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JP6690956B2 - 過変調pwmインバータ装置 - Google Patents
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Description

本発明は、過変調PWM(Pulse Width Moduration)制御を行う過変調PWMインバータ装置に関する。
従来、交流電動機をd軸及びq軸にてベクトル制御するために、インバータを用いた駆動手法が知られている。インバータは、当該インバータを駆動するための制御回路によりスイッチング制御される。
例えばPWM制御が行われる場合、インバータは、制御回路からPWM信号を入力し、PWM信号に基づいて、電源から供給された直流バス電圧ebusを任意の周波数及び振幅の3相交流電圧に変換し、3相交流電圧を交流電動機へ供給する。
制御回路は、電流制御により電流指令(d軸電流指令id*及びq軸電流指令iq*)を電圧指令(d軸電圧指令vd*及びq軸電圧指令vq*)に変換する。そして、制御回路は、電圧指令を座標変換してU相、V相及びW相の3相交流電圧指令(U相交流電圧指令Vu*、V相交流電圧指令Vv*及びW相交流電圧指令Vw*)を生成する。
制御回路は、3相交流電圧指令及び予め設定されたキャリア(搬送波)を比較することでPWM信号を生成し、PWM信号をインバータへ出力する。ここで、PWM制御には、例えば正弦波PWM制御、過変調PWM制御がある。
図9は、正弦波PWM制御を説明する図である。図9において、上側の図は、3相交流電圧指令のうちの1相の交流電圧指令及びキャリアの波形を示し、下側の図は、インバータから交流電動機へ供給される3相交流電圧のうちの1相の交流電圧であるインバータ出力電圧を示す。下側の図の点線は、交流電圧指令を示す。横軸は時間である。
正弦波PWM制御は、前述した制御回路により行われる一般的な制御であり、交流電圧指令の振幅がキャリアの振幅の最大値以下の範囲で動作する。
このような正弦波PWM制御を行うインバータ装置において、制御対象及びその制御状況等によっては、交流電圧指令がキャリアの振幅よりも大きくなってしまう、いわゆる過変調の状態となることがある。通常は、このような過変調の状態では交流電動機を制御することができない。
しかしながら、インバータを用いた交流電動機の制御の分野では、過変調の状態で交流電動機の制御を実現する過変調PWM制御も行われている。図10は、過変調PWM制御を説明する図である。図10において、図9と同様に、上側の図は、3相交流電圧指令のうちの1相の交流電圧指令及びキャリアの波形を示し、下側の図は、インバータから交流電動機へ供給される3相交流電圧のうちの1相の交流電圧であるインバータ出力電圧を示す。下側の図の点線は、交流電圧指令を示す。横軸は時間である。
過変調PWM制御は、交流電圧指令の振幅がキャリアの振幅の最大値を超える範囲を有して動作する。この過変調PWM制御は、正弦波PWM制御よりも高出力を実現するため、すなわち交流電動機へ供給する交流電圧の基本波成分(実効値)を高めるために用いられる。
ここで、インバータに入力される直流バス電圧ebusに対するインバータ出力電圧の基本波成分の比を「過変調率」という。過変調率は、図10の過変調PWM制御の方が図9の正弦波PWM制御よりも高いことがわかる。過変調PWM制御を用いることにより、正弦波PWM制御よりも、交流電動機へ供給する交流電圧の基本波成分を高めることができ、インバータの運転効率を向上させことができる。
このような過変調PWM制御の特性を利用したインバータ装置として、例えば、正弦波PWM制御と矩形波制御との間の移行を円滑に行う技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。このインバータ装置は、正弦波PWM制御と矩形波制御との間で切り替えを行う際に、過変調PWM制御を行う。矩形波制御は、交流電圧指令に対応した1周期の期間内で、ハイレベル期間およびローレベル期間の比を1:1の矩形波1パルス分とした交流電圧を交流電動機へ供給するものである。
特開2015−12662号公報
インバータ装置は、インバータの入力電圧である直流バス電圧ebusを、当該直流バス電圧ebusの指令である端子電圧指令v1*に一致させるように制御を行う。この端子電圧指令v1*は、v1*=√(vd*+vq*)の数式にて表される。
インバータを駆動させる制御回路は、電流制御にて電流指令を電圧指令に変換する電流制御器にて、PI制御(比例制御及び積分制御)を行う。具体的には、電流制御器は、d軸電流指令id*とd軸電流検出値idとの間の偏差が0となるように、PI制御にてd軸電圧指令vd*を生成する。また、電流制御器は、q軸電流指令iq*とq軸電流検出値iqとの間の偏差が0となるように、PI制御にてq軸電圧指令vq*を生成する。
このようなインバータ装置において、制御対象及びその制御状況等によっては、直流バス電圧ebusと端子電圧指令v1*との間の関係がv1*>ebusとなり、直流バス電圧ebusが飽和してしまうことがあり得る。また、v1*>ebusの状態では、インバータが過変調の状態になっているといえる。
この直流バス電圧ebusの飽和状態においては、直流バス電圧ebusを端子電圧指令v1*に一致させる(到達させる)ように制御することができない。つまり、この状態は、交流電動機を制御できない状態であって、過変調PWM制御が適切に行われていない状態である。
この直流バス電圧ebusの飽和状態は、電流制御器による積分制御がワインドアップの状態となっていることが一因である。ワインドアップとは、偏差があるときに、積分要素Iが飽和限界を超えて当該偏差に応じて加算されることをいい、電流制御器のPI制御による出力が、制御対象を含む制御系において、当該出力に対して課せられたリミットを超えたときに生じる現象である。当該出力がリミットを超えているときは、積分要素Iの値に比例して出力も増加するというフィードバック制御の基本機能が失われており、積分要素Iの値が巻き上げ(ワインドアップ)られてしまう状態になっている。
この状態では、電流制御器において、偏差が0となるようにd軸電圧指令vd*及びq軸電圧指令vq*を算出するPI制御が正常に行われていない。つまり、正常なd軸電圧指令vd*及びq軸電圧指令vq*が算出されないから、インバータは、交流電動機を適切に制御できる状態ではない。
