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JP6692228B2 - ワイヤ放電加工装置 - Google Patents
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JP6692228B2 - ワイヤ放電加工装置 - Google Patents

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Description

本発明は、複数本のワイヤによる同時放電加工が可能なワイヤ放電加工装置に関するものである。
複数本のワイヤが等間隔で並列しながら走行し、各ワイヤによる切除加工によって被加工物を複数箇所で同時加工する切断加工方法が提案されている。切除加工については、表面に硬度の高い微細砥粒が蒸着されたワイヤを使用し、各ワイヤが被加工物表面を押し付けながら走行することにより、被加工物を削り取る方式が挙げられる。または、研磨材が混合された加工液を加工部分に供給し、各ワイヤが研磨材を被加工物表面に押し付けながら走行することにより、被加工物を削り取る方式が挙げられる。また、研磨材による除去加工とは異なる方式として、並列走行する複数本のワイヤに給電子を介してパルス電源を給電し、脱イオン水中で放電加工することにより、放電による熱によって被加工物を溶融切除する方式も提案されている。
上記いずれの方式も、ワイヤ供給用リールから繰り出された1本のワイヤが、走行経路中の複数本のガイドローラ間を所定間隔で複数回巻き掛けられて切断ワイヤ部を構成する。切断ワイヤ部を構成するワイヤの並列本数は数本から数十本、被加工物の大きさによっては数百本にもなる。従って、複数本のワイヤが並列するワイヤの通線作業は、切断ワイヤ部のワイヤを1本とする一般的なワイヤ放電加工装置の通線作業とは大きく異なり、ワイヤの送り出し、所定ピッチの並列巻き掛け、複数本の並列ワイヤの走行、および、ワイヤ回収部までのワイヤの誘導など、ワイヤ通線に係る一連の工程の自動化が困難であり、ワイヤ巻き掛けは熟練した作業者の手掛け作業によって行われている。
ワイヤ通線作業に係る一部の工程を自動化する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1では、対をなす面板間に配置した複数本のガイドローラに対してワイヤを複数回巻き掛けて整列した、溝ローラユニットを用いたワイヤ巻付装置が開示されている。複数本のガイドローラにワイヤを巻き掛ける工程において、同心円上に配置された複数本のガイドローラが配置される回転部材を同心円の中心を軸芯として回転し、ワイヤが各ガイドローラに順次巻き掛けられていく。このとき、複数本のガイドローラ表面に所定ピッチで加工されているワイヤガイド用溝の一本一本に対し、巻き掛けられたワイヤが整列するように、ガイドローラの回転軸方向の移動と回転部材の回転を同期させる。
特許文献2のワイヤソー装置にあっては、複数本のガイドローラに対してワイヤを複数回巻き掛けて整列する。かかるワイヤソー装置では、ワークローラ間のワイヤに搖動を与えて切断させながら、ワークローラの外側に巡回させるワイヤに往復運動を与えながら回収側への移動を与え、切断作業と砥粒の回収作業とを効率的に行う。
特公平4−004095号公報 特開平1−171753号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2のいずれにおいても複数本の並列走行するワイヤによって同時切断加工を行う加工装置のワイヤ通線作業に係る全工程において、現状では人手による作業工程が不可欠とされ、全作業工程は完全に自動化されていない。特に、ガイドローラまでのワイヤの誘導、ワイヤをガイドローラに巻き掛けるためのガイドローラに対するワイヤ先端の固定、巻き掛けて整列させられた後のワイヤを回収あるいは巻き取る機構が機能する領域までの誘導をはじめとする、ワイヤ通線に係る一連の作業工程には、熟練した作業者であっても、時間を要する。ワイヤ通線作業の複雑さゆえに、ワイヤ通線作業には少なくない時間が費やされており、ワイヤ通線作業はウエハ生産性に影響する工程である。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ワイヤの通線から、ワイヤの巻き掛け、切断の一連の工程を自動化可能なワイヤ放電加工装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のワイヤ放電加工装置は、ワイヤを供給する通線機構と、複数のガイドローラを備えたマルチワイヤユニットと、マルチワイヤユニットをマルチワイヤユニット回転軸のまわりに回転する回転機構と、マルチワイヤユニットによるワイヤ巻き掛け動作中において通線機構から送り出されたワイヤを把持し回転機構によって前記マルチワイヤユニット回転軸のまわりに回転するワイヤ把持機構と、マルチワイヤユニット回転軸に平行な方向にマルチワイヤユニットを移動する駆動機構を有し、マルチワイヤユニットの複数のガイドローラへマルチワイヤユニット回転軸に平行な方向に互いに離間して複数回並列にワイヤを巻きつけるワイヤ巻き付け機構と、複数のガイドローラに巻き付けられたワイヤの並列部で構成されたワイヤ切断部と、ワイヤ切断部に通電する通電機構と、ワイヤ切断部で被加工物を放電加工する加工機構と、マルチワイヤユニットを通過したワイヤを回収する回収ローラを有する回収機構と、を備える。
本発明によれば、ワイヤの通線から、ワイヤの巻き掛け、切断の一連の工程を自動化可能なワイヤ放電加工装置を得る、という効果を奏する。
