(第1実施形態)
本実施形態では、カーボンナノチューブによって熱伝導性を高めつつ、再利用をしてもその熱伝導性が劣化し難い放熱シートについて説明する。
図1〜図5は、本実施形態に係る放熱シートを備えた電子装置の製造途中の断面図である。
まず、図1(a)に示すように、基板20としてシリコン基板を用意し、その基板20の表面を熱酸化することにより下地膜21として厚さが300nm程度の酸化シリコン膜を形成する。
基板20はシリコン基板に限定されず、アルミナ(サファイア)基板、酸化マグネシウム基板、及びガラス基板のいずれかを基板20として用いてもよい。
また、下地膜21も酸化シリコン膜に限定されない。例えば、酸化アルミニウム膜や窒化シリコン膜も下地膜21として形成し得る。
次に、図1(b)に示すように、下地膜21の上にスパッタ法でアルミニウム膜を10nm程度の厚さに形成し、そのアルミニウム膜を下地金属膜22とする。
下地金属膜22の材料としては、アルミニウムの他に、モリブデン、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、タンタル、タングステン、銅、金、白金、パラジウム、チタンシリサイド、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び窒化チタンがある。更に、これらの材料のいずれかを含む合金膜を下地金属膜22として形成してもよい。
次いで、下地金属膜22の上にスパッタ法で鉄膜を2.5nm程度の厚さに形成し、その鉄膜を触媒金属膜23とする。
触媒金属膜23の材料は鉄に限定されない。触媒金属膜23は、コバルト、ニッケル、金、銀、及び白金、又はこれらの合金から形成し得る。
更に、触媒金属膜23に代えて、触媒金属膜23と同一の材料を含む金属微粒子を下地金属膜22の上に付着させてもよい。この場合、金属微粒子は、微分型静電分級器等によって予め直径が約3.8nm程度の直径のもののみが収集されて下地金属膜22の上に供給される。
続いて、図2(a)に示すように、触媒金属膜23の触媒作用を利用してホットフィラメントCVD(Chemical Vapor Deposition)法により複数のカーボンナノチューブ25を成長させる。
カーボンナノチューブ25の成長条件は特に限定されない。この例では、炭素の原料ガスとしてアセチレンガスを用い、そのアセチレンガスとアルゴンガスとの混合ガスを不図示の成長室に供給する。
その混合ガスの成長室内での圧力は1kPaであり、アセチレンガスとアルゴンガスとの分圧比は例えば1:9程度である。また、ホットフィラメントの温度は1000℃程度とし、成長時間は20分程度とする。
なお、下地金属膜22と触媒金属膜23は、成長室内に原料ガスが導入された際に凝縮して粒状の金属粒24となる。そして、カーボンナノチューブ25の一端25aがその金属粒24に固着された状態で、下地膜21の作用によって他端25bが基板20の法線方向に沿って成長する。
この成長条件によれば、カーボンナノチューブ25の面密度は約1×1011本/cm2となり、各カーボンナノチューブ25の直径は4nm〜8nmで平均直径は約6nmとなる。また、各カーボンナノチューブ25の成長レートは4μm/minとなる。
なお、各カーボンナノチューブ25においては、その中心軸から外側に向かって単層のグラフェンシートが3層〜6層程度積み重なり、その層数の平均値は4層程度となる。このように多層のグラフェンシートを積層してなるカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブとも呼ばれる。
更に、カーボンナノチューブ25の成膜方法は上記のホットフィラメントCVD法に限定されず、熱CVD法やリモートプラズマCVD法であってもよい。また、アセチレンに代えてメタン若しくはエチレン等の炭化水素類、又はエタノール若しくはメタノール等のアルコール類を炭素の原料ガスとしてもよい。
次いで、図2(b)に示すように、基板20からカーボンナノチューブ25の一端25aを機械的に剥離することにより、複数のカーボンナノチューブ25が厚さ方向Dに沿って延びたシート29を得る。
そのシート29の厚さは、図2(b)の工程におけるカーボンナノチューブ25の成長時間により制御することができる。
次に、図3(a)に示すように、不図示の治具でシート29をその上下から挟み、その治具を超高温黒鉛炉に入れてヒータで各カーボンナノチューブ25に対して熱処理を行うことにより、各カーボンナノチューブ25の結晶性を高める。なお、シート29と治具との間にカーボンシートを配してもよい。
その熱処理の雰囲気は特に限定されないが、この例では真空ポンプにより超高温黒鉛炉内の残留ガスを予め排出した後、その超高温黒鉛炉内にアルゴンガスを充填することにより、アルゴンガスの雰囲気中で熱処理を行う。
