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JP6734124B2 - 硬化樹脂膜製造方法および硬化樹脂膜 - Google Patents
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JP6734124B2 - 硬化樹脂膜製造方法および硬化樹脂膜 - Google Patents

硬化樹脂膜製造方法および硬化樹脂膜 Download PDF

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Description

本発明は、硬化樹脂膜の製造方法、および、硬化樹脂膜に関する。
様々な技術分野において利用されている硬化樹脂膜については、用途によっては、表面粗さが小さいことが求められる場合がある。例えば、フレキシブルプリント配線板の絶縁層用の硬化樹脂膜や、チップオンフィルム実装技術における絶縁基板用の硬化樹脂膜には、表面粗さが小さいことが要求される場合が多い。これら絶縁層や絶縁基板の表面にパターン形成される配線の微細化が進むほど、その要求は強くなる傾向にある。
一方、近年、ナノダイヤモンドと呼称される微粒子状のダイヤモンド材料の開発が進められている。ナノダイヤモンドについては、用途によっては、粒径が10nm以下のいわゆる一桁ナノダイヤモンドが求められる場合がある。そのようなナノダイヤモンドに関する技術については、例えば下記の特許文献1および特許文献2に記載されている。
特開2005−001983号公報 特開2010−126669号公報
一次粒子の粒径が10nm以下であるナノダイヤモンドは、バルクダイヤモンドがそうであるように、高い機械的強度や高い熱伝導性などを示し得る。微粒子たるナノ粒子は、一般に、表面原子(配位的に不飽和である)の割合が大きいので、隣接粒子の表面原子間で作用し得るファンデルワールス力の総和が大きくて凝集(aggregation)しやすい。これに加えて、ナノダイヤモンド粒子の場合、隣接結晶子の結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成する凝着(agglutination)という現象が生じ得る。ナノダイヤモンド粒子は、このように結晶子ないし一次粒子の間が重畳的に相互作用し得る特異な性質を有するところ、従来の技術においては、ナノダイヤモンドの一次粒子間を解離させて当該一次粒子が例えば溶媒中や樹脂材料中で分散した状態を創り出すことには、技術的困難を伴う。ナノダイヤモンド一次粒子におけるこのような分散性の低さは、ナノダイヤモンド粒子を含有する複合材料の設計上の自由度が低いことの要因であり、ナノダイヤモンド含有複合材料を作製するうえで障害となる場合がある。また、ナノダイヤモンド一次粒子の分散性の低さは、当該ナノダイヤモンド粒子を含有する樹脂膜の表面平滑性に影響を及ぼし得る。ナノダイヤモンド含有樹脂膜におけるナノダイヤモンド粒子の分散の程度が低いほど(即ち凝集の程度が高いほど)、当該樹脂膜の表面は粗い傾向にある。
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、高い表面平滑性を伴うナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜を得るのに適した硬化樹脂膜製造方法を提供すること、および、これによって得られる硬化樹脂膜を提供することを、目的とする。
本発明の第1の側面によると硬化樹脂膜製造方法が提供される。この硬化樹脂膜製造方法は、第1工程および第2工程を含む。第1工程は、硬化樹脂形成用の成分(硬化性樹脂成分)を少なくとも含有する硬化性組成物、および、メディアン径30nm以下のナノダイヤモンド粒子と有機溶媒とを少なくとも含有するナノダイヤモンド有機溶媒分散液、を混合してナノダイヤモンド含有硬化性組成物を得るための工程である。第1工程の混合に供される硬化性組成物に含まれる硬化性樹脂成分は、硬化樹脂を形成し得る成分であり、例えば、加熱や光照射によって硬化を進行させ得るモノマー、オリゴマー、およびポリマー前駆体からなる群より選択される少なくとも一種を含む。硬化性組成物は、このような硬化性樹脂成分に加えて有機溶媒を含有してもよい。第1工程の混合に供されるナノダイヤモンド有機溶媒分散液は、メディアン径30nm以下のナノダイヤモンド粒子の分散する有機溶媒溶液である。このようなナノダイヤモンド有機溶媒分散液については、例えば、ナノダイヤモンド一次粒子がコロイド粒子として分散しているナノダイヤモンド水分散液における分散媒たる水を所望の有機溶媒に換える溶媒置換操作によって、用意することが可能である。当該ナノダイヤモンド有機溶媒分散液中のナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド一次粒子および/またはナノダイヤモンド二次粒子を含む。ナノダイヤモンド一次粒子とは、粒径10nm以下のナノダイヤモンドをいうものとする。そして、本製造方法の第2工程は、第1工程で得られたナノダイヤモンド含有硬化性組成物を基材に塗布した後に硬化させるための工程である。基材は、硬化樹脂膜形成面を提供した後に硬化樹脂膜から分離されるものであってもよいし、硬化樹脂膜による被覆を必要として硬化樹脂膜と一体化されるものであってもよい。第2工程を経ることによって、基材上に硬化樹脂膜が形成されることとなる。
