現在運用されている各種規格のデジタル放送のうち、衛星放送を例にとれば、放送衛星に備えた衛星中継器を使って複数の放送事業者が独立したTS(Transport Stream)を伝送できるように多重伝送される。衛星デジタル放送で採用されている規格には、ISDB−S、DVB−S2などがある。そこで、以下、これらの規格に適合した一般化した送信装置として説明する。
図1は、放送衛星に備えた衛星中継器を介する伝送システムの構成を示すブロック図である。送信装置1からTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)信号等の制御情報で指定されるデジタル変調方式により、映像・音声・データ放送などを多重した主信号が実衛星2に伝送される。実衛星2の衛星中継器は、増幅器に前置される入力フィルタである入力マルチプレクサフィルタ(以下、IMUXフィルタと称する)21、進行波管増幅器(以下、TWTAと称する)22、増幅器に後置される出力フィルタである出力マルチプレクサフィルタ(以下、OMUXフィルタと称する)23等を具備しており、IMUXフィルタ21によって受信した放送波信号から1チャンネル分ごとに帯域抽出を行い、TWTA22により利得制御を行って、OMUXフィルタ23で不要周波数成分を抑圧し、後続の合成器(図示せず)により全チャンネル分の放送波信号を合成し、受信装置3−1〜3−N(Nは、1以上の自然数)に向けて放送波信号を送信する。
受信装置3−1〜3−Nは、多重された放送波信号とともに伝送されるTMCC信号等の制御情報を絶えず監視することにより、送信装置1において様々な伝送制御が行われたとしても、それに追従して受信方式などを切り替えることができる。
図2は、従来からの送信装置1の変調器11の構成のみを示すブロック図である。この送信装置1の変調器11は、所定の符号化を施してTMCC信号等の制御情報を付加した送信するデータ信号(以下、デジタル信号と称する)に対して、シリアルのビット列をパラレルに変換するシリアル/パラレル変換部(以下、S/P変換部と称する)12と、所定の変調方式毎にマッピングするマッピング部13と、各々の所定の変調方式に応じた直交変調を施す直交変調部14とを備える。
マッピング部13によりTMCC信号等の制御情報により指定されたデジタル変調方式に対応した信号点にマッピングされた信号点座標は、直交変調部14に入力され、直交変調部14は、この信号点座標を直交変調し、変調波信号を生成する。直交変調部14により生成された変調波信号は、実衛星2に向けてアップリンクされる。
なお、所定のデジタル変調方式とは、π/2シフトBPSKを含むBPSK、π/4シフトQPSKを含むQPSK、8PSK、16APSK若しくは32APSKなどを含み、マッピング部13は、これらの変調方式に対応したマッパを用意することができる。
図1に示す実衛星2内の衛星中継器の機能について更に説明する。IMUXフィルタ21は、各チャンネル周波数に対応した帯域通過フィルタであり、受信した放送波信号から1チャンネル分の帯域成分のみをそれぞれ抽出することができる。TWTA22は、抽出した1チャンネル分の放送波信号について、さらに電力増幅することができる。OMUXフィルタ23は、各チャンネル周波数に対応した帯域通過フィルタであり、TWTA22によって増幅した放送波信号に対し、1チャンネル分の帯域成分のみを抽出し、不要周波数成分を抑圧することができる。
一方、TWTA22は、入力レベルと出力レベルとの間の関係が比例関係となるように電力増幅処理することが望ましい。しかし、この入出力特性は、実際には入力レベルが大きくなると利得が低下する非線形性を示し、同時に入力信号に対する出力信号の位相も回転する。従って、入力レベルを徐々に上げると、あるレベルまでは出力レベルも上がるが、ある入力レベルを超えると、出力レベルは逆に低下する現象となる。このような出力レベルの低下が起こる直前の動作点を、一般に、出力飽和点と云う。また、この出力飽和点から入力レベルをX[dB]下げて運用する場合を「入力バックオフX[dB]」と云い、同様に、入力レベルを絞って、出力レベルをY[dB]下げた状態で運用する場合を「出力バックオフY[dB]」と云う。
TWTA22の飽和点で最も効率の良い伝送が可能であるため、π/2シフトBPSKを含むBPSKやπ/4シフトQPSKを含むQPSK、8PSKといったPSK変調を利用する場合、TWTA22の入力信号について、入力バックオフが0dBとなるようなレベルで入力されるように前置減衰器等により自動調整する。一方、16APSKや32APSKといったAPSK変調の場合、信号点配置において複数の振幅を持つ信号点が存在するため、増幅器の非線形特性によって所要C/Nの劣化を起こし易い。このため、これらの変調方式を利用する場合には、TWTA22の入力信号について、入力バックオフが、それぞれの変調方式と誤り訂正符号の組み合わせに対して、出力バックオフによる電力損と非線形による所要C/Nの劣化の和(C/N+OBO)がもっとも小さくなるようなレベルで入力されるように前置減衰器等により自動調整する。
このように、従来からのデジタル信号の送信装置に用いられる変調器は、送信するデジタル信号を、変調方式に従って1シンボルで同時に伝送できる情報ビット数ごとに、当該シンボルに対応する1つの信号点に定まるようにマッピングした送信信号点で搬送波を変調している。特に、32APSK等の多値振幅位相変調では信号歪みに対してより線形性が要求され、放送衛星では、TWTA22をある程度線形で動作させるために、より大きな出力バックオフをとる(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、出力バックオフをとっても、TWTAの非線形歪などにより、受信装置側の信号点配置は所望の点からずれが発生する現象が生じていた。これを解決する試みとして、擬似衛星中継器を利用して信号点配置のずれを予測し、送信装置で信号点を予め補正して送信することにより、受信装置側の信号点のずれを減少させる提案が、本件発明者らによりなされている(特許文献2,3)。
一方、地上デジタル放送で採用されている規格には、ISDB−T、DVB−T、DVB−T2などがある。
これらの規格では、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重)と呼ばれる多重方式が採用されている。OFDMでは、等間隔の搬送波数千本にそれぞれQPSKやAPSKの一種である64QAMといった変調波を多重伝送する(例えば、非特許文献1参照)。
図9はOFDMによる送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置10の変調器11は、デジタル信号に対して、シリアルのビット列をパラレルに変換するS/P変換部12と、所定の変調方式毎にマッピングするマッピング部13と、各々の所定の変調方式に応じた直交変調を施す直交変調部14とを備える点で図2に示す送信装置と同じであるが、S/P変換部151a及び151bと、逆高速フーリエ変換部(以下、IFFT部と称する)152と、パラレル/シリアル変換部(以下、P/S変換部と称する)153a及び153bとを有するOFDM変換部15を備えた点で異なる。
なお、通常はこのブロック図に図示しないパイロット信号や伝送制御信号、ガードインターバルの挿入が行われるが、ここでは以下の説明に影響しないため省略する。
また、図9には、電力増幅して電波を放射する一般的な送信装置の機能として、出力段にフィルタ161と、電力増幅部162と、フィルタ163とを備える増幅器16と、アンテナ17も併記してある。
マッピング部13によりTMCC信号等の制御情報等で指定されたデジタル変調方式に対応した変調方式でマッピングされた信号点座標は、S/P変換部151a及び151bにより、多数のOFDM搬送波に割り振られる。次にIFFT部152により多数のOFDM搬送波を同数の時間軸信号に変換する。さらに、P/S変換部153a及び153bにより、得られた時間軸信号を1本の時系列信号に変換する。その後、直交変調部14に入力され、直交変調部14は、この信号を直交変調し、変調波信号を生成する。直交変調部14により生成された変調波信号は、さらに、フィルタ161で不要周波数成分を抑圧し、電力増幅部162で所定の電力に増幅し、フィルタ163で不要周波数成分を抑圧し、アンテナ17から受信機(図示せず)に向けて電波を放射する。
なお、所定のデジタル変調方式とは、π/2シフトBPSKを含むBPSK、π/4シフトQPSKを含むQPSK、8PSKや、APSKの一種である16QAM、32QAM、64QAM、128QAM、若しくは256QAMなどを含み、マッピング部13は、これらの変調方式に対応したマッパを用意することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、少なくとも一つの搬送波により伝送路を介してデジタル信号を送信する送信装置について説明する。
まず、本発明による実施例1の送信装置を説明する。実施例1は、IQ信号ベクトル演算による歪補償を行う送信装置である。なお、各図面において、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
図3は、本発明の実施例1の送信装置(前述のように、各種規格に準拠した一般化した送信装置である)における変調器11の構成のみを示すブロック図である。実施例1の送信装置101は、前述した図1に示す放送衛星に備えた衛星中継器を介する伝送システムに適用可能な送信装置であり、既存の放送衛星に対して放送波信号を送信することができる。更に、既設の別の送信装置とは無関係に伝送システムに組み入れることができる。従って、実施例1の送信装置101は、デジタル放送で採用されている規格、例えば高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式、DVB−S2などに準拠したものとすることができる。ここでは、実施例1の送信装置101は、実衛星2の衛星中継器を介して受信装置3−Nに向けてデジタル信号を送信するために、該デジタル信号を所定の変調方式で変調する送信装置として構成される。
図3に示すように、実施例1の送信装置101における変調器は、送信するデジタル信号(所定の符号化を施した変調前の信号)に対して、1ビットの直列のビット列を数ビットの並列のビット列に変換するS/P変換部12と、所定の変調方式毎にマッピングするマッピング部13と、信号点変換部5と、各々の所定の変調方式に応じた直交変調を施す直交変調部14とを備える。ここで、S/P変換部12、マッピング部13、及び直交変調部14は、図2に示した従来からの一般的な送信装置のものと同様に機能する。
