JP6958350B2 - 幹細胞培養上清の製造方法 - Google Patents
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Description
以上のことから、細胞培養においては、それによって得られる細胞だけでなく、培養上清もまた非常に貴重なものであり、それを効率よく作製することは極めて重要なことである。
1.幹細胞培養上清液の製造方法であって、以下の[a]から[c]の工程を含む、方法。
[a]細胞培養容器内の透過性膜中空糸の内表面に播種した幹細胞に培養液を0.01〜1mm/minの線速度で供給し、細胞が播種されていない側に培養液を0.02〜5mm/minの線速度で供給して前記幹細胞を培養する工程
[b]前記幹細胞を培養する際に、前記培養液に血清を添加した培養液を用いて前記幹細胞を増殖する工程
[c]増殖した幹細胞に無血清培養液または低血清培養液を接触させて得られた培養上清を回収する工程
2.前記細胞培養容器は、透過性膜中空糸を格納したモジュールであって、前記中空糸の内腔と連通する2つの開口部と、前記モジュールの内側かつ前記中空糸の外腔と連通する2つの開口部を有するものである、1に記載の方法。
3.以下の[d]から[g]の構成を含む細胞培養装置を用いて前記幹細胞の培養を行う、1または2に記載の方法。
[d]前記細胞培養容器
[e]少なくとも1つの培養液貯留容器
[f]前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器とを接続する流路網
[g]前記流路網に設けられ、前記細胞培養容器への培養液の供給および/または前記細胞培養容器からの培養液の排出を制御する手段
4.前記透過性膜中空糸の孔半径が、1〜500Åであることを特徴とする、1から3のいずれかに記載の方法。
5.前記幹細胞が間葉系幹細胞であることを特徴とする、1から4のいずれかに記載の方法。
即ち、本発明により、培養する間葉系幹細胞から分泌される生理活性物質を高濃度に含む培養上清液を、簡便に効率よく作製することが可能となった。
[a]細胞培養容器内の透過性膜中空糸表面に播種した幹細胞に培養液を供給する工程
[b]前記幹細胞に前記培養液を接触させて前記幹細胞を培養する工程
[c]前記幹細胞が分泌した成分を含む培養液を回収する工程
本発明において、細胞の培養上清とは、細胞を一定期間(数時間から数日)培養した際に、細胞に直接または間接に接触していた培養液を細胞と分離して得られるものを言う。培養液馴化培地、コンディションドメディウム(Conditioned medium)などと同意である。
本発明に係る対象の一つとなる幹細胞としては、特に限定されるものではないが、骨髄間葉系幹細胞、あるいは脂肪組織由来間葉系幹細胞が好適である。プライマリー細胞に限らず、遺伝子改変等によって株化された間葉系幹細胞も用いることが出来る。動物種も特に限定されず、ヒト、マウス、ラット等のいずれの動物由来のものも使用できる。また、間葉系幹細胞以外の接着性を有する種々の体性幹細胞にも好適に使用できる。
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法に用いる培養液の組成等は、特に限定されない。例えば、DMEM、αMEM、RPMI1640などを基礎培地とし、これに適宜、動物血、細胞増殖因子、ホルモンなどを添加することにより調製されたものが使用できる。
本発明で使用する透過性膜中空糸は、細胞を中空糸内腔に保持でき、溶液や低分子の物質を透過させるような構造をとることができるものであれば、特に限定されるものではない。
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法は、以下の工程を含む。
[a]透過性膜中空糸内腔に存在する幹細胞に培養液を供給する工程
[b]前記培養液を連続的または間欠的に前記中空糸内腔を移動(通過)させることにより前記幹細胞に前記培養液を接触させて前記幹細胞を培養する工程
[c]前記工程により得られた培養液を回収する工程
その順序は、例えば[a][b][c]の順に行えばよいが、操作の途中で2つ以上の工程が重複してもよい。ただし、[b]の工程開始が[a]の工程開始に先んじることはなく、[c]の工程開始が[b]の工程開始に先んじることはない。
