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JP6908069B2 - 有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法、および、有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法 - Google Patents
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JP6908069B2 - 有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法、および、有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法 - Google Patents

有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法、および、有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法 Download PDF

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本発明は、金属材料の表面に付与した有機−無機複合皮膜における、皮膜中の有機成分の分析方法であって、特に、有機成分である高分子化合物の含有量の分析方法に関する。また、本発明は、この分析方法を用いた有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法に関する。
金属材料には、耐食性、意匠性、耐摩耗性、絶縁性等の向上を目的として、金属めっき、陽極酸化処理、化成処理のような無機系化合物による表面処理が行われることが多い。近年、表面処理皮膜中に有機化合物(有機成分)を複合的に分散させて、上記の機能を更に高めるほか、潤滑性、撥水性、親水性、吸着性、耐薬品性など新たな機能を付与することを目的として、有機−無機表面処理皮膜(有機−無機複合皮膜と称する)を有する表面処理材料の開発が盛んに行われている。例えば、特許文献1や特許文献2には、亜鉛系めっき鋼板を、有機成分であるフッ素樹脂やポリエチレンを含む酸性溶液中に浸漬させることにより、めっき層表面にZn、フッ素樹脂、酸化物または水酸化物の皮膜を形成させた表面処理鋼板が開示されている。特許文献1、2では、固体潤滑剤であるフッ素樹脂を皮膜中に分散して存在させることにより、プレス成型時の潤滑性が大きく向上する。
有機−無機複合皮膜を有する金属材料(表面処理材料)の開発において、機能性の効率的な発現のためには、皮膜組成の制御が重要である。そのためには皮膜中の有機成分の分布状況と含有量を正確に把握することが必要である。皮膜中の有機成分の分布状況は、加速電圧5kV以下の走査電子顕微鏡(SEM)とX線分析を併用した表面および断面からの観察により把握することが一般的に行われている。
一方、皮膜中の有機成分の含有量は、SEMの観察結果から有機成分の皮膜中での面積率を求めて算出し、有機成分が粒子状の場合は個数密度と平均粒径を求めて有機成分の含有量を算出する。また、蛍光X線分析(XRF)で炭素由来の特性X線強度を測定し、検量線法により有機成分の含有量を求める方法を用いることもある。
特開2016−98380号公報 特開2017−206715号公報
しかしながら、SEM観察結果から有機成分の含有量を求める場合、電子線照射による試料へのハイドロカーボン等の付着(コンタミネーション)の影響が出ないよう細心の注意を払う必要があるため、作業が煩雑で高度な熟練を要する。さらに、有機成分の仕込み量が少ない場合は、観察視野による定量結果のばらつきが大きいため、多量の視野を観察する必要がある。有機成分の仕込み量が多い場合は、皮膜厚さ方向に有機成分の分布ムラが存在すると、SEMによる表面観察では正しく定量できないという問題がある。また、XRFを用いた場合は、Cの特性X線の皮膜への吸収や、主成分以外のカーボンコンタミネーションに由来した特性X線の検出によって、誤差が発生しやすい傾向がある。
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであって、有機−無機複合皮膜を有する金属材料における、皮膜中の有機成分を定量することが可能な分析方法、および、有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、有機成分が一般に酸に強いことに着目した。具体的には有機−無機複合皮膜を有する金属材料を酸性溶液で溶解し、残渣として存在する有機成分を濾過して全量回収した後に、質量分析することにより有機成分の種類と量を高い精度で定量できることを見出した。さらに有機成分が高分子化合物の場合、加熱パターンが同じであれば分解生成物であるフラグメントの組成比が再現することに着目し、回収した有機成分を加熱分解してガス化した後、ガスクロマトグラフィー質量分析法によって分析すると、有機成分が微量であっても高い精度で定量できることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法であって、
