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JP6654680B2 - デジタル測定を実施するための方法およびシステム - Google Patents
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Description

関連出願の相互参照
本願は、全ての目的で全体として本明細書に明示的に組み入れられた2011年1月20日出願の米国特許仮出願第61/434,670号の利益を主張するものである。
発明の背景
本発明は、デジタル測定を実施するための方法、デバイスおよびシステムに関する。より具体的には本発明は、様々な体積においてデジタル測定を実施するための方法、デバイスおよびシステムに関する。
デジタル測定は、それが示すロバスト性、高感度および高精度ゆえに、生物学において益々重要になっている。加えて、実践標準で較正しなければならないことの多いアナログ測定とは異なり、二進法でのイエス/ノーの応答を計数することに基づくデジタル測定は、較正の必要が無く、つまりユーザーの時間を節約し、アッセイのロバスト性および容易性を高める。
デジタルアッセイの重要な適用例は、試料中に存在するDANまたはRNAの精密な定量である。ここで、DNAまたはRNAを検出するために最も広く用いられる方法は、試料を通常、60℃および95℃前後の2または3つの温度間をサイクルするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。DNAまたはRNAを増幅させるためのPCRの使用は、基礎生物学から臨床診断学および法医学の範囲で、広い範囲の専門分野を大きく発展させた。診断学および生体医学の研究で用いられることの多いPCRの1つの特別な形態が、定量PCR(qPCR)であり、それは試料中のDNAまたはRNAの存在を検出するだけでなく、その濃度の正確な測定も提供する。これは、それに続く決定および分析を行うための重要なデータポイントであり、例えば患者に与えられHIV治療薬の量は、検査試料中の検出されたウイルスRNA量により決定される。
これまでqPCRを実施するための最も一般的な形態が、リアルタイムqPCRであり、それは基礎生体医学研究および臨床診断をはじめとする多くの領域で広く用いられている。リアルタイムPCRでは、試料の絶対濃度が、増幅工程の時間発展から推測され、増幅産物を特異的に認識する蛍光プローブ、例えば分子ビーコンまたはTaqman(登録商標)プローブを用いてモニタリングされる。リアルタイムPCRは、プライマー分子が配列内の相補的伸張(complementary stretches)のため互いに結合する不適切なプライマーダイマーを形成するなど、様々なエラーを受け易い。結果として、副生物が生成され、それが入手されるPCR試薬の標的要素と競合し、こうして標的配列の増幅を潜在的に阻害して、精密な定量を妨害する。標的の定量には、各サイクルの増幅効率の正確な知識も必要となり、成長が指数関数的であるため、増幅効率における些細な不確実性(例えば、閾値検出レベル未満の)が、標的コピー数の決定において非常に大きな誤差をもたらす。この誤差は、核酸の初期濃度が低い場合、または蛍光検出に十分な感受性が無い場合、非常に大きくなる可能性がある。複雑な試料から標的DNAを同定および定量する能力があるにもかかわらず、リアルタイムPCRは、例えば病原検出または臨床診断に必要となる十分な正確さで、低濃度の試料を定量することができない。
低コピー数のDNAを定量するリアルタイムPCRの難点を克服するために、試料中の鋳型の絶対コピー数をより精密に定量することができるデジタルまたは限定希釈DNA増幅が開発された。dPCRでは、ポアソン統計に基づいてわずかな体積が1つ以上の標的分子を含有し、体積の大部分がDNAを含有しないように、全試料を小体積のアレイに分割する。その後、DNA増幅が、全ての体積で同時に実施され、標的分子を含有するわずかな体積で蛍光を増加させる。DNAコピー数は、蛍光体積(即ち、DNAのコピーを含有するもの)の数を計数することにより、容易にかつ精密に決定される。
dPCRの概念は、魅力的であるが、(1)dPCRに用いられる非常に少量の(ピコリットル〜ナノリットル)の大きなアレイを作成することが困難となり得るため、そして(2)実験のダイナミックレンジが分離したアレイのサイズおよび数により定義され、それが多くの場合非常に低いため、まだ広範囲で用いられない。試料中のDNAまたは蛋白質の量を精密に定量するために、コンパートメントのほとんどが、典型的には最大で1つの標的分子を含有する。これにより、試料の初期濃度がアッセイのダイナミックレンジに適合されることが示唆される。言い換えれば、正しい試料濃度をデバイスに入力してdPCRを実践する前に、初期試料濃度が決定されていなければならない。これが、dPCR実践の不便さを促進し、一定体積でのデジタルアレイの可能性を限定する。
用いられる特定の反応にかかわらず、デジタルアッセイのダイナミックレンジの限定を克服することは重要である。直接的な方法は、同じサイズのデジタル化体積の数を増加させることにより、アッセイの範囲を拡大することである。このアプローチには問題があり、多量の体積を収容するために、デバイスは大きくなければならず、かなり複雑で高価な微細作製を含むことになる。つまり、デジタル測定を実施するための追加的方法およびシステムが必要となる。
dPCRの上述の実践的問題の他に、該方法の広範な使用は、正確な温度制御および温度サイクルによっても妨害される可能性がある。一般にアニーリングおよびメルティングステップの温度は、±1℃以内に制御される。DNAおよびRNAの絶対的定量が重要となる多くの適用例では、これらの因子は、特に資源の限られた設定およびポイント・オブ・ケアにおいては、適合が困難であるか、または実現に費用がかかる。これらの設定において、DNAおよびRNAを増幅するためのより人間工学的方法を提供するために、ローリングサークル増幅法(RCA)、核酸配列に基づく増幅法(NASBA)またはループを介した増幅法(loop−mediated amplification)をはじめとする複数の等温法が開発された。
LAMPは、DNAまたはRNAを非常に高い特異性により60〜65℃の一定温度で増幅するための等温法である。高い特異性により、増幅の間に一塩基差を識別することができる。結果として、LAMPは、SNP(一塩基多型)の分類に適用されてきた。LAMPは、RT−PCRよりも約10倍高い感度でウイルスRNAを検出することも示された。他の等温法からLAMPを判別する別の特色は、溶液の濁度を上昇させるピロリン酸マグネシウムの生成と、DNAの増幅を直接相関させる能力である。つまりLAMP溶液の進行は、簡単な濁度計で追跡することができる。それゆえ、不均一アッセイを、LAMPから得られる増幅産物を検出するのに用いることができる。ピロリン酸マグネシウムの生成は、蛍光指示薬の形態で用いることもでき、それはデジタルアッセイの読出しに特に有用となる。反応の前に、少量のカルセインが、反応混合物に添加される。増幅の間に、ピロリン酸塩の生成が増加することにより、1つ以上の標的分子を含有するそれらの体積中のカルセイン蛍光色素が、急激に増加する。
これらの反応は、一定温度で進行し、機器の複雑性を低減してエネルギー消費を減少させるため、ポイント・オブ・ケア診断および家庭医学用デバイスにとってより適したものになる。これらの方法をデジタル形式に移行させるのは、ポイント・オブ・ケアでのより良好でより精密な病原検出に向けた重要なステップである。その上デジタルアッセイは、ELISA(酵素免疫測定法)などの蛋白質増幅に基づくアッセイ、または増幅を必要とする場合もあれば、またはしない場合もある任意の一分子に基づくアッセイの精度も改善する。
先の観点から、デジタル測定を実施するための改善された方法およびシステムを提供する必要がある。加えて、デジタルLAMPなどのデジタル測定を用いた追加の技術を提供する必要もある。本明細書に開示された発明は、これらの必要物およびそれ以上を提供する。
発明の簡単な概要
本発明は、デジタル測定を実施するための方法、デバイスおよびシステムを提供する。より具体的には本発明は、様々な体積においてデジタル測定を実施するための方法、デバイスおよびシステムに関する。幾つかの態様において、本発明は、非限定的にデジタルPCR、デジタル等温核酸増幅(例えば、デジタルNASBAおよびデジタルLAMP)、デジタル蛋白質増幅(例えば、デジタルELISA)、デジタル一分子測定、および他の形態のデジタル測定をはじめとするデジタル測定のダイナミックレンジを増加させる方法および装置を提供する。
一態様において、本発明は、
試料濃度勾配を生成すること;および/または
異なるサイズの試料体積を生成すること、
を含む、試料中のデジタル測定のダイナミックレンジを増加させる方法を提供する。
一実施形態において、ダイナミックレンジは、濃度勾配の形成のための方法および装置を用いてデジタル測定および読出しを統合することにより増加される。被分析分子の濃度勾配は、好ましくは対数的または指数関数的な形状であるが、非限定的に線形、多項式、誤差、ガウス、指数関数、対数数、およびそれらの任意の組み合わせをはじめとする多数の他の形状が可能である。
別の実施形態において、ダイナミックレンジは、様々なサイズのデジタル化体積を用いることにより増加される。例えばダイナミックレンジは、同じチップまたは基板上で、体積100nLであるデジタル体積のアレイの1セット、10nLであるアレイの第二のセット、1nLであるアレイの第三のセット、100pLであるアレイの第四のセット、10pLであるアレイの第五のセット、1pLであるアレイの第六のセット、100fLであるアレイの第七のセット、10fLであるアレイの第八のセット、および最後に1fLであるアレイの第九のセット、を有することにより増加させてもよい。最終的な適用に応じて、同じチップ上のこれらのアレイセットの全てを有する必要がなくてもよい。幾つかの適用例では、1fL〜1nLに及ぶアレイで、十分となり得、他の適用例では、100nL〜1pLに及ぶアレイが、より適切となり得る。更に別の適用例において、異なる体積の2つのセットを有する2つのアレイセットのみで、十分となり得る。異なる体積を含むアレイセットの数は、様々であり、各アレイのサイズに依存する。例えばアレイセットが、100万のデジタル化体積を含む場合には、pL〜nLの濃度範囲に及ぶ1nL、100pL、10pLおよび1pLのアレイを有する必要がなくてもよく、単に100pLおよび1pLの2つのアレイセットで、十分となり得る。
別の態様において、濃度勾配およびデジタル化体積のサイズ変化の使用を組み合わせて、デジタル測定のダイナミックレンジを更に増加させることができる。別の態様において、本発明は、濃度勾配および異なるサイズの個別体積を利用して試料のデジタル一分子測定のダイナミックレンジを増加させる方法である。別の態様において、本発明は、疎水性および親水性パッチを用いてパターン化された表面を調製するプロセスであり、該パッチは、異なるサイズの試料体積の湿性液滴を形成させる。別の態様において、本発明は、本明細書に記載された方法のいずれかを実施する機械のためのコンピュータで実施可能な命令を保存する、非一時的コンピュータ読取り可能媒体である。別の態様において、本発明は、疎水性および親水性パッチを用いてパターン化された表面を含むアレイであり、該パッチは、異なるサイズの試料体積の湿性液滴を形成させる。別の態様において、本発明は、不均一アッセイにおいて試料のデジタル測定のダイナミックレンジを増加させるために用いられる。濃度勾配を形成させる方法および試料体積をデジタル化する方法が数多く存在することに留意することが重要である。本明細書に示された実施例は、限定と解釈すべきではない。
本発明は、以下のものを実施する方法および装置も記載する:(1)デジタルNASBA、(2)デジタルLAMP、(3)疎水性および親水性パッチでパターン化された表面を用いて形成された表面に付着された液滴を用いた、PCRまたは他の核酸増幅の実施、ならびに(4)不均一アッセイを用いたデジタル核酸増幅の読出し実施。
更に別の態様において、本発明は、デジタル測定を用いて試料の濃度を決定する方法を提供する。該方法は、第一の体積分布を有する第一の複数の液滴であって、該第一の複数の液滴の少なくとも1つが試料の内容物を含有する、第一の複数の液滴を生成すること;第一の体積分布と同一または異なる第二の体積分布を有する第二の複数の液滴を分析して、検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液滴の数を決定すること;ならびに検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液体の数を利用して試料の濃度を決定すること、を含み得る。
更に別の態様において、本発明は、試料のデジタル測定を実施するためのシステムを提供する。該システムは、第一の体積分布を有する第一の複数の液滴を含有するサンプルホルダーと;第一の複数の液滴の少なくとも1つを含有する検出可能な薬剤を検出する検出器と;保存された実施可能な命令を含む記憶デバイスを含むコンピュータと、を含み得て、該命令は、プロセッサにより実施されると、プロセッサに、第一の体積分布と同一または異なる第二の体積分布を有する第二の複数の液滴を分析させて、検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液滴の数を決定させ;ならびに検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液体の数を利用させて試料の濃度を決定させ得る。
更に別の態様において、本発明は、試料のデジタルでのループを介した増幅を実施する方法を提供する。該方法は、試料の複数の液滴のうち少なくとも1つの液滴が核酸分子を含む試料の該複数の液滴を、マイクロ流体デバイス上で生成すること;および少なくとも1つの液滴中でループを介した増幅を実施して核酸分子の増幅産物を生成すること、を含み得る。
本発明の性質および利点をより完全に理解するために、以下に続く詳細な説明を添付の図面と併せて参照しなければならない。図面は、本明細書の実施形態を例示として表す。本発明は、本発明を逸脱することなく様々な点で改良が可能である。したがって実施形態の図面/図および説明は、本質的に例示であり、限定ではない。
勾配濃度の被分析物を含むデジタル化体積の生成を示す。視覚化の目的で、蛍光色素のフルオレセインを被分析物として用いた。ウェルのアレイに勾配を流す。ここで、最上部入口(最上列)からの200μL/分の200μMフルオレセインおよび最下部入口(最下列)からの400μL/分の水を用いて、勾配を生成させた。ウェルに濃度勾配が充填されたら、ライトミネラルオイル(水よりも低比重)をウェルに流して、ウェル内の個々のデジタル化体積を生成した。この実施例でのウェルは、同体積であるが、様々な体積のウェルを用いることができる。この実験では、ウェルは、径75μmおよび深さ100μmであり、高さ2mmのフローチャンバーの下に静置した。 疎水性および親水性パターン化表面を用いて様々なサイズ(体積)のデジタル化体積を生成するための方法および装置を表す。ここで、円形状の親水性パッチが、疎水性表面の背景でパターン化される。この表面が、水(または任意の他の水性溶液、例えば試料溶液、PCR試薬溶液、または緩衝液)および油に暴露されると、水性溶液は親水性パッチを浸し、油溶液は疎水性表面を浸すようになる。その結果、水性溶液の液滴(または半液滴)が、油を取り囲む親水性パッチ上に形成する。更に、親水性パッチの面積(例えば、円の面積)を変動させれば、異なるサイズの親水性パッチによって、親水性パッチにより保持された水溶液容量が制御される。親水性パッチにより保持された容量は、パッチが円形であったとしても異なる断面積形状を有することができる。厳密な形状は、用いられる正確な疎水性および親水性表面、ならびに油相および水相の性質に依存する。断面積形状は、半球形または半球形よりも丸まったもしくはパンケーキ状であってもよい。親水性パッチは、好ましくは円形であるが、正方形および長方形をはじめとする複数の他の形状であってもよい。 本発明の実施形態によるコンピュータシステムの例示を提供する。 本発明の例示的実施形態による、占有液滴の累積数に対する液滴数の関連性を表す。サイズのシミュレーションは、濃度(プロットの左から右に向かって)2.0×10−3、2.0×10−4、2.0×10−5、2.0×10−6、2.0×10−7、および2.0×10−8分子/fLについてである。全てのシミュレーションは、径が4〜190ミクロンで広がる均一分布から出された10,000の液滴を含んだ。全ての液滴が、最小体積から最大体積まで分類され、液滴数iのための占有液滴の累積数は、液滴数がi以下である占有液滴の総数であった。 濃度2.0×10−6での本発明の例示的実施例による占有液滴の累積数のシミュレーションを提供する。他の詳細は、図1と同様である。低領域では、液滴が占有されている確率は非常に小さく、そのためシミュレートされた曲線は、そこではゼロである。高領域では、液滴が占有されている確率は、1に非常に近似しており、曲線は そこではほぼ単位勾配で上昇している。移行領域では、液滴が占有されている確率は、0近くからほぼ1まで上昇している。 本発明の例示的実施形態による均一な液滴分布(径4〜190ミクロン)のための推定された統計力を示す。破線は、サイズEの測定誤差についてであり、実線は、サイズEの測定誤差についてである。下の方の2本の線は、1.2倍の分解能(resolution)についてであり、上の方の2本は、1.5倍の分解能についてである。点線は、0.95に引かれている。 本発明の例示的実施形態による均一な液滴分布(径10〜100ミクロン)のための推定された統計力を示す。破線は、サイズEの測定誤差についてであり、実線は、サイズEの測定誤差についてである。下の方の2本の線は、1.2倍の分解能についてであり、上の方の2本は、1.5倍の分解能についてである。点線は、0.95に引かれている。 図8A〜8Bは、本発明の例示的実施形態による顕微鏡を用いた乳化液滴のサイズの決定を表す。図8Aは、シラン処理された顕微鏡スライド上の液滴の暗視野像を示す。個々の液滴のサイズは、液滴が十分に分離しているならば、暗視野像から決定することができる。コントラストが、水相と油との境界から散乱する光から生じ、液滴に円の輪郭を与え、そこから液滴径を測定することができる。スケールバーは、100ミクロンを表す。図8Bは、乳化後に測定された577の液滴のサイズ分布を示す。分布は、メジアン径を20μmとして対称である。ほとんどの液滴径は、10〜40ミクロンの間の範囲内に収まる。 本明細書の表3内のシミュレーションに用いられた切り取り正規対数分布を示す。分布は、図8に示された実験的分布への理想的な近似である。 図9に示された切り取り正規対数液滴分布の推定された統計力を示す。破線は、サイズEの測定誤差についてであり、実線は、サイズEの測定誤差についてである。下の方の2本の線は、1.2倍の分解能についてであり、上の方の2本は、1.5倍の分解能についてである。点線は、0.95に引かれている。 図11A〜11Dは、本発明の例示的実施形態による液滴のPCR増幅の検出を示す。図11Aおよび11Bは、PCR後の標的DNAを有さない液滴の映像を示す(陰性対照の実験)。暗視野像/ROX(11A)および暗視野像/FAM(11B)の組み合わせを示す(ここでROXは、反応に添加された参照色素であり、FAMは、DNA増幅を検出するためのTaqman(登録商標)プローブ中で用いられる蛍光指示薬である)。暗視野が、液滴の環状外周を照らしており、蛍光源からのガウス形蛍光シグナルが重なっている。挿入図は、液滴の中心を通る淡灰色の線に沿って測定された強度を示す。液滴の中心領域のシグナルは、ほとんど蛍光によるものであり、DNAターゲットの非存在下では、中心領域は暗いままであり、ROXとFAMとの蛍光比は、高い(ROX:FAM=12:20=6:1)。図11Cおよび11Dは、標的DANを含む液滴のPCR後の映像である。暗視野像/ROX(11C)および暗視野像/FAM(11D)の組み合わせを、液滴を通る対応するラインスキャンと共に示す。ラインスキャンは、中心領域の蛍光シグナルの増加および含有しない液滴中で観察されなかったガウスプロファイルを示す。2つの蛍光シグナルの間の各比率は、含有しない液滴よりも有意に低い(ROX:FAM=60:30=2:1)。 図12A〜12Cは、本発明の例示的実施形態による、デジタルLAMP自己デジタル化チップの設計を表す。図12Aは、完全に組み立てられたチップの個々の構成要素を示す略図である。マイクロ流体アレイは、PDMSの薄片中に埋め込むことができ、PDMSは、最上部ではシーラントフィルムに、そして最下部ではPDMSコートされたカバーガラスに覆われていてもよい。空気圧を、取り外し可能なアダプターを介して送達することができ、該アダプターは、外部の圧力供給源に連結させることができる。図12Bは、マイクロ流体ネットワークの例示的見取り図である。長方形のサイドチャンバーの高密度のアレイを、薄いメインチャネルに連結させた。アレイ全体が、別個の水貯蔵器に取り囲まれ、65℃でのインキュベーションの間にPDMSを充満させる。スケールバーは、5mmを表す。図12Cは、サイドチャンバーアレイおよびメインチャネルの例示的配置を示す。寸法は全て、マイクロメートルである。 図13A〜13Eは、本発明の例示的実施形態による、dLAMP SDチップ中の試料の自己デジタル化を示す。図13Aは、サイドチャンバーアレイへの水性溶液の最初の充填を示す連続映像を提供する。チップを油で下塗りした後、水性試料がメインチャネルに入り、水性試料自体をサイドコンパートメントに分配させて、油相をチャンバー内に配置させる。図13Bは、サイドチャンバー内での水性試料の自己デジタル化を示す連続映像を提供する。水相全体がチップに入った後、メインチャネル内の尾を引いている油相により、サイドチャンバー内の個々のナノリットルサイズの液滴が分離された。図13Cは、圧力を加えられたサイドチャンバー内の液滴サイズの分布の依存性を示す。最大平均相対体積分率(RVF)を有する最も均一な分布が、外部圧7psiについて得られた。より低い圧力および高い圧力で、より可変的体積および低いRVFの液滴が形成した。図13Dは、16の個々のチップから5000の自己デジタル化液滴のRVF値のサイズ分布を表す。外部圧は、全ての実験で7psiに設定した。全ての液滴の平均RVFは、0.89±0.14であった。挿入図は、RVF値の累積分布を示す。数字は、それぞれRVFが50%、75%および90%を超える液滴の分率に対応する。例えば全ての液滴の85%が、チャンバーの75%を超える量を満たしている。図13Eは、試料の自己デジタル化の再現性を示す。それぞれが7psiの外部圧で充填されている15の個々のチップの平均RVF値および標準偏差が示される。 図14Aおよび14Bは、本発明の例示的実施形態による、高温でのチップ性能を表す。図14Aは、液滴体積に対するインキュベートの影響を示す。典型的な液滴のサイズ分布を、65℃での70分間インキュベートの前後で示す。試料は、テンプレート含まない陰性対照溶液からなり、つまり増幅が全く起こらないと予測された。液滴は、平均で約10%収縮した。挿入図に認められる通り、アレイの周辺に位置する液滴は、嵩高のPDMSにより多く暴露されたため、わずかに収縮が増加した。アレイの中心の液滴は、収縮による影響をあまり受けなかった。図14Bは、チップにおいて観察されたデジタルLAMPシグネイチャを示す。チャンバーアレイの区分を、インキュベートの前後で示す。強度プロファイルは、複数のチャンバーの中心を通る線に対応する。チャンバーの幾つかにおけるループを介したDNA増幅は、蛍光を急速に増加させた。隣接した非LAMP競合チャンバーは、蛍光の増加を全く示さず、隣り合うチャンバーの間の相互干渉が無視できる程度であることが実証された。 図15A〜15Fは、異なるDNAテンプレート濃度c:c=c/4(15A)、c=c/30(15B)、c=c/150(15C)、c=c/430(15D)およびc=c/1300(15E)、でのデジタルLAMPの結果を示す。cは、テンプレート原液の濃度である。LAMP競合チャンバーの各分率は、図16において分析される。最低の試料濃度(c/1300)での実験では、535番チャンバーチップを用いて、陽性チャンバーの絶対数を増加させた。図15Fは、テンプレートを添加していないLAMP溶液の対照実験を示す。予測された通り、チャンバーはいずれも、バックグランドを超える蛍光増加を示さなかった。 図16Aおよび16Bは、本発明の例示的実施形態による、DNA濃度の相対および絶対変動の定量を示す。図16Aは、LoopAmp(登録商標)キットに含まれた対照DNA試料の希釈系列を示す(図15参照)。各試料濃度では、少なくとも3つの異なるチップを分析した。実線は、原液1μlあたり0.99×10分子の鋳型濃度でのポアソン分布に基づく陽性事象の予測係数を表す。この濃度は、3つの最低の試料から決定された。535番ウェルのチップは、65℃での70分間インキュベーション前後に示される。λ相DNAは、1μlあたり20コピーの最終濃度に希釈されて、そこで約12%陽性チャンバーを予測した。インキュベーション後に、535番ウェルアレイ内の9.8%LAMP競合液滴を検出した(最初に形成された液滴479のうち47)。fの予測値と測定値の間の差は、8倍希釈系列の間に蓄積されたピペッティング誤差により生じた可能性がある。 Z検定から推定された信頼水準とシミュレーションから推定された信頼水準との比較を含む表2を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、デジタル測定を実施するための方法およびシステムを提供する。より具体的には本発明は、様々な体積においてデジタル測定を実施するための方法およびシステムに関する。
