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JP6515320B2 - 試料ホルダー及び透過型電子顕微鏡による観察方法 - Google Patents
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JP6515320B2 - 試料ホルダー及び透過型電子顕微鏡による観察方法 - Google Patents

試料ホルダー及び透過型電子顕微鏡による観察方法 Download PDF

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本発明は、例えば、鋼中の粒界偏析ボロン量測定などに必要な高品質の透過型電子顕微鏡(TEM)試料の作製に好適な、透過型電子顕微鏡用の試料ホルダー及び透過型電子顕微鏡による観察方法に関する。
鋼の結晶粒界には、添加した合金元素や、製造時に混入した不純物元素が、母材よりも濃縮して存在することが多い。このような元素の濃縮現象を粒界偏析と呼ぶ。粒界偏析は鋼の特性に大きく影響し、例えば、ボロンは、鋼のオーステナイト粒界に濃縮して存在し、当該ボロンの粒界偏析により、鋼の焼き入れ性が著しく向上することが知られている。そのため、粒界偏析の量を制御することは、高性能な鋼材を製造するために不可欠であり、ボロンの粒界偏析量を制御することは、特に重要である。
しかしながら、鋼中のオーステナイト粒界におけるボロンの粒界偏析量を正確に測定することは非常に難しく、特殊な解析技術が必要である。具体的には、粒界偏析では、幅1nm以下の領域に元素が濃縮しているため、その解析には、空間分解能が1nm以下である測定手法を用いる必要がある。このような高空間分解能の測定手法として、アトムプローブ法と透過型電子顕微鏡法がある。このうち、アトムプローブ法は、測定領域の大きさが100nm程度であり、その測定領域内に、測定したいオーステナイト粒界を位置させることが困難であるため、測定効率が悪い。
一方、透過型電子顕微鏡法で粒界偏析を測定する場合には、粒界近傍の微小領域に電子線を照射し、その領域から放射される蛍光X線を用いて元素濃度を測定する、エネルギー分散型X線分光分析法(EDS法)が広く用いられている。ここで、EDS法では、空間分解能の劣化を防ぐために、測定に用いる試料の厚さを極めて薄くすることが有効である(例えば、非特許文献1を参照)。しかしながら、EDS法では、試料が薄いとX線信号量が微弱となり、測定が困難となる場合がある。そこで、EDS法の代わりに、試料が薄くても十分な信号量が得られる、電子線エネルギー損失分光法(EELS法)が好適に用いられる。
EELS法による鋼の粒界偏析測定において、十分な空間分解能を得るためには、試料厚さを20nm以下にすることが望ましい。このような極薄試料の作製には、集束イオンビーム(FIB)加工装置が利用される。FIBでTEM用試料を作製する際には、イオンビームの入射方向を、TEMの電子線の入射方向と直交させると効率が良い。このような要求に対して、FIBのイオンビームが入射する側に切り欠き部が設けられた、FIB加工装置とTEMとで共用できる試料ホルダーが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、FIBで作製した試料は、イオンビーム照射により表面が活性状態となり、大気中に放置すると表面に酸化膜が形成される。試料表面の自然酸化膜の厚さは5nm程度であり、両側の表面が酸化すると酸化膜の厚さは合計で約10nmとなる。試料厚さが20nmであるとすると、酸化膜層が母材の半分以上に達することとなり、粒界偏析量を精度良く測定することが困難になる。
従って、透過型電子顕微鏡法を用いて鋼中の粒界偏析を高精度に測定するためには、試料厚さが20nm以下の試料を作製し、かつ、その試料を大気に暴露せずに透過型電子顕微鏡に挿入し、EELS法を用いて測定することが望ましい。このような要求に対して、集束イオンビーム加工装置(FIB加工装置)と透過電子顕微鏡(TEM)とで共用できる試料ホルダーに、試料近傍部分を大気から遮断する機構を設ける構成が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。当該構成によれば、FIB加工装置による試料作製後、TEMまで試料ホルダーを移送する際に、試料を支持している試料支持部を筒内に格納するとともに、Oリングによって試料近傍の雰囲気を不活性雰囲気や真空中に保持することができる。
