以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
本発明は、マスクブランク用基板の主表面上の一方の表面に、導電膜が形成された導電膜付き基板である。マスクブランク用基板の主表面(main surface)のうち、導電膜(「裏面導電膜」ともいう。)が形成される主表面を、「裏面(back surface)」という。また、本発明は、導電膜付き基板の導電膜が形成されていない主表面(「表面(front surface)」という場合がある。)の上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜が形成された多層反射膜付き基板である。
また、本発明は、多層反射膜付き基板の多層反射膜の上に吸収体膜を含むマスクブランク用多層膜を有する反射型マスクブランクである。
図1は、本発明の導電膜付き基板50の一例を示す模式図である。本発明の導電膜付き基板50は、マスクブランク用基板10の裏面の上に、裏面導電膜23が形成された構造を有する。なお、本明細書において、導電膜付き基板50とは、少なくともマスクブランク用基板10の裏面に裏面導電膜23が形成されたものであり、他の主表面の上に多層反射膜21が形成されたもの(多層反射膜付き基板20)、及び更に吸収体膜24が形成されたもの(反射型マスクブランク30)等も、導電膜付き基板50に含まれる。本明細書では、裏面導電膜23を、単に導電膜23という場合がある。
図2に、多層反射膜付き基板20の一例を示す。図2に示す多層反射膜付き基板20の主表面の上に多層反射膜21が形成されている。図3に、裏面に裏面導電膜23が形成された多層反射膜付き基板20を示す。図3に示す多層反射膜付き基板20は、その裏面に、裏面導電膜23を含むので、導電膜付き基板50の一種である。
図6は、本発明の反射型マスクブランク30の一例を示す模式図である。本発明の反射型マスクブランク30は、マスクブランク用基板10の主表面の上に、マスクブランク用多層膜26を有する。本明細書において、マスクブランク用多層膜26とは、反射型マスクブランク30において、マスクブランク用基板10の主表面の上に積層して形成される、多層反射膜21及び吸収体膜24を含む複数の膜である。マスクブランク用多層膜26は、更に、多層反射膜21及び吸収体膜24の間に形成される保護膜22、及び/又は吸収体膜24の表面に形成されるエッチングマスク膜25等を含むことができる。図6に示す反射型マスクブランク30の場合には、マスクブランク用基板10の主表面の上のマスクブランク用多層膜26が、多層反射膜21、保護膜22、吸収体膜24及びエッチングマスク膜25を有している。なお、エッチングマスク膜25を有する反射型マスクブランク30を用いる場合、後述のように、吸収体膜24に転写パターンを形成した後、エッチングマスク膜25を剥離してもよい。また、エッチングマスク膜25を形成しない反射型マスクブランク30において、吸収体膜24を複数層の積層構造とし、この複数層を構成する材料が互いに異なるエッチング特性を有する材料にして、エッチングマスク機能を持った吸収体膜24とした反射型マスクブランク30としてもよい。本発明の反射型マスクブランク30は、その裏面に、裏面導電膜23を含む。したがって、図6に示す反射型マスクブランク30は、導電膜付き基板50の一種である。
本明細書において、「マスクブランク用基板10の主表面の上に、多層反射膜21を有する」とは、多層反射膜21が、マスクブランク用基板10の表面に接して配置されることを意味する場合の他、マスクブランク用基板10と、多層反射膜21との間に他の膜を有することを意味する場合も含む。他の膜についても同様である。例えば「膜Aの上に膜Bを有する」とは、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する他、膜Aと膜Bとの間に他の膜を有する場合も含む。また、本明細書において、例えば「膜Aが膜Bの表面に接して配置される」とは、膜Aと膜Bとの間に他の膜を介さずに、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する。
図4は、本発明の反射型マスクブランク30の別の一例を示す模式図である。図4の反射型マスクブランク30の場合には、マスクブランク用多層膜26が、多層反射膜21、保護膜22及び吸収体膜24を有しているが、エッチングマスク膜25を有していない。また、図4の反射型マスクブランク30は、その裏面に、裏面導電膜23を含む。したがって、図4に示す反射型マスクブランク30は、導電膜付き基板50の一種である。
次に、マスクブランク用基板10の表面、及び反射型マスクブランク30等を構成する膜の表面の表面形態を示すパラメーターである表面粗さ(Rms)について説明する。
代表的な表面粗さの指標であるRms(Root means square)は、二乗平均平方根粗さであり、平均線から測定曲線までの偏差の二乗を平均した値の平方根である。Rmsは下式(1)で表される。
式(1)において、lは基準長さであり、Zは平均線から測定曲線までの高さである。
Rmsは、従来からマスクブランク用基板10の表面粗さの管理に用いられており、表面粗さを数値で把握できる。
次に、反射型マスクブランク30等を構成する膜の膜応力による基板の変形量を示すパラメーターとしてCTIR(Coordinate Total Indicator Reading)について説明する。まず、導電膜23を形成する前のマスクブランク用基板10の主表面(裏面)を測定して導電膜23の成膜前の基板の表面形状を取得する。次に、マスクブランク用基板10の主表面(裏面)に導電膜23が成膜された導電膜付き基板50の表面を測定して、導電膜23の成膜後の表面形状を取得する。CTIRは、基板10の表面形状と導電膜23の表面形状との間で差分形状を算出し、この差分形状において最も高い値と最も低い値との差の絶対値である。
表面形状は、表面形状解析装置(表面形状測定装置)を用いて行うことができる。表面形状の測定方法は、公知の方法を用いることができる。短時間で高精度の表面形状を測定することができることから、照射した光の干渉縞を利用した表面形状の測定方法を用いることが好ましい。このような表面形状を測定する装置では、レーザ光のようなコヒーレントの傾向が強い検査光を被測定対象物の測定領域全体に照射し、その表面で反射された光と、高い平坦度を有する基準表面で反射された光との間で干渉縞像を生成し、その干渉縞像を画像解析することで、その基板の表面形状を取得する。このような装置(表面形状解析装置)として、例えば、UltraFLAT 200M(Corning TROPEL社製)を用いることができる。
