以下、実施形態によるブレーキシステムを、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。
図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態を示している。図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、例えば左右の前輪2(FL,FR)と左右の後輪3(RL、RR)とからなる合計4個の車輪が設けられている。車輪(各前輪2、各後輪3)は、車体1と共に車両を構成している。車両には、制動力を付与するためのブレーキシステムが搭載されている。以下、車両のブレーキシステムについて説明する。
前輪2および後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する被制動部材(回転部材)としてのディスクロータ4が設けられている。前輪2用のディスクロータ4は、液圧式のディスクブレーキである前輪側ディスクブレーキ5により制動力が付与される。後輪3用のディスクロータ4は、本発明の被制動部材を構成し、電動駐車ブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキである後輪側ディスクブレーキ6により制動力が付与される。
左右の後輪3に対応してそれぞれ設けられた一対(一組)の後輪側ディスクブレーキ6は、電動ブレーキ装置(電動パーキングブレーキ)を構成している。即ち、電動ブレーキ装置は、車両の左右両輪(左右の後輪3,3)に設けられている。そして、後輪側ディスクブレーキ6は、後述の液圧供給装置16、ESC用制御装置17、および駐車ブレーキ制御装置23と共に、ブレーキシステムを構成している。図2に示すように、後輪側ディスクブレーキ6は、例えば、キャリアと呼ばれる取付部材6Aと、ホイールシリンダとしてのキャリパ6Bと、制動部材(摩擦部材、摩擦パッド)としての一対のブレーキパッド6Cと、押圧部材としてのピストン6Dとを含んで構成されている。
取付部材6Aは、車両の非回転部に固定され、ディスクロータ4の外周側を跨いで形成されている。キャリパ6Bは、取付部材6Aにディスクロータ4の軸方向への移動を可能に設けられている。本発明の制動部材を構成するブレーキパッド6Cは、取付部材6Aに移動可能に取付けられ、ディスクロータ4に当接可能に配置されている。ピストン6Dは、ブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧する。
この場合、キャリパ6Bは、ブレーキペダル9の操作等に基づいてシリンダ6B1内に液圧(ブレーキ液圧)が供給(付加)されることにより、ブレーキパッド6Cをピストン6Dで推進する。このとき、ブレーキパッド6Cは、キャリパ6Bの爪部6B2とピストン6Dとによりディスクロータ4の両面に押圧される。これにより、ディスクロータ4と共に回転する後輪3に制動力が付与される。
さらに、後輪側ディスクブレーキ6には、電動アクチュエータ7と押圧部材保持機構8とが設けられている。電動アクチュエータ7は、電動機としての電動モータ7Aと、該電動モータ7Aの回転を減速する減速機構(図示せず)とを含んで構成されている。電動モータ7Aは、ピストン6Dを推進するための駆動源となるものである。押圧部材保持機構8は、ブレーキパッド6Cの押圧力を保持する保持機構を構成している。この場合、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転をピストン6Dの軸方向の変位(直動変位)に変換すると共に該ピストン6Dを推進する回転直動部材8Aを含んで構成されている。
即ち、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転をピストン6Dの軸方向の変位に変換すると共に、電動モータ7Aにより推進したピストン6Dを保持する。換言すれば、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aによりピストン6Dに推力を与え、該ピストン6Dによりブレーキパッド6Cを推進しディスクロータ4を押圧し、該ピストン6Dの推力を保持する。押圧部材保持機構8は、例えばスピンドルナット機構等の回転直動機構として構成されている。
後輪側ディスクブレーキ6は、ブレーキペダル9の操作等に基づいて発生するブレーキ液圧によりピストン6Dを推進させ、ブレーキパッド6Cでディスクロータ4を押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。これに加えて、後輪側ディスクブレーキ6は、後述するように、駐車ブレーキスイッチ28からの信号等に基づく作動要求に応じて、電動モータ7Aにより押圧部材保持機構8を介してピストン6Dを推進させ、車両に制動力(駐車ブレーキないし補助ブレーキ)を付与する。
即ち、電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ機構)を構成する後輪側ディスクブレーキ6は、電動モータ7Aを駆動し、回転直動部材8Aによりピストン6Dを推進することにより、ブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧して保持する。この場合、後輪側ディスクブレーキ6は、駐車ブレーキを付与するためのアプライ要求となる駐車ブレーキ要求信号(アプライ要求信号)に応じて、ピストン6Dを電動モータ7Aで推進して車両の制動を保持することが可能となっている。これと共に、後輪側ディスクブレーキ6は、ブレーキペダル9の操作に応じて、液圧源(後述のマスタシリンダ12、必要に応じて液圧供給装置16)からの液圧供給により車両の制動が可能となっている。
このように、後輪側ディスクブレーキ6は、電動モータ7Aによりディスクロータ4にブレーキパッド6Cを押圧し該ブレーキパッド6Cの押圧力を保持する押圧部材保持機構8を有し、かつ、電動モータ7Aによる押圧とは別に付加される液圧によりディスクロータ4にブレーキパッド6Cを押圧可能に構成されている。
一方、左右の前輪2に対応してそれぞれ設けられた一対(一組)の前輪側ディスクブレーキ5は、駐車ブレーキの動作に関連する機構を除いて、後輪側ディスクブレーキ6とほぼ同様に構成されている。即ち、図1に示すように、前輪側ディスクブレーキ5は、取付部材(図示せず)、キャリパ5A、ブレーキパッド(図示せず)、ピストン5B等を備えているが、駐車ブレーキの作動、解除を行うための電動アクチュエータ7(電動モータ7A)、押圧部材保持機構8等を備えていない。しかし、前輪側ディスクブレーキ5は、ブレーキペダル9の操作等に基づいて発生する液圧によりピストン5Bを推進させ、車輪(前輪2)に制動力を付与する点で、後輪側ディスクブレーキ6と同様である。