特開2010−146957号公報 特開2005−327710号公報
G. Shigesato et al., Materials Science & Engineering A,Volume 556, 2012, pp 358−365
しかしながら、特許文献1、2に記載のTEM用の試料ホルダーは、試料作製時にイオンビームを、透過型電子顕微鏡によって試料を観察する際の電子線の照射方向に対して垂直な方向から照射できるように、試料ホルダーの円筒状の外殻の試料近傍部分の大部分が切り取られている。このような構造では、試料ホルダー先端の剛性が低いため、観察や測定時の試料ドリフトが大きく、高分解能の観察や測定には適さないと考えられる。従って、特許文献1、2に記載の試料ホルダーは、鋼の粒界偏析の測定に適しているとは必ずしも言い難い。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、FIBによる試料作製時とTEMによる観察時とで共用でき、十分な剛性を備え、かつ、試料の酸化を抑制することが可能な、透過型電子顕微鏡用の試料ホルダー及び透過型電子顕微鏡による観察方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、透過型電子顕微鏡と収束イオンビーム加工装置とで共用できる試料ホルダーであって、前記試料ホルダーの筒状の外殻の、互いに対向する一部領域にそれぞれ形成され、電子線又はイオンビームがいずれか一方から入射する第1及び第2の開口部と、前記外殻内の前記第1及び第2の開口部に挟まれた空間に設けられ、前記試料ホルダーの軸方向を回転軸方向として試料を回転可能に構成される試料支持部と、前記電子線及び前記イオンビームが照射されない場合に、前記空間を外気から遮断するように前記第1及び第2の開口部を塞ぐ雰囲気遮断部材と、を備え、前記第1及び第2の開口部の外形の周囲は、前記外殻に囲まれており、前記試料支持部は、試料台及び試料台支持部からなり、前記試料台支持部は、前記空間の、前記試料ホルダーの先端部から遠い側に設けられ、前記試料台支持部には、前記試料ホルダーの軸方向に延伸するように前記試料台が設置され、前記試料台支持部は、前記試料ホルダーの軸方向を回転軸方向として回転自在に構成される、ことを特徴とする、試料ホルダーが提供される。
また、前記外殻において、前記試料ホルダーの円周方向に沿って前記第1の開口部と前記第2の開口部とを連結する開放部分が存在しなくてもよい。
また、前記試料台支持部は、前記外殻と独立して回転可能であってもよい。
また、前記外殻の、前記試料ホルダーの円周方向に沿って前記第1の開口部と前記第2の開口部の間に存在する部分には、切り欠き部が存在しなくてもよい。
また、前記試料ホルダーにおいては、前記試料支持部により、イオンビーム照射時と電子線照射時とで、前記試料が90度回転されてもよい。
また、前記試料ホルダーにおいては、前記雰囲気遮断部材は、前記外殻の外周を覆うように設けられ、前記試料ホルダーの軸方向に移動可能な筒状の部材であり、前記外殻の、前記試料ホルダーの軸方向において前記第1及び第2の開口部を挟む位置には、前記外殻に外嵌されるシール部材がそれぞれ設けられ、前記雰囲気遮断部材が前記第1及び第2の開口部を覆う際には、前記雰囲気遮断部材の内壁面と前記シール部材とが密着することにより、前記空間が外気から遮断されてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、透過型電子顕微鏡と収束イオンビーム加工装置とで共用できる試料ホルダーを用いた、透過型電子顕微鏡による観察方法であって、前記試料ホルダーは、前記試料ホルダーの筒状の外殻の、互いに対向する一部領域にそれぞれ形成され、電子線又はイオンビームがいずれか一方から入射する第1及び第2の開口部と、前記外殻内の前記第1及び第2の開口部に対応する空間に設けられ、前記試料ホルダーの軸方向を回転軸方向として試料を回転可能に構成される試料支持部と、前記電子線及び前記イオンビームが照射されない場合に、前記空間を外気から遮断するように前記第1及び第2の開口部を塞ぐ雰囲気遮断部材と、を備え、前記第1及び第2の開口部の外形の周囲は、前記外殻に囲まれており、前記試料支持部は、試料台及び試料台支持部からなり、前記試料台支持部は、前記空間の、前記試料ホルダーの先端部から遠い側に設けられ、前記試料台支持部には、前記試料ホルダーの軸方向に延伸するように前記試料台が設置され、前記試料台支持部は、前記試料ホルダーの軸方向を回転軸方向として回転自在に構成されており、前記試料の膜面が前記電子線の入射方向に対して垂直になるように前記試料台支持部を回転させて、前記第1の開口部又は前記第2の開口部のいずれか一方から前記試料に対して前記電子線を照射させ、透過型電子顕微鏡像の観察を行うことを特徴とする、透過型電子顕微鏡による観察方法が提供される。