このように、v1*>ebusとなり、直流バス電圧ebusが飽和すると共に、電流制御器による積分制御がワインドアップの状態となった場合には、過変調の状態においてPWM制御を正常に実現することができず、交流電動機を適切に制御することができないという問題があった。
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、PI制御にて電流指令から電圧指令を生成する際のワインドアップを防止し、過変調PWM制御を実現可能な過変調PWMインバータ装置を提供することにある。
前記課題を解決するために、請求項1の過変調PWMインバータ装置は、d軸電流指令からd軸電圧指令を生成し、q軸電流指令からq軸電圧指令を生成し、前記d軸電圧指令及び前記q軸電圧指令から3相交流電圧指令を生成し、前記3相交流電圧指令に基づいて過変調PWM制御を行い、3相交流電圧を交流電動機へ供給する過変調PWMインバータ装置であって、前記d軸電流指令とd軸電流検出値との間の偏差が0になるように、比例制御及び積分制御にて前記d軸電圧指令を生成すると共に、前記q軸電流指令とq軸電流検出値との間の偏差が0になるように、比例制御及び積分制御にて前記q軸電圧指令を生成する電流制御器と、前記電流制御器により生成された前記d軸電圧指令及び前記q軸電圧指令を、前記3相交流電圧指令に変換する座標変換器と、前記座標変換器により変換された前記3相交流電圧指令に基づいて、前記過変調制御にて直流バス電圧をスイッチングし前記3相交流電圧を生成するPWM比較器と、前記直流バス電圧に所定値を乗算した結果が当該直流バス電圧の指令である端子電圧指令よりも小さい場合に、前記電流制御器にて前記積分制御が停止し前記比例制御が行われるように、前記直流バス電圧の飽和に伴う前記積分制御のワインドアップを防止するための積分ゲインを0に設定するワインドアップ防止制御部と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項2の過変調PWMインバータ装置は、d軸電流指令からd軸電圧指令を生成し、q軸電流指令からq軸電圧指令を生成し、前記d軸電圧指令及び前記q軸電圧指令から3相交流電圧指令を生成し、前記3相交流電圧指令に基づいて過変調PWM制御を行い、3相交流電圧を交流電動機へ供給する過変調PWMインバータ装置であって、前記d軸電流指令とd軸電流検出値との間の偏差が0になるように、比例制御及び積分制御にて前記d軸電圧指令を生成すると共に、前記q軸電流指令とq軸電流検出値との間の偏差が0になるように、比例制御及び積分制御にて前記q軸電圧指令を生成する電流制御器と、前記電流制御器により生成された前記d軸電圧指令及び前記q軸電圧指令を、前記3相交流電圧指令に変換する座標変換器と、前記座標変換器により変換された前記3相交流電圧指令に基づいて、前記過変調PWM制御にて直流バス電圧をスイッチングし前記3相交流電圧を生成するPWM比較器と、前記直流バス電圧に所定値を乗算した結果が当該直流バス電圧の指令である端子電圧指令よりも小さい場合に、前記電流制御器における前記積分制御のワインドアップを防止するための積分ゲインを設定するワインドアップ防止制御部と、を備え、さらに、前記直流バス電圧に所定値を乗算した結果から前記端子電圧指令を減算して偏差を求め、前記偏差が0になるように補正値を算出し、前記補正値が0よりも小さい場合に、前記補正値を、前記過変調PWM制御を抑制するためのd軸電流補正として求める過変調抑制部と、前記過変調抑制部により求めた前記d軸電流補正に前記d軸電流指令を加算し、新たなd軸電流指令を求める加算器と、を備え、前記電流制御器が、前記加算器により求めた前記新たなd軸電流指令と前記d軸電流検出値との間の偏差が0になるように、前記比例制御及び前記積分制御にて前記d軸電圧指令を生成すると共に、前記q軸電流指令と前記q軸電流検出値との間の偏差が0になるように、前記比例制御及び前記積分制御にて前記q軸電圧指令を生成する、ことを特徴とする。
また、請求項3の過変調PWMインバータ装置は、請求項2に記載の過変調PWMインバータ装置において、さらに、前記座標変換器により変換された前記3相交流電圧指令を前記直流バス電圧で除算した結果に対し、予め設定された過変調率をγとし、上限値を+γ及び下限値を−γとして制限を加え、制限後の3相交流電圧指令を出力するリミッタを備え、前記PWM比較器が、前記リミッタにより出力された前記制限後の3相交流電圧指令に基づいて、前記過変調PWM制御にて前記直流バス電圧をスイッチングし前記3相交流電圧を生成する、ことを特徴とする。
また、請求項4の過変調PWMインバータ装置は、請求項1から3までのいずれか一項に記載の過変調PWMインバータ装置において、前記ワインドアップ防止制御部が、前記直流バス電圧に予め設定されたバス電圧利用率を乗算する乗算器と、前記乗算器による乗算結果から前記端子電圧指令を減算し、バス電圧偏差を求める減算器と、前記減算器により求めた前記バス電圧偏差に対し、0から所定のマイナスの値までの範囲で制限を加え、制限後のバス電圧偏差を出力するリミッタと、前記リミッタにより出力された前記制限後のバス電圧偏差がマイナスの場合、前記積分制御のワインドアップを防止するための前記積分ゲインを設定する演算器と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項5の過変調PWMインバータ装置は、請求項2または3に記載の過変調PWMインバータ装置において、前記過変調抑制部が、前記直流バス電圧に予め設定された過変調率を乗算する乗算器と、前記乗算器による乗算結果から前記端子電圧指令を減算し、バス電圧偏差を求める減算器と、前記減算器により求めた前記バス電圧偏差が0になるように前記補正値を算出する制御器と、前記制御器により算出された前記補正値に対し、0から所定のマイナスの値までの範囲で制限を加え、制限後の補正値を前記d軸電流補正として出力するリミッタと、を備えたことを特徴とする。
以上のように、本発明によれば、PI制御にて電流指令から電圧指令を生成する際のワインドアップを防止することができ、過変調PWM制御を実現することができる。