本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置を示す斜視図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置を正面図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置を側面図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のワイヤ把持機構を示す斜視図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のワイヤ把持機構を示す上面図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のマルチワイヤユニットによるワイヤ巻き掛け動作を説明する模式図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のマルチワイヤユニットによるワイヤ巻き掛け動作を説明する模式図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のマルチワイヤユニットによるワイヤ巻き掛け動作を説明する模式図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置の巻き掛け後のワイヤを下部アーム内に吸引誘導し、回収するワイヤ回収機構の正面図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置の巻き掛け後のワイヤを下部アーム内に吸引誘導し、回収するワイヤ回収機構の側面図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のワイヤ自動巻き掛け工程を示すフローチャート 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のハードウェア構成を示す図 本発明の実施の形態2によるワイヤ放電加工装置の正面図 本発明の実施の形態2によるワイヤ放電加工装置の側面図 本発明の実施の形態2によるワイヤガイドリングの斜視図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置の変形例を示す正面図 本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置の変形例を示す側面図
以下に、本発明に係るワイヤ放電加工装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置を示す斜視図である。図2は、同正面図、図3は同側面図である。図4は、本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のワイヤ把持機構を示す斜視図、図5は、同上面図である。図6から図8は、本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のマルチワイヤユニットによるワイヤ巻き掛け動作を説明する模式図である。図9は、同ワイヤ放電加工装置の巻き掛け後のワイヤを下部アーム内に吸引誘導し、回収するワイヤ回収機構の正面図、図10は、同側面図である。図11は、本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のワイヤ自動巻き掛け工程を示すフローチャートである。図12は、本発明の実施の形態1によるワイヤ放電加工装置のハードウェア構成を示す図である。なお図1は概略図であるため、記載を省略している部品もある。図1に示すように、実施の形態1のワイヤ放電加工装置100は、ワイヤ自動通線機構を備え1個のワイヤ供給用リール1から繰り出された1本のワイヤ11が、ワイヤ張力制御用ローラ2を通過して、ワイヤ送り用ローラ3と、下部ノズル4を通過し、ワイヤ回収用ローラ5a,5bまで、ワイヤ自動通線ユニット6によって搬送されることを特徴とする。ワイヤ回収用ローラ5a,5bに到達したワイヤ11は、以降、ワイヤ回収用ローラ5a,5bのローラ間に挟み込まれ、ローラの回転により順次引き込まれ、ワイヤ11の走行が行われる。なお一連の操作は、図12にハードウェア構成を示すようにワイヤ放電加工装置100の制御部110が、数値制御装置200による指令により実行することで、実施される。
実施の形態1のワイヤ放電加工装置100は、図1に示したマルチワイヤユニット9に対するワイヤ11の巻き付け工程に至る以前のワイヤ供給を含め、ワイヤ11の巻き付け、ワイヤを用いた被加工物の切断、被加工物の回収を含め、一連の操作を自動的に行う。マルチワイヤユニット9に対するワイヤ11の巻き付け工程に至る以前のワイヤ供給には、ワイヤ自動通線ユニット6に備えられた、ワイヤ11のアニール機能、および、ワイヤ11の切断、上部ノズル23から下部ノズル4に向けたワイヤ搬送用水流の噴出と、水流中をワイヤ11が搬送されることにより下部ノズル4内のワイヤダイス25にワイヤ11を挿入するための機能および動作を利用する。上記機能および動作には、並列ワイヤ特有の調整は特に行わないため、ワイヤ自動通線ユニット6に係る機能の詳細な説明は省略する。上部ノズル23にはワイヤ搬送用水流を発生させる水流発生機構23Jが装着されている。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置100では、ワイヤ11を供給する自動通線機構である通線機構F0と、供給されたワイヤ11を巻き付けワイヤ11が並列された切断部である切断ワイヤ部24を形成するワイヤ巻き付け機構F1と、切断ワイヤ部24のワイヤ11に通電する通電機構F2と、切断ワイヤ部24のワイヤ11で被加工物を放電加工する加工機構F3と、ワイヤ11を回収する回収機構F4とを備え、一連の各機構へのワイヤ11の供給排出が自動的に行われる。ワイヤ巻き付け機構F1は、4個のガイドローラ8が配置され、ワイヤ11を順次複数のガイドローラに巻き付けることで複数本の切断ワイヤ部24を係止するマルチワイヤユニット9と、マルチワイヤユニット9を回転する回転機構であるマルチワイヤユニット回転用モータ22と、ガイドローラ巻き掛け中のワイヤ11を把持および固定するワイヤ把持機構26と、ガイドローラの巻き掛け軸方向へマルチワイヤユニット9を移動する駆動機構とを有する。駆動機構には、後述する、U軸ステージ16、V1軸ステージ17、V2軸ステージ19、が用いられる。ここでワイヤ11を吸引する下部ノズル4の直上にワイヤ11を送出する上部ノズル23が位置する状態で上部ノズル23と下部ノズル4との間で結ばれた垂線が、ワイヤ放電加工装置100におけるX軸方向へ傾斜する軸をU軸、および、ワイヤ放電加工装置100におけるY軸方向へ傾斜する軸をV1とし、U軸ステージ16、V1軸ステージ17は、上部ノズル23を起点とするワイヤ11の垂下方向の駆動機構である。また、V2軸ステージ19は、上部ノズル23を移動させることなく、マルチワイヤユニット9のみを、ワイヤ放電加工装置100におけるY軸方向へ並進移動させる駆動機構である。
通線機構F0では、1個のワイヤ供給用リール1から繰り出された1本のワイヤ11が、ワイヤ張力制御用ローラ2を通過して、ワイヤ送り用ローラ3に導かれ、ワイヤ自動通線ユニット6に導かれる。