信号点変換部5は、擬似衛星中継器6と、IQ信号補償演算部7とからなり、IQ信号補償演算部7は、遅延部71と、ベクトル加算部721及び722と、逆特性係数部73と、制御器75とを備える。
擬似衛星中継器6は、図1に示す実衛星2の衛星中継器の位相及び振幅の周波数特性及び非線形特性に近似した特性を有し、即ちIMUXフィルタ61、TWTA62、及びOMUXフィルタ63を具備しており、IMUXフィルタ61によってマッピング部13を経て入力されるデジタル信号から1チャンネル分ごとに帯域抽出を行い、TWTA62により利得制御を行って、OMUXフィルタ63で不要周波数成分を抑圧する。これにより、擬似衛星中継器6は、送信するデジタル信号の信号点のマッピング後の理想IQ信号点に対して、実衛星2の衛星中継器によって生じ得る信号点のずれを模擬した信号点をもつIQ信号を出力する。すなわち、擬似衛星中継器6は、図1の伝送システムにおいて、伝送路上の対象機器(衛星中継器)の特性に近似した特性を有する擬似伝送器として機能する。以下の説明において、送信するデジタル信号の信号点のマッピング後の理想的な信号点配置を理想IQ信号点と称し、理想IQ信号点にマッピングされる理想的な信号を理想IQ信号と称す。
遅延部71は、ベクトル加算部721に入力される2系統の信号間の同期をとるために、タイミングを調整する。すなわち、遅延部71は、擬似衛星中継器6によって生じる遅延量Dと同一の遅延量Dを、マッピング部13を経て入力されるデジタル信号に与え、2系統の信号を同期させるように機能する。
ベクトル加算部721は、遅延部71側の入力を符号反転している。したがって、疑似衛星中継器6から入力されるIQ信号のベクトルから、遅延部71から入力される理想IQ信号の信号ベクトルを、信号点ごとに差し引いた誤差ベクトルの信号を出力する。
逆特性係数部73は、ベクトル加算部721から生成される誤差ベクトルのI信号及びQ信号の値に、係数(逆特性係数)Kを乗算する。
制御部75は、ベクトル加算部721に入力される理想IQ信号に関する情報(例えば、信号点配置、信号点遷移)や逆特性係数部73に入力される誤差ベクトルに関する情報(例えば、誤差ベクトルの絶対値、方向)を元に、最適な係数となるよう逆特性係数部73を制御する。なお、逆特性係数部73と制御部75は一体化して、一つの係数乗算手段として構成することも可能である。
ベクトル加算部722は、逆特性係数部73で係数乗算された誤差ベクトルから符号反転したベクトル(逆ベクトル)に理想IQ信号の信号ベクトルを加算した補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。なお、逆特性係数部73において、係数を負の数値として乗算するように設定すれば、ベクトル加算部722では単純な加算を行えば良い。
直交変調部14は、IQ信号補償演算部7で補正した信号点で、所定の変調方式に応じて直交変調する。ここで云う所定の変調方式には、π/2シフトBPSKを含むBPSK、π/4シフトQPSKを含むQPSK、8PSK、16APSK又は32APSKを含む。
以下、実施例1の送信装置101の動作をより詳細に説明する。
実施例1の送信装置101における変調器11に入力されるデジタル信号は、S/P変換部12により、入力されるデジタル信号を、伝送に用いる変調方式で1シンボルあたりに伝送できるビット数にシリアル/パラレル変換し、マッピング部13により、この変換された信号に対してI信号振幅及びQ信号振幅に変換するマッピング処理を行う。
次に、マッピングした信号(理想IQ信号)は2分配され、そのうちの一方の信号は、実衛星2の衛星中継器の特性を模擬した擬似衛星中継器6に通過させる。ここで、擬似衛星中継器6におけるIMUXフィルタ61及びOMUXフィルタ63の周波数に対する振幅特性及び群遅延特性、並びにTWTA62のAM−AM特性及びAM−PM特性は、実衛星2の衛星中継器の特性に近似するように設定し、好適には実衛星2の設計時の値か、又は実衛星2の衛星中継器の運行中の設定値と等価に設定する。OMUXフィルタ63では、擬似衛星中継器6から出力されるIQ信号点の平均電力がマッピング部13から出力されるIQ信号点の平均電力と等しくなるように、全信号点の振幅を定数倍して調整すると良い。
なお、擬似衛星中継器6は、実衛星2の衛星中継器の特性を模擬したものでよいため、厳密に実衛星2の衛星中継器の特性に対する同一性が要求されるものではないことは云うまでもない。また、増幅器動作点についても同様である。従って、IMUXフィルタ61、TWTA62、及びOMUXフィルタ63と同等の機能を有する限り、任意の態様で構成することができ、例えばTWTA62の代わりに対応するデジタル値の信号を増幅変換するルックアップテーブルを格納したメモリで構成することもできる。また、IMUXフィルタ61、及びOMUXフィルタ63はデジタルフィルタで構成することもできる。また、疑似衛星中継器6とは別に、通常、衛星放送の送信装置及び受信装置にはロールオフフィルタをルート配分したデジタルフィルタ(ルートロールオフフィルタ)が備わっており、こちらの影響も同様に模擬することができ、送受信装置のルートロールオフフィルタそれぞれの特性をIMUXフィルタ61、及びOMUXフィルタ63に縦続接続して模擬することもできる。
マッピングした信号は、遅延部71にも入力され、疑似衛星中継器6を通過させた信号とのタイミングを調整し、ベクトル加算部721にて、疑似衛星中継器6通過後のIQ信号点のベクトルから対応する理想IQ信号点を差し引いた誤差ベクトルを信号点ごとに生成する。
制御器75及び逆特性係数部73により、対応する理想IQ信号の情報等をもとに、誤差ベクトルのI信号及びQ信号の値に最適な係数K(係数KはI信号とQ信号で異なってよい。)を乗算する。従来のデジタル信号の送信装置に関する歪補償法はこの機能がなく、誤差ベクトルをそのまま補正に用いていた(特許文献2参照)。本発明では、係数乗算された誤差ベクトルから符号反転したベクトル(逆ベクトル)と理想IQ信号点のベクトルをベクトル加算部722で加算して、疑似衛星中継器6によるずれを補正する。なお、補正後のIQ信号は、後続する直交変調部14以降の処理に影響を与えないよう、電力正規化部(図示しない)により、補正後のIQ信号点の平均電力が元の理想IQ信号点の平均電力と同値になるように、全信号点の振幅が定数倍して調整される。
図4は、実施例1の変調部11による、IQ信号ベクトル演算による歪補償を説明する図である。図中の白丸は、IQ平面において、変調方式が32APSKである場合の理想IQ信号点を示している。信号点aは、マッピング部13から出力される信号のIQ信号点であり、理想IQ信号点上のいずれかの信号点に配置される。信号点bは、疑似衛星中継器6を通過した信号のIQ信号点であり、信号点aに対するずれは、I信号の値の差分であるI信号誤差値ΔI及びQ信号の値の差分であるQ信号誤差値ΔQで表すことができる。ここで、ベクトル(ΔI,ΔQ)が誤差ベクトルである。信号点cは、従来のデジタル信号の送信装置に関する歪補償法による補正信号であり、誤差ベクトルから符号反転したベクトル(逆ベクトル)であるI信号−ΔI及びQ信号−ΔQに理想IQ信号点のベクトルを加算して得られた信号点を補正信号点としていた(特許文献2参照)。しかしながら、伝送路には非線形の要素が多数あるので、理想IQ信号に対して、単純に逆誤差ベクトル(−ΔI,−ΔQ)を加算しても、最適な補正信号にはならない場合があった。これに対して、信号点dは、誤差ベクトルに係数Kを乗算して符号反転したベクトルであるI信号−KiΔI及びQ信号−KqΔQ(ただし、−Ki及び−Kqは理想IQ信号点配置等により値が変化)に理想IQ信号点のベクトルを加算して得られた信号点であり、本発明において補正信号点として送信される。
制御部75で選択される最適な係数について、本発明では、事前処理(オフライン)として、係数のパラメータを変化させ、擬似衛星中継器6の特性をもとに伝送性能が最適となる値を導出する。例えば、理想IQ信号点に対する擬似衛星中継器6の特性通過後のエラーベクトル振幅(EVM:Error Vector Magnitude)が最小となる係数値を採用する方法がある。また、出力バックオフによる電力損と非線形による所要C/Nの劣化の和(C/N+OBO)が最小となる係数値を採用する方法としても良い。
係数Kの求め方について、簡単に説明する。前述のように、送信側での補正量と受信側での信号点のずれ量の関係は、入力される理想IQ信号に関する情報(信号点配置、信号点遷移)や逆特性係数部73に入力される誤差ベクトルに関する情報(誤差ベクトルの絶対値、方向)等の条件によって変化する。したがって、本発明では、実際の擬似伝送器や、伝送器の機能を模したシミュレーション等により、様々な条件を設定し、各条件における最適な係数K(各条件において、KiとKqは異なって良い)を予め求めておく。
例えば、入力される理想IQ信号のIQ平面における配置に基づいて、係数Kを設定することができる。シミュレーションによれば、理想IQ信号点のうち、振幅の大きい信号(IQ平面で外円の信号点)の係数Kを、振幅の小さい信号(IQ平面で内円の信号点)の係数Kよりも大きくすると、歪補償効果が良好になることが確認されている。したがって、入力される理想IQ信号のIQ平面における原点からの距離にもとづいて、最適な係数Kを求め、これを保存しておく。また、理想IQ信号の各信号点(例えば、32APSKであれば32通り)に、それぞれ最適な係数Kを設定することもできる。
さらに、現在入力される信号点の配置のみならず、信号点の遷移(前の信号点がどの位置で現在の信号点がどの位置かの関係、更に、次にどの位置の信号点に遷移するか、の組合せ)によって、係数Kを異ならせることも有効である。例えば、16APSKで前後1シンボルの情報を元に係数を決定した場合、16×16×16=4096通りの組合せに対応させて、係数Kを設定することも可能であり、より正確な歪補償ができる。
また、誤差ベクトルに関する情報に基づいて、係数Kを選択するように、設定しても良い。例えば、誤差ベクトルの絶対値が大きいとき係数を大きくし、誤差ベクトルが小さいとき係数を小さくするように、係数Kを設定することができる。また、誤差ベクトルの方向に基づいて係数Kを設定しても良い。さらに、上述した様々な条件を組み合わせても良い。