I.概論
非限定的に、本発明は、可変的サイズの体積を生成させることによりデジタルアッセイのダイナミックレンジを増加させることに一部基づく。所与の試料濃度では、体積のサイズは、該当する1つ以上の分子(例えば、テンプレート分子)により占有される確率を定義することができる。増幅関連の技術の例において、体積サイズの変動を利用して、この占有の確率、つまり増幅を示すウェルまたは試料体積(例えば、液滴)の数を変化させることができる。とりわけ本発明は、単に一定サイズの体積の数を増加させることでダイナミックレンジを増加させる既存の技術よりも良好である。この利点は、本明細書に開示された方法およびシステムが、ダイナミックレンジを拡大するために必要となる体積を収容するのに大きな面積を要求せず、例えば幾つかのデジタル化体積が適切に形成しない、または他の欠点を有するチップ上の欠陥の見込みを高めるためである。加えて、体積の数を単に増加させると、デジタル化体積の全てを分析するのに必要となる時間も増加する。
更に本発明は、様々なサイズの体積が多量に生成される、ダイナミックレンジの増加わせるデジタルアッセイを実施する方法、システムおよびデバイスを提供する。上述の組立て式のプラットフォームとは異なり、本発明は、個別ではなくむしろ連続しているサイズ(例えば、体積)分布の使用を含み得る。幾つかの実施形態において、様々なサイズの液滴を、無秩序に、またはマイクロ流体の制御的適用により、様々な方法で生成することができる。例えば一定体積の液滴のマイクロ流体生成は、T字路の使用またはフローフォーカシングデバイスを用いることにより、当該技術分野で周知である。これらのシステムにおいて、液滴のサイズは、せん断速度およびチャネル寸法により制御することができる。所与のT字路配置で、せん断速度が連続的に変化する場合、これらの体積の液滴が生成され得る。これらの方法は、水相および油の担体液の相対的流速を調整する、例えばコンピュータ制御のシリンジポンプまたはモジュレートされた空気圧により、実現することがでる。
幾つかの実施形態において、様々なサイズの液滴が、サンプルホルダー(例えば、試験管)中での乳化により、無秩序に生成され得る。液滴の無秩序性は、例えば液滴のサイズを制御する労作を全く必要としないため、実験を単純化することができる。乳化の間に、異なる体積の液滴を、異なる界面活性剤の使用により安定化することができる。乳化アプローチは、複数の理由で特に有用であり:つまり(1)該方法は、各生体医療検査室において見出される基本的機器と適合性があり、(2)液滴の生成が単純で、流量制御のための複雑なチップ設計または洗練された設備を要求せず、(3)液滴が個々のウェルに閉じ込められず、多数の液滴を収容するのに要求されるスペースが最小限になり、および(4)試料容器が増幅の間の液滴生成および液滴貯蔵用に用いられ得るため、アッセイが単純である。試料の移行は、液滴生成から増幅反応までの間に全く必要とならない。
用語「ダイナミックレンジ」は、変動可能な量の可能な最大値と最小値との比率として定義される。
用語「デジタル化体積」は、最初の試料を得て、それをアッセイ用の調製において物理的に離れたより小さな体積に分離した後の生成された体積を指す。
用語「均一アッセイ」は、全てのアッセイ成分が検出時間に溶液相中に存在する場合に定義される。均一アッセイにおいて、アッセイ成分はいずれも、検出可能な光を散乱しない。
用語「不均一アッセイ」は、1つ以上のアッセイ成分が検出の時間に固相中に存在する場合に定義される。LAMPまたはローリングサークル増幅法などにおける沈殿または粒子の形成が、不均一アッセイの一般的形態である。このタイプのアッセイでは、固相成分は、検出可能な光を散乱させ得る。
本明細書に示された用語「連続的体積分布」は、体積分布を通して予め定義された分離したステップではなくむしろ連続して変動する体積分布を説明するものとする。例えばチップに基づくプラットフォームは、予め定義された分離離したステップにより定義される体積分布で、チップの一部として組み立てられたウェルまたは液滴体積を含み得る。即ちチップは、100nL、10nL、および1nLで存在する体積を有し、それらの分離したステップの間に他の体積が全く存在しないように作製することができる。これとは逆に、連続した体積分布は、予め定義されていない(即ち、体積分布は、液滴体積の生成または形成前は定義されない)。連続体積分布は、例えば本明細書に更に記載された通り乳化により生成することができる。乳化において、体積(例えば、液滴体積)は、分離した体積を有するが、分布における液滴体積は、液滴生成前は定義されておらず(即ち、組み立て技術により予め定義されることはなく)、体積は連続体積分布に沿って無秩序に分布されている。液滴体積の上限および下限は、エマルジョンに加えられた力により(例えば、ボルテックス処理の速度または振とうの強度により)改良することができる。しかしそのような技術により生成された液滴体積は、生成された体積分布に沿って連続して変化する。
幾つかの態様において、任意のセットの(または複数の)液滴体積について、f(x)dxを、該セットにおける所与の液滴がx〜x+dxの体積を有する確率とする場合に、その分布関数がf(x)で示され得るように、連続体積分布を特徴づけることもできる。(dxは、極わずかな数である。)特定の実施形態において、連続分布は、液滴セット中の液滴体積が(1)予め特定されておらず、(2)ある程度の範囲xlower<x<xupperでは、f(x)が、常にゼロよりも大きくなる(xlowerは、xupperと同じになり得ず、f(x)について分かる要件は他にない)ものである。つまり本発明は、幾つかの実施形態において、連続分布から取り出された液滴セットを用いること、該セットにおける各液滴の体積を測定すること、および測定された液滴体積を分析において使用すること、を含み得る。
I.デジタル測定の方法
一実施形態において、本発明は、デジタル測定および読出しと統合された濃度勾配を生成する方法を提供する。例えば、マイクロ流体勾配の生成を試料のデジタル化チップと統合してもよい。図1は、マイクロチャネルの入口を用いて形成された濃度勾配の例を示す。ダイナミックレンジを増加させる場合、対数的または指数関数的濃度勾配が好ましいが、現在はパワー関数、指数関数、誤差関数、ガウス関数、および立方根関数などの非線形勾配を含む複数の方法を、チップ上の濃度勾配の様々なタイプおよび形状を形成させるのに利用できる。図1は、被分析物の勾配濃度を含むデジタル化体積の生成を表す。
図1に示されたマイクロ流体設計のタイプを用いて濃度勾配を形成するためには、わずか2つの入口貯蔵器またはチャネルが必要となるが、より多くが本発明の使用に適するであろう。1つの入口は試料用に用いられ、1つは緩衝液(またはデジタルPCRの場合にはPCR試薬)用に用いられる。2つの溶液はネットワークを通して流れるため、試料溶液は緩衝(水またはPCR試薬)溶液により所定の方式で希釈されるようになり、その結果、出口チャネルのそれぞれで異なる濃度の試料が存在する。6桁にわたる線形、多項式および対数勾配は、全て、この設計の変動を利用して生成させた。
別の実施形態において、6桁に及ぶ濃度の対数または指数関数的勾配が、用いられる。試料およびPCR溶液が、2つの入口貯蔵器にピペット注入され、その後、ウェルのアレイを通過する。ウェルが濃度勾配で充填されると、ライトミネラルオイルまたは幾つかの他の非混和性液がウェルを流れて、ウェル内に個々のデジタル化体積が生成する。この実施例におけるウェルは、同じ体積である。本発明の別の実施形態において、図1に表されたスキームは、様々な体積のウェルが用いられる。
別の実施形態において、試料およびPCR溶液が、2つの入口貯蔵器にピペット注入され、その後、親水性および疎水性パッチのアレイを通過する。試料が親水性パッチを流れるため、それらは異なるサイズの試料体積の湿潤された液滴を形成させる。
あるいは試料は、図2に示されたパターン化された表面を用いて、図示された通りデジタル化することができる。
本発明の別の態様において、勾配は、バルブ、ウェル、または液滴を用いて生成されたデジタル化体積と協調的に用いられる。液滴を用いる実施形態において、液滴は、T−チャネル配置またはフローフォーカシング配置のいずれかの連続流動様式で形成することができ、その両者は当該技術分野で周知である。
希釈された試料をデジタル化するために、図1に記載されたデジタル化スキームを用いることができる。ここでは、異なる濃度の標的分子を含有する試料溶液が、凹凸パターン化された表面(topographically patterned surface)を流れて、続くデジタル測定および読出しのためのデジタル化された分離した体積を形成する。あるいは、図2に示されたパターン化表面を用いて、示される通り試料をデジタル化することができる。
別の実施形態において、試料は、マイクロ流体チャネルおよび非混和性液相を用いてデジタル化することができる。この実施例において、試料の相がチャネルに導入され、その後、非混和性相に導入されて、サイドキャビティーの幾何学的寸法により画定される分離した試料体積を形成する(D.E. Cohen, T. Schneider, M.
Wang, D.T. Chiu Anal. Chem. 82, 5707−5717)。
本発明の別の態様は、本発明の方法を実施するためのデバイスを含む。そのようなデバイスは、デジタル測定および読出しと統合された濃度勾配を生成し得る。別の実施形態において、該デバイスは、試料濃度勾配を生成すること;および/または異なるサイズの試料体積を生成すること、を含む、試料のデジタル測定のダイナミックレンジを増加させる方法を実施する。
幾つかの実施形態において、本発明は、異なるサイズのデジタル化された分離した体積のアレイを生成することに基づく、デジタル測定のダイナミックレンジを増加させる方法を含む。この方法は、単にデジタル化体積の数を増加させてダイナミックレンジを増加させることよりも良好である。これは、デジタル化体積の数を単に増加させると、体積が占める面積を増加させるだけでなく、幾つかのデジタル化体積が適切に形成しない、または他の欠点を有する、チップ上に欠陥を有する見込みを高めることになるためである。単にデジタル化体積の数を増加させると、デジタル化体積の全てを分析するのに必要となる時間も増加する。ダイナミックレンジを増加させるためのより良好なアプローチは、デジタル化体積の数を単に増加させるよりもむしろ異なるサイズのデジタル化体積のアレイを生成することによる。異なるサイズのデジタル化体積のアレイは、無秩序なアレイであってもよく(例えば、1つの容器内に全て存在し、そこで無秩序に分布する異なる径の液滴)、または規則的なアレイであってもよい(例えば、図2に示すもの)。
図2は、パターン化された表面を用いて異なるサイズの堆積のアレイを生成する、異なるサイズのデジタル化体積のアレイを生成する一例を示す。この実施例において、7セットのアレイが生成され、各アレイは900のデジタル化体積(30×30)を含む。アレイは、疎水性表面の背景内に親水性の円形パッチを生成することにより形成される。その結果、表面が水溶液および油に暴露されると、親水性パッチが、油に取り囲まれた水性の液滴に覆われることになる。水性液滴の側面図が、図の下側に示されている。この側面図は、半球形の液滴を表すが、その形状は、用いられる厳密な表面ならびに用いられる油および水性溶液に応じて変動し得る(よりパンケーキ状またはより丸まっている)。一実施形態において、重油が用いられ、油が液滴状を押圧するため、その液滴はよりパンケーキ状になるであろう。
900の親水性パッチの各セットを画定する円形は、異なるサイズを有し、径が1μmから50μmまで、10μmまで、50μmまで、100μmまで、500μmまで、最後に1mmまでの範囲内である。液滴の体積は、概ね立方体として液滴の径に応じて増減するため、パッチの径が10倍増加すると、体積は約1000倍増加する。その結果、様々なサイズのデジタル化体積を用いれば、単に同じサイズのよりデジタル化された体積を用いるよりも、空間および読出しに関してより効率的になる。一実施形態において、アレイの各セットでは900のデジタル化体積が用いられ、それはこの数が、統計的にロバストなデジタル読出しに到達するのに適しているためである。しかし、読出しの特定の適用およびに必要となるロバスト性に応じて、アレイの各セット内のよりデジタル化された体積、またはよりデジタル化されていない体積を、設計することができる。
この設計を利用すれば、異なるサイズの親水性パッチを表面パターン化することが容易になるため、様々なサイズのデジタル化体積の大きなアレイを生成するための特有のスキームになる。それゆえ、多くの場合広いダイナミックレンジが望ましいデジタルPCRなどの適用例では、図2に記載されたパターン化表面を用いて生成された液滴中でPCRを実施することが、非常に有利になる。
幾つかの実施形態において、本発明は、デジタル測定を用いて、試料の濃度を決定する方法を提供する。該方法は、第一の体積分布を有する第一の複数の液滴であって、第一の複数の液滴のうち少なくとも1つの液滴が試料の内容物を含有する、第一の複数の液滴を生成すること;第一の体積分布と同一または異なる第二の体積分布を有する第二の複数の液滴を分析して、検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の体積および第二の複数の液滴の数を決定すること;ならびに検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の体積および第二の複数の液体の数を利用して試料の濃度を決定すること、を含み得る。
幾つかの実施形態において、該体積は、バルブ、ウェル、または液滴を用いて生成することができる。液滴を含む実施形態が、特に有用となり得る。ここでは、非常に様々な方法を用いて、異なる体積(径)の液滴を生成することができる。一方法において、定義された体積の液滴は、マイクロ流体を用いて(例えば、当該技術分野で周知のT−チャネルまたはフローフォーカシングで)生成され;せん断速度またはチャネル寸法を変動させることにより、異なるサイズの液滴が容易に形成される。別の方法において、異なる体積の液滴が、異なる界面活性剤で補助された乳化により生成され、ここで異なる体積の液滴は安定化され、異なる界面活性剤の使用により制御される。いずれかの方法を用いれば、被分析物の増幅(例えば、デジタルPCR)を、異なる体積(サイズ)の液滴全てにおいて同時に実施することができ、その後、液滴をフローサイトメータ、または液滴サイズを決定し得る他の類似のデバイスにより単一ファイル形式で流すことができ、液滴の蛍光を調べることができる。この例のデバイスにおいて、各液滴内の増幅産物の存在は、蛍光に基づいて決定され、各液滴のサイズ(体積)は、液滴からの散乱シグナルに基づいて決定される。この方法において、各液滴のサイズおよび所与のサイズの各液滴における増幅の有無に注目することにより、異なるサイズの液滴の十分な数を調べた後に、試料中に存在する被分析物の本来の濃度を逆算することができる。液滴が異なるサイズであるため、所与のダイナミックレンジでは、これまで議論された理由で、分析が、液滴が全て類似サイズの場合のよりもかなり迅速になる。
本明細書に記載された通り、様々な体積分布を有する該体積を、生成することができ、それを様々な異なる方法を用いて分析することができる。幾つかの実施形態において、試料は、分析され得る該当する一分子または複数の分子を含有することができる。試料の分離した体積を、デジタル測定を介した分析用に生成させることができる。例えば本明細書に記載された方法は、1つの体積分布を有する複数の液滴を生成することを含み得る。幾つかの実施形態において、試料の複数の液滴が、本明細書に更に記載される通り、組み合わせた非混和性液を含むエマルジョン中に生成することができる。一実施例において、試料は、該当する分子(例えば、核酸分子)を含む水溶液を含み得る。試料を油と混合して、油中に懸濁された試料の液滴を形成させることができる。用いられる方法に応じて、エマルジョン中の複数の液滴の体積が、連続した体積分布に沿って無秩序に分布することができる。更に、体積の範囲は、エマルジョンを形成させるのに用いられる方法により制御することができる。例えば、ボルテックス処理、振とう、および/または音波処理の強度を制御して、所望の体積分布を生成することができる。
当業者には理解されるであろうが、体積分布の範囲およびその分布内の体積は、所与の分析の様々な因子に依存する。幾つかの実施形態において、複数の液滴の体積分布は、約100ナノリットル(nL)〜約1フェムトリットル(fL)、約10nL〜約10fL、約1nL〜約100fL、約100nL〜約1ピコリットル(pL)、約10nL〜約10pL、約1nL〜約1pLの体積範囲を含み得る。液滴を生成するために選択された因子に応じて、例えば試料および油を界面活性剤と混合する強度を変動させることにより、体積分布の上限および下限を定義することは日常的である。体積分布内に、体積の範囲を存在させることができる。例えば分布内の体積が、係数2よりも大きい範囲であってもよく、係数10よりも大きい範囲であってもよく、係数100よりも大きい範囲であってもよく、他の係数であってもよい。係数2の範囲にすることにより、体積分布の下限は、例えば上限が20nLであれば10nLであってもよい。同様に、係数10の範囲にすることにより、体積分布の下限は、例えば上限が100nLであれば10nLであってもよい。
第一の体積分布を有する第一の複数の液滴を生成することに加えて、本発明は、第二の体積分布を有する第二の複数の液滴を分析することを更に含む。第二の複数の液滴を分析することは、例えば第二の複数の液滴の体積を決定することを含み得る。この体積決定は、様々な方法を用いて(例えば、散乱および/または顕微鏡検査を用いて)実施することができる。幾つかの実施形態において、複数の液滴全ての個々の体積が、決定されてもよい。幾つかの実施形態において、液滴の幾つかの個々の体積のみが、決定されてもよい。液滴を分析することは、本明細書に更に記載される検出可能な薬剤(即ち、1種以上の検出可能な薬剤)を含む液滴の数を決定することも含み得る。第二の複数の液滴が、第一の複数の液滴として生成された同じ液滴に基づくことに更に留意する。つまり第一の体積分布は、第二の体積分布と同一または異なっていても(例えば、より狭くても)よい。分布が同一である場合、第一の複数の各液滴は、第二の複数に含まれることになる。特定の実施形態において、第二の体積分布は、第一の体積分布よりも狭い。例えば液滴は、約1fL〜約100nLの範囲内の体積分布を有するエマルジョン中に生成することができる。例えば試料の濃度に応じて、デジタル測定の分析は、1fL〜1nLの範囲内の体積分布で実施されてもよく、その場合の第二の体積分布は、第一の体積分布よりも狭い。
反応(例えば、増幅)を、体積の分析の前または分析の間に、異なるサイズの体積で実施して、どの体積が反応を受けたか(例えば、増幅産物を有するか)を決定することができる。特定の例において、体積(例えば、液滴)は、サイズ調整することができ、占有された液滴(例えば、検出可能な薬剤を含有する液滴)の数を計数することができる。液滴の全てまたはほんの一部を、分析してもよい。例えばフローサイトメータ、または類似のデバイスで単一ファイル中の液滴を流すことにより実現することができ、そこで液滴のサイズを決定することができ、増幅の存在を検出することができる。液滴のサイズは、例えば液滴からの散乱シグナルに基づいて決定することができ、増幅の存在は、液滴の蛍光シグナルにより指示することができる。あるいは液滴径を、顕微鏡検査により決定することができる。液滴は、サンプルホルダーから抽出して(反応、例えば増幅、の完了前、完了時、または完了後に)、CCDカメラで広視野で映像化することができる。液滴は、例えば表面に広げて、または2枚のスライドガラスの間に包埋して、広視野顕微鏡に配置させることができる。適当な励起および発光フィルターを用いることにより、液滴内の蛍光を定量して、増幅の有無を明らかにすることができる。液滴のサイズおよび各液滴内の増幅産物の有無の両方に注目することにより、異なるサイズの液滴の十分な数を調べた後に、試料中に存在する被分析物の本来の濃度を逆算することができる。液滴が異なるサイズであるため、所与のダイナミックレンジでは、分析が、液滴が全て類似サイズの場合のよりもかなり迅速になる。幾つかの実施形態において、本明細書における方法は、複数の液滴の数および複数の液滴の個々の体積を用いて、デジタル測定を実施することを更に含む。例えば、該当する分子の試料濃度を、複数の液滴の数、該当する分子を1個以上含む複数の液滴の数を用い、そして複数の液滴の一部または全ての体積を測定することにより、決定することができる。試料濃度を決定するための例示的方法は、実施例の節に見出すことができる。
本発明は、デジタル測定が試料についての有用な情報を提供する任意の技術に用いることができる。そのため本明細書において提供された方法、システムおよびデバイスは、検出可能な薬剤を含有する体積を含み得る。特定の実施形態において、該体積は、マイクロ流体チップ内のウェルもしくはチャンバーであってもよく、または検出可能な薬剤を含有する液滴(例えば、エマルジョン中またはチップの表面上に形成された水滴)であってもよい。検出可能な薬剤が、単一の検出可能な分子または複数の検出可能な分子を含み得ることは、一般に理解されよう。検出可能な薬剤の他のタイプ、例えばビーズ、量子ドット、ナノ粒子などを用いることができる。更に、検出可能な薬剤は、例えば分析される試料中の該当する分子であってもよい(例えば、血液、血清、唾液または他の溶液中の核酸分子)。あるいは検出可能な薬剤は、試料中の該当する分子(例えば、核酸分子)に会合した分子であってもよく、それにより該分子を検出することができる。幾つかの実施形態において、本発明の方法およびシステムは、デジタル測定を含む増幅関連技術(例えば、デジタルPCR)に用いることができる。増幅測定では、体積(例えば液滴)は、単一のDNA分子を含み得るが、例えば体積は、増幅および検出に用いられることが一般に周知の必須成分も含有する。幾つかの実施形態において、検出可能な薬剤は、蛍光であり、つまり当該技術分野で公知の蛍光に基づく検出法により検出することができる。しかし他の検出法(例えば、吸光度、化学発光、濁度、および/または散乱)を用いて、体積の内容物を分析することができる。本発明に適した様々な検出可能な薬剤が、当該技術分野で一般に周知であり、例えばThe Molecular Probes(登録商標)Handbook、第11版(2010年)に見出すことができる。
