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JP6942611B2 - 微生物培養用培地及び酢酸菌の検出方法 - Google Patents
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JP6942611B2 - 微生物培養用培地及び酢酸菌の検出方法 - Google Patents

微生物培養用培地及び酢酸菌の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、主にワインに混入している酢酸菌を検出するために有用な微生物培養用培地、及び当該微生物培養用培地を用いて、被検試料中の酢酸菌を検出する方法に関する。
ワインは、ブドウの搾り汁をワイン酵母で発酵させて得られる醸造酒である。このため、ワインには、ワイン酵母以外にも原料のブドウなどに由来する様々な微生物が含まれている場合がある。ワインの保存中にこれらの微生物が増殖することによって、混濁が生じたり、ワインの香味が損なわれることがある。特に、ワインにとって、ある種の酢酸菌は有害菌である。酢酸菌が増殖すると、産生される酢酸によってワインの香味が大きく損なわれる。
このため、微生物混濁や香味劣化を抑制するために、多くのワインには、亜硫酸塩を添加して微生物耐久性を向上させている。しかしながら、亜硫酸塩は、健康への影響も懸念されている。そこで、最近では、亜硫酸塩無添加のワインの製造が増加しつつある。この亜硫酸塩無添加ワインでは、容器充填前のワインに酢酸菌が含まれていると、保存後に微生物混濁が生じる可能性が高い。そこで、容器充填前に予めワインに酢酸菌が含まれているかどうかを調べることが行われている。
微生物混濁の懸念が高い亜硫酸無添加ワインにおける酢酸菌の検出検査は、一般的に、被検試料であるワインを、酢酸菌の生育が可能な平板培地に塗抹し、生育したコロニーについて酢酸菌かどうかを判別する方法で行われている。この際に使用される平板培地としては、酢酸菌検出用として市販されている培地はないため、従来は、市販のpH6程度の一般的な合成培地にエタノールやワイン等を添加した平板培地を調製して用いていた(例えば、非特許文献1参照。)。
Bartowsky et al.,Letters in Applied Microbiology,2003,vol.36,p.307-314.
実際のワイン製造現場において、酢酸菌検出検査を行う場合、使用する微生物検査用培地としては、酢酸菌の検出感度が高く、かつ酢酸菌などのワイン混濁菌以外の菌の検出が抑制されているものが好ましい。さらに、ワイン製造現場において比較的簡便に調製できることも重要である。
本発明は、被検試料、主にワインに混入している酢酸菌を検出するために有用な微生物培養用培地、及び当該微生物培養用培地を用いて、被検試料中の酢酸菌を検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、酢酸菌の培養には炭素源と窒素源とワインを含む培地を用いること、この際、培地の遊離型亜硫酸濃度を15ppm以下に抑え、かつpHを3.5〜4.5の範囲内に調整することにより、環境菌の生育を効果的に抑制することができ、酢酸菌の検出精度を有意に向上させられることを見出し、本発明を完成させた。
本発明に係る微生物培養用培地及び酢酸菌の検出方法は、下記[1]〜[10]である。
[1] 炭素源と窒素源とワインを含有し、遊離型亜硫酸濃度が0ppmであり、pH3.5〜4.5であり、エタノール濃度が2〜4容量%であり、酢酸菌検出用である、微生物培養用培地。
[2] pHが3.5〜4.2である、前記[1]の微生物培養用培地。
[3] 前記ワイン濃度が、前記培地のエタノール濃度が2〜4容量%となる濃度である、前記[1]又は[2]の微生物培養用培地。
[4] 前記炭素源濃度が0.5〜50g/Lであり、前記窒素源濃度が5〜20g/Lである、前記[1]〜[3]のいずれかの微生物培養用培地。
[5] 平板培地である、前記[1]〜[4]のいずれかの微生物培養用培地。
[6] さらに、寒天を含有し、寒天濃度が15g/L以下である、前記[1]〜[4]のいずれかの微生物培養用培地。
[7] 前記[5]又は[6]の微生物培養用培地に、被検試料を塗抹した後、形成されたコロニーが酢酸菌かどうかを判定する、酢酸菌の検出方法。
[8] 酢酸菌かどうかの判定を、コロニーの外観、ゲノムの配列情報、及び発現しているタンパク質の情報かならなる群より選択される一種以上に基づいて判定する、前記[7]の酢酸菌の検出方法。
