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JP6862238B2 - ドリンクヨーグルトの製造方法 - Google Patents
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本発明は、菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌の発酵作用によるドリンクヨーグルトの製造方法に関する。
ヨーグルト等の発酵乳は、一般に、ブルガリア菌及びサーモフィラス菌等の乳酸菌により、牛乳等の動物乳を発酵させることによって得られ、その発酵物は整腸作用、免疫賦活作用、花粉症などのアレルギー発症抑制作用等の等の健康機能を有し、健康志向の高まりと相まってその需要が増加している。
本願出願人により分離された乳酸菌の一種であるクレモリス菌により発酵させて得られるヨーグルト(商品名「カスピ海ヨーグルト」出願人登録商標、登録第5761425号)も、整腸作用、免疫賦活作用、肌機能改善作用、血糖値上昇緩和作用などの優れた健康機能を有し、他のヨーグルトにはない独特のねばりある食感を有することと酸味が少なく食べやすいことが相まって好評を博している。そしてその健康機能は、前記クレモリス菌が菌体外に産生する粘性多糖に由来することが本願出願人の研究から明らかになっており、この菌体外粘性多糖を含有するヨーグルトは、独特の強い粘りを有し、保存時の離水を抑制するなどヨーグルトの物性にも大きく影響を及ぼしている。
前記クレモリス菌に限らず、菌体外に粘性多糖を産生する乳酸菌は数多く存在する。これらの菌体外粘性多糖産生菌を使用してヨーグルトを製造する場合、通常の乳酸菌である粘性多糖非産生菌を用いて発酵させる場合と比べて粘性の高いヨーグルトが得られる。
発酵乳のなかでも、いわゆる飲むタイプのドリンクヨーグルトは、手軽に摂取できるため、近年需要が高まっており、様々な製品が開発されている。しかしながら、発酵乳は、生菌を含むため、保存中に発酵が進み、酸度上昇、pH低下、粘性増加等の経時的な品質変化が生じるという問題があった。特に粘性が増加すると飲料として嚥下しにくくなるので、経時的な粘性増加はドリンクヨーグルトにとって深刻な問題である。この問題を解決するために、例えば、乳原料にパーオキシダーゼを添加して発酵する方法が提案されている(特許文献1)。
特許第3645986号公報
本発明者らは、菌体外粘性多糖を産生する乳酸菌を用いて、特に水等の希釈液を加えることなくドリンクとして飲みやすく、且つ、菌体外粘性多糖を有することにより得られる独特のねばり、とろみを有するドリンクヨーグルトの開発を検討したところ、その粘度が200〜700mPa・sの範囲に調整することが官能的に好ましいことが分かった。しかしながら、この粘度範囲で調整したドリンクヨーグルトは、保存中に経時的にその粘度が著しく上昇するという問題があった。そこで、本発明は、菌体外粘性多糖を産生する乳酸菌により発酵されて得られるドリンクヨーグルトにおいて、保存中の粘度上昇を抑制できるドリンクヨーグルトの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、驚くべきことに、菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌を用いてドリンクヨーグルトを製造する工程において、その乳酸発酵中のカード形成段階(発酵物のpHが5.2〜4.6)および発酵終了時点(発酵物のpHが4.6未満であって、所望のpHに到達した時点)で発酵物をそれぞれ攪拌し、次いで、冷却工程に付して得られた発酵物を攪拌して200〜700mPa・sの粘度に調整するという簡便な方法によって、ドリンクヨーグルトの保存中の粘度上昇を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
[1]菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌によって乳を含む原料を発酵させることを含むドリンクヨーグルトの製造方法であって、
発酵物のpHが5.2〜4.6であるカード形成段階において発酵物を攪拌する、第1攪拌工程、
前記第1攪拌工程後、発酵物のpHが4.6未満であって、発酵物が所望のpHに到達した発酵終了時点で発酵物を攪拌する、第2攪拌工程、
冷却工程、および
冷却工程により得られた発酵物を攪拌して粘度を200〜700mPa・sの範囲に調整する、第3攪拌工程、
を含む製造方法;
[2]第3攪拌工程後、発酵物を計量する、計量工程、
計量した発酵物を容器に充填する、容器充填工程、および
容器を密封する、密封工程
をさらに含む、上記[1]記載の製造方法;
[3]菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスまたはストレプトコッカス・サーモフィラスである、上記[1]または[2]に記載の製造方法;
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの方法によって製造されたドリンクヨーグルト;および