本発明においては、予め条件に応じた係数Kを求めておき、これを例えば、制御器75又は逆特性係数部73にテーブルとして保存することができる。或いは、条件と係数の関係を関数化して記憶することもできる。
直交変調部14は、ベクトル演算した補正後の信号点における補正信号を直交変調する。
実施例1の送信装置によれば、係数を用いたIQ信号ベクトル演算による歪補償により、従来よりも受信側での信号点のずれを減少させることができる。
次に、本発明による実施例2の送信装置を説明する。実施例2は、振幅位相演算による歪補償を行う送信装置である。なお、各図面において、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
図5は、本発明の実施例2の送信装置(前述のように、各種規格に準拠した一般化した送信装置である)における変調器11の構成のみを示すブロック図である。実施例2の送信装置102は、実施例1と同様に、前述した図1に示す放送衛星に備えた衛星中継器を介する伝送システムに適用可能な送信装置であり、既存の放送衛星に対して放送波信号を送信することができる。実施例1と同様の構成については、説明を省略若しくは簡略にする。
図5に示すように、実施例2の送信装置102における変調器11は、直列のビット列を並列のビット列に変換するS/P変換部12と、所定の変調方式毎にマッピングするマッピング部13と、信号点変換部5と、各々の所定の変調方式に応じた直交変調を施す直交変調部14とを備える。実施例2の変調器11は、実施例1の変調器11と比較して、信号点変換部5の構成が異なる。
信号点変換器5は、擬似衛星中継器6と、振幅位相信号補償演算部8とからなり、振幅位相信号補償演算部8は、遅延部81と、IQ/振幅位相変換部841及び842と、振幅位相加算部821及び822と、逆特性係数部83と、制御器85と、振幅位相/IQ変換部843とを備える。
擬似衛星中継器6は、図1に示す実衛星2の衛星中継器の位相及び振幅の周波数特性及び非線形特性に近似した特性を有し、即ちIMUXフィルタ61、TWTA62、及びOMUXフィルタ63を具備している。実施例1の擬似衛星中継器6と同様に、擬似衛星中継器6は、送信するデジタル信号の信号点のマッピング後の理想的な信号点配置に対して、実衛星2の衛星中継器によって生じ得る信号点のずれを模擬した信号点をもつIQ信号を出力する。
遅延部81は、振幅位相加算部821に入力される2系統の信号間の同期をとるために、擬似衛星中継器6によって生じる遅延量Dと同一の遅延量Dを、マッピング部13を経て入力されるデジタル信号に与え、タイミングを調整する。
IQ/振幅位相変換部841は、遅延部81を経て入力される理想IQ信号を振幅及び位相に変換した値(理想振幅値、理想位相値)を出力する。また、IQ/振幅位相変換部842は、擬似衛星中継器6通過後のIQ信号を振幅及び位相に変換した値を出力する。
振幅位相加算部821は、変換部841側の入力を符号反転している。したがって、IQ/振幅位相変換部842から入力される振幅値及び位相値から、それぞれIQ/振幅位相変換部841から入力される振幅値及び位相値を差し引いた振幅値及び位相値を出力する。振幅位相加算部821による演算処理は、擬似衛星中継器6から出力されるデジタル信号のIQ信号点の振幅値及び位相値と、対応する理想IQ信号点の理想振幅値及び理想位相値との差分を、振幅誤差値及び位相誤差値として信号点ごとに求めることに相当する。
逆特性係数部83は、振幅位相加算部821から生成される振幅誤差値及び位相誤差値に、係数(逆特性係数)Kを乗算する。
制御部85は、IQ/振幅位相変換部841に入力される理想IQ信号に関する情報(例えば、信号点配置、信号点遷移)や逆特性係数部83に入力される振幅誤差値,位相誤差値の情報等を元に、最適な係数となるよう逆特性係数部83を制御する。なお、逆特性係数部83と制御部85は一体化して、一つの係数乗算手段として構成することも可能である。
振幅位相加算部822は、逆特性係数部83より係数乗算された振幅誤差値及び位相誤差値を符号反転した誤差値(符号反転振幅誤差値及び符号反転位相誤差値)に、理想IQ信号点の理想振幅値及び理想位相値を加算した補正振幅値及び補正位相値を算出する。なお、逆特性係数部83において、係数を負の数値として乗算するように設定すれば、振幅位相加算部822では単純な加算を行えば良い。
振幅位相/IQ変換部843は、振幅位相加算部822から入力される補正振幅値及び補正位相値をIQ信号点に変換し、補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。
直交変調部14は、振幅位相信号補償演算部8で補正した信号点で、所定の変調方式に応じて直交変調する。ここで云う所定の変調方式には、π/2シフトBPSKを含むBPSK、π/4シフトQPSKを含むQPSK、8PSK、16APSK又は32APSKを含む。
以下、実施例2の送信装置102の動作について補足的に説明する。
実施例2の送信装置102の変調器11における、S/P変換部12、マッピング部13、及び直交変調部14の構成及び動作は、実施例1の各部の構成及び動作と同じである。また、擬似衛星中継器6の特性及び動作も、実施例1の擬似衛星中継器6と同じであり、実衛星2の衛星中継器の特性を模擬することができる。
マッピング部13でマッピングした信号(理想IQ信号)は2分配され、振幅位相信号補償演算部8と、擬似衛星中継器6に入力される。振幅位相信号補償演算部8に分配された信号を、遅延部81により遅延させて、擬似衛星中継器6を通過させた信号とのタイミングを調整し、IQ/振幅位相変換部841により理想IQ信号を振幅(理想振幅値)及び位相(理想位相値)に変換する。また、擬似衛星中継器6を通過させた後のIQ信号も、IQ/振幅位相変換部842により振幅及び位相に変換する。そして、振幅位相加算部821により、擬似衛星中継器6通過後のIQ信号の振幅値及び位相値(IQ/振幅位相変換部842の出力)から、理想IQ信号の理想振幅値及び理想位相値(IQ/振幅位相変換部841の出力)を差し引き、振幅誤差値及び位相誤差値を信号点ごとに生成する。
制御器85及び逆特性係数部83により、対応する理想IQ信号の情報や振幅誤差値及び位相誤差値の情報等をもとに、振幅誤差値及び位相誤差値に最適な係数K(係数Kは振幅と位相で異なってよい。)を乗算する。従来のデジタル信号の送信装置に関する歪補償法はこの機能がなく、振幅誤差値及び位相誤差値をそのまま補正に用いていた(特許文献3参照)。本発明では、係数乗算された振幅誤差値及び位相誤差値を符号反転した誤差値(符号反転振幅誤差値及び符号反転位相誤差値)と、理想IQ信号の理想振幅値及び理想位相値を、振幅位相加算部822で加算して、疑似衛星中継器6によるずれを補正する。その後、振幅位相/IQ変換部843により、振幅位相加算部822から出力された補正済みの振幅値及び位相値をIQ信号(補正されたIQ信号点)に変換する。なお、振幅位相/IQ変換部843から出力される補正後のIQ信号は、後続する直交変調部14以降の処理に影響を与えないよう、電力正規化部(図示しない)により、補正後のIQ信号点の平均電力が元の理想IQ信号点の平均電力と同値になるように、全信号点の振幅が定数倍して調整される。
図6は、実施例2の変調器11による、振幅位相演算による歪補償を説明する図である。図中の白丸は、IQ平面において、変調方式が32APSKである場合の理想IQ信号点を示している。信号点aは、マッピング部13から出力される信号のIQ信号点であり、理想IQ信号点上のいずれかの信号点に配置される。信号点bは、擬似衛星中継器6を通過した信号のIQ信号点であり、信号点aに対するずれは、振幅の差分である振幅誤差値ΔR、及び位相の差分である位相誤差値Δθで表すことができる。信号点cは、従来のデジタル信号の送信装置に関する歪補償法による補正信号であり、信号点aの理想振幅値及び理想位相値に、それぞれ振幅誤差値ΔRの符号反転値である符号反転振幅誤差値−ΔR、及び位相誤差値Δθの符号反転値である符号反転位相誤差値−Δθを加算して得られた信号点を補正信号点としていた(特許文献3参照)。しかしながら、伝送路には非線形の要素が多数あるので、理想IQ信号の振幅・位相に対して、単純に符号反転振幅誤差値−ΔR、及び符号反転位相誤差値−Δθを加算しても、最適な補正信号にはならない場合があった。これに対して、信号点dは、信号点bの信号点aに対する振幅誤差値ΔRに係数Kを乗算して符号反転した符号反転振幅誤差値−KmagΔR、信号点bの信号点aに対する位相誤差値Δθに係数Kを乗算して符号反転した符号反転位相誤差値−KphΔθ(ただし、−Kmag及び−Kphは理想IQ信号点配置等により値が変化)に、信号点aの理想振幅値及び理想位相値を加算して得られた信号点であり、本発明において振幅位相演算補償後の補正信号点として送信される。
また、制御部85で選択される最適な係数について、本発明では、事前処理(オフライン)として、係数のパラメータを変化させ、擬似衛星中継器6の特性をもとに伝送性能が最適となる値を導出する。係数Kの求め方については、実施例1と同様に行えばよく、入力される理想IQ信号に関する情報(例えば、信号点配置)や逆特性係数部83に入力される振幅誤差値及び/又は位相誤差値の情報等の条件に基づいて、実際の擬似伝送器や、伝送器の機能を模したシミュレーション等により、様々な条件を設定し、各条件における最適な係数K(各条件において、KiとKqは異なって良い)を予め求めておく。
さらに、現在入力される信号点の配置のみならず、信号点の遷移(前の信号点がどの位置で現在の信号点がどの位置かの関係、更に、次にどの位置の信号点に遷移するか、の組合せ)によって、係数Kを異ならせることも有効である。
本発明においては、予め条件に応じた係数Kを求めておき、これを例えば、制御器85又は逆特性係数部83にテーブルとして保存することができる。或いは、条件と係数の関係を関数化して記憶することもできる。
実施例2の送信装置によれば、係数を用いた振幅位相演算による歪補償により、従来よりも受信側での信号点のずれを減少させることができる。
次に、本発明による実施例3の送信装置を説明する。実施例3は、振幅位相演算による歪補償とIQ信号ベクトル演算による歪補償を組み合わせて行う送信装置である。なお、各図面において、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