酸性溶液により前記金属材料を溶解する溶解工程と、
前記金属材料を溶解した酸性溶液を濾過して皮膜中の有機成分を抽出する抽出工程と、
前記抽出した有機成分を分析する分析工程と、
を備える有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[2]前記分析工程では、質量分析法を用いて前記抽出した有機成分を分析する[1]に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[3]前記抽出工程で抽出した有機成分を加熱して分解しガス化する加熱気化工程をさらに備え、前記加熱気化工程により得られる分解ガスを前記分析工程で分析する[1]または[2]に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[4]前記加熱気化工程において、前記有機成分の分解温度をT(℃)としたときに、加熱開始温度が、(T−100)℃もしくは30℃のうち、いずれか高い方の温度以下であり、加熱終了温度は、(T+150)℃以上である[3]に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[5]前記加熱気化工程において、昇温速度が、5〜30℃/minである[3]または[4]に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[6]前記分析工程では、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて前記分解ガスを分析する[3]〜[5]のいずれか1つに記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[7]前記抽出工程において、吸引濾過により前記酸性溶液を濾過する[1]〜[6]のいずれか1つに記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[8]前記抽出工程において、無機系のガラスフィルターを用いて濾過する[1]〜[7]のいずれか1つに記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[9]前記溶解工程において、前記酸性溶液に腐食抑制剤を添加する[1]〜[8]のいずれか1つに記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[10]前記有機成分は、高分子化合物である[1]〜[9]のいずれか1つに記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[11]前記金属材料は、鋼板またはめっき鋼板である[1]〜[10]のいずれか1つに記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
[12]有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法であって、金属材料表面に有機−無機複合皮膜を成膜後、成膜後の皮膜中の有機成分を[1]〜[11]のいずれか1つに記載の皮膜中の有機成分の分析方法で分析し、皮膜中における有機成分の含有量が所定範囲内であるとき、良と判定して出荷する有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法。
本発明によれば、有機−無機複合皮膜を有する金属材料における、皮膜中に存在する有機成分の量を高い精度で定量することが可能である。
図1は、ポリエチレン粒子(0.16mg)を室温から10℃/minの昇温速度で650℃まで加熱したときの、温度−全MSプロファイルを示す図である。 図2は、m/z=41、55、69、83、97および111の各フラグメントごとの温度−MSプロファイルを示す図である。 図3は、ポリエチレンの分解生成物の一つであるm/z=41の温度−MSプロファイルから作成したポリエチレンの検量線である。 図4は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の分解生成物の一つであるm/z=100の温度−MSプロファイルから作成したPTFEの検量線である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、酸性溶液により金属材料(下地金属)を溶解する溶解工程と、溶解工程により得られる金属材料を溶解した酸性溶液を濾過して皮膜中の有機成分を抽出する抽出工程と、抽出した有機成分を分析する分析工程とを備えることを特徴とする。
