図1は本発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す図である。この基板処理装置1は、例えば、基板Wの周縁部Wpに形成された膜をレーザー照射により除去する膜除去装置としての機能を有している。基板Wとしては例えば、半導体ウエハ、各種表示装置用ガラス基板、フォトマスク用基板、光磁気ディスク用基板等が適用可能である。また、除去対象となる膜としては例えば、酸化物または窒化物等の絶縁膜、レジスト膜、金属膜およびこれらが多層に積層された膜等が挙げられるが、基板および膜の種類はこれらに限定されるものではない。
以下では、基板Wは半導体ウエハであり、その一方主面Wfにデバイスが形成されたものであるとする。以下の説明においては、基板Wの主面のうちデバイス形成面Wfを当該基板の「表面」と称し、これと反対側の主面Wbを当該基板の「裏面」と称する。
なお、本明細書において、基板の「周縁部」とは、平板状の基板が有する2つの主面を接続する側面部のみならず、両主面のうち側面部に近い辺縁部をも含む概念である。また、基板の主面と側面との接続部分が面取りあるいは丸め加工されたいわゆるベベル部分も、ここでいう「周縁部」に該当する。
基板処理装置1は、基板Wを保持するスピンチャック2と、スピンチャック2を支持する傾斜ステージ部3と、レーザー光を基板Wに入射させるレーザー照射部4と、スピンチャック2を収容するチャンバ6と、装置各部を制御して所定の処理動作を実行する制御部8とを備えている。以下の各図においてチャンバ6内の空間における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面、Z軸が鉛直軸を表す。より詳しくは、(−Z)方向が鉛直下向き方向を表している。
スピンチャック2は、略円形の基板Wを保持するスピンベース21を備えている。より詳しくは、スピンベース21は基板Wの直径よりも小さい直径を有する円板状部材であり、その上面が平坦な基板載置面となっている。基板載置面には制御部8のチャック制御部83と接続された吸着溝または吸着孔が設けられており、チャック制御部83から供給される負圧によって基板Wの下面がスピンベース21により吸着保持される。スピンベース21が基板Wよりも小さいため、基板Wの周縁部Wpがスピンベース21に接することなくチャンバ内空間に開放された状態で、基板Wが保持される。
スピンベース21はチャック回転機構22により回転軸AX周りに回転可能となっている。すなわち、スピンベース21は適宜の回転駆動機構を内蔵するチャック回転機構22から延びる回転シャフト23に連結されている。そして、制御部8に設けられたチャック制御部83からの制御指令に応じてチャック回転機構22が作動して回転シャフト23が回転すると、スピンベース21が回転軸AX周りに回転する。スピンベース21は回転軸AXと基板Wの中心Cwとが一致するように基板Wを保持する。
スピンチャック2は傾斜ステージ部3に載置されている。傾斜ステージ部3は、スピンチャック2が載置されたステージ31と、チャンバ6の底部に固定されたベース32と、ベース32から立設されてステージ31を支持する支持脚33,34とを備えている。支持脚33,34は制御部8に設けられたステージ制御部84からの制御指令に応じて伸縮し、以下に説明するように、ステージ31に載置されたスピンチャック2の傾き角度を変化させる。
図2は傾斜ステージ部の動作を示す図である。ステージ31を支持する支持脚33,34がステージ制御部84からの制御指令により伸縮することで、ステージ31の傾きが変化する。これに伴いステージ31上のスピンチャック2の傾きが変化し、スピンチャック2に保持された基板Wの姿勢が変化する。具体的には、図2(a)に示すように、基板Wの表面(デバイス形成面)Wfが上向きとなる水平姿勢と、図2(b)に示すように、基板表面Wfが水平面から傾いた傾斜姿勢との間で、基板Wの姿勢が変化する。
基板表面Wfの水平面からの傾き角θは0度ないし90度とされる。すなわち、傾き角θが0度のとき、基板Wは図2(a)に示すように水平姿勢となる。傾き角θが0度より大きいとき、基板Wは図2(b)に示すように傾斜姿勢となり、このときスピンチャック2も同様の傾きを有している。したがって、スピンベース21に保持された基板Wは、チャック回転機構22の作動により、その中心Cwを回転中心として、鉛直軸に対し傾き角θを有する回転軸AX周りに回転される。