[9] 酢酸菌かどうかの判定を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析を用いて行う、前記[7]の酢酸菌の検出方法。
[10] 前記被検試料がワインである、前記[7]〜[9]のいずれかの酢酸菌の検出方法。
本発明に係る微生物培養用培地は、酢酸菌の生育に適しているものの、その他の自然界に多く存在している微生物の生育には適さない。このため、当該培地は、微生物混濁の懸念が高い亜硫酸無添加ワインにおいて、ワイン混濁菌の一つである酢酸菌を検出する培地として特に好適である。
また、当該培地を用いた本発明に係る酢酸菌の検出方法により、ワイン等の被検試料中の酢酸菌を容易に検出することができる。
<微生物培養用培地>
本発明に係る微生物培養用培地は、炭素源と窒素源とワインを含有し、遊離型亜硫酸濃度が15ppm以下であり、pH3.5〜4.5である。微生物検査に使用される微生物培養用培地としては、検出対象の微生物が生育可能であることに加えて、検査工程で混入してしまう環境菌(一般的に自然環境に存在する微生物)の培養を充分に抑制することが必要である。環境菌の生育を抑制することにより、目的の微生物の検出精度を高められるためである。本発明に係る微生物培養用培地は、様々な種類の酢酸菌の生育が可能であることに加えて、環境菌の生育を充分に抑制することができるため、特に、酢酸菌検出検査に使用される微生物培養用培地として有用であり、特にワイン中の酢酸菌を検出するための検査に使用される微生物培養用培地として有用である。
本発明に係る微生物培養用培地は、微生物の栄養源として炭素源を含有する。当該培地が含有する炭素源としては、いずれかの酢酸菌が資化可能な炭素源であれば特に限定されるものではなく、一般的に微生物培養用培地の原料として用いられている炭素源と同様のものが挙げられる。また、1種類の炭素源のみを含む培地であってもよく、2種類以上の炭素源を含む培地であってもよい。本発明に係る微生物培養用培地が含有する炭素源としては、具体的には、グルコース、スクロース、マルトース、マンノース、ガラクトース、フラクトース、澱粉加水分解物、糖蜜等の糖類;マンニトール、エリスリトール等の糖アルコール類;グリセロール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;酢酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、プロピオン酸、マロン酸等の有機酸などが挙げられる。本発明に係る微生物培養用培地が含有する炭素源としては、比較的多くの酢酸菌が資化性であることから、グルコース、グリセロール、酢酸、乳酸、及びリンゴ酸からなる群より選択される1種以上が好ましい。本発明に係る微生物培養用培地の炭素源濃度としては、特に限定されるものではないが、酢酸菌をより短時間で効率よく検出できることから、0.1〜100g/Lであることが好ましく、0.5〜50g/Lであることがより好ましい。
本発明に係る微生物培養用培地は、微生物の栄養源として窒素源を含有する。当該培地が含有する窒素源としては、いずれかの酢酸菌が資化可能な窒素源であれば特に限定されるものではなく、一般的に微生物培養用培地の原料として用いられている窒素源と同様のものが挙げられる。また、1種類の窒素源のみを含む培地であってもよく、2種類以上の窒素源を含む培地であってもよい。本発明に係る微生物培養用培地が含有する窒素源としては、具体的には、アミノ酸、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素、カゼイン、ポリペプトン、ペプトン、カザミノ酸、NZアミン、トリプトース、コーンスティープリカー、酵母エキス、肉エキス、魚肉エキスなどが挙げられる。本発明に係る微生物培養用培地が含有する窒素源としては、比較的多くの酢酸菌が資化性であることから、カゼイン、ポリペプトン、ペプトン、カザミノ酸、NZアミン、酵母エキス、及び肉エキスからなる群より選択される1種以上が好ましい。本発明に係る微生物培養用培地の窒素源濃度としては、特に限定されるものではないが、酢酸菌をより短時間で効率よく検出できることから、1〜30g/Lであることが好ましく、5〜20g/Lであることがより好ましい。
