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JP6575111B2 - 汚染地盤用浄化剤、汚染地盤用浄化剤の製造方法、及び、汚染地盤の浄化方法 - Google Patents
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JP6575111B2 - 汚染地盤用浄化剤、汚染地盤用浄化剤の製造方法、及び、汚染地盤の浄化方法 - Google Patents

汚染地盤用浄化剤、汚染地盤用浄化剤の製造方法、及び、汚染地盤の浄化方法 Download PDF

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本発明は、汚染地盤用浄化剤、汚染地盤用浄化剤の製造方法、及び、汚染地盤の浄化方法に関する。
トリクロロエチレン(TCE)等の揮発性を有する有機塩素化合物(VOC)で汚染された地盤を浄化すべく、地盤中に常在する微生物を活性化させる汚染地盤の浄化方法が知られている。この浄化方法では、微生物を活性化させるため、微生物の栄養成分を含有する浄化剤を地盤に注入している。この浄化剤には、即効性の栄養成分としてグリセリンを含有し、徐放性の栄養成分としてデンプンを含有するものがある(例えば特許文献1を参照)。
特開2012−125706号公報
前述の浄化剤では、デンプン分子の間にグリセリンが入り込んだ状態になるため、粘性土層まで確実にグリセリンを供給できる。また、徐放性の栄養成分であるデンプンを含有しているので、微生物に対して長期間にわたって栄養成分を供給することができる。
ここで、デンプンよりも徐放性が一層高い栄養成分を用いることができれば、浄化剤による微生物の活性化期間を従来よりも延ばすことができ、汚染物質をより長い期間にわたって浄化できる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、汚染物質をより長い期間にわたって浄化することにある。
前述の目的を達成するため、本発明は、有機塩素化合物で汚染された地盤に注入され、前記有機塩素化合物を分解する前記地盤中の微生物を活性化させる汚染地盤用浄化剤であって、グリセリンと、植物油と、デンプンと、界面活性剤とを含有することを特徴とする。
また、本発明は、有機塩素化合物で汚染された地盤を、前記有機塩素化合物を分解する前記地盤中の微生物を活性化させることで浄化する汚染地盤の浄化方法であって、有機塩素化合物で汚染された地盤に注入孔を形成する注入孔形成工程と、グリセリン、植物油、デンプン、及び界面活性剤を含有する浄化剤を、前記注入孔に注入する浄化剤注入工程と、を行うことを特徴とする。
これらの発明によれば、徐放性の栄養成分として植物油を含有しているので、汚染物質をより長い期間にわたって浄化することができる。また、即効性の栄養成分であるグリセリンを含有しているので、注入の初期から栄養成分を放出させることができる。さらに、デンプンと界面活性剤を含有しているので、グリセリンに対して植物油を安定な状態で分散させることができる。
また、本発明は、有機塩素化合物で汚染された地盤に注入され、前記有機塩素化合物を分解する前記地盤中の微生物を活性化させる汚染地盤用浄化剤の製造方法であって、グリセリンにデンプンを添加して混合する第1混合工程と、前記第1混合工程で得られた第1混合物に界面活性剤を添加して混合する第2混合工程と、前記第2混合工程で得られた第2混合物に植物油を添加して混合する第3混合工程と、を行うことを特徴とする。
本発明によれば、第1混合工程では、デンプンがグリセリンに分散され、第2混合工程では、分散されたデンプンに界面活性剤が吸着し、分散する。このため、第3混合工程を行うことで、界面活性剤に植物油が取り込まれ、グリセリンに対して植物油を安定な状態で分散させることができる。
前述の発明において、前記デンプンが5重量%以上20重量%以下の範囲で含有され、前記界面活性剤が1.25重量%以上10重量%以下の範囲で含有され、残余が前記グリセリン及び前記植物油であることが好ましい。
本発明によれば、汚染地盤に含まれる汚染物質をより長い期間にわたって浄化することができる。
