以下、本発明の無線通信装置を適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態>
図1は、実施の形態の無線通信装置100の構成を示す図である。無線通信装置100は、送信用の増幅器110(以下、増幅器110)、歪補償回路115、受信用の増幅器120(以下、増幅器120)、スイッチ130、制御回路140、BPF(Band Pass Filter)150、アンテナ160、送信信号処理部170、及び受信信号処理部180を含む。
無線通信装置100は、一例として、携帯電話等の通信網に含まれる基地局として用いられる無線通信装置であり、TDD(Time Division Duplex:時分割複信/時分割双方向伝送)方式で切り替えて用いられる増幅器110及び120を含む。
増幅器110は、送信用の増幅器であり、アイドリング電流のドリフト特性を有する半導体製のトランジスタで実現される増幅器である。増幅器110は、第1増幅器の一例である。増幅器110は、入力端子111と出力端子112を有する。増幅器110の外部では、入力端子111は、歪補償回路115を介して送信信号処理部170に接続され、出力端子112は、スイッチ130の端子131に接続される。
増幅器110は、一例として、GaN(窒化ガリウム)製の半導体素子であり、より具体的には、GaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)である。増幅器110の内部では、入力端子111は、GaN−HEMTのゲートに接続され、出力端子112は、GaN−HEMTのドレインに接続される。
増幅器110として用いられるGaN−HEMTのゲート及びドレインには、所定のDC(Direct Current)電圧(固定値)が常に印加される。ゲート電圧は、ゲートにRF信号が入力していない状態におけるアイドリング電流が所定の電流値(例えば、600mA)になるような所定電圧値に設定される。なお、GaN−HEMTのソースは接地されている。
増幅器110は、送信信号処理部170から歪補償回路115を経て送信信号が入力されると、増幅して出力する。送信信号は、スイッチ130及びBPF150を経てアンテナ160から送信(放射)される。送信信号は、送信データを含む信号である。送信信号は、高周波の信号(RF(Radio Frequency)信号)である。なお、RF信号の周波数は、一例として、3.5GHz以上である。
歪補償回路115は、送信信号処理部170と増幅器110との間に設けられ、増幅器110の増幅特性の非線形性を補償するために設けられている。増幅器110の増幅特性の非線形性は、増幅後の送信信号に歪みをもたらす。歪補償回路115は、増幅器110の出力信号が歪補償回路115の入力信号に対して線形な特性になるように、増幅器110の出力に基づくフィードバック制御を行うことにより、増幅器110の入力信号に予め非線形性を与えるプリディストーション方式の補償回路である。
歪補償回路115が入力信号に与える非線形性は、増幅器110が入力信号に与える非線形性を相殺する関係にあるため、増幅器110の出力信号は、歪補償回路115の入力信号に対して線形な特性を有する。すなわち、増幅器110で増幅されて出力される送信信号は、送信信号処理部170から出力される送信信号に対して線形な特性を有する。
増幅器120は、受信用の増幅器であり、入力端子121と出力端子122を有する。入力端子121は、スイッチ130の端子132に接続され、出力端子122は、受信信号処理部180に接続される。増幅器120は、第2増幅器の一例である。
増幅器120は、アイドリング電流のドリフト特性を有さない半導体製のトランジスタであればよく、例えば、シリコン系の半導体素子によって実現される。入力端子121は、半導体素子のゲートに接続され、出力端子122は、半導体素子のドレインに接続され、ソースは接地される。増幅器120は、アンテナ160で受信され、BPF150及びスイッチ130を経て入力される受信信号を増幅して受信信号処理部180に出力する。受信信号は、受信データを含む信号である。
スイッチ130は、3端子型の切替スイッチであり、端子131、132、133を有する。端子131は、増幅器110の出力端子112に接続されており、端子132は増幅器120の入力端子121に接続されており、端子133はBPF150の端子151に接続されている。
スイッチ130は、端子133の接続先を端子131及び端子132のいずれか一方に切り替える。このようなスイッチ130としては、SPDT(Single-Pole Double-Throw)スイッチを用いることができる。スイッチ130の切り替えは、制御回路140によって行われる。端子131と端子133を接続した状態は、第1状態の一例であり、端子132と端子133を接続した状態は、第2状態の一例である。