表面形状の測定は、一般的に次のような方法により、行うことができる。まず、測定対象の表面上にグリッド状に測定点を配置し、各測定点の高さ情報(この時の基準面は、例えば測定装置の参照平面である。)を、表面形状測定装置により取得する。次に、各測定点の高さ情報に基づいて、最小二乗法により近似した面(最小二乗平面)を算出し、これを基準面とする。次に、上記の各測定点の高さ情報を、その基準面(最小二乗平面)を基準とした各測定点の高さに換算し、その結果を、各測定点における表面形状の情報とする。
表面形状の測定領域の大きさは、基板の大きさ、反射型マスクとして用いる場合のパターンの大きさ及び静電チャックのサイズ等によって、適宜選択することができる。ここでは、132mm×132nmを測定領域とする。
次に、本発明の導電膜付き基板50、多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30及び反射型マスク40について、更に具体的に説明する。まず、本発明の導電膜付き基板50、多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30及び反射型マスク40に用いられるマスクブランク用基板10(単に「基板10」という場合がある。)について説明する。
[マスクブランク用基板10]
基板10としては、EUV光による露光時の熱による吸収体パターン24aの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材として、例えば、SiO2−TiO2系ガラス、及び多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
基板10の転写パターン(後述の吸収体パターン24a)が形成される側の第1主表面は、少なくともパターン転写精度、及び位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下である。また、第1主表面の反対側の第2主表面は、露光装置にセットするときに静電チャックされる面である。第2主表面は、132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下である。なお、反射型マスクブランク30における第2主表面側の平坦度は、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下であることが好ましくより好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。
また、基板10の表面平滑度の高さも極めて重要な項目である。転写用の吸収体パターン24aが形成される第1主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。なお、表面平滑度は、原子間力顕微鏡で測定することができる。
更に、基板10は、その上に形成される膜(多層反射膜21など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有していることが好ましい。特に、基板10は、65GPa以上の高いヤング率を有していることが好ましい。
本発明の多層反射膜付き基板20は、基板10の表面に接して下地膜を有することができる。下地膜は、基板10と多層反射膜21との間に形成される薄膜である。下地膜を有することにより、電子線によるマスクパターン欠陥検査時のチャージアップを防止するとともに、多層反射膜21の位相欠陥が少なく、高い表面平滑性を得ることができる。
下地膜の材料として、ルテニウム又はタンタルを主成分として含む材料が好ましく用いられる。例えば、Ru金属単体、Ta金属単体でも良いし、Ru又はTaにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、レニウム(Re)等の金属を含有したRu合金又はTa合金であっても良い。下地膜の膜厚は、裏面導電膜23の所定の光の透過率に対して悪影響を与えない範囲とすることができる。下地膜の膜厚は、例えば1nm〜10nmの範囲であることができる。
[多層反射膜付き基板20]
次に、本発明の導電膜付き基板50及び反射型マスクブランク30に用いることのできる多層反射膜付き基板20について以下に説明する。
図2は、本発明の裏面導電膜23及び反射型マスクブランク30に用いることのできる多層反射膜付き基板20の一例を示す模式図である。また、図3に、本発明の多層反射膜付き基板20の別の一例の模式図を示す。図3に示すように、多層反射膜付き基板20が所定の裏面導電膜23を有する場合には、この多層反射膜付き基板20は、本発明の裏面導電膜23の一種である。本明細書では、図2及び図3の両方に示す多層反射膜付き基板20を、本実施形態の多層反射膜付き基板20という。
<多層反射膜21>
本実施形態の多層反射膜付き基板20は、裏面導電膜23が形成される側とは反対側の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜21が形成されている。本実施形態の多層反射膜付き基板20は、所定の多層反射膜21を有することにより、所定の波長のEUV光を反射することができる。
なお、図2に示すように、本発明では、裏面導電膜23を形成する前に多層反射膜21を形成することができる。また、図1に示すように裏面導電膜23を形成し、その後、図3に示すように多層反射膜21を形成してもよい。
多層反射膜21は、反射型マスク40において、EUV光を反射する機能を付与するものである。多層反射膜21は、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に積層された多層膜の構成を有する。