本製造方法の第1工程では、上述のように、メディアン径30nm以下のナノダイヤモンド粒子の分散する有機溶媒溶液(ナノダイヤモンド有機溶媒分散液)が、硬化性樹脂成分含有の硬化性組成物と混合される。このとき、ナノダイヤモンド粒子の分散する有機溶媒溶液と、硬化性組成物における硬化性樹脂成分および存在する場合には有機溶媒とは、なじみやすくて相溶しやすい。そのため、当該第1工程での混合は、当該混合前にはメディアン径30nm以下の粒径にて有機溶媒溶液中に良好に分散していたナノダイヤモンド粒子について、その凝集を回避または抑制しつつ、ナノダイヤモンド含有硬化性組成物を調製するのに適する。このような第1工程の後の第2工程では、当該ナノダイヤモンド含有硬化性組成物から硬化樹脂膜が形成される。そのため、第2工程は、第1工程での混合前にはメディアン径30nm以下の粒径にて有機溶媒溶液中に良好に分散していたナノダイヤモンド粒子について、その凝集を回避または抑制した状態で硬化樹脂との複合化を図って硬化樹脂膜を形成するのに適する。また、ナノダイヤモンド含有硬化性組成物中のナノダイヤモンド粒子の分散の程度が高いほど、第2工程で当該組成物の硬化が進行する過程において、ナノダイヤモンド粒子の分布の不均一性に起因する当該組成物の表面張力の不均一性が抑制され、表面張力の当該不均一性に起因する当該組成物中の対流が抑制され、形成される硬化樹脂膜の表面での対流痕の発生が抑制されることとなる。以上のような第2工程は、表面粗さの小さな、即ち表面平滑性の高い、ナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜を得るのに適する。加えて、本発明者らは、硬化樹脂とナノダイヤモンド粒子との複合化の図られた硬化樹脂膜は、当該硬化樹脂からなる硬化樹脂膜よりも、表面粗さが低減される場合があることを見出した。例えば後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。この表面粗さの低減は、ナノダイヤモンド含有硬化性組成物の方がナノダイヤモンド粒子を含有しない硬化性組成物よりも、組成物の硬化が進行する過程において増粘して当該組成物中の対流が抑制され、その結果、形成される硬化樹脂膜の表面での凹凸の発生が抑制されるためであると考えられる。
以上のように、本発明の第1の側面に係る硬化樹脂膜製造方法は、高い表面平滑性を伴うナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜を得るのに適するのである。
加えて、本製造方法によって製造される硬化樹脂膜は、当該樹脂膜中で分散しているナノダイヤモンド粒子を含有するところ、当該ナノダイヤモンド粒子には、硬化樹脂膜中に存在する硬化樹脂の熱分解を抑制して当該硬化樹脂膜の耐熱性を向上させる効果がある。例えば、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。ナノダイヤモンド粒子は例えば400℃を超える高温環境下でも分解せずに耐熱性を示し得るものであるところ、そのようなナノダイヤモンド粒子をなすか或いはこれに含まれるナノダイヤモンド一次粒子の表面の少なくとも一部、即ち少なくとも{111}面には、ダイヤモンド本体をなすsp3構造炭素からの自発転移によってsp2構造炭素が生じているものと想定される。ナノダイヤモンド表面におけるこのsp2構造炭素の存在が、高温環境下の樹脂材料中に発生するラジカルの補足や安定化に寄与し得て、その結果、ラジカルの作用による硬化樹脂の熱分解が抑制されるものと、考えられる。
したがって、本発明の第1の側面に係る硬化樹脂膜製造方法は、高い表面平滑性を伴うのに加えて高い耐熱性を示すナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜を得るのに適する。
上述の第1工程を経て得られるナノダイヤモンド含有硬化性組成物における硬化性樹脂成分およびナノダイヤモンド粒子の含有量に対する当該ナノダイヤモンド粒子の含有量の割合は、好ましくは0.001〜20質量%である。ナノダイヤモンド粒子の当該含有量の割合が高いほど、形成される硬化樹脂膜において、ナノダイヤモンド粒子の存在に起因する上記の熱分解抑制効果は大きい傾向にある。硬化樹脂膜において絶縁性等の機能を適切に発現させるという観点からは、ナノダイヤモンド粒子の当該含有量の割合は20質量%以下であるのが好ましい場合がある。
上記の有機溶媒は、好ましくは極性有機溶媒である。極性有機溶媒は、ナノダイヤモンド粒子を溶解・分散させる分散媒として好適である。極性有機溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2-メトキシエタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、シクロヘキサノン、酢酸テトラヒドロフルフリル、および炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
本発明の第2の側面によると硬化樹脂膜が提供される。この硬化樹脂膜は、硬化樹脂およびナノダイヤモンド粒子を含み、且つ、表面粗さ(算術平均粗さ)Saが10nm以下の膜表面を有する。硬化樹脂は、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む。ナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド一次粒子および/またはナノダイヤモンド二次粒子を含む。ナノダイヤモンド粒子を含有しつつ膜表面の表面粗さSaが10nm以下の表面平滑性を実現された硬化樹脂膜は、本発明における上述の第1の側面に係る硬化樹脂膜製造方法によって適切に製造することが可能である。表面粗さ(算術平均粗さ)Saは、光干渉法を利用した非接触式表面計測システムを使用して部材の表面形状を測定することにより、求めることができる。