本発明に係る微生物培養用培地は、一般的な微生物培養用の合成培地で使用されている炭素源と窒素源に加えて、ワインを含有している。酢酸菌の資化性は様々であり、酢酸やエタノールに対する資化性を有するが、グルコースに対する資化性がない酢酸菌もある。一般的に、ワイン中には、エタノール、グリセロール等のアルコール;酢酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸;プロリン、アルギニン等のアミノ酸などの、微生物培養のための炭素源や窒素源となり得る成分が含まれている。つまり、ワインを培地成分に含ませることにより、様々な酢酸菌の生育に必要な炭素源や窒素源を確保することが容易となる。本発明に係る微生物培養用培地は、ワインを含むことにより、ワイン中で増殖可能であって、資化性の異なる様々な種類の酢酸菌を効率よく生育させることができる。
本発明に係る微生物培養用培地が含有するワインとしては、特に限定されるものではなく、赤ワインであってもよく、白ワインであってもよく、ロゼワインであってもよい。また、本発明に係る微生物培養用培地が含有するワインとしては、亜硫酸塩が添加されているワインであってもよいが、亜硫酸塩無添加ワインの方が好ましい。
本発明に係る微生物培養用培地のワイン濃度としては、培地の遊離型亜硫酸濃度が15ppm以下となる量であれば特に限定されるものではないが、培地のエタノール濃度が2〜4容量%となる濃度であることが好ましい。エタノール濃度が前記範囲内であることにより、酢酸菌の生育は可能としつつ、大多数の環境菌の生育を充分に抑制することができる。例えば、本発明に係る微生物培養用培地のワイン濃度は、100〜300mL/Lとすることができる。
本発明に係る微生物培養用培地は、炭素源、窒素源、及びワインの他にも、その他の成分を含有していてもよい。当該その他の成分としては、培地に添加されることによって酢酸菌の生育を過剰に抑制しないものであれば特に限定されるものではなく、無機イオンやビタミン類を必要に応じ添加することは有効である。無機イオンとしては、例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、モリブデンイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン等が挙げられる。ビタミン類としては、チアミン、イノシトール、パントテン酸、ニコチン酸アミド等が挙げられる。
本発明に係る微生物培養用培地は、遊離型亜硫酸濃度が15ppm以下であり、13ppm以下であることがより好ましい。遊離型亜硫酸濃度が高いと、酢酸菌の生育が抑制されるため、酢酸菌検出のために必要な培養時間が長くなる。遊離型亜硫酸濃度が低いほど、酢酸菌の生育が抑制されにくく、より短時間の培養で酢酸菌を検出できる。
ワイン中に含まれている亜硫酸塩は、糖やアルデヒド等の他の成分と結合している結合型亜硫酸と、遊離型亜硫酸とに分けられる。遊離型亜硫酸は、酸性では、重亜硫酸イオン(HSO3−)と分子状の亜硫酸(分子状SO、二酸化硫黄)とになる。微生物に対する抗菌作用は、主に分子状SOによる。重亜硫酸イオンと分子状SOの存在比は、pHによって変動する。pHが3.5超の酸性では、重亜硫酸イオンよりも分子状SOの存在比率が高くなり、逆にpHが3.2未満では、重亜硫酸イオンの存在比率のほうが分子状SOよりも高くなる。例えば、pH3.5〜4.5の範囲内においては、遊離型亜硫酸濃度が13ppm以下である場合、分子状SO濃度は0.8ppm以下である。
本発明に係る微生物培養用培地は、pHが3.5〜4.5、好ましくは3.5〜4.2である。本発明に係る微生物培養用培地は、pHが充分に酸性であるため、pHが6付近である一般的な微生物培養用培地を用いた場合よりも、環境菌の生育が顕著に抑制されるため、酢酸菌の検出精度が向上する。
本発明に係る微生物培養用培地は、液体培地であってもよく、平板培地であってもよい。平板培地の場合、含有するゲル成分としては、酢酸菌の生育を抑制しないものであれば特に限定されるものではないが、汎用されており、取扱い性に優れている点から寒天が好ましい。本発明に係る微生物培養用培地が平板培地である場合の寒天濃度は、平板培地となるために充分な濃度であれば特に限定されるものではないが、15g/L以下であることが好ましい。寒天濃度が低いほど、酢酸菌の生育が促進される結果、より短時間の培養で充分な大きさのコロニーを形成できる。
<酢酸菌の検出方法>
本発明に係る酢酸菌の検出方法は、前記微生物培養用培地の平板培地に、被検試料を塗抹した後、形成されたコロニーが酢酸菌かどうかを判定する。被検試料としては特に限定されるものではないが、ワインが好ましい。