金属材料については特に制限されないが、本発明は、鋼板またはめっき鋼板の表面に付与した有機−無機複合皮膜の有機成分の分析方法として好適である。また、有機−無機複合皮膜についても特に制限されないが、有機成分として耐酸性に優れた高分子化合物の分析方法として好適である。耐酸性に優れた有機化合物や高分子化合物であれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、フェノール樹脂が挙げられる。特に本発明は、有機成分としてポリエチレン粒子の分析方法としてより好適である。
溶解工程
溶解工程では、有機−無機複合皮膜を有する金属材料を酸性溶液に浸漬して、金属材料を溶解する。有機−無機複合皮膜中の有機成分として、例えば一般にポリエチレンのような有機成分は耐酸性に優れているので、酸性溶液に浸漬することにより皮膜中の無機成分と金属材料を溶解し、有機成分のみを酸性溶液中に残すことができる。
酸性溶液は、有機成分のみを残すことができればどのような酸を用いても構わない。汎用性等の観点から、硫酸、硝酸、フッ酸、塩酸の水溶液を用いることができる。また、酸性溶液の種類とpHは、下地金属と皮膜中の無機成分に応じて選択すればよい。例えば、鉄や亜鉛などの水酸化物を無機成分として付した鋼板であれば、pH<2となるように調製した塩酸を用いるとよい。
また、酸性溶液に腐食抑制剤(インヒビター)を添加することができる。特に、金属材料がめっき鋼板の場合は、酸性溶液にインヒビターを添加することにより、めっき層のみが選択的に溶解でき皮膜が下地から分離する。このため、反応の終点を知ることができる(鋼板の溶解を抑えることができる)ので、鋼板中の介在物等の溶出を抑えることができるといった点から、金属材料がめっき鋼板の場合は、酸性溶液にインヒビターを添加することがより好ましい。
なお、下地がZn系めっき鋼板の場合、酸性溶液を塩酸として、インヒビターを加えると下地鋼板の過度な溶解を抑え、めっきより上層部分を選択的に溶解させることができる。このときのインヒビターとしては、界面活性剤のような吸着皮膜型インヒビターが好適である。塩酸中で用いることが出来る吸着皮膜型インヒビターとしては、アミン類、イミダゾール類、第四アンモニウム塩、チオール類、スルフィド類などがある。
また、試験片の大きさ(溶解面積)は、成膜時の場所ムラによる精度低下の影響を抑えるため、500mm以上が好ましいが、分析方法や分析装置の検出感度に応じて適宜調整して構わない。
また、酸性溶液に金属材料が完全に溶解しない場合(たとえば、インヒビターを添加した酸性溶液に金属材料として鋼板を浸漬させた場合)、金属材料は適宜回収すればよい。
抽出工程
酸性溶液で下地金属である金属材料を溶解した後、下地金属から剥離した有機成分を含む酸性溶液を濾過することにより、有機成分を抽出する。濾過に用いるフィルターは、有機成分が粒子状の場合は粒子径と同等以下の穴径のフィルターを用いる。フィルターの材質は、被検試料である有機成分と異なる材質であれば特に限定はなく、一般的なポリカーボネート系のフィルターを用いることができる。後述するように、ガスクロマトグラフィー質量分析法により有機成分を定量する場合は、フィルターごと有機成分を加熱分解して気化させる必要があるので、有機成分より分解温度の高いフィルターを用いる。例えば、有機成分がポリエチレン粒子の場合は、一般的なポリエチレンの分解温度は(雰囲気にも依るが)300〜500℃程度であるので、無機系のガラスフィルター(分解温度:約680℃)を用いることが好ましい。なお、濾過の方法に関しては特に問わないが、濾過速度の観点からアスピレーターを用いた吸引濾過とすることが好ましい。
分析工程
次に、抽出工程で抽出した有機成分を分析工程にて分析する。抽出した有機成分は、フィルターごと分析を行えばよい。有機成分の分析は有機物が検出できる方法であればよく、赤外吸収分光分析法(FT−IR)、核磁気共鳴法(NMR)、示差走査熱量分析法(DSC)、質量分析法などを用いることができる。これらの中でも、検出感度の高い質量分析法が好ましい。
質量分析法の場合、被検試料の導入方法によって液体、気体、固体のいずれかを選択すればよいが、分解能および検出感度が高いガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を用いることがより好ましい。ここで、前述の抽出工程で抽出した有機成分を加熱して分解しガス化する加熱気化工程をさらに備えることが好ましく、加熱気化工程により得られる分解ガスを分析工程でガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて分析することが好ましい。加熱気化工程では、被検試料はフィルターごと加熱することにより、有機成分が熱分解して気化するので、気化して得られた分解ガスを分析カラムに導入して質量分析する。
加熱気化工程において、有機成分、すなわちフィルター上に抽出した被検試料を加熱分解する際の加熱開始温度については、分析対象である有機成分の分解温度T(℃)に対して、(T−100)℃以下または30℃のうちいずれか高い方の温度以下とすることが好ましい。また、加熱終了温度は、(T+150)℃以上とすることが好ましい。