実施例1の過変調PWMインバータ装置の構成例を示すブロック図である。 実施例2の過変調PWMインバータ装置の構成例を示すブロック図である。 実施例3の過変調PWMインバータ装置の構成例を示すブロック図である。 ワインドアップ防止制御部の構成例を示すブロック図である。 過変調抑制部の構成例を示すブロック図である。 実施例2において、過変調PWM制御が抑制されることを説明する図である。 実施例3において、過変調PWM制御のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例3において、過変調なしの場合のシミュレーション結果を示すグラフである。 正弦波PWM制御を説明する図である。 過変調PWM制御を説明する図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、インバータの入力電圧である直流バス電圧ebusが飽和するときに、電流制御器の積分要素を小さくして当該電流制御器の出力を維持することで、過変調PWM制御を実現することを特徴とする。
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、インバータの入力電圧である直流バス電圧ebusが飽和するときに、電流制御器の積分要素を小さくして当該電流制御器の出力を維持することで、過変調PWM制御を実現する例である。
図1は、実施例1の過変調PWMインバータ装置の構成例を示すブロック図である。この過変調PWMインバータ装置1−1は、交流電動機2をd軸及びq軸にてベクトル制御する装置であり、図示しないインバータを備える。後述する図2及び図3に示す過変調PWMインバータ装置1−2,1−3についても同様である。
この過変調PWMインバータ装置1−1は、減算器10,11、ワインドアップ防止制御部12、電流制御器13,14、減算器15、加算器16、座標変換器17、積分器18、座標変換器19、除算器20〜22、PWM比較器23〜25及びキャリア発生器26を備えている。図示しないインバータは、PWM比較器23〜24に含まれるものとし、PWM比較器23〜24の出力がインバータの出力である。尚、図1に示す過変調PWMインバータ装置1−1には、本発明に直接関連する構成部のみが示されており、その他の構成部は省略してある。
減算器10は、d軸電流指令id*を入力すると共に、後述する座標変換器19からd軸電流検出値idを入力し、d軸電流指令id*からd軸電流検出値idを減算してd軸電流偏差を求める。そして、減算器10は、d軸電流偏差を電流制御器13に出力する。
減算器11は、q軸電流指令iq*を入力すると共に、後述する座標変換器19からq軸電流検出値iqを入力し、q軸電流指令iq*からq軸電流検出値iqを減算してq軸電流偏差を求める。そして、減算器11は、q軸電流偏差を電流制御器14に出力する。
ワインドアップ防止制御部12は、インバータの入力電圧である直流バス電圧ebusを入力すると共に、端子電圧指令v1*を入力する。そして、ワインドアップ防止制御部12は、直流バス電圧ebus及び端子電圧指令v1*に基づいて、電流制御器13,14における積分制御のワインドアップを防止するためのACR可変積分ゲインKid,Kiqを求める。
具体的には、ワインドアップ防止制御部12は、直流バス電圧ebusにバス電圧利用率ηを乗算した結果が端子電圧指令v1*以上の場合に(ebus×η≧v1*)、基準値であるACR積分ゲイン設定Kid*,Kiq*をそれぞれACR可変積分ゲインKid,Kiqとする。また、ワインドアップ防止制御部12は、直流バス電圧ebusにバス電圧利用率ηを乗算した結果が端子電圧指令v1*よりも小さい場合に(ebus×η<v1*)、基準値であるACR積分ゲイン設定Kid*,Kiq*よりも小さくなるように、ACR可変積分ゲインKid,Kiqをそれぞれ算出する。そして、ワインドアップ防止制御部12は、ACR可変積分ゲインKidを電流制御器13に出力し、ACR可変積分ゲインKiqを電流制御器14に出力する。ワインドアップ防止制御部12の詳細については後述する。
電流制御器13は、減算器10からd軸電流偏差を入力すると共に、ワインドアップ防止制御部12からACR可変積分ゲインKidを入力し、d軸電流偏差が0になるように電流制御し、d軸電圧指令を算出する。ここで、電流制御器13は、予め設定された比例ゲインKpd、及びワインドアップ防止制御部12から入力したACR可変積分ゲインKidを用いてPI制御を行い、d軸電圧指令を算出する。そして、電流制御器13は、d軸電圧指令を減算器15に出力する。
電流制御器14は、減算器11からq軸電流偏差を入力すると共に、ワインドアップ防止制御部12からACR可変積分ゲインKiqを入力し、q軸電流偏差が0になるように電流制御し、q軸電圧指令を算出する。ここで、電流制御器14は、予め設定された比例ゲインKpq、及びワインドアップ防止制御部12から入力したACR可変積分ゲインKiqを用いてPI制御を行い、q軸電圧指令を算出する。そして、電流制御器14は、q軸電圧指令を加算器16に出力する。
減算器15は、電流制御器13からd軸電圧指令を入力すると共に、d軸電圧補正指令を入力する。d軸電圧補正指令は、ω1×Xq^×iq*の指令であり、図示しない構成部により算出される。ω1は電気角速度、Xq^はq軸リアクタンス同定値である。そして、減算器15は、d軸電圧指令からd軸電圧補正指令を減算してd軸電圧指令vd*を求め、d軸電圧指令vd*を座標変換器17に出力する。
加算器16は、電流制御器14からq軸電圧指令を入力すると共に、第1のq軸電圧補正指令及び第2のq軸電圧補正指令を入力する。第1のq軸電圧補正指令は、ω1×Xd^×id*の指令であり、第2のq軸電圧補正指令は、ω1×ec^の指令であり、これらの指令は、図示しない構成部により算出される。Xd^はd軸リアクタンス同定値であり、ec^は逆起電圧同定値である。そして、加算器16は、q軸電圧指令に第1のq軸電圧補正指令を加算し、その結果に第2のq軸電圧補正指令を加算し、q軸電圧指令vq*を求める。加算器16は、q軸電圧指令vq*を座標変換器17に出力する。