なお、前輪側ディスクブレーキ5は、後輪側ディスクブレーキ6と同様に、電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキとしてもよい。また、実施形態では、電動ブレーキ装置(駐車ブレーキ装置)として、電動モータ7Aを備えた液圧式のディスクブレーキ6を用いている。しかし、これに限定されず、電動ブレーキ装置(駐車ブレーキ装置)は、例えば、電動キャリパを備えた電動式ディスクブレーキ、電動モータによりシューをドラムに押付けて制動力を付与する電動式ドラムブレーキ、電動ドラム式の駐車ブレーキを備えたディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキをアプライ作動させるケーブルプラー式駐車ブレーキ装置等を用いてもよい。即ち、電動ブレーキ装置は、電動モータ(電動アクチューエータ)の駆動に基づいて摩擦部材(パッド、シュー)を回転部材(ロータ、ドラム)に押圧(推進)し、その押圧力の保持と解除とを行うことができる構成であれば、各種の電動ブレーキ機構(電動駐車ブレーキ機構)を用いることができる。
車体1のフロントボード側には、ブレーキペダル9が設けられている。ブレーキペダル9は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作され、この操作に基づいて各ディスクブレーキ5,6は、常用ブレーキ(サービスブレーキ)としての制動力の付与および解除が行われる。ブレーキペダル9には、ブレーキランプスイッチ、ペダルスイッチ(ブレーキスイッチ)、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作検出センサ(ブレーキセンサ)10が設けられている。
ブレーキ操作検出センサ10は、ブレーキペダル9の踏込み操作の有無、またはその操作量を検出し、その検出信号を駐車ブレーキ制御装置23に出力する。ブレーキ操作検出センサ10の検出信号は、例えば車両データバス20を介して他の制御装置(図示せず)に伝送される。
ブレーキペダル9の踏込み操作は、倍力装置11を介して、油圧源(液圧源)として機能するマスタシリンダ12に伝達される。倍力装置11は、ブレーキペダル9とマスタシリンダ12との間に設けられた気圧倍力装置(負圧ブースタ)または電動倍力装置(電動ブースタ)として構成され、ブレーキペダル9の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ12に伝える。
このとき、マスタシリンダ12は、マスタリザーバ13から供給(補充)されるブレーキ液により液圧を発生させる。マスタリザーバ13は、ブレーキ液が収容された作動液タンクにより構成されている。ブレーキペダル9により液圧を発生する機構は、上記の構成に限られるものではなく、ブレーキペダル9の操作に応じて液圧を発生する機構、例えば、ブレーキバイワイヤ方式の機構等であってもよい。
マスタシリンダ12内に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管14A,14Bを介して、液圧供給装置16(以下、ESC16という)に送られる。ESC16は、マスタシリンダ12と各ディスクブレーキ5,6との間に配置されている。ESC16は、マスタシリンダ12からシリンダ側液圧配管14A,14Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管15A,15B,15C,15Dを介して各ディスクブレーキ5,6に分配、供給する。即ち、ESC16は、ブレーキペダル9の操作に応じた液圧(ブレーキ液圧)を、各車輪(各前輪2、各後輪3)に設けられたディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)へ供給するためのものである。これにより、車輪2,3のそれぞれに対して相互に独立して制動力を付与することができる。
ここで、ESC16は、複数の制御弁と、ブレーキ液圧を加圧する液圧ポンプ(いずれも図示せず)と、該液圧ポンプを駆動する電動モータ16Aと、余剰のブレーキ液を一時的に貯留する液圧制御用リザーバ(図示せず)とを含んで構成されている。ESC16(の各制御弁および電動モータ16A)は、ESC用制御装置17に接続されている。ESC16の各制御弁の開閉と電動モータ16Aの駆動は、ESC用制御装置17により制御される。
ESC用制御装置17(ESC用コントロールユニット)は、マイクロコンピュータを含んで構成され、ESC16(の各制御弁のソレノイド、電動モータ16A)を電気的に駆動制御する。即ち、ESC用制御装置17は、例えば後輪側ディスクブレーキ6のピストン6Dがブレーキパッド6Cに当接してブレーキパッド6Cをディスクロータ4に押圧することにより制動力を付与するために、ピストン6Dに液圧を供給するESC16の作動(液圧)を制御する液圧制御手段を構成している。なお、ESC用制御装置17は、前輪側ディスクブレーキ5についても同様にESC16の作動(液圧)を制御する液圧制御手段を構成している。
ESC用制御装置17は、ESC16を含むブレーキ液圧供給回路(即ち、マスタシリンダ12、シリンダ側液圧配管14A,14B、ESC16、ブレーキ側配管15A,15B,15C,15D、キャリパ5A,6B、およびピストン5B,6Dにより構成される液圧供給回路)を監視する。これと共に、ESC用制御装置17は、ディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)に対する液圧失陥を検出する。
また、ESC用制御装置17は、後述の駐車ブレーキ制御装置23から出力された制動要求信号に基づき、ESC16(電動モータ16Aの駆動)による液圧制御を行う。この場合、ESC用制御装置17は、ESC16による液圧制御開始の信号および液圧制御の非実行信号を駐車ブレーキ制御装置23に向けて出力する。
ESC用制御装置17は、ESC16の各制御弁(のソレノイド)、液圧ポンプ用の電動モータ16Aを個別に駆動制御することにより、ブレーキ側配管15A,15B,15C,15Dから各ディスクブレーキ5,6に供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御をそれぞれのディスクブレーキ5,6毎に個別に行う。
この場合、ESC用制御装置17は、ESC16を作動制御することにより、例えば以下の(1)〜(8)等の制御を実行することができる。
(1)車両の制動時に接地荷重等に応じて各車輪2,3に適切に制動力を配分する制動力配分制御。
(2)制動時に各車輪2,3の制動力を自動的に調整して各車輪2,3のロック(スリップ)を防止するアンチロックブレーキ制御(液圧ABS制御)。
(3)走行中の各車輪2,3の横滑りを検知してブレーキペダル9の操作量に拘わらず各車輪2,3に付与する制動力を適宜自動的に制御しつつ、アンダーステアおよびオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定化制御。
(4)坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御。
(5)発進時等において各車輪2,3の空転を防止するトラクション制御。
(6)先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御。