特定の実施形態において、検出可能な薬剤は、検出のために該当する分子と会合していてもよい。例えば検出可能な薬剤は、試料中に存在する核酸分子(例えば、DNAまたはRNA)、ペプチド、蛋白質、脂質または他の分子(例えば、生体分子)と会合していてもよい。本明細書に定義される、検出可能な薬剤に関連する「会合した」は、共有結合的、および/または非共有結合的相互作用を介した分子との相互作用を含む。例えば検出可能な薬剤は、該当する分子と共有結合的に付着していてもよい。あるいは検出可能な薬剤は、核酸分子(例えば、DNAおよび/またはRNA分子)を検出するために用いられ得るインターカレーション剤またはTaqman(登録商標)プローブであってもよい。該当する体積中の分子に会合し得ない参照色素など、他の検出可能な薬剤を用いることができる。
本発明の幾つかの実施形態は、非混和性液中で液滴を生成することを含む。当該技術分野で周知の通り、非常に様々な非混和性液を組み合わせて、様々な体積の液滴を生成することができる。本明細書に更に記載される通り、該液は、乳化など、様々な方法により組み合わせることができる。例えば水性溶液(例えば、水)を非水性液(例えば、油)と組み合わせて、サンプルホルダー中またはマイクロ流体チップ上に液滴を生成することができる。本発明における使用に適した水性溶液は、緩衝液、塩、およびPCRなどの検出アッセイにおいて用いられることが一般に公知である他の成分を更に含み得る水ベースの溶液を含むことができる。つまり本明細書に記載された水性溶液は、例えばプライマー、ヌクレオチド、およびプローブを含むことができる。適切な非水性液は、非限定的に有機相液、例えば鉱物油(例えば、ライトミネラルオイル)、シリコーンオイル、フッ素化オイルまたは液(例えば、フッ素化アルコールまたはFluorinert)、他の市販の材料(例えば、Tegosoft(登録商標))、またはそれらの組み合わせを含み得る。
水性溶液および非水性液に加えて、界面活性剤を含んで、例えば液滴の安定性を改善することおよび/または液滴の形成を容易にすることもできる。適切な界面活性剤は、非限定的に、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。非イオン系界面活性剤は、例えばモノステアリン酸ソルビタン(Span 60)、オクチルフェノキシエトキシエタノール(Triton X−100)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 80)およびソルビタンモノオレアート(Span 80)を含み得る。シリコーン系界面活性剤は、例えばABIL WE 09界面活性剤を含み得る。当該技術分野で一般に周知の界面活性剤の他のタイプを、同様に用いることができる。幾つかの実施形態において、界面活性剤は、様々な濃度、または濃度範囲、例えばおよそ0.01重量%、0.1重量%、0.25重量%、0.5重量%、1重量%、5重量%、または10重量%で存在することができる。
本発明は、試料の濃度を決定することを更に含む。例えば該方法およびシステムを用いて、(1)液滴の体積および(2)検出可能な薬剤を含有する液滴の数を決定することができ、それを用いて試料の濃度を決定することができる。この情報は、試料濃度を決定する様々な方法で用いることができる。例えば標的分子は、試料中に、分子の単位/体積中の濃度で存在する。試料は、分析され得る可変的体積の液滴中に分布させることができる。液滴(全てまたはほんの一部)の個々の体積を、本明細書に提供された方法により決定することができる。加えて、本明細書に記載された検出法を用いれば、液滴は、検出可能な薬剤を含有するか否かについて分析することができる。所与の試料濃度では、可変的体積の液滴の一部は、検出可能な薬剤を含有する可能性があり、一部は含有していない可能性がある。より高い試料濃度では、一般に複数の液滴のより多くが、検出可能な薬剤を含有し得て、その逆もあり得、低い試料濃度では、複数の液滴のより少量が、検出可能な薬剤に占有され得る。本明細書に更に記載される通り、特定の体積分布内での検出可能な薬剤による占有の確率は、広範囲の試料濃度で定義することができ、その後、実際のデータと比較して、未知試料の濃度を決定することができる。試料濃度を決定するための追加の開示は、以下の実施例1および2に見出すことができる。それらの実施例に示された方法は、試料濃度のための初期推定値を作成すること、およびその後、1種以上の検出可能な薬剤(占有された液滴)を含有すると予測される液滴数を計算すること、を含む。試料濃度の推定値は、その後、占有された液滴の予測数が所望の精度内で複数の占有液滴の実際の数と等しくなるまで、周知の数値法を用いて適合させる。
本明細書に更に記載される通り、本発明は、幾つかの既存の方法およびシステムにより実現し得ないデジタル測定のための様々な態様を提供する。例えば本発明は、広いダイナミックレンジにわたり試料濃度を測定する能力を提供することができる。幾つかの実施形態において、ダイナミックレンジは、少なくとも3桁、少なくとも4桁、少なくとも5桁、または少なくとも6桁であってもよい。幾つかの実施形態において、ダイナミックレンジは、約10−1〜約10−9分子/fL、約10−2〜約10−8分子/fL、約10−3〜約10−7分子/fL、または約10−4〜約10−6分子/fLであってもよい。特定の実施形態において、ダイナミックレンジ内の試料濃度を決定することは、試料中の該当する分子と会合した検出可能な薬剤を検出することにより実施することができる。ダイナミックレンジは、様々な因子、例えばエマルジョン中に生成される体積の範囲ならびに/または分析および検出される体積の範囲に依存し得る。例えば第一の体積分布を有する第一の複数の液滴は、検出可能な濃度のダイナミックレンジを生成し得る。幾つかの例において、ダイナミックレンジは、第二の体積分布を有する第二の複数の液滴中で、より狭い体積分布を分析することにより減少させてもよい。特定の実施形態において、体積分布は、連続して変動する液滴体積を含む。
dPCRをオンチップ勾配生成と統合することにより、または様々なサイズのデジタル化体積を用いることにより、またはこれらの方法の両方の組み合わせにより、本発明は、本発明のdPCRチップのダイナミックレンジを1〜6桁、効果的に増加させ、それはRT−PCRにより提示されるダイナミックレンジに匹敵する。濃度勾配のより大きな範囲またはより大きなサイズ差を含むデジタル化体積のアレイを用いることにより、該ダイナミックレンジは、所望なら更に増加させることができる。定量的PCR(qPCR)を実施するためのこの新しい方法は、複数の重要な利点を提示し:つまり(1)それは、以前に議論された通りより精密であり、(2)RT−PCRに必要となる較正試料のタイプを実践する必要性を未然に無くし、つまり時間を節約し、(3)通常のPCR機器に対するRT−PCRの比較的高いコスト(約10倍)の原因となるリアルタイム感受性蛍光検出の必要性を排除する。
本発明の別の態様は、本発明の方法を実施するためのデバイスを含む。そのようなデバイスは、異なるサイズのデジタル化された分離した体積のアレイを生成し得る。別の実施形態において、該デバイスは、試料濃度勾配を生成すること、および異なるサイズの試料体積を生成すること、を含む、試料のデジタル測定のダイナミックレンジを増加させる方法を実施する。
本発明の更に別の態様において、本明細書に記載された方法、システムおよびデバイスを、等温増幅技術、例えばデジタルELISA、NASBA、およびLAMPに適用することができる。ELISAは、蛋白質に基づくもので、通常は蛋白質または小分子の定量に用いられる。NASBAおよびLAMPは、PCRを補助するために開発された等温増幅スキームである。
等温増幅においては、伝統的なPCRのような温度サイクリングが全く起こらない。複数のタイプの等温核酸増幅法、例えば転写を介した増幅、核酸配列に基づく増幅、RNAテクノロジーのシグナルを介した増幅、鎖置換増幅、ローリングサークル増幅、DNAのループを介した等温増幅、等温多置換増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、単一プライマー等温増幅、および環状ヘリカーゼ依存性増幅などが存在する。
NASBA(核酸配列に基づく増幅)は、RNAを増幅する等温プロセス(約40℃)であり、臨床試料中のウイルスおよび細菌のRNAの両方を検出する際に有効に用いられてきた。NASBAにより提示された利点は、(1)高い増幅効率および急速な増幅速度を有し、1000倍を超える増幅を、1または2時間以内に実現することができること;(2)RT−PCRの場合と同様に、ゲノムdsDNAにより誘発された偽陽性を与えないこと;(3)遺伝子発現試験が、イントロンフランキングプライマーを使用せずに実施し得ること;(4)PCRに必要な温度制御およびフィードバックを要求しないこと、である。結果として、NASBAは、ウイルスおよび細菌RNAを検出するのに汎用されるようになった。NASBAが等温法であるという事実により、温度制御オーブンの使用により複数の試料を同時に実施することが可能になり、それが、多くの実地調査において重要な実践利益となる。
ループを介した等温増幅を示すLAMPは、等温(約60℃)条件下で高い特異性、効率、および迅速性でDNAを増幅することができる。増幅反応の特徴により、LAMPは、増幅の間に一塩基差を識別することができる。その結果、LAMPは、SNP(一塩基多形)タイピングに適用されてきた。LAMPは、ウイルスの検出においてRT−PCRよりも約10倍高い感度を有することも示された。加えて、DNAのLAMP増幅は、溶液の濁度を増加させるピロリン酸マグネシウムの生成に直接相関し得るため、LAMPの進行は、簡単な濁度計を用いてモニタリングされてきた。それゆえ、不均一アッセイを、LAMPから得られる増幅産物を検出するのに用いることができる。
一態様において、本発明は、試料のループを介した増幅を実施する方法を提供する。該方法は、少なくとも1つの液滴が核酸分子(例えば、DNAおよび/またはRNA分子)を含む試料の複数の液滴をマイクロ流体デバイス上で生成すること;および少なくとも1つの液滴内でループを介した増幅を実施して、核酸分子の増幅産物を生成すること、を含み得る。該方法は、増幅産物を検出することも含み得る。幾つかの実施形態において、該方法は、増幅産物を含む該複数の液滴の数を決定すること、および核酸分子を含有する該複数の液滴の個々の体積および該複数の液滴の数を用いて、試料中の核酸分子の濃度を計算すること、を含む。マイクロ流体デバイスは、複数の液滴を形成するように構成された複数のチャンバーを含み得る。本発明を用いてデジタルLAMPを実施する追加の態様は、実施例3に見出すことができる。
NASBAおよびLAMPにより提示された利点の幾つかにもかかわらず、1つの重要な欠点は、ほとんどの状況において利益となる定量の実施に伴う難点である。定量は、同一条件下で増幅される標準を用いた、非常に注意深い較正および制御を必要とすることが多く、それは非常に退屈な場合もあり(特に、現地調査の場合)、多くの場合実践的でない。不均一アッセイ、例えばLAMP中の沈殿の検出では、精密な構成が、特に困難でとなり得る。
ローリングサークル増幅(RCA)は、等温核酸増幅法である。それは、複数の点で、ポリメラーゼ連鎖反応および他の核酸増幅スキームとは異なる。RCAの間に、短いDNAプローブは、該当する標的DNA、例えば病原生物体のDNAまたは有害な突然変異を含むヒト遺伝子にアニーリングする。その後、プローブは、ローリングサークル増幅反応のためのプライマーとして作用する。プローブの遊離末端は、小さい環状DNA鋳型にアニーリングする。DNAポリメラーゼが付加されて、プライマーを伸長させる。DNAポリメラーゼは、環状DNA鋳型の周りに連続してプライマーを伸長して、環状物の多くの反復コピーからなる長いDNA産物を生成する。反応の終了時に、ポリメラーゼは、環状鋳型の何千ものコピーを生成し、そのコピー鎖は本来の標的DNAにつなげられる。これにより、標的の空間的解析およびシグナルの急速な増幅が可能になる。フォワードおよびリバースプライマーの使用により、上記の直線状増幅反応を、1時間以内で1012コピーまでを生成し得る指数関数モードに変換することができる。そのような定量測定に必要となる較正は、煩雑になり得る。
この欠点を克服するために、本発明は、デジタルPCRに類似した、デジタル等温増幅、例えばNASBAおよびLAMPを提供し、ここでデジタル化体積のアレイの使用は、デジタルNASBA、デジタルLAMP、およびローリングサークル増幅を実施するために用いられる。更に、濃度勾配および/または異なるサイズのデジタル体積のアレイを用いることにより、これらのデジタル測定のダイナミックレンジを効果的に増加することができる。現在の方法は、これらの等温増幅スキームを理想的に補助して、それらをRNAおよびDNAの存在を測定する定量技術にする。本発明の別の実施形態において、該方法は、抗体に基づく増幅に適用される。別の実施形態において、該方法は、特異的分子認識に基づく増幅に適用される。
III.デジタル測定のためのシステム
更に別の態様において、本発明は、デジタル測定を用いて試料の濃度を決定するためのシステムを提供する。該システムは、第一の体積分布を有する第一の複数の液滴を含むサンプルホルダーと;第一の複数の液滴の少なくとも1つを含む検出可能な薬剤を検出する検出器と;保存された実施可能な命令を含む記憶デバイスを含むコンピュータと、を含み得て、該命令は、プロセッサにより実施されると、プロセッサに、第一の体積分布と同一または異なる第二の体積分布を有する第二の複数の液滴を分析させて、検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液滴の数を決定させ;ならびに検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液体の数を利用させて試料の濃度を決定させ得る。幾つかの実施形態において、試料中の検出可能な薬剤の濃度を用いて、試料濃度を計算する。
本明細書に更に記載される通り、デジタル測定に用いられる体積は、様々な方法で生成および分析することができる。本発明は、体積を保持するのに用いられ得るサンプルホルダーを含むため、体積は更に処理および/または分析される。本発明のサンプルホルダーは、試験管、エッペンドルフ管、マイクロアレイ上のウェルのアレイ、液滴を生成するように構成されたマイクロ流体チップ、および試料の分離した体積(例えば、液滴および/またはウェル)を保持し得る他の一般に公知のデバイスを含み得る。本発明のシステムは、体積を分析するように構成された検出システムを更に含む。該検出システムは、体積の内容物を分析して、液滴の体積、および/または該当する他の特徴を決定するための検出器を含み得る。本明細書に記載された方法は、一般に、体積(例えば、液滴および/またはウェル)を検出および分析することが可能な任意の公知システムと適合性がある。
更に別の態様において、該システムは、デジタル測定を実施するコンピュータで読出し可能な保存媒体を含み得る。コンピュータで読出し可能な保存媒体は、そこに保存された命令を有し、コンピュータのプロセッサにより実施されると、該命令がコンピュータに、第一の体積分布よりも狭い第二の体積分布を有し第一の複数の液滴に含まれる、第二の複数の液滴を分析させて、検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の数を決定させ;ならびに第二の複数の液滴の数、第二の複数の液滴の一部または全ての体積、および1種以上の検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の数を利用させて、試料中の検出可能な薬剤の濃度を決定させる。
更に別の態様において、体積を分析して分析された体積からの情報を検出および計算するシステムが、提供される。該システムは、1つ以上のプロセッサと、該1つ以上のプロセッサにより実施され得る命令を含む記憶デバイスと、を含む。該命令は、1つ以上のプロセッサにより実施されると、少なくとも該システムはユーザーの入力を受けて体積(例えば、複数の液滴)を分析する。該システムは、本発明の方法の態様、例えば体積(例えば、液滴)の数を計数すること、体積分布中の複数の液滴の体積を決定することを実施して、1種以上の検出可能な薬剤を含有する液滴の数を利用して試料中の検出可能な薬剤の濃度を決定するように構成され得る。該システムは、ユーザーにデータも提供する。ユーザーに提供されたデータは、試料中の検出可能な薬剤の濃度または試料濃度を含み得る。
図3は、本明細書に記載された方法、媒体およびシステムに用いられ得るコンピュータシステム100の簡単なブロック図である。様々な実施形態において、コンピュータシステム100を用いて、先に図示および記載されたシステムまたは方法のいずれかを実施してもよい。図3に示される通り、コンピュータシステム100は、バスサブシステム104を介して複数の周辺サブシステムと通信するプロセッサ102を含む。これらの周辺サブシステムは、記憶サブシステム108およびファイル保存サブシステム110を含む保存サブシステム106と、ユーザーインターフェース入力デバイス112と、ユーザーインターフェース出力デバイス114と、ネットワークインターフェースサブシステム116と、を含んでいてもよい。
バスサブシステム104は、コンピュータシステム100の様々な成分およびサブシステムに、意図に沿って互いに通信させるためのメカニズムを提供する。バスシステム104は、1つのバスとして概略的に示されているが、バスシステムの別の実施形態は、複数のバスを利用し得る。
ネットワークインターフェースサブシステム116は、他のコンピュータシステムおよびネットワークへのインターフェースを提供する。ネットワークインターフェースサブシステム116は、コンピュータシステム100からのデータを受け取り、コンピュータシステム100から他のシステムにデータを伝送するためのインターフェースとして働く。例えばネットワークインターフェースサブシステム116は、ユーザーのコンピュータをインターネットにつないで、インターネットを使用した通信を容易にすることができる。
ユーザーインターフェース入力デバイス112は、キーボード、ポインティングデバイス、例えばマウス、トラックボール、タッチパッド、またはグラフィックスタブレット、スキャナー、バーコードスキャナー、ディスプレイに組み込まれたタッチスクリーン、音声入力デバイス、例えば音声認識システム、マイク、および他のタイプの入力デバイスを含み得る。一般に用語「入力デバイス」の使用は、情報をコンピュータシステム100に入力するためのデバイスおよびメカニズムの全ての可能なタイプを含むものとする。
ユーザーインターフェース出力デバイス114は、ディスプレイサブシステム、プリンター、ファックス機、または非視覚的ディスプレイ、例えば音声出力デバイスなどを含み得る。該ディスプレイサブシステムは、陰極線管(CRT)、フラットパネルデバイス、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、または映写デバイスであってもよい。一般に用語「出力デバイス」の使用は、コンピュータシステム100からの情報を出力するためのデバイスおよびメカニズムの全ての可能なタイプを含むものとする。広告が、1つ以上のユーザーインターフェース出力デバイス114を用いてコンピュータシステム100により出力されてもよい。
貯蔵サブシステム106は、基本プログラミングおよびデータ構造を保存するためのコンピュータで読出し可能な保存媒体を提供する。プロセッサにより実施されると、本明細書に記載された方法およびシステムの機能性を提供するソフトウェア(プログアム、コードモジュール、命令)が、保存サブシステム106に保存され得る。これらのソフトウェアモジュールまたは命令は、プロセッサ(1つまたは複数)102により実施され得る。保存サブシステム106は、本発明により使用されるデータを保存するためのレポジトリも提供し得る。保存サブシステム106は、記憶サブシステム108およびファイル/ディスク保存サブシステム110を含み得る。
記憶サブシステム108は、プログラム実施の間の命令およびデータの保存のためのメインランダムアクセスメモリ(RAM)118と、固定命令が保存されているリードオンリーメモリ(ROM)120とを含む複数のメモリーを含み得る。ファイル保存サブシステム110は、プログラムおよびデータファイルのための非一時的な永続的(不揮発性)保存を提供し、ハードディスクドライブ、関連の取り出し可能な媒体を伴うフロッピー(登録商標)ディスクドライブ、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD−ROM)ドライブ、光学ドライブ、取り出し可能な媒体のカートリッジ、および他の類似の保存媒体を含み得る。
コンピュータシステム100は、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、ワークステーション、ネットワークコンピュータ、メインフレーム、キオスク端末、サーバーまたは任意の他のデータ処理システムを含む様々なタイプであってもよい。コンピュータおよびネットワークの千変万化の性質により、図3に表されたコンピュータシステム100の記載は、該コンピュータシステムの実施形態を例示する目的で具体的例を意図するに過ぎない。図3に表されたシステムよりも多いまたは少ない構成要素を有する多くの他の形態が、可能である。
本発明の装置、デバイス、システム、およびその構成要素のいずれかの具体的寸法は、本明細書内の開示を参照すれば当業者に明白となるため、意図した適用に応じて即座に変動させることができる。その上、本明細書に記載された実施例および実施形態が、例示のみを目的としており、それを考慮した様々な改良または変更が当業者に示唆され得、それが本願の主旨および範囲に含まれ、添付の特許請求の範囲に含まれることは理解されよう。本明細書に記載された実施形態の数多くの異なる組み合わせが可能であり、そのような組み合わせは本発明の一部とみなされる。加えて、本明細書の任意の一実施形態に関連して議論された全ての特色は、本明細書の他の実施形態における使用に即座に適合され得る。異なる実施形態の類似の特色への異なる用語または参照数字の使用は、必ずしも、明白に示されたものとの差を示唆するものではない。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ説明され、本明細書に開示された実施形態に限定されないものとする。
IV.実施例
実施例1
実施例の理論的枠組み
この実施例は、本明細書に記載された本発明の特定の態様を記載するために用いられ得る非限定的な理論的枠組みを記載する。この実施例に記載された方法が、本発明を用いて試料の濃度を決定するための多くの方法の1つであることは、理解されよう。この理論的枠組みの下では、標的分子が、分子/体積の単位あたり濃度Csで、試料中に存在するものと仮定する。試料は、可変的体積のデジタル体積に分布されており、液滴中の標的分子の分布は、ポアソン統計学に従う。デジタルアレイ中の各液滴について、および式1に示された通り、標的の平均数は、体積V、および初期試料濃度Cに依存する:


は、溶液中の標的分子の所与の濃度Cに対して、体積Vの液滴中にn個の分子を見出す確率である。増幅反応は、1つ以上の分子を含有する液滴を、例えば蛍光強度により、含有しない液滴と判別可能にする。この方法では、液滴が含有していないか、または占有されているか、のみが分かる。関連の確率を、式2に示す:

標的分子の濃度Cを決定するために、P(n>0、C)は、各体積Vの十分に多数の液滴全体を合計する必要がある。
シミュレーション法
標的濃度Cが正確に決定され得ることを検証するために、デジタル増幅アッセイ、例えばデジタルPCR、デジタルLAMPまたはデジタルELISAのシミュレーションを、連続する可変的体積と共に記載する。
各シミュレーションでは、液滴の固定数Nおよび被分析物分子のシミュレートされた濃度Cを、選択した。シミュレーションは、様々なC値について実施した。乱数発生器を用いて、所与の範囲および分布からN個の液滴の径を選択した。本発明の原理を例示するために、液滴径Dが最少径4ミクロン〜最大径190ミクロンの間で均一に分布するものと仮定して、シミュレーションを実施した。この結果、シミュレートされた体積は、34〜3.6×10flの範囲内である。液滴径のより現実的な分布を、以下に議論する。
各シミュレーションでは、乱数発生器を用いて、初期標的濃度がCである場合に、特定のシミュレートされた液滴が占有されているか、または含有しないか、を決定する。シミュレーションにおける占有された液体の総数Nを計数し、次に占有された液滴の予測数