持続性確認試験で使用した材料を説明する図である。 (a)は乳化植物油を使用したサンプルの作製手順を説明する図、(b)は比較例となるデキストリンを使用したサンプルの作製手順を説明する図である。 対照区におけるトリクロロエチレン濃度の経時変化を説明する図である。 乳化植物油を使用したサンプルにおけるトリクロロエチレン濃度の経時変化を説明する図である。 デキストリンを使用したサンプルにおけるトリクロロエチレン濃度の経時変化を説明する図である。 混合評価試験で使用した材料を説明する図である。 混合評価試験の結果を説明する図である。 デンプン添加量評価試験の結果を説明する図である。 界面活性剤評価試験で使用した界面活性剤を説明する図である。 界面活性剤評価試験の結果を説明する図である。 汚染地盤の浄化工程を説明する図であり、(a)は地盤に形成された注入井戸を説明する図、(b)は浄化剤を注入井戸に注入した状態を説明する図、(c)はグリセリンが拡散する様子を模式的に説明する図、(d)は植物油が拡散する様子を模式的に説明する図である。 浄化剤の製造工程を模式的に説明する図であり、(a)は第1混合工程の説明図、(b)は第2混合工程の説明図、(c)は第3混合工程の説明図、(d)は製造された浄化剤を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態では、持続性確認試験、混合評価試験、デンプン添加量評価試験、及び、界面活性剤評価試験を行った。以下、これらの試験について説明する。
持続性確認試験では、有機塩素化合物(VOC)の分解微生物の栄養成分とし乳化植物油を選定し、従来の栄養剤の栄養成分であるデンプンと比較して、どちらの栄養成分が長期間にわたって分解微生物を活性化できるかについて確認した。
図1は、持続性確認試験に使用した材料を説明する図である。同図に示すように、この持続性確認試験では、土壌として山砂を用いた。この山砂には、VOCを分解する分解微生物が生息している。栄養成分としての乳化植物油は市販品を用いた。具体的には、EOS Remediation,LLC製の嫌気性微生物活性剤「EOS乳化油基質」を用いた。栄養成分としてのデンプンはデキストリンを用いた。このデキストリンは、数個のα-グルコースがグリコシド結合によって重合した低分子量の炭水化物である。さらに、模擬汚染水として、トリクロロエチレンを脱イオン水に5mg/Lの濃度になるように溶解したTCE溶液を用いた。
図2は、分析対象となるサンプルの作製手順を説明する図である。図2(a)に示すように、乳化植物油を用いたサンプルは、100gの土壌11と10gの乳化植物油12Aをメジューム瓶10Aに添加し、さらに300mLのTCE溶液13をメジューム瓶10Aに添加した。これらを混合撹拌することで乳化植物油12AをTCE溶液13に分散させ、栄養成分入りのTCE溶液14Aと土壌11を含む第1段階のサンプルを作製した。
第1段階のサンプルから第1規定量(後述)の上澄み液(栄養成分入りのTCE溶液14A)を採取して別のメジューム瓶10Bに移した。別のメジューム瓶10Bには予め土壌100gと第2規定量(後述)の脱イオン水を添加しておき、混合することで第2段階のサンプルを作製した。なお、第2段階のサンプルにおいて希釈後のTCE溶液14Aは300mLとした。また、第1段階のサンプルには、TCE溶液13を補充して液量を300mLに戻した。
第2段階のサンプルについても同様に、第1規定量の上澄み液(希釈後のTCE溶液14A)を採取してさらに別のメジューム瓶10Cに移した。このメジューム瓶10Cにも予め土壌100gと第2規定量の脱イオン水を添加しておき、混合することで第3段階のサンプルを作製した。なお、第3段階のサンプルにおける希釈後のTCE溶液14Aは300mLとした。
以降は、第1段階のサンプルを室温(20〜22℃)で養生し、所定期間が経過する毎に上述の手順で第2段階のサンプル及び第3段階のサンプルを作製した。この所定期間(養生期間)に関し、試験開始から3年間は1〜2ヶ月とし、それ以降は3ヶ月とした。また、各サンプルにおける第1規定量に関し、試験開始から3年間は50mLとし、それ以降は100mLとした。これに伴い第2規定量は、試験開始から3年間までは250mLとし、それ以降は200mLとした。