制御回路140は、無線通信装置100で利用する各種タイミングを計り、指令等を出力する制御部である。制御回路140は、1又は複数のコンピュータを含むコンピュータシステムによって実現される。制御回路140は、制御部の一例である。
制御回路140は、スイッチ130の切り替えのタイミングを計り、時分割方式でスイッチ130の端子133の接続先を端子131及び132のいずれか一方に切り替え、増幅器110及び120のいずれか一方をBPF150及びアンテナ160に接続する。
また、制御回路140は、送信信号処理部170に送信信号を出力させ、受信期間には受信信号処理部180に受信信号を処理させる。制御回路140によるスイッチ130の切り替えのタイミングと、制御回路140が送信信号処理部170に送信信号を出力させる期間とについては、図5、6、8、9、12のタイミングチャートを用いて説明する。
BPF150は、無線通信装置100の送信信号及び受信信号に応じた所定の通過帯域を有する濾波器である。BPF150は、端子151及び152を有する。端子151は、スイッチ130の端子133に接続されており、端子152は、アンテナ160に接続されている。
アンテナ160は、基地局として用いられる無線通信装置100が通信する帯域に合わせた形式のアンテナである。無線通信装置100は、上り(送信)と下り(受信)で同一の周波数を利用するため、アンテナ160は、送信及び受信で利用する周波数に対応した形式のアンテナであればよい。
送信信号処理部170は、制御回路140から送信信号出力指令が入力されると、送信信号を出力する。送信信号はRF信号であり、データが含まれているときは、振幅が変調された信号であり、データが含まれていないときは振幅が一定の信号である。送信信号処理部170は、ベースバンド処理を行う機能を有する。
受信信号処理部180は、受信期間に制御回路140から処理指令が入力されると、増幅器120が増幅した受信信号を処理する。受信信号処理部180は、ベースバンド処理を行う機能を有する。
図2は、増幅器110として用いるトランジスタのゲート電圧に対するドレイン電流の関係を示す図である。増幅器110として用いるGaN−HEMTは、ゲートに所定電圧(DC電圧)に加えてRF信号が入力され、RF信号による所定以上のストレスがかかると、ゲート電圧に対するドレイン電流の関係が変化する。
増幅器110として用いるGaN−HEMTのゲート電圧に対するドレイン電流の特性は、ゲートにDC電圧に加えて、出力が比較的小さいRF信号が入力されている状態では、実線で示す特性になる。ゲート電圧がVg0のときのドレイン電流Idq0は、GaN−HEMTにRF信号による所定以上のストレスがかかっていない状態におけるアイドリング電流である。
また、増幅器110として用いるGaN−HEMTのゲート電圧に対するドレイン電流の特性は、ゲートにDC電圧に加えて入力されるRF信号の出力が比較的大きくなり、トランジスタにRF信号による所定以上のストレスがかかっている状態では、破線で示す特性になる。ゲート電圧がVg0のときのドレイン電流IdqLは、GaN−HEMTにRF信号による所定以上のストレスがかかっていない状態のアイドリング電流Idq0よりも低下する。これがアイドリング電流Idqのドリフト現象である。
このようなアイドリング電流のドリフト現象は、ゲート電極直下に位置する半導体層のトラップ準位に電子が捕獲される等のGaN−HEMTの内部での変化に起因すると考えられている。
アイドリング電流のドリフト現象が生じていない場合に、ゲートに入力信号を印加すると、ドレイン電流(出力電流)の利得は、実線で示すように大きくなる。一方、アイドリング電流のドリフト現象が生じていなる場合に、ゲートに入力信号を印加すると、ドレイン電流(出力電流)の利得は、破線で示すように小さくなる。
このように、アイドリング電流のドリフト現象が生じると、出力電流の利得が大きく変換するため、無線通信装置100がRF信号を送信する際の動作に大きな影響が生じうる。
そこで、実施の形態では、RF信号の送信時におけるアイドリング電流の変動の影響を低減した無線通信装置100を提供する。
無線通信装置100では、取り扱うRF信号の出力が比較的大きいため、増幅器110として用いるGaN−HEMTのゲートにRF信号が入力される際には、アイドリング電流がドリフト現象によって低下しない場合は考えず、ドリフト現象によって低下するものとして考える。
このため、以下では、増幅器110にRF信号が入力され、増幅器110が増幅したRF信号を出力している場合(RF信号の出力が有る場合)と、増幅器110にRF信号が入力されておらず、増幅器110がRF信号を出力していない場合(RF信号の出力が無い場合)とについて説明する。
図3は、増幅器110のRF信号の出力の有無と、増幅器110のアイドリング電流の特性との関係を示す図である。