平板培地への被検試料の塗抹は、常法により行うことができる。被検試料を塗抹した平板培地を、所定時間培養することにより、コロニーを形成させる。培養期間としては特に限定されるものではないが、1〜10日間が好ましく、3〜7日間がより好ましく、4〜6日間がさらに好ましい。培養温度は、酢酸菌が培養可能な温度であれば特に限定されるものではなく、10〜40℃が好ましく、15〜38℃がより好ましく、20〜38℃がさらに好ましく、25〜35℃がよりさらに好ましい。
被検試料中に酢酸菌が含まれていた場合には、培養により、酢酸菌のコロニーが形成される。培養後に形成されたコロニーが酢酸菌のコロニーかどうかは、例えば、コロニーの外観、ゲノムの配列情報、及び発現しているタンパク質の情報かならなる群より選択される一種以上に基づいて判定することができる。
ゲノムの配列情報に基づく酢酸菌の同定は、例えば、rRNA遺伝子の塩基配列情報を利用して行うことができる。コロニーを構成する菌体からDNAを抽出し、抽出されたDNA中のrRNA遺伝子の塩基配列情報を解析し、その結果を酢酸菌のrRNA遺伝子の塩基配列情報と比較する。両者が一致した場合には、当該コロニーを構成する菌体が酢酸菌であると判定することができる。rRNA遺伝子の塩基配列情報に基づく微生物の同定は、rRNA遺伝子の塩基配列自体を、酢酸菌のrRNA遺伝子の塩基配列と一致するか否かで行うことができ、また、例えば、PCR−DGGE(Polymerase chain reaction−Denaturing gradient gel electrophoresis)法等の微生物を同定する際に使用されている方法を利用することもできる。
発現しているタンパク質の情報に基づく酢酸菌の同定は、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析(MALDI−TOFMS)を用いて行うことができる。例えば、コロニーを構成する菌体をマトリックス試薬と混合し、この混合物をMALDI−TOFMSにより測定し、得られたマススペクトルのパターンを酢酸菌のマススペクトルのパターンと比較する。両者のパターンが一致した場合には、当該コロニーを構成する菌体が酢酸菌であると判定することができる。MALDI−TOFMSは、常法により行うことができる。
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
[参考例1]
酢酸菌の株ごとの資化性を調べた。
被検酢酸菌としては、ワイン製造現場から単離されたAcetobacter pasteurianusの3株(AGBC323株、ABBC653株、ABBC659株)と、セルバンクから入手した3株のAcetobacter pasteurianusの標準株(ABBC660株、ABBC662株、ABBC663株)を用いた。
培養するための平板培地としては、YPG培地(グルコース 5g/L、グリセロール 20g/L、酵母エキス 10g/L、ポリペプトン 10g/L、寒天 15g/L)、3容量%エタノール含有YPG培地、又は0.3容量%酢酸含有YPG培地を用いた。
まず、各平板培地の10cmディッシュに、被検酢酸菌を10個ずつ塗抹し、5日間30℃で培養した。培養終了後に形成されたコロニー数を計数した。結果を表1に示す。表中、「YPG」の欄は培地の結果を、YPG「YPG+エタノール」の欄は3容量%エタノール含有YPG培地の結果を、「YPG+酢酸」の欄は0.3容量%酢酸含有YPG培地の結果を、それぞれ示す。また、表中「+」は、コロニーが小さすぎてカウント不可能であったことを意味する。
Figure 0006942611
ABBC653株とABBC662株は、YPG培地ではコロニーが形成されなかった。この結果から、酢酸菌には、市販の微生物培養用培地の一般的な炭素源であるグルコースとグリセロールが資化できず、酢酸やエタノールが生育に必要である株が存在することが判明した。また、ABBC653株は、エタノール含有YPG培地と酢酸含有YPG培地ではコロニーが形成されたこと、酢酸含有YPG培地よりもエタノール含有YPG培地で形成されたコロニー数が多かったことから、エタノールと酢酸はどちらも資化できること、酢酸よりもエタノールの方が資化しやすいことがわかった。ABBC662株は、エタノール含有YPG培地でもコロニーが形成されず、酢酸含有YPG培地でのみコロニーが形成されており、エタノールは資化できないが、酢酸は資化できた。
