以下、本発明の一実施形態に係る高周波用窓部材を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の高周波用窓部材1は、例えば半導体製造装置やFPD製造装置等において、チャンバ内にプラズマを生成するための高周波を透過する窓部材として用いられる。また、高周波用窓部材1は内部に流路を備えており、自身の冷却または加熱のための熱交換装置としても機能する。
半導体製造装置は、半導体ウエハに各種の処理を行なうことによって、半導体デバイスを製造するための装置である。FPD製造装置は、ガラス基板に各種の処理を行なうことによって、FPDを製造する装置である。本実施形態においては、半導体製造装置およびFPD製造装置として、半導体ウエハやガラス基板にエッチング処理や成膜処理を施すためのプラズマ処理装置2を例として説明する。
本実施形態のプラズマ処理装置2は、図1に示すように、半導体ウェハまたはガラス基板などの対象物3を収容する反応室4が内部に形成されたチャンバ5と、反応室4内で対象物3を吸着する静電チャックなどのチャック6と、反応室4にガスを供給する供給口7と、反応室4からガスを排気する排気口8と、チャンバ5上に位置するとともに反応室4内に高周波電圧を印加するコイル9と、コイル9に高周波電圧を印加する電源10とを備えている。
このプラズマ処理装置2は、反応室4内に供給口7からガスを供給した後、コイル9が反応室4内に電界を生じさせることによって、反応室4内にプラズマを発生させる。このプラズマによって、対象物3にエッチングまたは成膜などを行なう。
プラズマ処理装置2のチャンバ5は、対象物3の上方に位置するとともにコイル9を支持する高周波用窓部材1を有する。この高周波用窓部材1は、コイル9が発生させた高周波電圧が透過する窓部材として機能する。
プラズマ処理装置2がプラズマを発生させる際、コイル9には高周波電圧が印加される。この際、高周波用窓部材1は、この高周波電圧によって誘導加熱される。高周波用窓部材1を通過する高周波電圧の強度は、コイル9の形状に応じて空間的に不均一となっており、高周波用窓部材1の加熱の程度も、この高周波電圧の強度のばらつきに応じて部分的にばらつき易い。高周波用窓部材1の加熱の程度の部分的なばらつきによって、高周波用窓部材1の各部分における温度が不均一になった場合、反応室4内のプラズマ強度も空間的に不均一となりやすい。本実施形態では、誘電体窓部材として、水またはオイル等の冷媒や温媒等の流体が通る流路16を内部に備えた高周波用窓部材1を用いることで、高周波用窓部材1の温度分布を低減して、反応室4内におけるプラズマ強度の均一性を比較的高くしている。
本実施形態の高周波用窓部材1は、第1主面11を有する第1基板12と、第2主面13を有する第2基板14と、第1主面11および第2主面13が接合され、第1基板12および第2基板14の間に位置するとともに第1主面11および第2主面13に平行な方向に沿った流路16とを備えてなり、第1主面11および第2主面12を接合する接合部材15を備えており、第1基板12、第2基板14、および接合部材15はいずれもアルミナ質焼結体からなり、アルミナ質焼結体における粒界相内において、アルミナ結晶との境界領域に比べて、この境界領域以外の内部領域の方が、Naの酸化物がより多い。
このようなアルミナ質焼結体からなる第1基板12、第2基板14および接合部材15は、アルミナ原料に不可避的に含まれるNaを含むものであり、Naの除去等の為のコストを必要としないので、第1基板12および第2基板14は比較的安価であり、第1基板12、第2基板14および接合部材15を備える高周波用窓部材1も、比較的安価に構成することができる。また、第1基板12、第2基板14、さらには第1基板12と第2基板14とを接合する接合部材15が、同様の材質で構成されているので、第1基板12、第2基板14および接合部材15の線膨張係数が近くなり、加熱および冷却が繰り返されても、第1基板12と第2基板14との間で作用する熱応力が抑制されるので、第1基板12と第2基板14との剥離を低減することができる。第1基板12、第2基板14、および接合部材15は、いずれも誘電正接の値が比較的低く、従来の、例えばシリコン系の接着剤層等を接合部材に用いた場合等と比べて、高周波用窓部材1全体での高周波の透過性が高い。また、高周波用窓部材1の温度を調整することができる流体を流すことができる流路を備えており、高周波用窓部材1の温度の変動を抑制し、高周波用窓部材1を透過する高周波で生成されるプラズマの強度分布を抑制することができる。このような高周波用窓部材1は、比較的安価でありながら、高周波の透過性が比較的高い。また高周波用窓部材1を備えるプラズマ処理装置2は、少ないエネルギーで高出力のプラズマが安定して生成することができるので、各種処理の精度が高い。