増幅器110は、送信信号処理部170から送信信号(RF信号)が入力されると、増幅したRF信号を出力する。増幅器110のゲートにRF信号が入力されることは、増幅器110にRF帯の送信信号が入力されることである。
時刻t1でRF信号の出力が有りになる前の無しの状態では、アイドリング電流Idqの値は、Idq0である。時刻t1においてRF信号の出力が有りになると、アイドリング電流Idqは、Idq0よりも低下する。このときのアイドリング電流Idqの下がり方は、最初に急激に下がり、徐々に下がり方が緩やかになる非線形的な下がり方である。アイドリング電流Idqは、下がりきると、IdqLになる。例えば、アイドリング電流Idqが600mAの場合に、アイドリング電流IdqLは、200mA程度である。
また、時刻t2でRF信号の出力が無しになっても、アイドリング電流Idqは、すぐにはIdq0のレベルには回復せず、緩やかに非線形的に増大する。ここでは、このようなRF信号の入力に伴うアイドリング電流Idqの低下及び回復の遅れ等の現象をアイドリング電流Idqのドリフト(ドリフト現象)と称す。RF信号の出力が無くなってから、アイドリング電流IdqがIdq0まで回復するには、1分以上掛かることもある。なお、一例として、時刻t1から時刻t2までの時間は、5ms(ミリ秒)である。また、電流が回復する時定数は、一例として、1msである。
図4は、増幅器110のRF信号の出力の有無と、アイドリング電流Idqの時間変化特性を示す。図4には、約5周期にわたって増幅器110へのRF信号の出力の有無を切り替える場合のアイドリング電流Idqを示す。図4に示すように、RF信号の出力の有無を繰り返し行うと、アイドリング電流Idqのドリフト現象が繰り返し発生する。
ところで、受信期間から送信期間に切り替わる際に、アイドリング電流Idqがドリフトすると、歪補償回路115による増幅器110の出力電流の歪みの補償が適切に行われなくなる。
すなわち、図4に示すように増幅器110のRF信号の出力の有無が切り替わる場合には、受信期間から送信期間に切り替わった直後のグレーで示す期間において、歪補償回路115による増幅器110の出力電流の歪みの補償が適切に行われなくなる。
実施の形態の無線通信装置100は、このようなアイドリング電流Idqのドリフトによる影響を抑制するために、RF信号の送信時におけるアイドリング電流の変動を低減する。
なお、受信用の増幅器120は、アイドリング電流Idqのドリフト現象が生じず、また、受信系の回路には歪補償回路115は含まれないため、上述のような問題は生じない。
以下、RF信号の送信時におけるアイドリング電流の変動の影響を低減するための制御回路140によるスイッチ130の切り替え方法について説明する。
図5は、第1実施例におけるデータ送信のオン/オフ、スイッチ130の接続状態、RF信号の出力の有無、及びアイドリング電流Idqの時間変化を示すタイミングチャートである。
データ送信のオン/オフは、無線通信装置100が送信信号を送信する送信期間であるかどうかを表す。データ送信がオンであることは、送信期間であることを表す。データ送信がオフであることは、送信期間ではないことを表す。なお、送信期間ではない期間は、受信期間及びデッドタイムである。受信期間及びデッドタイムは、所定期間の一例である。送信期間は、所定期間毎に繰り返される。
スイッチ130の接続状態は、送信状態と受信状態のいずれであるかを表す。スイッチ130が送信状態であることは、制御回路140によって、スイッチ130の端子133が端子131に接続されていることを表す。すなわち、増幅器110がスイッチ130及びBPF150を介してアンテナ160に接続されていることを表す。
スイッチ130が受信状態であることは、制御回路140によって、スイッチ130の端子133が端子132に接続されていることを表す。すなわち、増幅器120がスイッチ130及びBPF150を介してアンテナ160に接続されていることを表す。換言すれば、増幅器110は、アンテナ160に接続されていないことを表す。
RF信号の出力が有ることは、増幅器110のGaN−HEMTのゲートにRF信号が入力されていることを表す。RF信号の出力が無いことは、増幅器110のGaN−HEMTのゲートにRF信号が入力されていないことを表す。
図5に示すように、データ送信がオンのときは、スイッチ130の接続状態が送信状態にされ、データ送信がオフのときは、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。なお、データ送信がオフのときは、送信期間ではない期間であり、厳密には受信期間の他にデッドタイムがあるが、デッドタイムは受信期間に比べて非常に短いため、ここでは、データ送信がオン/オフと、スイッチ130の接続状態の送信状態/受信状態とが同期しているものとして説明する。