加えて、本硬化樹脂膜中で分散しているナノダイヤモンド粒子には、硬化樹脂膜中に存在する硬化樹脂の熱分解を抑制して当該硬化樹脂膜の耐熱性を向上させる効果がある。例えば、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。上述のように、ナノダイヤモンド粒子は例えば400℃を超える高温環境下でも分解せずに耐熱性を示し得るものであるところ、そのようなナノダイヤモンド粒子をなすか或いはこれに含まれるナノダイヤモンド一次粒子の表面の少なくとも一部、即ち少なくとも{111}面には、ダイヤモンド本体をなすsp3構造炭素からの自発転移によってsp2構造炭素が生じているものと想定される。ナノダイヤモンド表面におけるこのsp2構造炭素の存在が、高温環境下の樹脂材料中に発生するラジカルの補足や安定化に寄与し得て、その結果、ラジカルの作用による硬化樹脂の熱分解が抑制されるものと考えられる。
したがって、本発明の第2の側面に係る硬化樹脂膜は、高い表面平滑性とともに高い耐熱性を実現するのに適する。
本硬化樹脂膜において、硬化樹脂およびナノダイヤモンド粒子の含有量に対する当該ナノダイヤモンド粒子の含有量の割合は、好ましくは0.001〜20質量%である。ナノダイヤモンド粒子の当該含有量の割合が高いほど、硬化樹脂膜において、ナノダイヤモンド粒子の存在に起因する上記の熱分解抑制効果は大きい傾向にある。硬化樹脂膜において絶縁性等の機能を適切に発現させるという観点からは、ナノダイヤモンド粒子の当該含有量の割合は20質量%以下であるのが好ましい場合がある。
本発明の第1および第2の側面において、ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド粒子(爆轟法ナノダイヤモンド粒子)である。爆轟法によると、一次粒子の粒径が10nm以下のナノダイヤモンドを適切に生じさせることが可能である。
本発明に係る硬化樹脂膜製造方法の一実施形態の工程図である。 図1に示す混合工程を経て得られる硬化性組成物の拡大模式図である。 本発明に係る硬化樹脂膜の一実施形態であって、図1に示す膜体形成工程を経て得られる硬化樹脂膜の、拡大断面模式図である。 実施例1および比較例2の樹脂組成物についての熱重量測定の結果を表すグラフである。
図1は、本発明に係る硬化樹脂膜製造方法の一実施形態の工程図である。本製造方法は、硬化樹脂とナノダイヤモンド粒子との複合化の図られたナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜を製造するための方法であって、混合工程S1および膜体形成工程S2を少なくとも含む。
混合工程S1は、硬化樹脂形成用の成分を含有する硬化性組成物とナノダイヤモンド有機溶媒分散液とを混合して、図2に示すようなナノダイヤモンド含有硬化性組成物たるND含有硬化性組成物10を得るための工程である。ND含有硬化性組成物10は、硬化性樹脂成分11と、ナノダイヤモンド粒子たるND粒子12と、溶媒13とを少なくとも含有する。膜体形成工程S2は、混合工程S1で得られたND含有硬化性組成物10を基材に塗布した後に硬化させるための工程である。膜体形成工程S2を経ることによって、本発明に係る硬化樹脂膜の一実施形態であって図3に示すような硬化樹脂膜20が、形成されることとなる。硬化樹脂膜20は、硬化樹脂21およびND粒子12を少なくとも含有する。
混合工程S1の混合に供される上述の硬化性組成物は、硬化樹脂形成用の成分たる硬化性樹脂成分11を含有し、また、本実施形態では有機溶媒を含有する。
硬化性樹脂成分11は、ND含有硬化性組成物10から形成される硬化樹脂膜20においてマトリックス樹脂をなす硬化樹脂21を形成するためのものである。硬化樹脂21は、例えば、加熱によって硬化する熱硬化性樹脂や、紫外線等の光の照射によって硬化する光硬化性樹脂である。硬化樹脂21は、好ましくは、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む。当該樹脂材料を採用することにより、本製造方法によって製造される硬化樹脂膜20において充分な硬度を実現することが可能となる。
硬化性樹脂成分11は、具体的には、硬化樹脂21を形成するためのモノマー、オリゴマー、およびポリマー前駆体からなる群より選択される少なくとも一種を含む(図2では、硬化性樹脂成分11を模式的に表す)。硬化樹脂21としてポリイミド樹脂を採用する場合、硬化性樹脂成分11は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン類とを反応させて得られるポリアミック酸をポリマー前駆体ないしポリイミド前駆体として含む。ポリアミック酸は、繰り返し単位内で隣接するアミド基とカルボキシ基とが反応してイミド基含有閉環構造を形成することによって、ポリイミド樹脂を形成することとなる。テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、および2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が挙げられる。ジアミン類としては、例えば、オキサジアニリン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ジアミノベンゼン、および2,5-ジアミノトルエンが挙げられる。
混合工程S1の混合に供される上述の硬化性組成物における硬化性樹脂成分11の含有量は、例えば2〜30質量%である。
