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JP6958350B2 - 幹細胞培養上清の製造方法 - Google Patents
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JP6958350B2 - 幹細胞培養上清の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、幹細胞の培養上清を製造する方法に関する。
幹細胞である間葉系幹細胞は、体性幹細胞の一種であり、間葉系の細胞、即ち、骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などへの分化能を有することから、骨や血管、心筋の再構築などの再生医療への応用が期待されている。また、間葉系幹細胞は抗炎症作用や免疫調節等の作用も有することから、肝疾患や移植片対宿主病、自己免疫疾患など、既に様々な疾患に対して幅広く利用されていることが知られている。
こうした中、細胞移植治療において生体内に移植されたこれらの間葉系幹細胞の働きには、間葉系細胞から分泌される種々のサイトカイン等の生理活性物質が大きく寄与していることが明らかにされてきた。
間葉系幹細胞をインビトロで培養した際には、培養液中にこうした生理活性物質が放出されることになる。そこで、間葉系幹細胞の培養に使用した培養液を回収し、細胞から放出される物質を多く含むこの培養液を利用して、組織を再生すること等に成功した例が報告されている。上田らは、ラットを用いた実験で、骨髄間葉系幹細胞の培養上清が骨の再生能力を持つことを示した(非特許文献1)。この中で、骨髄間葉系幹細胞の培養上清中には、インスリン様成長因子(IGF)や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などが多く含まれており、これらの因子が組織の再生などに関わっていることが示唆されている(非特許文献1)。上田らは、この他にも、間葉系幹細胞の培養上清が創傷治癒効果、歯周組織再生促進効果を持つことを報告している(非特許文献2、非特許文献3)。
また、有村らは、骨髄間葉系幹細胞の培養上清が抗炎症作用を有し、腸炎の予防・治療効果を示すことを報告している(特許文献1)。さらに、Suらは、間葉系幹細胞の培養上清の抗アレルギー作用について報告している(非特許文献4)。
更に最近では、細胞から分泌される、エキソソームと呼ばれる小胞が、様々なタンパク質やRNAを含み、これが細胞間の伝達を担う物質である可能性が指摘されている。
以上のことから、細胞培養においては、それによって得られる細胞だけでなく、培養上清もまた非常に貴重なものであり、それを効率よく作製することは極めて重要なことである。
特開2013−018756号公報
Tissue Engineering PartA.2012;18:1479−1489 Cytotherapy,2012;14(10):1171−1181 Cytotherapy,2015;17(4):369−381 The Journal of allergy and clinical immunology,2015;136(2):423−432
本発明の課題は、優れた組織再生能、あるいは優れた疾患治癒作用、あるいは高い生理活性を持つ、幹細胞の培養上清を作製する方法に関する。
上述のように、間葉系幹細胞などの幹細胞を培養した培養液中には、種々の作用を有する生理活性物質等が含まれており、これらが組織再生や疾患治癒の効果に寄与している。こうした細胞の培養上清は、通常、フラスコやシャーレに細胞を植え込み、これを一定期間培養した後に、このとき培養に使用した培養液を回収することにより得られる。
この場合、培養液中に放出される生理活性物質の量は、細胞の数に比例して大きくなる。このため、細胞数が多ければ良いが、例えば間葉系幹細胞のような接着系細胞はシャーレやフラスコの底面に一層に広がって増殖するため、細胞から放出される生理活性物質を出来るだけ多く、高濃度に含む培養上清を回収するためには、この培養方法は決して効率が良いとは言えない。