第1実施例では、時刻t11で最初にデータ送信をオンにする際に、RF信号の出力が有りになり、その後、有りの状態に保持する。RF信号の出力は、無線通信装置100が送信信号の送信処理を終えるまで(例えば、無線通信装置100の電源がオフにされるまで)有りの状態に保持される。
このように、RF信号の出力を有りの状態に保持すれば、アイドリング電流Idqは、時刻t12でIdqLに下がりきった後は、IdqLで一定値になる。
このように、アイドリング電流Idqを一定値に保持できるため、歪補償回路115による増幅器110の出力電流の歪みの補償を適切に行うことができる。
従って、RF信号の送信時におけるアイドリング電流の変動の影響を低減した無線通信装置100を提供することができる。なお、時刻t11でRF信号の出力を有りにしてからアイドリング電流Idqが時刻t12でIdqLに下がりきるまでに要する時間を時間T1とする。
図6は、第2実施例におけるデータ送信のオン/オフ、スイッチ130の接続状態、RF信号の出力の有無、及びアイドリング電流Idqの時間変化を示すタイミングチャートである。図6には、図5と同様に、データ送信のオン/オフ、スイッチ130の接続状態(送信状態又は受信状態)、RF信号の出力の有無、及びアイドリング電流Idqの時間変化を示す。
図6に示すように、データ送信がオンのときは、スイッチ130の接続状態が送信状態にされ、データ送信がオフのときは、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。これは、図5と同様である。
より具体的には、時刻t21、t23、t25、t27、t29でデータ送信がオンにされるとともに、スイッチ130の接続状態が送信状態にされる。また、時刻t22、t24、t26、t28、t30でデータ送信がオフにされるとともに、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。
第2実施例では、RF信号の出力については、時刻t21で最初にデータ送信をオンにするときに、RF信号の出力を有りにし、時刻t22でデータ送信をオフにするときに、RF信号の出力を無しにする。
また、時刻t23で2回目にデータ送信をオンにする前の時刻t22AにおいてRF信号の出力を有りにし、その後、時刻t24まで有りの状態に保持する。時刻t24において、RF信号の出力を無しにする。
次に、時刻t25でデータ送信をオンにする前の時刻t24AにおいてRF信号の出力を有りにし、その後、時刻t26まで有りの状態に保持する。時刻t26において、RF信号の出力を無しにする。
以降も同様にRF信号の出力の有無を切り替え、時刻t29でデータ送信をオンにする前の時刻t28AにおいてRF信号の出力を有りにし、その後、時刻t30まで有りの状態に保持する。時刻t30において、RF信号の出力を無しにする。
送信信号処理部170は、制御回路140から入力される送信信号出力指令に基づいて、上述のようなRF信号の出力の有無の切り替え処理を無線通信装置100が送信信号の送信処理を終えるまで(例えば、無線通信装置100の電源がオフにされるまで)繰り返し実行する。
このように、実施例2では、データ送信をオンにする前の所定のタイミング(時刻t22A、t24A、t26A、t28A)でRF信号の出力を予め有りにしておき、データ送信をオフにするときまで有りの状態に保持する。データ送信をオンにする前の所定のタイミングは、データ送信をオンにするタイミング(時刻t23、t25、t27、t29)よりも、時間T1(図5参照)だけ早いタイミングである。
このため、データ送信を2回目以降にオンにするタイミング(時刻t23、t25、t27、t29)では、アイドリング電流Idqは、IdqLに下がりきっている。従って、データ送信を2回目以降にオンにするタイミング(時刻t23、t25、t27、t29)から、データ送信を2回目以降にオフにするタイミング(時刻t24、t26、t28、t30)までの各送信期間では、アイドリング電流Idqは、IdqLで一定値になる。
このように、各送信期間においてアイドリング電流Idqを一定値に保持できるため、歪補償回路115による増幅器110の出力電流の歪みの補償を適切に行うことができる。
従って、RF信号の送信時におけるアイドリング電流の変動の影響を低減した無線通信装置100を提供することができる。
なお、受信期間において、時刻t22A、t24A、t26A、t28Aからそれぞれ時刻t23、t25、t27、t29までの間にRF信号の出力を有りにする期間は、第1期間の一例である。