[5]乳および菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌を原料とした、製造後冷蔵保存14日後に200〜700mPa・sの粘度を維持するドリンクヨーグルト。
本発明によれば、菌体外粘性多糖を産生する乳酸菌を用いて、粘度200mPa・sを超えるドリンクヨーグルトであって、飲みやすい適度な粘度を有し、保存中も安定した粘性を維持するドリンクヨーグルトを製造することができる。また、本発明の方法は菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌を使用するため、本発明の方法によって製造されたドリンクヨーグルトは、濃厚な風味と適度な粘度を維持し、かつ、整腸作用、免疫賦活作用、肌機能改善作用、血糖値上昇緩和作用等の健康上有用な機能を有する。
本発明では、菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌が使用される。該乳酸菌は、発酵過程で粘性多糖を菌体外に産生する。本発明においては、菌体外粘性多糖産生能を有するいずれの乳酸菌を用いてもよい。例えば、菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌としては、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属等に属する菌体外粘性多糖を産生する乳酸菌が挙げられる。好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)またはストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)[ストレプトコッカス・サリバリウム・サブスピーシーズ・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)ともいう]の菌体外粘性多糖を産生する乳酸菌が使用される。ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスの菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌としては、例えば、限定するものではないが、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC, FERM P-20185)、が挙げられる。ストレプトコッカス・サーモフィラスの菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌としては、例えば、限定するものではないが、ストレプトコッカス・サリバリウム・サブスピーシーズ・サーモフィラス 510(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 510,一般社団法人日本乳業協会より入手)、ストレプトコッカス・サリバリウム・サブスピーシーズ・サーモフィラス ST386(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus ST386,イタリア国サッコ社(SACCO社)より入手)等が使用される。ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスFC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC,受託番号FERM P-20185)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。前記の乳酸菌は、単独または二種以上を併せて用いてもよい。
本発明の方法において使用される乳は、動物乳であり、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳、ラクダ乳等が挙げられる。乳の形態は特に限定されず、生乳、全脂乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等のいずれの形態の乳を使用してもよい。
本発明の方法において、乳を含む原料は、乳のみを含んでいてもよく、または、乳以外に、必要に応じ、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、異性化糖等の糖類、水、香料、酸味料等の他の原料を含んでいてもよい。乳として脱脂粉乳等の粉乳を用いる場合は、好ましくは、水、液糖等の水分を加える。
乳を含む原料は、必要に応じて均質化した後、殺菌する。均質化および殺菌の方法は、特に限定されず、当該分野において既知の方法を用いることができる。殺菌後、乳を含む原料の温度を発酵温度付近になるよう調整する。