(7)走行車線を保持する車線逸脱回避制御。
(8)車両進行方向の障害物との衡突を回避する障害物回避制御(自動ブレーキ制御、衝突被害軽減ブレーキ制御)。
ESC16は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時においては、マスタシリンダ12で発生した液圧を、ディスクブレーキ5,6(のキャリパ5A,6B)に直接供給する。これに対し、例えばアンチロックブレーキ制御等を実行する場合は、増圧用の制御弁を閉じてディスクブレーキ5,6の液圧を保持し、ディスクブレーキ5,6の液圧を減圧するときには、減圧用の制御弁を開いてディスクブレーキ5,6の液圧を液圧制御用リザーバに逃がすように排出する。
さらに、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ディスクブレーキ5,6に供給する液圧を増圧または加圧するときは、供給用の制御弁を閉弁した状態で電動モータ16Aにより液圧ポンプを作動させ、該液圧ポンプから吐出したブレーキ液をディスクブレーキ5,6に供給する。このとき、液圧ポンプの吸込み側には、マスタシリンダ12側からマスタリザーバ13内のブレーキ液が供給される。
ESC用制御装置17には、車両電源となるバッテリ18(ないしエンジンによって駆動されるジェネレータ)からの電力が、電源ライン19を通じて給電される。図1に示すように、ESC用制御装置17は、車両データバス20に接続されている。
車両データバス20は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCAN(Controller Area Network)を構成している。車両に搭載された多数の電子機器(ESC用制御装置17、駐車ブレーキ制御装置23を含む各種のECU)は、車両データバス20により、それぞれの間で車両内の多重通信を行う。この場合、車両データバス20に送られる車両情報としては、例えば、ブレーキ操作検出センサ10、M/C圧力センサ21、W/C圧力センサ22からの検出信号(出力信号)による情報(車両情報)が挙げられる。
さらに、車両データバス20に送られる車両情報としては、例えば、イグニッションスイッチ、シートベルトセンサ、ドアロックセンサ、ドア開センサ、着座センサ、車速センサ、操舵角センサ、アクセルセンサ(アクセル操作センサ)、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、勾配センサ(傾斜センサ)、シフトセンサ(トランスミッションデータ)、加速度センサ(Gセンサ)、車輪速センサ、車両のピッチ方向の動きを検知するピッチセンサ等からの検出信号(出力信号)による情報(車両情報)も挙げられる。
ここで、M/C圧力センサ21は、シリンダ側液圧配管14A,14Bにそれぞれ設けられ、それぞれの配管内圧力(液圧)、即ち、該配管内圧力(液圧)に対応するマスタシリンダ12のM/C液圧を、配管系統(プライマリ側、セカンダリ側)毎に検出するものである。即ち、M/C圧力センサ21は、ディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)へ供給されるM/C液圧を検出するものである。なお、図1では、M/C圧力センサ21をマスタシリンダ12とESC16との間に設けているが、例えば、M/C圧力センサ21をESC16内に設けてもよい(内蔵してもよい)。
一方、W/C圧力センサ22は、ブレーキ側配管15A,15B,15C,15Dにそれぞれ設けられ、それぞれの配管内圧力(液圧)、即ち配管内圧力に対応するディスクブレーキ5,6(キャリパ5A,6B)内のW/C液圧を個別に検出する。なお、図1では、W/C圧力センサ22をESC16とキャリパ5A,6Bとの間に設けているが、例えばW/C圧力センサ22をESC16内に設けてもよい(内蔵してもよい)。M/C圧力センサ21およびW/C圧力センサ22は、ESC用制御装置17に接続されている。
駐車ブレーキ制御装置23は、後輪側ディスクブレーキ6(の電動モータ7A)の制御を行うもので、本発明の電動モータ制御手段を構成している。即ち、駐車ブレーキ制御装置23は、マイクロコンピュータを含んで構成され、電動モータ7Aで駆動される押圧部材保持機構8によってピストン6Dを推進し後輪側ディスクブレーキ6の制動力を制御するものである。
駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17を含む各種の制御装置(ECU:Electronic Control Unit)と車両データバス20を介して接続されている。車両データバス20からは、駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち各種車両情報を取得することができる。また、駐車ブレーキ制御装置23には、後述の駐車ブレーキスイッチ28が接続されている。
駐車ブレーキ制御装置23は、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを制御することにより、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。なお、駐車ブレーキ制御装置23は、左右で2つの後輪側ディスクブレーキ6,6を制御するようにしているが、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6毎に設けるようにしてもよい。この場合には、それぞれの駐車ブレーキ制御装置23を後輪側ディスクブレーキ6に一体的に設けることもできる。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置23は、演算回路24、メモリ25、左右の後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aをそれぞれ駆動するモータ駆動回路26,27を含んで構成されている。メモリ25には、電動駐車ブレーキ(電動モータ7A)の制御プログラムが格納されている。これに加えて、メモリ25には、図4に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ちESC用制御装置17から液圧制御の実行状態が異常の場合に、電動モータ7A,7Aの駆動(アプライ、リリース)を行う処理プログラムが格納されている。
駐車ブレーキ制御装置23は、ESC16に対する液圧制御の実行状態をESC用制御装置17から取得し、液圧制御の実行状態が異常の場合に、電動モータ7A,7Aを駆動して制動力を付与する。具体的には、駐車ブレーキ制御装置23は、後述の駐車ブレーキスイッチ28のON操作による制動要求から所定時間(例えば、1秒)以内に、ESC用制御装置17から液圧制御開始の信号が受信できない場合に液圧制御の実行状態が異常と判断する。駐車ブレーキ制御装置23がESC用制御装置17から液圧制御開始の信号を受信できない場合とは、ESC用制御装置17と駐車ブレーキ制御装置23との間で断線等が生じている場合およびESC用制御装置17から液圧制御の非実行信号が受信されている場合が考えられる。