粒界相内における、アルミナ結晶との境界領域とは、アルミナ結晶の表面から5nm離れた位置までの範囲内のことをいう。第1基板12、第2基板14、および接合部材15における、Naの酸化物の含有量は、以下の方法により確認することができる。
まず、アルミナ質焼結体の一部をイオンシンニング装置などの加工装置を用いてエッチングし、測定面とする。次に、透過電子顕微鏡(TEM JEOL社製 JEM−2010F)を用いて、加速電圧を200kVとして測定面の特定視野を1万倍〜10万倍の倍率で粒界相を観察する。なお、位置によるNaの酸化物の含有量を確認すため、3重点を観察することが好適である。
そして、3重点において、境界領域に対応する部分と、内部領域(境界領域以外の領域)対応する部分とをエネルギー分散型X線分析(EDS)により測定し、Naの含有量を確認することで粒界相の位置におけるNaの酸化物の含有量を確認することができる。
Naの酸化物がアルミナ結晶に固溶することで誘電正接の値が高くなる。アルミナ質焼結体における粒界相内において、アルミナ結晶との境界領域に比べて、この境界領域以外の内部領域の方がNaの酸化物がより多いということは、粒界相内にNaの酸化物が留められ、アルミナ結晶へのNaの酸化物の固溶が抑えられている状態であることを意味しており、ひいては誘電正接の値を低く保っている。
例えば、第1基板12、第2基板14、および接合部材15はいずれも、それぞれを構成する成分100質量%のうち、NaをNa2O換算した含有量が30ppm以上500ppm以下であり、AlをAl2O3換算した含有量が99.4質量%以上である。AlをAl2O3換算した含有量が99.4質量%以上とすることで、高周波用窓部材1の耐プラズマ性が比較的高い。また、NaをNa2O換算した含有量が30ppm以上500ppm以下であれば、アルミナ原料粉からのNaを取り除く為特別な処理をすることがないので高周波用窓部材1の製造コストが低く、かつ誘電正接の値を比較的低くすることができる。
例えば、第1基板12や第2基板14の8.5GHzにおける誘電正接の値は、NaをNa2O換算した含有量が500ppmでは、2.5×10−4以下であり、30ppmでは、0.15×10−4以下と、従来から提案されているアルミナ質焼結体等(例えば特許文献2や特許文献3記載のアルミナ質焼結体等)を用いた場合に比べて、低くなっている。
第1基板12や第2基板14の誘電正接については、例えば直径が50mm、厚みが1mmの円板状の試料を作製し、周波数8.5GHzの誘電正接の値をそれぞれキャパシタンスメータ(HP−4278A)、インピーダンスアナライザ(HP−4291A)および空洞共振器(ネットワーク・アナライザ 8722ES)を用いて測定することができる。
また、各部材を構成する成分100質量%におけるNaをNa2O換算した含有量およびAlをAl2O3換算した含有量については、アルミナ質焼結体の一部を粉砕し、得られた粉体を塩酸などの溶液に溶解した後、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置(例えば、島津製作所製:ICPS−8100)を用いて、NaおよびAlの含有量を測定し、Na2OおよびAl2O3にそれぞれ換算すればよい。
接合部材15の位置は例えば以下のようにして確認することができる。まず、高周波用窓部材1を第1基板12および第2基板14の厚み方向(図3に示すz方向)に平行で、かつ流路16の長さ方向(流体が流れる方向)に垂直な方向に沿って切断し、この断面(図3に示す断面)を研磨して鏡面にする。次に、例えばキーエンス社製デジタルマイクロスコープを用いて、この鏡面を観察する。この観察では、第1基板12と接合部材15と第2基板14とを同一視野に入れる。この観察によって、第1基板12および第2基板14に対応する相対的に気孔30が少ない領域と、これら第1基板12および第2基板14
に対応する領域に挟まれた、相対的に気孔30が多い領域とを観察することができる。気孔30が相対的に多い領域が接合部材15に対応する領域である。また、上述のデジタルマイクロスコープで気孔30が有意に判別できない場合も、電子顕微鏡やその他の分析手法によって結晶の状態や含有成分を分析することで、接合部材15の位置を確認することができる。すなわち、流路16の形状から第1基板12と第2基板14との境界部分は推測できるので、この境界部分の近傍を観察し、第1基板12および第2基板14と気孔や粒界の状態、また含まれる成分の含有率等を測定し、第1基板12および第2基板14と有意に相違する領域を確認することで、接合部材15の位置を確認することができる。