(式中、Nの最も可能性のある値を、C=Cのために得た)と比較する。N個の液滴の体積を用いれば、式(3)をNに適合させて、その濃度の最良適合値を得ることができる(Cは、唯一の調整可能なパラメータである)。本発明者らは、ニュートン・ラプソン・アルゴリズムを用いて、N−Nのゼロを見出す。Cの初期値は、式(3)におけるV‘を分布のメジアン体積と置き換えて、Cを求めることにより得る。その後、アルゴリズムは、典型的にはCの変更のために5〜11の繰り返しを行い、10分の1未満になる。そのポイントでのCの値は、Cの最良適合値となるように採用される。
シミュレーションでは、目的の一部は、(i)Cを推定する際に、この手順がどれほど精密であるかを決定すること、および(ii)2つの異なる試料がCの異なる最良適合値を与える場合に、試料が異なる濃度を有することの信頼度を計算する方法、である。
この方法は、各液滴の体積の測定を含み、それに関連する誤差が存在し、それが考慮される。これをシミュレートするために、ガウス分布の誤差をシミュレートされた径のそれぞれに加えて、シミュレートされた測定径を得る。その後、これらのシミュレートされた測定径を用いて、シミュレートされた測定体積

を計算し、それを式(3)に置き換えて、測定体積に基づく占有液滴の予測数を得る。
液滴径を決定する一方法は、顕微鏡検査による。この方法の精度は、用いられる物体の開口数(NA)および映像システムの他の詳細に依存し得る。表面上の静止した液滴の多数を映像化するために、NAは、1未満になる可能性があり、本発明者らの実験では、径測定の誤差は、典型的には0.5〜1.0ミクロンであり、液滴サイズに非依存的である。本発明者らは、EおよびEで示された2つの異なる規模の測定誤差をシミュレートした。Eでは、液滴径に加えられるガウス分布の誤差の標準偏差は、1ミクロンより大きいか、またはその液滴径の8%である。シミュレーションが最大液滴の無視できない測定誤差を含むような、相対誤差が含まれる。Eでは、液滴径に加えられるガウス分布の誤差の標準偏差は、2ミクロンよりも大きいか、またはその液滴径の15%である。両方の例で、シミュレートされた測定径におかれた1つの限界がある。特定のガウス分散が0.5ミクロン未満の液滴径をもたらす場合、その分散を廃棄して、その液滴用に新しい分散を作成する。
実験の分析では、Cは、手順を決定しようと試みている実際の未知濃度であり、Cは、最良適合推定値であり、Vは、液滴の実際の体積であり、

は、実験者により測定された体積である。
シミュレーションの結果
典型的なシミュレーションセットの結果を、図4に示す。シミュレーションは、10,000個の液滴および6種の異なる濃度C(2.0×10−3、2.0×10−4、2.0×10−5、2.0×10−6、2.0×10−7、および2.0×10−8分子/fL)で実施した。液滴のサイズは、4.0〜190ミクロンの径の均一分布から取り出した。各シミュレーションでは、液滴を体積により分類し、最小体積の液滴をナンバー1とし、最大体積の液滴はナンバー10,000であった。図4には、占有された液滴の累積数をプロットしている。i番目の液滴で占有された累積数は、i以上の全ての液滴についての占有された液滴の合計である。
曲線の形状は、その濃度および液滴体積の分布形状の両方の関数である。液滴体積(液滴の径の代わりに)が均一な分布は、不均一な分布と同様に異なる形状の曲線を生成する。任意の所与のサイズ分布では、図4のタイプの曲線は、液滴数と共に単調に上昇し、異なる濃度の曲線は、決して交差しない。そのため液滴サイズの分布が測定されると、曲線の形状および占有された液滴の総数は、被分析物分子の濃度の身に依存する。十分に大きな濃度では、占有される確率が1.0に非常に近くなる液滴体積が存在する。その体積に対応する液滴数に達すると、曲線は、より大きな液滴数の全てでほぼ単位勾配で上昇する。十分に小さな濃度では、占有される確率が0.0と判別がつかなくなる液滴体積が存在する。その体積に対応する液滴数よりも小さな液滴数の全てで、曲線はゼロになる。
最良適合結果に対する液滴径の測定誤差の影響
本明細書に記載された通り、本発明は、液滴サイズを個々に測定することを含む。液滴の体積は液滴が占有される確率に入るため、体積が非常に精密に測定されることが重要であると思われる。このシミュレーションの液滴サイズの範囲では、最小の液滴(ほぼ4ミクロン径)は、光学顕微鏡により液滴径を測定する際の典型的誤差(ほぼ1ミクロン標準偏差)よりも実質的に大きくならない。液滴体積の得られた相対誤差は、有意である可能性があり、この方法の精度を低下させると予測し得る。意外にもこれは、事実ではないと思われる。表1で、一連のシミュレーションに、式(3)を適合させた結果と、式(4)に適合させた結果とを比較している。各濃度で、100のシミュレーションを実施し、それぞれが2000個の液滴を含んだ。式(3)では、シミュレートされた体積Vを用いた。式(4)では、シミュレートされた測定体積

を用いた。問題点は、式(3)を用いたシミュレート結果を適合させた結果が、液滴の体積が完璧な精度によって分かっている場合にえられる最良適合濃度を表し、式(4)に適合させた結果が、液滴体積の測定における誤差の影響を含む、ということである。式(3)および(4)を用いた最良適合濃度の平均および標準偏差を、EおよびEの両方について表1に列挙する。
式(3)を用いた最良適合濃度と式(4)を用いた最良適合濃度との差は、最大濃度を除き、非常に小さい。誤差が±2ミクロンまたは15%である場合であっても、誤差は最大濃度で25%にしか達しない。その上、各濃度で、式(3)および(4)を用いた最良適合の結果の標準偏差は、最大濃度を除けばほとんど等しく、それらの間に任意の明らかな系統的差が存在しない。このことから、表1の濃度のほとんどで、最良適合濃度内の変動性の最大供給源が1つのシミュレーションから次のものまでの液滴占有数の変動であることが示唆される。液滴サイズ測定誤差による最良適合の結果の任意の変動性は、それが不偏であれば、濃度決定に対する小さな、または無視できる影響を有する。これの全ては、最小液滴では誤差の一標準偏差が2.0ミクロン誤差(E)を有するシミュレーションでの径の半分に近い、という事実を無視している。このことは、この方法が液滴径の測定に非合理的に高い精度を必要としないということを意味するため、重要な結果である。以下に議論される通り、主として、任意の測定誤差が不偏であることが必要となる。この意外な結果は、図5の支援により説明することができる。
図5は、2.0×10−6の濃度での、占有された液滴の累積数のシミュレーションの結果を示す。そのシミュレーションは、径が4〜190ミクロンで均一に分布する10,000個の液滴を含む。曲線を、3つの領域:低、移行、および高に分割している。低の領域では、液滴が占有されている確率は非常に小さく、そのためシミュレートされる曲線は、そこではゼロである。高の領域では、液滴が占有されている確率は、液滴が占有されている確率は、1に非常に近く、曲線は、そこではほぼ単位勾配で上昇している。移行領域では、液滴が占有されている確率は、ゼロ近く〜ほとんど1まで上昇している。低または高領域内の液滴についての測定誤差は、占有された液滴の総数に対する影響をほとんどまたはまったく有さない。式(4)から、本発明者らは、低領域内の液滴の測定誤差により、単に、ほとんどゼロである合計の期間を同じくほとんどゼロである異なる期間と置き換えており、それが占有された液滴の総数に無視できない変化をもたらすはずである、ということを理解している。類似の効果が、測定誤差によりほとんどゼロである式(4)の期間を同じくほとんどゼロである他の期間に置き換えた高領域で起こる。誤差が表1のシミュレーションと同様に不偏であれば、誤差の若干の打消しも存在する。低または高領域のいずれかにおいて液滴に対応する式(4)の期間の合計は、わずかに小さな期間により置き換えられるはずであるため、わずかに大きな期間により交換される可能性がある。それゆえ、最良適合濃度に対するそれらの誤差の影響を低減する液滴体積測定誤差の若干の打消しが存在する。誤差が不偏であれば、そして移行領域を定義する体積全体に分布した液滴が十分存在するならば、移行領域内の液滴の体積測定の若干の打消しが起こると思われる。事実、測定誤差が体積の分布関数の形状を有意に変更している場合のみ、そしてその後、その変更が移行領域内のそれらの液滴について起こる場合のみ、体積測定誤差が最良適合濃度における優位な誤差を誘発すると思われる。径の分布に対する表1で用いられたガウス分布測定誤差の影響は、分布の終了部分近くでわずかに顕著である。例えばこれらのシミュレーションにおいて発生した最小の液滴は、4ミクロンに近い径を有する。しかし、測定誤差が含まれる場合には、シミュレートされた測定径は、4ミクロン未満となり得る。即ち、シミュレートされた測定径の分布は、実際のシミュレートされた径よりも小さいサイズに拡張することになり、4ミクロン近くに分布関数のわずかな広がりになろう。これらの最小液滴では、占有されている確率は、シミュレートされたサイズを用いて計算されるが、データを適合させる場合には、占有されている確率は、より小さな測定サイズを用いて計算される。これがその適合を導いて、移行領域がこれらの最小液滴を含む場合に濃度を過大推定する可能性がある。これが、表1に認められているが、その影響はあまり大きくない。190ミクロン近くにある分布関数のわずかな広がりのため、最低濃度で同等の影響が存在するはずであるが、その影響は顕著ではない。
合理的サイズの液滴体積測定誤差が、占有された液滴の総数から濃度を推定する試みに対して顕著な影響を有すると予測され得るように、これらのシミュレーションに用いられた液滴径の範囲が選択される。しかしこれは、シミュレートされた濃度範囲(10)がシミュレートされた体積範囲(10)よりも大きい場合でも、このことは起こらなかったと思われる。より小さな範囲(10および10)に均一分布した液滴径の他のシミュレーションは、合理的に精密な最良適合濃度がおよそ10の係数により体積範囲よりも大きなシミュレート濃度範囲で得られ得る、という類似の結果を生じる。
この方法を用いて、2つの異なる試料の濃度が異なるかどうかを決定する場合には、異なる問題が生じる。そのため、この方法の信頼度および統計力が、考慮されなければならない。これを、次の節で実施する。
信頼度および統計力の推定
濃度の差を区別する方法の能力を、信頼度および統計力に関して記載することができる。(Lieber, R. L. (1990) ”Statistical Significance and Statistical Power in Hypothesis Testing”, J.Orthopaedic Research 8,
304−309)2つの異なる試料についての測定により、2つの異なる最良適合濃度(CおよびC)が生じる場合、2つの試料の濃度が異なっていると主張することにおいて、およびそれらが異ならないと結論づけた場合に誤っている確率も、どれ程信頼できるかを知ることは有用となろう。偽陽性結果(I型誤差)のリスクは、その結果が必要な最小信頼度を有することを必要とすることにより制御され、偽陰性結果(II型誤差)のリスクは、その方法が必要な統計力を有することを必要とすることにより制御される。
2つの異なる試料からの2つの最良適合濃度を比較するために、帰無仮説は、2つの試料が同じ(未知の)濃度を有した、ということになろう。αが、同じ濃度の2つの試料が