図2(b)に示すように、デキストリンを用いたサンプルも、乳化植物油を用いたサンプルと同じ手順で作製した。すなわち、100gの土壌11と10gのデキストリン12Bをメジューム瓶10Dに添加し、さらに300mLのTCE溶液13をメジューム瓶10Dに添加することで、栄養成分入りのTCE溶液14Bと土壌11を含む第1段階のサンプルを作製した。
第1段階のサンプルから第1規定量の上澄み液(栄養成分入りのTCE溶液14B)を採取し、予め土壌100gと第2規定量の脱イオン水を添加した別のメジューム瓶10Eに移して混合することで、第2段階のサンプルを作製した。
同様に、第2段階のサンプルから第1規定量の上澄み液(希釈された栄養成分入りのTCE溶液14B)を採取し、予め土壌100gと第2規定量の脱イオン水を添加した別のメジューム瓶10Fに移して混合することで、第3段階のサンプルを作製した。
なお、デキストリン12Bを用いた各サンプルに関し、養生期間、第1規定量、及び、第2規定量については、乳化植物油12Aを用いたサンプルと同じである。
試験結果を図3〜図5に示す。図3は、対象区におけるトリクロロエチレン濃度の経時変化を説明する図である。図4は、乳化植物油を使用したサンプルにおけるトリクロロエチレン濃度の経時変化を説明する図である。図5は、デキストリンを使用したサンプルにおけるトリクロロエチレン濃度の経時変化をそれぞれ説明する図である。
ここで、対象区は、栄養成分を添加せずに10gの脱イオン水を添加したサンプルであり、乳化植物油やデキストリンを用いたサンプルと同様に、第1段階〜第3段階のサンプルを作製した。そして、これらの図に三角形の記号で示す時期に第2段階及び第3段階のサンプルを作製し、第3段階のサンプルについてトリクロロエチレン濃度を測定した。
図3に示すように対象区では、試験開始から約360日までの期間において、分解微生物の浄化能力によって、TCE濃度が1mg/L程度まで低下した。しかしながら、360日以降は分解微生物の浄化能力が発揮されず、TCE濃度は30mg/L前後で推移した。
図4に示すように乳化植物油を用いたサンプルでは、試験開始から約100日までの期間においてTCEの低下傾向が確認できた。そして、試験開始から約100日で、TCE濃度は0.01mg/Lまで低下した。これは、分解微生物の増殖に伴って浄化能力が向上したためと考えられる。その後、300日までのTCE濃度は0.01mg/Lを維持した。これは、十分に増殖した分解微生物によって、第3段階のサンプルに含まれるTCEが速やかに分解されたためと考えられる。350日以降は、TCEの添加によってTCE濃度が10mg/L前後まで上昇されるが、所定の養生期間(1〜3ヶ月)を経過することでTCE濃度は0.01mg/Lまで低下した。このことから、土壌11に生息している分解微生物が、試験開始当初に添加された乳化植物油(栄養成分)を栄養源として活動していることが判る。このため、乳化植物油を用いたサンプルでは、試験開始から約1300日経過するまで、分解微生物によるTCEの分解が行われたといえる。
図5に示すようにデキストリンを用いたサンプルでは、試験開始直後にTCEの低下傾向が確認され、試験開始から約30日で、TCE濃度は0.01mg/Lまで低下した。これも、分解微生物の増殖に伴って浄化能力が向上したためと考えられる。その後、360日までのTCE濃度は0.01mg/Lを維持していた。これも、十分に増殖した分解微生物によって、第3段階のサンプルに含まれるTCEが速やかに分解されたためと考えられる。360日以降は、TCEの添加によってTCE濃度が10mg/L前後まで上昇されるが、所定の養生期間(1〜2ヶ月)を経過することでTCE濃度は0.01mg/Lまで低下した。デキストリンを用いたサンプルでも、土壌11に生息している分解微生物が、試験開始当初に添加された乳化植物油(栄養成分)を栄養源として活動していることが判る。そして、このサンプルでは、試験開始から約550日までの期間において、TCE濃度を0.01mg/Lまで低下させることができた。しかしながら、600日以降700日までは分解微生物の浄化能力が低下し、700日以降のTCE濃度は15〜20mg/L前後で推移した。このため、デキストリンを用いたサンプルでは、試験開始から約550日経過するまで、分解微生物によるTCEの分解が行われたといえる。