なお、第1基板12,第2基板14および接合部材15はMgを含み、MgO換算した含有量が200ppm以上1500ppm以下であることが好適である。このような構成を満たしていることにより、誘電正接が高くなる傾向を示すスピネル(MgAl2O4)の結晶を生成させるおそれが少なく、焼結の促進を図ることができるため、アルミナ質焼結体の機械的強度を向上させることができる。
また、第1基板12,第2基板14および接合部材15は、AlおよびNa以外の成分として、少なくともSiおよびCaを含んでいる。そして、SiおよびCaは、それぞれSiO2換算した含有量およびCaO換算した含有量が、各部材をそれぞれ構成する成分100質量%のうち、いずれも200ppm以上であることが好適である。また、他に、Ba,Srのいずれかを含んでいてもよい。そして、Na,Si,Ca,Ba,Srは、主結晶であるアルミナ結晶間である粒界相に、酸化物からなる結晶相または非晶質相として存在する。なお、Mgを含む場合、Mgも粒界相に存在する。また、Alが粒界相に存在する場合もある。そして、以下の記載において、粒界相を構成する成分として、Na以外の成分は、他の成分と記載する。
また、第1基板12,第2基板14および接合部材15は、アルミナ結晶間の粒界相において、NaをNa2Oに換算した含有量をAとし、Na以外である他の成分をそれぞれ酸化物に換算した含有量の合計をBとしたとき、比A/Bが0.11以下であることが好適である。
このように、アルミナ結晶間の粒界相において、NaをNa2Oに換算した含有量をAとし、他の成分をそれぞれ酸化物に換算した含有量の合計をBとしたとき、比A/Bが0.11以下であるときには、さらに誘電正接を低くすることができる。
なお、アルミナ結晶間の粒界相におけるNaをNa2Oに換算した含有量Aと、Na以外の成分をそれぞれ酸化物に換算した含有量の合計Bとの比A/Bは、次のようにして求めることができる。
まず、アルミナ質焼結体の一部をイオンシンニング装置などの加工装置を用いてエッチングした測定面をTEMにより、加速電圧200kVの条件で測定面の特定視野を1万倍〜10万倍の倍率で観察し、粒界相のEDS測定を行ない、得られた各成分の含有量を求め、それぞれ酸化物に換算し、NaをNa2Oに換算した含有量をAとし、他の成分をそれぞれ酸化物に換算した含有量の合計をBとし、比A/Bを算出すればよい。なお、1つの粒界相において、複数カ所、例えば、3カ所についてEDS測定を行ない、平均値を用いて比A/Bを算出することが好適であり、小数点第3位で四捨五入する。
なお、粒界相にAlが含まれていない場合は、アルミナ質焼結体の一部を粉砕し、得られた粉体を塩酸などの溶液に溶解した後、ICP発光分光分析装置を用いて、NaやNa以外の他の成分の含有量を測定し、それぞれ酸化物に換算した値を用いて比(A/B)を算出してもよい。
また、第1基板12,第2基板14および接合部材15は、NiをNiO換算した含有量が4ppm以下であることが好適である。
Niは、酸化すると、酸化の程度に応じて色調がばらつきやすく、商品価値を損ねやすいからであり、NiをNiO換算した含有量を上記範囲とすることで、色調のばらつきが抑制され、商品価値が向上する。
また、第1基板12,第2基板14および接合部材15は、アルミナ結晶の平均結晶粒径が1μm以上3μm以下であることが好適である。
アルミナ結晶の平均結晶粒径が上記範囲であると、アルミナ結晶の大きさの分布が狭まるので、上記各部材の機械的強度を高くすることができる。
アルミナ結晶の平均結晶粒径を求めるには、まず、上記各部材をダイヤモンド砥粒で研磨して、算術平均粗さRaが0.1μm以下の鏡面を得る。そして、この鏡面を大気雰囲気中、1450℃で1時間サーマルエッチングすることによって得られる面を走査型電子顕微鏡によって1000倍〜3000倍に拡大した86〜110μm×65〜92μmの範囲で、同じ長さの直線を8本引き、この8本の直線上に存在する結晶の個数をこれら直線の合計長さで除すことで求められる。
なお、倍率が100倍のときには、直線1本当たりの長さを80μmとし、倍率が3000倍のときには、直線1本当たりの長さを27μmとすればよい。
また、本実施形態の高周波用窓部材1は、接合部材15が複数の気孔30を有する場合、接合部材15における気孔30の円相当径の平均値が5μm以下であることが好適である。また、本実施形態の高周波用窓部材1は、接合部材15における気孔30の円相当径の最大値は14μm以下であることが好適である。また、本実施形態の高周波用窓部材1は、接合部材15における気孔30の面積率は4.5%以下であることが好適である。接合部材15が複数の気孔を有する場合、上述したいずれかの構成を満たすことによって、気孔内に金属や水等の導電性成分が浸入しにくくなるので、高周波用窓部材1表面における電流漏れ等を抑制し、高周波用窓部材1の絶縁性を高く維持することができる。