座標変換器17は、減算器15からd軸電圧指令vd*を入力すると共に、加算器16からq軸電圧指令vq*を入力し、さらに、後述する積分器18から電気角θeを入力する。そして、座標変換器17は、電気角θeに基づいて、回転座標系のd軸電圧指令vd*及びq軸電圧指令vq*をU相交流電圧指令Vu*、V相交流電圧指令Vv*及びW相交流電圧指令Vw*に変換する。座標変換器17は、U相交流電圧指令Vu*を除算器20に出力し、V相交流電圧指令Vv*を除算器21に出力し、W相交流電圧指令Vw*を除算器22に出力する。
積分器18は、電気角速度ω1を入力し、電気角速度ω1を積分することで電気角θeを求める。電気角速度ω1は、交流電動機2の回転に応じた回転子角速度に基づいて、図示しない構成部により算出される。そして、積分器18は、電気角θeを座標変換器17,19に出力する。
座標変換器19は、後述するPWM比較器23,24,25と交流電動機2との間に設けられた電流検出器により検出されたU相交流電流検出値iu、V相交流電流検出値iv及びW相交流電流検出値iwを入力すると共に、積分器18から電気角θeを入力する。そして、座標変換器19は、電気角θeに基づいて、U相交流電流検出値iu、V相交流電流検出値iv及びW相交流電流検出値iwを回転座標系のd軸電流検出値id及びq軸電流検出値iqに変換する。座標変換器19は、d軸電流検出値idを減算器10に出力すると共に、q軸電流検出値iqを減算器11に出力する。
除算器20は、座標変換器17からU相交流電圧指令Vu*を入力し、U相交流電圧指令Vu*を直流バス電圧ebusで除算し、除算結果をU相交流電圧指令Vu*の除算結果としてPWM比較器23に出力する。除算器21,22は、座標変換器17からV相交流電圧指令Vv*及びW相交流電圧指令Vw*をそれぞれ入力し、除算器20と同様の処理を行う。そして、除算器21,22は、それぞれの除算結果をV相交流電圧指令Vv*の除算結果及びW相交流電圧指令Vw*の除算結果として、PWM比較器24,25にそれぞれ出力する。直流バス電圧ebusは、図示しない検出器により検出される。
PWM比較器23は、除算器20からU相交流電圧指令Vu*の除算結果を入力すると共に、後述するキャリア発生器26からキャリアを入力し、U相交流電圧指令Vu*の除算結果の振幅とキャリアの振幅とを比較し、比較結果に応じてPWM信号を生成する。そして、PWM比較器23は、PWM信号に基づいて、インバータのスイッチング素子のゲートをオンオフし、インバータに入力される直流バス電圧ebusをスイッチングして交流電圧に変換し、交流電圧を交流電動機2へ供給する。
PWM比較器24,25は、除算器21,22からV相交流電圧指令Vv*の除算結果及びW相交流電圧指令Vw*の除算結果をそれぞれ入力すると共に、後述するキャリア発生器26からキャリアを入力し、PWM比較器23と同様の処理を行う。そして、PWM比較器24,25は、交流電圧を交流電動機2へそれぞれ供給する。
図9及び図10に示したとおり、PWM比較器23は、U相交流電圧指令Vu*の除算結果である交流電圧指令とキャリアとを比較し、インバータ出力電圧である交流電圧を生成する。具体的には、PWM比較器23は、U相交流電圧指令Vu*の除算結果の振幅がキャリアの振幅以下の場合、直流バス電圧ebusを2で除算した結果であるebus/2のインバータ出力電圧を出力する。一方、PWM比較器23は、U相交流電圧指令Vu*の除算結果の振幅がキャリアの振幅よりも大きい場合、直流バス電圧ebusを−2で除算した結果であるebus/−2のインバータ出力電圧を出力する。後者の場合は過変調の状態になっている。
つまり、PWM比較器23は、U相交流電圧指令Vu*の除算結果の振幅の最大値がキャリアの振幅の最大値以下の場合において、図9に示した正弦波PWM制御を行う。また、PWM比較器23は、U相交流電圧指令Vu*の除算結果の振幅の最大値がキャリアの振幅の最大値よりも大きい範囲がある場合において、図10に示した過変調PWM制御を行う。PWM比較器24,25についても同様である。
(ワインドアップ防止制御部12)
次に、図1に示したワインドアップ防止制御部12について詳細に説明する。前述のとおり、ワインドアップ防止制御部12は、直流バス電圧ebusにバス電圧利用率ηを乗算した結果が端子電圧指令v1*以上の場合に(ebus×η≧v1*)、基準値であるACR積分ゲイン設定Kid*,Kiq*をそれぞれACR可変積分ゲインKid,Kiqとする。また、ワインドアップ防止制御部12は、直流バス電圧ebusにバス電圧利用率ηを乗算した結果が端子電圧指令v1*よりも小さい場合に(ebus×η<v1*)、基準値であるACR積分ゲイン設定Kid*,Kiq*よりも小さくなるように、ACR可変積分ゲインKid,Kiqをそれぞれ算出する。
図4は、ワインドアップ防止制御部12の構成例を示すブロック図である。このワインドアップ防止制御部12は、乗算器40、減算器41、リミッタ42及び演算器43,44を備えている。乗算器40は、直流バス電圧ebusを入力し、直流バス電圧ebusに予め設定されたバス電圧利用率ηを乗算し、乗算結果を減算器41に出力する。
減算器41は、乗算器40から乗算結果(バス電圧利用率ηが乗算された直流バス電圧ebus)を入力すると共に、端子電圧指令v1*を入力し、バス電圧利用率ηが乗算された直流バス電圧ebusから端子電圧指令v1*を減算し、バス電圧偏差を求める。そして、減算器41は、バス電圧偏差をリミッタ42に出力する。
リミッタ42は、減算器41からバス電圧偏差を入力し、バス電圧偏差に対して0から−1までの範囲で制限を加え、リミッタ後(制限後)のバス電圧偏差εを演算器43,44に出力する。具体的には、リミッタ42は、入力したバス電圧偏差が0以上である場合、リミッタ後のバス電圧偏差ε=0を出力する。入力したバス電圧偏差が0以上である場合とは、バス電圧利用率ηが乗算された直流バス電圧ebusが端子電圧指令v1*以上である(ebus×η≧v1*)ことを示し、インバータは過変調の状態ではないといえる。
また、リミッタ42は、入力したバス電圧偏差が0よりも小さく、かつ−1よりも大きい場合、入力したバス電圧偏差をリミッタ後のバス電圧偏差εとしてそのまま出力する。また、リミッタ42は、入力したバス電圧偏差が−1以下の場合、リミッタ後のバス電圧偏差ε=−1を出力する。ここで、入力したバス電圧偏差が0よりも小さい場合とは、バス電圧利用率ηが乗算された直流バス電圧ebusが端子電圧指令v1*よりも小さい(ebus×η<v1*)ことを示し、インバータは過変調の状態であるといえる。