本発明の方法においては、上記の乳を含む原料を、上記の菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌を用いて発酵させる。発酵は、乳を含む原料と乳酸菌を混合し、適当な温度で維持することによって実施する。乳を含む原料と混合する乳酸菌(種菌)の量は、特に限定されず、乳酸菌発酵に要する時間や最終的に得られる乳酸菌発酵物の物性を考慮して適宜決定することができる。発酵温度および発酵時間もまた、特に限定されず、使用する乳酸菌の種類および得られる発酵物の所望の物性に応じて適宜決定される。例えば、上記菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌としてラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスFCを使用する場合は、至適温度が25℃前後であるため、好ましくは約20℃〜30℃の温度条件下で、約4〜18時間発酵を行ってもよい。
本発明の方法は、上記の乳酸発酵中、発酵物のpHが5.2〜4.6であるカード形成段階において発酵物を攪拌する工程(第1攪拌工程)、および前記第1攪拌工程後、発酵物のpHが4.6未満であって、発酵物が所望のpHに到達した発酵終了時点で発酵物を攪拌する工程(第2攪拌工程)、発酵物を冷却する工程(冷却工程)、および冷却された発酵物を攪拌して粘度を200〜700mPa・sに調整する工程(第3攪拌工程)を含むことを特徴とする。
攪拌方法は、常法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、第1および第2攪拌工程では発酵タンクで発酵タンク内に備えられた攪拌翼を回転させることにより行われる。第3攪拌工程では、例えば、発酵タンク内、または発酵物が液送されたバッファータンク内で攪拌されるか、あるいは発酵物をバッファータンクに液送する際にスタティックミキサー等を用いて液送配管内で撹拌することによって、充填物の最終の粘度調整が行われる。
第1攪拌工程は、乳酸発酵中、発酵物のpHが5.2〜4.6であるカード形成段階におけるいずれかの時点で行われる。第1攪拌工程は、カード形成段階中、1回行えばよいが、時間間隔をあけて複数回行ってもよい。
第1攪拌工程では、形成中のカードが液状化する程度に攪拌すればよい。例えば、限定するものではないが、発酵物の粘度が1000〜2000mPa・s程度になるまで攪拌する。本発明の方法では、第1攪拌工程の間および後も乳酸発酵は継続させる。
第2攪拌工程は、乳酸発酵中の発酵物の前記第1攪拌工程後、発酵物のpHが4.6未満であって、発酵物が所望のpHに到達した発酵終了時点で行われる。発酵物は前記第1攪拌工程後も発酵し続けるため、発酵物のpHは低下し酸味が増す。本発明における所望のpHとは、最終的に得られるドリンクヨーグルトの風味、酸味等を考慮して適宜決定される。第2攪拌工程は、好ましくは発酵物のpHが4.2以上4.6未満のいずれかに達した時点で行う。
第2攪拌工程では、形成されたカードが液状化する程度に攪拌すればよい。例えば、限定するものではないが、発酵物の粘度が1000〜2000mPa・s程度になるまで攪拌する。
本発明の方法においては、さらに、発酵物のpHが4.6未満の段階であって、第2攪拌工程の前に発酵物を1回以上攪拌してもよい。
冷却工程は、発酵物を10℃以下、好ましくは2〜5℃に冷却することによって行う。冷却時間は、冷却温度および発酵物の量等の条件によって異なるが、例えば1〜24時間が挙げられる。例えば、冷却工程は、限定するものではないが、発酵終了後、発酵タンクまたは(発酵物が液送された)バッファータンクに備えられた冷却管に2〜5℃のチラー水を通すことにより、3〜8時間冷却することによって行う。
冷却工程により、発酵物の発酵を停止または遅延させる。冷却工程は、第2攪拌工程中、または第2攪拌工程後に直ちに開始される。
冷却工程後の発酵物は、すぐに第3攪拌工程に付してもよく、または冷却工程後、発酵物は、必要に応じて冷蔵保存してもよい。例えば、冷却工程後の発酵物を2〜5℃で1〜24時間保存してもよい。
第3攪拌工程は、冷却工程後の発酵物を攪拌することによって、発酵物の粘度を200〜700mPa・sの範囲の所望する粘度に調整する工程である。第3攪拌工程は、冷却工程時、または冷却工程後の冷蔵保存時と同じ温度で行ってもよく、例えば、2〜5℃で行う。
第3攪拌工程後、発酵物は所定量を計量し(計量工程)、計量した発酵物を容器に充填し(容器充填工程)、次いで容器を密封してもよい(密封工程)。上記の計量工程、容器充填工程、および密封工程はいずれも、10℃以下で行い、当該分野で通常行われる方法で実施することができる。密封工程後、発酵物を入れた容器を冷蔵保存する。冷蔵保存温度は、10℃以下、例えば2℃〜5℃であり、冷蔵保存期間は、限定するものではないが、例えば10〜30日間である。
また、必要に応じて、冷却工程または第3攪拌工程により得られた発酵物に、香料、酸味料、果肉、フルーツソース等の添加物を加えて混合してもよい。なお、果肉を混合する場合は、果肉の形状が損なわれないようにするために第3撹拌工程後に混合することが好ましく、形状を有しないフルーツソース等を混合する場合は、第3撹拌工程前に混合することが好ましい。