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法で使用する透過性膜中空糸は、筒状容器に数十本〜数万本の中空糸が束ねられた中空糸束を格納してモジュール化し、細胞培養容器としてもよい(このようなモジュールを、以下、中空糸モジュールとも呼ぶ)。中空糸モジュールには、培養基材に培地を供給することができる開口部と、培地を排出することができる開口部とを、それぞれ1つ以上有している必要がある。
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法においては、以下の[d]から[g]の構成を含む細胞培養システムを用いて培養を行えばよい。
[d]前記細胞培養容器
[e]少なくとも1つの培養液貯留容器
[f]前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器とを接続する流路網
[g]前記流路網に設けられ、前記細胞培養容器への培養液の供給、および/または前記細胞培養容器からの培養液の排出を制御する手段
前記システムで用いる培養液貯留容器の形態や素材については特に限定されないが、ガス透過性を有することが望ましい。前記システムの一つの態様においては、前記中空糸モジュールを含む培養装置を構成し、それをCO2インキュベーター内に設置して培養上清の作製を実施してもよいが、その際、ガス透過性を有する培養液貯留容器を用いれば、気泡発生などの問題点を有するガス交換用チューブを設置することなく、簡便に培養を行うことができる。このような培養液貯留容器としては、例えば、市販の細胞培養バッグ(ニプロ社製、東洋製罐社製のものなどが入手できる。)、プラスチック製ボトルなどが挙げられる。
前記システムにおいて、前記細胞培養容器にはいくつかの流路(流路網)が接続している。その構成(配管)は特に限定されないが、少なくとも前記細胞培養容器と前記液体培地貯留容器との接続部分を含み、前記液体培地貯留容器から前記液体培地貯留容器への培地の供給が可能なように配管されている必要がある。このような流路網として、少なくとも(1)前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器の中空糸内腔側の開口部との接続部分、および(2)前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器の中空糸外腔側の開口部との接続部分を含む流路網、が挙げられる。なお、本明細書において「接続」とは、直接繋がっている場合、および、配管などの流路を介して繋がっている場合のいずれであってもよい。
前記システムには、前記流路網に設けられ、前記細胞培養容器への培養液の供給、および/または前記細胞培養容器からの培養液の排出を制御する手段が設けられている。細胞懸濁液や培養液の供給方法の形態は、特に限定されるものではないが、ペリスタポンプを用いた灌流や、培養液貯留容器が培養バッグなど軟質のものである場合は前記容器にローラーを当てて培地を絞り出す方法等が好適である。ポンプの設置場所は特に限定されないが、液体がポンプ部分を通過する際にゴミが混入する等のリスクを避けるため、排出側に設置することが好ましい。
上記の中空糸モジュールや培養液貯留容器、ペリスタポンプなどにより構成される培養システムをCO2インキュベーター内に設置し、本発明の実施の一つの態様例としたものを図2に示す。図2において、5および6はそれぞれ、ガス透過性を有する培養液貯留容器(細胞培養バッグなど)である。培養液貯留容器5からは、中空糸モジュール7の端部導管3aに、流路が接続され、培養液貯留容器5に入っている培地が中空糸内腔側に移送できるようになっている。他方、培養液貯留容器6からは、中空糸モジュール7の側部導管4aに、流路が接続され、培養液貯留容器6に入っている培地が中空糸外腔側に移送できるようになっている。中空糸モジュール7の内腔側を通過した培養液は、端部導管3bから排出され、ペリスタポンプ8を経由して、培養上清回収容器11まで流路が接続され、中空糸モジュール内腔を通過した培養上清が回収できるようになっている。一方、中空糸モジュール7の外腔側を通過した培養液は、側部導管4bから排出され、ペリスタポンプ9を経由して、廃液回収容器10に回収される。