接合部材15における気孔30の円相当径の平均値、最大値および面積率を求めるには、光学顕微鏡を用いて倍率を270倍として、接合部材15をダイヤモンド砥粒で研磨して得られた鏡面を対象とする。この鏡面から気孔の大きさや分布が平均的に観察される部分を選択し、面積が3.54×105μm2(例えば、横方向の長さが708μm、縦方向の長さが500μm)となる範囲の画像を観察の対象として、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の粒子解析という手法を適用する。粒子解析の設定条件である粒子の明度、2値化の方法および小図形除去面積は、それぞれ暗、自動、3μmとする。
本実施形態の高周波用窓部材は、半導体製造装置やFPD製造装置に用いられる大型で、厚みのある部材(半導体製造装置用部材、FPD製造装置用部材)として好適に用いることができ、これらの部材が本実施形態の高周波用窓部材からなることにより、高い耐食性を有しつつ、エネルギーロスが少なく、各種処理精度の向上を図ることができる。
次に、高周波用窓部材1の形状等について詳述しておく。図3は高周波用窓部材1の実施形態の1つである。図3に示す高周波用窓部材1の実施形態では、第1主面11、第2主面13、および第1主面11と第2主面13とを接合する接合部材15を備えている。
第1基板12および第2基板14は、平面視で例えば円板状である。第1基板12および第2基板14の幅(直径)は、例えば100mm以上1000mm以下である。第1主面11および第2主面13間の接合部材15の厚みは、例えば、50μm以上65μm以下である。流路16の径方向における端部である第1部分21は、第2基板14の第2主面13から厚み方向(z方向)に設けられた第1溝部18を含む。また、流路16の径方向における中央部である第2部分22は、第1溝部18に沿って隣接しているとともに、第1溝部18より深さの浅い第2溝部19とを含む。高周波用窓部材1では、第2基板14の第2溝部19の第2底面31と第1基板12の第1主面11とで挟まれた領域(第2部分22)と、第2基板14の第1溝部18の内面と第1基板12の第1主面11とに挟まれた領域(第1部分21)とを有している。第2溝部19は必ずしも必要ではないが、流路16を流れる流体の流量を多くするには、第2溝部19を設けるのが好ましい。流路16は、第2部分22と第2部分22を挟んで配された2つの第1部分21とを有している。
第1部分21の高さH1は第2部分22の高さH2よりも大きい。第1部分21H1および第2部分22の高さH2は、第1基板12および第2基板14の厚み方向(図中のz方向)に沿った高さである。第1部分21の高さH1は、例えば2mm以上30mm以下である。第2部分22の高さH2は、例えば0.1mm以上2mm以下ある。第1部分21の幅W1は、例えば1mm以上10mm以下である。第2部分22の幅W2は、例えば5mm以上100mm以下である。
流路16は、第1部分21の幅W1より第2部分22の幅W2の方が大きい。第1部
分21の幅W1および第2部分22の幅W2は、第1基板12、第2基板14の厚み方向および流路16の長さ方向に直交する方向(図3におけるx方向)の長さである。実質的に流路として機能する第2部分22の幅W2を大きくすることにより、第2部分22における熱交換の程度を大きくすることができる。これにより、第2部分22内を安定して流れる流体によって、高周波用窓部材1の温度を安定して調整することができる。
第1溝部18は、第1底面26と、第1底面26に接続した側面27と、第1底面26および側面27の間に配置された傾斜面28とを有する。言い換えれば、例えば、断面視における第1溝部18の形状が矩形状である場合に、矩形の角部が隅切り(コーナーカット)されている。流路16において第1溝部18に対応する領域は断面積が比較的大きく、流体の流れが遅くなり易い。例えば第1溝部18が傾斜面28を有さず、図3に示す断面が角部を有する矩形状である場合など、この角部で流体の流速が著しく遅くなって角部に対応する部分での熱交換が十分にできない場合がある。高周波用窓部材1では、第1底面26と側面27との間に傾斜面28を有しており、このような角部での流速の低下が抑制されている。図3(b)に示す例における高周波用窓部材1では傾斜面28は曲面状であるが、傾斜面28は平面状であってもよい。また、傾斜面28は、異なる傾斜を有する複数の平面から形成されていてもよい。