この基板処理装置1に処理対象たる基板Wが搬入されるとき、および、処理済みの基板Wが搬出されるときには、ステージ31が水平となるように支持脚33,34が制御される。このため、外部との基板Wの受け渡し時には基板Wを水平姿勢とすることができ、外部からのアクセスが容易となる。一方、後述する基板周縁部の加工処理、例えば膜除去処理が実行される際には、基板Wが傾斜姿勢となるように支持脚33,34が制御される。
傾き角θは、例えば45度ないし60度とすることができるがこれに限定されない。ただし、基板表面Wfが下向きとなることは避けるべきである。すなわち、図2(c)に示すように、基板表面Wfに垂直で基板裏面Wb側から基板表面Wf側に向かう方向の法線ベクトルVnを考えたとき、法線ベクトルVnが鉛直下向き、つまり(−Z)方向の成分を有するような姿勢は避けられる。したがって、基板Wの傾きは、基板表面Wfが鉛直面となるときが最大となる。このとき法線ベクトルVnは水平方向を向く。より一般的には法線ベクトルVnは少なくとも水平方向の成分を含み、さらに鉛直上向き、つまり(+Z)方向の成分を含んでもよい。
図1に戻って装置構成の説明を続ける。スピンチャック2により傾斜姿勢に保持された基板Wの下端、つまり周縁部Wpのうち基板Wが傾けられることで最も下方に位置することとなる部分を取り囲むように、上部が開放された箱型の液体容器51が設けられている。液体容器51には制御部8の液体供給部82から液体Lqが供給される。液体容器51は供給される液体Lqを一時的に保持して、基板Wの下端に当たる周縁部Wpを液面に触れさせる。したがって、周縁部Wpのうち最も下方に位置する最下部を含む一部が、液体Lq中に浸漬される。以下では、基板Wのうち液中にある部分を「液浸部位」と称する。
詳しくは後述するが、液体容器51には液体供給部82から常時一定量の液体Lqが供給されており、液体容器51内で液体Lqによる液流が形成されている。液体容器51から排出される液体は液体供給部82により回収される。
液体Lqとしては、後述のレーザー光ビームL1に対する吸収および散乱が少なく、かつ基板Wに対する汚染および腐食の少ないものが望ましい。この目的のために例えば、純水またはイソプロピルアルコール(IPA)、もしくは純水とIPAとの混合液体を好適に用いることができる。なお、ここでいう「純水」は、DIW、炭酸水、オゾン水および水素水を含むものとする。本実施形態ではこのうちDIWを用いるものとする。純水にIPAを添加することで、液体の表面張力を調整することができる。
液体容器51の上方には、例えばCCDカメラのような撮像機能を有する撮像部52が設けられている。撮像部52は、制御部8に設けられた画像処理部85と接続されており、画像処理部85からの制御指令に応じて液体容器51内を撮像し、画像信号を画像処理部85に送信する。撮像部52は液体容器51の液体Lqに浸漬された基板Wの周縁部Wpを撮像する。画像処理部85は、撮像により得られた画像に基づき、基板Wが適正な位置に保持されているか、レーザー光ビームが周縁部Wpの処理対象位置に正しく入射しているか等の判定を行う。
また、撮像部52よりも基板Wの中心Cwに近い位置に、気体ノズル53が設けられている。気体ノズル53は、制御部8に設けられた気体供給部86から供給される気体、例えば窒素ガスのような不活性ガスまたは乾燥空気などの気体を下向きに吐出する。気体ノズル53から吐出される気体により生成される気流の作用については後で説明する。
レーザー照射部4は、レーザー光を出射するレーザー光源49と、レーザー光源49から出射されるレーザー光Lの光路を調整して基板Wの周縁部Wpに入射させる光学系40とを備えている。レーザー光源49は、制御部8に設けられた光源制御部81により制御され、基板Wの周縁部Wpに形成された膜の剥離等、各種の加工処理の目的に応じた波長およびパワー密度を有するレーザー光を出射する。例えば超短パルスレーザー光を出射可能なフェムト秒レーザーをレーザー光源49として好適に用いることができる。