図7は、第3実施例の増幅器110のアイドリング電流Idqの特性を示す図である。図7に示すアイドリング電流Idqは、時刻t2でRF信号の出力が無しにされた後におけるアイドリング電流Idqの回復が図3に示す特性よりも緩やかである。図3に示す時刻t2以降に回復しているアイドリング電流Idqの時定数が1msであるのに対して、時定数が約5msの場合には、実施例3のスイッチ130の切り替え方法を適用することが有効的である。
図8は、第3実施例におけるデータ送信のオン/オフ、スイッチ130の接続状態、RF信号の出力の有無、及びアイドリング電流Idqの時間変化を示すタイミングチャートである。図8には、図5と同様に、データ送信のオン/オフ、スイッチ130の接続状態(送信状態又は受信状態)、RF信号の出力の有無、及びアイドリング電流Idqの時間変化を示す。
図8に示すように、データ送信がオンのときは、スイッチ130の接続状態が送信状態にされ、データ送信がオフのときは、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。これは、図5と同様である。
より具体的には、時刻t31、t33、t35、t37、t39でデータ送信がオンにされるとともに、スイッチ130の接続状態が送信状態にされる。また、時刻t32、t34、t36、t38、t40でデータ送信がオフにされるとともに、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。
第3実施例では、RF信号の出力については、データ送信をオンにするときに、RF信号の出力を有りにし、データ送信をオフにするときに、RF信号の出力を無しにせず、第1所定時間が経過した時点でオフにする。第1所定時間は、受信期間の約半分である。
このため、RF信号の出力は、時刻t31、t33、t35、t37、t39でオンにされ、時刻t32A、t34A、t36A、t38A、t40Aにおいてオフにされる。時刻t32A、t34A、t36A、t38A、t40Aは、それぞれ、時刻t32、t34、t36、t38、t40よりも上述した第1所定時間だけ後の時刻である。
このように、データ送信をオフにした後の第1所定時間の間も引き続きRF信号の出力を有りに保持すれば、時刻t32A、t34A、t36A、t38A、t40AでRF信号の出力が無しにされた後に、次にRF信号の出力が有りにされるまでの間にアイドリング電流Idqが回復する割合が少ない状態にできる。
このため、2回目以降にRF信号の出力を有りにする際には、アイドリング電流Idqの値は非常に小さく、RF信号の出力を有りにすることによって、直ちにアイドリング電流Idqを略IdqLにすることができる。
すなわち、制御回路140がこのような制御を繰り返すことにより、アイドリング電流Idqは、変動幅が非常に小さい状態になり、IdqLに近い値に保持される。このときに、アイドリング電流Idqの変動幅がアイドリング電流Idqの10%以下に収まるように、データ送信をオフにした後の第1所定時間を設定することが好ましい。
以上のように、2回目以降の送信期間では、アイドリング電流Idqの変動幅をアイドリング電流Idqの10%以下に収まる程度に低減し、略一定の値に保持できるため、歪補償回路115による増幅器110の出力電流の歪みの補償を適切に行うことができる。
従って、RF信号の送信時におけるアイドリング電流の変動の影響を低減した無線通信装置100を提供することができる。
なお、受信期間において、時刻t32、t34、t36、t38、t40からそれぞれ時刻t32A、t34A、t36A、t38A、t40Aまでの間にRF信号の出力を有りにする期間は、第1期間の一例である。
図9は、第4実施例におけるデータ送信のオン/オフ、スイッチ130の接続状態、RF信号の出力の有無、及びアイドリング電流Idqの時間変化を示すタイミングチャートである。図9には、図5と同様に、データ送信のオン/オフ、スイッチ130の接続状態(送信状態又は受信状態)、RF信号の出力の有無、及びアイドリング電流Idqの時間変化を示す。
図9に示すように、データ送信がオンのときは、スイッチ130の接続状態が送信状態にされ、データ送信がオフのときは、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。これは、図5と同様である。
より具体的には、時刻t41、t43、t45、t47、t49でデータ送信がオンにされるとともに、スイッチ130の接続状態が送信状態にされる。また、時刻t42、t44、t46、t48、t50でデータ送信がオフにされるとともに、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。
第4実施例では、RF信号の出力については、送信期間に加えて、受信期間の中央において第2所定時間だけ有りにされる。
このため、RF信号の出力は、送信期間においては、時刻t41、t43、t45、t47、t49で有りにされ、時刻t42、t44、t46、t48、t50において無しにされる。