一般的に、多層反射膜21として、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40から60周期程度積層された多層膜が用いられる。多層膜は、基板10側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、基板10側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。なお、多層反射膜21の最表面の層(即ち多層反射膜21の基板10と反対側の表面層)は、高屈折率層であることが好ましい。上述の多層膜において、基板10に、高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した積層構造(高屈折率層/低屈折率層)を1周期として複数周期積層する場合、最上層が低屈折率層となる。多層反射膜21の最表面の低屈折率層は、容易に酸化されてしまうので、多層反射膜21の反射率が減少する。反射率の減少を避けるため、最上層の低屈折率層上に、高屈折率層を更に形成して多層反射膜21とすることが好ましい。一方、上述の多層膜において、基板10に、低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した積層構造(低屈折率層/高屈折率層)を1周期として、複数周期積層する場合は、最上層が高屈折率層となる。この場合には、高屈折率層を更に形成する必要がない。
本実施形態において、高屈折率層としては、ケイ素(Si)を含む層が採用される。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、ボロン(B)、炭素(C)、窒素(N)、及び/又は酸素(O)を含むSi化合物を用いることができる。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィー用反射型マスク40が得られる。また、本実施形態において、基板10としてはガラス基板が好ましく用いられる。Siはガラス基板との密着性においても優れている。また、低屈折率層としては、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、及び白金(Pt)から選ばれる金属単体、又はこれらの合金が用いられる。例えば波長13nmから14nmのEUV光に対する多層反射膜21としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40から60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。なお、多層反射膜21の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成し、この最上層(Si)とRu系保護膜22との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成することができる。ケイ素酸化物層を形成することにより、反射型マスク40の洗浄耐性を向上させることができる。
上述の多層反射膜21の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。なお、多層反射膜21の各構成層の厚さ、及び周期は、露光波長により適宜選択することができ、例えばブラッグ反射の法則を満たすように選択することができる。多層反射膜21において、高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在する。複数の高屈折率層の厚さが同じである必要はなく、複数の低屈折率層の厚さが同じである必要はない。また、多層反射膜21の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、3nmから10nmとすることができる。
多層反射膜21の形成方法は、公知である。例えばイオンビームスパッタリング法により、多層反射膜21の各層を成膜することで形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタリング法により、まずSiターゲットを用いて厚さ4nm程度のSi膜を基板10の上に成膜し、その後Moターゲットを用いて厚さ3nm程度のMo膜を成膜する。このSi膜/Mo膜を1周期として、40から60周期積層して、多層反射膜21を形成する(最表面の層はSi層とする)。また、多層反射膜21の成膜の際に、イオン源からクリプトン(Kr)イオン粒子を供給して、イオンビームスパッタリングを行うことにより多層反射膜21を形成することが好ましい。
<保護膜22>
本実施形態の多層反射膜付き基板20は、マスクブランク用多層膜26が、多層反射膜21の表面のうち、マスクブランク用基板10とは反対側の表面に接して配置される保護膜22を更に含むことが好ましい。
保護膜22は、後述する反射型マスク40の製造工程におけるドライエッチングや洗浄から多層反射膜21を保護するために、多層反射膜21の上に形成される。また、電子線(EB)を用いた吸収体パターン24aの黒欠陥修正の際に、保護膜22によって多層反射膜21を保護することができる。保護膜22を、3層以上の積層構造とすることができる。例えば、保護膜22の最下層と最上層を、上記Ruを含有する物質からなる層とし、最下層と最上層との間に、Ru以外の金属、又はRu以外の金属の合金を介在させた構造とすることができる。保護膜22の材料は、例えば、ルテニウムを主成分として含む材料により構成される。ルテニウムを主成分として含む材料としては、Ru金属単体、又はRuにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、及び/又はレニウム(Re)などの金属を含有したRu合金を用いることができる。また、これらの保護膜22の材料は、窒素を更に含むことができる。保護膜22は、Cl系ガスのドライエッチングで吸収体膜24をパターニングする場合に有効である。
保護膜22の材料としてRu合金を用いる場合、Ru合金のRu含有比率は50原子%以上100原子%未満、好ましくは80原子%以上100原子%未満、更に好ましくは95原子%以上100原子%未満である。特に、Ru合金のRu含有比率が95原子%以上100原子%未満の場合には、保護膜22への多層反射膜21を構成する元素(ケイ素)の拡散を抑えつつ、EUV光の反射率を十分確保することができる。更にこの保護膜22は、マスク洗浄耐性、吸収体膜24をエッチング加工したときのエッチングストッパ機能、及び多層反射膜21の経時変化防止のための保護機能を兼ね備えることが可能となる。
EUVリソグラフィーの場合、露光光に対して透明な物質が少ないので、マスクパターン面への異物付着を防止するEUVペリクルが技術的に簡単ではない。このことから、ペリクルを用いないペリクルレス運用が主流となっている。また、EUVリソグラフィーの場合、EUV露光によってマスクにカーボン膜が堆積したり、酸化膜が成長したりするといった露光コンタミネーションが起こる。そのため、EUV反射型マスク40を半導体装置の製造に使用している段階で、度々洗浄を行ってマスク上の異物及びコンタミネーションを除去する必要がある。このため、EUV反射型マスク40では、光リソグラフィー用の透過型マスクに比べて桁違いのマスク洗浄耐性が要求されている。Tiを含有したRu系の保護膜22を用いると、硫酸、硫酸過水(SPM)、アンモニア、アンモニア過水(APM)、OHラジカル洗浄水及び濃度が10ppm以下のオゾン水などの洗浄液に対する洗浄耐性を特に高くすることができる。そのため、EUV反射型マスク40に対するマスク洗浄耐性の要求を満たすことが可能となる。