ワイヤ巻き付け機構F1は、ワイヤ自動通線ユニット6と、マルチワイヤユニット9とを備える。供給されてきたワイヤ11は、ワイヤ自動通線ユニット6によって、マルチワイヤユニット9で複数回巻き掛けされて並列されて、被加工物12に対向する領域で切断ワイヤ部24を形成する。マルチワイヤユニット9は、ベース板7と、4本のガイドローラ8とを有する。ガイドローラ8はガイドローラ8aから8dで構成されており、以下ガイドローラ8aから8dを総称してガイドローラ8ということもある。ワイヤ11は、これらガイドローラ8aから8d間に一定のピッチで離間しながら複数回巻き掛けされる。
通電機構F2は、放電加工用電源18と、給電線44と、切断ワイヤ部24に給電する給電子45とを備える。切断ワイヤ部24への給電は、放電加工用電源18から給電線44よび給電子45を介してなされる。
加工機構F3は、切断ワイヤ部24と、被加工物を固定する被加工物固定具13と加工機定盤14とを備え、切断ワイヤ部24は、一対のガイドローラ8b,8d間で並列されて切断ワイヤ部24を形成する。被加工物12は被加工物固定具13により加工機定盤14に固定されている。
回収機構F4は、下部ノズル4と、ワイヤ回収用ローラ5a,5bとを備える。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置では、ワイヤ11を並列して走行させながら、放電加工用電源18が給電線44および給電子45を介して切断ワイヤ部24に給電する。給電子45が図1の右方向に移動し、加工機定盤14に被加工物固定具13で設置された被加工物12に対して並列ワイヤ部を構成した切断ワイヤ部24を接近させ、切断ワイヤ部24にて被加工物12を放電加工する。並列するワイヤ11には、例えば、直径φ0.1mmから0.3mmの鋼線が使用され、通常のワイヤ放電加工と同様に脱イオン水中で被加工物12が放電加工される。加工に至るまでの準備工程である、並列ワイヤの巻き掛け、および、それに伴う各種工程の自動化に必要な実施の形態1のワイヤ放電加工装置の装置構成と動作について、図2から図8を用いて説明する。
図2および図3に示すようにZ軸ヘッド10に配置された、ワイヤ供給用リール1、ワイヤ張力制御用ローラ2、ワイヤ送り用ローラ3、およびワイヤ自動通線ユニット6は通線機構F0を構成する。ワイヤ供給用リール1とワイヤ張力制御用ローラ2およびワイヤ送り用ローラ3は加工装置のZ軸ヘッド10に配置されている。
また、Z軸ヘッド10にはU1軸ステージ16とV1軸ステージ17が設置され、その先には、ワイヤ自動通線ユニット6が設置されたワイヤ自動通線ユニットベース34が配置される。ワイヤ自動通線ユニットベース34の下部には、V2軸ステージ19が設置されている。V2軸ステージ19にはマルチワイヤユニット9を支持するマルチワイヤユニット支持部30が取り付けられ、マルチワイヤユニット支持部30にはマルチワイヤユニット回転軸29を中心に回転可能なベース板7が取り付けられる。ベース板7には、ベース板7の回転軸中心と同心円上に4個のガイドローラ8aから8dが配置されている。ベース板7の回転軸中心に設置されたマルチワイヤユニット回転軸29がマルチワイヤユニット支持部30の軸受41に嵌合されている。4個のガイドローラ8は、各ガイドローラ8間にワイヤ11を巻き掛けて周回させるためにベース板7上に配置されている。ガイドローラ8は、ガイドローラ8自体に動力機構を備えておらず、軸受41にベアリングが組み込まれた従動回転式であり、巻き掛けられたワイヤ11の走行に伴って回転する。
図3に示すように、マルチワイヤユニット支持部30にはマルチワイヤユニット回転用モータ22が、マルチワイヤユニット回転用モータ22の回転軸がマルチワイヤユニット回転軸29に対して平行となるように設置されている。さらに、マルチワイヤユニット回転軸29の軸端に配置されたプーリ42aとマルチワイヤユニット回転用モータ22の回転軸に取り付けられたプーリ42bとの間には、マルチワイヤユニット回転用のタイミングベルト28が架けられている。プーリ42に代えて歯車を用いても良い。
図4および図5に示されたマルチワイヤユニット9の状態を、ワイヤ通線開始前のマルチワイヤユニット9の初期状態とする。ベース板7の底面に位置する面で、かつ、下部ノズル4寄りのコーナ部分にワイヤ把持部37が設置される。ワイヤ把持部37の下方に下部ノズル4が位置し、さらに、下部ノズル4の直下にはワイヤダイス25が配置されている。また、ワイヤダイス25は下部アーム27内部に設置されている。
さらに、下部アーム27内部には、下部ノズル4の直下に相当する箇所に1対のワイヤ回収用ローラ5a,5bの一方であるワイヤ回収用ローラ5aが設置されている。ワイヤ回収用ローラ5aの回転軸の一端に設置された歯車に対して架けられたマルチワイヤユニット回転用のタイミングベルト28は、下部アーム27のY軸ヘッド33側の終端、すなわち、ワイヤ11が加工装置外部に排出される直前に設置されたワイヤ回収用ローラ5bの回転軸端に取り付けられている歯車5b0に架けられる。
ワイヤ回収用ローラ5aが収納される下部アーム27の内部は、ワイヤ回収用ローラ5aの輪郭形状に沿って案内溝V1が加工されている。案内溝V1において、ワイヤダイス25側をワイヤ入口側溝とすると、一方のワイヤ出口側溝にはワイヤ案内パイプ35が設置される。Z軸ステージ15、および、下部アーム27はY軸ヘッド33に配置され、さらにY軸ヘッド33はY軸ステージ21に設置される。X軸ステージ20には加工槽31が設置され、Y軸ステージ21とともに加工装置本体ベース32に設置される。Z軸ステージ15は、Z軸駆動用モータ15Mで駆動される。
次に、各装置の動作について図2から図10および図11のフローチャートを用いて説明する。一連の動作は、図12に示すように、ワイヤ放電加工装置100の制御部110により、数値制御装置200からの指令により、実施される。まず、マルチワイヤユニット9に対してワイヤ11を巻き掛けるための前段階の動作である、ワイヤ先端をマルチワイヤユニット9のあらかじめ決められた位置まで搬送し固定する動作について説明する。
まず、ワイヤ11の供給開始ステップS100を実施する。図2および図3において、通線機構F0を構成するワイヤ供給用リール1から供給されたワイヤ11は、ワイヤ張力制御用ローラ2を経由し、ワイヤ送り用ローラ3によって順次繰り出され、ワイヤ自動通線ユニット6まで搬送される。通線機構F0では、ワイヤ自動通線ユニット6の機能を利用し、アニールされるとともに切断されたワイヤ11が上部ノズル23から噴出される水流に沿って下部ノズル4内に設置されたワイヤダイス25に向けて搬送される。