本発明によれば、FIBによる試料作製時とTEMによる観察時とで共用でき、十分な剛性を備え、かつ、試料の酸化を抑制することが可能な、透過型電子顕微鏡用の試料ホルダー及び透過型電子顕微鏡による観察方法を提供することが可能になる。また、本発明によれば、例えば、鋼中の粒界偏析ボロン量測定などに必要な高品質のTEM用試料を作製することができるなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
FIB加工時における、本実施形態に係る試料ホルダーの様態の一例を示す図である。 試料近傍の雰囲気を遮断した状態における、本実施形態に係る試料ホルダーの様態の一例を示す図である。 TEM観察時における、本実施形態に係る試料ホルダーの様態の一例を示す図である。 本実施形態に係る試料ホルダーで作製した試料中の旧オーステナイト粒界のTEM像の一例である。 (a)本実施形態に係る試料ホルダーで作製した試料から取得したEELSスペクトルの一例を示す図、及び(b)従来の試料作製方法で作製した試料から取得したEELSスペクトルの一例を示す図である。 (a)本実施形態に係る試料ホルダーで作製した試料で測定した旧オーステナイト粒界近傍のボロン濃度分布の一例を示す図、及び(b)従来の試料作製方法で作製した試料で測定した旧オーステナイト粒界近傍のボロン濃度分布の一例を示す図である。 試料台支持部が回転しない、試料ホルダーの構成を示す図である。 試料台支持部が回転せず、開放部が設けられた、従来の試料ホルダーの構成を示す図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1〜図3は、本発明の一実施形態に係る試料ホルダー100の一構成例を示す模式図である。これらの図において、図中左側が試料ホルダー100の先端部(先端側)であり、図中右側(以下、試料ホルダー100の根本側とも呼称する)がFIB加工装置又はTEMの外部、すなわち大気中に位置する部分である。図1〜図3では、試料ホルダー100の先端側及び根元側の構成を主に図示し、その間の構成は図示を省略している。
なお、以下の説明において、単に、装置外部と記載した場合には、特に記載のない限り、FIB加工装置又はTEMの外部を意味するものとする。同様に、単に、装置内部と記載した場合には、特に記載のない限り、FIB加工装置又はTEMの内部を意味する。
図示するように、試料ホルダー100は略円筒形状の外殻9を有し、当該外殻9の根元側にはOリング4が外嵌される。試料ホルダー100がイオンビーム加工装置又はTEMに挿入された場合には、当該Oリング4により、試料ホルダー100の装置内部に位置する部分が、装置外部から気密性良く遮断される。
図1は、試料ホルダー100がFIB加工装置に嵌入され、収束イオンビームの照射が可能な状態を示している。図1に示すように、試料ホルダー100の外殻9には、その互いに対向する一部領域に、それぞれ、開口部10、11(以下、第1の開口部10及び第2の開口部11とも呼称する)が形成される。開口部10、11は、その4方向(図中、上下方向及び左右方向)が試料ホルダー100の部材によって囲まれた、開放部分のない開口部である。なお、以下では、開口部10、11を構成する軸方向に延伸する部材を、試料ホルダー側壁部材8とも呼称する。
本実施形態では、前記外殻9内の開口部10、11に挟まれた空間12に試料2が固定され、当該試料2に向かって、開口部10、11のいずれか一方からイオンビームが入射するように、試料ホルダー100がFIB装置に嵌入される。例えば、開口部10がイオンビームの入射側である場合、開口部11が当該イオンビームの出側になる。これにより、試料2の近傍を通過したイオンビームは、試料ホルダー100の部材には照射されずに、開口部10、11を通過するため、試料ホルダー100の部材がスパッタリングされることによる試料2の汚染を防ぐことができる。