また、高周波用窓部材1は図2に示すように、第1基板12および第2基板14の少なくともいずれかを厚み方向(z方向)に貫通した貫通孔17を備えている。貫通孔17は、流路16につながっており、流路16への流体の供給孔または流路16からの流体の排出孔として機能する。この貫通孔17の開口は、流体を供給および排出する流体供給手段(図示せず)に接続される。なお、貫通孔17は、第1基板12および第2基板14の一方のみを貫通していても構わないし、第1基板12および第2基板14の双方を厚み方向に貫通していても構わない。
また、図4は高周波用窓部材1の他の実施形態の断面図である。図4に示す高周波用窓部材1も、第1主面11および第2主面13を接合する接合部材15を備えており、第1
主面11および第2主面13間の接合部材15の厚みは、例えば、50μm以上65μm以下である。接合部材15は、図4に示すように、第1主面11および第2主面13の間から流路16の内部に向かって突出した突出部20を有する。このような構成である場合、流路16は、突出部20が内部に配された第1部分21と、第1部分21の突出部20が配された側と反対側に第1部分21と繋がっている第2部分22とを有する。
流路16内に突出部20が配置されるまで接合部材15をはみ出させるように設けることで、接合強度を高めるとともに、第1基板12と第2基板14との間への流体の侵入をこの接合部材15によって抑制して、第1基板12と第2基板14との剥離を抑制することができる。
高周波用窓部材1では、突出部20の第1基板12および第2基板14の厚み方向に沿った厚みTpが、第2部分22の高さH2よりも大きい方が好ましい。このようにすることで、第2部分22を比較的速い流速で流れる流体が、第1基板12と第2基板14との境界部分に直接当接することを防止し、第1基板12と第2基板14との剥離をより確実に抑制している。
また、突出部20の厚みTpは、例えば0.1mm以上11mm以下程度である。突出部20の幅Wpは第1部分21の幅W1より小さく、例えば約0.5mm以上10mm以下程度である。
また、図4に示す高周波用窓部材1では、接合部材15の突出部20が配置される第1部分21の高さH1を、この第1部分21に繋がった第2部分22の高さH2に比べて大きくすることが好適である。突出部20の周辺での流体の流速を比較的小さくするとともに、突出部20に起因した乱流が第1部分21内に留まり易くなっている。すなわち、突出部20が配される第1部分21の高さH1を比較的大きくすることで、突出部20によって小さくなり易い突出部20周辺の流路16の断面積を比較的大きくし、突出部20近傍で流体の流速が高くなり過ぎないようにしている。これにより突出部20に起因して起こる乱流の程度を小さく抑制している。加えて、突出部20近傍の流路16の断面積を大きくすることで、この第1部分21で生じた乱流の影響が、第2部分22まで伝わり難くしている。このため高周波用窓部材1では、第2部分22における流体の流速を比較的大きく、かつ第2部分22における乱流を少なくすることができる。これにより、流路16の第2部分22に、比較的速くかつ比較的安定した状態で、流体を流すことができる。すなわち、主として第2部分22に流路としての機能を持たせており、このため高周波用窓部材1は、高周波用窓部材1自身の温度を所望の温度に調整し易い。
図5に示すように、突出部20は、第2部分22と対向する側の表面部分に、流路16(第2部分22)に向かって凸である凸部29と凹である凹部32とを有しており、流路16の長さ方向に沿って凹部32と凸部29とが交互に配置された凹凸領域33を有することが好適である。図5に示す例においては、高周波用窓部材1は、同心円状に配置された複数の円環状の流路16を有しており、流路16の凹凸領域33は円環状に連続して、各流路16の第2部分22と対向する側の表面部分の全体に配置されている。このような凹凸領域33が配置されていることで、流路16の全体で、突出部20が配された第1部分21において安定した乱流を発生させることができる。これにより、局所的な乱流の発生に起因する熱交換の程度の局所的な乱れにともなう高周波用窓部材1の温度分布や、局所的な乱流に起因した、第1基板12と第2基板14との局所的な剥離等が抑制されている。
次に、高周波用窓部材11の製造方法の一実施形態として、図4に示す高周波用窓部材の製造方法の一例について説明する。