また、受信期間においては、RF信号の出力は、時刻t42A、t44A、t46A、t48A、t50Aで有りにされ、時刻t42B、t44B、t46B、t48B、t50Bにおいて無しにされる。
受信期間が5msである場合に、一例として、時刻t42A、t44A、t46A、t48A、t50Aは、それぞれ、t42、t44、t46、t48、t50よりも2ms後の時刻である。
また、時刻t42B、t44B、t46B、t48B、t50Bは、それぞれ、時刻t42A、t44A、t46A、t48A、t50Aよりも1ms後の時刻である。また、時刻t42B、t44B、t46B、t48B、t50Bよりも後の受信期間は、それぞれ、2msである。
時刻t42A、t44A、t46A、t48A、t50Aから、それぞれ、時刻t42B、t44B、t46B、t48B、t50Bまでの1msの時間は、上述した第2所定時間である。
このように、送信期間の終わりのタイミングでRF信号の出力を無しにした後の受信期間の中央において、第2所定時間だけRF信号の出力を有りにすれば、時刻t42、t44、t46、t48、t50でRF信号の出力が無しにされた後に、時刻t42A、t44A、t46A、t48A、t50AでRF信号の出力が有りにされるまでの間にアイドリング電流Idqが回復する割合が少ない状態にできる。
そして、時刻t42A、t44A、t46A、t48A、t50AでRF信号の出力が有りにされた1ms後の時刻t42B、t44B、t46B、t48B、t50BにRF信号の出力を再び無しにする。
このため、受信期間が始まってアイドリング電流Idqの回復量が少ない間に、第2所定時間だけRF信号の出力を再び有りにすることによって、受信期間の中央においてアイドリング電流Idqを低減し、略IdqLまで低下させることができる。
このようにして、受信期間におけるアイドリング電流Idqの変動を小さく抑えることができ、時刻t43で2回目以降の送信期間にRF信号の出力を有りにする際には、アイドリング電流Idqの値が非常に小さい状態にすることができる。
すなわち、制御回路140がこのような制御を繰り返すことにより、アイドリング電流Idqは、変動幅が非常に小さい状態になり、IdqLに近い値に保持される。このときに、アイドリング電流Idqの変動幅がアイドリング電流Idqの10%以下に収まるように、データ送信をオフにした後の第2所定時間を設定することが好ましい。
以上のように、2回目以降の送信期間では、アイドリング電流Idqの変動幅をアイドリング電流Idqの10%以下に収まる程度に低減し、略一定の値に保持できるため、歪補償回路115による増幅器110の出力電流の歪みの補償を適切に行うことができる。
従って、RF信号の送信時におけるアイドリング電流の変動の影響を低減した無線通信装置100を提供することができる。
なお、受信期間において、時刻t42A、t44A、t46A、t48A、t50Aからそれぞれ時刻t42B、t44B、t46B、t48B、t50Bまでの間にRF信号の出力を有りにする期間は、第1期間の一例である。
図10は、実施例5の無線通信装置100M1を示す図である。図10(A)には無線通信装置100M1を示し、図10(B)には低消費電力回路195の内部構成を示す。
無線通信装置100M1は、図1に示す無線通信装置100の増幅器110とスイッチ130との間にスイッチ130M1を設け、制御回路140の代わりに制御回路140M1を含み、スイッチ130M1に接続される低消費電力回路195を追加した構成を有する。その他の構成は、図1に示す無線通信装置100と同様であり、RF信号の出力を有りにする期間は、実施例1と同様である(図5参照)。
スイッチ130M1は、端子131M1、132M1、133M1を有する。端子131M1は、増幅器110の出力端子112に接続され、端子132M1は、低消費電力回路195に接続され、端子133M1は、スイッチ130の端子131に接続される。スイッチ130M1は、端子131M1の接続先を端子132M1又は端子133M1に切り替える。スイッチ130M1の切り替えは、制御回路140M1によって行われる。
制御回路140M1は、スイッチ130M1の切り替えの処理が追加された点が図1に示す制御回路140と異なる。その他は同様である。制御回路140M1は、送信期間には端子131M1を端子133M1に接続する。すなわち、増幅器110がスイッチ130、BPF150を介してアンテナ160に接続される。
また、制御回路140M1は、受信期間には端子131M1を端子132M1に接続する。すなわち、増幅器110が低消費電力回路195に接続される。
低消費電力回路195は、図1の無線通信装置100の受信期間において増幅器110がBPF150及びアンテナ160から切り離された状態よりも、電力消費が少なくなるように、インピーダンスを調整した回路である。