前記システムを用いて本発明の幹細胞培養上清液の製造方法を実施する場合、例えば、前記の透過性膜中空糸モジュールを用いる場合、中空糸への培地の供給は、内腔側および外腔側の2ルートが必要である。その際、培地の供給にあたり、培養液貯留容器は内腔側および外腔側で別々のものを用いても良いし、1つの容器から内腔側および外腔側の両方に培地を供給しても良い。また、中空糸内腔側と外腔側の水圧差や浸透圧差により、内腔から外腔、あるいは外腔から内腔へと培養液が流れることは極力抑えることが望ましい。何故なら、中空糸内腔を流れてきた培養液には、細胞が放出した物質が多く含まれるのに対し、中空糸外腔側には細胞が存在しないため、外腔側を流れる培養液中には細胞が放出する物質は、極めて少量であるためである。即ち、中空糸の一端の開口部から内腔へと流入した培養液は、なるべく外腔への流出や外腔からの流入の干渉などを受けず、そのまま、もう一方の開口部から流出していくことが望ましい。
培養に用いられる培養液は特に限定されず、間葉系幹細胞の培養液として通常用いられるものであれば良いが、幹細胞の培養上清液を治療等の目的で生体に適用する場合には、培養液中の動物血清がなるべく少ない、あるいは動物血清を含まないことが望ましい。このため、血清を含む培養液を用いて幹細胞を培養する場合、充分に細胞が増えた状態になったところで低血清培養液や無血清培養液に交換し、最終的に血清含有量が少ない、または血清を含まない培養上清液を得ることが出来る。また、無血清でも幹細胞の培養を可能とするよう成分を調整された培養液を用いて最初から細胞培養を行い、血清を含まない培養上清液を得ることも可能である。
前記のような理由により、本発明により培養上清を得るには、中空糸内腔を流れてきた培養液は、中空糸外腔を流れてきた培養液とは区別して、容器に回収することが好ましい。
細胞培養における培養液、特に中空糸内腔を細胞に接して流れる培養液の流速については、流速を厳密に制御することが好ましい。流速が遅すぎると、細胞への栄養供給が十分になされず、細胞が増殖しにくくなる。逆に、流速が速すぎても、細胞周囲の環境変化が激しく、細胞が周りの環境に馴染めず、細胞が増殖しにくくなる。このように、培養液、特に中空糸内腔を流れる培養液の流速は、細胞増殖度合いや環境に応じて、調整することが好ましい。細胞増殖度合いを調べる方法は、特に限定されないが、培養液中のグルコースや乳酸塩の濃度等の測定結果をもとに行うことが出来る。細胞が播種された側に流す培養液の好ましい流速は、0.01〜1mm/minである。一方、細胞が播種されていない側に流す培養液の好ましい流速は、0.02〜5mm/minである。
細胞播種前に予めコラーゲン(新田ゼラチン)をコートした中空糸モジュール(中空糸はPES/PVP製、内径200μm、外径260μm、膜厚30μm、孔半径75Å、東洋紡)を用い、図2に示すものと同様の構成装置をCO2インキュベーター内に設置し、本実施例を行った。中空糸内腔にヒト骨髄間葉系幹細胞(CELL APPLICATIONS Inc.)を播種(播種細胞数は、5.0×105cells/モジュール)した。このとき、中空糸モジュール(中空糸内径基準)の総培養面積は98cm2であるため、細胞播種密度は、約5100cells/cm2であった。培養液は、培養開始(細胞播種)から96時間後までは、10%ウシ胎児血清(ライフテクノロジーズ)を添加したDMEM GlutaMAX(ライフテクノロジーズ)を用い、培養上清を採取する96時間以降は、MF−medium,間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡)を用いた。MF−mediumは、血清を1%しか含まない低血清培養液である。
2枚のコラーゲンコートシャーレ(培養面積55cm2、旭テクノガラス)にヒト骨髄間葉系幹細胞(CELL APPLICATIONS Inc.)を細胞播種密度が約5100cells/cm2となるよう播種した。培養液は、実施例1と同様に、細胞播種から96時間までは、10%ウシ胎児血清(ライフテクノロジーズ)を添加したDMEM GlutaMAX(ライフテクノロジーズ)を用い、96時間以降はMF−medium,間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡)に培地を交換した。