混合工程S1の混合に供される上述の硬化性組成物に含まれる有機溶媒は、硬化性樹脂成分11の種類や組成に応じて選択される。当該有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、およびN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。
混合工程S1の混合に供されるナノダイヤモンド(ND)有機溶媒分散液は、ND粒子12の分散する有機溶媒溶液であり、ND粒子12および有機溶媒を少なくとも含有する。ND粒子12は、ナノダイヤモンド一次粒子および/またはナノダイヤモンド二次粒子を含む。ND有機溶媒分散液中のND粒子12のメディアン径(粒径D50)は、30nm以下であり、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、より好ましくは13nm以下、より好ましくは10nm以下である。ND粒子12の粒径D50は、例えば動的光散乱法によって測定することが可能である。また、ND有機溶媒分散液におけるND粒子12の含有量は、例えば0.5〜4質量%である。
ND粒子12は、好ましくは、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド粒子(爆轟法ナノダイヤモンド粒子)である。爆轟法によると、一次粒子の粒径が10nm以下のナノダイヤモンドを適切に生じさせることが可能である。爆轟法ナノダイヤモンド粒子については、例えば次のようにして得ることができる。
まず、爆薬を密閉容器中で爆発させる。その際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってナノダイヤモンドが生成する。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には、金属酸化物が含まれやすい。この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器等に由来するFe,Co,Ni等の酸化物である。例えば水溶媒中で所定の強酸を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる(酸処理)。この酸処理に用いられる強酸としては、鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。また、爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には、グラファイト(黒鉛)が含まれている。このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、例えば水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物からグラファイトを除去することができる(酸化処理)。この酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩、並びに、過酸化水素が挙げられる。爆轟法ナノダイヤモンド(爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)は、以上のような酸処理および酸化処理を経て精製された後であっても、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとる。この凝着体を所定の分散媒に分散させて得られる懸濁液を解砕処理に付すことによって、粒径が一桁ナノメートルのナノダイヤモンドを得ることができる。分散媒としては、ナノダイヤモンドが溶解性を示し得る溶媒が好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、およびN-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。解砕処理は、例えば、高剪断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、またはコロイドミルを使用して行うことができる。また、解砕処理の後、ナノダイヤモンドの分散している懸濁液の液量を必要に応じて低減することによって、所定濃度のナノダイヤモンド分散液を得ることができる。或いは、解砕処理の後、ナノダイヤモンドの分散している懸濁液から必要に応じて液分を除去することによって、ナノダイヤモンドの粉体を得ることができる。これら液量低減や液分除去は、例えばエバポレーターや噴霧乾燥装置を使用して行うことができる。
混合工程S1の混合に供されるND有機溶媒分散液に含まれる有機溶媒は、好ましくは極性有機溶媒である。極性有機溶媒は、ND粒子12を溶解・分散させる分散媒として好適である。極性有機溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2-メトキシエタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、シクロヘキサノン、酢酸テトラヒドロフルフリル、および炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
ND粒子12と有機溶媒とを少なくとも含有する上述のND有機溶媒分散液については、例えば、ナノダイヤモンド一次粒子がコロイド粒子として分散しているナノダイヤモンド水分散液における分散媒たる水を所望の有機溶媒に換える溶媒置換操作によって、用意することが可能である。例えば、ナノダイヤモンド水分散液と有機溶媒とを混合した後、当該混合液から蒸留操作によって水分を留去することによって、溶媒置換を進めることができる。
