JP6616599B2 - 固体酸化物形燃料電池用の電極材料とこれを用いた固体酸化物形燃料電池 - Google Patents
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Description
遷移金属成分のなかでも、金属ニッケル(Ni)は改質反応やシフト反応に活性の高いため、SOFCの運転環境においてNiに還元され得るNiOは遷移金属成分粉末として好ましい。
遷移金属成分粉末は、遷移金属および遷移金属化合物からなる群から選択される少なくとも一つの遷移金属成分からなる粉末を含んでいる。遷移金属成分としては、具体的には、元素周期律表の3族〜11族に属する遷移金属元素の単体(すなわち、遷移金属)や、当該遷移金属元素を主要構成成分とする化合物(すなわち、遷移金属化合物)であり得る。ここで、遷移金属化合物とは、当該遷移金属元素と他の金属元素および/または半金属元素からなる合金、固溶体、金属間化合物等の金属的性質を示す物質や当該遷移金属元素と非金属元素との化合物(典型的には、酸化物、窒化物等)を包含する。例えば、典型的には、チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr),マンガン(Mn),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu)等の3d遷移元素、ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd),オスミウム(Os),イリジウム(Ir),白金(Pt),金(Au),銀(Ag)の貴金属元素等の金属、白金−パラジウム合金,白金−ロジウム合金等の合金、並びに、酸化コバルト(CoO,Co2O3,Co3O4),酸化銅(CuO,Cu2O),酸化銀(AgO,Ag2O),酸化タングステン(WO,W2O3,WO3,WO6)等の酸化物および窒化物等の遷移金属化合物が挙げられる。
一般に、市販されている遷移金属成分粉末は、各遷移金属の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物等の塩類又は遷移金属粉を、ロータリーキルン等の転動炉、プッシャー炉等の連続炉、あるいはバーナー炉等のバッチ炉を用いて、酸化性雰囲気下で焼成し、必要に応じて粒度調整をすることにより製造されている。そしてこのような遷移金属成分粉末についてのパラメータPは、典型的には0.083以下であり、多くの場合は0.08以下であり、例えば0.05以下であり得る。
上記のパラメータPは、0.09以上であるのが好ましく、0.1以上であるのがより好ましく、0.11以上であるのが特に好ましい。例えば、Pは、0.12以上や、0.13以上の値であることが更に好ましい。パラメータPの上限は特に制限されず、理論的に1に近いほどより好ましい。すなわち、理想的には、個々の遷移金属成分粒子が、遷移金属成分の単結晶粒子であることが望ましい。
粉末X線回折法において、例えば、遷移金属成分粉末がNiO粉末である場合、2θ=43°に検出される回折線に基づき、平均結晶子径を算出することができる。
また、平均粒子径は、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径)である。
酸素イオン伝導性材料粉末としては、SOFCの運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する各種の材料の粉末を用いることができる。例えば、SOFCの固体電解質材料として使用されている各種の材料の粉末を好適に用いることができる。このような酸素イオン伝導性材料としては、具体的には、ジルコニア(ZrO2),セリア(CeO2)等の酸化物に、マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al),カルシウム(Ca),チタン(Ti),ガリウム(Ga),ストロンチウム(Sr),イットリウ(Y),ジルコニウム(Zr),ニオブ(Nb),スカンジウム(Sc),ハフニウム(Hf),バリウム(Ba),タングステン(W),ビスマス(Bi),ランタン(La),セリウム(Ce),サマリウム(Sm),ガドリニウム(Gd),エルビウム(Er)等の安定化元素を添加(ドープ)して結晶構造を安定化させた、安定化ジルコニア、安定化セリア等を好適に用いることができる。なかでも、イットリア安定化ジルコニア(YSZ),スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ),サマリウムドープセリア(SDC)およびガドリニウムドープセリア(GDC)はSOFCの運転環境において結晶構造の安定性が高く、また、高い酸素イオン伝導性を示し得るために好ましい材料であり得る。酸素イオン伝導性材料において、安定化元素は、いずれか1種であっても良いし、2種以上の組み合わせであっても良い。安定化元素の添加割合は厳密には制限されないものの、概ね1〜20モル%程度、例えば4〜15モル%とすることが好ましい。また、酸素イオン伝導性材料は、いずれか1種が単独で酸素イオン伝導性材料粉末を構成していても良いし、2種以上が混合されて酸素イオン伝導性材料を構成していても良い。
(造孔材)
造孔材は、電極を多孔質構造に形成するために電極材料に配合される材料であって、電極作製時(焼成時)に消失する各種の材料を用いることができる。例えば、造孔材としては、天然有機粉体、粒状の合成樹脂材料、炭素粉末等が好ましい例として挙げられる。
天然有機粉体としては、例えば、澱粉を含む各種の植物のうち、澱粉を多く含む種子(胚乳)、塊根等の部位を粉末にしたものや、かかる部位か抽出した澱粉粉末であってよい。例えば、代表的には、もち米粉、米粉、大麦粉、小麦粉、オート(燕麦)粉、とうもろこし粉、えんどう豆粉、じゃがいも粉、さつまいも粉、キャッサバ粉、葛粉、サゴ粉、アマランス粉、バナナ粉、アロールート粉、カンナ粉などの食物粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ粉等の澱粉粉末を例示することができる。