これにより、炉内のヒータからの輻射熱だけでなく、高温のアルゴンガスによってもカーボンナノチューブ25が加熱されることになり、カーボンナノチューブ25を効率的に加熱することができる。
また、この熱処理の加熱プロファイルも特に限定されない。
図6は、加熱プロファイルの一例を示すグラフである。
図6に示すように、本実施形態では、9時間程度の長さの第1の期間T1において2℃/分の昇温速度で室温から2400℃程度の温度までカーボンナノチューブ25を昇温する。
そして、第2の期間T2においてカーボンナノチューブ25を2400℃程度の一定温度に1時間〜3時間程度維持する。以下では、この一定温度のことを熱処理温度とも言う。
その後に、9時間程度の長さの第3の期間T3において2℃/分の降温速度でカーボンナノチューブ25の温度を室温まで下げる。
次に、図3(b)に示すように、二つのプレス板30の間にシート29を入れ、これらのプレス板30でシート29をその上下から1MPa程度の圧力で押圧する。
これにより、図3(a)の熱処理で発生したシート29のうねりが平坦化され、シート29の平坦性が良好となる。
次に、図4に示すように、上記のシート29から第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33を切り出す。
図7(a)〜(c)は、第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33の平面図であって、前述の図4における各カーボンナノチューブシート31〜33の断面図は、図7(a)〜(c)のI-I線に沿う断面図に相当する。
図7(a)、(c)に示すように、第1のカーボンナノチューブシート31と第3のカーボンナノチューブシート33は、平面視で一辺の長さが10mm〜40mm程度の概略正方形状である。
一方、図7(b)に示すように、第2のカーボンナノチューブシート32は、二つの長方形状の周縁部32aと中央部32bとを有する。
その中央部32bには開口32xが形成される。開口32xにはカーボンナノチューブ25が存在しないため、中央部32bは周縁部32aよりも柔軟となる。
また、各カーボンナノチューブシート31〜33は一枚のシート29から切り出されてもよいし、各カーボンナノチューブシート31〜33毎にシート29を作製し、各シート29から各カーボンナノチューブシート31〜33を切り出してもよい。
次に、図5に示す工程について説明する。
まず、電子部品36が搭載された回路基板35を用意する。なお、電子部品36は、例えばCPUであって、はんだバンプ37を介して回路基板35に接続される。
また、電子部品36の内部に熱が籠るのを防止するために、電子部品36は樹脂封止されておらず、シリコン基板等の半導体基板が電子部品36の上面36xに露出している。なお、熱の籠りが問題にならない場合には、半導体基板を樹脂封止してなる電子部品36を用いてもよい。
そして、電子部品36の上に前述の第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33をこの順に重ね、これらのカーボンナノチューブシート31〜33を放熱シート34とする。
その放熱シート34は、互いに相対する第1の主面34aと第2の主面34bとを有しており、このうちの第1の主面34aが電子部品36に密着する。
そして、第1のカーボンナノチューブシート31の上面31pには、第2のカーボンナノチューブシート32のカーボンナノチューブ25の他端25bが密着する。また、第2のカーボンナノチューブシート32の上面32pには、第3のカーボンナノチューブシート33のカーボンナノチューブ25の他端25bが密着する。
その後に、放熱シート34の第2の主面34bの上に放熱部材38として金属製のヒートスプレッダを載せる。
そして、放熱部材38を回路基板35に押圧することにより電子部品36と放熱部材38の各々に放熱シート34を密着させつつ、放熱部材38の端部をシーラント39で回路基板35に接着する。
以上により、本実施形態に係る電子装置40の基本構造が完成する。
その電子装置40においては、電子部品36と放熱部材38との間に、熱伝導性に優れたカーボンナノチューブ25を備えた放熱シート34を介在させる。そのため、放熱シート34のカーボンナノチューブ25を介して電子部品36の熱が放熱部材38に速やかに伝わり、電子部品36を効率的に冷却できる。
また、本実施形態では、電子部品36や放熱部材38に各カーボンナノチューブシート31〜33を接着剤等で固定しておらず、電子部品36と放熱部材38の各々から放熱シート34が剥離可能となっている。同様に、各カーボンナノチューブシート31〜33同士も互いに接着されておらず、各カーボンナノチューブシート31〜33同士も互いに剥離可能となっている。