かくして、本発明の方法によれば、発酵物に、特に水等の希釈液を混合することなく、200〜700mPa・sの粘度を有するドリンクヨーグルトが製造される。
本発明は、さらに、本発明の方法によって製造されるドリンクヨーグルトを提供する(以下、「本発明のドリンクヨーグルト」ともいう)。本発明のドリンクヨーグルトは、冷蔵保存中も所望の粘度範囲を維持することができ、かつ、冷蔵保存中の粘度変化も小さい。例えば、本発明のドリンクヨーグルトの第3攪拌工程直後から冷蔵保存14日間後までの間の粘度増加率は、約1.7倍以下であり、例えば、約1.4〜1.7倍である。本発明の方法によれば、製造後冷蔵保存14日後に200〜700mPa・s、好ましくは500〜700mPa・sの粘度を維持するドリンクヨーグルトを製造することができる。さらに、本発明の方法では菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌を用いるので、本発明のドリンクヨーグルトは、トロリとした独特の食感を有し、かつ、整腸作用、免疫賦活作用、肌機能改善作用、血糖値上昇緩和作用等の健康上有用な機能を有する。さらに、本発明では、乳酸発酵温度、時間、乳酸菌の量等の乳酸発酵条件および撹拌条件を調整することにより、最終的に得られる発酵物の粘度を調節するこができ、冷蔵保存中に所望の粘度を維持するドリンクヨーグルトを得ることができる。特に、冷蔵保存中に200〜700mPa・sの粘度を維持する本発明のドリンクヨーグルトは、飲みやすい適度な粘度を有し、かつ、濃厚な液状であり、トロリとした独特の食感を有し、好ましい。
以下、実施例により本願発明を説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:経時的粘度安定性試験1
牛乳(95.0wt%)、グラニュー糖(3.0wt%)、および果糖ブドウ糖液糖(2.0wt%)を混合し(以下、「原料ミックス」という)、85℃で30分間加熱殺菌を行い、21℃前後まで冷却した。該原料ミックス400gに、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスFCを10〜10cfu/g含有するスターターを2.0wt%加えて混合し、21℃に維持して発酵させた。発酵開始時(発酵時間0時間目)の原料ミックスは、pH6.37および酸度0.19であった。なお、酸度は、ドリンクヨーグルト中の酸を乳酸に換算した重量百分率で表される。酸度は、例えば、試料9gを水で2倍に希釈した後、フェノールフタレイン指示薬を添加し、次いで、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液で中和滴定を行ない、30秒間微紅色の消失しない点を終点とし、終点における滴定量から試料100g中の乳酸量を算出し、得られた値を%で示すことによって測定した。
発酵開始後、発酵中のカード形成段階および発酵物のpHが4.6未満であって、発酵物が所定のpHに到達した各時点で発酵物を攪拌した。各攪拌は、60rpmで1分間行った。発酵終了時点(発酵開始後18時間目)での攪拌と同時に、発酵物を4℃で15時間冷却した。冷却後、発酵物を1000rpmで40秒間攪拌した。次いで、容器に充填し、10℃で冷蔵保存した。発酵終了時点での攪拌直後、冷却後、冷却後の攪拌直後、5日間冷蔵保存後、および14日間冷蔵保存後の発酵物の粘度を測定した。粘度測定は、B型粘度計を用いることにより行った。表1に、各発酵物の攪拌のタイミング、ならびに各段階での発酵物の酸度、pHおよび粘度の測定結果を示す。
Figure 0006862238
表1から明らかなように、発酵経過時間10時間目(pH4.61)の時点、発酵経過時間18時間目(pH4.28、発酵終了時点)および冷却後に攪拌を行った試料1、7および8は、14日間の冷蔵保存後も約500〜550mPa・sの粘度を維持し、濃厚であり、かつ、容易に飲用可能なものであった。なお、発酵経過時間10時間目(pH4.61)で行った第1攪拌後の発酵物の粘度は1500〜1700mPa・sであった。さらに、これらの試料は、冷蔵保存の間(冷却工程後の攪拌後から14日間冷蔵)の発酵物の粘度増加率も低かった(1.67倍まで)。これに対し、発酵経過時間10時間目(pH4.61)の時点で攪拌を行なわず、発酵経過時間12時間〜18時間目(pH4.55〜4.28)のいずれかの時点および冷却後にのみ攪拌を行った試料2〜5、ならびに冷却後にのみ攪拌を行った試料6は、試料1、7および8と比べて、冷蔵保存後の粘度が高かった。さらに、冷蔵保存の間の発酵物の粘度変化についても、1.78倍〜2倍を越える高い粘度増加率を示した。
発酵経過時間10時間目の発酵物は、カードが形成の途中であったが、発酵時間12時間目では完全にカードが形成された状態であった。したがって、冷蔵保存中に所望の粘度を維持し、かつ、粘度変化が小さいドリンクヨーグルトを得るには、第1攪拌工程を発酵物のカード形成段階において実施することが重要であることが分かった。