図7は、本発明の実施例3の送信装置における変調器11の構成のみを示すブロック図である。実施例3の送信装置103は、実施例1,2と同様に、前述した図1に示す放送衛星に備えた衛星中継器を介する伝送システムに適用可能な送信装置であり、既存の放送衛星に対して放送波信号を送信することができる。実施例1,2と同様の構成については、説明を省略若しくは簡略にする。
図7に示すように、実施例3の送信装置103における変調器11は、直列のビット列を並列のビット列に変換するS/P変換部12と、所定の変調方式毎にマッピングするマッピング部13と、信号点変換部5と、各々の所定の変調方式に応じた直交変調を施す直交変調部14とを備える。実施例3の変調器11は、実施例1,2の変調器11と比較して、信号点変換部5の構成が異なる。
信号点変換部5は、擬似衛星中継器6と、補償演算部9とからなり、補償演算部9は、出力信号切換部921と、IQ信号補償演算部7と、振幅位相信号補償演算部8と、入力信号切換部923と、制御器91とを備える。
擬似衛星中継器6は、図1に示す実衛星2の衛星中継器の位相及び振幅の周波数特性及び非線形特性に近似した特性を有し、即ちIMUXフィルタ61、TWTA62、及びOMUXフィルタ63を具備している。実施例1,2の擬似衛星中継器6と同様に、擬似衛星中継器6は、送信するデジタル信号の信号点のマッピング後の理想的な信号点配置に対して、実衛星2の衛星中継器によって生じ得る信号点のずれを模擬した信号点をもつIQ信号を出力する。
出力信号切換部921は、マッピング部13から入力される信号を信号点ごとに時分割で、IQ信号補償演算部7に出力するか、又は、振幅位相信号補償演算部8に出力するかを切り換える。なお、図7では、擬似衛星中継器6の出力を2分配して、IQ信号補償演算部7及び振幅位相信号補償演算部8の両者に出力しているが、擬似衛星中継器6の出力にも出力信号切換部を設け、同様に、信号点ごとに時分割で、IQ信号補償演算部7に出力するか、又は、振幅位相信号補償演算部8に出力するかを切り換えても良い。
IQ信号補償演算部7は、実施例1(図3)のIQ信号補償演算部7と同じ構成(図示せず)を備えており、実施例1で説明したように、誤差ベクトルと係数Kにより補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。また、振幅位相信号補償演算部8は、実施例2(図5)の振幅位相信号補償演算部8と同じ構成(図示せず)を備えており、実施例2で説明したように、振幅誤差値及び位相誤差値と係数Kにより補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。
入力信号切換部923は、IQ信号補償演算部7からの入力と、振幅位相信号補償演算部8からの入力のどちらかを、時分割切換で1出力信号として出力する。
制御器91は、出力信号切換部921と入力信号切換部923に対して、切換制御及び同期制御を行うための制御信号を出力する。当該切換制御機能により、信号点配置等に応じて、所望する補償方法(IQ信号ベクトル演算補償又は振幅位相演算補償)の選択切換が可能となる。
以下、実施例3の送信装置103の動作について補足的に説明する。
実施例3の送信装置103における変調器11は、S/P変換部12、マッピング部13、及び直交変調部14の構成及び動作は、実施例1,2の各部の構成及び動作と同じである。また、擬似衛星中継器6の特性及び動作も、実施例1,2の擬似衛星中継器6と同じであり、実衛星2の衛星中継器の特性を模擬することができる。
マッピング部13でマッピングした信号(理想IQ信号)は2分配され、補償演算部9と、擬似衛星中継器6に入力される。補償演算部9に分配された信号は、まず出力信号切換部921に入力される。
出力信号切換部921にマッピング部13から信号が入力されると、制御器91からの制御信号により、予め定められた切り換え方法に従って、信号点ごとに、IQ信号補償演算部7に出力するか、振幅位相信号補償演算部8に出力するかの切り換え、すなわち補償方法をIQ信号ベクトル演算補償とするか振幅位相演算補償とするかの切り換えを行う。切り換え方法は、予めシミュレーション等により両補償による所要C/Nを求めておき、シミュレーション結果に基づいて信号点ごとに所要C/Nが小さくなる補償方法を選択するように切り換えると良い。例えば、マッピング後の理想IQ信号点の振幅が所定の大きさ以下の場合にはIQ信号ベクトル演算補償を選択し、理想IQ信号点の振幅が所定の大きさよりも大きい場合には振幅位相演算補償を選択するように切り換える。シミュレーションによれば、信号点が3振幅の同心円上に配置される32APSKの場合、振幅の最も大きい最外円に配置される信号点に対しては、振幅位相演算補償を行い、残りの2円上に配置される信号点に対しては、IQ信号ベクトル演算補償を行うと歪補償効果が良好になることが既に確認されている(特許文献3)。
擬似衛星中継器6の出力は、2分配されて、IQ信号補償演算部7及び振幅位相信号補償演算部8にそれぞれ入力される。実施例1,2において説明したように、IQ信号補償演算部7及び振幅位相信号補償演算部8では、擬似衛星中継器6を通過させた後のIQ信号と理想IQ信号との誤差と、係数Kに基づいて、補正信号を生成する。
入力信号切換部923は、制御器91からの制御信号により、予め定められた切り換え方法に従って、信号点ごとに、IQ信号補償演算部7からの入力に接続するか、振幅位相信号補償演算部8からの入力に接続するかの切り換えを行う。これら複数の補償方法の選択を時分割に切り換える際、出力信号切換部921と入力信号切換部923の同期をとる必要があるため、制御器91によりその制御を行う。なお、出力信号切換部921を設ける代わりに、マッピング部13の出力をIQ信号補償演算部7と振幅位相信号補償演算部8の両方に入力するようにして、入力信号切換部923のみで出力を切り換えても良い。
出力信号の平均電力の調整は、IQ信号補償演算部7又は振幅位相信号補償演算部8で行っても良いが、入力信号切換部923でまとめて行うこともできる。すなわち、入力信号切換部923は、後続する直交変調部14以降の処理に影響を与えないよう、補正後のIQ信号点の平均電力が元の理想IQ信号点の平均電力と同値になるように、全信号点の振幅を定数倍して調整し出力する。
実施例3の送信装置によれば、係数を用いた振幅位相演算による歪補償とIQ信号ベクトル演算による歪補償を組み合わせることにより、従来よりも受信側での信号点のずれを減少させることができる。
次に、本発明による実施例4の送信装置を説明する。実施例4は、歪補償演算を多段直列に行う送信装置である。なお、各図面において、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
図8は、本発明の実施例4の送信装置104における変調器11の構成のみを示すブロック図である。実施例4の送信装置104は、前述した実施例3の送信装置103における補正精度を更に高めるように構成した装置である。即ち、実施例3の送信装置103における擬似衛星中継器6及び補償演算部9を一組の信号点変換部5とし、これを直列配列した複数の信号点変換部を備え、直交変調部14は、直列配列した最終段の信号点変換部を経て得られる信号点で直交変調する。
初段の信号点変換部5−1は、擬似衛星中継器6−1及び補償演算部9−1を備え、n段目の信号点変換部5−nは、擬似衛星中継器6−n及び補償演算部9−nを備える。n段目の補償演算部9−nは、理想IQ信号を切り換える出力信号切換部921−nと、前段で補正されたIQ信号を切り換える出力信号切換部922−nと、IQ信号補償演算部7−nと、振幅位相信号補償演算部8−nと、入力信号切換部923−nと、制御器91−nとを備える。
信号点変換部5の直列配列による信号処理を、図8に示す2段目の信号点変換部5−2に基づいて説明する。n段目の信号点変換部5−nの信号処理も同様である。前段の信号点変換部5−1の出力信号を、後段の擬似衛星中継器6−2及び出力信号切換部922−2へ入力させ、マッピング部13から出力される理想IQ信号を、出力信号切換部921−2に入力させる。なお、マッピング部13から出力される理想IQ信号は、全ての信号点変換部5−nの出力信号切換部921−nに入力される。
出力信号切換部921−2は、制御器91−2からの制御信号に基づいて、マッピング部13から入力される理想IQ信号を信号点ごとに時分割で、IQ信号補償演算部7−2に出力するか、又は、振幅位相信号補償演算部8−2に出力するかを切り換える。また、出力信号切換部922−2は、制御器91−2からの制御信号に基づいて、前段の信号点変換部5−1の出力信号(前段での補正信号)を信号点ごとに時分割で、IQ信号補償演算部7−2に出力するか、又は、振幅位相信号補償演算部8−2に出力するかを切り換える。この切り換えの基準は、実施例3と同様に、信号点ごとに所要C/Nが小さくなる補償方法を選択するように切り換えることが望ましい。なお、図8では、擬似衛星中継器6−2の出力を2分配して、IQ信号補償演算部7−2及び振幅位相信号補償演算部8−2の両者に出力しているが、擬似衛星中継器6−2の出力にも出力信号切換部を設け、信号点ごとに時分割で、IQ信号補償演算部7−2に出力するか、又は、振幅位相信号補償演算部8−2に出力するかを切り換えても良い。
IQ信号補償演算部7−2は、実施例1(図3)におけるIQ信号補償演算部7とほぼ同等の構成を備えており、遅延部71−2と、ベクトル加算部721−2、722−2と、制御器75−2と、逆特性係数部73−2とを有する。
IQ信号補償演算部7−2は、出力信号切換部921−2から入力される信号(理想IQ信号)を遅延部71−2に入力し、ベクトル加算部721−2に入力される2系統の信号間の同期をとるために、タイミングを調整する。また、前段の信号点変換部5−1の出力信号(前段での補正信号)は、擬似中継器6−2を経て、ベクトル加算部721−2に入力される。
ベクトル加算部721−2は、疑似衛星中継器6−2から入力されるIQ信号のベクトルから、遅延部71−2から入力される理想IQ信号の信号ベクトルを、信号点ごとに差し引いた誤差ベクトルを有する信号を出力する。