試料ホルダー100には、外殻9の外周を覆うように、円筒形状の雰囲気遮断部材6が設けられる。雰囲気遮断部材6は、開口部10、11(すなわち空間12)を露出させる又は覆うように、外殻9の軸方向に移動可能に構成されている。図1では、雰囲気遮断部材6が開口部10、11よりも試料ホルダー100の根本側に位置しており、開口部10、11が露出している様子が図示されている。
開口部10、11の、試料ホルダー100の先端部から遠い側には試料台支持部5が設けられ、当該試料台支持部5には、試料ホルダー100の軸方向に延伸するように試料台3が設置される。試料台3には試料2が固定される。以下では、試料台3及び試料台支持部5を合わせて、試料支持部とも呼称する。試料台支持部5は、試料ホルダーの軸方向を回転軸方向として回転自在に構成されており、試料ホルダー100の根元側に設けられる試料台回転つまみ7によって、その回転角度を調整することができる。試料ホルダー100がFIB加工装置に嵌入される際には、試料台回転つまみ7によって、試料2の膜面と平行な方向がイオンビーム入射方向と一致するように、試料台支持部5の角度が調整される。このように、試料支持部は、試料ホルダー100の軸方向を回転軸方向として試料を回転可能に構成される。
試料2は、予め、電解研磨、イオンミリング、FIBなどにより、幅数十μm、長さ数十μm、厚さ100nm程度の大きさに加工された状態で、MoやCuなどによって形成される試料台3に固定されている。試料台3は、例えば、直径約3mm、厚さ10〜50μm程度の半円形状を有する。試料台3としては、このような形状を有する一般に市販されているものを、簡便に用いることができる。試料台3上への試料2の固定は、タングステンや金などを用いた局所蒸着法により行われる。
加工前の厚さ約100nmの薄膜状の試料2を、その膜面がイオンビーム入射方向とほぼ平行になるように配置し、この状態で、イオンビーム加工を実施する。イオンビーム加工には、例えば加速電圧100〜1000VのArイオンビームを用いる。イオンビーム入射方向を膜面とほぼ平行にすること、及び、イオンビームの加速電圧を1000V以下とすることで、イオンビーム加工による試料2へのダメージを極めて少なくすることができる。
鋼中の粒界偏析ボロン量測定などに必要な高品質のTEM用試料を作製する場合には、FIB加工によって、試料2の厚さを約20nm以下にする。また、最終仕上げ段階でのFIB加工に、加速電圧300V以下で、試料2の膜面にほぼ平行なイオンビームを用いることで、試料2の表層のダメージ層を極めて少なくすることができる。
FIB加工が終了したら、FIB加工装置内で、雰囲気遮断部材6を試料ホルダー100の先端方向にスライドさせ、開口部10、11を当該雰囲気遮断部材6で覆い、試料ホルダー100の軸方向において開口部10、11を挟むように設けられるシール部材1によって、試料2の近傍を外部雰囲気から遮断する。
雰囲気遮断部材6によって開口部10、11を覆い、試料2の近傍を外部雰囲気から遮断した状態を図2に示す。シール部材1は、例えば外殻9に外嵌されたOリングであり、雰囲気遮断部材6は、雰囲気遮断部材6が開口部10、11を覆った際に、その内壁面がシール部材1に密着するように、精密に制御されている。これにより、試料2の近傍の雰囲気を高真空にした状態で維持することができる。必要に応じて、FIB加工装置内の雰囲気をArガスなどの不活性ガス雰囲気とし、その状態で、雰囲気遮断部材6を装着することも可能である。
次に、試料2の近傍部分を外部雰囲気から遮断した状態で、試料ホルダー100をFIB加工装置から取り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)に挿入する。TEMに挿入後、雰囲気遮断部材6を試料ホルダー100の根本側にスライドさせた状態を図3に示す。図3に示すように、試料ホルダー100がTEMに挿入される際には、試料台回転つまみ7を回転させて、試料台支持部5をイオンビーム照射時から90度回転させ、試料2の膜面が電子線の入射方向に対して略垂直になるように、試料台支持部5の角度が調整される。この状態で、開口部10、11のいずれか一方から試料2に対して電子線が照射され、透過型電子顕微鏡像の観察、及びEELS分析が実施される。