以上の持続性確認試験により、分解微生物の栄養成分として乳化植物油を用いることで、比較例の栄養成分であるデンプンを用いるよりも長期間にわたって分解微生物を活性化できることが確認できた。
ところで、持続性確認試験で用いた乳化植物油は市販品であり、製造にはホモジナイザー(高圧、高速攪拌機)などの特殊な装置が必要となる。しかしながら、汚染地盤の浄化現場には、ホモジナイザーを持ち込むことは困難である。また、市販品の乳化植物油には水分が含まれており、浄化剤に使用した場合には水の分だけ栄養成分の比率が低下してしまう。
そこで、コンクリート用のハンドミキサー(定格出力700W〜1kW,回転数400〜1000rpm)であっても十分に植物油を乳化でき、かつ、界面活性剤の添加量を低減できる混合方法を確定すべく混合評価試験を行った。以下、混合評価試験について説明する。
図6は、混合評価試験に使用した材料を説明する図である。同図に示すように、この混合評価試験験では、植物油として市販の食用植物油を用いた。この食用植物油は、植物を由来とする複数種類の油脂(植物油)を混合した調合サラダ油である。また、即効性を有する栄養成分としてグリセリンを用い、グリセリンと植物油を乳化させるための材料として、デンプン(コーンスターチ)と界面活性剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を用いた。
混合評価試験では、上記4種類の材料を混合する順序について検討した。図7に示すように、ベースとなる材料を材料Aとし、混合第1段階で材料Aに混合される材料を材料Bとした。そして、混合第1段階で得られた材料Aと材料Bの混合物(第1混合物)に対して、混合第2段階で混合される材料を材料Cとし、混合第2段階で得られた材料Aと材料Bと材料Cの混合物(第2混合物)に対して、混合第3段階で混合される材料を材料Dとした。なお、混合は薬さじによる撹拌で行った。また、混合時間は10分間とした。以下、図7を参照し、各サンプルについて説明する。
サンプルNo.1では、材料Aが植物油であり81gを添加した。材料Bは界面活性剤であり4gを添加した。材料Cはコーンスターチであり15gを添加した。材料Dはグリセリンであり100gを添加した。なお、各材料の添加量は他のサンプルでも同じであるため、以降の説明は省略する。混合第1段階では、植物油に界面活性剤を添加して混合した。混合第2段階では、植物油と界面活性剤の第1混合物にコーンスターチを添加して混合した。混合第3段階では、植物油と界面活性剤とコーンスターチの第2混合物にグリセリンを添加して混合した。
サンプルNo.2では、材料Aが植物油、材料Bが界面活性剤、材料Cがグリセリン、材料Dがコーンスターチである。混合第1段階では、植物油に界面活性剤を添加して混合した。混合第2段階では、植物油と界面活性剤の第1混合物にグリセリンを添加して混合した。混合第3段階では、植物油と界面活性剤とグリセリンの第2混合物にコーンスターチを添加して混合した。
サンプルNo.3では、材料Aが植物油、材料Bがコーンスターチ、材料Cが界面活性剤、材料Dがグリセリンである。混合第1段階では、植物油にコーンスターチを添加して混合した。混合第2段階では、植物油とコーンスターチの第1混合物に界面活性剤を添加して混合した。混合第3段階では、植物油とコーンスターチと界面活性剤の第2混合物にグリセリンを添加して混合した。
サンプルNo.4では、材料Aがグリセリン、材料Bが界面活性剤、材料Cが植物油、材料Dがコーンスターチである。混合第1段階では、グリセリンに界面活性剤を添加して混合した。混合第2段階では、グリセリンと界面活性剤の第1混合物に植物油を添加して混合した。混合第3段階では、グリセリンと界面活性剤と植物油の第2混合物にコーンスターチを添加して混合した。