保護膜22の厚みは、その保護膜22としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。EUV光の反射率の観点から、保護膜22の厚さは、好ましくは、1.0nmから8.0nm、より好ましくは、1.5nmから6.0nmである。
保護膜22の形成方法としては、公知の膜形成方法と同様のものを特に制限なく採用することができる。保護膜22の形成方法の具体例としては、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
[導電膜付き基板50]
次に、本発明の導電膜付き基板50について、説明する。図2に示す多層反射膜付き基板20において、基板10の多層反射膜21と接する面と反対側の面に、所定の裏面導電膜23を形成することによって、図3に示すような本発明の導電膜付き基板50を得ることができる。なお、本発明の導電膜付き基板50は、必ずしも多層反射膜21を有する必要はない。図1に示すように、マスクブランク用基板10の主表面上の一方の表面に、所定の裏面導電膜23を形成することによって、本発明の導電膜付き基板50を得ることもできる。
本発明の導電膜付き基板50は、リソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板10の主表面上の一方の表面(裏面)に、導電膜23(裏面導電膜23)が形成される。導電膜23は、チタン(Ti)及び窒素(N)を含む材料からなる。チタン及び窒素を含む材料中の、チタン及び窒素の合計含有量は95原子%以上である。チタン及び窒素を含む材料は、化学量論的組成の窒化チタン(化学式:TiN)よりもチタンを多く含む。
導電膜23を形成するためのチタン及び窒素を含む材料は、化学量論的組成の窒化チタンよりもチタンを多く含むことが好ましい。すなわち、導電膜23の材料中のチタンの原子%、及び窒素の原子%の比(窒素の原子%/チタンの原子%)は、1未満であり、0.95以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましい。導電膜23の材料がチタンを比較的多く含むことにより、導電膜23の材料の電気伝導度を高くすることができる。そのため、導電膜23のシート抵抗を低くすることができる。
チタン及び窒素を含む材料で形成された導電膜23は、表面酸化の影響がある表層を除き、チタン及び窒素の濃度が均一である均一膜であることができる。また、導電膜23中のチタン及び/又は窒素の濃度が、導電膜23の厚さ方向に沿って変化するようにした組成傾斜膜とすることができる。また、導電膜23は、本発明の効果を損なわない範囲で、複数の異なった組成の複数層からなる積層膜であることができる。例えば、導電膜23は、導電膜23の最表面に配置される上層膜、及び/又は上層膜及び導電膜本体との間に配置される中間膜を含むことができる。
導電膜23を形成するための材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、チタン以外の金属を更に含むことができる。チタン以外の金属としては、導電性の高い金属であるAg、Au、Cu、Al、Mg、W及びCoなどを挙げることができる。導電膜23を形成するための材料は、窒素以外の非金属(例えば、酸素及びホウ素等)を含まないことが好ましい。特に、材料がホウ素を含有すると、透過率及び導電率が共に低下する。したがって、導電膜23を形成するための材料には、ホウ素を含まないことが好ましい。
本発明の導電膜付き基板50の導電膜23は、X線回折による回折ピークの強度において、TiN(200)の回折ピークの強度の値I(200)を、TiN(200)の回折ピークの強度の値I(200)、及びTiN(111)の回折ピークの強度の値I(111)の合計の値で除した割合(Ir)が、0.4以上であることが好ましく、0.5以上がより好ましく、0.7以上が更に好ましい。割合(Ir)は、次式により求めることができる。
Ir = I(200)/[I(200)+I(111)]
チタン及び窒素を含む材料において、TiN(111)の回折ピークの強度の値に比べて、TiN(200)の回折ピークの強度の値が増加すると、膜応力が小さくなる。TiN(200)の回折ピークの強度の値の比が所定の比以上であることにより、導電膜23の膜応力を化学量論的組成の窒化チタンよりも小さくすることができ、基板の変形量を小さくすることが可能となる。なお、回折ピークの強度の測定方法については後述する。
導電膜23の膜厚は、波長532nmの光における透過率及び電気伝導度との関係で、適切な膜厚を選択することができる。例えば、材料の電気伝導度が高ければ、薄い膜厚にすることができ、透過率を高くすることができる。一般的には、本発明の導電膜付き基板50の導電膜23の膜厚は、10nm以上30nm以下であることが好ましい。導電膜23が所定の膜厚であることにより、より適切な透過率及び導電性を有する導電膜23を得ることができる。導電膜23の膜厚が20nm以下の場合には、透過率が20%以上になるので、好ましい。
導電膜23の波長532nmの透過率は、10%以上であり、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。波長632nmの透過率は、25%以上であることが好ましい。導電膜付き基板50の裏面導電膜23の所定の波長の光の透過率が所定の範囲であることにより、反射型マスクの位置ずれをレーザビーム等により裏面側から補正することのできる反射型マスク40を得ることができる。
導電膜23のシート抵抗は、150Ω/□(Ω/square)以下であることが好ましい。シート抵抗が所定の範囲であることにより、静電チャック用の導電膜23として求められる電気的特性を満足することができる。導電膜23のシート抵抗は、導電膜23の組成及び膜厚を調整することにより制御することができる。