まず、平均粒径が0.4〜0.6μmのアルミナ(Al2O3)A粉末および平均粒径が1.2〜1.8μm程度のアルミナB粉末を準備する。また、Si源として酸化珪素(SiO2)粉末、Ca源として炭酸カルシウム(CaCO3)粉末を準備する。なお、酸化珪素粉末は、平均粒径が0.5μm以下の微粉のものを準備する。また、Mgを含むアルミナ質焼結体を得るには、水酸化マグネシウム粉末を用いる。なお、以下の記載において、アルミナA粉末およびアルミナB粉末以外の粉末を総称して、第1の副成分粉末と称す。
そして、第1の副成分粉末をそれぞれ所定量秤量する。次に、アルミナA粉末と、アルミナB粉末とを質量比率が40:60〜60:40となるように、また、得られるアルミナ質焼結体を構成する成分100質量%のうち、AlをAl2O3換算した含有量が99.4質量%以上となるように秤量し、アルミナ調合粉末とする。また、第1の副成分粉末について好適には、アルミナ調合粉末におけるNa量をまず把握し、アルミナ質焼結体とした場合におけるNa量からNa2Oに換算し、この換算値と、第1の副成分粉末を構成する成分(この例においては、SiやCa等)を酸化物に換算した値との比が1.1以下となるように秤量する。
そして、アルミナ調合粉末と、第1の副成分粉末と、アルミナ調合粉末および第1の副成分粉末との合計100質量部に対し、1〜1.5質量部のPVA(ポリビニールアルコール)などのバインダと、100質量部の溶媒と、0.1〜0.55質量部の分散剤とを攪拌装置に入れて混合・攪拌してスラリーを得る。
その後、スラリーを噴霧造粒して顆粒を得た後、粉末プレス成形法や静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により所定形状に成形し、必要に応じて切削加工を施す。以上の工程を経て、第1基板12となる成形体(以下、第1基板12となる成形体を第1セラミック成形体という。)と、第2基板14となる成形体(以下、第2基板14となる成形体を第2セラミック成形体という。)とを作成しておく。
次に、アルミナ調合粉末と、上述した比率の第1の副成分粉末と、純水と、を所定量秤量し、攪拌装置内の収納容器に入れ、混合・攪拌して、ペーストを作製する。なお、増粘剤を添加することによって、ペーストの粘度を調整してもよい。ペーストにおけるアルミナ調合粉末および副成分仮焼粉末の充填率は、例えば、25体積%以上35体積%以下とし、ペーストの粘度が、4Pa・s以上7Pa・s以下となるように、有機溶媒および増粘剤の量で調整する。そして、攪拌条件としては、大気中において、回転数を800rpm以上1200rpmとし、回転時間を8分以上16分以下とする。
次に、第2セラミック成形体の表面(接合面)にメッシュを配置した後、湿度が50%RH以上の環境下で、塗布後の厚みが0.1mm以上2mm以下となるように、メッシュを介して、第2セラミック成形体の表面(接合面)にペーストを塗布する。メッシュを介してペーストを塗布することによって、ペーストを均一に塗布することができるとともに、ペーストの厚みを調節することができる。また、湿度を50%RH以上にすることによって、ペーストの急激な乾燥を抑制し、ペーストの含水率を保つことができる。
次に、ペーストが塗布された第2セラミック成形体の表面(接合面)に第1セラミック成形体の表面を当接させる。このように当接させた後、厚み方向に4.9kPa以上98.1kPa以下の圧力で0.5時間以上加圧することによって、双方の成形体の表面(接合面)の間からペーストの一部を第1溝部18内に向かってはみ出させることができる。
次に、表面同士を当接させた成形体を焼成する。この複合体50を焼成する工程では、
第1溝部18にペーストがはみ出した状態で、例えば、1500℃以上1700℃以下で焼成することで、第1基板12および第2基板14は、ペーストが焼成されてなる接合部材15を介して接合されるとともに、流路16の第1溝部18に対応する領域に突出部20が配置された流路16を有する高周波用窓部材1を形成することができる。
接合部材15は第1基板12および第2基板14と同様の材質で構成されており、第1基板12および第2基板14を含めていずれも誘電正接が低いので、高周波用窓部材1は高周波の透過性が高い。また、接合部材15が第1基板12および第2基板14と同様の材質で構成されているので、加熱および冷却が繰り返されても、第1基板12と第2基板14との間で作用する熱応力が抑制されている。
第2セラミック成形体は第1溝部18を備えているので、第1セラミック成形体と第2セラミック成形体とをペーストを介して接合する際に、十分な力で第1セラミック成形体と第2セラミック成形体とを加圧しても、この加圧によってはみ出したペーストが、比較的大きな第1溝部18の範囲に収まり易く、高周波用窓部材16の第2部分22の断面形状が、はみ出したペースト(突出部20)によって部分的に変化することが抑制されている。また、第1溝部18にこのようなはみ出し部が配置されることで、高周波用窓部材1の流路16の第1部分21に突出部20を配置することができ、高周波用窓部材1において、上述した種々の作用効果を実現できる。