次いで、制御部110は、ステップS101で、ベース板7をワイヤ通線線路から退避させる。ワイヤ11の搬送に際しては、水流によるワイヤ搬送開始前にV2軸ステージ19を使用してマルチワイヤユニット9をY軸ヘッド33の方向D1に退避させておく。マルチワイヤユニット9を退避させるのは、マルチワイヤユニット9に配置されたガイドローラ8に水流が衝突し、ワイヤ搬送が不安定となったり、阻害されたりすることを防止するためである。
ワイヤを下部ノズル4に挿入するステップS102で、図4に示すようにワイヤ11は水流により下部ノズル4に挿入される。
ワイヤ11が水流によって下部ノズル4まで搬送されると、水流によるワイヤ搬送動作は停止され、再び、V2軸ステージ19が方向D2に移動し退避前位置へ移動し、退避していたマルチワイヤユニット9が元の位置に復帰する。このとき、ワイヤ把持機構にてワイヤを把持するステップS103で図4および5に示すマルチワイヤユニット9に搭載されているワイヤ把持機構26で、垂れ下った状態のワイヤ11を挟むように通過した後、ワイヤ把持部37にてワイヤ11を把持する。ワイヤ把持部37の片側面には、ワイヤ11が特定位置で把持されるように、V型形状の溝Vが加工されている。
また、後工程のベース板7の回転動作において、ワイヤ把持部37の長さL1は、ワイヤ巻き掛け工程中にワイヤ把持部37にワイヤ11が絡まない程度とすることが重要となる。
具体的には、図5に示すように、ワイヤ把持部37端面が、ワイヤ巻き掛けピッチで設計される2周目以降のワイヤガイド溝8Vに沿って整列したワイヤ経路上にはみ出さない長さとなるように、ワイヤ把持部回転軸39からワイヤ把持部37の先端までの距離LWが調整される。
ステップS103によってワイヤ11が把持された後、ステップS104で退避したV2軸が、巻き掛け開始位置に復帰せしめられる。
マルチワイヤユニット9が退避位置から復帰した後、ワイヤ11の巻き掛ける動作が開始される。巻き掛ける動作はベース板7を回転する回転ステップS105と、ベース板7が1回転すると1回転に同期してベース板を一定ピッチ移動するステップS106とベース板7を回転する回転ステップS105を繰り返す。
ワイヤ把持部37により把持されたワイヤ11を、マルチワイヤユニット9に巻き掛ける動作について、図6から図8を用いて説明する。図6から図8では、ワイヤ把持部37は簡略化して記載しているが実際には図4および図5に示す構成となっている。マルチワイヤユニット9は、巻き掛けによってワイヤ周長を長くし、並列するワイヤ11間の抵抗値を大きくすることにより、給電された電流が他の並列するワイヤ11に回り込みにくくする。
ベース板7は、回転中心にベース板7自体が回転するための回転軸であるマルチワイヤユニット回転軸29が接続され、回転軸はマルチワイヤユニット支持部30の軸受41で支持される構造となっている。ベース板7に接続されるマルチワイヤユニット回転軸29の端には歯車が取り付けられ、マルチワイヤユニット回転用モータ22の動力がマルチワイヤ回転用のタイミングベルト28を介し、マルチワイヤユニット回転軸29の端の歯車に伝達され、マルチワイヤユニット9が回転し、ベース板7が回転する。
図6から図8において示される各図は、ワイヤ11が逐次各ガイドローラ8に架けられていく状態を示している。実施の形態1では、ベース板7の回転方向は通線機構F0からのワイヤ供給方向に倣い、時計方向としている。図6(a)に示すように、ワイヤ自動通線ユニット6から送り出されてきたワイヤ11の先端は図6(b)に示すように、ワイヤ把持部37により把持される。ワイヤ把持部37はベース板7に固定されているので、ワイヤ把持部37もベース板7と同一回転中心の円軌跡を描いてマルチワイヤユニット回転用モータ22によって回転し、図6(c)に示すようにマルチワイヤユニット9に対するワイヤ11の巻き掛け動作が開始される。
まず、図6(c)に示すようにワイヤ把持部37に直近のガイドローラ8bのワイヤガイド溝8Vにワイヤ11が掛かり、図6(d)に示すようにワイヤガイド溝8Vにワイヤ11が巻きつけられる。
次いで、図7(a)から図7(d)に示すようにガイドローラ8が配置された順に、ガイドローラ8bからガイドローラ8a、ガイドローラ8dを経てガイドローラ8cへと各ガイドローラ8表面のワイヤガイド溝8Vに対してワイヤ11が掛けられていく。
そして、図8(a)に示すようにすべてのガイドローラ8のワイヤガイド溝8Vに1周回分のワイヤ11が巻き掛けられた後、2周回目のワイヤ巻き掛けが開始される状況で、図8(b)に示すようにV2軸ステージ19がワイヤ並列ピッチ分だけ、紙面奥側へ移動する。つまり、ベース板7の1回転に同期したガイドローラ8の回転軸方向もしくはベース板7の回転軸方向と平行な送り動作により、図8(c)に示すように1個のガイドローラ8において、同一のワイヤガイド溝8Vに対し、ワイヤ11が重複して掛けられることなく並列させられていく。最終的に、ワイヤ11は各ワイヤガイド溝8Vに順次掛けられ、複数本のワイヤ11が一定ピッチで並列する切断ワイヤ部24が構成される。
また、マルチワイヤユニット9の回転に同期したマルチワイヤユニット回転軸29と平行方向への移動距離は、複数回の巻き掛け動作によって構成された切断ワイヤ部24のワイヤ並列間距離である。ワイヤ11が巻き付けられるガイドローラ8の表面には、ワイヤ11がずれないためのガイド機能を構成するV型形状のワイヤガイド溝8Vが一定ピッチで加工されている。したがって、必要な並列本数分のワイヤ11をガイドローラ8に巻き掛けるためには、ベース板7が1回転するごとにワイヤガイド溝8Vのピッチの整数倍の送り量でガイドローラ8の回転軸方向にベース板7を平行移動する。以上の機構と動作により、一定本数および一定ピッチにて複数個のガイドローラ8間にてワイヤ11の並列巻き掛け工程を自動化できる。なお、ワイヤ把持部37は、例えば、空気圧で動作する小型のエアハンドなどが使用される。