導電膜23の表面粗さは、10μm×10μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)は、0.6nm以下が好ましく、0.3nm以下とすることがより好ましい。導電膜23の表面が所定の二乗平均平方根粗さ(Rms)であることにより、静電チャックと導電膜23との擦れによるパーティクルの発生を防止することができる。
導電膜23の表面形状は、凸形状で、132mm×132mmの領域における膜応力による基板の変形量(CTIR)は、好ましくは350nm±150nmの範囲内である。
導電膜23の機械強度は、導電膜付き基板50のクラック発生荷重を測定することにより評価することができる。機械強度は、クラック発生荷重の値で300mN以上であることが必要である。クラック発生荷重が所定の範囲であることにより、裏面導電膜23は、静電チャック用の導電膜23として求められる機械強度を有するといえる。クラック発生荷重の測定方法については、後述する。
裏面導電膜23の形成方法は公知である。裏面導電膜23は、例えば、マグネトロンスパッタリング法、又はイオンビームスパッタリング法により、形成することができる。スパッタリング法によりTiN膜を形成する場合には、Tiのターゲットを使用し、スパッタリング用のガスとして、Arガス及びN2ガスを導入する。成膜の際のArガスとN2ガスとの流量比、ガス圧力又は電力等を調整することにより、窒化度の低いTiN膜を得ることができる。また、導電膜23を低圧成膜することにより、基板との付着力を大きくして、クラック発生荷重を大きくすることが可能となる。
裏面導電膜23の形成方法は、具体的には、裏面導電膜23を形成するための基板10の被成膜面を上方に向けて、基板10を水平面上で回転させ、基板10の中心軸と、スパッタリングターゲットの中心を通り基板10の中心軸とは平行な直線とがずれた位置で、被成膜面に対してスパッタリングターゲットを、所定の角度となるように傾斜させて、裏面導電膜23を成膜することが好ましい。スパッタリングターゲット及び基板10を、このような配置にして、対向したスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって裏面導電膜23を成膜することができる。所定の角度は、スパッタリングターゲットの傾斜角度が5度以上30度以下の角度であることが好ましい。またスパッタリング成膜中のガス圧は、0.03Pa以上0.1Pa以下であることが好ましい。このような方法によって裏面導電膜23を成膜することにより、化学量論的組成の窒化チタンよりも膜応力の小さい裏面導電膜23を得ることができる。
本発明の導電膜付き基板50を用いて反射型マスク40を製造することができる。本発明の導電膜付き基板50の導電膜23は、波長532nmのレーザビーム等を透過することが可能である。また、本発明の導電膜付き基板50に配置される裏面導電膜23は、所定の組成の導電膜23であることにより、化学量論的組成の窒化チタンよりも膜応力を小さくして、多層反射膜等の表面側の膜応力と容易に釣り合いをとることが可能となり、基板の変形量を小さくすることができる。そのため、本発明によれば、平坦度に優れ、かつ反射型マスクの位置ずれをレーザビーム等により裏面側から補正することのできる反射型マスク40を製造するための導電膜付き基板50を得ることができる。また、本発明の導電膜付き基板50の裏面導電膜は、その他の要求値、例えば、シート抵抗、表面粗さ及び機械強度の要求値を満たすことができる。
[反射型マスクブランク30]
次に、本発明の反射型マスクブランク30について説明する。図4は、本発明の反射型マスクブランク30の一例を示す模式図である。本発明の反射型マスクブランク30は、上述の多層反射膜付き基板20の多層反射膜21の上、又は保護膜22の上に、吸収体膜24を形成した構造を有する。反射型マスクブランク30は、吸収体膜24の上に更にエッチングマスク膜25及び/又はレジスト膜32を有することができる(図7(a)参照)。
<吸収体膜24>
反射型マスクブランク30は、上述の多層反射膜付き基板20の上に、吸収体膜24を有する。すなわち、吸収体膜24は、多層反射膜21の上(保護膜22が形成されている場合には、保護膜22の上)に形成される。吸収体膜24の基本的な機能は、EUV光を吸収することである。吸収体膜24は、EUV光の吸収を目的とした吸収体膜24であっても良いし、EUV光の位相差も考慮した位相シフト機能を有する吸収体膜24であっても良い。位相シフト機能を有する吸収体膜24とは、EUV光を吸収するとともに一部を反射させて位相をシフトさせるものである。すなわち、位相シフト機能を有する吸収体膜24がパターニングされた反射型マスク40において、吸収体膜24が形成されている部分では、EUV光を吸収して減光しつつパターン転写に悪影響がないレベルで一部の光を反射させる。また、吸収体膜24が形成されていない領域(フィールド部)では、EUV光は、保護膜22を介して多層反射膜21から反射する。そのため、位相シフト機能を有する吸収体膜24からの反射光と、フィールド部からの反射光との間に所望の位相差を有することになる。位相シフト機能を有する吸収体膜24は、吸収体膜24からの反射光と、多層反射膜21からの反射光との位相差が170度から190度となるように形成される。180度近傍の反転した位相差の光同士がパターンエッジ部で干渉し合うことにより、投影光学像の像コントラストが向上する。その像コントラストの向上に伴って解像度が上がり、露光量裕度、焦点裕度等の露光に関する各種裕度を大きくすることができる。
吸収体膜24は単層の膜であっても良いし、複数の膜(例えば、下層吸収体膜及び上層吸収体膜)からなる多層膜であっても良い。単層膜の場合は、マスクブランク製造時の工程数を削減できて生産効率が上がるという特徴がある。多層膜の場合には、上層吸収体膜が、光を用いたマスクパターン欠陥検査時の反射防止膜になるように、その光学定数と膜厚を適当に設定することができる。このことにより、光を用いたマスクパターン欠陥検査時の検査感度が向上する。また、上層吸収体膜に酸化耐性が向上する酸素(O)及び窒素(N)等が添加された膜を用いると、経時安定性が向上する。このように、吸収体膜24を多層膜にすることによって様々な機能を付加させることが可能となる。吸収体膜24が位相シフト機能を有する吸収体膜24の場合には、多層膜にすることによって光学面での調整の範囲を大きくすることができるので、所望の反射率を得ることが容易になる。
吸収体膜24の材料としては、EUV光を吸収する機能を有し、エッチング等により加工が可能(好ましくは塩素(Cl)やフッ素(F)系ガスのドライエッチングでエッチング可能)である限り、特に限定されない。そのような機能を有するものとして、タンタル(Ta)単体又はTaを含む材料を好ましく用いることができる。