図3に、従来法による培養上清作製のスケジュールを示す。培養開始48時間後、および96時間後に、培養液交換を実施した。その後、培養液交換をせず、培養開始から168時間で100%コンフルエントに達したところで培養を終了した。この最後の培地交換から培養終了までの72時間の培養を行った培養液を培養上清として回収した。培養上清の量は、計10.0mlであった。培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、2.6×106個の細胞が回収された。
上記、(1)および(2)の方法にて回収したそれぞれの培養上清について、組織再生に関わる性能を評価するため、培養上清に含まれるVEGF(血管内皮細胞増殖因子)およびIGF(インスリン様成長因子)の濃度を測定した。
VEGFの定量には、human VEGF ELISA Kit(R&D Systems)を用いた。
IGFの定量には、human IGF−I ELISA Kit(R&D Systems)を用いた。
上記、(1)および(2)の方法にて回収したそれぞれの培養上清について、抗炎症作用を評価した。これは、マクロファージ様細胞株であるRAW264.7細胞(大日本製薬)を、リポ多糖類(LPS)で刺激し、刺激により産生される炎症性サイトカイン(TNF−α)の産生を測定することにより評価した。
測定は以下のように実施した。即ち、RAW264.7細胞を、10%ウシ胎児血清(ライフテクノロジーズ)を含むRPMI1640培地(ライフテクノロジーズ)に懸濁し、24ウェルプレートに5×105個/ウェルで播種した。24時間培養後に、培養液の半分を前記(1)または(2)の培養上清に交換した。この1時間後、LPSを最終100ng/mlとなるよう添加し、更に3時間培養した後、培養液を回収し、Mouse TNF−αELISA Kit(R&D Systems)を用いて、培養液中のTNF−αを測定した。
培養上清によるTNF−α産生抑制効果を図6に示す。この結果、本発明の方法により作製した間葉系幹細胞の培養上清は、従来法で作製した培養上清に比べ、顕著にTNF−αの産生を抑制していることがわかった。
2 透過性膜中空糸
3 端部導管
4 側部導管
5、6 培養液貯留容器
7 細胞培養容器(中空糸モジュール)
8、9 ペリスタポンプ
10 廃液回収容器
11 培養上清回収容器
Claims (5)
- 幹細胞培養上清液の製造方法であって、以下の[a]から[c]の工程を含む、方法。
[a]細胞培養容器内の透過性膜中空糸の内表面に播種した幹細胞に培養液を0.01〜1mm/minの線速度で供給し、細胞が播種されていない側に培養液を0.02〜5mm/minの線速度で供給して前記幹細胞を培養する工程
[b]前記幹細胞を培養する際に、前記培養液に血清を添加した培養液を用いて前記幹細胞を増殖する工程
[c]増殖した幹細胞に無血清培養液または低血清培養液を接触させて得られた培養上清を回収する工程 - 前記細胞培養容器は、透過性膜中空糸を格納したモジュールであって、前記中空糸の内腔と連通する2つの開口部と、前記モジュールの内側かつ前記中空糸の外腔と連通する2つの開口部を有するものである、請求項1に記載の方法。
- 以下の[d]から[g]の構成を含む細胞培養装置を用いて前記幹細胞の培養を行う、請求項1または2に記載の方法。
[d]前記細胞培養容器
[e]少なくとも1つの培養液貯留容器
[f]前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器とを接続する流路網
[g]前記流路網に設けられ、前記細胞培養容器への培養液の供給および/または前記細胞培養容器からの培養液の排出を制御する手段 - 前記透過性膜中空糸の孔半径が、1〜500Åであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 前記幹細胞が間葉系幹細胞であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
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