制御器75−2及び逆特性係数部73−2は、ベクトル加算部721−2から生成される誤差ベクトルのI信号及びQ信号の値に、最適な係数Kを乗算する。なお、係数Kは、実施例1と同様に、入力される理想IQ信号に関する情報(信号点配置、信号点遷移)や逆特性係数部73−2に入力される誤差ベクトルに関する情報(誤差ベクトルの絶対値、方向)等の条件に基づいて、実際の擬似伝送器や、伝送器の機能を模したシミュレーション等により、様々な条件を設定し、各条件における最適な係数Kを予め求めておく。
ベクトル加算部722−2は、逆特性係数部73−2で係数乗算された誤差ベクトルから符号反転したベクトル(逆ベクトル)に、出力信号切換部922−2から入力された信号ベクトル(前段の信号変換部5−1の出力信号)を加算した補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。なお、信号点変換部5−n(n>1)におけるIQベクトル演算補償は、誤差ベクトルに係数Kを乗算し符号反転させたベクトルを、理想IQ信号点のベクトルに加えるのではなく、前段の信号点変換部から得られるIQ信号点(前段までの補正が累積した補正信号)のベクトルに加算する。
一方、振幅位相信号補償演算部8−2は、実施例2(図5)における振幅位相信号補償演算部8とほぼ同等の構成を備えており、遅延部81−2と、IQ/振幅位相変換部841−2,842−2,844−2と、振幅位相加算部821−2,822−2と、制御器85−2と、逆特性係数部83−2と、振幅位相/IQ変換部843−2とを有する。
振幅位相信号補償演算部8−2は、出力信号切換部921−2から入力される信号(理想IQ信号)を遅延部81−2に入力し、振幅位相加算部821−2に入力される2系統の信号間の同期をとり、さらにIQ/振幅位相変換部841−2により、理想IQ信号を振幅及び位相(理想振幅値及び理想位相値)に変換する。また、前段の信号点変換部5−1の出力信号(前段での補正信号)は、擬似中継器6−2を経て、IQ/振幅位相変換部842−2に入力され、擬似衛星中継器6通過後のIQ信号を振幅及び位相に変換する。
振幅位相加算部821−2は、IQ/振幅位相変換部842−2から入力される振幅値及び位相値から、IQ/振幅位相変換部841−2から入力される理想IQ信号の振幅値及び位相値をそれぞれ差し引いて振幅誤差値及び位相誤差値を出力する。
制御器85−2及び逆特性係数部83−2は、振幅位相加算部821−2から生成される振幅誤差値及び位相誤差値に、最適な係数Kを乗算する。なお、係数Kは、実施例2と同様に、入力される理想IQ信号に関する情報(信号点配置、信号点遷移)や逆特性係数部83−2に入力される振幅誤差値及び/又は位相誤差値の情報等の条件に基づいて、実際の擬似伝送器や、伝送器の機能を模したシミュレーション等により、様々な条件を設定し、各条件における最適な係数Kを予め求めておく。
振幅位相加算部822−2は、逆特性係数部83−2で係数乗算された振幅誤差値及び位相誤差値を符号反転した誤差値(符号反転振幅誤差値及び符号反転位相誤差値)に、IQ/振幅位相変換部844−2の出力、すなわち、出力信号切換部922−2からの信号(前段の信号変換部5−1の出力信号)の振幅値及び位相値を加算した補正振幅値及び補正位相値を算出する。なお、信号点変換部5−n(n>1)における振幅位相演算補償は、振幅誤差値及び位相誤差値に係数Kを乗算し符号反転した誤差値(符号反転振幅誤差値及び符号反転位相誤差値)を、理想IQ信号点の振幅及び位相に加えるのではなく、前段の信号点変換部から得られるIQ信号点(前段までの補正が累積した補正信号)の振幅及び位相に加算する。
振幅位相/IQ変換部843−2は、振幅位相加算部822−2から入力される補正振幅値及び補正位相値をIQ信号点に変換し、補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。
入力信号切換部923−2は、IQ信号補償演算部7−2からの入力と、振幅位相信号補償演算部8−2からの入力のどちらかを、制御器91−2からの制御信号に基づいて、時分割切換で1出力信号として出力する。この信号変換部5−2の出力は、さらに次段の信号変換部5−3の入力となる。
なお、実施例4の説明においては、実施例3の送信装置103における擬似衛星中継器6及び補償演算部9(すなわち、IQ信号補償演算部7と、振幅位相信号補償演算部8を両方含む補償演算部)を一組の信号点変換部5とし、これを直列配列したが、同様に、実施例1の送信装置101における擬似衛星中継器6及びIQ信号補償演算部7を一組の信号点変換部5とし、これを直列配列することや、実施例2の送信装置102における擬似衛星中継器6及び振幅位相信号補償演算部8を一組の信号点変換部5とし、これを直列配列することにより、送信装置を構成することも可能である。この構成は、実施例4(図8)から、それぞれ、IQ信号補償演算部7にかかわる部分、又は、振幅位相信号補償演算部8にかかわる部分を取り出せばよいので、説明を省略する。
実施例4の送信装置によれば、歪補償演算を多段直列に行い、補正精度を更に高めることにより、従来よりも受信側での信号点のずれを減少させることができる。
(実施の形態2)
以下に、本発明の実施の形態2として、OFDM多重で複数の搬送波により伝送路を介してデジタル信号を送信する送信装置について説明する。
本発明による実施例5の送信装置を説明する。実施例5は、OFDM方式においてIQ信号ベクトル演算による歪補償を行う送信装置である。なお、各図面において、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
図10は、本発明の実施例5の送信装置の構成を示すブロック図である。実施例5の送信装置105は、前述した図9に示すOFDMによる伝送システムに適用可能な送信装置であり、既存の放送受信機に対して放送波信号を送信することができる。更に、既設の別の送信装置とは無関係に伝送システムに組み入れることができる。従って、実施例5の送信装置105は、デジタル放送で採用されている規格、例えばISDB−T、DVB−T、DVB−T2などに準拠したものとすることができる。従って、実施例5の送信装置105は、図示しない受信装置に向けてデジタル信号を送信するために、該デジタル信号を所定の変調方式で変調する送信装置として構成される。
図10に示すように、実施例5の送信装置105における変調器11は、送信するデジタル信号(所定の符号化を施した変調前の信号)に対して、シリアルのビット列をパラレルに変換するシリアル/パラレル変換(S/P)部12と、所定の変調方式毎にマッピングするマッピング部13と、信号点変換部5と、OFDM変換部15と、直交変調を施す直交変調部14とを備える。ここで、シリアル/パラレル変換(S/P)部12、マッピング部13、OFDM変換部15、及び直交変調部14は、図9に示した従来からの一般的な送信装置のものと同様に機能する。
信号点変換部5は、シリアル/パラレル変換(S/P)部181a,181b、逆高速フーリエ変換(IFFT)部182、及びパラレル/シリアル変換(P/S)部183a,183bからなるOFDM変換部18と、フィルタ部191、電力増幅部192、及びフィルタ部193からなる擬似増幅器19と、シリアル/パラレル変換(S/P)部201a,201b、高速フーリエ変換(FFT)部202、及びパラレル/シリアル変換(P/S)部203a,203bからなるOFDM逆変換部20と、IQ信号補償演算部7とを備える。IQ信号補償演算部7は、遅延部71、ベクトル加算部721,722、逆特性係数部73、及び制御器75を備える。実施例5のIQ信号補償演算部7は、実施例1のIQ信号補償演算部7と、基本的に同じ構成である。
OFDM変換部18は、S/P変換部181a及び181bにより、マッピング部13から入力される理想IQ信号を、OFDM搬送波と同数に分配し、IFFT部182により、時間軸信号に変換する。その後、P/S変換部183a及び183bにより、得られた時間軸信号を1本の時系列信号に変換する。
擬似増幅器19は、図9に示す増幅器16における位相及び振幅の周波数特性及び非線形特性に近似した特性を有し、即ちフィルタ191、電力増幅部192、及びフィルタ193を具備しており、フィルタ191によって不要周波数成分の抑圧を行い、電力増幅部192により所定の電力に増幅し、フィルタ193で不要周波数成分を抑圧する。
これにより、擬似増幅器19は、送信するデジタル信号の信号点のマッピング後の理想IQ信号点に対して、増幅器16によって生じうる信号点のずれを模擬した信号点をもつOFDMで多重化された時間軸信号のIQ信号を送出する。すなわち、擬似増幅器19は、伝送路上の対象機器(増幅器16)の特性に近似した特性を有する擬似伝送器として機能する。
OFDM逆変換部20は、S/P変換部201a及び201bにより、擬似増幅器19から入力される信号をOFDM搬送波と同数に分配し、FFT部202により、周波数軸信号に変換する。その後、P/S変換部203a及び203bにより、得られた周波数軸信号を1本の信号系列に変換する。
遅延部71は、ベクトル加算部721に入力される2系統の信号間の同期をとるために、タイミングを調整する。すなわち、遅延部71は、OFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20によって生じる遅延量Dと同一の遅延量Dを、マッピング部13を経て入力されるデジタル信号(理想IQ信号)に与え、2系統の信号を同期させるように機能する。
ベクトル加算部721は、遅延部71側の入力を符号反転している。したがって、OFDM逆変換部20から送出される、送信するデジタル信号のマッピング後の信号点のベクトルから、遅延部71から入力される理想IQ信号点のベクトルを、信号点ごとに差し引いたずれを誤差ベクトルとして、シンボルごとに生成する。
逆特性係数部73は、ベクトル加算部721から生成される誤差ベクトルのI信号及びQ信号の値に、係数Kを乗算する。
制御部75は、ベクトル加算部721に入力される理想IQ信号に関する情報(例えば、信号点配置、信号点遷移)や逆特性係数部73に入力される誤差ベクトルに関する情報(例えば、誤差ベクトルの絶対値、方向)を元に、最適な係数となるよう逆特性係数部73を制御する。なお、逆特性係数部73と制御部75は一体化して、一つの係数乗算手段として構成することも可能である。
ベクトル加算部722は、逆特性係数部73で係数乗算された誤差ベクトルから符号反転したベクトル(逆ベクトル)に理想IQ信号の信号ベクトルを加算した補正信号(補正されたIQ信号点)をシンボルごとに出力する。なお、逆特性係数部73において、係数を負の数値として乗算するように設定すれば、ベクトル加算部722では単純な加算を行えば良い。