ワイヤ巻き掛けが終了すると、ワイヤ11の回収操作に入る。次に、ワイヤ巻き掛け終了後のワイヤ11の回収操作と搬送操作について図9および図10を用いて説明する。次にステップS107で、下部ノズル4での吸引を開始する。実施の形態1のワイヤ放電加工装置100では、ワイヤ自動通線ユニット6を使用し、ワイヤ11が下部ノズル4付近まで搬送される。下部アーム27の内部では、下部ノズル4内部から下部アーム27内に向かう水流が発生し、下部ノズル4の内部は負圧となり、吸引機構を構成する。内部が負圧となった状態でワイヤダイス25の入口に把持されたワイヤ11の先端を接近させると下部ノズル4内が負圧状態のため、下部ノズル4周辺の空気が下部ノズル4内へ吸い込まれ、ワイヤ11の先端も空気とともにワイヤダイス25内に引き込まれる。ワイヤ11が下部ノズル4内に吸引されている状態を維持しながらZ軸ステージ15を徐々に降下させていくと、ワイヤ把持部37から突き出しているワイヤ11はワイヤダイス25内に挿入され、さらに下部アーム27内部へと吸引され、案内されていく。
ワイヤ把持部37から突き出したワイヤ11の先端が下部ノズル4内に吸引されると、ワイヤ把持部37はワイヤ把持部回転用モータ38によって180度転換し、ベース板7のガイドローラ8が配置されない側に向けられる。退避動作によって、Z軸ステージ15の降下によるワイヤ送り動作における、ワイヤ把持部37と下部ノズル4との干渉が防止され、ワイヤ11をワイヤ回収用ローラ5aへ送り込み易くなる。
ワイヤ回収動作が開始されると、図9および図10に示すように、制御部110は、ステップS108でワイヤ回収用ローラ5a,5bを稼働する。下部アーム27内部ではワイヤ回収用ローラ5a,5bが回転を開始する。ワイヤ回収用ローラ5bは外部モータにより回転するが、ワイヤ回収用ローラ5aおよびワイヤ回収用ローラ5bとそれぞれ同一回転軸上に設置された各プーリ42(42a,42b)もしくは歯車が回収用ローラ用のタイミングベルト36で連結されているので、ワイヤ回収用ローラ5bに伝達された回転動力がワイヤ回収用ローラ5aにも伝達されることでワイヤ回収用ローラ5aが回転する。43はワイヤ引き込み部である。
したがって、ワイヤダイス25内に挿入されたワイヤ11はワイヤ回収用ローラ5aに到達すると、到達後はワイヤ回収用ローラ5aの回転により順次繰り出される。ワイヤ回収用ローラ5aによって繰り出されたワイヤ11はやがてワイヤ回収用ローラ5bに到達し、ワイヤ回収用ローラ5a,5bによってワイヤ搬送が行われる。ワイヤ回収用ローラ5aに対して確実にワイヤ11を供給するために、ワイヤ回収用ローラ5aに至る下部アーム27内部の形状は、下部ノズル4に挿入されたワイヤ11が、経路中で座屈することなく、ワイヤ回収用ローラ5aへ誘導され易くなるように断面円弧状の曲面状に加工されている。
また、負圧発生用の水流に沿ってワイヤ11が誘導され易くなるように、水流の排出溝がワイヤ回収用ローラ5bの中央に向けて形成されている。ワイヤ回収用ローラ5aの表面には、排出口の凹形状に適合するように間歇的に突起を形成しておくことにより、水流の排出溝からの流れが阻害されず、ワイヤ11を前述の突起部にて挟み込む作用によりワイヤ11との摩擦を大きくし、ワイヤ送り出しが確実に行われるようにしている。なお、ワイヤ回収用ローラ5bへ搬送中のワイヤ11が座屈することを防止するためにワイヤ案内用パイプ35が設置されている。
続いてステップS109で、制御部110は、ワイヤ11の先端を下部ノズル4内に吸引する。上記ワイヤ把持部37から突き出したワイヤ11は、ワイヤ11の先端に対する吸引動作に係る気流の発生、もしくは、水流とともに下部ノズル4内部へ先端を引き込み、ワイヤダイス25内部へのワイヤ11の挿入が促進される。ワイヤダイス25の内径は加工に使用するワイヤ11を直径0.1mmとした場合、0.3mm口径のダイスを使用する。ワイヤの直径よりも口径が広めのダイスを使用することにより、ワイヤ11をワイヤダイス25内部に挿入し易くなる。
そしてワイヤ11の先端が下部ノズル4内に吸引されると、制御部110は、ステップS110でワイヤ把持部37のワイヤ11を開放する。
そして、制御部110は、ステップS111でワイヤ把持部27を回転して退避させる。
そしてステップS112で、制御部110は、Z軸ステージ15を徐々に降下させる。
ステップS113で、制御部110は、ワイヤ回収用ローラ5a,5bでワイヤ11を搬送し、排出する。かかるステップでは、搬送されたワイヤ11は最終的に、ワイヤ回収用ローラ5bから排出され、ワイヤ放電加工装置100の外部に設置される回収箱に集積され回収される。
ワイヤ放電加工装置では、通常、ワイヤ振動を抑制し加工精度を維持するために、ワイヤ11とのクリアランスが数μm程度となるワイヤダイス25が選定される。しかし、実施の形態1のワイヤ放電加工装置100は、ベース板7上に配置されるガイドローラ8間において、ワイヤ11が巻き掛けられ支持される構造である。従って、ガイドローラ8に巻き掛けられるごとにワイヤ走行方向が変わる際に、ワイヤ11がガイドローラ8のワイヤガイド溝8Vに押し付けられるので、切断ワイヤ部24のワイヤ振動は抑制される。従って、通常のワイヤ放電加工装置のようにワイヤ11とのクリアランスが小さいダイヤモンドダイスを使用する必要がなくなる。
実施の形態1のワイヤ放電加工装置は、ワイヤ放電加工装置自体に備えられたワイヤ自動通線の機能を使用しているため、下部ノズル4内に設置されたワイヤダイス25に対してワイヤ11を挿入することができ、並列するワイヤ11の通線から走行までにかかる作業時間を短縮することができる。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置は、ワイヤ自動通線ユニットベース34とマルチワイヤユニット支持部30との間に直動ステージのV2軸ステージ19を備えているため、マルチワイヤユニット9を独立して移動させることが可能となる。従って、実施の形態1のワイヤ放電加工装置は、ワイヤ自動通線ユニット6によるワイヤ供給時の上部ノズル23から噴出される水流あるいは、水流に沿って送り込まれるワイヤ搬送経路の障害とならないという効果を奏する。つまり、ワイヤ自動通線ユニット6によるワイヤ搬送用の水流に対して、マルチワイヤユニット9の退避動作と復帰動作を行うことができ、1本のワイヤ11をガイドローラ8に対して巻き掛け、一定間隔で複数本のワイヤ11が並列する切断ワイヤ部24のワイヤ通線作業を自動化することができる。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置によれば、ワイヤ自動通線ユニットベース34とマルチワイヤユニット支持部30との間に付加したV2軸ステージ19により、ガイドローラ8の回転軸方向への送り動作が独立して実施可能である。従って、ガイドローラの各ワイヤガイド溝に対するワイヤ巻き掛け動作において、ガイドローラ8の回転軸方向への正確な送り動作を行うことができ、ワイヤ並列精度が向上するという効果を奏する。