演算器43は、リミッタ42からリミッタ後のバス電圧偏差εを入力し、ACR積分ゲイン設定Kid*及びパラメータP0を用いて、Kid*/(1+P0×ε)の演算を行い、演算結果をACR可変積分ゲインKidとして出力する。ACR積分ゲイン設定Kid*は、電流制御器13にて使用する積分ゲインの基準値であり、予め設定される。パラメータP0も予め設定される。
演算器44は、リミッタ42からリミッタ後のバス電圧偏差εを入力し、ACR積分ゲイン設定Kiq*及びパラメータP1を用いて、Kiq*/(1+P1×ε)の演算を行い、演算結果をACR可変積分ゲインKiqとして出力する。ACR積分ゲイン設定Kiq*は、電流制御器14にて使用する積分ゲインの基準値であり、予め設定される。パラメータP1も予め設定される。
ここで、制御対象及びその制御状況等によっては、インバータの入力電圧である直流バス電圧ebusと端子電圧指令v1*との間の関係がv1*>ebusとなり、直流バス電圧ebusが飽和してしまうことがある。直流バス電圧ebusが飽和するときは、この電流制御器13,14による積分制御がワインドアップの状態となる。
このような状態においては、減算器41により算出されるバス電圧偏差は、0よりも小さく、リミッタ42により出力されるリミッタ後のバス電圧偏差εも0よりも小さい。したがって、過変調の状態では、演算器43,44により算出されるACR可変積分ゲインKid,Kiqは、基準値であるACR積分ゲイン設定Kid*,Kiq*よりもそれぞれ小さい値となり、0に近くなる(実質的に0となる)。
このように、ワインドアップ防止制御部12は、過変調でない状態において、基準値であるACR積分ゲイン設定Kid*,Kiq*をそれぞれACR可変積分ゲインKid,Kiqとして、電流制御器13,14に出力する。これにより、電流制御器13,14にて、基準値であるACR積分ゲイン設定Kid*,Kiq*を用いたPI制御が行われる。
一方、ワインドアップ防止制御部12は、過変調の状態において、ACR可変積分ゲインKid,Kiq=0を電流制御器13,14に出力する。これにより、電流制御器13,14にて、ACR可変積分ゲインKid,Kiq=0のP制御が行われるから、積分機能を停止することができ、比例機能にて制御が行われる。この結果、電流制御器13,14の出力を維持することができる。つまり、過変調の状態において、電流制御器13,14による積分制御がワインドアップの状態となることを防止することができる。
以上のように、実施例1の過変調PWMインバータ装置1−1によれば、ワインドアップ防止制御部12は、直流バス電圧ebusにバス電圧利用率ηを乗算した結果が端子電圧指令v1*よりも小さい場合に(ebus×η<v1*)、ACR可変積分ゲインKid,Kiq=0を算出する。そして、電流制御器13,14は、積分機能を停止し、比例機能によりd軸電圧指令及びq軸電圧指令を算出する。
これにより、直流バス電圧ebusが飽和状態にあり、インバータが過変調の状態にある場合、ACR可変積分ゲインKid,Kiq=0とし、電流制御器13,14の積分機能を停止することで、d軸電圧指令及びq軸電圧指令を維持することができる。
したがって、電流制御器13,14による積分制御がワインドアップの状態となることを防止し、電流制御器13,14により出力されるd軸電圧指令及びq軸電圧指令を抑えることができ、端子電圧指令v1*を小さくすることができる。そして、過変調の状態において、直流バス電圧ebusを端子電圧指令v1*に抑制する制御を行うことができ、交流電動機2を適切に制御可能な状態とし、図10に示した過変調PWM制御を実現することができる。
つまり、過変調PWM制御にて交流電動機2を制御することができ、全体として交流電動機2へ供給する交流電圧の基本波成分を高め、インバータの運転効率を向上させることができる。特に、交流電動機2の高速回転時に過変調PWM制御を行うことで、スイッチングロスを低減することができる。
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2は、実施例1に加え、過変調PWM制御を抑制する例である。つまり、実施例2は、直流バス電圧ebusが飽和するときに、電流制御器の積分要素を小さくして当該電流制御器の出力を維持することで、過変調PWM制御を実現することに加え、この過変調PWM制御を抑制する。
図2は、実施例2の過変調PWMインバータ装置の構成例を示すブロック図である。この過変調PWMインバータ装置1−2は、図1に示した過変調PWMインバータ装置1−1の構成に加え、さらに、過変調抑制部30及び加算器31を備えている。
図1に示した実施例1の過変調PWMインバータ装置1−1と、実施例2の過変調PWMインバータ装置1−2とを比較すると、両過変調PWMインバータ装置1−1,1−2は、減算器10,11、・・・及びキャリア発生器26を備えている点で同一である。一方、過変調PWMインバータ装置1−2は、さらに、過変調抑制部30及び加算器31を備えている点で、これらを備えていない過変調PWMインバータ装置1−1と相違する。図2において、図1と共通する部分には図1と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
加算器31は、d軸電流指令id*を入力すると共に、後述する過変調抑制部30からd軸電流補正Δidを入力し、d軸電流指令id*にd軸電流補正Δidを加算して新たなd軸電流指令を求める。そして、加算器31は、新たなd軸電流指令を減算器10に出力する。
減算器10は、加算器31から新たなd軸電流指令を入力すると共に、座標変換器19からd軸電流検出値idを入力し、新たなd軸電流指令からd軸電流検出値idを減算してd軸電流偏差を求め、d軸電流偏差を電流制御器13に出力する。
過変調抑制部30は、インバータの入力電圧である直流バス電圧ebusを入力すると共に、端子電圧指令v1*を入力する。そして、過変調抑制部30は、直流バス電圧ebus及び端子電圧指令v1*に基づいて、過変調PWM制御を抑制する(過変調を抑制する)ためのd軸電流補正Δidを求める。
具体的には、過変調抑制部30は、PI制御により、直流バス電圧ebusに過変調率γ(≧1)を乗算した結果と端子電圧指令v1*との間の過変調バス電圧偏差が0になるようにd軸電流補正Δidを算出する。そして、過変調抑制部30は、d軸電流補正Δidを加算器31に出力する。