一方で、AGBC323株、ABBC659株、ABBC660株、及びABBC663株は、YPG培地でコロニーが形成されたことから、これらの酢酸菌は、グルコースとグリセロールのいずれかに対して資化性を有することが判明した。このうち、AGBC323株、ABBC659株、及びABBC660株は、YPG培地よりも、エタノール含有YPG培地と酢酸含有YPG培地のほうが、形成されたコロニー数が多かったことから、エタノールと酢酸も資化できることが判明した。中でも、ABBC659株及びABBC663株は、酢酸含有YPG培地に形成されたコロニー数が、他の2種の培地よりも明らかに多かったことから、酢酸に対する資化性が高いことがわかった。
[実施例1]
市販のWL(Wallerstein)培地(グルコース 50g/L、カゼイン 5g/L、酵母エキス 4g/L、KHPO 0.55g/L、KCl 0.425g/L、CaCl 0.125g/L、MgSO 0.125g/L、FeCl 0.0025g/L、MnSO 0.0025g/L、寒天 20g/L)に20容量%となるようにワインを含有させたワイン含有WL培地、又は、YPG培地に3容量%のエタノールと0.3容量%の酢酸を含有させたエタノール・酢酸含有YPG培地の10cmディッシュに、AGBC323株、ABBC653株、又はABBC659株をそれぞれ10個ずつ塗抹し、5日間30℃で培養した。培養終了後に形成されたコロニー数を計数した。なお、原料として使用したワインには遊離型亜硫酸が検出されなかったことから、ワイン含有WL培地の遊離型亜硫酸濃度は0ppmであった。
Figure 0006942611
各平板培地のコロニー数の測定結果を表2に示す。表中、「YPG+エタノール+酢酸」の欄はエタノール・酢酸含有YPG培地の結果を、「WL+ワイン」の欄は20容量%ワイン含有WL培地の結果を、それぞれ示す。ワイン含有WL培地では、エタノール・酢酸含有YPG培地と同程度の数のコロニーが形成され、ワイン含有WL培地がエタノール・酢酸含有YPG培地と同様に酢酸菌検出用の培養培地として使用可能であることが確認された。ワイン含有WL培地は、市販のWL培地にワインを混合するだけで調製することができ、エタノール・酢酸含有YPG培地よりも容易に調製できる点で好ましい。
[実施例2]
平板培地の寒天濃度の酢酸菌の検出に対する影響を調べた。
具体的には、実施例1で使用した20容量%ワイン含有WL培地の寒天濃度を1.0、1.5、又は2.0質量/容量%(10g/L、15g/L、又は20g/L)とした平板培地の10cmディッシュに、ABBC653株を10個ずつ塗抹し、5日間30℃で培養した。培養終了後に形成されたコロニーについて、直径の大きさが3mm以上と3mm未満に分けてその数を調べた。測定結果を表3に示す。
Figure 0006942611
寒天濃度が1質量/容量%又は1.5質量/容量%の平板培地では、直径が3mm以上の大きなコロニーが多数形成されていたが、寒天濃度が2質量/容量%の平板培地では、直径が3mm以上のコロニーは形成されなかった。コロニーの大きさは、酢酸菌の増殖しやすさの指標である。つまり、これらの結果から、酢酸菌検出用に用いられる微生物培養用培地の平板培地の寒天濃度を1.5質量/容量%以下(15g/L以下)とすることにより、より短時間の培養時間で酢酸菌のコロニーを形成させることができる、すなわち、酢酸菌検出のための培養時間を短縮することができる。
[実施例3]
微生物培養用培地の平板培地に含有させるワインの種類の酢酸菌の検出に対する影響を調べた。
具体的には、平板培地として、実施例1で用いた20容量%ワイン含有WL培地の原料のワインを、赤ワインとした20容量%赤ワイン含有WL培地と白ワインとした20容量%白ワイン含有WL培地をそれぞれ用いた。いずれの培地も遊離型亜硫酸濃度は0ppmであった。
20容量%赤ワイン含有WL培地又は20容量%白ワイン含有WL培地の10cmディッシュに、ABBC653株を10個ずつ塗抹し、4日間30℃で培養した。培養終了後に形成されたコロニーの数を調べたところ、20容量%赤ワイン含有WL培地のコロニー数が177個、20容量%白ワイン含有WL培地のコロニー数が179個であり、両者に特段の差はなかった。
[実施例4]
ワインを添加したWL培地とワイン無添加のWL培地について、酢酸菌と、環境菌の一種であるスフィンゴモナス属菌の生育性を調べた。スフィンゴモナス属菌としては、ワイン製造現場の環境から単離されたSphingomonas paucimobilis HC620株を用いた。