加熱開始温度を(T−100)℃以下とする理由は、測定を効率化させることに加えて、急激な有機成分の分解を抑え、分解生成するフラグメントの生成比率のばらつきを少なくし定量精度を上げるためである。ただし、(T−100)℃が30℃を下回る場合は、30℃から加熱すれば良い。一方、加熱終了温度は(T+150)℃以上とすることが好ましい。加熱終了温度が(T+150)℃以上であれば、注目する有機成分のほとんどが分解される。
また、昇温速度は、5〜30℃/minとすることが好ましい。昇温速度を5〜30℃/minが好適である理由は、分解生成物のピークを検出しやすくし、測定系内の温度ムラによるフラグメントの生成比率のばらつきを抑えるためである。
次に、抽出した有機成分の定量方法について、具体的に説明する。一例として、Zn系めっき鋼板上のZnを含む酸化皮膜中に有機成分としてポリエチレン粒子(平均粒径:500nm)を分散させた有機−無機複合皮膜を有するZn系めっき鋼板における、皮膜中のポリエチレン粒子の定量方法について説明する。
まずはじめに、定量に用いる検量線について検討した。ポリエチレン当量で0.16mgとなるように、ポリエチレンの水分散体(三井化学社製:ケミパールW4005原液)を秤量し、無機系ガラスフィルター(孔径:300nm)で抽出し、ポリエチレン粒子を載せた無機系ガラスフィルターを50℃から10℃/minの昇温速度で650℃まで加熱した。このときに発生する分解ガスをGC−MSの分析カラムに導入して分析した。図1に温度−全MSプロファイルを示す。ここで温度(Temp.)とは、熱分解装置(パイロライザー)温度のことをいう。図1から、パイロライザー温度が約480℃をピークとして、400〜550℃付近にかけてポリエチレンが熱分解することがわかる。また、このポリエチレン粒子について、熱重量−示差熱分析(TG−DTA)により分解温度を求めたところ、約450℃であった。このことからも図1のピークがポリエチレンの分解生成物に起因したものであると言える。そこで、図1のピーク位置におけるMSスペクトルを解析した結果、ポリエチレンの熱分解生成物(フラグメント)は、炭素鎖数が3〜7に由来する質量電荷比m/z(ここで、mは統一原子質量単位に対する比で表したイオンの相対質量、zはイオンの電荷数を示す)が41、55、69、83、97および111の分子イオンが主であることがわかった。次に、m/z=41、55、69、83、97および111の各フラグメントごとの温度−MSプロファイルについて調べた。結果を図2に示す。
図2の各フラグメントのピーク強度(ピーク高さ)を求め、m/z=41のピーク強度で規格化して規格化強度を求めた。さらにポリエチレン当量で0.04mg、0.08mgとなるように上記のポリエチレンの水分散体を秤量し、これらの試料についても、同様にGC/MSにより温度−全MSプロファイルを測定し、各フラグメントごとの温度−MSプロファイルから、規格化強度を求めた。結果を表1に示す。
Figure 0006908069
いずれの試料においてもm/z=41に対する規格化強度はほぼ一定であった。よって昇温過程が同じであれば、ポリエチレンの熱分解で発生するフラグメントの組成比は一定であり、再現性の良い熱分解挙動を示すことがわかった。
以上より、ポリエチレンの熱分解温度を含む温度範囲でGC/MSスペクトルを測定し、各フラグメントのいずれか1つ以上についてその温度−MSプロファイルから、ポリエチレンの検量線を作成することができる。したがって、得られた検量線に基づいて有機成分の含有量を定量することができる。
例えば、図3は、ポリエチレンの分解生成物の一つであるm/z=41の温度−MSプロファイルから作成したポリエチレンの検量線である。被検試料に含まれるポリエチレンをフィルター上に抽出し、この検量線と同じヒートパターンでフィルターごと加熱して分解し、GC/MSスペクトルを測定して、m/z=41のフラグメントの温度−MSプロファイルのピーク強度(ピーク高さ)を測定する。このピーク強度に対応する図3の横軸を読み取ることにより、この被検試料に含まれるポリエチレンの量を定量することができる。定量に用いるフラグメントのm/zは、妨害ピークが存在しなければ低いほうが検出感度は高いので好ましい。有機成分がポリエチレンの場合は、炭素鎖数3に由来するm/z=41ないし炭素鎖数4に由来するm/z=55の温度−MSプロファイルのピーク強度(ピーク高さまたは積分強度)を用いることが好ましい。
以上より、本発明の分析方法によれば、有機−無機複合皮膜を有する金属材料における、皮膜中に存在する有機成分の量を高い精度で定量することが可能である。
また、本発明の分析方法を用いて有機−無機複合皮膜を有する金属材料を製造することもできる。例えば、金属材料表面に有機−無機複合皮膜を成膜後、成膜後の皮膜中の有機成分を本発明の分析方法で分析し、皮膜中における有機成分の含有量が所定の範囲であるとき、良と判定して出荷すればよい。つまり、金属材料の特性値(機械特性や皮膜の特性等)と有機成分の含有量の閾値(有機成分の含有量の所定の範囲)を予め調べておき、有機成分の含有量が所定の範囲を満たす場合、良として出荷することができる。例えば、有機成分がポリエチレンの場合、皮膜中におけるポリエチレンの含有量が30mg/m以上であれば、摺動特性に優れるという知見がある。したがって、皮膜中におけるポリエチレンの含有量が30mg/m以上であるとき、摺動特性が良(合格)として、出荷すればよい。このように、本発明の分析方法により求めた有機成分の含有量を製造方法にフィードバックすることで、所望の特性を有する金属材料を得ることができる。