そのため、電子装置40の製造後に電子部品36や放熱部材38に不具合が発見された場合には、電子装置40から簡単に各カーボンナノチューブシート31〜33を取り出し、放熱シート34を別の電子装置40に簡単に再利用することができる。
特に、この例では第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bを周縁部32aよりも柔軟としたため、以下のように放熱シート34を再利用してもその熱伝導性が劣化し難くなる。
図8は、第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bに開口を設けず、中央部32bを柔軟にしない比較例に係る電子装置40の断面図である。なお、図8において図5と同じ要素には図5におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
その比較例においては、第2のカーボンナノチューブシート32に開口32xを設けないため、第2のカーボンナノチューブシート32の平面形状は、第1及び第3のカーボンナノチューブシート31、33と同じ概略正方形状となる。
また、電子部品36は、回路基板35との熱膨張率の差に起因して上を凸にして反ることがある。そのような反りは、例えば、はんだバンプ37を溶融させるために回路基板35と電子部品36とを加熱した後に、それらが常温に戻るときに異なる収縮量で収縮する際に発生する。
このように電子部品36に反りがあると、図5の工程で回路基板35に放熱部材38を押圧する際に、第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bにおいて放熱シート34が上下から強く押圧される。そのため、中央部32bにおける各カーボンナノチューブシート31〜33の界面A、Bに強い圧力が加わり、これらの界面A、Bにおけるカーボンナノチューブ25の端部が破壊される。
電子装置40において放熱シート34を利用し続ける場合には各カーボンナノチューブシート31〜33同士が強く密着しているので、このようにカーボンナノチューブ25の端部が破壊されても放熱シート34の伝熱性は大きく劣化しない。
しかし、再利用のために各カーボンナノチューブシート31〜33を電子装置40から取り出してそれらを再び重ねると、前述のようにカーボンナノチューブ25の端部が破壊されているため、各カーボンナノチューブシート31〜33同士が良好に密着しない。
その結果、再利用の前と比較して界面A、Bにおける放熱シート34の熱抵抗が増大してしまい、放熱シート34の熱伝導性が劣化してしまう。
一方、図9は、本実施形態において電子部品36に反りが生じた場合の電子装置40の断面図である。
本実施形態では前述のように第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bを柔軟にしたため、電子装置40の製造時に中央部32bに作用する圧力が緩和され、中央部32bの上下のカーボンナノチューブ25の端部が破壊され難くなる。
その結果、再利用のために各カーボンナノチューブシート31〜33を電子装置40から取り出してそれらを再び積層しても、再利用前と同程度に各カーボンナノチューブシート31〜33同士が良好に密着し、放熱シート34の熱伝導性が劣化し難くなる。
なお、電子部品36の反りに放熱シート34が追従できるようにするために、放熱シート34をなるべく厚く形成し、放熱シート34に十分な弾力性を持たせるのが好ましい。例えば、放熱シート34の全体の厚さを100μm以上とすることにより、反りが生じた電子部品36と放熱シート34との間に隙間が生じない程度の弾力性を放熱シート34に持たせることができる。
但し、放熱シート34が厚すぎると放熱シート34全体の熱抵抗が高くなるので、放熱シート34の全体の厚さを1000μm以下とすることにより、放熱シート34の熱抵抗が高くなるのを抑制するのが好ましい。
また、第2のカーボンナノチューブシート32が薄すぎると、第2のカーボンナノチューブシート32の柔軟性が損なわれ、界面A、Bでカーボンナノチューブ25の端部が破壊されるおそれがある。これを防ぐためには、第2のカーボンナノチューブシート32を20μm以上の厚さに形成し、第2のカーボンナノチューブシート32に十分な柔軟性を持たせるのが好ましい。
但し、第2のカーボンナノチューブシート32が厚すぎるとその熱抵抗が上昇してしまうので、第2のカーボンナノチューブシート32の厚さを500μm以下にすることで、第2のカーボンナノチューブシート32の熱抵抗が上昇するのを抑えるのが好ましい。
更に、平面視したときの中央部32bの面積が狭すぎるとその柔軟性が低下するので、第2のカーボンナノチューブシート32の全体の面積の30%以上の面積に中央部32bを形成するのが好ましい。