レーザー光源49はチャンバ6の外部に配置される一方、光学系40はチャンバ6の内部に配置されている。レーザー光源49から出射されるレーザー光Lは、チャンバ6の壁面に設けられレーザー光Lに対して透明な導光窓61を通して光学系40に入射する。
光学系40は、導光窓61を介して入射するレーザー光Lの光路を変化させて基板Wの周縁部Wpに入射させる反射ミラー41,42を有している。光路上における反射ミラー41,42の位置は光源制御部81により制御されており、これらによりレーザー光の光路が調整される。反射ミラー41,42により光路が調整されたレーザー光ビームL1が、周縁部Wpのうち液体Lq中に浸漬された液浸部位に入射する。こうして、周縁部Wpがレーザー光ビームL1により処理される。基板Wが回転することで周縁部Wpにおけるビーム入射位置が刻々と変化してゆき、1周以上の回転により、周縁部Wpが全周にわたって処理される。
図3は基板におけるレーザー光ビームの入射位置をより詳しく示す図である。より具体的には、図3(a)はレーザー光ビームの入射位置を(−X)方向に見た図であり、図3(b)は同位置を(+Y)方向に見た図である。図3(a)に示すように、レーザー光ビームL1は(+Y)方向に向かって水平に進み、液体容器51の側壁面511に入射する。液体容器51はレーザー光ビームL1に対して透明な材料、例えば石英ガラスにより形成されており、鉛直な側壁面511と水平な底面512とを有している。
レーザー光ビームL1はまた、液体容器51内に保持された液体Lqの水平な液面LSよりも低い位置で液体容器51の側壁面511に入射する。液体容器51に入射したレーザー光ビームL1は、透明な側壁面511を透過し、液体容器51内の液体Lqを介して周縁部Wpに入射する。図において符号BSは、基板Wに入射するレーザー光ビームL1のビームスポットを示しているが、スポットサイズは図示されたものに限定されず任意である。また、図3(b)に点線で示す領域DRは、基板表面Wf上においてデバイスが形成された領域を示している。周縁部Wpの加工処理においては、このデバイス形成領域DRに液体を付着させないことが必要とされる。
図3(b)に示すように、液体供給部82から供給される液体Lqは配管821を介して液体容器51の(+X)側端部に接続されている。一方、液体容器51から排出される液体Lqを液体供給部82に還流させる配管822は、液体容器51の(−X)側端部に接続されている。したがって、液体容器51内での液体Lqの液流が流通する方向D1は、(+X)側から(−X)側に向かう方向、すなわち図において左向きである。これに対して、液体容器51内の液体Lqに浸漬された状態の周縁部Wpが基板Wの回転に伴って移動する方向D2は、(−X)側から(+X)側に向かう方向、すなわち図において右向きであり液体Lqの流通方向D1とは反対向きである。
このようにする理由について説明する。まず、周縁部Wpのうち液体Lqに浸漬された液浸部位にレーザー光ビームL1を入射させて処理を行うのは、レーザー照射により生じた加工屑が周囲雰囲気中に飛散し基板Wに付着するのを防止するためである。レーザー照射による基板Wの温度上昇を抑制する効果もある。
生じた加工屑は液体Lq中に取り込まれる。そのため、液体Lqが滞留した状態では、基板Wから離脱した加工屑が基板Wに再付着する、加工屑によって入射レーザー光ビームが散乱し、十分な光エネルギーを基板Wに入射させることができなくなる等の問題が生じ得る。これらの問題を回避するために、液体Lqを流動させて加工屑をレーザー光ビームの入射位置から運び去る。ビームスポットBS近傍において液体Lqが順次入れ替えられることで、液体Lqの温度上昇による気泡の発生を防止する効果もある。
ここで、周縁部Wpのある一点に着目すると、当該点は基板Wの回転により移動して液体Lq中に進入し、液中でレーザー照射を受けた後、液面LSよりも上方に移動して液体Lqから離脱する。周縁部Wpが液体Lqから離脱する位置、つまり図3(b)において周縁部Wpが液面LSと接する部分のうち周縁部Wpの移動方向D2における最も下流側((+X)側)に対応する位置では、液体Lqができるだけ清浄なものであることが望ましい。この部分で液体Lqに加工屑が含まれていると、加工屑が基板Wに付着した状態で液体Lqから離脱するおそれがあるからである。