液圧制御の実行状態が異常の場合には、駐車ブレーキ制御装置23は電動アクチュエータ7の電動モータ7Aを駆動させることにより、回転直動部材8Aによって後輪側ディスクブレーキ6のピストン6Dを推進させて制動力を発生させる。これにより、駐車ブレーキ制御装置23は、車体1の速度およびW/C液圧を検出することなく電動モータ7Aの駆動を開始させるので、早期に車両の減速制御を行うことができる。
駐車ブレーキスイッチ28(PKBSW)は、運転席(図示せず)の近傍に設けられている。駐車ブレーキスイッチ28は、運転者によって操作される操作指示部となるものである。駐車ブレーキスイッチ28は、運転者の操作指示に応じた駐車ブレーキの作動要求(保持要求となるアプライ要求、解除要求となるリリース要求)に対応する信号(作動要求信号)を、駐車ブレーキ制御装置23へ伝達する。即ち、駐車ブレーキスイッチ28は、電動モータ7Aの駆動(回転)に基づいてピストン6D延いてはブレーキパッド6Cをアプライ作動(保持作動)またはリリース作動(解除作動)させるための作動要求信号(保持要求信号となるアプライ要求信号、解除要求信号となるリリース要求信号)を駐車ブレーキ制御装置23に出力する。
運転者により駐車ブレーキスイッチ28が制動側(アプライ側)に操作されたとき、即ち車両に制動力を付与するためのアプライ要求(制動保持要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ28からアプライ要求信号(駐車ブレーキ要求信号)が出力される。この場合は、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aに、該電動モータ7Aを制動側に回転させるための電力が、駐車ブレーキ制御装置23を介して給電される。このとき、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転に基づいてピストン6Dをディスクロータ4側に推進(押圧)し、推進したピストン6Dを保持する。これにより、後輪側ディスクブレーキ6は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力が付与された状態、即ちアプライ状態(制動保持状態)となる。
一方、運転者により駐車ブレーキスイッチ28が制動解除側(リリース側)に操作されたとき、即ち車両の制動力を解除するためのリリース要求(制動解除要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ28からリリース要求信号が出力される。この場合は、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aに、該電動モータ7Aを制動側とは逆方向に回転させるための電力が、駐車ブレーキ制御装置23を介して給電される。このとき、押圧部材保持機構8は、電動モータ7Aの回転によりピストン6Dの保持を解除する(ピストン6Dによる押圧力を解除する)。これにより、後輪側ディスクブレーキ6は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力の付与が解除された状態、即ちリリース状態(制動解除状態)となる。
駐車ブレーキは、例えば車両が所定時間停止したとき(例えば、走行中に減速に伴って、車速センサの検出速度が5km/h未満の状態が所定時間継続したときに停止と判断)、エンジンが停止したとき、シフトレバーをPに操作したとき、ドアが開いたとき、シートベルトが解除されたとき等、駐車ブレーキ制御装置23での駐車ブレーキのアプライ判断ロジックによる自動的なアプライ要求に基づいて、自動的に付与(オートアプライ)する構成とすることができる。
また、駐車ブレーキは、例えば車両が走行したとき(例えば、停車から増速に伴って、車速センサの検出速度が7km/h以上の状態が所定時間継続したときに走行と判断)、アクセルペダルが操作されたとき、クラッチペダルが操作されたとき、シフトレバーがP、N以外に操作されたとき等、駐車ブレーキ制御装置23での駐車ブレーキのリリース判断ロジックによる自動的なリリース要求に基づいて、自動的に解除(オートリリース)する構成とすることができる。オートアプライ、オートリリースは、駐車ブレーキスイッチ28が故障したときに、自動的に制動力の付与または解除を行うスイッチ故障時補助機能として構成することができる。
さらに、車両の走行時に駐車ブレーキスイッチ28によるアプライ要求があった場合、より具体的には、走行中に緊急的に駐車ブレーキを補助ブレーキとして用いる等の動的駐車ブレーキ(動的アプライ)の要求があった場合も、駐車ブレーキ制御装置23は、駐車ブレーキスイッチ28の操作に応じて制動力の付与と解除を行う。この場合、駐車ブレーキ制御装置23は、最初にESC用制御装置17に向けてESC16による液圧制御を行う旨の制御信号を出力する。
駐車ブレーキ制御装置23は、駐車ブレーキスイッチ28が操作されてから例えば1秒以内にESC用制御装置17からの液圧制御開始の信号を受信できなかった場合に、ESC16が液圧制御を実行していないと判断する。そして、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17に向けてESC16による液圧制御を行う旨の制御信号の出力を停止し、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aに、該電動モータ7Aを制動側に回転させるための電力を供給する。即ち、走行中に緊急的に駐車ブレーキを補助ブレーキとして用いた場合には、まずESC16による液圧制御により車体1に制動力を付与する。そして、例えばESC16やESC用制御装置17の不調等によりESC16が正常に液圧制御を開始していない場合およびESC用制御装置17と駐車ブレーキ制御装置23との間が断線等により通信途絶されている場合には、後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aを駆動して車体1に制動力を付与する構成としている。
駐車ブレーキ制御装置23は、駐車ブレーキスイッチ28が制動側に操作されている間(制動側への操作が継続している間)に制動力を付与し、その操作が終了すると制動力の付与を解除する。このとき、駐車ブレーキ制御装置23は、車輪(各後輪3)の状態、即ち、車輪がロック(スリップ)するか否かに応じて、自動的に制動力の付与と解除(電動ABS制御)を行う構成とすることができる。なお、本明細書では、走行中に後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aを用いて制動力を付与することも「駐車ブレーキ」と表現する場合がある。
第1の実施形態による4輪自動車のブレーキシステムは、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、運転者がブレーキペダル9を踏込み操作したときの制動動作について説明する。車両の運転者がブレーキペダル9を踏込み操作すると、その踏力が倍力装置11を介してマスタシリンダ12に伝達され、マスタシリンダ12によってブレーキ液圧が発生する。マスタシリンダ12内で発生したブレーキ液圧は、シリンダ側液圧配管14A,14B、ESC16およびブレーキ側配管15A,15B,15C,15Dを介して各ディスクブレーキ5,6に分配され、左右の前輪2,2と左右の後輪3,3とにそれぞれ制動力が付与される。
