅の浸出を十分に行うために浸出工程を複数段階で実施することも可能である。複数段階を利用した浸出工程は、具体的には、一段目における浸出操作を終了後に、フィルタープレスやシックナーなどによって固液分離し、浸出残渣に対して次段の銅浸出操作を行うことにより実施することができる。
本発明によれば、モリブデンの浸出を抑制しながらも、銅及びカルシウムを浸出することが可能である。例えば、本発明の一実施形態においては、浸出後液中のモリブデン濃度を0.001g/L以下に抑制しながら、銅の浸出率70%以上を達成することができる。本発明の別の一実施形態においては、浸出後液中のモリブデン濃度を0.005g/L以下に抑制しながら、銅の浸出率90%以上を達成することができ、本発明の更に別の一実施形態においては、浸出後液中のモリブデン濃度を0.005g/L以下に抑制しながら、銅の浸出率95%以上を達成することができる。
また、浸出工程は、浸出残渣中の銅品位が2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下とし、典型的には0.3〜1.2質量%程度になるまで実施することが好ましい。これにより、後述する酸化焙焼工程におけるReの揮発率を85%以上に高めることができる。
或いは、浸出工程は、浸出残渣中のカルシウム品位が1500ppm以下、好ましくは500ppm以下になるまで実施することが好ましい。なお、カルシウム品位の下限は特に制限されないが、浸出処理時間と生産性との観点から200ppm以上とすることが好ましい。これにより、後述する酸化焙焼工程におけるReの揮発率を80%以上、より典型的には85%以上に高めることができる。
或いは、浸出工程は、浸出残渣中の鉄品位が10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3.6質量%以下、典型的には2.0〜3.8質量%、より好ましくは2.5〜3.5質量%になるまで実施することが好ましい。
浸出に要する時間は、原料であるモリブデン精鉱中の銅品位にもよるが、浸出残渣中の銅品位が0.5質量%となるまでに要する時間は、例えば4〜10時間くらいであり、典型的には5〜6時間くらいである。
(2)酸化焙焼工程
次に、前処理工程で固液分離により得られた浸出残渣(モリブデン精鉱処理物)を酸化焙焼する。酸化焙焼処理では、処理物の処理温度を500〜600℃、より典型的には550℃前後とすることが好ましい。酸化焙焼処理には、空気などの酸素含有気体を焙焼炉に供給する。典型的には2.0〜8.0(L/g−MoS2)、より典型的には、2.5〜6.0(L/g−MoS2)となるように酸素含有気体を供給することが好ましい。焙焼時間は特に制限されないが、例えば1.5〜6時間程度とすることができる。
(3)酸化レニウム回収工程
焙焼工程で揮発した酸化レニウムは、ダストとして、もしくは排ガス洗浄における洗浄水に溶解し、溶解液(以下溶解液を「廃酸」とも表記する)として回収される。
(レニウム回収)
ダストもしくは廃酸からのレニウムの回収は周知の技術にて回収できる。例えば、ダストを水や酸により溶解し得た溶解液、もしくは廃酸を強塩基性樹脂によりReを分離し、その後アンモニア性溶液にて溶離し過レニウム酸アンモニウム(APR)として回収できる。
<その他>
(鉄酸化)
浸出工程で得られた浸出液には、浸出液に元々含まれていた鉄の他、モリブデン精鉱中の鉄の一部が溶解した鉄が含まれている。これらの鉄イオンの多くはFe(II)と考えられる。これを酸化することでFe(III)とし、再度浸出に使用することができる。またpHを調整することで、Fe(III)の一部を沈殿し、浸出液中の鉄濃度をコントロールすることができる。酸化の条件としては20〜70℃、pH1.5〜3.0でエアレーションすることがコストと反応速度の面で最も好ましい。温度とpHは高ければ高いほど、反応速度が速い。
(銅回収)
浸出工程で得られた浸出後液から銅を回収することができる。銅の回収方法としては特に制限はないが、例えば溶媒抽出、イオン交換、卑な金属との置換析出及び電解採取などを利用することができる。浸出後液中の銅は1価及び2価の状態が混在しているが、溶媒抽出やイオン交換を円滑に行うために、全部が2価の銅イオンとなるように予め酸化しておくことが好ましい。酸化の方法は特に制限はないが空気や酸素を浸出後液中に吹き込む方法が簡便である。
本発明に係るモリブデン精鉱の処理方法の一実施形態においては、浸出後液中の銅を、溶媒抽出及び逆抽出を経て、電解採取によりカソード上に電気銅として回収する工程を更に含む。当該工程自体は一般にSX−EW(Solvent Extraction and Electro-Winning)法と呼ばれている方法であり、当業者にとって周知である。
また、溶媒抽出前に、浸出後液に空気などの酸素含有気体を吹き込んで液中の銅を酸化する工程を経ることもできる。これにより、銅を溶媒抽出後に逆抽出(ストリップ)して直接電解採取することを可能にするという利点が得られる。酸化工程を経ない場合、強塩化物浴では一価の銅が高濃度で存在するため電解採取の際にデンドライト銅として析出する。デンドライト銅は金属粉末として電解槽に沈殿する。カソードに板状銅として回収する方が圧倒的に運搬等の操作性の面で長所が多い。更に、酸化工程後は固液分離することもできる。固液分離は浸出液中に鉄が含まれている場合に、酸化残渣に移行するため、浸出
後液中の銅純度を高める上で有利である。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
(実施例1:前処理の有無による揮発率向上の影響)