上記の粉末状の電極材料は、そのまま圧縮成形する等して電極構造に成形してもよいし、あるいは、粉末状の電極材料を分散媒中に分散したペースト(インク、スラリー、サスペンションなどを包含する)の形態に調製して用いるようにしても良い。このとき用いる分散媒としては、上記の遷移金属成分粉末および酸素イオン伝導性材料粉末を良好に分散し得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられている各種の分散媒を特に制限なく使用することができる。典型的には、かかる分散媒としては、ビヒクルと、粘度調整のための有機溶媒との混合物を考慮することができる。
有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体(グリコールエーテル系溶剤)、トルエン、キシレン、ブチルカルビトール(BC)、ターピネオール等の高沸点有機溶剤の1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記のようにして準備した電極材料の成形体(いわゆるグリーンシート)は、従来のこの種の構成部材と同様に焼成することができる。この場合の焼成温度は、例えば1000℃〜1400℃程度とすることができる。なお、この焼成をSOFCの他の構成部材の焼成と同時に行う場合等には、焼成条件を適宜変更することができる。これにより、例えば、SOFCの燃料極等の燃料電池構成部材を作製することができる。
[実施態様1]
ここに開示される技術により提供される固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、本質的には、燃料極(アノード)と固体電解質と空気極(カソード)とが備えられている。ここでSOFCは、例えば、従来公知の平板型(Planar),MOLB型、縦縞円筒型(Tubular)、あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒型(Flat tubular)、一体積層型等の種々の構造のSOFCであってよい。また、ここに開示される電極材料を用いた電極(典型的には空気極)は、形状やサイズは特に限定されない。SOFCを支持する支持体(基材)についても特に制限なく、例えば燃料極(アノード支持型)、空気極(カソード支持型)、固体電解質(固体電解質支持型)等であり得る。
かかるSOFC10に電流を印加すると、空気極20において、酸素含有ガス(典型的には空気)中の酸素がイオン化されて、酸素イオン(O2−)となる。この酸素イオンは、空気極20から固体電解質30を介して燃料極40に供給される。そして該燃料極40において、燃料ガスと反応して水(H2O)を生成し、電子を放出することにより、発電が行われる。
かかる実施態様における固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムは、SOFCのスタックセル100を備えている。図2に、スタックセル100の一形態の分解斜視図を模式的に示す。このスタックセル100は、SOFC(単セル)10A,10Bが、インターコネクタ50(50A)を介して複数層積み重なったスタックとして構成されている。単セル10A,10Bは、層状の固体電解質30の両面が、それぞれ層状の燃料極(アノード)40と空気極(カソード)20とで挟まれたサンドイッチ構造を備えている。図面中央に配されるインターコネクタ50Aは、その両面を二つの単セル10A,10Bで挟まれており、一方のセル対向面52がセル10Aの空気極20と対向(隣接)し、他方のセル対向面54がセル10Bの燃料極40と対向(隣接)している。かかる燃料極40は、ここに開示される電極材料から構成されている。また、インターコネクタ50は、例えば、SUS430等の耐熱合金,Crofer(ティッセンクルップ),ZMG(日立金属)等の金属材料や、LaCrO3系のセラミックス材料を使用して構成することができる。インターコネクタ50の、セル対向面52には複数の溝が形成されており、供給された酸素含有ガス(典型的には空気)が流れる空気流路53を構成している。同様に、反対側のセル対向面54にも複数の溝が形成されており、供給された燃料ガス(典型的にはH2ガス)が流れるための燃料ガス流路55を構成している。かかる形態のインターコネクタ50では、典型的には空気流路53と燃料ガス流路55とが互いに直交するように形成されている。一般的な動作においては、酸素(O2)含有ガス中のO2ガスが空気極54で還元されてO2−アニオンとなり、固体電解質を通って燃料極40に移動し、H2ガス燃料を酸化する。そしてかかる酸化反応に伴い、電気エネルギーを発生させている。
なお、以上のSOFCシステムの製造方法は、従来公知の製造方法に準じればよく特別な処理を必要としないため、詳細な説明は省略する。
(例1〜5)
製造元の異なる5通りの酸化ニッケル(NiO)粉末を用意し、例1〜5の遷移金属成分粉末とした。この例1〜5の遷移金属成分粉末(酸化ニッケル)の平均粒子径と平均結晶子径とを測定し、下記の表1に示した。また、平均粒子径と平均結晶子径との値から、パラメータPを算出し、併せて表1に示した。
なお、各酸化ニッケル粉末の平均粒子径は、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の粒度分布におけるD50を採用した。
励起X線:CuKα(波長λ=1.54056Å),50kV,50mA
測定範囲:2θ=10〜60°
ステップ幅:0.01°
スキャンスピード:5°/min