一方、平面視したときの中央部32bが広すぎると、相対的に周縁部32aの面積が狭くなり、放熱シート34全体の熱抵抗が上昇してしまう。そのため、第2のカーボンナノチューブシート32の全体の面積の50%以下の面積に中央部32bを形成することにより、放熱シート34の熱抵抗が上昇するのを抑えるのが好ましい。
本願発明者は、本実施形態において実際に放熱シート34の熱伝導性が劣化し難くなるかどうかを調査した。
その結果を図10及び図11に示す。
図10は、比較例(図8参照)の放熱シート34の熱伝導性が、再利用をする前と後でどのように変わるのかを調査して得られたグラフである。
そのグラフの縦軸は、放熱シート34をその第1の主面34a(図5参照)から加熱した場合における当該主面34aと第2の主面34bとの温度差ΔTを表す。その温度差ΔTが小さいほど、第1の主面34aから第2の主面34bに速やかに熱が伝わり、放熱シート34の熱伝導性が良いということになる。
また、この調査では、電子装置40の製造時に放熱シート34に加わる力を模擬するために、放熱シート34に上下から圧力を加えながら上記の温度差ΔTを測定した。図10の横軸は、このように放熱シート34に加えた圧力を示す。
なお、この調査に使用した各カーボンナノチューブシート31〜33の厚さは、第1のカーボンナノチューブシート31が100μm、第2のカーボンナノチューブシート32が100μm、第3のカーボンナノチューブシート33が100μmである。
図10に示すように、比較例においては、再利用前と比較して再利用後の温度差ΔTが各圧力において増加している。これは、前述のようにカーボンナノチューブ25の端部が破壊され、界面A、Bにおける熱抵抗が上昇したためと考えられる。
一方、図11は、図10と同じ調査を本実施形態に係る放熱シート34に対して行って得られたグラフである。
なお、図11の横軸と縦軸の意味は図10のそれらと同じなのでその説明は書略する。
また、この調査では、第1のカーボンナノチューブシート31の厚さを100μm、第2のカーボンナノチューブシート32の厚さを100μm、第3のカーボンナノチューブシート33の厚さを100μmとした。
図11に示すように、本実施形態においては、各圧力において再利用前と再利用後の温度差ΔTが略等しく、再利用によって放熱シート34の熱伝導性が劣化していない。
この結果から、本実施形態のように第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bを周縁部32aよりも柔軟にすることが、再利用後の放熱シート34の熱伝導性が劣化するのを抑制するのに有効であることが確認された。
しかも、本実施形態では図3(a)のように各カーボンナノチューブ25に対して熱処理を行う。その熱処理により、以下のようにカーボンナノチューブ25の結晶性と熱伝導性が改善されることが明らかとなった。
まず、結晶性についての調査結果について説明する。
図12は、カーボンナノチューブ25のラマンスペクトルを調査して得られた図である。図12の横軸は、入射光とストークス光の各々の波数の差で定義されるラマンシフトを示す。また、図12の縦軸は、ストークス光の強度を任意単位で示す。
カーボンナノチューブ25の結晶性の良否を推定する指標としてG/D比がある。G/D比は、ストークス光のうち1600cm-1付近のG-Bandと呼ばれるスペクトルの強度IGと、1350cm-1付近のD-Bandと呼ばれるスペクトルの強度IDとの比(IG/ID)として定義される。
D-Bandは、カーボンナノチューブ25に欠陥が発生してその結晶性が乱れた場合にその強度が強くなることが知られているため、G/D比が小さいほど結晶性が悪く、逆にG/D比が大きいほど結晶性が優れているということになる。
この調査では、図3(a)の熱処理を行わなかったカーボンナノチューブ25と、熱処理温度を2700℃としてその熱処理を行ったカーボンナノチューブ25の各々のラマンスペクトルを調べた。
なお、熱処理をした場合としなかった場合の各々のグラフが重ならないようにするため、図12では二つのグラフを上下にずらしてある。
図12の結果によれば、熱処理をしない場合ではD-Bandの強度が強いのに対し、熱処理をした場合ではD-Bandの強度が弱くなっている。そして、熱処理をした場合では、熱処理をしない場合と比較してG/D比が8.8倍程度の値に高められている。
この結果より、図3(a)の熱処理温度を2400℃程度の高温とすることにより、カーボンナノチューブ25の結晶性が良好になることが明らかとなった。
次に、カーボンナノチューブ25の熱伝導性についての調査結果について説明する。
図13は、カーボンナノチューブ25の熱伝導性について調査して得られた図であって、その横軸は図3(a)の工程におけるカーボンナノチューブ25の熱処理温度を示す。