このように、本実施形態では、FIBによる試料作製の後、試料2を大気に曝露することなく、TEMによる観察、測定を実施することができる。これにより、試料2の表面に酸化膜層がほとんど生成せず、鋼中の粒界偏析量をより高精度に測定することが可能となる。
更に、本実施形態に係る試料ホルダー100では、試料2が固定される空間12において、試料2の両側に試料ホルダー側壁部材8が存在する。従って、試料ホルダー100の先端部の剛性が比較的高い。このため、高倍率でのTEM像観察時、及びEELS測定時に、試料2を安定して静止させることができ、より高空間分解能での観察及び測定が可能となる。
ここで、例えば図7に示すような、本実施形態に係る試料ホルダー100に対して、試料台支持部5の回転機構が省かれた構成を有する、試料ホルダー200を考える。当該試料ホルダー200では、試料台支持部5を回転させることができないため、図7に示すように、試料2に対する、TEMにおける電子線の入射方向とFIB加工におけるイオンビームの入射方向とを一致させざるを得ない。従って、例えばTEMでの観察に対応するように試料2の方向をセットしたとすれば、図示するように、イオンビームが試料2の膜面に垂直に入射することとなり、試料2へのダメージが甚大になる。
一方、本実施形態では、試料ホルダー100に試料台支持部5の回転機構を設けることにより、FIB加工時とTEM観察時とで、試料2の角度が適宜変更される。上述したように、例えば、FIB加工時には、試料2の膜面がイオンビームの入射方向と略平行になるように、試料2が配置される。また、例えば、TEM観察時には、試料2の膜面が電子線の入射方向と略垂直になるように、試料2が配置される。従って、本実施形態では、上述したような、FIB加工時に試料2に甚大なダメージが与えられる事態を防止することができる。
また、従来の試料ホルダー300の一構成例を図8に示す。従来の試料ホルダー300は、図8に示すように、本実施形態に係る試料ホルダー100に対して、試料台支持部5の回転機構が省かれるとともに、試料2に対して電子線とイオンビームとを互いに異なる方向から入射させるために、外殻9の一部を円周方向に切り欠いて形成される開放部33が設けられた構成を有する。開放部33は、本実施形態に係る試料ホルダー100の開口部10、11において、試料ホルダー側壁部材8の一方が取り除かれることにより形成される構造に対応しており、いわば開放された開口部であると言える。
試料ホルダー300では、図示するように、試料2に対して、イオンビームを、電子線の入射方向と略垂直な方向、すなわち、試料2の膜面とほぼ平行な方向から入射させることができる。しかしながら、当該構成では、試料2の近傍を通過したイオンビームが試料ホルダー300の部材(図中の試料ホルダー側壁部材8)に照射され、当該部材がスパッタリングされてしまう。スパッタリングされた物質が試料2に付着するため、試料2の汚染が避けられない。
一方、上述したように、本実施形態に係る試料ホルダー100では、外殻9の互いに対向する位置に開口部10、11が設けられる。また、試料ホルダー100では、試料台支持部5の回転機構が設けられることにより、試料2に対する電子線及びイオンビームの入射方向を互いに異なるものにするとともに、試料ホルダー100に対する電子線及びイオンビームの入射方向を同一の方向(すなわち開口部10、11を通過する方向)にすることができる。従って、試料2の近傍を通過したイオンビームは、試料ホルダー100の部材に照射されることなく開口部10、11を通過するため、試料ホルダー100の部材がイオンビームによってスパッタリングされることによる試料2の汚染を避けることができる。
以下、実施例により、本発明の実施可能性及び効果について更に説明する。
下記表1に示すような組成の鋼板を、1100℃〜1200℃に加熱し、熱延仕上げ温度950℃、熱延終了〜650℃間の平均冷却速度30℃/秒の条件で熱延、冷却し、厚さ20mmの熱延板とした。
このようにして製造した熱延鋼板から、10mm角、厚さ1mmの試料片を切り出して、当該試料片を、鏡面研磨後、FIB加工装置に挿入した。FIBを使用して、当該試料片から旧オーステナイト粒界を含む長さ10μm、幅3μm、高さ10μmの領域を切り出し、直径3mmの半円状Moグリッドに、切り出した試料を固定した。その後、Moグリッド上に固定した試料を、FIBで薄膜状に加工した。出来上がった薄膜状試料の大きさは、長さ10μm、幅0.1μm、高さ10μmであった。