Taを含む材料としては、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBと、O及びNのうち少なくとも1つとを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、TaとPdを含む材料、TaとRuを含む材料、及びTaとTiを含む材料等を挙げることができる。
吸収体膜24は、例えば、Ni単体、Niを含む材料、Cr単体、Crを含む材料、Ru単体、Ruを含む材料、Pd単体、Pdを含む材料、Mo単体、及び、Moを含有する材料からなる群から選択される少なくとも1つを含む材料により形成することができる。
EUV光の吸収を適切に行うために、吸収体膜24の厚みは、好ましくは、30nm〜100nmである。
吸収体膜24は、公知の方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法や、イオンビームスパッタリング法などによって形成することができる。
<エッチングマスク膜25>
吸収体膜24の上にはエッチングマスク膜25を形成してもよい。エッチングマスク膜25の材料としては、エッチングマスク膜25に対する吸収体膜24のエッチング選択比が高い材料を用いる。ここで、「Aに対するBのエッチング選択比」とは、エッチングを行いたくない層(マスクとなる層)であるAとエッチングを行いたい層であるBとのエッチングレートの比をいう。具体的には「Aに対するBのエッチング選択比=Bのエッチング速度/Aのエッチング速度」の式によって特定される。また、「選択比が高い」とは、比較対象に対して、上記定義の選択比の値が大きいことをいう。エッチングマスク膜25に対する吸収体膜24のエッチング選択比は、1.5以上が好ましく、3以上が更に好ましい。
エッチングマスク膜25に対する吸収体膜24のエッチング選択比が高い材料としては、クロム及びクロム化合物の材料が挙げられる。したがって、吸収体膜24をフッ素系ガスでエッチングする場合には、クロム及びクロム化合物の材料を使用することができる。クロム化合物としては、Crと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。また、吸収体膜24を、実質的に酸素を含まない塩素系ガスでエッチングする場合には、ケイ素及びケイ素化合物の材料を使用することができる。ケイ素化合物としては、Siと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料、並びにケイ素及びケイ素化合物に金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)、及び金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)などの材料が挙げられる。金属ケイ素化合物としては、金属と、Siと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。
エッチングマスク膜25の膜厚は、転写パターンを精度よく吸収体膜24に形成するエッチングマスクとしての機能を得る観点から、3nm以上であることが望ましい。また、エッチングマスク膜25の膜厚は、レジスト膜32の膜厚を薄くする観点から、15nm以下であることが望ましい。
[反射型マスク40]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスク40について以下に説明する。図5は、本実施形態の反射型マスク40を示す模式図である。
本発明の反射型マスク40は、上記の反射型マスクブランク30における吸収体膜24をパターニングして、多層反射膜21の上、又は保護膜22の上に吸収体パターン24aを形成した構造である。本実施形態の反射型マスク40は、EUV光等の露光光で露光すると、反射型マスク40の表面で吸収体膜24のある部分では露光光が吸収され、それ以外の吸収体膜24を除去した部分では露出した保護膜22及び多層反射膜21で露光光が反射されることにより、リソグラフィー用の反射型マスク40として使用することができる。
本発明の反射型マスク40によれば、多層反射膜21上(又は保護膜22上)に吸収体パターン24aを有することにより、EUV光を用いて所定のパターンを被転写体に転写することができる。
本発明の反射型マスク40は、所定の波長の透過率が所定の値以上であるため、特許文献3(特許第5883249号公報)に記載の方法によって、レーザビーム等により本発明の反射型マスク40の位置ずれを補正することができる。そのため、本発明の反射型マスク40は、高精度の転写パターンを有することができるといえる。
[半導体装置の製造方法]
以上説明した反射型マスク40と、露光装置を使用したリソグラフィープロセスにより、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜32に、反射型マスク40の吸収体パターン24aに基づく回路パターン等の転写パターンを転写し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板等の被転写体上に種々の転写パターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
すなわち、本発明は、上述の反射型マスク40を用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する半導体装置の製造方法である。
本発明の半導体装置の製造方法によれば、特許文献3(特許第5883249号公報)に記載の方法によって、反射型マスクの位置ずれをレーザビーム等により裏面側から補正することのできる反射型マスク40を、半導体装置の製造のために用いることができる。そのため、本発明の反射型マスク40を、半導体装置の製造のために用いる場合には、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができるといえる。
以下、実施例について図面を参照しつつ説明する。
(実施例1)
まず、実施例1の導電膜付き基板50について説明する。