この場合、各ディスクブレーキ5,6では、キャリパ5A,6B内のブレーキ液圧の上昇に従ってピストン5B,6Dがブレーキパッド6Cに向けて摺動的に変位し、ブレーキパッド6Cがディスクロータ4,4に押し付けられる。これにより、ブレーキ液圧に基づく制動力が付与される。一方、ブレーキ操作が解除されたときには、キャリパ5A,6B内へのブレーキ液圧の供給が停止されることにより、ピストン5B,6Dがディスクロータ4,4から離れる(後退する)ように変位する。これによって、ブレーキパッド6Cがディスクロータ4,4から離間し、車両は非制動状態に戻される。
次に、車両の停止時に運転者が駐車ブレーキスイッチ28を制動側(アプライ側)に操作したときの制動動作について説明する。車両の停止時に運転者が駐車ブレーキスイッチ28を制動側(アプライ側)に操作したときは、駐車ブレーキ制御装置23から後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aに給電が行われ、電動モータ7A,7Aが回転駆動される。後輪側ディスクブレーキ6,6では、電動モータ7A,7Aの回転運動が押圧部材保持機構8,8により直線運動に変換され、回転直動部材8A,8Aによりピストン6D,6Dが推進する。
これにより、ブレーキパッド6C,6Cによりディスクロータ4,4が押圧される。このとき、押圧部材保持機構8は、例えば螺合による摩擦力(保持力)により制動状態を保持される。従って、後輪側ディスクブレーキ6,6は、駐車ブレーキとして作動(アプライ)される。即ち、電動モータ7A,7Aへの給電を停止した後にも、押圧部材保持機構8,8により、ピストン6D,6Dは制動位置に保持される。
一方、運転者が駐車ブレーキスイッチ28を制動解除側(リリース側)に操作したときには、駐車ブレーキ制御装置23から電動モータ7A,7Aに対してモータが逆転するように給電される。この給電により、電動モータ7A,7Aが駐車ブレーキの作動時(アプライ時)と逆方向に回転される。このとき、押圧部材保持機構8による制動力の保持が解除され、ピストン6Dがディスクロータ4から離れる方向に変位することが可能になる。これにより、後輪側ディスクブレーキ6,6は、駐車ブレーキとしての作動が解除(リリース)される。
次に、車両の走行時に運転者が駐車ブレーキスイッチ28を制動側(アプライ側)に操作したときの制動動作について説明する。このとき、駐車ブレーキ制御装置23の演算回路24は、図4に示す制御処理を実行し、ESC16と協調して制動動作を行う。
そこで、駐車ブレーキ制御装置23の演算回路24で行われる制御処理について、図4を参照しつつ説明する。図4の制御処理は、例えば駐車ブレーキ制御装置23に通電している間、所定の制御周期で繰り返し実行される。
駐車ブレーキ制御装置23が起動する等により、図4の制御処理が開始されると、駐車ブレーキ制御装置23は、ステップ1で、走行中か否かを判定する。即ち、駐車ブレーキ制御装置23は、例えば車速センサの検出速度が7km/h以上の状態が所定時間継続しているか否かを判断することにより、車体1が走行中か否かを判定する。そして、ステップ1で「YES」、即ち車体1が走行中であると判定された場合には、ステップ2に進む。一方、ステップ1で「NO」、即ち車体1が停止中であると判定された場合には、リターンする。
ステップ2では、駐車ブレーキスイッチ28の作動操作があるか否かを判定する。即ち、駐車ブレーキ制御装置23は、運転者が駐車ブレーキを補助ブレーキとして用いるために、駐車ブレーキスイッチ28を制動側(アプライ側)に操作したか否かを判定する。そして、ステップ2で「YES」、即ち駐車ブレーキスイッチ28の作動操作があると判定された場合には、ステップ3に進む。一方、ステップ2で「NO」、即ち駐車ブレーキスイッチ28の作動操作がない場合には、リターンする。
ステップ3では、ESC用制御装置17への液圧制御実行要求発行を行う。即ち、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17に向けてESC16による前輪側ディスクブレーキ5,5と後輪側ディスクブレーキ6,6との液圧制御(即ち、制動力の付与)を実行(開始)する制御信号(減速要求信号)を出力する。これに加え、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17に向けて車体1の減速度を指示するための要求減速度信号を出力する。
ESC16およびESC用制御装置17が正常な場合には、ESC用制御装置17がESC16の各制御弁(のソレノイド)、液圧ポンプ用の電動モータ16Aを個別に駆動制御する。これにより、ESC用制御装置17は、ブレーキ側配管15A,15B,15C,15Dから各ディスクブレーキ5,6に供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御をそれぞれのディスクブレーキ5,6毎に個別に行う。このとき、ESC用制御装置17は、実行信号を出力する。
一方、ESC16の電動モータ16Aおよび各制御弁等の不調により、ESC16およびESC用制御装置17が非正常な場合には、ESC用制御装置17は、ESC16によるディスクブレーキ5,6に対する液圧制御を行うことができないことになる。このとき、ESC用制御装置17は、非実行信号を出力する。
次のステップ4では、所定時間以内にESC用制御装置17から実行応答がなしか否かを判定する。即ち、駐車ブレーキ制御装置23は、駐車ブレーキスイッチ28の作動操作から所定時間(例えば、1秒)以内に、ESC16が前輪側ディスクブレーキ5,5と後輪側ディスクブレーキ6,6とに液圧制御の実行を開始しているか否かを判定する。具体的には、駐車ブレーキ制御装置23は、駐車ブレーキスイッチ28の作動操作から所定時間以内に、ESC用制御装置17から実行信号が出力されたか否かを判定する。
そして、ステップ4で「YES」、即ち所定時間以内にESC用制御装置17から実行応答がない場合(非実行信号を受信している場合および通信途絶の場合)には、ステップ5に進む。一方、ステップ4で「NO」、即ち所定時間以内にESC用制御装置17から実行応答がある場合には、ESC16により制動力が付与されていると判断して、リターンする。
ステップ5では、ESC用制御装置17への液圧制御実行要求を終了し、駐車ブレーキによる緊急ブレーキ制御を開始する。即ち、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC16が液圧制御を実行していない場合には、ESC16による液圧制御の実行状態が異常であると判断する。そして、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC16による制動力の付与から駐車ブレーキによる制動力の付与に切替える。