このようにして作製した薄膜状試料を、Moグリッドごと、上述した本実施形態に係る試料ホルダー100に装着し、Arイオンビーム加工装置に挿入した。Moグリッドが図1に示す試料台3に対応し、薄膜状試料が図1に示す試料2に対応する。試料台回転つまみ7を用いて薄膜状試料の配置を図1に示した状態とし、当該薄膜状試料に対して、Arイオンビームを膜面とほぼ平行に入射させた。具体的なArイオンビームの加速電圧、及びその時の薄膜状試料の膜面に対するビーム入射角度を、下記表2に示す。最初に、加速電圧1000Vのイオンビームを入射角度10度で照射し、その後、加速電圧及び入射角度を徐々に小さくしながらイオンビームを照射した。イオンビーム照射時間は、各加速電圧での照射において、それぞれ約1〜10分間程度とした。
Arイオンビーム照射後、Arイオンビーム加工装置内で、試料ホルダー100の開口部10、11を雰囲気遮断部材6で覆った。雰囲気遮断部材6は、その内壁面がシール部材1と密接しており、試料の近傍を略真空に保つことができる。この状態で、試料ホルダー100をArイオンビーム加工装置から取り出し、直ちにTEMに挿入した。
TEM内で、開口部10、11(すなわち試料の近傍)を覆っていた雰囲気遮断部材を、試料ホルダー100の根本側に後退させて、試料部分に電子線を照射できる状態とした(図3参照)。試料台回転つまみ7を回転させて、試料台支持部5をイオンビーム照射時から90度回転させ、試料を、当該試料の膜面が電子線入射方向と略垂直になるように配置した。その後、TEM像を観察し、旧オーステナイト粒界の位置を確認し、その部分を拡大して観察した。観察倍率は約500万倍である。撮影したTEM像を図4に示す。
次いで、試料表面の酸化膜層の有無を調べた。本実施形態に係る試料ホルダー100を用いて作製された試料の旧オーステナイト粒界近傍で得られたEELSスペクトルを図5(a)に示す。比較のために、上記表1に示す組成と同様の組成を有する鋼材から従来の試料作製方法を用いて作製された試料、すなわちArイオンビーム加工後、雰囲気遮断部材6を用いずにTEMまで移送した試料を測定した結果得られた旧オーステナイト粒界近傍のEELSスペクトルを図5(b)に示す。図5(b)に示すように、従来の試料作製方法で作製した試料のスペクトルには、O−K端ピークが明瞭に現れており、試料表面に酸化膜が存在することがわかる。一方、図5(a)に示すように、本実施形態に係る試料ホルダー100を利用して、Arイオンビーム加工後大気に触れさせずに取得したEELSスペクトルには、O−K端ピークは現れておらず、試料表面に酸化膜がほとんど存在していないことがわかる。
次に、旧オーステナイト粒界近傍でのボロン濃度を測定した。旧オーステナイト粒界近傍で、電子線を約0.1nmに集束させて試料に照射し、EELSスペクトルを取得した。取得したEELSスペクトルにおいて、B−K端とFe−L端の信号の積分強度を測定し、Fe−L端の信号強度に対するB−K端の信号強度の比を計算することで、電子線を照射した領域における鋼中B濃度とした。電子線の照射位置を0.2nm間隔で移動させて、各点でのB濃度を測定し、B濃度分布を得た。
本実施形態に係る試料ホルダー100を用いて作製した試料、すなわちArイオンビーム加工後大気に触れさせずにTEMまで移送した試料で測定されたB濃度分布を図6(a)に示す。比較として、上記表1に示す組成と同様の組成を有する鋼材から従来の試料作製方法を用いて作製された試料、すなわちArイオンビーム加工後雰囲気遮断部材6を用いずにTEMまで移送した試料で測定されたB濃度分布を図6(b)に示す。図6(a)を参照すると、本実施形態に係る試料ホルダー100を用いて作製した試料では、旧オーステナイト粒界でボロン濃度が高くなっていることが明瞭にわかる。一方、図6(b)を参照すると、従来の試料作製方法を用いて作製した試料では、旧オーステナイト粒界上でのボロンの濃化がはっきりとは検出されなかった。これは、従来の試料作製方法を用いて作製した試料では、試料表面に形成された酸化膜のために、ボロン濃度の検出を精度良く行えなかったからであると考えられる。
以上の結果を、下記表3に示す。下記表3に示すように、本実施形態に係る試料ホルダー100を用いることにより、表面酸化がほとんど生じていない試料が作製可能であり、旧オーステナイト粒界近傍でのボロン濃化をより高精度に検出することができることが確認できた。