液体容器51の(+X)側端部から液体Lqを供給することにより、周縁部Wpが液体Lqから離脱する直前において最も清浄な液体Lqが基板Wに触れることとなるので、加工屑が基板Wに残留付着することが防止される。この目的のために、液流の方向D1は基板Wの回転による周縁部Wpの移動方向D2とは反対向きに設定される。ビームスポットBS近傍での液体Lqの乱流を防止するために、基板Wの回転速度および液体Lqの流速は比較的小さなものとされる。
次に、レーザー光ビームL1の入射方向と液体容器51の形状との関係について説明する。前記したように、レーザー光ビームL1は水平な光路に沿って進み、液体容器51の鉛直な側壁面511を介して液体容器51内に入射する。このようにする理由は以下の通りである。レーザー光ビームL1は、チャンバ6内の雰囲気から液体容器51の側壁面511に入射し、液体容器51の側壁面511から液体Lqに入射する。このとき、液体容器51の側壁面511への入射角および液体Lqへの入射角が直角でなければ、レーザー光ビームL1が屈折して光路が曲げられてしまう。このことは、周縁部Wpへのレーザー光ビームL1入射位置の制御を難しくする。この問題を回避するために、レーザー光ビームL1が液体容器51の側壁面511に垂直に入射するように、レーザー光ビームL1の入射方向と液体容器51の形状とが定められる。
なお、レーザー光ビームL1の入射方向が水平である必要性は必ずしもないが、光学系40の機構設計やその調整、液体容器51の製作の容易さ等の観点から、入射方向に特別な傾きを持たせるよりもより単純な水平(あるいは鉛直)方向とすることが好ましい。
この実施形態においては、水平姿勢に保持した基板Wでは周縁部Wpに安定した液膜を形成することが難しく、また周縁部Wpから基板中央部への液体の回り込みが避けられないことから、基板Wを傾けて保持し、下端部を液体Lqに浸漬させる。このような構成では、液体Lqに対し下向きに作用する重力により、基板Wの周縁部Wpから中央部への液体Lqの回り込みが抑制される。
このときの基板Wの傾き角θについては0度より大きく90度以下とされる。例えば傾き角θを90度、つまり基板表面Wfが鉛直面となるように基板Wを保持することによって、周縁部Wpから中央部への液体の回り込みを抑制することができる。一方、基板Wを斜めに、つまり傾き角θを90度未満とした場合には、次に説明するように、さらなる利点が生じる。
図4は基板を斜め向きに保持した場合の利点を説明する図である。基板Wを斜めに、かつ基板表面Wfを上側に保持し(すなわち傾き角θを0度より大きく90度より小さい値とし)、その下端部(周縁部Wpの一部)を液面LSから液体Lq中に浸漬させた場合を考える。このとき、図4(a)に示すように、基板裏面Wb側で液体Lqに触れる領域の幅W2は比較的大きくなるが、基板表面Wf側では液体Lqに触れる領域はより限定的であり、その幅W1は比較的小さくて済む。
基板表面Wf側で周縁部Wpよりも中央側にはデバイス形成領域DRが設けられており、この領域DRに液体を触れさせないことがこの処理の要諦である。上記のように基板表面Wf側を上にして基板Wを斜めに保持することで、周縁部Wpのレーザー入射位置を確実に液体Lq中に浸漬させ、かつ基板表面Wfにおいて液体Lqに触れる領域をより小さくすることができる。これにより、基板Wのうち液体Lqに触れる領域とデバイス形成領域DRとの間隔を大きくすることができ、デバイス形成領域DRへの液体Lqの付着を効果的に抑制することができる。また、液体Lqの付着の問題が解消されることで、基板表面Wfにより広いデバイス形成領域DRを設定することが可能となり、基板Wのより広い面積をデバイスとして有効に利用することが可能となる。
実際の処理においては、基板Wのうち液体Lqに触れる部分の面積は、液体Lqの表面張力に起因するメニスカスによって上記より大きくなる場合があると考えられる。この場合、図4(b)に示すように、液面LSとの間で鋭角をなす基板裏面Wb側では比較的大きなメニスカスMbが発生するのに対し、液面LSとの間でなす角が鈍角となる基板表面Wf側ではメニスカスMfはより小さくなる。このように、基板Wを斜めに保持することで、メニスカスが発生する条件下においても基板表面Wf側での液体Lqに触れる部分の面積の増大を抑えることができる。