(過変調抑制部30)
次に、図2に示した過変調抑制部30について詳細に説明する。図5は、過変調抑制部30の構成例を示すブロック図である。この過変調抑制部30は、乗算器50、減算器51、制御器52及びリミッタ53を備えている。乗算器50は、直流バス電圧ebusを入力し、直流バス電圧ebusに予め設定された過変調率γを乗算し、乗算結果を減算器51に出力する。
減算器51は、乗算器50から乗算結果(過変調率γが乗算された直流バス電圧ebus)を入力すると共に、端子電圧指令v1*を入力し、過変調率γが乗算された直流バス電圧ebusから端子電圧指令v1*を減算し、過変調バス電圧偏差を求める。そして、減算器51は、過変調バス電圧偏差を制御器52に出力する。
制御器52は、減算器51から過変調バス電圧偏差を入力し、PI制御により過変調バス電圧偏差が0になるように、d軸電流指令id*の補正値であるd軸電流補正を算出する。そして、制御器52は、d軸電流補正をリミッタ53に出力する。
リミッタ53は、制御器52からd軸電流補正を入力し、d軸電流補正に対して0から−1.5までの範囲で制限を加え、リミッタ後(制限後)のd軸電流補正Δidを出力する。つまり、リミッタ53は、d軸電流補正が0よりも小さい場合に、d軸電流補正を、過変調PWM制御を抑制するためのリミッタ後のd軸電流補正Δidとして出力する。
具体的には、リミッタ53は、入力したd軸電流補正が0以上である場合、リミッタ後のd軸電流補正Δid=0を出力する。この場合、d軸電流指令id*は補正されないから、過変調PWM制御は抑制されない。
リミッタ53は、入力したd軸電流補正が0よりも小さく、かつ−1.5よりも大きい場合、入力したd軸電流補正をリミッタ後のd軸電流補正Δidとしてそのまま出力する。また、リミッタ53は、入力したd軸電流補正が−1.5以下の場合、リミッタ後のd軸電流補正Δid=−1.5を出力する。この場合、d軸電流指令id*は補正され、後述するように、過変調PWM制御は抑制される。
このように、過変調抑制部30により算出されたd軸電流補正Δid=0〜−1.5は、加算器31に出力され、加算器31により、d軸電流指令id*にd軸電流補正Δidが加算され、d軸電流指令id*以下の新たなd軸電流指令が求められる。そして、電流制御器13が入力するd軸電流偏差が小さくなり、電流制御器13が出力するd軸電圧指令も小さくなる。
これにより、座標変換器17が出力するU相交流電圧指令Vu*、V相交流電圧指令Vv*及びW相交流電圧指令Vw*の振幅を小さくすることができる。そして、PWM比較器23,24,25が除算器20,21,22から入力するU相交流電圧指令Vu*の除算結果、V相交流電圧指令Vv*の除算結果及びW相交流電圧指令Vw*の除算結果の振幅も小さくなる。この結果、過変調PWM制御が抑制される。
図6は、実施例2において、過変調PWM制御が抑制されることを説明する図である。図6において、上側の図は、過変調抑制部30が機能していない場合の交流電圧指令及びインバータ出力電圧の波形を示し、下側の図は、過変調抑制部30が機能している場合の交流電圧指令及びインバータ出力電圧の波形を示す。横軸は時間である。交流電圧指令は、座標変換器17が出力するU相交流電圧指令Vu*、V相交流電圧指令Vv*及びW相交流電圧指令Vw*に対応する。過変調抑制部30が機能していない場合とは、過変調抑制部30により出力されるd軸電流補正Δidが0であることを示す。
上側の図を参照して、過変調抑制部30が機能していない状態から機能している状態へ移行すると、前述のとおり、交流電圧指令の振幅は小さくなる(矢印Aを参照)。そうすると、下の図を参照して、過変調抑制部30が機能している状態では、交流電圧指令の振幅が小さくなるから、インバータのスイッチング回数は、過変調抑制部30が機能していない状態に比べ、多くなる。
したがって、上側の図に示す過変調抑制部30が機能していない場合の過変調率をγ’とし、下側の図に示す過変調抑制部30が機能している場合の過変調率をγとすると、γ<γ’となる。この過変調率γが、図5に示した乗算器50において予め設定されたパラメータに相当する。つまり、過変調抑制部30により、インバータのスイッチング回数を増やし、過変調率を下げることができ、結果として、過変調PWM制御を抑制することができる。
以上のように、実施例2の過変調PWMインバータ装置1−2によれば、実施例1の過変調PWMインバータ装置1−1の構成に加え、過変調抑制部30及び加算器31を備えるようにした。これにより、実施例1と同様に、電流制御器13,14による積分制御がワインドアップの状態となることを防止することができ、過変調PWM制御を実現することができる。
また、実施例2の過変調PWMインバータ装置1−2によれば、過変調抑制部30は、PI制御により、直流バス電圧ebusに過変調率γ(≧1)を乗算した結果と端子電圧指令v1*との間の過変調バス電圧偏差が0になるように、0から−1.5までの範囲のd軸電流補正Δidを算出する。そして、加算器31は、d軸電流指令id*からd軸電流補正Δidを減算し、d軸電流指令id*以下の新たなd軸電流指令を求め、電流制御器13は、新たなd軸電流指令によって、より小さいd軸電流偏差を入力して電流制御する。
これにより、電流制御器13が出力するd軸電圧指令が小さくなり、U相交流電圧指令Vu*等の振幅も小さくなり、PWM比較器23,24,25が入力するU相交流電圧指令Vu*の除算結果等の振幅も小さくなる。
したがって、実施例1よりもインバータのスイッチング回数が増えるから、過変調率を下げることができ、予め設定された過変調率γに抑制した過変調PWM制御を実現することができる。つまり、過変調PWM制御にて交流電動機2を制御することができ、全体として交流電動機2へ供給する交流電圧の基本波成分を、予め設定された過変調率γに対応するように制御することができる。そして、インバータを所望の効率にて運転させることが可能となる。