輝水鉛鉱を含む鉱石から浮遊選鉱により選別されたモリブデン精鉱を粉砕したものを用意した。モリブデン精鉱は、酸溶解後にICP発光分光分析法(ICP−OES)で分析したところ、Mo:45質量%、Cu:3.6質量%、Fe:4.5質量%、S:37質量%、Re:350ppm、Ca:3700ppmの組成を有していた。全塩化物イオン180g/L、Cuイオン18g/L、Feイオン2g/L、塩酸7g/Lのイオン組成を有し、pHが0.75となるように、塩酸、塩化第二鉄、塩化第二銅、塩化ナトリウムを混合した浸出液(酸性水溶液)を調整し、この浸出液4Lをホットスターラーで75℃に加熱後、当該モリブデン精鉱1520gを投入し、浸出液への空気吹き込み(0.37slpm)と撹拌を継続しながら浸出試験を実施し、固液分離を行って浸出後液及び浸出残渣を得た。なお、浸出液及び残渣中の金属の分析は、ICP発光分光分析法で行った。イオン濃度は、浸出液の成分が完全に電離していると仮定して算出した。
固液分離によって得られた浸出残渣をICP発光分光分析法で分析したところ、Mo:51質量%、Cu:0.45〜0.47質量%、Fe:2.9〜3.0質量%、S:40質量%、Re:380ppm、Si:15000ppm、Ca:100ppm未満〜1000ppmであった。表1に浸出残渣の組成を示す(表1中、従来例1〜3は浸出処理を行わないモリブデン精鉱(生鉱)の組成を示す)。
Figure 0006437367
表1に示す浸出残渣に対して、表2に示す条件で焙焼時間とガス速度を変化させながら酸化焙焼処理を行った。各焙焼時間に対する酸化焙焼処理で得られた酸化レニウムの揮発率(Re揮発率[%])の関係を図1に示す。なお、比較のため、上記の前処理(浸出・固液分離)を行わないモリブデン精鉱も同様に、焙焼時間とガス速度を変化させながら酸化焙焼処理を行ってRe揮発率を比較した。Re揮発率と酸化焙焼処理で得られた焙焼残渣の残渣率の評価結果を表2に示す。
Re揮発率の評価は、焙焼時にSiが揮発しないものとし、以下の式(1)、(2)に示す計算式にて算出した。
Re揮発率(%)=100×(1−(残渣Re品位(ppm)×残渣率(%)/原料Re品位(ppm)×100))・・・(1)
残渣率(%)=100×(原料Si品位(ppm)/残渣Si品位(ppm))・・・(2)
Figure 0006437367
図1に示すように、焙焼処理前に、本発明に係るモリブデン精鉱から銅及びカルシウムを除去するための前処理を行うことによって(本発明例1〜3)、前処理を行わない従来例1〜3に比べていずれも10%程度、レニウム揮発率が向上していることが分かる。
(実施例2:前処理で低減されるCu、Ca、Fe品位に対するRe揮発率の影響)
実施例1と同様のモリブデン精鉱に対して、酸性浸出液1として実施例1と同様の浸出液を用いて、酸性浸出液2としてモリブデン精鉱中のCaを除去するために塩酸を浸出液として用いて浸出処理を行い、固液分離後、表3に示す組成の浸出残渣を得た。浸出残渣に対し、表4に示す条件で酸化焙焼処理を行って酸化レニウムを回収し、Re揮発率を算出した。比較のため、上記の前処理(浸出・固液分離)を行わないモリブデン精鉱も同様に酸化焙焼処理を行って酸化レニウムを回収し、Re揮発率と焙焼残渣の残渣率を算出した。
Figure 0006437367
Figure 0006437367
図2に示すように、前処理を行わないモリブデン精鉱を酸化焙焼処理した場合にはRe揮発率が80%を下回っていたのに対し、酸性浸出液2によって脱Ca処理した場合はRe揮発率が80%を超えた。更に、酸性浸出液1によって脱銅・脱Ca処理した場合には、Re揮発率を最大で89.6%まで向上させることができた。また、図2〜図4より、酸化焙焼対象処理物のCu、Fe、Ca品位を調整することでRe揮発率が向上できることがわかる。これは、前処理後のモリブデン精鉱処理物が、前処理前のモリブデン精鉱に比べてCa、Cu品位が低減されているため、酸化焙焼処理において、処理物中のCa、Cuと反応してCa(ReO42、Cu(ReO42等の形態で揮発しなかったためと考えられる。
また、本実施形態に係る前処理を行ったモリブデン精鉱を酸化焙焼することによって、焙焼後に得られる残渣中の残渣S品位をも低減することができる。これにより、焙焼処理残渣中の硫黄濃度を低減することができるため、回収される三酸化モリブデンの純度をより向上可能であることも分かる。

Claims (3)

  1. 塩化物イオンを100〜200g/L、銅イオンを1〜30g/L、鉄イオンを1〜10g/L含有する50〜100℃の酸性水溶液に酸素含有気体を供給しながら前記モリブデン精鉱を接触させてモリブデン精鉱に含まれる銅及びカルシウムを浸出する工程と、固液分離により浸出後液と浸出残渣を得る工程を含む前処理工程と、
    前記前処理工程で得られたモリブデン精鉱処理物を酸化焙焼する酸化焙焼工程と、
    前記酸化焙焼工程において揮発した酸化レニウムを回収する工程と
    を含むモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法。
  2. 及びカルシウムの浸出終点における前記酸性水溶液の酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を400〜480mVとすることを含む請求項1に記載のモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法。
  3. 前記モリブデン精鉱が、銅を0.5〜10質量%、カルシウムを0.15〜5質量%、鉄を0.3〜10質量%、モリブデンを20〜60質量%含有する請求項1又は2に記載のモリブデン精鉱からのレニウムの回収方法。
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