具体的には、駐車ブレーキ制御装置23は、減速要求信号および要求減速度信号の出力を停止する。その後、駐車ブレーキ制御装置23は、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動アクチュエータ7,7(電動モータ7A,7A)を駆動させ、回転直動部材8A,8Aによりピストン6D,6Dを推進させる。これにより、後輪側ディスクブレーキ6,6のブレーキパッド6C,6Cは、ディスクロータ4,4に押圧され、車体1に制動力を付与することができる。
第1の実施形態によるブレーキシステムは上述のような構成を有するもので、次に、車両の走行中に運転者が駐車ブレーキスイッチ28を制動側に操作した場合の時間的推移について、図5を参照して説明する。なお、ESC16が正常に液圧制御を実行した場合には、図5中に示す実線29A〜29Fのように推移する。一方、ESC16が異常の場合には、各時間(t1〜t4)において実線29A〜29Fから点線30A〜30Eのように推移する。
まず、図5中の実線29A〜29Fを参照して、車両の走行中にESC16による液圧制御の実行状態が正常に開始した場合について説明する。
実線29Aに示すように、車両の走行中に時間t1で駐車ブレーキスイッチ28(PKBSW)がON側(制動側)に操作されると、実線29Bに示すように、所定の時間(例えば、600ms)経過後の時間t2で駐車ブレーキ制御装置23はESC用制御装置17に向けて減速要求信号および要求減速度信号を出力する。
そして、実線29Cに示すように、時間t2から通信遅れおよびESC用制御装置17の判定時間経過後の時間t3では、ESC用制御装置17が駐車ブレーキ制御装置23からの要求減速度信号に基づき、ESC16の電動モータ16Aを駆動して前後輪側のディスクブレーキ5,6の液圧制御を実行する。また、実線29Dに示すように、ESC用制御装置17は、駐車ブレーキ制御装置23に向けて出力されていたESC16の非実行信号を実行信号に切替えて出力する。
これにより、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC16による制動力の付与が行われたことを判断することができる。そして、実線29Eに示すように、車体1は、時間t3からESC16の液圧制御により徐々に減速される。この場合、実線29Fに示すように、電動駐車ブレーキ制御(PKB制御)は、非作動となっている。
なお、駐車ブレーキスイッチ28がOFF側(制動解除側)に操作された場合には、駐車ブレーキ制御装置23がESC用制御装置17に向けて出力している減速要求信号および要求減速度信号を停止する。これにより、ESC用制御装置17は、ESC16による液圧制御を停止するので、車体1への制動力は解除される。
次に、図5中の点線30A〜30Eを参照して、ESC16による液圧制御の実行状態が異常の場合について説明する。
このような場合には、時間t3から時間t4までの間で実行応答(実行信号)なし判定時間(例えば、600ms)を設けている。即ち、実線29Aに示すように、時間t1で駐車ブレーキスイッチ28がON操作された後の時間t2で駐車ブレーキ制御装置23は、実線29Bに示すように、ESC用制御装置17に向けて減速要求信号および要求減速度信号を出力する。そして、点線30Aに示すように、その後の時間t3でESC用制御装置17から駐車ブレーキ制御装置23に向けてESC16の非実行信号の出力が継続してなされている場合には、時間t4までESC用制御装置17からESC16の実行信号が出力されるか否かを監視する。この場合、点線30Bに示すように、ESC16による液圧制御はなされていないことになる。
そして、点線30Aに示すように、時間t4で駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17から液圧制御開始の信号(実行信号)を受信できず、かつ液圧制御の非実行信号が受信されている場合に液圧制御の実行状態が異常と判断する。この場合、点線30Cに示すように、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17に向けて出力されている減速要求信号および要求減速度信号の出力を停止する。そして、点線30Dに示すように、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC16による液圧制御に替えて駐車ブレーキ制御(PKB制御)、即ち電動アクチュエータ7(電動モータ7A)を駆動して制動力の付与を実行する。
これにより、点線30Eに示すように、車体1は、時間t4から駐車ブレーキ制御により徐々に減速される。なお、駐車ブレーキスイッチ28がOFF側(制動解除側)に操作された場合には、駐車ブレーキ制御装置23による駐車ブレーキ制御の実行を停止するので、車体1への制動力は解除される。
なお、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17から出力される液圧制御の実行信号または非実行信号を受信している。しかし、駐車ブレーキ制御装置23とESC用制御装置17との間が断線等により通信途絶(不可)状態となっている場合には、駐車ブレーキスイッチ28がON操作されたとしても、ESC用制御装置17が減速要求信号および要求減速度信号を受信できない。従って、ESC用制御装置17は、ESC16による液圧制御を実行しない。
この場合、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17からの応答信号(実行信号または非実行信号)が不明であると認識する。このような場合にも、駐車ブレーキ制御装置23は、液圧制御の実行状態が異常であると判断して、駐車ブレーキ制御を行うことにより、車体1に制動力を付与する。なお、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17からの応答信号が不明であると認識したときには、時間t4を待たずに駐車ブレーキ制御を実行してもよい。これにより、車体1に早期に制動力を付与することができるので、車体1の制動距離を短くすることができる。
かくして、第1の実施形態では、車両の走行中に駐車ブレーキスイッチ28がON操作されたときに、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17に向けてESC16の液圧制御によるブレーキ制御を実行する制御信号を出力する。その後、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17から液圧制御の実行状態を取得し、ESC16による液圧制御の実行状態が異常の場合に、電動アクチュエータ7(電動モータ7A)を駆動して制動力を付与している。即ち、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC用制御装置17がESC16による液圧制御の実行を開始してない場合に、駐車ブレーキにより制動力を付与する。