また、図13の縦軸は、カーボンナノチューブ25をその一端25a(図2(b)参照)から加熱した場合における一端25aと他端25bとの温度差ΔTを表す。図10及び図11と同様に、その温度差ΔTが小さいほどカーボンナノチューブ25の熱伝導性が良いということになる。
この調査では複数個のサンプルを使用し、その各々について熱処理前と熱処理後の温度差ΔTを測定した。
図13に示すように、略全てのサンプルにおいて、熱処理前よりも熱処理後の方が温度差ΔTが減少している。最も減少の幅が大きいサンプルでは、熱処理後の温度差ΔTが熱処理前の68%にまで減少している。
特に、熱処理温度を2200℃以上とすると、それよりも低い温度で熱処理をしたサンプルと比較して熱処理後の温度差ΔTが減少している。
このことから、図3(a)の熱処理における熱処理温度を2200℃以上とすることにより、カーボンナノチューブ25の熱伝導性が向上することが明らかとなった。これは、図12のように熱処理によりカーボンナノチューブ25の結晶性が改善され、熱がカーボンナノチューブ25を伝わり易くなったためと考えられる。
特に、このように熱処理を行ったカーボンナノチューブ25は機械的に硬くなるため、図8のように放熱シート34が押圧されると界面A、Bでカーボンナノチューブ25の端部が一層破壊され易くなり、再利用によって放熱シート34の熱伝導性が劣化し易くなる。そのため、このように熱処理を施したカーボンナノチューブ25を備えた放熱シート34において上記のように中央部32bを柔軟にすると、再利用後の放熱シート34の熱伝導性が劣化するのを有効に抑制することができる。
次に、本実施形態に係る放熱シート34の様々な変形例について説明する。
・第1例
図14は第1例に係る放熱シート34が備える第2のカーボンナノチューブシート32の平面図である。また、図15は、本例に係る放熱シート34を備えた電子装置40の断面図であり、図14のII-II線に沿う断面図に相当する。
なお、図14及び図15において、図1〜図5で説明したのと同じ要素にはこれらの図におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図14に示すように、本例においては、第2のカーボンナノチューブシート32の周縁部32aをリング状とし、その周縁部32aで中央部32bを囲う。
このように周縁部32aをリング状とすることで、電子部品36の周縁部で発生した熱が第2のカーボンナノチューブシート32を介して均等に放熱部材38に伝わり、電子部品36において冷却不足となる部位を減らすことができる。
なお、周縁部32aをつなぎ目のないリング状に加工するのが難しい場合には、周縁部32aを切断線Cで切断して二つのL字状のパーツに分け、これらを繋げてリング状にしてもよい。
また、中央部32bの大きさも特に限定されない。例えば、第2のカーボンナノチューブシート32の全体の面積の30%以上の面積に中央部32bを形成することで、中央部32bの柔軟性が低下しないようにするのが好ましい。更に、第2のカーボンナノチューブシート32の全体の面積の50%以下の面積に中央部32bを形成することで、第2のカーボンナノチューブシート32の熱抵抗が上昇するのを抑えるのが好ましい。
・第2例
図16は第2例に係る放熱シート34が備える第2のカーボンナノチューブシート32の平面図である。また、図17は、本例に係る放熱シート34を備えた電子装置40の断面図であり、図16のIII-III線に沿う断面図に相当する。
なお、図16及び図17において、図1〜図5で説明したのと同じ要素にはこれらの図におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図16に示すように、本例においては、第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bの中心32yに、複数のカーボンナノチューブ25を備えたアイランド32cを設ける。
そのアイランド32cにおけるカーボンナノチューブ25は、図17に示すように、第1のカーボンナノチューブシート31から第3のカーボンナノチューブシート33に延びる。
これにより、電子部品36の中央で発生した熱がアイランド32cを介して放熱部材38に伝わるようになるため、電子部品36の中央が冷却不足になるのを防止できる。
また、中央部32bの中心のみにアイランド32cを設けるため、中央部32bの全体の柔軟性がアイランド32cによって大きく損なわれることはなく、電子装置40の製造時に中央部32bに作用する圧力が緩和される。
その結果、前述のように圧力によってカーボンナノチューブ25の端部が破壊され難くなり、放熱シート34を再利用してもその熱伝導性が劣化するのを抑制することができる。