また、マルチワイヤユニット9は、ベース板7に設置されるガイドローラ8を従動式とし、外部動力の伝達によりガイドローラ8が回転する必要がない。従って、マルチワイヤユニット9の軽量化、および、マルチワイヤユニット9の構造の単純化を実現でき、ワイヤ巻き掛け動作を自動化できるという効果を奏する。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置100では、ワイヤ把持機構は、マルチワイヤユニット9によるワイヤ巻き掛け動作中においてワイヤ11を把持し、ワイヤ巻き掛け終了後は把持したワイヤ11を開放する。従って、マルチワイヤユニット9の回転動作によって、1本のワイヤ11を複数本のガイドローラ8に対して巻き掛けられることができ、複数本のワイヤ11が並列する切断ワイヤ部24のワイヤ通線作業を自動化することができる。つまり、従来の人手によるワイヤ端の固定作業の自動化が実現可能である。
また、ワイヤ把持機構26は、ワイヤ把持経路から退避可能な機構とし、下部ノズル4との干渉を防止したので、Z軸ヘッド10の降下によりワイヤダイス25に対してワイヤ11の挿入を行うことができるという効果を奏する。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置100では、ワイヤ排出用のガイドローラであるワイヤ回収用ローラ5aを下部ノズル4内部のワイヤダイス25の直下に設置したので、ワイヤ11を引き込み易くなり、ワイヤ回収用ローラ5bまでのワイヤ搬送を安定して行うことができるという効果を奏する。通常のワイヤ放電加工装置では、ワイヤ排出用のガイドローラは下部アーム27の出口のみに設置されているため、ワイヤ11の引き込みが安定して実施できないのに対し、実施の形態1のワイヤ放電加工装置ではワイヤ搬送を安定して実施できる。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置100では、ガイドローラ8の各軸中心が、マルチワイヤユニット回転軸29の中心から等距離に配置されているため、マルチワイヤユニット9の回転動作によって、1本のワイヤ11を複数本のガイドローラに対して巻き掛けることができる。従って、複数本のワイヤ11が並列する切断ワイヤ部24のワイヤ通線作業を容易に自動化することができる。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置100では、マルチワイヤユニット9は、外部の回転装置から伝達される動力による回転に同期して、1回転ごとに前記マルチワイヤユニット回転軸方向に一定のワイヤ並列ピッチ分を平行移動することもできる。かかる構成により、マルチワイヤユニット9の回転動作によって、1本のワイヤ11を複数本のガイドローラ8に対して巻き掛けられることができ、複数本のワイヤ11が並列する切断ワイヤ部24のワイヤ通線作業を自動化することができる。
また、実施の形態1のワイヤ放電加工装置100では、下部ノズル4の直下に、ワイヤ回収用ローラ5a,5bを備えているため、通線から回収まで全作業を自動化することができる。なお、ワイヤ回収用ローラ5a,5bは、下部ノズル4の直下に限定されることなく、下方であればよい。
実施の形態2.
図13および図14は、実施の形態2のワイヤ放電加工装置の正面図および同側面図であり、図15は、ワイヤガイドリングの斜視図である。実施の形態1のワイヤ放電加工装置に対し、実施の形態2のワイヤ放電加工装置は、ワイヤ供給用リール1から繰り出されたワイヤ11が、下部ノズル4内のワイヤダイス25の位置まで搬送されるまでのワイヤ供給動作が異なる。実施の形態2のワイヤ放電加工装置100Sでは、ワイヤ自動通線ユニットが装備されないワイヤ放電加工装置である。実施の形態2のワイヤ放電加工装置では、搬送中のワイヤ11がワイヤ搬送経路を外れないように案内するための数個のワイヤガイドリング46が、ワイヤガイドリング固定具48により支持固定され、ワイヤガイドリングベース47上に直列配置される。つまり、実施の形態2のワイヤ放電加工装置では、ワイヤ自動通線ユニットに代えてワイヤガイドリング46とワイヤガイドリングベース47とを備えた通線機構を用いて自動的に通線する。
ワイヤ送り用ローラ3に引き込まれたワイヤ11は、ワイヤ送り用ローラ3の回転と共にワイヤ供給用リール1から引き出され、ワイヤ搬送経路途中のワイヤ張力制御用ローラ2を通過した後、ワイヤ送り用ローラ3から下部ノズル4に向けて徐々に送り出される。
ワイヤ送り用ローラ3から下部ノズル4までは離れているため、ワイヤガイドリング46、ワイヤガイドリング固定具48、ワイヤガイドリングベース47を備えたことで、下部ノズル4に向けて送り出され垂れ下ったワイヤ11が周囲の空気の流れなどの外乱によって揺らぎ、下部ノズル4に達するまでにワイヤ搬送経路を外れ、ワイヤ把持機構26でのワイヤ11の把持が困難にならないようにする。さらに、ワイヤガイドリングベース47はワイヤ自動通線ユニットベース34に設置される。
図13および図14で示される装置は、ワイヤ自動通線ユニット6を装備しない仕様のワイヤ放電加工装置であるが、ワイヤ自動通線ユニット6が装着される場合に使用されるワイヤ自動通線ユニットベース34を流用している。ワイヤガイドリング46の配置間隔は、20mmから50mm程度である。図13および図14では、ワイヤ自動通線ユニット6が装備されないため、実施の形態1のワイヤ放電加工装置では重要な構成要素であるV2軸ステージを備える必要がなく、ワイヤ自動通線ユニットベース34に対してマルチワイヤユニット支持部30が直接設置される。
ワイヤガイドリング46は、ワイヤ送り用ローラ3からワイヤ自動通線ユニットベース34に設置されたワイヤガイドリングベース47の間に設置され、ワイヤガイドリングベース47よりも下方に設置しなくとも、ワイヤガイドリングベース47の位置まで垂れ下ったワイヤ11の自重により、ワイヤ送り用ローラ3から繰り出されたワイヤ11はほぼ直線状態で下部ノズル4直上まで搬送される。ワイヤ自動通線ユニット6を搭載したワイヤ放電加工装置に比較して、ワイヤ11が下部ノズル4まで搬送されるには時間を要するが、下部ノズル4までの経路途中に設置された複数個のワイヤガイドリング46の各内径部に対して順にワイヤ11を通過させていくことにより、マルチワイヤユニット9に配置されるワイヤ把持機構26、および、下部ノズル4までのワイヤ搬送が可能となる。