この場合、駐車ブレーキ制御装置23は、駐車ブレーキスイッチ28がON操作されてから所定時間以内に液圧制御の実行を開始したか否かにより異常を判断している。これにより、車両の減速度が発生し始めるタイミングまで待つことなく、早期に電動駐車ブレーキ制御に切替えることができる。このため、車両の減速度に基づいて、液圧制御による制動力から駐車ブレーキによる制動力に切替えた場合に比べて、車両の制動距離を短くすることができる。
また、車両の減速度変化を監視して電動駐車ブレーキ制御を行う場合には、その減速度がESC16による液圧制御によるものか、路面勾配(上り勾配)等の環境によるものかを判断することができない。これに対し、第1の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置23は、ESC16による液圧制御の実行が開始されたか否かを監視しているので、路面勾配等の環境による減速度変化に影響されることなく、電動駐車ブレーキ制御に切替えて車両に制動力を付与することができる。
次に、図6、図7は、本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、ESC16を制御するESC用制御装置と電動アクチュエータ7を制御する駐車ブレーキ制御装置とを統合した制動用制御装置31を車体1に搭載したことにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
制動用制御装置31は、後輪側ディスクブレーキ6および液圧供給装置16と共に、ブレーキシステムを構成している。図7に示すように、制動用制御装置31は、マイクロコンピュータ等によって構成される演算回路(CPU)32を有し、制動用制御装置31には、バッテリ18(ないしエンジンによって駆動されるジェネレータ)からの電力が電源ライン19を通じて給電される。
演算回路32には、ESC16を制御する液圧制御手段としての液圧制御部32Aと、電動アクチュエータ7(電動モータ7A)を制御する電動モータ制御手段としての電動モータ制御部32Bとが設けられている。演算回路32は、例えば同じ処理を並列に行うと共に互いに処理結果に相違がないかを監視するデュアルコア(二重回路)とし、一方のコア(回路)が故障しても他方のコア(回路)でバックアップできるように構成されている。
制動用制御装置31の液圧制御部32Aは、ESC16の各制御弁の開閉と電動モータ16Aの駆動を制御し、各ディスクブレーキ5,6に供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する。これに加えて、制動用制御装置31の電動モータ制御部32Bは、後輪側ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aの駆動を制御し、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。
制動用制御装置31は、左右の電動モータ7A,7Aを駆動することにより、ディスクブレーキ6,6を駐車ブレーキ(必要に応じて補助ブレーキ)として作動(アプライ・リリース)させる。このために、制動用制御装置31は、入力側が駐車ブレーキスイッチ28に接続され、出力側は各ディスクブレーキ6,6の電動モータ7A,7Aに接続されている。
制動用制御装置31は、運転者の駐車ブレーキスイッチ28の操作による作動要求(アプライ要求、リリース要求)、駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックによる作動要求に基づいて、左右の電動モータ7A,7Aを駆動し、左右のディスクブレーキ6,6のアプライ(保持)またはリリース(解除)を行う。このとき、後輪側ディスクブレーキ6では、各電動モータ7Aの駆動に基づいて、押圧部材保持機構8によるピストン6Dおよびブレーキパッド6Cの保持または解除が行われる。このように、制動用制御装置31は、ピストン6D(延いてはブレーキパッド6C)の保持作動(アプライ)または解除作動(リリース)のための作動要求信号に応じて、ピストン6D(延いてはブレーキパッド6C)を推進するべく電動モータ7Aを駆動制御する。
図7に示すように、制動用制御装置31の演算回路32には、記憶部としてのメモリ33に加えて、駐車ブレーキスイッチ28、車両データバス20、モータ駆動回路34,35,36等が接続されている。車両データバス20からは、ESC16の制御および駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち各種車両情報を取得することができる。また、図示は省略するが、制動用制御装置31には、ブレーキ操作検出センサ10、M/C圧力センサ21、およびW/C圧力センサ22が接続されている。なお、車両データバス20から取得する車両情報は、その情報を検出するセンサを制動用制御装置31(の演算回路32)に直接接続することにより取得する構成としてもよい。
制動用制御装置31は、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなる記憶部としてのメモリ33を備えている。メモリ33には、ESC16の制御プログラム、電動駐車ブレーキ(電動モータ7A)の制御プログラムが格納されている。これに加え、メモリ33には、図4に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ちESC16による液圧制御の実行状態が異常の場合に、電動モータ7A,7Aの駆動(アプライ、リリース)を行う処理プログラムが格納されている。
図7に示すように、制動用制御装置31には、ESC16の電動モータ16Aを駆動するESCモータ駆動回路34、ESC16の制御弁(のソレノイド)を駆動する制御弁駆動回路(図示せず)、一方(例えば左)の後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aを駆動する一側モータ駆動回路35、および他方(例えば右)の後輪側ディスクブレーキ6の電動モータ7Aを駆動する他側モータ駆動回路36が内蔵されている。さらに、図示は省略するが、制動用制御装置31には、電源ライン19からの電圧を検出する電圧センサ、電動モータ7A,7A,16Aのそれぞれのモータ電流を検出する電流センサ等も内蔵されている。ESCモータ駆動回路34、制御弁駆動回路、一側モータ駆動回路35、他側モータ駆動回路36、電圧センサ、電流センサは、それぞれ演算回路32に接続されている。
これにより、制動用制御装置31の演算回路32では、例えば電流センサ部により検出されるESC16の電動モータ16Aの電流値、さらには、前述のブレーキ操作検出センサ10により検出されるブレーキ操作の有無、M/C圧力センサ21およびW/C圧力センサ22により検出される液圧値等に基づいて、ディスクブレーキ5,6に対する液圧供給が正常か否かを判定することができる。また、制動用制御装置31の演算回路32では、駐車ブレーキのアプライまたはリリースを行うときに、電流センサ部により検出される電動モータ7A,7Aのモータ電流の変化(電流値の変化)に基づいて、ディスクロータ4とブレーキパッド6Cとの当接・離接の判定、電動モータ7Aの駆動の停止の判定(アプライ完了の判定、リリース完了の判定)を行うことができる。