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。実施例3は、実施例2に加え、PWM交流電圧指令(交流電圧指令Vu*の除算結果、交流電圧指令Vv*の除算結果、交流電圧指令Vv*の除算結果)を過変調率γ以内に制限する例である。つまり、実施例3は、直流バス電圧ebusが飽和するときに、電流制御器の積分要素を小さくして当該電流制御器の出力を維持することで、過変調PWM制御を実現し、当該過変調PWM制御を抑制する。そして、実施例3では、さらに、PWM比較器23,24,25が入力するPWM交流電圧指令を過変調率γ以内に制限する。
図3は、実施例3の過変調PWMインバータ装置の構成例を示すブロック図である。この過変調PWMインバータ装置1−3は、図2に示した過変調PWMインバータ装置1−2の構成に加え、さらに、リミッタ32,33,34を備えている。
図2に示した実施例2の過変調PWMインバータ装置1−2と、実施例3の過変調PWMインバータ装置1−3とを比較すると、両過変調PWMインバータ装置1−2,1−3は、減算器10,11、・・・及び加算器31を備えている点で同一である。一方、過変調PWMインバータ装置1−3は、さらに、リミッタ32,33,34を備えている点で、これらを備えていない過変調PWMインバータ装置1−2と相違する。図3において、図2と共通する部分には図2と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
リミッタ32は、除算器20からU相交流電圧指令Vu*の除算結果を入力し、U相交流電圧指令Vu*の除算結果に対して+γ(上限値)から−γ(下限値)までの範囲で制限を加え、リミッタ後(制限後)のU相交流電圧指令Vu*の除算結果をPWM比較器23に出力する。γは過変調率である。
具体的には、リミッタ32は、入力したU相交流電圧指令Vu*の除算結果がγ以上である場合、U相交流電圧指令Vu*の除算結果=+γを出力する。また、リミッタ32は、入力したU相交流電圧指令Vu*の除算結果が+γよりも小さく、かつ−γよりも大きい場合、入力したU相交流電圧指令Vu*の除算結果をリミッタ後のU相交流電圧指令Vu*の除算結果としてそのまま出力する。また、リミッタ32は、入力したU相交流電圧指令Vu*の除算結果が−γ以下の場合、リミッタ後のU相交流電圧指令Vu*の除算結果=−γを出力する。
リミッタ33は、除算器21からV相交流電圧指令Vv*の除算結果を入力し、リミッタ32と同様の処理を行い、リミッタ後のV相交流電圧指令Vv*の除算結果をPWM比較器24に出力する。同様に、リミッタ34は、除算器22からW相交流電圧指令Vw*の除算結果を入力し、リミッタ32と同様の処理を行い、リミッタ後のW相交流電圧指令Vw*の除算結果をPWM比較器25に出力する。
以上のように、実施例3の過変調PWMインバータ装置1−3によれば、実施例2の過変調PWMインバータ装置1−2の構成に加え、リミッタ32,33,34を備えるようにした。これにより、実施例2と同様に、電流制御器13,14による積分制御がワインドアップの状態となることを防止して過変調PWM制御を実現することができ、また、過変調PWM制御を抑制することができる。
また、実施例3の過変調PWMインバータ装置1−3によれば、リミッタ32,33,34は、U相交流電圧指令Vu*等の除算結果に対して+γから−γまでの範囲で制限を加え、リミッタ後のU相交流電圧指令Vu*等の除算結果をPWM比較器23,24,25に出力する。そして、PWM比較器23,24,25は、+γから−γまでの範囲で制限を加えたリミッタ後のU相交流電圧指令Vu*等を入力し、キャリアと比較して3相交流のインバータ出力電圧を生成する。
これにより、PWM比較器23,24,25が入力するリミッタ後のU相交流電圧指令Vu*等の除算結果は、リミッタ32,33,34の制限を受けていない場合に比べ、+γから−γまでの範囲となるように振幅が小さくなるから、過変調率γ以内に制限された指令となる。
〔シミュレーション結果〕
次に、実施例3の過変調PWMインバータ装置1−3によるシミュレーション結果について説明する。図7は、実施例3において、過変調率γ=1.1547の過変調PWM制御のシミュレーション結果を示すグラフであり、図8は、実施例3において、過変調なしの場合のシミュレーション結果を示すグラフである。これらのシミュレーション結果は、実機を用いて得られたものである。
図7及び図8において、グラフの上から、電気角速度ω1、d軸電流指令(id*+Δid)、d軸電流検出値id、q軸電流指令iq*、q軸電流検出値iq、直流バス電圧ebus、端子電圧指令v1*の特性を示しており、横軸は時間である。d軸電流指令(id*+Δid)は、d軸電流指令id*にd軸電流補正Δidを加算した指令である。
図7を参照して、電気角速度ω1が高速へ移行した場合、すなわち、交流電動機2が低速回転から高速回転へ移行した場合の特性に着目する。交流電動機2が高速回転しているときに、d軸電流指令(id*+Δid)に対してd軸電流検出値idがほぼ追従し、q軸電流指令iq*に対してq軸電流検出値iqもほぼ追従していることがわかる。また、直流バス電圧ebus及び端子電圧指令v1*の関係において、これらの間の偏差が大きくなることはなく、端子電圧指令v1*が制御されていることがわかる。
これは、ワインドアップ防止制御部12のワインドアップ防止機能により、電流制御器13,14の電流制御がPI制御からP制御へ移行し、過変調PWM制御にて交流電動機2が適切に制御されていることを示している。
図8を参照して、図7と同様に、電気角速度ω1が高速へ移行した場合、すなわち、交流電動機2が低速回転から高速回転へ移行した場合の特性に着目する。交流電動機2が高速回転しているときに、d軸電流指令(id*+Δid)及びq軸電流指令iq*に対し、それぞれd軸電流検出値id及びq軸電流検出値iqが追従していることがわかる。また、直流バス電圧ebus及び端子電圧指令v1*の関係において、端子電圧指令v1*が制御されていることがわかる。
これは、電流制御器13,14はPI制御で動作しており、正弦波PWM制御にて交流電動機2が適切に制御されていることを示している。
1 過変調PWMインバータ装置
2 交流電動機
10,11,15,41,51 減算器
12 ワインドアップ防止制御部
13,14 電流制御器
16,31 加算器
17,19 座標変換器
18 積分器
20,21,22 除算器
23,24,25 PWM比較器
26 キャリア発生器
30 過変調抑制部
32,33,34,42,53 リミッタ
40,50 乗算器
43 演算器