比較のため、本実施形態と同様に試料近傍の雰囲気を外気から遮断する機能を有するが、本実施形態に係る試料ホルダー100とは異なる構成を有する試料ホルダーを用いて作製した試料を用いて、上記実施例1と同様の測定を実施した。具体的には、比較する試料ホルダーとしては、図7に示す試料ホルダー200(本実施形態に係る試料ホルダー100に対して試料台支持部5の回転機構が省かれたもの)、及び図8に示す従来の試料ホルダー300(本実施形態に係る試料ホルダー100に対して試料台支持部5の回転機構が省かれるとともに、開口部10、11が開放部33に変更されたもの)を用いた。また、鋼材は実施例1と同じものを用いた。
図8に示す従来の試料ホルダー300を用いた場合には、試料表面の酸化膜は検出されなかったものの、EELSスペクトルの測定中に、約10nm/分の試料ドリフトが生じた。また、旧オーステナイト粒界上でのボロン濃化は検出されなかった。これは、測定中の試料ドリフトが大きいため、測定の空間分解能が不十分であったことが原因と考えられる。また、FIB加工時にイオンビームが試料ホルダー側壁部材8に照射されることに起因すると思われる、試料表面の汚れが確認された。当該汚れを分析した結果、試料ホルダー300の部材が削れたことにより現出したと思われるCuが試料表面に付着していることが確認できた。
一方、本実施形態に係る試料ホルダー100では、図8に示す試料ホルダー300に比べて、試料ドリフトをより小さく抑えることができ、また、上記表3に示すように、旧オーステナイト粒界上でのボロン濃化を高精度に検出することができた。これは、試料ホルダー100では、試料2が固定される空間12の両側に試料ホルダー側壁部材8が存在することにより、試料ホルダー100の先端部の剛性として、より高い値が保たれたからであると考えられる。また、試料ホルダー100を用いた場合には、試料ホルダー300を用いた場合のように、試料表面の汚れはほぼ観察されなかった。これは、試料ホルダー100では、互いに対向する開口部10、11を通過する方向にイオンビームが照射されるため、試料2の近傍を通過したイオンビームが試料ホルダー側壁部材8に照射されることがなく、上述したようなスパッタリングに起因する汚染がほとんど生じないからであると考えられる。
一方、図7に示す試料ホルダー200を用いた場合には、試料表面の酸化膜は検出されなかったものの、FIB加工時にArイオンビームを試料膜面に対して垂直に照射したため、本実施形態に係る試料ホルダー100を用いた場合に比べて、試料表面の凹凸が大きくなった。また、旧オーステナイト粒界近傍のボロン濃化は検出できなかった。これは、EELSスペクトルによるボロン濃度測定は、試料厚さの影響を大きく受けるため、図7に示す試料ホルダー200を用いて作製された、表面の凹凸が比較的大きい試料では、ボロン濃度の検出を精度良く行えなかったからであると考えられる。
一方、本実施形態に係る試料ホルダー100では、試料2を保持する試料台支持部5が軸方向に回転可能に構成されており、イオンビーム照射時には、試料2の膜面がイオンビームの照射方向と略平行になるように、試料2の角度が調整され得るため、図7に示す試料ホルダー200に比べて、試料表面の凹凸をより小さく抑えることができる。その結果、試料ホルダー100では、上記表3に示すように、旧オーステナイト粒界上でのボロン濃化を高精度に検出することが可能になる。
以上の結果を、下記表4に示す。下記表4には、実施例1で説明した、本実施形態に係る試料ホルダー100を用いた場合の結果も併せて示している。下記表4に示すように、図7及び図8に例示する、試料近傍の雰囲気を外気から遮断する機能を有する従来の試料ホルダー200、300を用いた場合には、表面酸化がほとんど生じていない試料を作製することは可能であるが、旧オーステナイト粒界近傍のボロン濃化を検出することは難しいことが確認できた。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 シール部材
2 試料
3 試料台
4 Oリング
5 試料台支持部
6 雰囲気遮断部材
7 試料台回転つまみ
8 試料ホルダー側壁部材
9 外殻
10、11 開口部
12 空間
33 開放部

Claims (7)

  1. 透過型電子顕微鏡と収束イオンビーム加工装置とで共用できる試料ホルダーであって、