より大きな規模で異なる最良適合濃度をもたらし得る確率である場合、(1−α)は、帰無仮説の拒絶に関連する信頼度である。(1−α)の許容される最小値は、偽陽性結果を抑制するように選択される。偽陰性結果に対して防御する統計力の使用を、以後に記載する。
信頼区間を推定するのに用いられる一方法が、Z検定である。

95%の信頼区間は、一般的選択であり、Z>1.96を必要とする。Cは、式(4)の最良適合結果であり、

は、Cの測定に関連した分散である。

の扱いやすい解析方程式は、本発明者らの方法には存在しないと思われ、そのためシミュレーションにより

を推定する必要がある。その上、Z検定の追加の一限定は、測定結果が正規分布すると仮定することである。これは必ずしも事実ではないため、信頼度を推定する第二のシミュレーション法を実施して、Z検定結果と比較した。この後、2つの方法がZ法およびペアまたはP法を示す。
信頼度のZ法推定値では、Csの2つの異なる値を用いた(Cs1=2.0×10−5およびCs2=2.2×10−5)。Cの各値では、5000個の液滴のセットを、4〜190ミクロンに広がる液滴径の均一分布から無作為に選択し、式(2)を用いて占有された液滴の数をシミュレートした。測定誤差のEサイズを用いて、シミュレートした測定体積を生成した。各セットの最良適合値を決定して、CおよびCを得た(ここでCは、シミュレートされた濃度でCsnを用いたシミュレーションの最良適合結果である)。各Cについて、追加のZ法シミュレーションを実施した。Cおよびシミュレートされた測定体積

を式(2)に用いて、

のセットの占有された液滴の、N=1000個の追加のシミュレートされた総数を得た。これらは、その後、式(2)を用いてNの最良適合濃度

を得る適合となる。

の標準偏差を、式(5)の

に用いられる。これは、実験者が有する情報に対応する。信頼度の推定値を、最良適合濃度Cおよび

から計算することができる。信頼度のペア法推定では、帰無仮説は、2つの最良適合結果(CおよびC)がそれぞれ、実際の濃度

を2つの最良適合濃度の平均とする試料から得られた、ということであると仮定する。液滴径のN=500の追加のセットをシミュレートし、それぞれについて占有された液滴の数が濃度

についてシミュレートされ、測定誤差のEサイズを用いてシミュレートされた測定体積を生成した。最良適合濃度

を、各セットについて得た。その後、値のM=500のペアを無作為に選択して、

のセットから置き換えて、それらの差の絶対値

をΔC=C−Cと比較した。ΔCよりも大きな

の割合は、濃度

の試料から実施された2つの測定が互いにΔCよりも大きく異なる確率αの推定値を提供する。αのP法推定値を用いて、(1−α)となる信頼度を計算する。
信頼度の2つの推定値を得るための手順全体を、Cのペア100回反復した。各反復では、シミュレートされた体積の新しいセットは、各Cについて生成させ、式(2)を用いて各Cの占有された液滴の数を生成させた。シミュレートされた測定体積を生成させて、式(4)に用い、結果を適合させて、最良適合濃度の新しいペア(CおよびC)を得た。その後、Z法およびP法を用いて、信頼度を推定した。
の2つの選択された値の間の小さな差(10%)が、ほぼ0〜ほぼ1の範囲内の信頼度をもたらす。これにより、一定範囲の値で信頼度を推定する2つの方法を比較することができ、全ての例において合理的な一致が得られた。図17の表2に、100の結果の幾つかを示した。特に表2は、信頼度の最小値をもたらした5セット、メジアンで信頼値をもたらした6セット、およびほぼ1.0の信頼値をもたらした5セットを示す。Z法の結果を最初の5列に示し、P法の結果を最後の3列に示す。2つの異なる方法での信頼度の値(1−α)は、5列目および8列目であり、それらの間の合理的一致が、シミュレートされたセットの全てで見出される。Z法において実施されるZ検定は、十分に精密であると思われるため、解析方程式が存在しないことに問題はない。統計力の計算において引き続きP法を用いたが、実際にはZ法が合理的代替法であり、コンピュータ処理としてはより安価である。その上、P法は、実際の分布への良好な近似である液滴サイズの分布を生成する数値的方法を必要とするが、Z法はそうではない。この最後の要件は、シミュレーションにおいて問題とならず、実験結果を解析する際の難点となり得るため、Z法は、その例ではより有用となろう。本発明者らは、Nシミュレーションの全てについて同様の実験的に測定された液滴サイズを用いるZ法が、P法のそれと合理的に一致する信頼度を生じて、Nシミュレーションのそれぞれについてのシミュレートされた液滴体積と関連する測定誤差との新しいセットを生成することに注目している。このことは、十分に多数の液滴では、液滴体積の特定試料分布の変動が、液滴が占有されていることのポアソン確率(式(2))よりも、占有された液滴の数における変動性への有意な寄与物質が少ないことを示唆している。
信頼区間は、2つの試料が異なる濃度を有することを示す結果が、偽陽性となり得る可能性の推定値を提供する。統計力は、偽陰性である可能性の推定値を提供する。このため、シミュレーションのこれまでのセットの手順を用いた。参照および検査濃度の間の所与の%差については、互いに近接していて必要となる信頼区間を満たすことができない結果の割合が計算される。これは、特定の濃度差についての偽陰性および必要となる信頼水準(この場合95%)を生じる結果の因子(β)であり、統計力は(1−β)となる。この検定の結果を、図6〜7に示す。その異なる図は、液滴径の2つの異なる分布について得られた統計力であり、EおよびEの両方の測定誤差を含む。図6および7は、4〜190ミクロン(図6、体積範囲 およそ10)および10〜100ミクロン(図7、体積範囲 およそ10)の径範囲を有する均一分布の結果である。横座標の各濃度は、20%および50%大きな濃度(それぞれ1.2倍および1.5倍の分解能)に対して検定されている。それらの図の全ての結果は、5000個の液滴のセットについてであり、他のパラメータは、信頼度を推定するためのペア法に用いられたものと同様である。
濃度が20%異なる試料間で判別する場合、この方法は、約100の因子を示す濃度範囲では0.95を超える統計力が可能である。その必要性が、1.2倍または1.5倍の分解能から緩和されれば、統計力が0.95を超える濃度範囲は、広い均一分布では(図6、4〜190ミクロンの歯に内の液滴径)10を超える係数に及び、別のものでは(図7、10〜100ミクロンの範囲内の液滴径)ほとんど10に及ぶ。その範囲の位置は、液滴サイズ分布の形状に依存する。必要な分解能が緩和されると、または液滴数が増加すると、統計力が0.95を超える範囲が増加する。
4〜190ミクロン範囲の均一分布での5,000の液滴試料における試料の総体積は、およそ5μLである。8×10−9のシミュレーション中の総コピー数は、およそ35/5000液滴、または約7800コピー/mlである。より大きなサイズの液滴またはより多数の液滴を含む液滴範囲を用いれば、より小さな濃度に達することができる。
実施例2
可変的体積で液滴を生成する実験的方法およびそのサイズの決定
可変的サイズの液滴を、様々な方法で作製することができる。1つの方法において、マイクロ流体を用いて、T字路またはフローフォーカシングデバイスで様々なサイズの敵的を生成することができる。これは専用チップを用い、水性試料が液滴形成によりデジタル化されるようになる前に、2つの構成要素(油相および水性試料)が最初にそのチップに加えられる。この実施例では、より簡単で、よりユーザーに分かり易い方法を用いており、そこで様々なサイズの液滴が無秩序に、即ち試験管または他の適切な容器内での乳化により、生成される。第一の実施形態において、反応混合物を含有する水相を、適当な油−界面活性剤混合物を予め充填した0.2mL PCR試験管にピペット注入した。本明細書に示された通り、油相は、73%Tegosoft(登録商標)、20%ライトミネラルオイルおよび7%ABIL WE 09界面活性剤からなり、それらを新たに混合して、使用前の少なくとも30分間に平衡にした。この混合物で形成されたエマルジョンは、標準のエマルジョンPCRの間に優れた熱安定性を示す傾向がある。水相を油混合物にピペット注入した後、約3000rpmで約10秒間ボルテックス処理することにより、可変的サイズの液滴を形成させた。混合物に小さな撹拌棒を加えることにより、乳化を更に増進して、その間にボルテックス処理により水相のより小さな液滴への分解を促進することができる。油中の界面活性剤の存在が、エマルジョンを安定化させるため、個々の水性液滴が融合しない。別の実施形態において、水相と油の混合物を、小さなステンレス鋼ビーズを含有する小さなコレクションマイクロチューブに添加した。そのチューブを、次に15〜17Hzで20秒間振とうして、エマルジョンを生成させた。エマルジョンは、その後、PCR反応を実施するために0.2mLPCR試験管に移し替えた。
液滴サイズの分布を測定するために、少量のエマルジョンをシラン処理されたスライドガラス上に広げ、過剰量の油−界面活性剤混合物で被覆した。その後、試料を格子や顕微鏡下に設置し、暗視野照明を底から照射した。このスキームでは、適切な寸法の不透明ディスクを、光源の光路内に置き、標本の前のほとんどの光を遮断した。結果として、粗油名の外輪からのわずかな光が、標本に到達する。標本から散乱されるほんの小さな部分が対物レンズに進入し得るように、不透明ディスクの位置を顕微鏡対象に適合させる。試料のコントラストが、試料から散乱される光により生じるため、得られる像は、図8Aに示される通り個々の液滴の輪状周辺によって著しく目立つ。暗視野において得られた大きなコントラストにより、液滴が十分にまばらに分散されることを条件として、液滴径を映像内の各円形で容易に決定することができる。
図8Bは、乳化後の577の液滴の分布を示す。分布は、メジアン径20μmとし非常に対称的である。この乳化は、およそ10〜40μmのより小さな液滴を優先的に発生させ、最小液滴は約6〜8μmの径を有し、見出された最大液滴径は、およそ70〜80μmであった。液滴径のこの10という係数は、概ね1000という力学的体積範囲に変わる。
図8に実証された通り、液滴の様々なサイズを生成させるのに用いられた任意の現実的プロセスは、均一分布というよりむしろピークを作る可能性が高い。液滴サイズの均一分布から得られた濃度が実験で得られたピープのある分布で妥当であることを検証するために、液滴でのデジタルPCR実験をシミュレートし、そのサイズ分布を図9に示す。その分布は、正規対数分布であり、8〜64ミクロンの径のみを含む。これらの分布を、表1のために実施した同じタイプのシミュレーションに用い、結果を表3に列挙している。
表3の結果から、あまり大きくないダイナミックレンジの対称分布でも、適度に実質的な濃度範囲にわたり被分析物分子濃度の合理的に精密な(±10%)推定値が得られることが示唆される。このことは、ほとんど全ての検査室設定において実施され得る乳化のような簡単なプロセスが、4〜5ケタの標的DNA濃度を精密に決定するのに十分大きな液滴分布を生じ得ることが示されるため、重要である。小さなリファインメントにより、このダイナミックレンジを更に改善することができる。
更なる検定として、図10に示される切り取り正規対数関数(体積範囲 およそ500)の方法の統計力を推定した。図6および7の場合と同様に、シミュレーションの4つのセットを、8×10−9〜8×10−3分子/fLの範囲内の濃度に及び実施した。データから、液滴の実験的分布を用いて実現され得る統計力が、類似の範囲の均一分布した液滴の例で推定されたものと同等であることが示された(図7)。解析のロバスト性能と組み合わせたエマルジョンでの液滴生成における簡単でユーザーが扱い易い手順が、ダイナミックレンジを増加させたデジタルアッセイを実践する新規な方法として本発明を魅力的にするはずである。
dPCR後の増幅の分析
液滴内の増幅産物の存在を視覚化するために、アンプリコンの存在を特異的に認識する蛍光プローブを、反応混合物に添加する。ほとんどの例で、これは、分子ビーコン、即ち、増幅された標的DNAにハイブリダイズすると、蛍光が閉鎖立体配座で高度にクエンチされて、強度が上昇されるヘアピン構造、または標的DNAハイブリダイズして、次の増幅ステップの間にプローブDNAから蛍光レポーターを切断させるTaqman(登録商標)プローブ、のいずれかである。
これらのプローブは、無視できない程度のバックグランド蛍光を有し、増幅の間の蛍光強度の相対的上昇は、反応に添加されたプローブの量に応じ、むしろ小さくなり得る。更に励起強度は、検出プロセスの間に視野により変動し得る。データは通常、蛍光の変化が増幅産物の生成を示す程有意であるかを決定する閾値となるはずであるため、簡単な強度測定は時としてあいまいな結果をもたらす可能性がある。それゆえ本発明者らの実験全てにおいて、少量(1〜2μM)の赤色蛍光色素ローダミンを参照色素として反応混合物に添加すると、スペクトルシグネイチャを増幅時に報告する蛍光プローブと十分に分離することができる。その後、2つの強度、つまり参照色素から測定されたものとプローブから測定されたものとの比を構築する。同じ方法で両方の色素に影響を及ぼすため、強度比は、融合もしくは収縮による液滴体積の変動、または励起力の不適切な変動による影響を受けず、比は不変のままである。図11は、2つのPCR反応の像、つまり(1)液滴が増幅の間に標的DNAを全く含有した像、および(2)反応混合物が標的DNAを含有した像、を示す。参照色素(ROX)およびプローブ(FAM)の存在を示す蛍光像は、落射蛍光で撮影し、液滴はそこの照明から暗視野で同時に映像化した。挿入図は、液滴の中心を通る線の測定強度を示す。標的DNAが存在しないものでは(A、B)、FAMチャネルの強度は、液滴からの暗視野により著しく目立ち、シグナルにより中心部分がシグナルの増加を全く示さないが、ROXチャネルでは、暗視野シグナルは参照色素からのガウス形蛍光シグナル上に重ね合わさっている。ROXチャネルとFAMチャネルとの、中心領域からの強度の比は、大きい(ROX:FAM=120:20=6:1)。反応混合物中にDNAが存在するものでは(C、D)、液滴中心におけるシグナル増加がFAMチャネルでも観察され、増幅がその液滴で起こったことが示される。結論として、ROXとFAMの蛍光の比は、有意に小さく、ROX:FAM=60:30=2:1である。
本発明が実施され得る他の一方法は、異なる希釈で試料溶液を含有する液滴の異なる群を用いる。異なる希釈の試料を含有する液滴は、互いに分離を維持しなければならない。それが実施できたなら、実験の分析の唯一の変更は、d(ここでdは、i番目の液滴の希釈係数である)による式において体積の因子を置き換えることである。例えば式(2)は、