混合工程S1を経て得られるND含有硬化性組成物10は、上述のように、硬化性樹脂成分11と、ナノダイヤモンド粒子たるND粒子12と、溶媒13とを少なくとも含有するところ、溶媒13は、例えば、混合工程S1の混合に供される上述の硬化性組成物中の有機溶媒(第1有機溶媒)とND有機溶媒分散液中の有機溶媒(第2有機溶媒)とに由来する。混合工程S1での混合中にND粒子12の凝集を回避・抑制するという観点からは、これら第1および第2有機溶媒は、同じものであるのが好ましい。
ND含有硬化性組成物10における硬化性樹脂成分11およびND粒子12の合計含有量に対するND粒子12の含有量の割合は、好ましくは0.001〜20質量%である。ND粒子12の当該含有量の割合が高いほど、形成される硬化樹脂膜20において、ND粒子12の存在に起因する機械的強度向上効果や、熱伝導性向上効果、後述の熱分解抑制効果等の効果は大きい傾向にあるところ、ND粒子12の当該含有量の割合の下限は、より好ましくは0.01質量%、より好ましくは1質量%である。ND含有硬化性組成物10から形成される硬化樹脂膜20において硬化樹脂21による樹脂特性を適切に発現させるという観点からは、ND粒子12の当該含有量の割合は20質量%以下であるのが好ましい場合がある。また、形成される硬化樹脂膜20中のND粒子12の存在に起因する効果をより少量のND粒子12で享受するという観点からは、ND粒子12の当該含有量の割合の上限は、より好ましくは10質量%、より好ましくは8質量%、より好ましくは6質量%である。
ND含有硬化性組成物10は、硬化性樹脂成分11、ND粒子12、および溶媒13に加えて他の成分を含有してもよい。そのような他の成分としては、例えば、難燃剤、ガラス繊維、炭素繊維、帯電防止剤、滑剤、および着色剤が挙げられる。
混合工程S1の後の膜体形成工程S2では、以上のようなND含有硬化性組成物10を基材に塗布した後に硬化させる。例えば、ND含有硬化性組成物10を基材の上に塗布した後、加熱等によってND含有硬化性組成物10から溶媒13を蒸散等させて基材上に半硬化膜を生じさせ、そして、更なる加熱等によって半硬化膜を本硬化させる。基材は、硬化樹脂膜形成面を提供した後に硬化樹脂膜20から分離されるものであってもよいし、硬化樹脂膜20による被覆を必要として硬化樹脂膜20と一体化されるものであってもよい。
以上のようにして、硬化樹脂21とND粒子12との複合化の図られたナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜たる硬化樹脂膜20を製造することができる。
本製造方法における上述の混合工程S1では、メディアン径30nm以下のND粒子12が分散する有機溶媒溶液(ナノダイヤモンド有機溶媒分散液)が、硬化性樹脂成分11含有の硬化性組成物と混合される。このとき、ND粒子12の分散する有機溶媒溶液と、当該硬化性組成物における硬化性樹脂成分11および有機溶媒(上記の第2有機溶媒)とは、なじみやすくて相溶しやすい。そのため、当該混合工程S1での混合は、当該混合前にはメディアン径30nm以下の粒径にて有機溶媒溶液中に良好に分散していたND粒子12について、その凝集を回避または抑制しつつ、ND含有硬化性組成物10を調製するのに適する。このような混合工程S1の後の上述の膜体形成工程S2では、当該ND含有硬化性組成物10から硬化樹脂膜20が形成される。そのため、膜体形成工程S2は、混合工程S1での混合前にはメディアン径30nm以下の粒径にて有機溶媒溶液中に良好に分散していたND粒子12について、その凝集を回避または抑制した状態で硬化樹脂21との複合化を図って硬化樹脂膜20を形成するのに適する。また、ND含有硬化性組成物10中のND粒子12の分散の程度が高いほど、膜体形成工程S2で当該組成物の硬化が進行する過程において、ND粒子12の分布の不均一性に起因する当該組成物の表面張力の不均一性が抑制され、表面張力の当該不均一性に起因する当該組成物中の対流が抑制され、形成される硬化樹脂膜20の表面での対流痕の発生が抑制されることとなる。以上のような膜体形成工程S2は、表面粗さの小さな、即ち表面平滑性の高い、硬化樹脂膜20を得るのに適する。加えて、本発明者らは、硬化樹脂21とND粒子12との複合化の図られた硬化樹脂膜20は、当該硬化樹脂21からなる硬化樹脂膜よりも、表面粗さが低減される場合があることを見出した。例えば後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。この表面粗さの低減は、ND含有硬化性組成物10の方がND粒子12を含有しない硬化性組成物よりも、膜体形成工程にて組成物の硬化が進行する過程において増粘して当該組成物中の対流が抑制され、その結果、形成される硬化樹脂膜20の表面での凹凸の発生が抑制されるためであると考えられる。
以上のように、本製造方法は、高い表面平滑性を伴うナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜を得るのに適する。本製造方法によって得られるナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜の有する膜表面の表面粗さ(算術平均粗さ)Saは、例えば10nm以下、好ましくは7nm以下、より好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下、より好ましくは2nm以下である。混合工程S1の混合に供されるND有機溶媒分散液中のND粒子12のメディアン径(粒径D50)は、上述のように、30nm以下であり、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、より好ましくは13nm以下、より好ましくは10nm以下であるところ、このような構成は、高い表面平滑性を伴うナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜を得るのに適する。