OFDM変換部15は、信号変換部5の出力を、シリアル/パラレル変換(S/P)部151a,151bにより、多数のOFDM搬送波に割り振る。次に逆高速フーリエ変換(IFFT)部152により多数のOFDM搬送波を同数の時間軸信号に変換する。さらに、パラレル/シリアル変換(P/S)部153a,153bにより、得られた時間軸信号を1本の時系列信号に変換する。その後、直交変調部14に入力され、直交変調部14は、補正した信号点で、所定の変調方式に応じて直交変調する。ここで云う所定の変調方式には、π/2シフトBPSKを含むBPSK、π/4シフトQPSKを含むQPSK、8PSK、16QAM、32QAM、64QAM、128QAM、及び256QAMを含む。
以下、実施例5の送信装置の動作をより詳細に説明する。
実施例5の送信装置105における変調器11に入力されるデジタル信号は、シリアル/パラレル変換(S/P)部12により伝送に用いる変調方式で1シンボルあたりに伝送できるビット数にシリアル/パラレル変換される。マッピング部13は、この変換された信号に対してI信号振幅及びQ信号振幅に変換するマッピング処理を行う。
次に、マッピングした信号は2分配され、そのうちの一方の信号は、OFDM変換部18のシリアル/パラレル変換(S/P)部181a,181bで多数のOFDM搬送波に割り振られる。逆フーリエ変換(IFFT)部182では、OFDM搬送波を同数の時間軸信号に変換する。この時間軸信号は、増幅器16の特性を模擬した擬似増幅器19におけるフィルタ191、電力増幅部192、及びフィルタ193に通過させる。ここで、擬似増幅器19におけるフィルタ191及びフィルタ193の周波数に対する振幅特性及び群遅延特性、並びに電力増幅部192のAM−AM特性及びAM−PM特性は、増幅器16のものに近い特性に設定し、好適には増幅器16の設計時の値か、又は増幅器16の運行中の設定値と等価に設定する。擬似中継器通過後の信号は、OFDM逆変換部20のシリアル/パラレル変換(S/P)部201a,201bでOFDM搬送波と同数に分配され、高速フーリエ変換(FFT)部202で周波数軸信号に変換される。その後、パラレル/シリアル変換(P/S)部203a,203bで1本の信号系列に変換される。この信号系列は、擬似増幅器19による影響をうけた信号点の系列となる。
なお、フィルタ193では、OFDM逆変換部20から出力される信号点の平均電力がマッピング13から出力されるIQ信号点の平均電力と等しくなるように出力する際に、全信号点を定数倍して調整し出力する。また、擬似増幅器19は、増幅器16の特性を模擬したものでよいため、厳密に増幅器16の特性に対する同一性が要求されるものではないことは云うまでもない。従って、フィルタ161、電力増幅部162、及びフィルタ163と同等の機能を有する限り、任意の態様で構成することができ、例えば電力増幅部192の代わりに対応するデジタル値の信号を増幅変換するルックアップテーブルを格納したメモリで構成することもできる。また、フィルタ191、及びフィルタ193はデジタルフィルタで構成することもできる。
OFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20の通過で生じる遅延量Dとすると、遅延部71により、マッピングした信号における2分配の他方の信号にも同じ遅延量Dをもたせ、シンボルごとにベクトル演算する際の同期をとるようにする。
ベクトル加算部721により、まずマッピング後の理想IQ信号点からみたOFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20を通過後の信号点のずれを誤差ベクトルとしてシンボルごとに導出する。誤差ベクトルを求める演算は、OFDM逆変換部20から入力される信号点の平均電力が遅延部71から入力される理想IQ信号点の平均電力と等しくなるように、若しくはより好適には、ベクトル加算部721の出力の平均電力が最小になるように調整した後、OFDM逆変換部20から入力される信号点ベクトルから、遅延部71から入力されるIQ信号点(理想IQ信号点)のベクトルを減算することにより行う。
制御器75及び逆特性係数部73により、対応する理想IQ信号の情報等をもとに、誤差ベクトルのI信号及びQ信号の値に最適な係数K(係数KはI信号とQ信号で異なってよい。)を乗算する。なお、係数Kは、実施例1と同様に、事前処理(オフライン)として、係数のパラメータを変化させ、擬似増幅器19の特性をもとに伝送性能が最適となる値を求めておく。
次に、ベクトル加算部722は、誤差ベクトル(ΔI,ΔQ)に係数Kを乗算して符号反転したベクトルであるI信号−KiΔI及びQ信号−KqΔQ(ただし、−Ki及び−Kqは理想IQ信号点配置等により値が変化)に理想IQ信号のベクトルを加算して、補正信号点を生成する。なお、ベクトル加算部722は、後続するOFDM変換部15以降の処理に影響を与えないよう変換後のIQ信号点の平均電力が元の理想IQ信号点の平均電力と同値になるように、変換後、全シンボルの振幅を定数倍して調整し出力する。その後、OFDM変換部15でこれらのベクトル演算した信号点がOFDM信号に変換され、直交変調部14が直交変調する。
実施例5の送信装置によれば、係数を用いたIQ信号ベクトル演算による歪補償により、OFDM伝送方式において従来よりも受信側での信号点のずれを減少させることができる。
次に、本発明による実施例6の送信装置を説明する。実施例6は、OFDM方式において振幅位相演算による歪補償を行う送信装置である。なお、各図面において、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
図11は、本発明の実施例6の送信装置106の構成を示すブロック図である。実施例6の送信装置106は、実施例5と同様に、前述した図9に示すOFDMによる伝送システムに適用可能な送信装置であり、既存の放送受信機に対して放送波信号を送信することができる。実施例5と同様の構成については、説明を省略若しくは簡略にする。
図11に示すように、実施例6の送信装置106における変調器11は、直列のビット列を並列のビット列に変換するS/P変換部12と、所定の変調方式毎にマッピングするマッピング部13と、信号点変換部5と、OFDM変換部15と、直交変調を施す直交変調部14とを備える。実施例6の変調器11は、実施例5の変調器11と比較して、信号点変換部5の構成が異なる。
信号点変換部5は、シリアル/パラレル変換(S/P)部181a,181b、逆高速フーリエ変換(IFFT)部182、及びパラレル/シリアル変換(P/S)部183a,183bからなるOFDM変換部18と、フィルタ部191、電力増幅部192、及びフィルタ部193からなる擬似増幅器19と、シリアル/パラレル変換(S/P)部201a,201b、高速フーリエ変換(FFT)部202、及びパラレル/シリアル変換(P/S)部203a,203bからなるOFDM逆変換部20と、振幅位相信号補償演算部8とを備える。振幅位相信号補償演算部8は、遅延部81、IQ/振幅位相変換部841及び842、振幅位相加算部821及び822、逆特性係数部83、制御器85、及び振幅位相/IQ変換部843を備える。実施例6の振幅位相信号補償演算部8は、実施例2の振幅位相信号補償演算部8と、基本的に同じ構成である。
OFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20の構成・機能は、実施例5と同じである。すなわち、OFDM変換部18は、マッピング部13から入力される理想IQ信号を分配し、時間軸信号に変換した後、時系列信号とする。擬似増幅器19は、送信するデジタル信号の信号点のマッピング後の理想IQ信号点に対して、増幅器16によって生じ得る信号点のずれを模擬した信号点をもつ、OFDMで多重化された時間軸信号のIQ信号を出力する。また、後段のOFDM逆変換部20では、擬似増幅器19から出力されたOFDMで多重化された時間軸信号のIQ信号を周波数軸のIQ信号に変換する。
遅延部81は、振幅位相加算部821に入力される2系統の信号間の同期をとるために、OFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20によって生じる遅延量Dと同一の遅延量Dを、マッピング部13を経て入力されるデジタル信号に与え、タイミングを調整する。
IQ/振幅位相変換部841は、遅延部81を経て入力される理想IQ信号を振幅及び位相に変換した値(理想振幅値及び理想位相値)を出力する。また、IQ/振幅位相変換部842は、OFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20を通過後のIQ信号を振幅及び位相に変換した値を出力する。
振幅位相加算部821は、遅延部81側の入力を符号反転している。したがって、IQ/振幅位相変換部842から入力される振幅値及び位相値から、それぞれIQ/振幅位相変換部841から入力される振幅値及び位相値を差し引いた振幅値及び位相値を出力する。振幅位相加算部821による演算処理は、擬似増幅器19を経たIQ信号点の振幅値及び位相値と、対応する理想IQ信号点の理想振幅値及び理想位相値との差分を、振幅誤差値及び位相誤差値として信号点(シンボル)ごとに求めることに相当する。
逆特性係数部83は、振幅位相加算部821から生成される振幅誤差値及び位相誤差値に、係数Kを乗算する。
制御部85は、IQ/振幅位相変換部841に入力される理想IQ信号に関する情報(例えば、信号点配置、信号点遷移)や逆特性係数部83に入力される振幅誤差値,位相誤差値の情報等を元に、最適な係数となるよう逆特性係数部83を制御する。なお、逆特性係数部83と制御部85は一体化して、一つの係数乗算手段として構成することも可能である。
振幅位相加算部822は、逆特性係数部83で係数乗算された振幅誤差値及び位相誤差値を符号反転した誤差値(符号反転振幅誤差値及び符号反転位相誤差値)に、理想IQ信号点の理想振幅値及び理想位相値を加算した補正振幅値及び補正位相値を算出する。なお、逆特性係数部83において、係数を負の数値として乗算するように設定すれば、振幅位相加算部822では単純な加算を行えば良い。
振幅位相/IQ変換部843は、振幅位相加算部822から入力される補正振幅値及び補正位相値をIQ信号点に変換し、補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。