以下、実施例により本発明の効果を説明する。ただし、本発明の効果はこの実施例の限りではない。
(発明例1〜3)
平均粒径500nmのポリエチレン(三井化学社製:ケミパールW4005)を、仕込み量として10mg/m(発明例1)、50mg/m(発明例2)、250mg/m(発明例3)となるよう含有させた硫酸亜鉛・7水和物の酸性溶液と電気亜鉛めっき鋼板を接触させることにより、有機−無機複合皮膜を片面に成膜した。このポリエチレン粒子の(窒素雰囲気下における)分解温度を熱重量示差熱分析から求めたところ、約450℃であった。
各サンプルを30mm角の大きさに切断し、塩酸(1+1)水溶液30mlに、インヒビターとしてヘキサメチレンテトラミンを3.5g/l加えた酸性溶液に浸漬し、亜鉛めっき層および有機−無機複合皮膜中の無機成分を溶解した。有機−無機複合皮膜中のポリエチレン粒子を含む塩酸水溶液を、孔径300nmのガラスフィルターを用いて吸引濾過し、皮膜中のポリエチレン粒子を全てガラスフィルター内に回収した。
また、分析検量線用の試料として、ポリエチレン当量で0.04mg、0.08mg、0.16mgとなるように、ポリエチレンの水分散体であるケミパールW4005原液を秤量し、実測定と同様の孔径300nmのガラスフィルターへ捕集し乾燥させた。
ポリエチレン粒子の含有量の分析には、ガス導入部にパイロライザー(FRONTIER LAB社製マルチスポットパイロライザ)を備えたガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent社製6890N)を用いた。50℃に保持したパイロライザーにガラスフィルターごと導入し、10℃/minの速度で50℃から650℃まで昇温し、ポリエチレンを熱分解した。発生した分解ガスを流量1ml/minのヘリウム(キャリアガス)とともに、カラム温度を300℃としたガスクロマトグラフ質量分析装置へ導入し、温度−全MSプロファイルを測定した。次いで、m/z=41の温度−MSプロファイルを求めた。
検量線用のサンプルについても同様に、m/z=41の温度−MSプロファイルを求め、図3に示す検量線を作成した。図3の検量線を用いて電気亜鉛めっき鋼板上の有機−無機複合皮膜中のポリエチレン粒子の含有量を定量した。
(比較例1〜3)
比較例として、上記発明例1〜3の各サンプルを別途15mm角の大きさに切断し、SEM(Carl Zeiss社製 LEO1530)を用いて皮膜中のポリエチレンを観察し、含有量を算出した。観察条件は、加速電圧:3kV、作動距離(対物レンズと試料との距離):8.5mm、ポラロイド(登録商標)写真の倍率で5000倍とし、ランダムに抽出した5視野を観察した。1視野中におけるポリエチレン粒子の個数と粒子径(長径)を目視で数えてポリエチレンの合計体積を求め、これにポリエチレンの密度を掛けて観察視野中のポリエチレン付着量(単位面積当たりの重量)に換算し、5視野の平均値を算出した。
本発明の分析方法により求めたポリエチレン粒子の含有量と、比較例としてSEMにより求めたポリエチレン粒子の含有量について、結果を表2に示す。
Figure 0006908069
本発明の分析方法により求めたポリエチレン粒子の含有量は、仕込み量とほぼ同等の値であった。これに対し、SEMにより求めたポリエチレン粒子の含有量は、仕込み量50mg/mを除き、仕込み量より少ない定量結果となった。仕込み量が10mg/mのとき、比較例では、ポリエチレン粒子の分布ムラの影響が大きく、観察視野数(n数)のn数増しを行う必要があり膨大な労力を要すると考えられる。また、仕込み量が250mg/mのとき、比較例では、最表面に存在するポリエチレン粒子しか計測できないため、厚さ方向に重なったポリエチレン粒子の分布ムラの存在によって、少なめに評価されてしまったと考えられる。
(発明例4、5)
板厚0.8mmの電気亜鉛めっき鋼板上に、平均粒径200nmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE、奥野製薬工業株式会社製:トップディスパーNTF、分解温度:350℃)を、仕込み量として40mg/m(発明例4)および110mg/m(発明例5)となるよう含有させた硫酸亜鉛・7水和物の酸性溶液と電気亜鉛めっき鋼板を接触させることにより、有機−無機複合皮膜を片面に成膜した。
各サンプルを30mm角の大きさに切断し、塩酸(1+1)水溶液30mlに、インヒビターとしてヘキサメチレンテトラミンを3.5g/l加えた酸性溶液に浸漬し、亜鉛めっき層を溶解した。有機−無機複合皮膜中のPTFEを含む塩酸水溶液を、孔径100nmのポリカーボネート製メンブレンフィルターを用いて吸引濾過し、皮膜中のPTFEを全てメンブレンフィルター内に回収した。