ワイヤガイドリング46は、樹脂などの非導電性素材で製造される。あるいは、ワイヤガイドリング46は、非導電性材料で被覆された構成としてもよい。ワイヤガイドリング46とワイヤ11との間で放電が発生しないようにワイヤガイドリング46には電気的絶縁がなされている。ワイヤガイドリング46の形状と配置について図15を用いて説明する。ワイヤガイドリング46の形状は、輪状、もしくは、円筒状であり、ワイヤガイドリング46の内径部をワイヤ11が通過することにより、ワイヤ11はワイヤガイドリング46の内径以上に振動しないようになる。さらに、ワイヤガイドリング46の内径は、ワイヤガイドリングベース47の上方に設置されるワイヤガイドリング46ほど大きく、下方に設置されるワイヤガイドリング46ほど次第に内径が小さくなるように順に配置される。内径の異なる複数個のワイヤガイドリング46を、前述のように配置することにより、垂れ下がりながら搬送されるワイヤ11が、ワイヤガイドリング46の内径部内のワイヤ搬送経路から外れることなく順次挿入され、ワイヤ11の振幅はワイヤガイドリング46を通過するごとに徐々に低減される。
下部ノズル4の位置まで搬送されたワイヤ11は、当然ながら、ワイヤ把持機構26のワイヤ把持部37をも通過しているので、ワイヤ把持部37による把持が可能となっている。
ワイヤ11がワイヤ把持部37によって把持された後、実施の形態1において記載した巻き付け動作により、マルチワイヤユニット9の複数個のガイドローラ8に対してワイヤ巻き付け動作が行われ、ワイヤ11は等間隔に並列しながら複数本の切断ワイヤ部24を構成する。なお、他の構成については、実施の形態1と同様であるため説明を省略するが、同一部位には同一符号を付した。
切断ワイヤ部24が形成されると、実施の形態1において記載されているように、ワイヤダイス25に対するワイヤ11の挿入動作と同様の工程が行われる。Z軸ステージ15が降下し、ワイヤ把持部37から突き出したワイヤ11の先端が下部ノズル4に接近させられる。ワイヤ11の先端は、下部ノズル4によって吸引され、下部ノズル4内のワイヤダイス25に挿入され、挿入後、ワイヤ回収用ローラ5a,5bにより、下部アーム27内のワイヤ案内パイプ35を通過し、加工装置外部に排出され、ワイヤ11の通線作業が完了する。
実施の形態2のワイヤ放電加工装置100Sによれば、ワイヤ自動通線ユニット6を装備しないワイヤ放電加工装置であっても、下部ノズル4内に設置されたワイヤダイス25に対してワイヤ11を挿入することができ、並列する切断ワイヤ部の形成から走行までに要する作業を自動化できるという効果を奏する。
また、設置されるワイヤガイドリング46は、自重で垂れ下がったワイヤ11の経路上に設置され、ワイヤガイドリング46の内径が、下方に位置されるワイヤガイドリングほど小径になるようにワイヤガイドリング46を配置したことにより、各ワイヤガイドリング46に対するワイヤ11の挿入精度が向上し、垂れ下ったワイヤ11の振幅を抑制でき、下部ノズル4内へのワイヤ11先端の挿入が容易になるという効果を奏する。
また、実施の形態2のワイヤ放電加工装置100Sは、ワイヤ自動通線ユニットを装備しないため、ワイヤ自動通線ユニット6から噴出されるワイヤ搬送用水流からマルチワイヤユニット9を退避する必要がなくなり、V2軸ステージ19を装備する必要がなく、装置構成を簡易化でき、マルチワイヤユニット9の退避および復帰にかかる工程を不要にできるという効果を奏する。
なお、図2、図3に示した実施の形態1のワイヤ放電加工装置100では、ワイヤ供給用リール1、ワイヤ張力制御用ローラ2、ワイヤ送り用ローラ3がZ軸ヘッド10に配置されている。この構成では、Z軸ステージ15にかかる荷重が増大し、Z軸駆動用モータ15Mを高出力にする必要が生じる場合がある。
そこで、図16および図17に実施の形態1のワイヤ放電加工装置の変形例のワイヤ放電加工装置100Pの正面図および側面図を示すように、Y軸ステージ21の上部をZ軸ステージ15上部までせり出させたZ軸ヘッド233を用い、Z軸ヘッド233に装着された制御部110のステージの主面に、ワイヤ供給用リール1、ワイヤ張力制御用ローラ2、ワイヤ送り用ローラ3を配置することで、通線機構F0に影響することなく、Z軸ステージ15の負荷を軽減する効果を得ることができる。他の部分は実施の形態1と同様であるため説明は省略するが、同一部位には同一符号を付した。
以上説明したように、実施の形態1および2のワイヤ放電加工装置では、ワイヤ供給用リールから繰り出されたワイヤを一定間隔で整列させるガイドローラへの誘導、ガイドローラに対するワイヤ端の固定およびワイヤの巻き掛け、巻き掛け工程終了後にワイヤ回収機構までワイヤを誘導し走行するまでの全工程を自動化することが可能である。
なお、実施の形態1および2のワイヤ放電加工装置では、ワイヤ供給用リール1、ワイヤ張力制御用ローラ2、ワイヤ送りローラ3は、Z軸ヘッド15に装着したが、ワイヤ供給用リール1、ワイヤ張力制御用ローラ2、ワイヤ送りローラ3は、別途支持プレート上に設置し、支持プレートをY軸ヘッド33に装着してもよい。
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態およびその変形は、発明の範囲に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 ワイヤ供給用リール、2 ワイヤ張力制御用ローラ、3 ワイヤ送り用ローラ、4 下部ノズル、5a,5b ワイヤ回収用ローラ、6 ワイヤ自動通線ユニット、7 ベース板、8,8a,8b,8c,8d ガイドローラ、8V ワイヤガイド溝、9 マルチワイヤユニット、10 Z軸ヘッド、11 ワイヤ、12 被加工物、13 被加工物固定具、14 加工機定盤、15 Z軸ステージ、15M Z軸駆動用モータ、16 U軸ステージ、17 V1軸ステージ、18 放電加工用電源、19 V2軸ステージ、20 X軸ステージ、21 Y軸ステージ、22 マルチワイヤユニット回転用モータ、23 上部ノズル、23J 水流発生機構、24 切断ワイヤ部、25 ワイヤダイス、26 ワイヤ把持機構、27 下部アーム、28 マルチワイヤユニット回転用のタイミングベルト、29 マルチワイヤユニット回転軸、30 マルチワイヤユニット支持部、31 加工槽、32 加工装置本体ベース、33 Y軸ヘッド、34 ワイヤ自動通線ユニットベース、35 ワイヤ案内パイプ、36 回収用ローラ用のタイミングベルト、37 ワイヤ把持部、38 ワイヤ把持部回転用モータ、39 ワイヤ把持部回転軸、41 軸受、42,42a,42b プーリ、43 ワイヤ引き込み部、44 給電線、45 給電子、46 ワイヤガイドリング、47 ワイヤガイドリングベース、48 ワイヤガイドリング固定具、233 Y軸ヘッド、V1 案内溝、F0 通線機構、F1 ワイヤ巻き付け機構、F2 通電機構、F3 加工機構、F4 回収機構。