加えて、本製造方法によって製造される硬化樹脂膜20は、当該樹脂膜中で分散しているND粒子12を含有するところ、当該ND粒子12には、硬化樹脂膜20中に存在する硬化樹脂21の熱分解を抑制して当該硬化樹脂膜20の耐熱性を向上させる効果がある。例えば、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。ND粒子12は例えば400℃を超える高温環境下でも分解せずに耐熱性を示し得るものであるところ、そのようなND粒子12をなすか或いはこれに含まれるナノダイヤモンド一次粒子の表面の少なくとも一部、即ち少なくとも{111}面には、ダイヤモンド本体をなすsp3構造炭素からの自発転移によってsp2構造炭素が生じているものと想定される。ナノダイヤモンド表面におけるこのsp2構造炭素の存在が、高温環境下の樹脂材料中に発生するラジカルの補足や安定化に寄与し得て、その結果、ラジカルの作用による硬化樹脂21の熱分解が抑制されるものと、考えられる。
したがって、上述の硬化樹脂膜製造方法は、高い表面平滑性を伴うのに加えて高い耐熱性を示すナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜を得るのに適する。
図3は、本発明に係る硬化樹脂膜の一実施形態たる硬化樹脂膜20の拡大断面模式図である。硬化樹脂膜20は、上述の硬化樹脂21およびND粒子12を少なくとも含有し、且つ、表面粗さ(算術平均粗さ)Saが10nm以下、好ましくは7nm以下、より好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下、より好ましくは2nm以下の膜表面20aを有する。
硬化樹脂膜20において、硬化樹脂21およびND粒子12の合計含有量に対するND粒子12の含有量の割合は、好ましくは0.001〜20質量%である。ND粒子12の当該含有量の割合が高いほど、硬化樹脂膜20において、ナノダイヤモンド粒子たるND粒子12の存在に起因する機械的強度向上効果や、熱伝導性向上効果、後述の熱分解抑制効果等の効果は大きい傾向にあるところ、ND粒子12の当該含有量の割合の下限は、より好ましくは0.01質量%、より好ましくは1質量%である。硬化樹脂膜20において硬化樹脂21による樹脂特性を適切に発現させるという観点からは、ND粒子12の当該含有量の割合は20質量%以下であるのが好ましい場合がある。また、硬化樹脂膜20中のND粒子12の存在に起因する効果をより少量のND粒子12で享受するという観点からは、ND粒子12の当該含有量の割合の上限は、より好ましくは10質量%、より好ましくは8質量%、より好ましくは6質量%である。
硬化樹脂膜20の厚さは例えば1〜50μmであり、好ましくは5〜30μm、より好ましくは5〜20μmである。このような厚さの硬化樹脂膜20について、そのヘーズ値は、例えば4%以下であり、好ましくは3%以下、より2%以下である。硬化樹脂膜20に含まれるND粒子12の分散の程度が高いほど(即ち凝集の程度が低いほど)、硬化樹脂膜20についてヘーズ値で示される透明性は高い傾向にある。
硬化樹脂膜20は、硬化樹脂21およびND粒子12に加えて他の成分を含有してもよい。そのような他の成分としては、例えば、難燃剤、ガラス繊維、炭素繊維、帯電防止剤、滑剤、および着色剤が挙げられる。
ND粒子12を含有しつつ膜表面20aの表面粗さSaが10nm以下の表面平滑性を伴う以上のような硬化樹脂膜20は、例えば上述の硬化樹脂膜製造方法によって適切に製造することが可能である。
また、硬化樹脂膜20中で分散しているND粒子12には、硬化樹脂膜20中に存在する硬化樹脂21の熱分解を抑制して当該硬化樹脂膜20の耐熱性を向上させる効果がある。例えば、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。ND粒子12は例えば400℃を超える高温環境下でも分解せずに耐熱性を示し得るものであるところ、そのようなND粒子12をなすか或いはこれに含まれるナノダイヤモンド一次粒子の表面の少なくとも一部、即ち少なくとも{111}面には、ダイヤモンド本体をなすsp3構造炭素からの自発転移によってsp2構造炭素が生じているものと想定される。ナノダイヤモンド表面におけるこのsp2構造炭素の存在が、高温環境下の樹脂材料中に発生するラジカルの補足や安定化に寄与し得て、その結果、ラジカルの作用による硬化樹脂21の熱分解が抑制されるものと、考えられる。
したがって、硬化樹脂膜20は、高い表面平滑性とともに高い耐熱性を実現するのに適する。このような硬化樹脂膜20は、例えば、フレキシブルプリント配線板の絶縁層用の硬化樹脂膜や、チップオンフィルム実装技術における絶縁基板用の硬化樹脂膜として利用することが可能である。また、硬化樹脂膜20は、各種の光学フィルム材に適用することが可能である。加えて、硬化樹脂膜20は、耐熱性と透明性を兼ね備えた耐熱透明フィルム材に適用することも可能である。耐熱透明フィルム材の用途としては、例えば、タッチパネル用透明導電性基材、フレキシブル回路基板およびその工程紙、フレキシブルディスプレイ用基材、有機EL基材、およびLED照明基材が挙げられる。
〔実施例1〕
以下のような混合工程および膜体形成工程を経て、実施例1の硬化樹脂膜を作製した。