また、図4(a)に示すように、周縁部Wpを観察するために撮像部52が設けられる場合、基板Wが斜め向きとなっていることで、撮像部52の光軸方向を鉛直方向または水平方向とすることが可能となる。基板Wが水平姿勢である場合、光軸を鉛直方向とした撮像系では基板Wの側面部を観察することができない。基板Wの側面部を観察するために撮像系の光軸を傾けた場合、液面LSを介した撮像では屈折の影響により基板Wやレーザー入射位置の検出が困難となる。基板Wを傾けることで、撮像部52の光軸を液面LSに垂直な鉛直方向とすることができ、屈折の影響を排除し、さらに光軸や焦点位置の調整もしやすくなる。
図5は気体ノズルの作用を説明する図である。より具体的には、図5(a)は気体ノズル53と基板Wとの位置関係を(−X)方向に見た図であり、図5(b)はこれを(+Y)方向に見た図である。図5(a)に示すように、傾けて保持された基板Wの基板表面Wf側には、気体供給部86から供給される気体を下向きに、基板表面Wfに向けて吐出する気体ノズル53が設けられている。気体ノズル53から吐出される気体により、基板表面Wfに沿って液面LSに向かって流れるガスフローGFが生成される。
このガスフローGFにより、液体容器51から基板表面Wfを伝って基板Wの中央部に回り込んでくる液体Lqを押し戻すことができ、また液体Lqから発生したミストが基板表面Wfに付着するのを防止することができる。すなわち、ガスフローGFは基板表面Wfを液体Lqから保護する保護層として作用する。ガスフローGFの流速が速すぎると液面LSの乱れを生じさせ、却って基板表面Wfへの液体Lqの付着のおそれが高まる。ガスフローGFの流速は、基板表面Wfに沿った下向きの流れが確実に形成される範囲で、比較的低速であることが好ましい。
X方向におけるガスフローGFの生成位置については、図5(b)に実線で示すようにビームスポットBSの近傍位置に向かう位置としてもよく、点線で示すように周縁部Wpが液面LSから離脱する位置の近傍に向かう位置としてもよい。ガスフローGFがビームスポットBSの近傍位置に向かう実線の構成は、レーザー照射によってビームスポットBSの周囲で発生するミストが基板表面Wfに付着するのを防止するのに効果的である。また、ガスフローGFが液面LSからの周縁部Wpの離脱位置の近傍に向かう点線の構成は、液体Lq中から外部空間に露出する周縁部Wpに残留付着する液体Lqの液切りを向上させるのに効果的である。また基板Wを乾燥させる効果もある。
これらの効果を両立させるために、X方向を長手方向とするスリット状の開口を有する気体ノズルを用い、ビームスポットBSの近傍位置から液面LSからの周縁部Wpの離脱位置までの範囲全体にガスフローが生成されるようにしてもよい。また、基板Wの半径方向に放射状に広がるガスフローが生成されてもよい。
図6は上記のように構成された基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この処理は、制御部8が予め用意された制御プログラムを実行し各部を制御することにより実行される。最初に、傾斜ステージ部3のステージ31が水平状態に位置決めされ(ステップS101)、この状態でチャンバ6に基板Wが搬入されてスピンベース21に載置される。スピンベース21は基板Wを吸着保持する(ステップS102)。
スピンベース21により基板Wが保持されると、ステージ31が所定の傾き角に傾けられて斜め向きに位置決めされる(ステップS103)。次にチャック回転機構22によりスピンベース21が所定の回転速度で回転され、これにより基板Wが傾いた回転軸AX周りに回転する(ステップS104)。続いて、液体供給部82から液体容器51への液体Lq(例えばDIW)の送出、および、気体供給部86から気体ノズル53への気体(例えば窒素ガス)の供給が開始され(ステップS105)、これにより周縁部Wpのうち最下部を含む一部が液体Lqに浸漬される。基板Wの回転開始と液体Lqの供給開始順序は上記の逆であってもよく、また同時であってもよい。