低消費電力回路195は、一例として、図10(B)に示すように、端子132M1に接続されるL字型の線路195Aの途中から分岐するスタブ195Bを有する。このような低消費電力回路195は、例えば、銅製の金属パターンで作製することができる。
L字型の線路195Aは、端部195A1と端部195A2との間でL字型の形状を有する導電線路であり、端部195A1は、スイッチ130M1の端子132M1に接続される。端部195A1と端部195A2の長さは、RF信号の共振が生じないような長さ(電気長)に設定されている。
また、線路195Aの途中から分岐するスタブ195Bは、線路195Aを伝送されるRF信号に反射を生じさせることにより、電力が減衰するようにしている。なお、端部195A1からスタブ195Bの先端までの長さ、及び、端部195A2からスタブ195Bの先端までの長さは、ともにRF信号の共振が生じないような長さ(電気長)に設定されている。
無線通信装置100は、受信期間にも送信信号処理部170からRF信号が出力される。低消費電力回路195は、受信期間に送信信号処理部170から出力されて増幅器110によって増幅されたRF信号を減衰させることにより、図1の無線通信装置100の受信期間において増幅器110がBPF150及びアンテナ160から切り離された状態(ハイインピーダンス(Hi−Z)の状態)よりも、電力消費が少なくなるようにする。
このような低消費電力回路195を用いることにより、受信期間における送信信号処理部170の電力消費を低減することができる。なお、RF信号の出力を有りにする期間は、実施例1に限らず、実施例2乃至4のいずれの手法によるものであってもよい。
図11は、実施例6の無線通信装置100M2を示す図である。図11において、図1に示す無線通信装置100と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
無線通信装置100M2は、増幅器110M2、歪補償回路115、増幅器120、スイッチ130、制御回路140M2、BPF150、アンテナ160、送信信号処理部170、受信信号処理部180、及びゲート電圧制御部190を含む。無線通信装置100M2は、図1に示す無線通信装置100の増幅器110及び制御回路140の代わりに増幅器110M2及び制御回路140M2をそれぞれ含み、ゲート電圧制御部190を追加した構成を有する。
増幅器110M2は、ゲート電圧を調整できる増幅器である点が増幅器110(図4参照)と異なる。ゲート電圧は、ゲート電圧制御部190によって切り替えられる。その他は、増幅器110と同様である。
制御回路140M2は、スイッチ130の端子133の接続先を端子131及び132のいずれか一方に切り替える処理と、送信信号処理部170に送信信号を出力させ、受信期間には受信信号処理部180に受信信号を処理させるとに加えて、ゲート電圧制御部190を駆動するタイミングを制御する処理を行う。
ゲート電圧制御部190は、増幅器110のGaN−HEMTのゲート電圧を制御する。ゲート電圧制御部190は、制御回路140M2から切り替え指令が入力されると、増幅器110のゲート電圧をVg1からVg2へ、又は、Vg2からVg1へと切り替える処理を行う。
ゲート電圧Vg1は、アイドリング電流がIdq0になるゲート電圧であり、ゲート電圧Vg2よりも大きい。換言すれば、ゲート電圧Vg2は、ゲート電圧Vg1よりも小さい。ゲート電圧Vg2は、ゲート電圧がVg1のときのアイドリング電流Idq0よりも低いアイドリング電流IdqL1を一定値に保持できるゲート電圧である。なお、具体的には、図12に示すタイミングチャートの通りに切り替えられる。
図12は、第6実施例による制御回路140によるスイッチ130の切り替え方法と、ゲート電圧制御部190の駆動方法を示すタイミングチャートである。図12には、データ送信のオン/オフ、スイッチ130の接続状態(送信状態又は受信状態)、RF信号の出力の有無、ゲート電圧、及びアイドリング電流Idqの時間変化を示す。
ゲート電圧は、ゲート電圧制御部190が増幅器110として用いるGaN−HEMTのゲートに出力する電圧を示す。
図12に示すように、データ送信がオンのときは、スイッチ130の接続状態が送信状態にされ、データ送信がオフのときは、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。これは、図5と同様である。
より具体的には、時刻t61、t63、t65、t67、t69でデータ送信がオンにされるとともに、スイッチ130の接続状態が送信状態にされる。また、時刻t62、t64、t66、t68、t70でデータ送信がオフにされるとともに、スイッチ130の接続状態が受信状態にされる。