サンプルNo.5では、材料Aがグリセリン、材料Bが界面活性剤、材料Cがコーンスターチ、材料Dが植物油である。混合第1段階では、グリセリンに界面活性剤を添加して混合した。混合第2段階では、グリセリンと界面活性剤の第1混合物にコーンスターチを添加して混合した。混合第3段階では、グリセリンと界面活性剤とコーンスターチの第2混合物に植物油を添加して混合した。
サンプルNo.6では、材料Aがグリセリン、材料Bがコーンスターチ、材料Cが界面活性剤、材料Dが植物油である。混合第1段階では、グリセリンにコーンスターチを添加して混合した。混合第2段階では、グリセリンとコーンスターチの第1混合物に界面活性剤を添加して混合した。混合第3段階では、グリセリンとコーンスターチと界面活性剤の第2混合物に植物油を添加して混合した。
この評価試験では、上述の手順で作製したサンプルNo.1〜No.6を混合の翌日に観察し、植物油とグリセリンが混合(乳化)できているか、或いは、分離しているかを、目視観察で評価した。評価結果を図7の翌日分離状況の欄に示す。
この欄に示すように、サンプルNo.1〜No.5については植物油とグリセリンが分離してしまった。例えば、サンプルNo.1〜No.2に関し、界面活性剤は植物油に直接溶解させることは困難であった。サンプルNo.3に関し、植物油にコーンスターチを直接投入すると凝集が生じてしまい、均一に分散させることは困難であった。これに対し、サンプルNo.6では、植物油とグリセリンとが混合(乳化)された。
ここで、サンプルNo.6について植物油とグリセリンとが混合された理由について考察する。コーンスターチ等のデンプンは、多糖類であるため水に溶解しないものの、多くの水酸基を有していることから、親水性の高いグリセリンに対して容易に、かつ、均一に分散させることができる。このデンプンは、水に溶解しないことにより、疎水性を併せ持つことも明らかである。このため、親水性の強いグリセリンには溶解し難いが疎水性を併せ持つ界面活性剤は、デンプンに吸着するものと考えられる。すなわち、界面活性剤は、グリセリンの中で均一に分散しているデンプンに吸着することにより、グリセリンの中で分散されると考えられる。そして、植物油は界面活性剤に吸着することにより、グリセリンの中で均一に分散され、混合(乳化)されたものと考えられる。
加えて、高分子化合物は、所定濃度以上であれば、コロイドを分散させる作用を有することが知られている。デンプン及び界面活性剤による分散作用と高分子化合物のコロイド分散作用の相乗効果によって、薬さじによる撹拌程度の弱い力であっても、グリセリンと植物油を乳化できたと考えられる。なお、薬さじによる撹拌で乳化できたことから、現場においては、コンクリート用のハンドミキサーを用いることで十分に乳化できるといえる。
持続性確認試験で述べたように、デンプン(コーンスターチ)と植物油は共に分解微生物の栄養成分であるが、デンプンよりも植物油の方が長期間にわたって分解微生物を活性化する。このため、浄化剤においては、デンプンの含有比率を極力少なくし、その分だけ植物油の含有比率を高めることが望ましい。そこで、デンプン添加量を評価する試験(デンプン添加量評価試験)を行った。
デンプン添加量評価試験では、図6で説明した4種類の材料を使用した。そして、図8に示すように、コーンスターチと植物油の添加量を変化させて混合状態(乳化状態)を評価した。なお、混合手順は、混合評価試験におけるサンプルNo.6(図7)と同じであるので、説明は省略する。また、図8の各サンプルNo.1〜No.6において、材料Aのグリセリンについて使用量を100g(全体の50重量%)で固定し、材料Cの界面活性剤について使用量を4g(全体の2重量%)で固定したため、グリセリンと界面活性剤の説明は省略する。
サンプルNo.1では、材料Bのコーンスターチを0g、材料Dの植物油を96gとした。サンプルNo.2では、コーンスターチを5g、植物油を91gとし、サンプルNo.3では、コーンスターチを10g、植物油を86gとした。同様に、サンプルNo.4では、コーンスターチを15g、植物油を81gとし、サンプルNo.5では、コーンスターチを20g、植物油を76gとし、サンプルNo.6では、コーンスターチを40g、植物油を56gとした。