    前記試料ホルダーの筒状の外殻の、互いに対向する一部領域にそれぞれ形成され、電子
    線又はイオンビームがいずれか一方から入射する第1及び第2の開口部と、
    前記外殻内の前記第1及び第2の開口部に挟まれた空間に設けられ、前記試料ホルダー
    の軸方向を回転軸方向として試料を回転可能に構成される試料支持部と、
    前記電子線及び前記イオンビームが照射されない場合に、前記空間を外気から遮断する
    ように前記第1及び第2の開口部を塞ぐ雰囲気遮断部材と、
    を備え
    前記第1及び第2の開口部の外形の周囲は、前記外殻に囲まれており、
    前記試料支持部は、試料台及び試料台支持部からなり、
    前記試料台支持部は、前記空間の、前記試料ホルダーの先端部から遠い側に設けられ、前記試料台支持部には、前記試料ホルダーの軸方向に延伸するように前記試料台が設置され、
    前記試料台支持部は、前記試料ホルダーの軸方向を回転軸方向として回転自在に構成される、
    ことを特徴とする、試料ホルダー。
  2. 前記外殻において、前記試料ホルダーの円周方向に沿って前記第1の開口部と前記第2の開口部とを連結する開放部分が存在しない、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の試料ホルダー。
  3. 前記試料台支持部は、前記外殻と独立して回転可能である、
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の試料ホルダー。
  4. 前記外殻の、前記試料ホルダーの円周方向に沿って前記第1の開口部と前記第2の開口部の間に存在する部分には、切り欠き部が存在しない、
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の試料ホルダー。
  5. 前記試料支持部により、イオンビーム照射時と電子線照射時とで、前記試料が90度回
    転される、
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の試料ホルダー。
  6. 前記雰囲気遮断部材は、前記外殻の外周を覆うように設けられ、前記試料ホルダーの軸
    方向に移動可能な筒状の部材であり、
    前記外殻の、前記試料ホルダーの軸方向において前記第1及び第2の開口部を挟む位置
    には、前記外殻に外嵌されるシール部材がそれぞれ設けられ、
    前記雰囲気遮断部材が前記第1及び第2の開口部を覆う際には、前記雰囲気遮断部材の
    内壁面と前記シール部材とが密着することにより、前記空間が外気から遮断される、
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の試料ホルダー。
  7. 透過型電子顕微鏡と収束イオンビーム加工装置とで共用できる試料ホルダーを用いた、透過型電子顕微鏡による観察方法であって、
    前記試料ホルダーは、
    前記試料ホルダーの筒状の外殻の、互いに対向する一部領域にそれぞれ形成され、電子線又はイオンビームがいずれか一方から入射する第1及び第2の開口部と、
    前記外殻内の前記第1及び第2の開口部に対応する空間に設けられ、前記試料ホルダーの軸方向を回転軸方向として試料を回転可能に構成される試料支持部と、
    前記電子線及び前記イオンビームが照射されない場合に、前記空間を外気から遮断するように前記第1及び第2の開口部を塞ぐ雰囲気遮断部材と、
    を備え、
    前記第1及び第2の開口部の外形の周囲は、前記外殻に囲まれており、
    前記試料支持部は、試料台及び試料台支持部からなり、
    前記試料台支持部は、前記空間の、前記試料ホルダーの先端部から遠い側に設けられ、前記試料台支持部には、前記試料ホルダーの軸方向に延伸するように前記試料台が設置され、
    前記試料台支持部は、前記試料ホルダーの軸方向を回転軸方向として回転自在に構成されており、
    前記試料の膜面が前記電子線の入射方向に対して垂直になるように前記試料台支持部を回転させて、前記第1の開口部又は前記第2の開口部のいずれか一方から前記試料に対して前記電子線を照射させ、透過型電子顕微鏡像の観察を行うことを特徴とする、透過型電子顕微鏡による観察方法。
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