となり、他の式と類似の変動を伴う。これにより、該方法を拡張して、他の方法で可能であった液滴サイズ分布よりも高濃度で精密に測定することができる。
実施例3
デジタル等温DNA増幅の実施例
この実施例は、PCRに基づくDNA増幅に適用されるだけでなく、当該技術分野で一般に知られるあらゆる種類のデジタルアッセイにも適する方法を記載する。該方法の簡便性およびロバスト性により、この実施例は、専用のベンチトップ設備の利用可能性が限定され得るポイント・オブ・ケアおよび資源が限られる設定では特に有用になる。
再現性のある液滴形成での自動化された試料の自己デジタル化(self−digitiation)
デジタル化LAMPチップを、一連の長方形キャビティとして設計して、液滴を保持し、試料送達に用いられるより小さな長方形チャネルに沿って配置させた(図12)。チップの配列を設計して、液滴の安定性および付着、充填プロセスの自動化、ならびに高温での操作を改善した。メインチャネルとサイドキャビティーの高さ比を1/3まで低減すると、チャンバー間の相互干渉の機会が減少する。サイドチャンバーの深さは、液滴の付着が改善されることが見出された400μmにまで拡大した。空気圧で調整された流れを利用して、自動充填の再現性およびロバスト性を確実にした。より高温での水性液滴の蒸発は、様々な測定により最小化された:a)チャンバーを高密度のアレイに配列して、PDMSの薄い最上と最下層の間だけに埋め込んだ。b)追加の捨て水チャネルを、アレイの周囲に配置させる。c)粘着フィルムをチップの最上部に蒸気バリアとして添加した。
水相を加える前に、チップを連続相(0.025%w/w SPAN−80界面活性剤を含むライトミネラルオイル)でプライミングした。新たなLAMP溶液を入口に導入し、サイドチャンバーの内側のナノリットルサイズの液滴に、自己デジタル化した。図13Aおよび13Bは、チャンバー充填および液滴形成の間に撮影された映像を示す。水相がメインチャンバーに入り、サイドチャンバーからの油を緩やかに交換した。試料全体がチップに入ったら、尾を引いている油相が、サイドコンパートメントの開口部で液体を挟み切り、ナノリットルの液滴を単離した。
アレイを横切る液滴サイズの均一性は、図13Cに示す通り加えられた空気圧に依存した。保持された液滴の体積を、実験の節に記載された通り、チップインキュベーションの前に撮影された映像から推定した。この設定では、7〜8psiの空気圧は、液滴サイズの最も均一な分布を与え、液滴の大部分は、単一体に近い相対体積分率(RVF)により示されるほぼ完ぺきな体積保持を示した。わずかな割合のより小さなサイズが見出され、そのほとんどは、水相による初期サイドチャンバー充填が不完全であった出口近くであった。より高い圧力または低い圧力により、RVF分布は広くなり、より多くの液滴がRVF値を有意に減少させた。
図13Dは、5000の液滴の累積ヒストグラムを示す。液滴の96%を超えるものが、チャンバー容積の少なくとも半分を占め、全ての液滴の56%で、RVFが90%を超えていた。平均では、0.89±0.14のRVF値が見出された。液滴の均一性は、初期液滴体積の差による定量の誤差を低減するため、それが望ましかった。後の節で、液滴サイズの分布がdLAMP分析の結果に有意な影響を及ぼさなかったことを示す。
図13Eは、7psi空気圧を用いた試料デジタル化の再現性を示す。15の各チップでは、平均RVFおよび標準偏差を計算した。平均RVFは、10%ウィンドウ(window)内で変動し、それはチップ性能における十分な再現性を実証している。同じく液滴サイズの標準偏差は、幾らか大きなチップ間変動を有しながらも、全てのチップで同等であった。
高温での得規定の安定性
充填後に、チップを65℃で70分間インキュベートして、等温DNA増幅を実施した。より高温では、ナノリットルサイズのコンパートメントは、PDMSによる水の蒸発および水の油相への分配を受け易い。これは、試薬濃度、例えばイオン強度の増加をもたらし、反応の阻害を誘発する場合がある。
高温インキュベーションの間の試料蒸発量が、デジタル容積のほぼ10%に限定されたことが見出された(図14A)。チップの周辺に位置するチャンバーは、より嵩のあるPDMSに暴露され、アレイの中心に位置するチャンバーに比較してわずかに高い収縮が示された(図14の入口の像)。しかし、全体的影響は小さく、増幅反応に影響を及ぼすことは予測されなかった。周辺での蒸発が依然として懸念だとすれば、各チャンバーが見落とされる可能性があり、最も内側のチャンバーのみが、以下に議論される更なる分析を考慮され得る。
65℃でのインキュベーションの間に、等温DNA増幅が1つ以上のDNA鋳型を含むそれらのコンパートメント内に進行すると予測された。ピロリン酸塩が増幅プロセスの間に放出された後、カルセイン蛍光色素が大きく増加することにより、陽性増幅が証明された。鋳型DNAを全く含まないそれらのコンパートメントは、バックグランド蛍光をわずかに示すはずである。次に、DNAの希釈試料の増幅により、デジタルシグネイチャを得ることができるかを、検査した(原液の430倍希釈)。図14Bは、インキュベーションの前後のチップの区分を通る映像および強度のスキャンを示す。予測通り、一部のチャンバーで、蛍光の有意な増加が示されたが、隣接するチャンバーは依然として暗かった。つまりチャンバー間の相互干渉は、問題とは思われず、LAMP競合チャンバーは、わずかなバックグランドシグナルを示した隣接するチャンバーにより十分に分離された。
液滴サイズの変動はdLAMP分析に影響を及ぼさない
より小さな液滴は、1つ以上の鋳型分子を含む確率がより低く、陽性事象がより小さな液滴で起こる可能性は低く、つまり分析においてより重視されるべきである。そのような手順がLAMP活性コンパートメントの直接の計数により得られた結果と異なるかを検査するために、3つの異なる初期テンプレート濃度(c=c/150(A)、c=c/430 (B)およびc=c/1300(C))の3つの代表的チップについて、これらの2つの分析スキームを比較した。表4にその結果を要約する。最初の例では、LAMP活性チャンバーの係数fを、最初の液滴サイズにかかわらず陽性液滴の試料係数から推測した。これを、最初の液滴体積に基づいて近似させた「効果的」係数feffと比較した。feffは、全ての陽性液滴の相対体積分率の逆数の合計として計算した。言い換えると、RVF50%を有した液滴は、フルサイドチャンバーを占有する液滴の2倍量を寄与した。その後、分析された3つのチップの間のfとfeffの比を解析した。本発明者らのシステムでは、両方の分析スキームで、全てのパラメータで類似の結果を与えることが見出された。fを超えるfeffのおよそ10%の上昇は、初期液滴サイズの10〜15%の変動を表す。この比較から、本発明者らの実験において初期液滴サイズの均一性が、直接の計数法を確証するのに十分良好であると結論づけられた。
同じく、周辺液滴の優先的収縮が分析に影響を及ぼしたかどうかを確認した。a)全ての液滴が分析(f)で判断される場合、およびb)周辺液滴が分析(feff)から除外された場合、について、LAMP競合チャンバーの係数を比較した。収縮の増加が局所的溶質濃度を増加させる可能性があり、それが増幅プロセスに影響を及ぼし得るということを回想しなければならない。最も内側の液滴を分析した場合のみ、考慮される3つの濃度全てで、LAMP競合液滴の相対分率は6%未満の変動であった。異なる試料濃度での各比は、互いに10%以内の一致であった。それゆえdLAMPでは、分析においてすべての液滴を判断し、こうして周辺液滴の除外による不必要な試料廃棄を回避した。
dLAMPで相対および絶対DNA濃度を定量する
デジタルDNA増幅の重要な適用例は、試料中の絶対鋳型濃度の定量である。次に、試料中のDNA鋳型の系列希釈を用いてdLAMPチップの性能を分析した。平均で1未満の鋳型を液滴内に閉じ込めれば、LAMP競合チャンバーの数がDNA濃度とほぼ直線的に拡大縮小すると予測される。DNA対照試料からなる鋳型を、LoopAmp(登録商標)キットと共に提供した。最初に、DNA原液中の鋳型濃度を推定するためのUV吸収分光法を実施した。DNAの量が過度に少なく、260nmで定量可能な吸収を提供することができなかった。それゆえ、インター化レーティング色素を用いて、DNA定量を試行した。この実験では、標的鋳型をキチ濃度のλ相DNAの系列希釈と比較した。全ての試料を、インター化レーティング色素(Evagreen(登録商標)、Biotium、 Hayward, CA, USA)と共に30分間インキュベートした。各試料の蛍光シグナルを、その後、Typhoon(商標)イメージャで定量した。λ相DNAの濃度および長さは公知であるため(48502bp)、鋳型溶液中に存在するbp数の少なくとも1つの精密な推定を得た。未知の試料からの強度は、1μlあたりλ相10未満の溶液からの強度に匹敵した。この濃度領域では低コントラストであるため、その濃度を更に狭くすることはできなかった。プラスミドが全λ相DNAに匹敵するサイズであると仮定し、こうして1μlあたり鋳型10〜10個の濃度を推定する。
dLAP実験から濃度を決定するために、最初に、原液の1/4〜1/1300の範囲内の鋳型濃度の系列希釈で、dLAMPを実施した。各実験は、少なくとも三重測定で実施した。図15は、65℃での70分間インキュベートの後、複数のチップの代表的映像を示す。図16は、LAMP競合チャンバーfの各係数を示す。fを計算するために、最初に、インキュベーション前の初期チャンバーの数nを決定した。その後、増幅チャンバーの数naを計数したが、それは、インキュベーション後に撮影された映像から定量された背景の少なくとも3倍の蛍光増加を有したチャンバーであった。その後fをf=n/nとして計算した。
分析された3つの最低濃度のDNA濃度でのLAMP競合チャンバーの数の直線変化が、観察された。dLAMPを介して標的DNAの濃度を推定するために、3つの最低試料濃度への直線化ポアソン適合を算出した。適合により1μlあたり(0.99±0.03)×10コピーの濃度を得たが、それはDNAインターカレーション実験からの推定と良好に一致した。この結果から、本発明者らのdLAMチップが道試料の系列希釈中のDNA濃度の相対変化を精密に再現できることが確認された。しかし元々のDNA濃度の決定に不正確さが与えられれば、データは絶対DNA濃度をdLAMPで決定する能力を、必ずしも実証しなかった。それゆえ、未知濃度の新規標的鋳型を用いた追加のdLAMP実験を実証した。
対応するLAMPプライマーのセットを用いたインターカレーターアッセイに用いられる全λ相DNA鋳型を選択した。原液中のDNA濃度をUV分光光度法により465μg/mlであると測定され、それは1μlあたり8.9×10コピーに対応した。その後、試料を最終LAMP溶液で1μlあたり20コピーに希釈した。この濃度および6ナノリットルのサイドチャンバー容積に関して、全てのチャンバーの約12%に増幅が起こるとの観察が予測された。dLAMPを70分間実施し、図16Bは、LAMP反応前後の535ウェルチップの映像を示す。オンチップの分離された液滴の初期数(479)およびインキュベーション後のLAMP競合チャンバー数(47)から、陽性事象の9.8%の相対分率を算出した。351のチャンバーアレイにおける第二の実験から、同じ鋳型濃度で10.7%という同等の分率を得た。fの予測値と測定値の間の小さな差は、おそらくピペッティング誤差に起因し、8倍希釈系列で蓄積した可能性がある。
それゆえ、本発明者によるdLAMPチップが、絶対DNA濃度およびDNA濃度の相対変化を正しく決定することができると結論づけた。SDチップ中のdLAMPは、単純な操作と共に、最初試料消費で等温デジタルDNA定量を実施する簡便なプラットフォームを提供する。
デジタル形式で有効なオンチップのループを介したDNA増幅を実証した。最小試料消費で使用が簡単な形式のデジタルDNA増幅を実施する既存のプラットフォームの限界に駆られて、自己デジタル化概念を精査して、65℃での等温DNA増幅を可能にした。その方法は、簡単でロバストであり:水相がチップ中にピペット注入されたら、簡単なポンプヘッドおよび一定空気圧の利用は、試料の離散化を誘発するのに十分であり、更なるチップ操作、例えば空気圧弁または機械作用を必要としない。ほとんどの(全てでなければ)他の報告されたデジタル化プラットフォームとは異なり、本発明者らのデザインは、完全で損失の少ない試料区画化を提示する。これは、ポイント・オブ・ケア適用例などの試料の利用性が限定される場合に重要となる。
デジタルLAMPシグネイチャは、70分間のインキュベーション期間内に十分な精密さで、絶対DNA濃度および相対変化を再現した。高温での試料インキュベーションの間の液滴収縮は最小であり、増幅プロセスに影響を及ぼさなかった。同じくチップ充填の間の液滴サイズの変動の問題にも取り組み、およそ10〜15%変動する液滴体積で、十分なサイズ均一性が実証された。液滴体積の差は、潜在的に液滴あたりの平均鋳型数および得られたデジタルシグネイチャに影響を及ぼし得る。本発明者らの自主的チップ充填が、十分に均一な体積の液滴を生成し、それによりデータ解析でLAMP競合チャンバーの計数が簡便化され、液滴体積の変動を考慮する必要がない。
本発明者らの実験プロトコルは、加熱および映像化用の標準的検査機器を用いており、そのためほとんどの診断設定に適合性があり、追加の注文機器を全く必要としない。65℃という中等度の反応温度ゆえ、チップインキュベーションは高温水浴で実施することもでき、それによりチップ操作が更に簡便化されよう。最後に、カルセイン蛍光色素の増加とは別に、LAMPは、潜在的にピロリン酸塩の沈殿から視覚的シグナルを生成することに注目した。検出は、簡単な顕微鏡で実施することができ、最終的に蛍光設備の必要性が排除され、アッセイの複雑さが更に低減される。
dLAMPでの実験区分
化学物質および試薬
LoopAmp(登録商標)DNA増幅キットおよびカルセイン蛍光指示薬キットを、SA Scientific (San Antonio, TX, USA)から購入した。陽性対照DNAおよび対応するプライマーのセットが、キットに含まれていた。ライトミネラルオイル、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN−80)、ウシ血清アルブミン(BSA)、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート(PGMEA)およびイソプロピルアルコールを、Sigma Aldrich(St. Louis, MO,
USA)から得た。ポリジメチルシロキサン(PDMS、Sylgard 184キット)を、Dow Corning(Midland, MI, USA)から購入した。
全λ相DNAでのLAMP実験では、以下の6プライマーのセットを用いた(フォワード内部プライマー(FIP):5’−CAGCATCCCTTTCGGCATACCAG
GTGGCAAGGGTAATGAGG−3’(配列番号1)、バックワード内部プライマー(BIP):5’−GGAGGTTGAAGAACTGCGGCAGTCGATGG
CGTTCGTACTC−3’(配列番号2)、フォワード外部プライマー(F3):5’−GAATGCCCGTTCTGCGAG−3’(配列番号3)、バックワード外部プライマー(B3):5’−TTCAGTTCCTGTGCGTCG−3’(配列番号4)、ループフォワードプライマー(LF),5’−GGCGGCAGAGTCATAAAGCA−3’(配列番号5)、およびループバックワードプライマー(LB):5’−GGCAGATCTCCAGCCAGGAACTA−3’(配列番号6))。全てのプライマーを、IDT(San Diego, CA, USA)から購入した。
マイクロ流体チップの組立て
デジタルLAMP用のマイクロ流体チップを、標準のソフトリソグラフィーを用いてポリジメチルシロキサン(PDMS)中で複製した。マイクロ流体チャネルのネットワークおよびサイドチャンバーを、AutoCAD(Autodesk, San Rafael, CA, USA)で設計し、Mylar photomask (Fineline Imaging, Colorado Springs CO, USA)に印刷した。マスクを用いて、2層SU−8オン・シリコンマスターを組み立てた。各層について、以下のステップを実施した:SU−8フォトレジスト(SU−8 2050, MicroChem, Newton, MA, USA)を、新たに洗浄されたシリコンウェーハ上にスピンコートした。ソフトベークの後、ウェーハおよびフォトマスクを心合わせして、市販のマスクアライナー(Newport, Irvine CA, USA)内でUVに暴露した。UV暴露により、フォトマスクの透明領域の下のSU−8に架橋が誘導された。硬化の後、非暴露SU−8をPGMEAに溶解し、イソプロピルアルコールで洗浄して、155℃で10分間ハードベークした。マスターの陽性対象物の高さを自作の干渉計で測定すると、およそ75μmであった。複製の間にPDMSがウェーハ上に貼り付くのを避けるために、気相成膜により、ウェーハを(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン(Gelest, Morrisville, PA, USA)でコーティングした。
チップの複製では、PDMS基板および触媒を、製造業者の推奨どおり10:1重量比で混合した。混合物を15〜20分間脱気して、SU−8オン・シリコンマスター上にスピンコートし、およそ300μm厚の薄膜を形成させた。70℃で3時間硬化した後、PDMSをウェーハから剥離した。鋭利な15ゲージパンチで、エラストマーにアクセスホールを穿孔した。酸素プラズマ処理により、硬化されたPDMSの薄層をコーティングした顕微鏡スライドに、PDMSレプリカを結合させた。PDMSチップを115℃で2日間貯蔵して、表面を疎水性に戻した。
実験プロトコル
実験の前に、入口および出口の穴に適合する一組の小さなトラフを、PDMS内に複製して、両面テープでチップに付着させた。各トラフは、およそ50μlのリザーバを提供した。チップを真空下に20〜30分間静置して、嵩高のPDMSから過剰な空気を除去した。0.025%w/w SPAN−80を補充したライトミネラルオイル40μlを、メインチャネルの入口に入れて、チップに下塗りした。空気圧を加えて、空気をチップから追い出すまで油の流れを保持した。下塗りの後、チップを接着性PCRシーラントフィルム(Bio−Rad, Hercules, CA, USA)の小片で覆い、インキュベーションの間の水蒸発を低減した。
LAMP溶液13μlを、製造業者のプロトコルに従って新たに調製した。混合物に、反応の間にポリメラーゼを安定化させる1.2g/l BSAを、そしてカルセインを基にした蛍光検出キット0.6μlを補充した。LAMP溶液1.8〜2μlを入口にピペット注入し、過剰の油で覆われたトラフの底で水性プラグを形成させた。外部空気圧を加えて、前試料がデジタル化されたオンチップになるまで、チャネルネットワークを通して水性プラグを移動させた。デジタル化は、顕微鏡(AZ 100, Nikon Instruments, Melville NY, USA)で視覚的に確認した。出口への陰圧を用いて、捨て水チャネルに脱気水を手操作で充填した。全ての入口を少なくとも20μlの油で覆った後、チップをインサイチュのアダプターに取り付けたThermocycler(Mastercycler, Eppendorf, Westbury, NY, USA)上で65℃で70分間インキュベートした。
チップの映像化および定量
加熱式インキュベーションの前後で、全てのチップを可変モードのイメージャ(Typhoon FLA9000, GE Healthcare, Pittsburgh,
PA, USA)でスキャンした。チャンバー内部のカルセイン蛍光色素を473nm
で励起し、ロングパスフィルター(510LP)を通して10μmピクセル解像度および光電子倍増管に加えられた電圧350Vで、映像を撮影した。次の映像解析を、ImageJ (rsbweb.nih.gov)で実施して、離散化体積の数およびサイズ分布、ならびにDNA増幅を示したチャンバー数を定量した。更なるデータ解析は、IGOR
Pro (WaveMetrics, Lake Oswego, OR, USA)を用いて実施した。最初は、カルセイン蛍光色素を高度にクエンチしたが、残留発光は、チャンバーの初期液滴サイズを決定するTyphoonイメージャで依然としてモニタリングすることができた。初期液滴サイズの分布を、液滴面積とサイドチャンバー面積との比として推定された、保持された体積分率(RVF)に関して定量した。液滴中のカルセイン蛍光色素の平均ピクセル強度の1/3と等しい閾値を利用して、バックグランドと識別した。少なくとも0.15のRVFを有する液滴のみが、更なる分析を考慮された。
本明細書に提供された通り、連続サイズ分布からの液滴を用いたデジタル液滴アッセイの統計解析を、提示している。最良適合濃度は、個々の液滴体積の決定において、あまり大きくない不偏誤差に対しては適度に非感受性であり、そのためその決定に必要となる精度は、無理な負担にはならないはずである。異なる試料の結果と比較する際の信頼度を推定する簡単な方法を、提示している。それは、より計算集約的信頼度推定値と合理的に一致する信頼度推定値を生成する。シミュレーションから、該方法の統計力を、1.2および1.5倍分解能で、3つの異なる分布の液滴径について計算することができる。所望の分解能、液滴サイズ分布および液滴数を与えれば、これらの方法を用いて濃度範囲を決定することができ、それによりこの方法は利用可能な結果を生じるはずである。
本発明は、特定の実施形態を強調して記載したが、本発明の範囲または趣旨を逸脱することなく、様々な改良および変更を本発明に施し得ることは、当業者に明白であろう。本明細書に開示された発明の詳細および実践を考慮すれば、本発明の他の実施形態が当業者に明白となろう。本明細書および実施例は例示としてのみ考慮され、本発明のの範囲および主旨は特許請求の範囲により定義されるものとする。
本願の出願当初の特許請求の範囲に係る発明の内容は、以下の通りである。
[1] デジタル測定を用いて試料の濃度を決定する方法であって、
第一の体積分布を有する第一の複数の液滴であって、前記第一の複数の液滴の少なくとも1つが試料からの内容物を含有する、第一の複数の液滴を生成すること;
第一の体積分布と同一または異なる第二の体積分布を有する第二の複数の液滴を分析して、検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液滴の数を決定すること;ならびに
検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液体の数を利用して試料の濃度を決定すること、
を含む、方法。
[2] 第一および第二の体積分布が、連続体積分布である、[1]に記載の方法。
[3] 第二の体積分布が、前記生成ステップの前に定義されていない、[1]に記載の方法。
[4] 第一の複数の液滴が、不混和流体との組合せによりエマルジョン中に生成される、[1]に記載の方法。
[5] 不混和流体が水および油を含む、[4]に記載の方法。
[6] エマルジョンが界面活性剤を含む、[4]に記載の方法。
[7] 前記複数の液滴の第二の体積分布が、約100ナノリットル(nL)〜約1フェムトリットル(fL)、約10nL〜約10fL、約1nL〜約100fL、約100nL〜約1ピコリットル(pL)、約10nL〜約10pL、約1nL〜約1pLの範囲内の体積を有する、[1]に記載の方法。
[8] 検出可能な薬剤が蛍光性である、[1]に記載の方法。
[9] 検出可能な薬剤が、核酸分子、ペプチド、蛋白質、またはそれらの組み合わせに会合している、[8]に記載の方法。
[10] ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅法(RCA)、核酸配列に基づく増幅法(NASBA)、ループを介した増幅法(loop−mediated amplification)、またはそれらの組み合わせを実施することを更に含む、[1]に記載の方法。
[11] 検出可能な薬剤の濃度が、少なくとも3桁のダイナミックレンジを超えて決定される、[1]に記載の方法。
[12] 検出可能な薬剤の濃度が、少なくとも6桁のダイナミックレンジを超えて決定される、[1]に記載の方法。
[13] 第一の体積分布の体積が2倍を超えて変動する、[1]に記載の方法。
[14] 第一の体積分布の体積が10倍を超えてまたは100倍を超えて変動する、[1]に記載の方法。
[15] デジタル測定を用いて試料の濃度を決定するシステムであって、
第一の体積分布を有する第一の複数の液滴を含有するサンプルホルダーと;
第一の複数の液滴の少なくとも1つを含有する検出可能な薬剤を検出する検出器と;
その上に保存された実施可能な命令を有する記憶デバイスを含むコンピュータと、を含み、該命令がプロセッサにより実施されると、プロセッサに、
第一の体積分布と同一または異なる第二の体積分布を有する第二の複数の液滴を分析して、検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液滴の数を決定すること;ならびに
検出可能な薬剤を含有する第二の複数の液滴の個々の体積および第二の複数の液体の数を利用して試料の濃度を決定させる、
システム。
[16] 第一および第二の体積分布が連続体積分布である、[15]に記載のシステム。
[17] 第二の体積分布が前記生成ステップの前に定義されていない、[15]に記載のシステム。
[18] 第一の複数の液滴が、不混和流体との組合せによりエマルジョン中に生成される、[15]に記載のシステム。
[19] 不混和流体が水および油を含む、[18]に記載のシステム。
[20] 検出可能な薬剤が蛍光性である、[15]に記載のシステム。
[21] 検出可能な薬剤が、核酸分子、ペプチド、蛋白質、またはそれらの組み合わせに会合している、[20]に記載のシステム。
[22] 第一の複数の液滴の少なくとも1つが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅法(RCA)、核酸配列に基づく増幅法(NASBA)、ループを介した増幅法、またはそれらの組み合わせからの増幅産物から成る、[15]に記載のシステム。
[23] 検出可能な薬剤の濃度が、少なくとも3桁のダイナミックレンジを超えて決定される、[15]に記載のシステム。
[24] 検出可能な薬剤の濃度が、少なくとも6桁のダイナミックレンジを超えて決定される、[15]に記載のシステム。
[25] 第一の体積分布の体積が、2倍を超えて変動する、[15]に記載のシステム。
[26] 第一の体積分布の体積が、10倍を超えてまたは100倍を超えて変動する、[15]に記載のシステム。
[27] 試料のデジタルでのループを介した増幅法を実施する方法であって、
試料の複数の液滴のうち少なくとも1つの液滴が核酸分子を含む、試料の該複数の液滴を、マイクロ流体デバイス上で生成すること;および
少なくとも1つの液滴中でループを介した増幅を実施して、核酸分子の増幅産物を生成すること、
を含む、方法。
[28] 増幅産物を検出することを更に含む、[27]に記載の方法。
[29] 増幅産物を含む複数の液滴中の液滴の数を決定すること;および
核酸分子を含有する複数の液滴の個々の体積および複数の液滴の数を用いて、試料中の前記核酸分子の濃度を計算すること、
を更に含む、[28]に記載の方法。
[30] マイクロ流体デバイスが、複数の液滴を形成するように構成された複数のチャンバーを含む、[27]に記載の方法。