52 制御器
id* d軸電流指令
iq* q軸電流指令
vd* d軸電圧指令
vq* q軸電圧指令
Vu* U相交流電圧指令
Vv* V相交流電圧指令
Vw* W相交流電圧指令
iu U相交流電流検出値
iv V相交流電流検出値
iw W相交流電流検出値
id d軸電流検出値
iq q軸電流検出値
ω1 電気角速度
θe 電気角
bus 直流バス電圧
ec^ 逆起電圧同定値
v1* 端子電圧指令
Kid,Kiq ACR可変積分ゲイン
Kid*,Kiq* ACR積分ゲイン設定
Δid d軸電流補正
η バス電圧利用率
γ 過変調率
ε リミッタ後のバス電圧偏差
Xd^ d軸リアクタンス同定値
Xq^ q軸リアクタンス同定値

Claims (5)

  1. d軸電流指令からd軸電圧指令を生成し、q軸電流指令からq軸電圧指令を生成し、前記d軸電圧指令及び前記q軸電圧指令から3相交流電圧指令を生成し、前記3相交流電圧指令に基づいて過変調PWM制御を行い、3相交流電圧を交流電動機へ供給する過変調PWMインバータ装置であって、
    前記d軸電流指令とd軸電流検出値との間の偏差が0になるように、比例制御及び積分制御にて前記d軸電圧指令を生成すると共に、前記q軸電流指令とq軸電流検出値との間の偏差が0になるように、比例制御及び積分制御にて前記q軸電圧指令を生成する電流制御器と、
    前記電流制御器により生成された前記d軸電圧指令及び前記q軸電圧指令を、前記3相交流電圧指令に変換する座標変換器と、
    前記座標変換器により変換された前記3相交流電圧指令に基づいて、前記過変調PWM制御にて直流バス電圧をスイッチングし前記3相交流電圧を生成するPWM比較器と、
    前記直流バス電圧に所定値を乗算した結果が当該直流バス電圧の指令である端子電圧指令よりも小さい場合に、前記電流制御器にて前記積分制御が停止し前記比例制御が行われるように、前記直流バス電圧の飽和に伴う前記積分制御のワインドアップを防止するための積分ゲインを0に設定するワインドアップ防止制御部と、
    を備えたことを特徴とする過変調PWMインバータ装置。
  2. d軸電流指令からd軸電圧指令を生成し、q軸電流指令からq軸電圧指令を生成し、前記d軸電圧指令及び前記q軸電圧指令から3相交流電圧指令を生成し、前記3相交流電圧指令に基づいて過変調PWM制御を行い、3相交流電圧を交流電動機へ供給する過変調PWMインバータ装置であって、
    前記d軸電流指令とd軸電流検出値との間の偏差が0になるように、比例制御及び積分制御にて前記d軸電圧指令を生成すると共に、前記q軸電流指令とq軸電流検出値との間の偏差が0になるように、比例制御及び積分制御にて前記q軸電圧指令を生成する電流制御器と、
    前記電流制御器により生成された前記d軸電圧指令及び前記q軸電圧指令を、前記3相交流電圧指令に変換する座標変換器と、
    前記座標変換器により変換された前記3相交流電圧指令に基づいて、前記過変調PWM制御にて直流バス電圧をスイッチングし前記3相交流電圧を生成するPWM比較器と、
    前記直流バス電圧に所定値を乗算した結果が当該直流バス電圧の指令である端子電圧指令よりも小さい場合に、前記電流制御器における前記積分制御のワインドアップを防止するための積分ゲインを設定するワインドアップ防止制御部と、を備え、
    さらに、前記直流バス電圧に所定値を乗算した結果から前記端子電圧指令を減算して偏差を求め、前記偏差が0になるように補正値を算出し、前記補正値が0よりも小さい場合に、前記補正値を、前記過変調PWM制御を抑制するためのd軸電流補正として求める過変調抑制部と、
    前記過変調抑制部により求めた前記d軸電流補正に前記d軸電流指令を加算し、新たなd軸電流指令を求める加算器と、を備え、
    前記電流制御器は、
    前記加算器により求めた前記新たなd軸電流指令と前記d軸電流検出値との間の偏差が0になるように、前記比例制御及び前記積分制御にて前記d軸電圧指令を生成すると共に、前記q軸電流指令と前記q軸電流検出値との間の偏差が0になるように、前記比例制御及び前記積分制御にて前記q軸電圧指令を生成する、ことを特徴とする過変調PWMインバータ装置。
  3. 請求項2に記載の過変調PWMインバータ装置において、
    さらに、前記座標変換器により変換された前記3相交流電圧指令を前記直流バス電圧で除算した結果に対し、予め設定された過変調率をγとし、上限値を+γ及び下限値を−γとして制限を加え、制限後の3相交流電圧指令を出力するリミッタを備え、
    前記PWM比較器は、
    前記リミッタにより出力された前記制限後の3相交流電圧指令に基づいて、前記過変調PWM制御にて前記直流バス電圧をスイッチングし前記3相交流電圧を生成する、ことを特徴とする過変調PWMインバータ装置。
  4. 請求項1から3までのいずれか一項に記載の過変調PWMインバータ装置において、
    前記ワインドアップ防止制御部は、
    前記直流バス電圧に予め設定されたバス電圧利用率を乗算する乗算器と、
    前記乗算器による乗算結果から前記端子電圧指令を減算し、バス電圧偏差を求める減算器と、
    前記減算器により求めた前記バス電圧偏差に対し、0から所定のマイナスの値までの範囲で制限を加え、制限後のバス電圧偏差を出力するリミッタと、
    前記リミッタにより出力された前記制限後のバス電圧偏差がマイナスの場合、前記積分制御のワインドアップを防止するための前記積分ゲインを設定する演算器と、
    を備えたことを特徴とする過変調PWMインバータ装置。
  5. 請求項2または3に記載の過変調PWMインバータ装置において、
    前記過変調抑制部は、
    前記直流バス電圧に予め設定された過変調率を乗算する乗算器と、
    前記乗算器による乗算結果から前記端子電圧指令を減算し、バス電圧偏差を求める減算器と、
    前記減算器により求めた前記バス電圧偏差が0になるように前記補正値を算出する制御器と、
    前記制御器により算出された前記補正値に対し、0から所定のマイナスの値までの範囲で制限を加え、制限後の補正値を前記d軸電流補正として出力するリミッタと、
    を備えたことを特徴とする過変調PWMインバータ装置。
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