次に、車両の走行時に運転者が駐車ブレーキスイッチ28を制動側(アプライ側)に操作したときの制動動作について説明する。このとき、制動用制御装置31の演算回路32は、図4に示す制御処理を実行し、ESC16または後輪側ディスクブレーキ6,6による制動動作を行う。
即ち、車両の走行中に駐車ブレーキスイッチ28がON側(制動側)に操作されると、制動用制御装置31の電動モータ制御部32Bは、液圧制御部32Aに向けて減速要求信号および要求減速度信号を出力する。そして、液圧制御部32Aは、ESC16の電動モータ16Aを駆動して前後輪側のディスクブレーキ5,6の液圧制御を実行する。
ESC16が正常に動作した場合には、ブレーキ側配管15A,15B,15C,15Dから各ディスクブレーキ5,6に供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御をそれぞれのディスクブレーキ5,6毎に個別に行われて制動力が付与される。この場合、液圧制御部32Aは、電動モータ制御部32Bに向けて液圧制御開始の信号(実行信号)を出力する。換言すると、液圧制御部32Aは、ESC16による液圧制御の実行を開始したときに、液圧制御開始のフラグ(実行フラグ)をセットする。
一方、ESC16の電動モータ16Aおよび各制御弁(図示せず)等の不調により、駐車ブレーキスイッチ28がON側に操作されてから所定時間以内にESC16による液圧制御の実行が開始されない場合には、液圧制御部32Aから電動モータ制御部32Bに向けて非実行信号が出力される。換言すると、液圧制御部32Aは、ESC16による液圧制御の実行を開始していない場合に、液圧制御非実行のフラグ(非実行フラグ)をセットする。また、液圧制御部32Aは、電動モータ制御部32Bに向けて非実行信号を出力したときに、ESC16による液圧制御の実行を中止する。
電動モータ制御部32Bは、駐車ブレーキスイッチ28がON側に操作(即ち、制動要求)から所定時間以内に、液圧制御部32Aから液圧制御開始の信号(実行フラグ)を受信(取得)できず、かつ液圧制御の非実行信号(非実行フラグ)が受信(取得)されている場合にESC16による液圧制御の実行状態が異常であると判断する。この場合、電動モータ制御部32Bは、液圧制御部32Aへの減速要求信号および要求減速度信号の出力を停止する。そして、電動モータ制御部32Bは、ESC16による液圧制御に替えて駐車ブレーキ制御(PKB制御)、即ち電動アクチュエータ7(電動モータ7A)を駆動して後輪側ディスクブレーキ6のピストン6Dを推進させて制動力の付与を実行する。
かくして、第2の実施形態についても第1の実施形態と同様に車両の減速度が発生し始めるタイミングまで待つことなく、早期に電動駐車ブレーキ制御に切替えることができる。このため、車両の減速度に基づいて、液圧制御による制動力から駐車ブレーキによる制動力に切替えた場合に比べて、車両の制動距離を短くすることができる。また、路面勾配等の環境による減速度変化に影響されることなく、電動駐車ブレーキ制御に切替えて車両に制動力を付与することができる。
特に、第2の実施形態では、液圧制御部32Aと電動モータ制御部32Bとが備えられた制動用制御装置31がESC16による液圧制御と電動アクチュエータ7による駐車ブレーキ制御とを行っている。これにより、液圧制御部32Aと電動モータ制御部32Bとの間の断線等による通信途絶は考慮する必要はないが、ESC16の不調等により制動力を付与できない場合に、早期に電動駐車ブレーキ制御に切替えて車両に制動力を付与することができる。
なお、上述した第1の実施形態では、後輪側ディスクブレーキ6を電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)とした場合を例に挙げて説明した。即ち、第1の実施形態では、後輪側ディスクブレーキ6を電動駐車ブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとすると共に、前輪側ディスクブレーキ5を電動駐車ブレーキ機能が付いていない液圧式ディスクブレーキとした場合を例に挙げて説明した。
しかし、これに限らず、例えば前輪側ディスクブレーキ5を電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)としてもよい。即ち、後輪側ディスクブレーキ6を駐車ブレーキ機能が付いていない液圧式ディスクブレーキとすると共に、前輪側ディスクブレーキ5を電動駐車ブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキとしてもよい。このことは、第2の実施形態についても同様である。
さらに、前輪側ディスクブレーキ5と後輪側ディスクブレーキ6との両方を、電動駐車ブレーキ機能付の液圧式ディスクブレーキ、即ち電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)としてもよい。要するに、車両の車輪のうち少なくとも左右一対の車輪のブレーキを、電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)により構成することができる。このことは、第2の実施形態についても同様である。
また、上述した第1の実施形態では、電動ブレーキ装置(電動駐車ブレーキ装置)として、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ6を例に挙げて説明した。しかし、ディスクブレーキ式のブレーキ機構に限らず、ドラムブレーキ式のブレーキ機構として構成してもよい。さらに、ディスクブレーキにドラム式の電動駐車ブレーキを設けたドラムインディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキの保持を行う構成等、ブレーキ機構(電動ブレーキ装置)は各種のものを採用することができる。このことは、第2の実施形態についても同様である。
以上説明した実施形態に基づくブレーキシステムとして、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、ピストンが制動部材に当接して該制動部材を被制動部材に押圧することにより制動力を付与するために、前記ピストンに液圧を供給する液圧供給装置の作動を制御する液圧制御手段と、電動モータで駆動される回転直動機構によって前記ピストンを推進し制動力を付与する電動パーキングブレーキの制動力を制御する電動モータ制御手段と、を備え、前記電動モータ制御手段は、前記液圧供給装置に対する液圧制御の実行状態を前記液圧制御手段から取得し、該液圧制御の実行状態が異常の場合に、前記電動モータを駆動して制動力を付与する。
第2の態様としては、第1の態様において、前記電動モータ制御手段は、制動要求から所定時間以内に、前記液圧制御手段から液圧制御開始の信号を受信できず、かつ液圧制御の非実行信号が受信されている場合に液圧制御の実行状態が異常とする。