図8に示すように、No.1及びNo.2のサンプルでは、撹拌終了から2時間以内にグリセリンと植物油は分離をしてしまった。No.3のサンプルでは、撹拌終了から3〜4時間後にグリセリンと植物油が分離した。一般に、汚染地盤の浄化工法では、現場で浄化剤を作製し、作製した浄化剤を直ぐに注入井戸へ注入する。このため、撹拌終了から3〜4時間にわたって混合されていれば、現場作業において特段支障はないと考えられる。また、No.4〜No.6のサンプルでは、撹拌終了から24時間を経過してもグリセリンと植物油の混合状態(乳化状態)を維持していた。
以上の結果より、界面活性剤の使用量を4g(2重量%)とした場合、植物油を乳化させるためには、コーンスターチを10g(5重量%)〜40g(20重量%)の範囲で添加することが好ましいといえる。そして、グリセリンと植物油の混合状態を24時間以上にわたって維持するのであれば、コーンスターチを15g(7.5重量%)〜40g(20重量%)の範囲で添加することが好ましいといえる。
なお、以上の評価試験では、界面活性剤の使用量を4g(2重量%)で固定しているが、界面活性剤の使用量については、地盤中の分解微生物や環境に与える影響を考慮して定められる。一般的には、10重量%以下であれば、地盤中の分解微生物や環境に影響を与えることなく使用できる。そして、界面活性剤の使用量が増えれば、その分だけ必要となるコーンスターチの量を少なくできる。
また、作製された浄化剤において、デンプン(コーンスターチ)と植物油以外の材料は、グリセリンと植物油であることから水を含有しておらず、浄化剤における栄養成分の含有割合を高めることができるといえる。この点でも分解微生物に対して栄養成分を、長期間にわたって供給し続けることができる。
前述の各試験では、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、主成分としてモノラウリン酸ヘキサグリセルを含有するものを用いたが、ポリグリセリン脂肪酸エステルに属する他の種類の界面活性剤についても評価を行った。以下、界面活性剤を評価する試験(界面活性剤評価試験)について説明する。
図9は、界面活性剤評価試験に使用した界面活性剤を説明する図である。同図に示すように、この界面活性剤評価試験では、ラウンリン酸ポリグリセル−10を主成分として含有し、HLB値が15.5である界面活性剤SF1と、モノラウリン酸ヘキサグリセルを主成分として含有し、HLB値が14.5である界面活性剤SF2と、デカグリセリンステアレートを主成分として含有し、HLB値が12である界面活性剤SF3とを使用した。
なお、界面活性剤SF1は、日光ケミカルズ株式会社の商品名:Decaglyn 1−LVEXを使用した。界面活性剤SF2は、同じく日光ケミカルズ株式会社の商品名:Hexaglyn 1−Lを使用した。界面活性剤SF3は、理研ビタミン株式会社の商品名:ポエムJ−0081HVを使用した。
界面活性剤評価試験では、上記3種類の界面活性剤SF1〜SF3の添加量を調整し、あわせてコーンスターチと植物油の添加量を調整することでサンプルNo.1〜No.6を作製した。以下、図10を参照し、各サンプルについて説明する。なお、各サンプルにおいて、混合手順は前述の各試験と同様であるため、説明を省略する。
サンプルNo.1では、グリセリンを100g(50重量%)、コーンスターチを15g(7.5重量%)、界面活性剤SF1を5g(2.5重量%)、植物油を80g(40重量%)とし、サンプルNo.2では、グリセリンを100g(49重量%)、コーンスターチを20g(9.8重量%)、界面活性剤SF1を2.5g(1.2重量%)、植物油を82.5g(40重量%)とした。
サンプルNo.3では、グリセリンを100g(44.4重量%)、コーンスターチを40g(17.8重量%)、界面活性剤SF2を5g(2.2重量%)、植物油を80g(35.6重量%)とし、サンプルNo.4では、グリセリンを100g(49重量%)、コーンスターチを20g(9.8重量%)、界面活性剤SF2を2.5g(1.2重量%)、植物油を82.5g(40重量%)とした。