この状態で、レーザー照射が開始される(ステップS106)。レーザー光ビームL1が液体容器51の側壁面511および液体Lqを介して周縁部Wpに入射することで、周縁部Wpが処理される。周縁部Wpに形成された膜を剥離するための処理では、レーザー光ビームL1が入射するビームスポットBSにおいて膜が周縁部Wpから剥離される。剥離された膜や処理によって生じた加工屑は液体Lqに取り込まれ、液流によってビームスポットBS近傍から運び去られる。基板Wの回転とともに基板表面におけるレーザー光の照射位置が変化し、周縁部Wpが順次処理されてゆく。
基板Wが1回転以上する間レーザー光が照射された状態を維持することで(ステップS107)、周縁部Wpの全体について処理が終了する。周縁部Wpの全体について加工処理が終了すると、レーザー照射、液体Lqおよび気体の供給、ならびに基板Wの回転が順次停止される(ステップS108、S109、S110)。続いてステージ31が水平状態に戻され(ステップS111)、基板Wがチャンバ6外へ搬出されて(ステップS112)、一連の加工処理が終了する。
以上のように、この実施形態では、周縁部Wpにレーザー光(より具体的にはフェムト秒レーザー光)を照射しながら基板Wを回転させることにより、周縁部Wpからの膜除去等、周縁部Wpの処理を行う。レーザー光は周縁部Wpのうち液体Lq中に浸漬された液浸部位に入射する。そのため、レーザー照射によって基板Wから剥離された膜や加工屑は液体中に取り込まれ、周囲に飛散することがない。
基板Wは、液体容器51に保持される液体Lqが形成する液面LSから液体中に進入しており、重力が液体Lqを基板Wの中央部から遠ざける方向に作用するので、基板Wの中央部に設けられたデバイス形成領域DRに液体が回り込むおそれが少なくなっている。特に、基板Wの姿勢を、デバイス形成領域DRが設けられた基板表面Wf側を上にして斜め向きとすれば、基板表面Wf側で周縁部Wpが液体Lqに触れる部分の幅をより小さくすることができる。これにより、デバイス形成領域DRへ液体が回り込む確率をさらに低減することができ、より広いデバイス形成領域DRを確保することが可能となる。
また、基板表面Wfへの液体の付着をより確実に防止するため、上記実施形態では、基板Wを浸漬する液体Lqに液流を生成し、基板表面Wfに沿ってガスフローGFを生成する。液流を生じさせることにより、基板Wの周辺に加工屑が滞留することが防止される。さらに、液流の方向を液中における周縁部Wpの移動方向とは反対方向とすることにより、液中から外部空間へ離脱する周縁部Wpの近傍に存在する液体を最も清浄なものとすることができる。これにより、液中から離脱した基板Wに加工屑が残留することが防止される。
また、液面LSの上方から液面LSに向けて基板表面Wfに沿ったガスフローGFを生じさせることで、基板表面Wfに沿って中央部へ回り込もうとする液体Lqを下方に押し戻すことができる。また、液面LSの周囲で発生するミストから基板表面Wfを保護することができる。このように、基板表面Wfに沿ってガスフローGFを生じさせることで、基板表面Wfへの液体の付着や加工屑の残留を効果的に防止することができる。
以上説明したように、上記実施形態においては、液体容器51が本発明の「液体保持手段」として機能し、スピンチャック2および傾斜ステージ部3が一体として本発明の「基板保持手段」として機能している。このうち傾斜ステージ部3は、本発明の「傾斜機構」としての機能を有している。また、レーザー照射部4が本発明の「レーザー照射手段」として機能している。また、上記実施形態では、液体供給部82および配管821,831が一体として本発明の「液流生成手段」として機能する一方、気体供給部86および気体ノズル53が一体として本発明の「気流生成手段」として機能している。また、上記実施形態では、液体容器51の側壁面511全体が本発明の「透明窓」として機能している、また、撮像部52が本発明の「撮像手段」として機能している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態に対し、以下のような変形例が考えられる。
図7は基板処理装置の変形例を示す図である。より具体的には、図7(a)は第1の変形例を示し、図7(b)は第2の変形例を示す。
図7(a)に示す第1の変形例では、液体容器51の上端部のうち液体表面Wfに面する側に、液面LSの上部を覆うカバー部材513が設けられている。この点を除く各部の構成は、上記実施形態のものと同一である。このような構成では、液面LSから発生する液体の飛沫やミスト等が基板表面Wfに付着するのをより確実に防止することができる。