なお、中央部32bにおいてアイランド32cが占める割合が増えると、アイランド32cによって中央部32bの柔軟性が損なわれてしまう。これを防ぐために、中央部32bの面積の15%以下の面積にアイランド32cを形成するのが好ましい。また、中央部32bの面積の10%以上の面積にアイランド32cを形成することにより、第2のカーボンナノチューブシート32の熱抵抗が上昇するのを抑えるのが好ましい。
・第3例
図18及び図19は、第3例に係る放熱シートを備えた電子装置の製造途中の断面図である。
なお、図18及び図19において、図1〜図5で説明したのと同じ要素にはこれらの図におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
本例では、図18に示すように、図4の工程と同様にして第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33を用意する。
但し、第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bの開口32xには、周縁部32aのカーボンナノチューブ25よりも直径が細い複数のカーボンナノチューブ25が設けられる。
このように直径が細く柔らかなカーボンナノチューブ25により中央部32bは周縁部32aよりも柔軟になる。
その中央部32bの作製方法は特に限定されない。例えば、周縁部32aを切り出すためのシート29(図3(b)参照)とは別に、周縁部32aにおけるよりも直径が細いカーボンナノチューブ25を備えたシート29を作製して、そのシート29から中央部32bを切り出せばよい。この場合、そのシート29の作製時におけるカーボンナノチューブ25の成長温度を周縁部32aにおけるよりも数10℃下げることにより、周縁部32aよりも直径が細いカーボンナノチューブ25を備えた中央部32bを作製し得る。
また、中央部32bにおけるカーボンナノチューブ25は、周縁部32aにおけるカーボンナノチューブ25と同様に、第2のカーボンナノチューブシート32の厚さ方向Dに沿って延びる。
図20(a)〜(c)は、本例に係る第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33の平面図であって、前述の図18における各カーボンナノチューブシート31〜33の断面図は、図20(a)〜(c)のIV-IV線に沿う断面図に相当する。
図20(a)〜(c)に示すように、各カーボンナノチューブシート31〜33は平面視で概略正方形状である。
また、図20(b)に示すように、第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bは平面視で帯状である。
次に、図19に示すように、電子部品36が搭載された回路基板35を用意し、その電子部品36の上に前述の第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33をこの順に重ね、これらのカーボンナノチューブシート31〜33を放熱シート34とする。
そして、放熱部材38を回路基板35に押圧することにより、電子部品36と放熱部材38の各々に放熱シート34を密着させる。そして、この状態で放熱部材38の端部をシーラント39で回路基板35に接着することにより、本例に係る電子装置40の基本構造を完成させる。
本例によれば、前述のように中央部32bが周縁部32aよりも柔軟となるため、図19の工程において中央部32bに作用する圧力が緩和される。そのため、中央部32bのカーボンナノチューブ25の端部が破壊され難くなり、放熱シート34を再利用してもその熱伝導性が劣化するのを抑制することができる。
しかも、電子部品36で発生した熱が中央部32bにおけるカーボンナノチューブ25を介して放熱部材38に伝わるため、中央部32bによって電子部品36の冷却を促すこともできる。
特に、この例では中央部32bのカーボンナノチューブ25が延びる方向を放熱シート34の厚さ方向Dとしたため、電子部品36の熱が中央部32bを速やかに伝わって放熱部材38に至るようになり、電子部品36を速やかに冷却することができる。
・第4例
図21及び図22は、第4例に係る放熱シートを備えた電子装置の製造途中の断面図である。
本例においても、図21に示すように、図18の工程と同様にして第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33を用意する。
但し、本例では、第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bにおけるカーボンナノチューブ25の向きを、第2のカーボンナノチューブシート32の厚さ方向Dに垂直な方向Pとする。
なお、その中央部32bにおけるカーボンナノチューブ25の直径は、第3例と同様に、周縁部32aのカーボンナノチューブ25の直径よりも細くする。これにより、第3例と同様に中央部32bは周縁部32aよりも柔軟となる。