実施例1の導電膜付き基板50を製造するための基板10は、次のように用意した。すなわち、第1主表面及び第2主表面の両主表面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO2−TiO2系ガラス基板を準備し基板10とした。平坦で平滑な主表面となるように、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
実施例1のSiO2−TiO2系ガラス基板10の第2主表面(裏面)に、TiN膜からなる裏面導電膜23をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により下記の条件にて形成した。
ターゲット:Tiターゲット
成膜ガス:ArとN2の混合ガス雰囲気(流量比率、Ar:N2=2:3)。
成膜ガス圧力:0.043Pa
成膜時の電力:1500W
膜厚:16nm
実施例1の導電膜23の組成(原子%)は、Ti:N=54:46であり、化学量論的組成の窒化チタンよりもチタンを多く含む。また、窒素の含有量をチタンの含有量で除したN/Ti比率は、0.85であった。
表1に、以上のようにして得られた実施例1の膜厚(nm)、TiN(200)ピークの相対強度、シート抵抗(Ω/□)、波長532nmの光の透過率(%)、機械強度(クラック発生荷重、単位mN)、表面粗さ(Rms、単位:nm)、膜応力による基板の変形量(CTIR、nm)を示す。なお、CTIRの測定により、すべての試料は凸形状(基板に対して導電膜23が弧の外側になる形状)であることを確認した。
「TiN(200)ピークの相対強度(Ir)」とは、X線回折による回折ピークの強度において、TiN(200)の回折ピークの強度の値I(200)を、TiN(200)の回折ピークの強度の値I(200)、及びTiN(111)の回折ピークの強度の値I(111)の合計の値で除した割合(Ir)である。
Ir = I(200)/[I(200)+I(111)]
TiN(200)及びTiN(111)の回折ピークの強度は、次のようにして測定した。すなわち、X線回折装置SmartLab(リガク社製)を用いて、電圧45kV、電流200mAにより発生したCuKαの特性X線を試料に照射し、回折X線の強度及び回折角度(2θ)を測定することにより、所定の結晶面に対応する回折X線の回折ピークを得た。回折ピークの強度は、所定のピークの面積を測定することにより行った。その際に、測定装置付属のソフトウェアを用いて、所定のバックグラウンドを差し引く等の処理をした。
機械強度の評価のために、実施例1の導電膜付き基板50のクラック発生荷重を測定した。図8に、クラック発生荷重の測定について説明するための模式図を示す。クラック発生荷重は、次のようにして測定することができる。すなわち、クラック発生荷重測定装置100のステージ104に、導電膜付き基板50を載置する。次に、圧子102を、導電膜付き基板50の導電膜23に接触するように配置する。圧子102は、所定の荷重を印加して、圧子102の先端を導電膜23に押し付けることが可能な構造である。圧子102の先端は、所定の曲率半径を有する形状である。次に、圧子102に印加する荷重を所定の速度で増加させながら、ステージ104を所定の速度で移動させる。導電膜付き基板50の導電膜23にクラックが発生したときの圧子102の荷重をクラック発生荷重とした。
クラック発生荷重の測定条件は、下記の通りである。
初期荷重:20mN
最終荷重:1000mN
圧子102の荷重の増加速度:400mN/分
ステージ104の移動速度:1mm/分
圧子102タイプ:Rockwell
圧子102の先端の曲率半径:20μm
以上のようにして、実施例1の導電膜付き基板50の製造及び評価を行った。
(比較例1)
比較例1の導電膜付き基板50の製造は、導電膜23の成膜を下記の条件で行った以外は実施例1と同様に行った。
実施例1と同様の、比較例1の基板10の第2主表面(裏面)に、TiN膜からなる裏面導電膜23をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により下記の条件にて形成した。比較例1の成膜条件のうち、実施例1と異なる条件は、成膜ガス及び成膜ガス圧力である。
ターゲット:Tiターゲット
成膜ガス:ArとN2の混合ガス雰囲気(流量比率、Ar:N2=3:2)。
成膜ガス圧力:0.084Pa
成膜時の電力:400W
膜厚:16nm
比較例1の導電膜23の組成(原子%)は、Ti:N=50:50であり、化学量論的組成の窒化チタンであった。
実施例1と同様に、比較例1のTiN(200)ピークの相対強度、シート抵抗(Ω/□)、波長532nmの光の透過率(%)、機械強度(クラック発生荷重、単位mN)、表面粗さ(Rms、単位:nm)、及び膜応力による基板の変形量(CTIR、nm)を測定した。表1に、これらの測定結果を示す。なお、CTIRの測定により、すべての試料は凸形状(基板に対して導電膜23が弧の外側になる形状)であることを確認した。
(実施例1及び比較例1の導電膜付き基板50の比較)
表1に示すように、実施例1及び比較例1の導電膜付き基板50の導電膜23のシート抵抗は、150Ω/□以下であり、反射型マスク40の裏面導電膜23として満足できる値だった。同様に、実施例1及び比較例1の波長532nmの光の透過率は、25%以上であり、機械強度(クラック発生荷重)は300mN以上であり、表面粗さ(Rms)は0.60nm以下であった。したがって、実施例1及び比較例1の導電膜付き基板50は、波長532nmの光の透過率、機械強度及び表面粗さ(Rms)についても、反射型マスク40の裏面導電膜23として満足できる値だった。しかしながら、比較例1の導電膜23のCTIRは532nmであり、平坦度が優れた反射型マスク40を得るための裏面導電膜23として許容できる上限である500nmを超えていた。これに対して実施例1の導電膜23のCTIRは359nmであり、反射型マスク40の裏面導電膜23として満足できる値だった。以上のことから、本発明により、平坦度に優れ、かつ反射型マスクの位置ずれをレーザビーム等により補正することができる反射型マスクを製造するための導電膜付き基板40を得ることできることが明らかとなった。
次に、実施例1及び比較例1の多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30及び反射型マスク40について説明する。
上述のようにして製造された導電膜付き基板50の裏面導電膜23が形成された側と反対側の基板10の主表面(第1主表面)の上に、多層反射膜21及び保護膜22を形成することにより多層反射膜付き基板20を製造した。多層反射膜付き基板20の保護膜22の上に吸収体膜24を形成することにより、反射型マスクブランク30を製造した。具体的には、下記のようにして、多層反射膜付き基板20及び反射型マスクブランク30を製造した。