例えばレーザー光ビームL1が入射した周縁部Wpの温度が上昇することにより液中で発生した気泡が液面で消滅する際に、液体の飛沫やミストを生じさせることがある。これらから基板表面Wfを保護するために、この変形例ではカバー部材513が設けられる。デバイス形成領域DRの下端よりも下方にカバー部材513を設けることで、デバイス形成領域DRへの液体の付着を確実に防止することが可能となる。この場合でも、基板表面Wfに沿ったガスフローは有効である。
また、図7(b)に示す第2の変形例では、レーザー照射部の光学系の構成が異なっているが、この点を除く各部の構成は、上記実施形態のものと同一である。この変形例の光学系40aでは、反射ミラー41により反射されるレーザー光の光路上にビームスプリッタ43が配置されており、レーザー光Lは2つの光ビームL1,L2に分割される。一方のレーザー光ビームL1は、上記実施形態と同様に、液体容器51の側壁面511および液体Lqを介して、水平方向から周縁部Wpに入射する。
もう一方のレーザー光ビームL2は、反射ミラー44,45によって光路を変えられ、最終的には鉛直上向きの光ビームとして液体容器51の底面512に垂直に入射する。したがって、レーザー光ビームL2は、液体容器51の透明な底面512および液体Lqを介して周縁部Wpに下方から入射する。
周縁部Wpが、端面が面取りされあるいは丸め加工されたいわゆるベベル部となっている場合、一方向からのレーザー照射のみでは必要な範囲の処理を行うことができない場合がある。また、処理対象となる周縁部Wpは、基板Wの側面部だけでなく表面Wfまたは裏面Wbの少なくとも一部を含む場合があり、この場合にも、一方向からのレーザー照射では必要な範囲を処理することができない。周縁部Wpに対し2方向からレーザー光を入射させることで、上記した処理を同時に行うことが可能となる。
このとき、2つの光ビームをいずれも液体容器51の壁面に対し垂直に入射させ、かつ壁面と液体とが接する(つまり間に気体が介在しない)部分に入射させるようにすることで、屈折の影響を抑えて基板Wの適正な位置にレーザー照射を行うことが可能となる。この例では、透明な材料で形成された液体容器51のうち鉛直面である側壁面511からレーザー光ビームL1を水平方向に入射させ、水平面である底面512からレーザー光ビームL2を鉛直方向に入射させることにより、屈折の影響が回避される。
また、上記実施形態では基板Wを回転させながらレーザー光を照射することで、周縁部Wpを全周にわたって処理しているが、基板Wを回転させない態様においても、本発明を適用することが可能である。例えば周縁部Wpの一部領域のみを処理する場合には、基板Wを回転させず、当該処理対象領域が液体中に浸漬された状態でレーザー光を照射するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、レーザー照射部4のうち光学系40がチャンバ6の内部に設けられているが、これに限定されない。例えば、光学系がチャンバの外部に設けられ、レーザー光源49から出射される光Lの光路がチャンバ外に設けた光学系により調整されて、調整後の光ビームがチャンバに設けられた道光窓を介して基板に入射する構成であってもよい。また、チャンバの内部および外部にそれぞれ設けられた光学系が連動することにより、光ビームの光路が調整される構成であってもよい。
また例えば、上記実施形態の液体容器51はその全体がレーザー光に対し透明な材料により形成されるが、少なくともレーザー光の入射する部分が当該レーザー光に対し透明であれば足りる。したがって、例えばレーザー光の入射位置に透明な窓が設けられ、それ以外の部分は不透明な材料により液体容器が形成されてもよい。
また例えば、上記実施形態では、基板Wを保持するスピンチャック2を傾斜ステージ部3により支持することで、基板Wを水平姿勢と傾斜姿勢とで切り替えるようにしているが、スピンベース21が予め傾いた状態で設置された装置に対しても、本発明を適用することが可能である。基板Wを縦方向、つまり主面を鉛直面として処理を行う場合、縦方向の基板を扱うハンドリング装置が公知であり(例えば特開平10−209243号公報参照)、このような公知技術と組み合わせて処理を行うことができる。