サンプルNo.5では、グリセリンを100g(44.4重量%)、コーンスターチを40g(17.8重量%)、界面活性剤SF3を5g(2.2重量%)、植物油を80g(35.6重量%)とし、サンプルNo.6では、グリセリンを100g(44.4重量%)、コーンスターチを40g(17.8重量%)、界面活性剤SF3を4g(1.8重量%)、植物油を81g(36重量%)とした。
何れのサンプルでも、撹拌終了から24時間を経過してもグリセリンと植物油の混合状態(乳化状態)を維持していた。この観点からは、界面活性剤SF1〜SF3の何れも良好に使用できるといえる。そして、界面活性剤SF1〜SF3の濃度に関し、1.25重量%以上の濃度で含有していれば植物油を分散することができる。なお、地盤中の分解微生物や環境に影響を与えないという観点から、界面活性剤SF1〜SF3の濃度は10重量%以下であることが好ましい。
粘度に着目すると、界面活性剤SF3を用いたサンプルNo.5の粘度は13.7パスカル秒、サンプルNo.6の粘度は12パスカル秒であった。これに対し、界面活性剤SF1を用いたサンプルNo.1の粘度は9.5パスカル秒、サンプルNo.2の粘度は8.9パスカル秒であった。界面活性剤SF2を用いたサンプルNo.3の粘度は9.6パスカル秒、サンプルNo.4の粘度は8パスカル秒であった。粘度の観点からは、界面活性剤SF3よりも、界面活性剤SF1やSF2の方が良好といえる。
コーンスターチの添加割合に着目すると、界面活性剤SF3を用いたサンプルNo.5及びNo.6の添加割合はともに17.8重量%であり、界面活性剤SF2を用いたサンプルNo.3の添加割合も17.8重量%であった。そして、界面活性剤SF2を用いたサンプルNo.4の添加割合は9.8重量%であった。また、界面活性剤SF1を用いたサンプルNo.2の添加割合は9.8重量%であり、サンプルNo.1の添加割合は7.5重量%であった。
前述したように、コーンスターチと植物油は共に分解微生物の栄養成分であるが、植物油の方が長期間にわたって栄養成分を放出し続ける。このため、コーンスターチの添加割合が低くなれば、その分植物油の使用比率を高めることができる。この観点からは、界面活性剤SF3よりも界面活性剤SF2の方が好ましく、界面活性剤SF2よりも界面活性剤SF1の方が好ましいといえる。
次に、前述の浄化剤を用いた本実施形態にかかる汚染地盤の浄化方法について説明する。この浄化方法では、図11(a)に示すように、汚染地盤Gに対して、地表の下に存在する粘性土層G1まで達する注入井戸21を設ける。この注入井戸21は、例えば直径が約5cmであって深さが約10mと、細く長い孔として設けられている。なお、注入井戸21は、地表から粘性土層G1に達するように設けられたボーリング孔であってもよい。
汚染地盤Gに注入井戸21を設けたならば、浄化剤22を製造する。例えば、図8で説明したサンプルNo.3〜No.6や、図10で説明したサンプルNo.1〜No.6と同じ配合の浄化剤22を製造する。浄化剤22の製造に際しては、例えば、図12(a)〜(d)に示すように、混合容器MCに投入したグリセリン22aに対してコーンスターチ(デンプン)22bを添加し、コンクリート用のハンドミキサーHMで混合する第1混合工程と、第1混合工程で得られた第1混合物MIX1に界面活性剤22cを添加してハンドミキサーHMで混合する第2混合工程と、第2混合工程で得られた第2混合物MIX2に植物油22dを添加してハンドミキサーHMで混合する第3混合工程とを行う。第1〜第3混合工程を行うことで、混合容器MCには植物油がグリセリンに混合(乳化)された浄化剤22が作製される。
混合評価試験で説明したように、第1混合工程ではグリセリン22aに対してコーンスターチ22bを混合し、第2混合工程では第1混合物MIX1に界面活性剤22cを混合し、第3混合工程では第2混合物MIX2に植物油22dを混合しているので、定格出力が700W〜1kWであり、回転数が400〜1000rpmであるコンクリート用のハンドミキサーHMであっても、植物油をグリセリンに混合することができる。