Claims (11)

  1. ワイヤを供給する通線機構と、
    複数のガイドローラを備えたマルチワイヤユニットと、
    前記マルチワイヤユニットをマルチワイヤユニット回転軸のまわりに回転する回転機構と、前記マルチワイヤユニットによるワイヤ巻き掛け動作中において前記通線機構から送り出された前記ワイヤを把持し前記回転機構によって前記マルチワイヤユニット回転軸のまわりに回転するワイヤ把持機構と、前記マルチワイヤユニット回転軸に平行な方向に前記マルチワイヤユニットを移動する駆動機構を有し、前記マルチワイヤユニットの前記複数のガイドローラへ前記マルチワイヤユニット回転軸に平行な方向に互いに離間して複数回並列にワイヤを巻きつけるワイヤ巻き付け機構と、
    前記複数のガイドローラに巻き付けられたワイヤの並列部で構成されたワイヤ切断部と、
    前記ワイヤ切断部に通電する通電機構と、
    前記ワイヤ切断部で被加工物を放電加工する加工機構と、
    前記マルチワイヤユニットを通過したワイヤを回収する回収ローラを有する回収機構と、
    を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  2. ワイヤを供給する通線機構と、
    複数のガイドローラを備えたマルチワイヤユニットと、
    前記マルチワイヤユニットをマルチワイヤユニット回転軸のまわりに回転する回転機構と、前記ワイヤを把持するワイヤ把持機構と、前記マルチワイヤユニット回転軸に平行な方向に前記マルチワイヤユニットを移動する駆動機構を有し、前記マルチワイヤユニットの前記複数のガイドローラへ前記マルチワイヤユニット回転軸に平行な方向に互いに離間して複数回並列にワイヤを巻きつけるワイヤ巻き付け機構と、
    前記複数のガイドローラに巻き付けられたワイヤの並列部で構成されたワイヤ切断部と、
    前記ワイヤ切断部に通電する通電機構と、
    前記ワイヤ切断部で被加工物を放電加工する加工機構と、
    前記マルチワイヤユニットを通過したワイヤを回収する回収ローラを有する回収機構と、
    前記通線機構から供給された前記ワイヤを受ける上部ノズルと、
    前記上部ノズルからのワイヤを受ける下部ノズルと、
    前記上部ノズルのワイヤ出口から下部ノズルのワイヤ入口に向け水流を噴出させる機構と、
    を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  3. 前記マルチワイヤユニットは、ワイヤ送り用ローラと前記下部ノズルとの間に設置され、
    前記マルチワイヤユニットは、ワイヤ送り用ローラと独立して移動可能であることを特徴とする請求項2に記載のワイヤ放電加工装置。
  4. 前記マルチワイヤユニットは、マルチワイヤユニット回転軸の周りに回転可能なベース板と、前記ベース板に装着された複数のガイドローラと、前記マルチワイヤユニット回転軸に固定されたプーリと、ワイヤ把持部とを備え、
    前記プーリによって、前記マルチワイヤユニットは外部回転装置と連結可能であることを特徴とする請求項2または3に記載のワイヤ放電加工装置。
  5. 前記ガイドローラの各軸中心が、マルチワイヤユニット回転軸の中心から等距離に配置されたことを特徴とする請求項4に記載のワイヤ放電加工装置。
  6. 前記マルチワイヤユニットは、前記外部回転装置から伝達される動力による回転に同期して、1回転ごとに前記マルチワイヤユニット回転軸方向に一定のワイヤ並列ピッチ分を平行移動することを特徴とする請求項4または5に記載のワイヤ放電加工装置。
  7. 前記マルチワイヤユニットは、前記ベース板にワイヤ把持機構を備えたことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載のワイヤ放電加工装置。
  8. 前記ワイヤ把持機構は、前記マルチワイヤユニットによるワイヤ巻き掛け動作中においてワイヤを把持し、ワイヤ巻き掛け終了後は把持した前記ワイヤを開放することを特徴とする請求項7に記載のワイヤ放電加工装置。
  9. 前記下部ノズルの下方に、ワイヤ回収用ローラを備えたことを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載のワイヤ放電加工装置。
  10. ワイヤを供給するワイヤ供給リールと、
    前記ワイヤ供給リールから供給されたワイヤをガイドする複数のワイヤガイドリングを備えた通線機構と、
    前記通線機構から供給された前記ワイヤを受ける上部ノズルと、
    複数のガイドローラを備えたマルチワイヤユニットと、
    前記マルチワイヤユニットの前記複数のガイドローラに互いに離間して複数回並列に巻き付けられたワイヤの並列部で構成されたワイヤ切断部と、
    前記マルチワイヤユニットをマルチワイヤユニット回転軸のまわりに回転する回転機構と、
    前記ワイヤガイドリングを通過した前記ワイヤを把持するワイヤ把持機構と、
    前記マルチワイヤユニット回転軸と平行な方向へ前記マルチワイヤユニットを移動する駆動機構と、
    前記上部ノズルから前記マルチワイヤユニットを経由したワイヤを受ける下部ノズルと、
    前記ワイヤの先端を前記下部ノズルへ吸引する吸引機構と、
    前記下部ノズルを通過したワイヤを回収する回収ローラを有する回収機構と、
    を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
  11. 前記ワイヤガイドリングは、上方に配置される前記ワイヤガイドリングほど内径が大きく、下方に設置される前記ワイヤガイドリングほど内径が小さことを特徴とする請求項10に記載のワイヤ放電加工装置。
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