即ち、従来の細胞培養方法においては、細胞数に対し、接触する培養液の容量が大きいため、培養上清中に分泌される有効な成分は希釈され、その含有濃度は薄くなってしまう。このため、得られた培養上清を組織再生等に利用する際には、培養上清を濃縮するとか、凍結乾燥を行うなどの必要性が生ずる。
こうした背景により、培養した細胞から分泌される生理活性物質をなるべく高濃度で含む培養上清を効率良く作製する培養形態および方法が求められている。
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本願発明の概要は以下の通りである。
1.幹細胞培養上清液の製造方法であって、以下の[a]から[c]の工程を含む、方法。
[a]細胞培養容器内の透過性膜中空糸の内表面に播種した幹細胞に培養液を0.01〜1mm/minの線速度で供給し、細胞が播種されていない側に培養液を0.02〜5mm/minの線速度で供給して前記幹細胞を培養する工程
[b]前記幹細胞を培養する際に、前記培養液に血清を添加した培養液を用いて前記幹細胞を増殖する工程
[c]増殖した幹細胞に無血清培養液または低血清培養液を接触させて得られた培養上清を回収する工程
2.前記細胞培養容器は、透過性膜中空糸を格納したモジュールであって、前記中空糸の内腔と連通する2つの開口部と、前記モジュールの内側かつ前記中空糸の外腔と連通する2つの開口部を有するものである、1に記載の方法。
3.以下の[d]から[g]の構成を含む細胞培養装置を用いて前記幹細胞の培養を行う、1または2に記載の方法。
[d]前記細胞培養容器
[e]少なくとも1つの培養液貯留容器
[f]前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器とを接続する流路網
[g]前記流路網に設けられ、前記細胞培養容器への培養液の供給および/または前記細胞培養容器からの培養液の排出を制御する手段
4.前記透過性膜中空糸の孔半径が、1〜500Åであることを特徴とする、1から3のいずれかに記載の方法。
5.前記幹細胞が間葉系幹細胞であることを特徴とする、1からのいずれかに記載の方法。
例えば、従来法であるシャーレを用いた細胞培養においては、シャーレ底面に生える細胞は、細胞数が3〜4万個/cm程度に達する。直径約10cmのシャーレであれば、約2,000,000〜3,000,000個まで細胞が増殖し、これに対し10ml程度の培養液を用いる。直径10cm×高さ1.5cm、即ち容器容積120cmから、培養上清が10ml回収される。
これに対し、本発明では、透過性膜中空糸のモジュールを用いた培養を行い、かつ、この中空糸モジュール内を極めて低速度で培養液を通過させるため、細胞数に比して回収する培養上清が従来法に比べ、大幅に少ない。例えば、数百本の透過性膜中空糸が収納された10cm長の太さ約1cmの中空糸モジュールにおいては、細胞数は10,000,000個以上に達するが、細胞に直接接して流れる培養液の総量は、10mlに満たず、対細胞数比は従来法の約1/5で、培養上清中に分泌される物質濃度は逆に約5倍となる。また、容器容積は約8cmであるため、容積あたりの回収効率も向上する。
即ち、本発明により、培養する間葉系幹細胞から分泌される生理活性物質を高濃度に含む培養上清液を、簡便に効率よく作製することが可能となった。
本発明の幹細胞培養上清製造実施に用いる中空糸モジュールの構成例を示すものである。 本発明の幹細胞培養上清製造実施に用いる細胞培養形態の例を、模式図で示すものである。 本発明の実施例1における培養上清作製のスケジュールを示すものである。 本発明の実施例1における培養上清中のVEGF濃度を示すものである。 本発明の実施例1における培養上清中のIGF濃度を示すものである。 本発明の実施例1における培養上清によるTNF−α産生抑制効果を示すものである。
本発明の実施態様の一つは、以下の[a]から[c]の工程を含む、幹細胞培養上清液(馴化培地、コンディションドメディウム)の製造方法である。
[a]細胞培養容器内の透過性膜中空糸表面に播種した幹細胞に培養液を供給する工程
[b]前記幹細胞に前記培養液を接触させて前記幹細胞を培養する工程
[c]前記幹細胞が分泌した成分を含む培養液を回収する工程
(細胞培養上清液)
本発明において、細胞の培養上清とは、細胞を一定期間(数時間から数日)培養した際に、細胞に直接または間接に接触していた培養液を細胞と分離して得られるものを言う。培養液馴化培地、コンディションドメディウム(Conditioned medium)などと同意である。