具体的には、ABBC653株又はHC620株を、WL培地又は20容量%ワイン含有WL培地(遊離型亜硫酸濃度0ppm)の10cmディッシュに、10個ずつ塗抹し、5日間30℃で培養した。培養終了後に形成されたコロニー数を計数した。
Figure 0006942611
各平板培地のコロニー数の測定結果を表4に示す。表中、「WL」の欄はワインを含有させていないWL培地の結果を、「WL+ワイン」の欄は20容量%ワイン含有WL培地の結果を、それぞれ示す。この結果、環境菌であるHC620株はWL培地ではコロニーを形成したが、20容量%ワイン含有WL培地では生育できなかった。逆に、酢酸菌であるABBC653株は、20容量%ワイン含有WL培地ではコロニーを形成したが、WL培地では生育できなかった。これらの結果から、ワインを含有させたWL培地では、酢酸菌は生育できるが、酢酸菌以外の環境菌は生育が抑制されることがわかった。
[実施例5]
ワイン含有WL培地に含有されているワイン由来の遊離型亜硫酸の濃度の酢酸菌の検出に対する影響を調べた。
具体的には、平板培地として、実施例1で用いた20容量%ワイン含有WL培地の原料のワインを、遊離型亜硫酸(遊離型SO)濃度が100ppmのワインA、遊離型亜硫酸濃度が65ppmのワインB、遊離型亜硫酸濃度が0ppmのワインCとしたものを調製した。比較対象として、GYP培地(グルコース 0.5g/L、酵母エキス 5.0g/L、ペプトン 3.0g/L、寒天 12g/L)に3容量%となるようにエタノールを含有させたエタノール含有GYP培地も用いた。
ABBC653株を、各平板培地の10cmディッシュに、10個ずつ塗抹し、5日間30℃で培養した。培養終了後に形成されたコロニー数を計数した。
Figure 0006942611
各平板培地の形成されたコロニー数の計数結果を、各平板培地の遊離型亜硫酸濃度(ppm)及び分子状SO濃度(ppm)と共に表5に示す。この結果、WLにワインを含有させた培地では、培地中の遊離型亜硫酸濃度、すなわち分子状亜硫酸の濃度が低い培地ほど、形成されたコロニー数が多くなっていた。一方で、エタノールを含有するものの、酵母エキスやペプトンの含有量が少ないエタノール含有GYP培地では、酢酸菌のコロニーは形成されなかった。これらの結果から、平板培地中の遊離型亜硫酸と分子状亜硫酸の濃度が低いほど酢酸菌の検出感度を高めることができること、特に、遊離型亜硫酸濃度を13ppm以下又は分子状亜硫酸濃度を0.8ppm以下にすることにより、酢酸菌の検出感度を高く維持できることが判明した。

Claims (10)

  1. 炭素源と窒素源とワインを含有し、遊離型亜硫酸濃度が0ppmであり、pH3.5〜4.5であり、エタノール濃度が2〜4容量%であり、酢酸菌検出用である、微生物培養用培地。
  2. pHが3.5〜4.2である、請求項1に記載の微生物培養用培地。
  3. 前記ワイン濃度が、前記培地のエタノール濃度が2〜4容量%となる濃度である、請求項1又は2に記載の微生物培養用培地。
  4. 前記炭素源濃度が0.5〜50g/Lであり、前記窒素源濃度が5〜20g/Lである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微生物培養用培地。
  5. 平板培地である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微生物培養用培地。
  6. さらに、寒天を含有し、寒天濃度が15g/L以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微生物培養用培地。
  7. 請求項5又は6に記載の微生物培養用培地に、被検試料を塗抹した後、形成されたコロニーが酢酸菌かどうかを判定する、酢酸菌の検出方法。
  8. 酢酸菌かどうかの判定を、コロニーの外観、ゲノムの配列情報、及び発現しているタンパク質の情報かならなる群より選択される一種以上に基づいて判定する、請求項7に記載の酢酸菌の検出方法。
  9. 酢酸菌かどうかの判定を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析を用いて行う、請求項7に記載の酢酸菌の検出方法。
  10. 前記被検試料がワインである、請求項7〜9のいずれか一項に記載の酢酸菌の検出方法。
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