また例えば、上記実施形態では基板Wを収容するチャンバ6内に液体容器51が設けられているが、チャンバが液体容器としての機能を兼ねていてもよい。すなわち、チャンバの下部にあるいはチャンバと一体化された容器に液体が保持され基板Wを浸漬させるようにしてもよい。
また、上記実施形態のスピンチャック2は基板Wの裏面Wb中央部を真空吸着するものであるが、基板の保持態様はこれに限定されず任意である。なお、周縁部Wpに支持部材が当接して基板Wを支持する構成では、周縁部Wpを全周にわたって処理する場合に支持部材が処理の障害となることがあり得る。この点では上記実施形態のように周縁部Wpが開放された状態での支持が望ましいが、例えば基板Wの回転と連動して、レーザー光が照射されるときに支持部材を一時的に退避させる等の構成を用いることで、周縁部Wpを支持する基板保持手段も使用可能である。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明において、基板保持手段は、主面の中心を通り主面に垂直な回転軸周りに基板を回転させるように構成されてもよい。基板を回転させることで、基板へのレーザー光の入射位置を変化させて、基板周縁部を広く処理することができる。
また、基板は、主面が水平面に対してなす角が0度より大きく90度以下となるように保持されてもよい。この範囲で基板を傾けることで、水平な液面を形成する液体に周縁部Wpの一部のみを浸漬させて処理を行うことができる。
また、一方主面がデバイス形成面となった基板については、デバイス形成面が水平方向よりも上向きとなるように保持されることが好ましい。こうすることで、デバイス形成面への液体の回り込みをより効果的に回避することができる。
また、液体保持手段に保持される液体を移動させて液流を生成する液流生成手段を備えてもよい。流動する液体中で基板にレーザー光を照射することで、処理により基板から発生した加工屑を基板から離間させ、処理後の基板に加工屑が残留することが抑制される。
この場合、液流の方向は、基板の周縁部が液体中において移動する方向と逆方向であることが好ましい。このような構成では、基板の周縁部が液面から抜ける部分に最も清浄な液体が供給されるので、液体から離脱した基板に加工屑が残留することがより効果的に抑制される。
また、液体保持手段はレーザー光に対し透明な透明窓を有し、レーザー照射手段は、透明窓および液体を介してレーザー光を基板に入射させる構成であってもよい。液体を保持する液体保持手段に設けた透明窓にレーザー光を入射させることで、液体保持手段と液体との間に気体層が介在しない態様で、レーザー光を基板に入射させることができる。この場合において、レーザー光は透明窓に対し垂直に入射されることが好ましい。これにより、透明窓でのレーザー光の屈折をより抑制することができる。
また、基板の中心から液浸部位に向かう気流を生成する気流生成手段が設けられてもよい。このような構成では、液体を基板表面から排除する方向に気流が生じるため、基板表面への液体の回り込みをより効果的に抑制することができる。また、基板の乾燥を気流により促進させることができる。
また、基板保持手段は、例えば基板の周縁部を除く中央部を吸着保持する構成とすることができる。基板の周縁部を全周にわたって処理する場合、基板の周縁部が開放された状態で保持されていることが望ましい。基板の中央部を吸着保持することにより、このような態様での基板保持を実現することができる。
また、基板へのレーザー光の入射位置を撮像する撮像手段が設けられてもよい。このような構成によれば、基板の適正位置にレーザー光が入射されているか否かが撮像結果から把握されるので、基板周縁部の処理を安定して行うことができる。特に基板が傾けられているため、撮像手段の光軸を水平方向または鉛直方向として基板周縁部を撮像することが可能である。
また、基板保持手段は、主面が水平な水平姿勢と主面が水平面から傾いた傾斜姿勢との間で、基板の姿勢を変化させる傾斜機構を有するものであってもよい。装置への基板の搬入時および装置からの基板の搬出時において、基板が傾いた状態では扱いが難しい。基板を水平姿勢にすることのできる機構を設ければ、基板の搬入出がより簡単となり、既存のハンドリング装置を利用することが可能となる。