裏面導電膜23が形成された側と反対側の基板10の主表面(第1主表面)の上に、多層反射膜21を形成した。基板10の上に形成される多層反射膜21は、波長13.5nmのEUV光に適した多層反射膜21とするために、MoとSiからなる周期多層反射膜21とした。多層反射膜21は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、Arガス雰囲気中でイオンビームスパッタリング法により基板10の上にMo層及びSi層を交互に積層して形成した。まず、Si膜を4.2nmの厚みで成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの厚みで成膜した。これを1周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの厚みで成膜し、多層反射膜21を形成した。ここでは40周期としたが、これに限るものではなく、例えば60周期でも良い。60周期とした場合、40周期よりも工程数は増えるが、EUV光に対する反射率を高めることができる。
引き続き、Arガス雰囲気中で、Ruターゲットを使用したイオンビームスパッタリング法によりRu膜からなる保護膜22を2.5nmの厚みで成膜した。
以上のようにして、実施例1及び比較例1の多層反射膜付き基板20を製造した。
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、多層反射膜付き基板20の保護膜22の上に、吸収体膜24を形成した。吸収体膜24は、吸収層であるTaBN膜及び低反射層であるTaBO膜の二層からなる積層膜の吸収体膜24とした。上述した多層反射膜付き基板20の保護膜22表面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、吸収層としてTaBN膜を成膜した。このTaBN膜は、TaB混合焼結ターゲット(Ta:B=80:20、原子比)に多層反射膜付き基板20を対向させ、Arガス及びN2ガスの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。次に、TaBN膜の上に更に、Ta、B及びOを含むTaBO膜(低反射層)を、DCマグネトロンスパッタリング法によって形成した。このTaBO膜は、TaBN膜と同様に、TaB混合焼結ターゲット(Ta:B=80:20、原子比)に多層反射膜付き基板20を対向させ、Ar及びO2の混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。
TaBN膜の組成は、Ta:B:N=74.7:12.1:13.2であり、膜厚は56nmであった。また、TaBO膜の組成はTa:B:O=40.7:6.3:53.0であり、膜厚は14nmであった。
以上のようにして、実施例1及び比較例1の反射型マスクブランク30を製造した。
次に、上述の反射型マスクブランク30を用いて、反射型マスク40を製造した。図7は、反射型マスクブランク30から反射型マスク40を作製する工程を示す要部断面模式図である。
上述の実施例1及び比較例1の反射型マスクブランク30の吸収体膜24の上に、レジスト膜32を150nmの厚さで形成したものを反射型マスクブランク30とした(図7(a))。このレジスト膜32に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン32aを形成した(図7(b))。次に、レジストパターン32aをマスクにして、吸収体膜24のドライエッチングを行うことで、吸収体パターン24aを形成した(図7(c))。なお、吸収体膜24がTaBN膜である場合には、Cl2及びHeの混合ガスによりドライエッチングすることができる。また、吸収体膜24がTaBN膜及びTaBO膜の二層からなる積層膜である場合には、塩素(Cl2)及び酸素(O2)の混合ガス(塩素(Cl2)及び酸素(O2)の混合比(流量比)は8:2)によりドライエッチングすることができる。
その後、レジストパターン32aをアッシング、又はレジスト剥離液などで除去した。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、反射型マスク40を製造した(図7(d))。なお、必要に応じてウェット洗浄後マスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行うことができる。
上述の実施例1及び比較例1の導電膜付き基板50の評価で述べたように、本発明の実施例の導電膜23は、波長532nmの光の透過率が10%以上なので、特許文献3(特許第5883249号公報)に記載のように、レーザビーム等により反射型マスク40の位置ずれを補正することができる。そのため、本発明の反射型マスク40を、半導体装置の製造のために用いる場合には、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができるといえる。
上述の実施例1及び比較例1の導電膜付き基板50の評価で述べたように、本発明の実施例1の導電膜23を有する導電膜付き基板50は、膜応力による基板の変形量が小さく、平坦度に優れている。したがって、本発明の導電膜23を有する反射型マスク40も、平坦度に優れている。また、平坦度に優れ、かつ反射型マスクの位置ずれをレーザビーム等により裏面側から補正することのできる反射型マスク40を、半導体装置の製造のために用いることができるので、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
実施例1で作製した反射型マスク40をEUV露光装置にセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜32が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜32を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターン32aを形成した。
このレジストパターン32aをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜、導電膜の形成、ドーパントの導入、あるいはアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。