本例では、第3例と同様に、周縁部32aを切り出すためのシート29(図3(b)参照)の製造時よりもカーボンナノチューブ25の成長温度を数10℃程度下げることにより中央部32b用のシート29を作製する。そして、そのシート29の各カーボンナノチューブ25をほぐして開口32x内に敷き詰めることにより中央部32bを作製する。
次に、図22に示すように、図19と同様にして電子部品36の上に第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33をこの順に重ね、これらのカーボンナノチューブシート31〜33を放熱シート34とする。
そして、放熱部材38を回路基板35に押圧しながら、放熱部材38の端部をシーラント39で回路基板35に接着することにより、本例に係る電子装置40の基本構造を完成させる。
以上説明した本例によれば、周縁部32aよりも直径が細いカーボンナノチューブ25を中央部32bに設けたため、第3例と同様に中央部32bが柔軟となり、放熱シート34を再利用してもその熱伝導性が劣化するのを抑制することができる。
また、中央部32bのカーボンナノチューブ25の向きを厚さ方向Dに垂直な方向Pとしたため、厚さ方向Dに沿って作用する力によって中央部32bのカーボンナノチューブ25が容易に撓む。これにより、図22の工程において中央部32bに作用する圧力が一層緩和され、中央部32bにおけるカーボンナノチューブ25の端部が破壊されるのを防止し易くなる。
・第5例
図23は、第5例に係る放熱シートを備えた電子装置40の断面図である。
図23に示すように、本例においては、第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bの開口32xに熱伝導性が高い放熱グリースを充填する。
その放熱グリースは特に限定されないが、本例では放熱グリースとして信越化学工業株式会社製のシリコングリースG-776を使用する。
放熱グリースは流動性を有するため、カーボンナノチューブ25を備えた周縁部32aよりも中央部32bが柔軟となり、電子装置40の製造時に中央部32bに加わる圧力を緩和できる。その結果、電子装置40の製造する際、中央部32bの上下のカーボンナノチューブ25の端部が破壊され難くなり、放熱シート34を再利用してもその熱伝導性が劣化するのを抑制することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、図5を参照して説明したように、電子部品36や放熱部材38に各カーボンナノチューブシート31〜33を接着剤等で固定せず、全てのカーボンナノチューブシート31〜33を再利用可能とした。
これに対し、本実施形態では、以下のように第2のカーボンナノチューブシート32のみを再利用可能とする。
図24及び図25は、本実施形態に係る放熱シートを備えた電子装置の製造途中の断面図である。
なお、図24及び図25において第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
まず、図24に示すように、第1実施形態で説明した第1〜第3のカーボンナノチューブシート31〜33をこの順に重ねてなる放熱シート34を電子部品36と放熱部材38の間に配する。
この例では、第1実施形態の図5で説明した放熱シート34を使用しているが、これに代えて第1実施形態の第1例〜第4例(図14〜図23参照)に係る放熱シート34を使用してもよい。
更に、電子部品36と放熱部材38のそれぞれの表面には、予め第1の金属ペースト51と第2の金属ペースト52を塗布しておく。各金属ペースト51、52は、有機溶媒に金属粒子を分散させてなり、この状態では未乾燥の状態にある。なお、各金属ペースト51、52の金属粒子は特に限定されないが、熱伝導性に優れた金、銀、及び銅等の金属粒子を含む金属ペースト51、52を使用するのが好ましい。
次に、図25に示すように、放熱部材38を回路基板35に押圧しながら、各金属ペースト51、52を140℃程度の温度に加熱する。
これにより、各金属ペースト51、52の有機溶媒が蒸発し、放熱シート34の第1の主面34aが第1の金属ペースト51により電子部品36に固定され、かつ放熱シート34の第2の主面34bが第2の金属ペースト52により放熱部材38に固定される。
そして、放熱部材38の端部をシーラント39で回路基板35に接着することにより、本実施形態に係る電子装置40の基本構造を完成させる。
以上説明した本実施形態によれば、熱伝導性に優れた各金属ペースト51、52で電子部品36や放熱部材38に放熱シート34を固定する。そのため、電子部品36と放熱シート34との密着性や、放熱部材38と放熱シート34との密着性が良好となり、電子部品36で発生した熱が放熱シート34を介して速やかに放熱部材38に伝わるようになる。