第6実施例では、RF信号の出力については、第1実施例と同様に、時刻t61で最初に有りにした後は、有りの状態に保持する。RF信号の出力は、無線通信装置100が送信信号の送信処理を終えるまで(例えば、無線通信装置100の電源がオフにされるまで)有りに保持される。
また、ゲート電圧制御部190は、制御回路140M2から入力される切り替え指令に応じて、増幅器110として用いるGaN−HEMTのゲート電圧を制御する。より具体的には、ゲート電圧制御部190は、送信期間にはゲート電圧をVg1に設定し、受信期間にはゲート電圧をVg2に設定する。ゲート電圧Vg2は、ゲート電圧Vg1よりも小さい。
このように、ゲート電圧を制御すると、アイドリング電流Idqは、送信期間ではIdq0になり、受信期間ではIdqL1になり、送信期間において一定値になる。
このように、アイドリング電流Idqを一定値に保持できるため、歪補償回路115による増幅器110の出力電流の歪みの補償を適切に行うことができる。
従って、RF信号の送信時におけるアイドリング電流の変動の影響を低減した無線通信装置100を提供することができる。
なお、実施例6では、時刻t61でRF信号の出力を有りにした後は、有りの状態に保持する形態について説明したが、実施例2乃至5におけるRF信号の出力のように、受信期間のうちの第1期間においてのみRF信号の出力を有りにしてもよい。
また、以上では、アイドリング電流のドリフト特性を有する半導体製のトランジスタで実現される増幅器110がGaN−HEMTによって実現される形態について説明したが、アイドリング電流のドリフト特性を有するのであれば、GaN−HEMT以外であってもよい。
例えば、酸化ガリウム(Ga2O3)又はインジウムアルミナイト(InAlN)製のトランジスタであってもよい。
また、以上では、歪補償回路115が増幅器110とスイッチ130との間に設けられる形態について説明したが、歪補償回路115は、増幅器110と送信信号処理部170との間に設けられてもよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態の無線通信装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
所定期間おきに繰り返し設けられる送信期間に高周波の送信信号を送信するアンテナと、
高周波の入力信号に対するアイドリング電流のドリフト特性を有するトランジスタで実現され、前記送信信号を増幅する増幅器と、
前記アンテナ及び前記増幅器を接続する第1状態と、前記アンテナ及び前記増幅器を接続しない第2状態とを切り替えるスイッチであって、前記送信期間に前記第1状態になり、前記送信期間以外の期間に前記第2状態になるスイッチと、
前記増幅器に前記送信信号を入力する送信信号処理部と、
前記送信期間における前記トランジスタのアイドリング電流の変動量が所定量以下になるように、前記送信期間と、前記送信期間以外の期間のうちの少なくとも一部の第1期間とにおいて、前記送信信号処理部に前記送信信号を前記増幅器に入力させる制御部と
を含む、無線通信装置。
(付記2)
前記第1期間は、前記所定期間に等しい、付記1記載の無線通信装置。
(付記3)
前記第1期間は、当該第1期間を含む所定期間の直前にある送信期間に連続する期間、又は、当該第1期間を含む所定期間の直後にある送信期間に連続する期間である、付記1記載の無線通信装置。
(付記4)
当該第1期間を含む所定期間の直前にある送信期間と、当該第1期間を含む所定期間の直後にある送信期間との間に所定の間隔をおいた期間である、付記1記載の無線通信装置。
(付記5)
前記増幅器のトランジスタのゲート電圧を制御するゲート電圧制御部をさらに含み、
前記ゲート電圧制御部は、
前記送信期間に、前記ゲート電圧を第1ゲート電圧に設定して前記増幅器のトランジスタのアイドリング電流を第1アイドリング電流に設定し、
前記送信期間以外の期間に、前記ゲート電圧を前記第1ゲート電圧よりも低い第2ゲート電圧に設定して前記増幅器のトランジスタのアイドリング電流を前記第1アイドリング電流よりも低い第2アイドリング電流に設定する、付記1乃至4のいずれか一項記載の無線通信装置。
(付記6)
受信信号を処理する受信信号処理回路をさらに含み、
前記アンテナは、前記所定期間に含まれる受信期間に受信信号を受信するアンテナであり、
前記スイッチの前記第2状態は、前記アンテナと前記受信信号処理回路とを接続する状態である、付記1乃至5のいずれか一項記載の無線通信装置。
(付記7)
前記増幅器と前記送信信号処理部との間、又は、前記増幅器と前記スイッチとの間に設けられる、歪補償回路をさらに含む、付記1乃至6のいずれか一項記載の無線通信装置。
(付記8)
前記制御部は、前記送信期間に前記スイッチを前記第1状態に切り替え、前記送信期間以外の期間に前記スイッチを前記第2状態に切り替える、付記1乃至7のいずれか一項記載の無線通信装置。