さらに、同様の実験において、発酵物のカード形成段階(発酵物のpH=4.66)において第1攪拌工程を行い、その後6時間発酵を継続させてカードが完全に形成した後(発酵物のpH=4.30、発酵終了時)に発酵物を冷却し、冷却後に攪拌した場合(すなわち、第2攪拌工程を行わなかった場合)は、得られたドリンクヨーグルトの冷蔵保存後の粘度が高く(13日間冷蔵保存後917mPa・s)、発酵物の粘度変化も大きかった[13日間冷蔵後と冷却後の攪拌直後の粘度変化比(13日間冷蔵後の粘度/冷却後の攪拌直後の粘度)=2.47]。したがって、冷蔵保存中に所望の粘度を維持し、かつ、粘度変化が小さいドリンクヨーグルトを得るには、発酵物の発酵終了時に第2攪拌工程を実施することが重要であることが分かった。
実施例2:経時的粘度安定性試験2
牛乳(95.0wt%)、グラニュー糖(3.0wt%)、および果糖ブドウ糖液糖(2.0wt%)を混合し(以下、「原料ミックス」という)、85℃で30分間加熱殺菌を行い、37℃前後まで冷却した。該原料ミックス400gに、ストレプトコッカス・サリバリウム・サブスピーシーズ・サーモフィラスST386を10〜10cfu/g含有するスターターを2.0wt%加えて混合し、37℃に維持して発酵させた。
発酵開始後、2時間目、3時間目、4時間目、5時間目、6時間目、および7時間目(発酵終了時点)の各時点で発酵物を攪拌した。各攪拌は、1分間で60回攪拌することによって行った。次いで、発酵物を4℃で10時間冷却した。冷却後、発酵物を攪拌した。冷却後の攪拌は、発酵開始後3時間目に攪拌を行った発酵物については、1000rpmで15秒間攪拌することによって行い、その他の発酵物については、1000rpmで40秒間攪拌することによって行った。次いで、各発酵物を容器に充填し、10℃で冷蔵保存した。冷却後、冷却後の攪拌直後、5日間冷蔵保存後、および14日間冷蔵保存後の発酵物の粘度を測定した。表2に、各発酵物の攪拌のタイミング、ならびに各段階での発酵物の酸度、pH、および粘度の測定結果を示す。なお、酸度および粘度の測定は、実施例1の記載と同様の方法によって行った。
Figure 0006862238
表2から明らかなように、発酵経過時間が3〜5時間目(pH5.19〜4.64)の時点で1回目の攪拌(第1攪拌)を行った試料は、14日間の冷蔵保存後も約380〜640mPa・sの粘度を維持し、濃厚であり、かつ、容易に飲用可能なものであった。さらに、これらの試料は、冷蔵保存の間(冷却工程後の攪拌後から14日間冷蔵)の発酵物の粘度増加率も低かった(1.52倍まで)。これに対し、発酵経過時間が短い時点または長い時点で1回目の攪拌を行った試料は、冷蔵保存後の粘度が高く、冷蔵保存の間の発酵物の粘度変化比も大きかった。
発酵経過時間3〜5時間目の発酵物は、カードが形成の途中であったが、発酵経過時間2時間目ではカードが全く形成されておらず、また、発酵経過時間6時間目では完全にカードが形成された状態であった。したがって、第1攪拌工程を発酵物のカード形成段階において実施した場合に、冷蔵保存中に所望の粘度を維持し、かつ、粘度変化が小さいドリンクヨーグルトを得られることが分かった。なお、発酵経過時間3時間目に第1攪拌を行った試料は、冷却後の攪拌(第3撹拌)後および冷蔵保存後の粘度が比較的低いが、2回目の攪拌(第2撹拌)、および/または第3撹拌の強度を下げて調整することによって、より高い粘度を維持できるドリンクヨーグルトを得ることができる。
本発明の方法によれば、飲みやすい適度な粘度を有し、冷蔵保存後も濃厚な風味と適度な粘度を維持し、冷蔵保存中の粘度変化が小さく、かつ、整腸作用、免疫賦活作用、肌機能改善作用、血糖値上昇緩和作用等の健康上有用な機能を有するドリンクヨーグルトを製造することができる。

Claims (3)

  1. 菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌によって乳を含む原料を発酵させることを含むドリンクヨーグルトの製造方法であって、
    発酵物のpHが5.2〜4.6であるカード形成段階において発酵物を攪拌する、第1攪拌工程、
    前記第1攪拌工程後、発酵物のpHが4.6未満であって、発酵物が所望のpHに到達した発酵終了時点で発酵物を攪拌する、第2攪拌工程、
    冷却工程、および
    冷却工程により得られた発酵物を攪拌して粘度を200〜700mPa・sの範囲に調整する、第3攪拌工程、
    を含む製造方法。
  2. 第3攪拌工程後、発酵物を計量する、計量工程、
    計量した発酵物を容器に充填する、容器充填工程、および
    容器を密封する、密封工程
    をさらに含む、請求項1記載の製造方法。
  3. 菌体外粘性多糖産生能を有する乳酸菌が、菌体外粘性多糖を産生するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスまたは菌体外粘性多糖を産生するストレプトコッカス・サーモフィラスである、請求項1または2記載の製造方法。

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