OFDM変換部15は、実施例5のOFDM変換部15と構成・機能は同じであり、信号変換部5の出力を、OFDM搬送波に割り振り、時間軸信号に変換した後、時系列信号にする。その後、直交変調部14は、補正した信号点で、所定の変調方式に応じて直交変調する。
以下、実施例6の送信装置106の動作について補足的に説明する。
実施例6の送信装置106は、実施例5の送信装置105がIQ信号補償演算部7により信号補正を行ったのに対し、振幅位相信号補償演算部8により信号補正を行っている点が異なり、他の構成及び動作は、全て同一である。
マッピング部13でマッピングした信号(理想IQ信号)は2分配され、振幅位相信号補償演算部8と、OFDM変換部18に入力される。振幅位相信号補償演算部8に分配された信号を、遅延部81により遅延させて、擬似増幅器19を通過する信号とのタイミングを調整し、IQ/振幅位相変換部841により理想IQ信号を振幅(理想振幅値)及び位相(理想位相値)に変換する。また、OFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20を通過させた後のIQ信号も、IQ/振幅位相変換部842により振幅及び位相に変換する。そして、振幅位相加算部821により、擬似増幅器19を通過後のIQ信号の振幅値及び位相値(IQ/振幅位相変換部842の出力)から、理想IQ信号の振幅及び位相(IQ/振幅位相変換部841の出力)を差し引き、振幅誤差値及び位相誤差値を信号点ごとに生成する。
制御器85及び逆特性係数部83により、対応する理想IQ信号の情報や振幅誤差値及び位相誤差値の情報等をもとに、振幅誤差値及び位相誤差値に最適な係数K(係数Kは振幅信号と位相信号で異なってよい。)を乗算する。なお、係数Kは、実施例2と同様に、事前処理(オフライン)として、係数のパラメータを変化させ、擬似増幅器19の特性をもとに伝送性能が最適となる値を求めておく。
係数乗算された振幅誤差値及び位相誤差値を符号反転した誤差値(符号反転振幅誤差値及び符号反転位相誤差値)と、理想IQ信号の理想振幅値及び理想位相値を、振幅位相加算部822により加算して、疑似増幅器19等によるずれを補正する。すなわち、理想信号点に対する振幅誤差値ΔRに係数を乗算して符号反転した符号反転振幅誤差値−KmagΔR、理想信号点に対する位相誤差値Δθに係数を乗算して符号反転した符号反転位相誤差値−KphΔθ(ただし、−Kmag及び−Kphは理想IQ信号点配置等により値が変化)に、理想信号点の理想振幅値及び理想位相値を加算して得られた信号点を、補正信号点とする。
その後、振幅位相/IQ変換部843により、振幅位相加算部822から出力された補正済みの振幅値及び位相値をIQ信号(補正されたIQ信号点)に変換する。これを本実施例における振幅位相演算補償後の補正IQ信号として送信する。なお、振幅位相/IQ変換部843から出力される補正後のIQ信号は、後続する直交変調部14以降の処理に影響を与えないよう、電力正規化部(図示しない)により、補正後のIQ信号点の平均電力が元の理想IQ信号点の平均電力と同値になるように、全信号点の振幅が定数倍して調整される。
実施例6の送信装置によれば、係数を用いた振幅位相演算による歪補償により、OFDM伝送方式において従来よりも受信側での信号点のずれを減少させることができる。
次に、本発明による実施例7の送信装置を説明する。実施例7は、OFDM方式において、振幅位相演算による歪補償とIQ信号ベクトル演算による歪補償を組み合わせて行う送信装置である。なお、各図面において、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。
図12は、本発明の実施例7の送信装置107の構成を示すブロック図である。実施例7の送信装置107は、実施例5,6と同様に、前述した図9に示すOFDMによる伝送システムに適用可能な送信装置であり、既存の放送受信機に対して放送波信号を送信することができる。実施例5,6と同様の構成については、説明を省略若しくは簡略にする。
図12に示すように、実施例7の送信装置107における変調器11は、直列のビット列を並列のビット列に変換するS/P変換部12と、所定の変調方式毎にマッピングするマッピング部13と、信号点変換部5と、OFDM変換部15と、直交変調を施す直交変調部14とを備える。実施例7の変調器11は、実施例5,6の変調器11と比較して、信号点変換部5の構成が異なる。
信号点変換部5は、シリアル/パラレル変換(S/P)部181a,181b、逆高速フーリエ変換(IFFT)部182、及びパラレル/シリアル変換(P/S)部183a,183bからなるOFDM変換部18と、フィルタ部191、電力増幅部192、及びフィルタ部193からなる擬似増幅器19と、シリアル/パラレル変換(S/P)部201a,201b、高速フーリエ変換(FFT)部202、及びパラレル/シリアル変換(P/S)部203a,203bからなるOFDM逆変換部20と、補償演算部9とを備える。補償演算部9は、出力信号切換部921と、IQ信号補償演算部7と、振幅位相信号補償演算部8と、入力信号切換部923と、制御器91とを備える。実施例7の補償演算部9は、実施例3の補償演算部9と、基本的に同じ構成である。
OFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20の構成・機能は、実施例5,6と同じである。すなわち、OFDM変換部18は、マッピング部13から入力される理想IQ信号を分配し、時間軸信号に変換した後、時系列信号とする。擬似増幅器19は、送信するデジタル信号の信号点のマッピング後の理想IQ信号点に対して、増幅器16によって生じ得る信号点のずれを模擬した信号点をもつ、OFDMで多重化された時間軸信号のIQ信号を出力する。また、後段のOFDM逆変換部20では、擬似増幅器19から出力されたOFDMで多重化された時間軸信号のIQ信号を周波数軸のIQ信号に変換する。
出力信号切換部921は、マッピング部13から入力される信号を信号点ごとに時分割で、IQ信号補償演算部7に出力するか、又は、振幅位相信号補償演算部8に出力するかを切り換える。なお、図12では、OFDM逆変換部20の出力を2分配して、IQ信号補償演算部7及び振幅位相信号補償演算部8の両者に出力しているが、OFDM逆変換部20の出力にも出力信号切換部を設け、同様に、信号点ごとに時分割で、IQ信号補償演算部7に出力するか、又は、振幅位相信号補償演算部8に出力するかを切り換えても良い。
IQ信号補償演算部7は、実施例5(図10)のIQ信号補償演算部7と同じ構成(図示せず)を備えており、実施例5で説明したように、誤差ベクトルと係数Kにより補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。また、振幅位相信号補償演算部8は、実施例6(図11)の振幅位相信号補償演算部8と同じ構成(図示せず)を備えており、実施例6で説明したように、振幅誤差値及び位相誤差値と係数Kにより補正信号(補正されたIQ信号点)を出力する。
入力信号切換部923は、IQ信号補償演算部7からの入力と、振幅位相信号補償演算部8からの入力のどちらかを、時分割切換で1出力信号として出力する。
制御器91は、出力信号切換部921と入力信号切換部923に対して、切換制御及び同期制御を行うための制御信号を出力する。当該切換制御機能により、信号点配置等に応じて、所望する補償方法(IQ信号ベクトル演算補償又は振幅位相演算補償)の選択切換が可能となる。
以下、実施例7の送信装置107の動作について補足的に説明する。
実施例7の送信装置107における変調器11は、S/P変換部12、マッピング部13、OFDM変換部15、及び直交変調部14の構成及び動作は、実施例5,6の各部の構成及び動作と同じである。また、OFDM変換部18、擬似増幅器19、及びOFDM逆変換部20の特性及び動作も、実施例5,6のものと同じであり、増幅器16等の特性を模擬することができる。
マッピング部13でマッピングした信号(理想IQ信号)は2分配され、補償演算部9と、OFDM変換部18に入力される。補償演算部9に分配された信号は、まず出力信号切換部921に入力される。
出力信号切換部921にマッピング部13から信号が入力されると、制御器91からの制御信号により、予め定められた切り換え方法に従って、信号点ごとに、IQ信号補償演算部7に出力するか、振幅位相信号補償演算部8に出力するかの切り換え、すなわち補償方法をIQ信号ベクトル演算補償とするか振幅位相演算補償とするかの切り換えを行う。切り換え方法は、予めシミュレーション等により両補償による所要C/Nを求めておき、シミュレーション結果に基づいて信号点ごとに(例えば、信号点配置に応じて)、所要C/Nが小さくなる補償方法を選択するように切り換える等、実施例3の切換方法と同様に、設定することができる。
OFDM変換部18に入力され、擬似増幅器19を経てOFDM逆変換部20から出力される信号は、2分配されて、IQ信号補償演算部7及び振幅位相信号補償演算部8にそれぞれ入力される。実施例5,6において説明したように、IQ信号補償演算部7及び振幅位相信号補償演算部8では、擬似増幅器19等を通過させた後のIQ信号と理想IQ信号との誤差と、係数Kに基づいて、それぞれの方法で補正信号を生成する。
入力信号切換部923は、制御器91からの制御信号により、予め定められた切り換え方法に従って、信号点ごとに、IQ信号補償演算部7からの入力に接続するか、振幅位相信号補償演算部8からの入力に接続するかの切り換えを行う。なお、出力信号切換部921を設ける代わりに、マッピング部13の出力をIQ信号補償演算部7と振幅位相信号補償演算部8の両方に入力するようにして、入力信号切換部923のみで出力を切り換えても良い。
出力信号の平均電力の調整は、IQ信号補償演算部7又は振幅位相信号補償演算部8で行っても良いが、入力信号切換部923でまとめて行うこともできる。すなわち、入力信号切換部923は、後続する処理に影響を与えないよう、補正後のIQ信号点の平均電力が元の理想IQ信号点の平均電力と同値になるように、全信号点の振幅を定数倍して調整し出力する。
OFDM変換部15は、実施例5,6のOFDM変換部15と構成・機能は同じであり、信号変換部5の出力を、OFDM搬送波に割り振り、時間軸信号に変換した後、時系列信号にする。その後、直交変調部14は、補正した信号点で、所定の変調方式に応じて直交変調する。