混合工程では、ポリイミド前駆体たるポリアミック酸を含有するポリアミック酸溶液(商品名「Uイミド ワニス CR」,ユニチカ株式会社製)5gと、ナノダイヤモンド有機溶媒分散液たるナノダイヤモンドNMP分散液((商品名「Vox D in NMP」,Carbodeon社製)2.4gとを、混合した。混合に供したポリアミック酸溶液について、溶媒はN-メチル-2-ピロリドンであり、ポリアミック酸濃度ないしポリイミド換算濃度は18質量%であり、粘度は5Pa・sである。混合に供したナノダイヤモンドNMP分散液について、溶媒はN-メチル-2-ピロリドンであり、固形分濃度ないしナノダイヤモンド濃度は2質量%であり、ナノダイヤモンド粒子の粒径D50(メディアン径)は12.4nmである。本工程では、ポリアミック酸溶液を撹拌しつつこれにナノダイヤモンドNMP分散液を滴下操作によって添加し、ポリアミック酸とナノダイヤモンド粒子との合計含有量に対するナノダイヤモンド粒子の含有量の割合が5質量%となる量比で、ポリアミック酸溶液とナノダイヤモンドNMP分散液とを混合した。以上のようにして、ポリイミド前駆体たるポリアミック酸と、ナノダイヤモンド粒子と、溶媒たるNMPとを含有する、ナノダイヤモンド含有硬化性組成物(硬化性組成物E1')を得た。
膜体形成工程では、上述のようにして得られた硬化性組成物E1'から、硬化樹脂膜を形成した。まず、スキージを使用して、ガラス板上に所定の厚さで硬化性組成物E1'を塗布した。そして、硬化性組成物E1'の塗膜の形成された当該ガラス板をマッフル炉内に入れて窒素雰囲気下で焼成処理した。具体的には、まず、130℃で10分間の加熱を行い(半硬化膜形成工程)、次に、130℃から340℃に120分間かけて昇温し、その後、340℃で60分間の加熱を行った(本硬化工程)。半硬化膜形成工程では、主に、溶媒たるNMPが蒸散される。本硬化工程では、主に、ポリアミック酸どうしの反応が進行してポリイミド樹脂が形成される。以上のようにして、ポリイミド樹脂およびナノダイヤモンド粒子を含む実施例1の硬化樹脂膜(硬化樹脂膜E1,厚さ20μm)を作製した。
〔比較例1〕
実施例1で用いたナノダイヤモンドNMP分散液2.4gに代えて別のナノダイヤモンド含有溶液2.4gを用いた以外は実施例1の混合工程と同様にして、混合工程を行った。混合に供したナノダイヤモンド含有溶液は、ナノダイヤモンド粉末(商品名「Vox P」,Carbodeon社製)とN-メチル-2-ピロリドン(キシダ化学製)とを混合して得られたスラリーに対して超音波ホモジナイザーを使用して2時間の超音波破砕処理を施したものである。このナノダイヤモンド含有溶液について、溶媒はN-メチル-2-ピロリドンであり、固形分濃度ないしナノダイヤモンド濃度は2質量%であり、ナノダイヤモンド粒子の粒径D50(メディアン径)は117nmである。本工程では、ポリアミック酸溶液を撹拌しつつこれにナノダイヤモンド含有溶液を滴下操作によって添加し、ポリアミック酸とナノダイヤモンド粒子との合計含有量に対するナノダイヤモンド粒子の含有量の割合が5質量%となる量比で、ポリアミック酸溶液とナノダイヤモンド含有溶液とを混合した。以上のようにして、ナノダイヤモンド含有硬化性組成物(硬化性組成物C1')を得た。そして、硬化性組成物E1'に代えて硬化性組成物C1'を用いること以外は実施例1の膜体形成工程と同様にして、膜体形成工程を行った。以上のようにして、ポリイミド樹脂およびナノダイヤモンド粒子を含む比較例1の硬化樹脂膜(硬化樹脂膜C1,厚さ20μm)を作製した。本比較例における上述のナノダイヤモンド含有溶液に含まれるナノダイヤモンド粒子に関する上記粒径D50は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した値である。
〔比較例2〕
実施例1で用いたナノダイヤモンドNMP分散液2.4gに代えてN-メチル-2-ピロリドン(キシダ化学製)2.4gを用いたこと以外は実施例1の混合工程と同様にして、混合工程を行った。これにより、ナノダイヤモンド粒子を含有しない硬化性組成物(硬化性組成物C2')を得た。そして、硬化性組成物E1'に代えて硬化性組成物C2'を用いること以外は実施例1の膜体形成工程と同様にして、膜体形成工程を行った。以上のようにして、ポリイミド樹脂よりなる比較例2の硬化樹脂膜(硬化樹脂膜C2,厚さ20μm)を作製した。
〈全光線透過率とヘーズ値〉
実施例1および比較例1,2の各硬化樹脂膜について、日本電色工業株式会社製の「ヘーズメーター 300A」を使用して、全光線透過率(%)およびヘーズ値(%)を測定した。全光線透過率の測定は、JIS K 7105に準拠して行った。ヘーズ値の測定は、JIS K 7136に準拠して行った。その結果を表1に掲げる。
〈対流痕〉
実施例1および比較例1,2の各硬化樹脂膜について、膜表面における対流痕の有無を目視で観察した。その結果を表1に掲げる。
〈表面粗さSa〉
実施例1および比較例2の各硬化樹脂膜について、膜表面の表面粗さ(算術平均粗さ)Saを求めた。具体的には、光干渉法を用いた非接触式表面形状計測システムVertScan2.0(株式会社菱化システム製)を使用して所定の計測領域(2500μm×1880μm)における硬化樹脂膜の表面形状を計測し、計測結果に基づいて表面粗さ(算術平均粗さ)Saを算出した。その結果を表1に掲げる。一方、比較例1の硬化樹脂膜C1の膜表面については、目視で確認できるほど大きな凹凸が観測され、実施例1の硬化樹脂膜E1および比較例2の各硬化樹脂膜の膜表面よりも著しく大きな表面粗さを有することを確認している。
〔熱重量測定〕