また、第2のカーボンナノチューブシート32は第1及び第3のカーボンナノチューブシート31、33に固定されていないため、電子装置40に不具合が発見された場合には、電子装置40から第2のカーボンナノチューブシート32を取り出して再利用できる。
しかも、第2のカーボンナノチューブシート32の中央部32bを周縁部32aよりも柔軟にしたため、図25の工程で放熱シート34に圧力を加えても、第1実施形態と同じ理由により中央部32bのカーボンナノチューブ25の端部が破壊され難い。そのため、上記のように第2のカーボンナノチューブシート32を再利用しても、再利用の後に第2のカーボンナノチューブシート32の熱伝導性が劣化し難くなる。
以上、各実施形態について詳細に説明したが、放熱シート34の使用用途は上記に限定されない。例えば、放熱部材38(図5参照)の上に別の放熱シート34を介してヒートシンクを設け、その放熱シート34を介して放熱部材38の熱をヒートシンクに逃がすようにしてもよい。更に、電気自動車や飛行機の高耐圧モジュールに放熱シート34を適用してもよい。
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 複数のカーボンナノチューブを備えた第1のカーボンナノチューブシートと、
前記第1のカーボンナノチューブシートの上面に密着した複数のカーボンナノチューブを有する周縁部と、前記周縁部よりも柔軟な中央部とを備えた第2のカーボンナノチューブシートと、
前記第2のカーボンナノチューブシートの上面に密着した複数のカーボンナノチューブを備えた第3のカーボンナノチューブシートと、
を備えたことを特徴とする放熱シート。
(付記2) 前記中央部に開口が設けられたことを特徴とする付記1に記載の放熱シート。
(付記3) 前記中央部に、前記周縁部の前記カーボンナノチューブよりも直径が細い複数のカーボンナノチューブが設けられたことを特徴とする付記1に記載の放熱シート。
(付記4) 前記周縁部の前記カーボンナノチューブと、前記中央部の前記カーボンナノチューブは、いずれも前記第2のカーボンナノチューブシートの厚さ方向に沿って延びることを特徴とする付記3に記載の放熱シート。
(付記5) 前記周縁部の前記カーボンナノチューブは、前記第2のカーボンナノチューブシートの厚さ方向に延び、
前記中央部の前記カーボンナノチューブは、前記厚さ方向に垂直な方向に延びることを特徴とする付記3に記載の放熱シート。
(付記6) 前記中央部に開口が設けられ、前記開口にグリースが充填されたことを特徴とする付記1に記載の放熱シート。
(付記7) 前記周縁部は平面視でリング状であり、
前記中央部は平面視で前記周縁部に囲まれたことを特徴とする付記1に記載の放熱シート。
(付記8) 前記中央部の中心に、前記第1のカーボンナノチューブシートから前記第3のカーボンナノチューブシートに延びる複数のカーボンナノチューブを備えたアイランドが設けられたことを特徴とする付記7に記載の放熱シート。
(付記9) 前記第2のカーボンナノチューブシートは、前記第1のカーボンナノチューブシートと前記第3のカーボンナノチューブシートの各々から剥離可能であることを特徴とする付記1に記載の放熱シート。
(付記10) 複数のカーボンナノチューブを備えた第1のカーボンナノチューブシート、複数のカーボンナノチューブを備えた第2のカーボンナノチューブシート、及び複数のカーボンナノチューブを備えた第3のカーボンナノチューブシートを順に重ねて放熱シートにする工程を有し、
前記第2のカーボンナノチューブシートは、周縁部と、前記周縁部よりも柔軟な中央部とを備えたことを特徴とする放熱シートの製造方法。
(付記11) 互いに相対する第1の主面と第2の主面とを備えた放熱シートと、
前記放熱シートの前記第1の主面に密着した電子部品と、
前記放熱シートの前記第2の主面に密着した放熱部材とを備え、
前記放熱シートは、
前記電子部品に密着した複数のカーボンナノチューブを備えた第1のカーボンナノチューブシートと、
前記第1のカーボンナノチューブシートの上面に密着した複数のカーボンナノチューブを有する周縁部と、前記周縁部よりも柔軟な中央部とを備えた第2のカーボンナノチューブシートと、
前記第2のカーボンナノチューブシートの上面と前記放熱部材の各々に密着した複数のカーボンナノチューブを備えた第3のカーボンナノチューブシートとを有することを特徴とする電子装置。
(付記12) 前記放熱シートは、前記電子部品と前記放熱部材の各々から剥離可能であることを特徴とする付記11に記載の電子装置。
(付記13) 前記放熱シートの前記第1の主面が第1の金属ペーストにより前記電子部品に固定され、前記放熱シートの前記第2の主面が第2の金属ペーストにより前記放熱部材に固定されたことを特徴とする付記10に記載の電子装置。