例1〜5と同じ遷移金属成分粉末(酸化ニッケル粉末)に対し、1100℃〜1500℃の温度で0.5〜20時間程度加熱する結晶子径調整処理を施すことで、結晶子の大きさを様々に変化させた。その後、ビーズミル(寿工業(株)製、ウルトラアペックスミル、ビーズ径0.5mm)を使用し、結晶子調整処理後の酸化ニッケル粉末を2000rpmの条件で湿式粉砕することで、例6〜13の遷移金属成分粉末とした。
このようにして得た例6〜13の遷移金属成分粉末について、上記例1〜5と同様に、平均粒子径と平均結晶子径とを測定するとともに、パラメータPを算出し、これらの結果を併せて表1に示した。
また、上記で用意した各例の遷移金属成分粉末をSOFCの燃料極用材料として用い、以下の手順で、評価用のSOFCセルを作製した。
まず、酸化ニッケル(NiO,平均粒子径0.5μm)粉末と、8%イットリア安定化ジルコニア(8%YSZ,平均粒子径0.5μm)粉末とを、60:40の質量比で混合することで、燃料極支持体用材料を用意した。そして、この燃料極支持体用材料と、造孔材(炭素成分)、バインダ(ポリビニルブチラール;PVB)、可塑剤および分散媒(キシレン)とを、順に48〜58:15〜5:8.5:4.5:24の質量比で混練することにより、ペースト状の燃料極支持体形成用組成物を調製した。次いで、この燃料極支持体形成用組成物をキャリアシート上にドクターブレード法によりシート状に塗布し、乾燥させることで、厚みが0.5〜1.0mmの燃料極支持体グリーンシートを形成した。
このようにして用意した積層グリーンシートを円形に切り抜き、1350℃で共焼成することで、燃料極支持体,燃料極層,固体電解質層および反応防止層が順に一体的に積層されたSOFCのハーフセルを得た。なお、焼成後のハーフセルの形状は、直径20mmの円形であった。
そして、このように得られた評価用のSOFCについて、発電性能と劣化率とを以下に示す手順で測定した。
各例のSOFCを下記の条件で運転し、電流密度0.5A/cm2における出力密度(W/cm2)を測定し、発電性能とした。その結果を、表1の「発電性能」の欄に示した。
燃料極供給ガス:水素ガス(50ml/min)
空気極供給ガス:空気(100ml/min)
運転温度:700℃
各例のSOFCを下記の条件で運転し、電流密度0.5A/cm2で100時間運転したときの前後で開放電圧を測定し、下式に基づき電圧劣化率を算出した。その結果を、表1の「劣化率」の欄に示した。なお、式中、「初期開放電圧」は、運転前の開放電圧であり、「運転後開放電圧」は、100h運転後の開放電圧である。
燃料極供給ガス:水素ガス(50ml/min)
空気極供給ガス:空気(100ml/min)
運転温度:700℃
劣化率={(運転後開放電圧)−(初期開放電圧)}÷(初期開放電圧)
表1の結果を基に、燃料極の電子伝導性材料の平均粒子径と、発電性能および劣化率との関係を図3に、結晶子径と、発電性能および劣化率との関係を図4に、パラメータPと、発電性能および劣化率との関係を図5に、それぞれ示した。
図3および図4から明らかなように、平均粒子径と結晶子径とは、発電性能および劣化率との間に有意な相関関係は見られなかった。これに対し、図5に示すように、パラメータPについては、発電性能および劣化率との間に相関を示しP>0.085の場合に発電性能が確実に0.36を超え、かつ、劣化率が0.1未満の良好な値となることがわかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
20 空気極(カソード)
25 反応防止層
30 固体電解質
40 燃料極(アノード)
50,50A インターコネクタ
52 ,54 セル対向面
53 空気流路
55 燃料ガス流路
100 スタックセル
Claims (6)
- 固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料であって、
前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末と、
前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末と、
を含み、
前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり且つ混合された状態で存在しており、
前記遷移金属成分粉末は、平均結晶子径をS、平均粒子径をDとしたとき、次式で表されるパラメータP:P=S/D;がP>0.085を満たす、電極材料。 - 前記酸素イオン伝導性材料粉末は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ),スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ),サマリウムドープセリア(SDC)およびガドリニウムドープセリア(GDC)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電極材料。
- 前記遷移金属成分粉末は、少なくとも酸化ニッケル(NiO)を含む、請求項1または2に記載の電極材料。
- 前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末との割合は、質量比で、90:10〜40:60である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極材料。
- 少なくとも1種の分散媒を含み、ペースト状に調製された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極材料。
- 燃料極と、固体電解質と、空気極と、を備えた固体酸化物形燃料電池であって、
前記燃料極が請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極材料から作製されている、固体酸化物形燃料電池。
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