以上の手順で製造された浄化剤22は、図11(b)に示すように、注入井戸21へ注入される。図11(c)に示すように、浄化剤22が注入されると、まず低分子化合物であり土への吸着性が比較的低いグリセリン22aが粘性土層G1の中を速やかに拡散していく。このようにグリセリン22aが供給されることで、粘性土層G1に常在する分解微生物が速やかに活性化される。従って、粘性土層G1が含有する有機塩素化合物(VOC)の分解が早期に開始される。
グリセリンが放出されると、徐放性の栄養成分が放出される。本実施形態の浄化剤22では、徐放性の栄養成分として植物油22dが主成分となっているので、図11(d)に示すように、デンプンが放出された後も植物油22dによって分解微生物を活性化し続けることができる。その結果、粘性土層G1の分解微生物を長期間にわたって持続的に活性化することができ、粘性土層G1を長期間にわたって浄化できる。
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。例えば、次のように構成してもよい。
植物油に関し、前述の実施形態では市販の食用植物油(調合サラダ油)を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、大豆油、菜種油、オリーブ油、及びこれらの混合油などを用いることができる。要するに、植物を由来とする複数種類の油脂を使用することができる。そして、浄化剤における植物油の含有割合に関し、植物油がグリセリンに混合(乳化)されていればよいが、植物油の徐放性を考慮すると、デンプンよりも多いことが好ましい。また、植物油の含有比率が浄化剤の50重量%を越えてしまうと、植物油が乳化されない懸念がある。これらを考慮して、浄化剤における植物油の含有割合については、25%重量以上50重量%以下であることが好ましい。
デンプンに関し、前述の実施形態ではコーンスターチを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、タピオカデンプン、馬鈴薯デンプン、小麦粉などの各種デンプンを用いることができる。
界面活性剤に関し、前述の実施形態ではポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどを用いることができる。
10A〜10F…メジューム瓶,11…土壌,12A…乳化植物油,12B…デキストリン,13…TCE溶液,14A〜14B…栄養成分入りのTCE溶液,21…注入井戸,22…浄化剤,22a…グリセリン,22b…コーンスターチ,22c…界面活性剤,22d…植物油,G…汚染地盤,G1…粘性土層,HM…ハンドミキサー,MIX1…第1混合物,MIX2…第2混合物

Claims (3)

  1. 有機塩素化合物で汚染された地盤に注入され、前記有機塩素化合物を分解する前記地盤中の微生物を活性化させる汚染地盤用浄化剤の製造方法であって、
    グリセリンにデンプンを添加して混合する第1混合工程と、
    前記第1混合工程で得られた第1混合物に界面活性剤を添加して混合する第2混合工程と、
    前記第2混合工程で得られた第2混合物に植物油を添加して混合する第3混合工程と、
    を行い、水を添加しないことを特徴とする汚染地盤用浄化剤の製造方法。
  2. 前記第1混合工程では、5重量%以上20重量%以下の量の前記デンプンを前記グリセリンに添加して混合し、
    前記第2混合工程では、1.25重量%以上10重量%以下の前記界面活性剤を前記第1混合物に添加して混合することを特徴とする請求項に記載の汚染地盤用浄化剤の製造方法。
  3. 有機塩素化合物で汚染された地盤を、前記有機塩素化合物を分解する前記地盤中の微生物を活性化させることで浄化する汚染地盤の浄化方法であって、
    有機塩素化合物で汚染された地盤に注入孔を形成する注入孔形成工程と、
    順に、グリセリンにデンプンを添加して混合し、界面活性剤を添加して混合し、植物油を添加して混合してなり、水を含有しない浄化剤を、前記注入孔に注入する浄化剤注入工程と、
    を行うことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
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