なお、上述した方法を用いることにより、アルミナ質焼結体の誘電正接が低くなる理由は明らかではないが、0.5μm以下の微粉の酸化珪素粉末を用いることにより、アルミナ調合粉末に含まれる不可避不純物であるNaの酸化物を酸化珪素が捕らえ易い状態になっており、他の副成分粉末を構成する成分の酸化物と併せて、アルミナの結晶に捕らえられることなく酸化珪素等でNaの酸化物が覆われることによって、粒界相の内部にNaの酸化物を存在させることができるからであると考えられる。また、平均粒径が異なるアルミナA粉末およびアルミナB粉末とを所定の比率で混合したアルミナ調合粉末を用いていることも、誘電正接を低くすることに寄与していると考えられる。
なお、第1セラミック成形体と第2セラミック成形体の接合に用いるペーストとして、例えば、アルミナ調合粉末と、上述した比率の第1の副成分粉末から上述した方法によって得られる副成分仮焼粉末と、有機溶媒(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール,プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールまたはシクロヘキサンジメタノール)と、増粘剤とを所定量秤量し、攪拌装置内の収納容器に入れ、混合・攪拌して、ペーストを作製してもよい。
また、第1の副成分粉末の代わりに、Si源として酸化珪素粉末、Ca源として炭酸カルシウム粉末、Sr源またはBa源として、炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末または炭酸バリウム粉末(BaCO3)粉末、および水酸化マグネシウム粉末を含む、第2の副成分粉末を用いてもよい。アルミナ調合粉末を作成する際、第2の副成分粉末について好適には、アルミナ調合粉末におけるNa量をまず把握し、アルミナ質焼結体とした場合におけるNa量からNa2Oに換算し、この換算値と、第2の副成分粉末を構成する成分(この例においては、Si,Ca,SrまたはBa等)を酸化物に換算した値の比が1.1以下となるように秤量することが好ましい。第2の副成分粉末を用いた場合にもアルミナ質焼結体の誘電正接が低くなる理由は、明らかではないが、第2の副成分粉末を仮焼することによって複合酸化物(例えば、Si−Ca−SrまたはBaを含む酸化物)の結晶相を形成させるとともに、1μm以下となるまで粉砕したことにより、アルミナ調合粉末に含まれる不可避不純物であるNaの酸化物と接触しやすくなり、この複合酸化物の結晶相の内部にNaの酸化物を多く存在させることができるからであると考えられる。
なお、複合酸化物の結晶相の存在については、アルミナ質焼結体の一部をイオンシンニング装置などの加工装置を用いてエッチングした測定面をTEMにより、加速電圧200kVの条件で測定面の特定視野を1万倍〜10万倍の倍率で観察し、制限視野電子回折することにより、確認することができる。また、確認された結晶相において、結晶相の外側である外部と、中心近傍にあたる内部とをEDSで測定することにより、結晶相の内部にNaの酸化物を多く存在させているか否かを確認することができる。なお、Sr源を用いた場合、得られる複合酸化物の結晶相は、Si,Ca,SrおよびOを含むものである。
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以降、実施例として第1基板12と第2基板14の作製例と評価結果とを示す。
まず平均粒径が0.4μmのアルミナA粉末および平均粒径が1.6μmのアルミナB
粉末を準備した。また、Si源として酸化珪素粉末、Ca源として炭酸カルシウム粉末、Sr源として炭酸ストロンチウム粉末を準備した。なお、酸化珪素粉末は、平均粒径がそれぞれ0.5μm,3.0μmおよび5.0μmの粉末を用意した。
次に、アルミナA粉末と、アルミナB粉末とを、質量比率が50:50となるように調合した。そして、アルミナ質焼結体を構成する成分100質量%のうち、AlをAl2O3換算した含有量が99.65質量%以上となるように秤量し、アルミナ調合粉末を得た。なお、このアルミナ調合粉末を用いて作製されたアルミナ質焼結体を構成する成分100質量%のうち、NaをNa2Oに換算した値は500ppmとなるものである。