実施例7の送信装置によれば、係数を用いた振幅位相演算による歪補償とIQ信号ベクトル演算による歪補償を組み合わせて行うことにより、OFDM伝送方式において従来よりも受信側での信号点のずれを減少させることができる。
このように、実施例5〜7の送信装置によれば、所定の伝送路を介して受信装置に向けてデジタル信号を送信するために、該デジタル信号を所定の変調方式で変調しOFDM多重して送信する送信装置として提供され、この送信装置は、周波数軸信号点系列を時間軸OFDM信号に変換するOFDM変換部18と、伝送路上の対象機器の特性に対応する特性を有する擬似伝送器(本実施例では、擬似増幅器19)と、時間軸信号点系列を周波数軸OFDM信号に変換するOFDM逆変換部20と、擬似伝送器を介して送信するデジタル信号の信号点からマッピング後の理想IQ信号点に対する前記対象機器の通過後の信号点のずれを補償する補償演算部と、補正した信号点を時間軸OFDM信号に変換するOFDM変換部15と、該時間軸OFDM信号を直交変調する直交変調部14とを備え、所要C/Nの劣化を改善した放送波信号を送信することができるようになる。
また、実施例3の補償演算部を多段に接続して、実施例4に拡張したのと同様に、実施例7の送信装置における誤差補正精度を更に高めるように構成することが可能である。即ち、実施例7における、OFDM変換部18、擬似増幅器19、OFDM逆変換部20、及び補償演算部9を一組の信号点変換部5として、直列配列した複数の該信号点変換部5−nを備え、OFDM変換部15は、直列配列した複数の該信号点変換器によってマッピング部による信号点のマッピング後の信号点を直列配列した最終段の信号点変換器を経て得られる誤差ベクトルで補正した信号点をOFDM信号に変換し、直交変調部14は、このOFDM変換部15の出力を直交変調するように構成とすることも可能である(図示せず)。
より具体的には、実施例7の送信装置107を拡張した態様として、所定の伝送路を介して受信装置に向けてデジタル信号を送信するために、該デジタル信号を所定の変調方式で変調しOFDM多重して送信する送信装置として提供することができる。この送信装置は、周波数軸信号点系列を時間軸OFDM信号に変換するOFDM変換部18、伝送路上の対象機器の特性に対応する特性を有する擬似伝送器(本実施例では、擬似増幅器)19、時間軸信号点系列を周波数軸OFDM信号に変換するOFDM逆変換部20、及び、補償演算部9を一組の信号点変換部5として、この信号点変換部を複数段(5−n)、直列配列する。
各信号点変換部においては、前段の信号変換部で得られた補正信号をOFDM変換部18及び補償演算部9の入力とし、該擬似伝送器を介して送信するデジタル信号の信号点からマッピング後の理想IQ信号点に対する対象機器の通過後の信号点のずれを誤差情報として求め、前記誤差情報に係数を乗算したもので前段の補正信号をさらに補正した信号点に変換する。
直列配列した複数の信号点変換部によって補正した信号点を、時間軸OFDM信号に変換するOFDM変換部15と、時間軸OFDM信号を直交変調する直交変調部14とを備え、所要C/Nの劣化を改善した放送波信号を送信するように構成とすることができる。
さらに、IQ信号補償演算部7と振幅位相信号補償演算部8の一方のみを含む信号点変換部5としても良い。すなわち、OFDM伝送方式において、実施例5の送信装置105におけるIQ信号補償演算部7を含む信号変換部5を直列配列することや、実施例6の送信装置106における振幅位相信号補償演算部8を含む信号点変換部5を直列配列することにより、送信装置を構成し、誤差補正精度を更に高めるように構成することも可能である。
上述の実施例については衛星デジタル放送、及びOFDM多重を行う地上デジタル放送に適用した場合を代表的な例として説明したが、同様に、本発明はそれ以外の伝送路にも適用が可能である。例えば、通信衛星経由及び/又は中継器経由で映像信号を撮影現場からスタジオまで伝送する素材伝送用には変調方式に16QAM変調や32QAM変調などが利用される。この場合、各実施例の送信装置において、マッピング部13を16QAMや32QAM変調に対応したものとし、擬似衛星中継器6に代えて、擬似伝送器の特性を当該通信衛星及び/又は中継器の特性に近似させて構成すればよい。
また、デジタル変調された信号を更に電気/光変換して光ファイバーで伝送し、光/電気変換してデジタル変調された信号を復元し、デジタル復調するような場合には、電気/光変換器、光/電気変換器の非線形特性が問題になる場合がある。このような場合、実施例1〜4の送信装置において、擬似伝送器(擬似衛星中継器6)を、IMUXフィルタ、TWTA、及びOMUXフィルタで構成する代わりに、電気/光変換器、光/電気変換器で構成し、その特性を実際に用いられる電気/光変換器、光/電気変換器の非線形特性とすることで、電気/光変換器、光/電気変換器の非線形特性による劣化を抑圧することができる。
また、本発明における送信装置は、地上の中継器を介して伝送するOFDM以外の伝送システムにも適用することもできる。
例えば、米国や韓国の地上デジタル放送では、8値又は16値の信号点を一次元上に等間隔配置して変調した後、スペクトルの半分をフィルタで除去して伝送する8値/16値VSB変調を採用したATSC方式が用いられており、最終的に電波を出力する電力増幅器の非線形特性が問題となる場合が考えられる。この場合には、実施例1〜3の送信装置において、擬似伝送器(擬似衛星中継器6)を、所定の帯域制限を行うVSBフィルタ、電力増幅器、VSB検波器で構成し、さらに直交変調部14の前に所定の帯域制限を行うVSBフィルタを配置すれば電力増幅器の非線形特性による劣化を抑圧したVSB変調器を構成することができる。なお、ATSC方式では8値又は16値の信号点を一次元上に等間隔配置した変調を基本とした8値/16値VSB変調が採用されているが、IQ平面上の信号点を原点を通る一本の直線上に一次元的に配置した変調方式であれば、それを基本としたVSB変調器も構成可能であり、例えば、信号点数を32、64、128といった2のべき乗に選びその信号点を等間隔又は不等間隔に一次元的に配置した変調方式とした構成も可能である。
具体的には、VSB変調に適用する場合の送信装置は、所定の伝送路を介して受信装置に向けてデジタル信号を送信するために、該デジタル信号を所定の変調方式でVSB変調して送信する送信装置として提供することができる。この送信装置は、上述の実施例1〜3の説明に従って、所定の帯域制限を行うVSBフィルタ部(図示せず)と、伝送路上の対象機器(例えば、実衛星2の中継器)の特性に対応する特性を有する擬似伝送器6と、VSB検波を行うVSB検波部(図示せず)と、擬似伝送器6を介して送信するデジタル信号の信号点からマッピング後の理想IQ信号点に対する前記対象機器の通過後の信号点のずれを補償する補償演算部と、誤差ベクトルで補正した信号点系列に所定の帯域制限を行うVSBフィルタ部(図示せず)と、該VSBフィルタ部の出力を直交変調する直交変調部14とを備え、伝送路上の非線形特性による劣化を抑圧するように構成することができる。
更に、このVSB変調に適用する場合の送信装置は、所定の帯域制限を行うVSBフィルタ部(図示せず)、伝送路上の対象機器(例えば、実衛星2の中継器)の特性に対応する特性を有する擬似伝送器6、VSB検波を行うVSB検波部(図示せず)、擬似伝送器6を介して送信するデジタル信号の信号点からマッピング後の理想IQ信号点に対する前記対象機器の通過後の信号点のずれを補償する補償演算部を一組の信号点変換部5とし、これを直列配列した複数の信号点変換部5−nと、この直列配列した複数の信号点変換器5−nによって、当該信号点のマッピング後の信号点を当該補償方法で補正した信号点系列に所定の帯域制限を行うVSBフィルタ部(図示せず)と、該VSBフィルタ部の出力を直交変調する直交変調部14とを備え、伝送路上の非線形特性による劣化を抑圧するように構成することができる。
(効果の検証)
本発明の効果を検証するために、実施例1に基づく効果をシミュレーションにより求めた結果を示す。実施例1のシミュレーションでは、変調方式16APSK(符号化率 7/9)で衛星中継器を介したときの受信信号を想定した。また、係数パラメータは、対応する理想IQ信号の信号点配置の情報をもとに決定した。具体的には、16APSKの信号点の内円のI信号の係数を0.83及びQ信号の係数を0.83とし、外円のI信号の係数を1.00及びQ信号の係数を1.00とした。シミュレーション結果では、入力バックオフ(TWTA入力における無変調時の飽和入力に対する変調波入力時の入力電力の比)は3.49dbに設定した。このときの所要C/N+OBOは、特許文献1の従来補償法のとき13.69dbであるのに対し、本発明の補償法のとき13.63dbとなり、0.06db改善した。
このように、本発明の送信装置によれば、所要C/Nの劣化を改善した放送波信号を送信することができる。
上述の実施例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変形及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、上述の実施例では、衛星中継器を例に説明したが、このような衛星中継器は、位相及び振幅の周波数特性及び非線形特性のうち1つ以上の既知の特性を有する中継器、電気機器、光学機器、又はこれらの組み合わせに適用することができるため、これらを総括して「対象機器」と称する。なお、伝送路は、送信側の信号変調後から受信側の信号復調までの信号経路を云う。また、上述の実施例では、衛星中継器の特性に近似した特性を有する擬似衛星中継器を説明したが、このような擬似衛星中継器は、伝送路上の対象機器の特性を近似した特性(即ち、伝送路上の対象機器の特性に対応する特性)を有する任意の機器で構成できるため、これらを総括して「擬似伝送器」と称する。また、「近似した特性」とは、「等価な特性」を含む。すなわち、本発明の本質は、中継器や伝送路で生じる歪を、送信装置において予め予測し、その歪成分を減じてから送信することによって伝送特性の改善を図るものであって、伝送特性の劣化要因となる中継器若しくは伝送路の構成要素はどのようなものであってもよい。とりわけ、本発明は、振幅位相変調の信号伝送に効果を発揮することは実施例で説明したとおりである。
従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。