また、分析検量線用の試料として、PTFE当量で0.05mg、0.25mg、0.50mgとなるように、粒径200nmのPTFEを懸濁させた原液を秤量し、実測定と同様の孔径100nmのメンブレンフィルターへ捕集し乾燥させた。
PTFEの含有量の分析にはガス導入部にパイロライザー(FRONTIER LAB社製マルチスポットパイロライザ)を備えたガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent社製6890N)を用いた。300℃に保持したパイロライザーにメンブレンフィルターごとPTFEを導入し、10℃/minの速度で200℃から600℃まで昇温し、PTFEを熱分解した。発生した分解ガスを流量1ml/minのヘリウム(キャリアガス)とともに、カラム温度を300℃としたガスクロマトグラフ質量分析装置へ導入し、温度−全MSプロファイルを測定した。次いで、PTFEのモノマーであるm/z=100の温度−MSプロファイルを求めた。検量線用のサンプルについても同様に、m/z=100の温度−MSプロファイルを求め、図4に示す検量線を作成した。
図4の検量線を用いて電気亜鉛めっき鋼板上の有機−無機複合皮膜中のPTFEの含有量を定量した。その結果、仕込み量が40mg/mおよび110mg/mのPTFEである各サンプルについて、PTFEの含有量として、それぞれ38mg/mおよび107mg/mを得た。

Claims (11)

  1. 有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法であって、
    酸性溶液により前記金属材料を溶解する溶解工程と、
    前記金属材料を溶解した酸性溶液を濾過して皮膜中の有機成分を抽出する抽出工程と、
    前記抽出した有機成分を分析する分析工程と、
    を備え
    前記分析工程では、質量分析法を用いて前記抽出した有機成分を分析する有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  2. 前記抽出工程で抽出した有機成分を加熱して分解しガス化する加熱気化工程をさらに備え、前記加熱気化工程により得られる分解ガスを前記分析工程で分析する請求項1に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  3. 前記加熱気化工程において、前記有機成分の分解温度をT(℃)としたときに、加熱開始温度が、(T−100)℃もしくは30℃のうち、いずれか高い方の温度以下であり、
    加熱終了温度は、(T+150)℃以上である請求項に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  4. 前記加熱気化工程において、昇温速度が、5〜30℃/minである請求項またはに記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  5. 前記分析工程では、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて前記分解ガスを分析する請求項のいずれか1項に記載の有機− 無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  6. 前記抽出工程において、吸引濾過により前記酸性溶液を濾過する請求項1〜のいずれか1項に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  7. 前記抽出工程において、無機系のガラスフィルターを用いて濾過する請求項1〜のいずれか1項に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  8. 前記溶解工程において、前記酸性溶液に腐食抑制剤を添加する請求項1〜のいずれか1項に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  9. 前記有機成分は、高分子化合物である請求項1〜のいずれか1項に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  10. 前記金属材料は、鋼板またはめっき鋼板である請求項1〜のいずれか1項に記載の有機−無機複合皮膜を有する金属材料における皮膜中の有機成分の分析方法。
  11. 有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法であって、金属材料表面に有機−無機複合皮膜を成膜後、成膜後の皮膜中の有機成分を請求項1〜10のいずれか1項に記載の皮膜中の有機成分の分析方法で分析し、皮膜中における有機成分の含有量が所定の範囲であるとき、良と判定して出荷する有機−無機複合皮膜を有する金属材料の製造方法。
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