次に、試料No.1として、平均粒径が0.5μmの酸化珪素粉末と、炭酸カルシウム粉末とを用い、SiO2換算で1500ppm、CaO換算で1500ppmとなるように秤量した。
そして、アルミナ調合粉末と、酸化珪素粉末および炭酸カルシウム粉末と、これらの粉末の合計100質量部に対し、1質量部のPVAと、100質量部の溶媒と、0.2質量部の分散剤とを攪拌装置に入れて混合・攪拌してスラリーを得た。
その後、スラリーを噴霧造粒して顆粒を得た後、静水圧プレス成形法により所定形状の成形体を成形した。そして、得られた成形体に切削加工を施し、大気雰囲気の焼成炉を用いて、1600℃の最高温度で所定時間保持して焼成することにより、直径50mm×厚み50mmの試料No.1を得た。
次に、平均粒径が5.0μmの酸化珪素粉末を用いた以外は、試料No.1と同じ方法により試料No.2を作製した。
そして、アルミナ質焼結体の一部を粉砕し、得られた粉体を塩酸に溶解した後、ICP発光分光分析装置を用いて、Alの含有量を測定し、Al2O3換算したところ、いずれも99.65質量%であった。また、NaについてはNa2O換算で500ppmであった。また、SiO2換算およびCaO換算でそれぞれ1500ppmであった。
また、アルミナ質焼結体の一部をイオンシンニング装置などの加工装置を用いてエッチングし、測定面とし、TEMを用いて、加速電圧200kVの条件で測定面の特定視野を1万倍〜10万倍の倍率で3重点を観察し、3重点において、境界領域と内部領域とをエネルギー分散型X線分析(EDS)により測定し、Naの酸化物の含有量を確認した。 さらに、得られたアルミナ質焼結体の厚み方向中央部から厚み1mmの試料を切り出して、誘電正接を測定し、その値を表1に示した。ここで、誘電正接tanδは、測定周波数をそれぞれ8.5GHz、1MHz、12MHzとし、各測定周波数毎に、それぞれキャパシタンスメータ(HP−42788A)、インピーダンスアナライザ(HP−4291A)、空洞共振器(ネットワーク・アナライザ 8722ES)を用いて測定した。
表1に示す結果から、試料No.2は、粒界相の位置が異なってもNaの酸化物の含有量は誤差範囲以上の差が確認できず(変わらず)、8.5GHzにおける誘電正接の値は、NaをNa2O換算した含有量の値の1倍にあたる5.0×10−4であった。一方、本発明の試料No.1は、8.5GHzにおける誘電正接の値が、NaをNa2O換算した含有量の値の0.5倍にあたる2.5×10−4である。
この結果から、本発明の試料No1は、誘電正接の低い高周波用窓部材を形成することができると言える。また、アルミナ質焼結体を構成する成分100質量%のうち、AlをAl2O3換算した含有量が99.4質量%以上であるため、高い耐食性を有しているとともに、Naの酸化物を含有しながらも誘電正接が低いアルミナ質焼結体であることがわかった。
表2に示す量のMgをMgO換算で含むアルミナ質焼結体を試料No.1を作製した方法と同じ方法により作製した。そして、JIS R 1601−2008(ISO 17565:2003(MOD))に準拠して3点曲げ強度を測定した。
表2に示す結果から、試料No.4〜9は、Mgを含み、MgO換算した含有量が20
0ppm以上1500ppm以下であることにより、この範囲外である試料No3,10よりも機械的強度が向上することがわかった。この結果から、本発明の試料No.4〜9は、誘電正接が低く、機械的強度が高い高周波用窓部材を形成することができると言える。
表3に示すように各成分の含有量が異なるアルミナ質焼結体を作製し、誘電正接を測定した。なお、作製方法は、実施例1における試料No.1を作製した方法と同じとし、アルミナA粉末およびアルミナ粉末BのNaの含有量が異なる粉末を用いるとともに、また、各試料ともに、SiO2およびCaO換算での含有量が50:50となるように、酸化珪素粉末および炭酸カルシウム粉末の量を調整して作製した。
そして、得られたアルミナ質焼結体の一部を粉砕し、得られた粉体を塩酸などの溶液に溶解した後、ICP発光分光分析装置を用いて測定し、Al2O3含有量、Na2O含有量、他の成分含有量(SiO2換算およびCaO換算した値の合計)を算出した。そして、これらの値より算出した比A/Bおよび実施例1で示した方法と同様の方法により測定した誘電正接の値を表3に示す。
表3に示す結果から、アルミナ結晶間の粒界相において、NaをNa2Oに換算した含有量をAとし、Na以外の成分をそれぞれ酸化物に換算した含有量の合計をBとしたとき、試料No.12〜15は、比A/Bが0.11以下であることにより、8.5GHzにおける誘電正接の値は、NaをNa2O換算した含有量の0.16倍以下となり、さらに誘電正接を低くできることがわかった。