以上のようにして作製された実施例1,比較例2の各硬化樹脂膜について、熱重量測定装置(商品名「TG-DTA6300」,エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、空気雰囲気下にて460℃で保持する間の重量減少量を測定した。本測定においては、460℃で10分間保持された時点での測定対象の重量を基準重量(初期重量)とした。その結果を、図4のグラフにおいて線E1(実施例1)および線C2(比較例2)をもって表す。図4のグラフにおいて、横軸は、測定対象の460℃での保持時間たる時間(分)を表し、縦軸は、基準重量からの重量減少率としてのTG(%)を表す。実施例1の硬化樹脂膜E1が460℃で60分間保持された時点、即ち、実施例1の硬化樹脂膜E1が基準重量に至った時点から460℃で50分間保持された時点での基準重量からの重量減少率は、0.35%であった。また、比較例2の硬化樹脂膜C2が460℃で60分間保持された時点、即ち、比較例2の硬化樹脂膜C2が基準重量に至った時点から460℃で50分間保持された時点での基準重量からの重量減少率は、4.26%であった。
[評価]
実施例1の硬化樹脂膜E1のヘーズ値と比較例1の硬化樹脂膜C1のヘーズ値との比較から、ナノダイヤモンド含有硬化樹脂膜形成用の硬化性組成物を調製するうえでメディアン径30nm以下のナノダイヤモンド粒子の分散するナノダイヤモンドNMP分散液が用いられた実施例1では、ナノダイヤモンド粒子の高分散状態が維持された状態で硬化樹脂膜E1が作製されたと評価することができる。実施例1の硬化樹脂膜E1において対流痕が観察されなかったのは、実施例1ではナノダイヤモンド粒子の高分散状態が維持された状態で膜体形成工程が行われたために、当該膜体形成工程にて組成物塗膜中の対流が抑制されたためである。これに対し、比較例1の硬化樹脂膜C1において対流痕が観察されたのは、比較例1ではナノダイヤモンド粒子の分散の程度が低い状態で膜体形成工程が行われたために、ナノダイヤモンド粒子の分布の不均一性が組成物の表面張力の不均一性を招き、当該膜体形成工程にて表面張力の不均一性に起因して組成物塗膜中に対流が発生したためであると考えられる。
実施例1の硬化樹脂膜E1の表面粗さSaと比較例2の硬化樹脂膜C2の表面粗さSaとの比較から、ナノダイヤモンド粒子を含有する硬化樹脂膜E1では、ナノダイヤモンド粒子を含有しない比較例2の硬化樹脂膜C2よりも、高い表面平滑性が実現されていることが解る。硬化樹脂膜E1を形成するためのナノダイヤモンド含有硬化性組成物の方が、硬化樹脂膜C2を形成するためのナノダイヤモンド非含有硬化性組成物よりも、膜体形成工程S2にて組成物の硬化が進行する過程において増粘して当該組成物中の対流が抑制され、その結果、形成される硬化樹脂膜の表面での凹凸の発生が抑制されるものと、考えられる。
図4のグラフに示される結果から、ナノダイヤモンド粒子が内部に分散する実施例1の硬化樹脂膜E1は、ナノダイヤモンド粒子を含有しない比較例2の硬化樹脂膜C2よりも、熱分解が抑制されていること、即ち耐熱性が高いことが、解る。
Figure 0006734124
S1 混合工程
S2 膜体形成工程
10 ND含有硬化性組成物(ナノダイヤモンド含有硬化性組成物)
11 硬化性樹脂成分
12 ND粒子(ナノダイヤモンド粒子)
13 溶媒
20 硬化樹脂膜
21 硬化樹脂

Claims (8)

  1. 硬化性樹脂成分を含有する硬化性組成物、および、メディアン径15nm以下のナノダイヤモンド粒子と有機溶媒を含有するナノダイヤモンド有機溶媒分散液、を混合してナノダイヤモンド含有硬化性組成物を得るための工程と、
    前記ナノダイヤモンド含有硬化性組成物を基材に塗布した後に硬化させるための工程と、を含む硬化樹脂膜製造方法であって、
    前記有機溶媒は、極性有機溶媒であり、
    前記極性有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、シクロヘキサノン、酢酸テトラヒドロフルフリル、および炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、
    前記ナノダイヤモンド含有硬化性組成物における前記硬化性樹脂成分および前記ナノダイヤモンド粒子の合計含有量に対する当該ナノダイヤモンド粒子の含有量の割合は、0.001〜20質量%である、硬化樹脂膜製造方法
  2. 前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、請求項に記載の硬化樹脂膜製造方法。
  3. 前記極性有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドンを含む、請求項1または2に記載の硬化樹脂膜製造方法。
  4. 前記硬化性樹脂成分を含有する硬化性組成物は、有機溶媒を含み、
    前記有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、およびN,N−ジメチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の硬化樹脂膜製造方法。
  5. 硬化性樹脂成分は、ポリアミック酸を含む、請求項1から4のいずれか一つに記載の硬化樹脂膜製造方法。
  6. 硬化樹脂およびナノダイヤモンド粒子を含み、且つ、表面粗さSaが10nm以下の膜表面を有する、硬化樹脂膜であって、
    前記硬化樹脂は、ポリイミド樹脂を含み、
    前記硬化樹脂および前記ナノダイヤモンド粒子の合計含有量に対する当該ナノダイヤモンド粒子の含有量の割合は、0.001〜20質量%である、硬化樹脂膜
  7. 前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、請求項に記載の硬化樹脂膜。
  8. 硬化樹脂膜の表面粗さSaは、2nm以下である、請求項6または7に記載の硬化樹脂膜。
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