Claims (21)

  1. デジタル測定を用いて試料中の被分析物分子の濃度を決定する方法であって、
    異なる体積を有する複数の液滴を生成する工程であって、前記複数の液滴のうちの少なくとも1つの液滴が試料からの被分析物分子及び検出可能な薬剤を含有する、工程;
    少なくとも2000個の液滴を含む前記複数の液滴の、少なくとも第一の部分の液滴を測定して、複数の液滴の第一の部分の液滴中の、液滴の個々の体積を決定する工程;
    前記複数の液滴の、少なくとも第二の部分の液滴を解析して、複数の液滴の第二の部分の液滴中の、被分析物分子及び検出可能な薬剤を含有する液滴の数を決定する工程であって、前記複数の液滴の第一の部分における液滴の少なくとも一部と前記複数の液滴の第二の部分における液滴の少なくとも一部とが同じ液滴である、工程;
    前記複数の液滴の第一の部分の液滴の個々の体積と、前記複数の液滴の第二の部分の被分析物分子及び検出可能な薬剤を含有する液滴の数とを用いて、試料中の被分析物分子の濃度を決定する工程、
    を含む、前記方法。
  2. 前記複数の液滴が、不混和流体との組合せによりエマルジョン中に生成される、請求項1に記載の方法。
  3. 不混和流体が水および油を含む、請求項2に記載の方法。
  4. エマルジョンが界面活性剤を含む、請求項2に記載の方法。
  5. 被分析物分子が、核酸分子、ペプチド、蛋白質、またはそれらの組み合わせである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. ポリメラーゼ連鎖反応、ローリングサークル増幅法、核酸配列に基づく増幅法、ループを介した増幅法、等温増幅法、またはそれらの組み合わせを実施することを更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 被分析物分子の濃度が、少なくとも3桁のダイナミックレンジ又は少なくとも6桁のダイナミックレンジにわたって決定される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記複数の液滴の第二の部分が、前記複数の液滴の体積分布よりも狭い体積分布を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 被分析物分子が、検出可能な薬剤と会合している、請求項1に記載の方法。
  10. 被分析物分子が、共有結合的相互作用、非共有結合的相互作用、またはそれらの組み合わせを介して検出可能な薬剤と会合している、請求項9に記載の方法。
  11. 前記複数の液滴からの少なくとも1つの液滴の体積が測定され、且つ前記少なくとも1つの液滴は前記複数の液滴の第一の部分中にはない、請求項1に記載の方法。
  12. 前記複数の液滴からの少なくとも1つの液滴を解析して、被分析物分子及び検出可能な薬剤の有無を判定し、且つ前記少なくとも1つの液滴は前記複数の液滴の第二の部分中にはない、請求項1に記載の方法。
  13. 前記複数の液滴の第一の部分中及び前記複数の液滴の第二の部分中の少なくとも2000個の液滴が同じ液滴である、請求項1に記載の方法。
  14. デジタル測定を用いて試料中の被分析物分子の濃度を決定するシステムであって、
    前記試料からの異なる体積を有する複数の液滴を含有するサンプルホルダーであって、前記複数の液滴の少なくとも1つの液滴が試料からの被分析物分子及び検出可能な薬剤を含有する、サンプルホルダーと;
    検出可能な薬剤のシグナルを検出する検出器と;
    その上に保存された実施可能な命令を有する記憶デバイスを含むコンピュータと、
    を含み、
    該命令がプロセッサにより実施されると、プロセッサに、
    少なくとも2000個の液滴を含む前記複数の液滴の、少なくとも第一の部分の液滴を測定して、複数の液滴の第一の部分の液滴中の、液滴の個々の体積を決定すること;
    前記複数の液滴の、少なくとも第二の部分の液滴を解析して、前記検出可能な薬剤のシグナルに基づいて、複数の液滴の第二の部分の液滴中の、被分析物分子及び検出可能な薬剤を含有する液滴の数を決定することであって、ここで前記複数の液滴の第一の部分における液滴の少なくとも一部と前記複数の液滴の第二の部分における液滴の少なくとも一部とが同じ液滴である、こと;
    前記複数の液滴の第一の部分の液滴の個々の体積と、前記複数の液滴の第二の部分の被分析物分子及び検出可能な薬剤を含有する液滴の数とを用いて、試料中の被分析物分子の濃度を決定すること、
    をさせる、システム。
  15. 前記複数の液滴が、不混和流体との組合せによりエマルジョン中に生成される、請求項14に記載のシステム。
  16. 前記複数の液滴の少なくとも1つが、ポリメラーゼ連鎖反応、ローリングサークル増幅法、核酸配列に基づく増幅法、ループを介した増幅法、等温増幅法、またはそれらの組み合わせからの増幅産物からなる、請求項14に記載のシステム。
  17. 被分析物分子の濃度が、少なくとも3桁のダイナミックレンジ又は少なくとも6桁のダイナミックレンジにわたって決定される、請求項14に記載のシステム。
  18. サンプルホルダーがウェルのアレイである、請求項14に記載のシステム。
  19. サンプルホルダーがマイクロ流体チップである、請求項14に記載のシステム。
  20. 被分析物分子が、核酸分子、ペプチド、蛋白質、またはそれらの組み合わせである、請求項14に記載のシステム。
  21. 前記複数の液滴の第二の部分が、前記複数の液滴の体積分布よりも狭い体積分布を有する、請求項14に記載のシステム。
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