(培養の対象となる幹細胞)
本発明に係る対象の一つとなる幹細胞としては、特に限定されるものではないが、骨髄間葉系幹細胞、あるいは脂肪組織由来間葉系幹細胞が好適である。プライマリー細胞に限らず、遺伝子改変等によって株化された間葉系幹細胞も用いることが出来る。動物種も特に限定されず、ヒト、マウス、ラット等のいずれの動物由来のものも使用できる。また、間葉系幹細胞以外の接着性を有する種々の体性幹細胞にも好適に使用できる。
(培養液)
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法に用いる培養液の組成等は、特に限定されない。例えば、DMEM、αMEM、RPMI1640などを基礎培地とし、これに適宜、動物血、細胞増殖因子、ホルモンなどを添加することにより調製されたものが使用できる。
本発明に用いる培養液は、場合によっては動物血清を含まないことが好ましいことがある。これは、動物血清には細胞増殖因子等の生理活性物質が豊富に含まれるため、時にはこれらの生理活性物質の存在が、培養上清を使用する際に目的の妨げとなるとか、マイナスに作用するなどの可能性があるためである。
(透過性膜中空糸)
本発明で使用する透過性膜中空糸は、細胞を中空糸内腔に保持でき、溶液や低分子の物質を透過させるような構造をとることができるものであれば、特に限定されるものではない。
本発明において透過性膜中空糸を使用する理由の一つは、培養面積あたりの細胞成育数がシャーレ等のプラスチック素材よりも多いためである。何故なら、膜中空糸上に接着し増殖する細胞は、プラスチック上のように大きく伸展しないため、単位面積あたりに接着する細胞数は、膜中空糸上の方がプラスチック上よりも数倍多くなるためである。更に、膜中空糸を緊密に束ねることにより、単位体積あたりの培養面積を格段に増やすことが出来る。
本発明で使用する透過性膜中空糸の素材は、特に限定されないが、例えば、セルロースアセテート、セルローストリアセテートおよび再生セルロースなどのセルロース系材料、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、フッ素系樹脂、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の熱可塑性高分子による骨格構造を有する不溶性担体が好適に利用できる。また、これらの誘導体が主成分であっても良い。
本発明で使用する透過性膜中空糸は、前記の素材に化学的に修飾を加えたものであっても良い。例えば、本発明で使用する透過性膜中空糸は、親水化処理されていることが好ましい。透過性膜中空糸を親水化処理することにより、培養細胞への培養液等の液体成分の供給が容易になる。透過性膜中空糸を親水化処理する方法としては、例えば、透過性膜中空糸をエチレン−ビニルアルコール共重合体等の親水性高分子や、グリセリン、エタノールで処理する方法が挙げられる。あるいは、使用する細胞に応じて、中空糸への接着向上のため、コラーゲンやフィブロネクチン等のコーティング剤を使用しても良い。
本発明で使用する透過性膜中空糸の大きさについても特に制限はないが、中空糸の内径の好ましい下限は10μmであり、さらに好ましくは20μm、さらに好ましくは50μmである。一方、中空糸の内径の好ましい上限は1000μm、より好ましくは500μmである。膜厚についても、特に制限はないが、中空糸が適度の強度を保ち、かつ物質の透過性も良好な範囲で設定すればよく、例えば10〜200μm程度が好ましい。
本発明で使用する透過性膜中空糸の孔径は、細胞は通過させないが水、塩類、比較的分子量の小さい栄養分などの培養液成分は通過させる通孔であれば、特に限定されるものではないが、細胞の培養、ならびに培養上清を回収することを考慮すると、物質交換がある程度効率的な孔径を有し、かつ細胞が産生した生理活性物質等の有用成分を透過しないことが必要である。そのため、透過性膜中空糸の孔径(孔半径)は、1〜500Åが好ましく、5〜300Åがより好ましく、10〜150Åがさらに好ましい。
透過性膜中空糸の孔径は、透過性膜中空糸の透過性と密接に関連する。透過性膜中空糸の透過性は、例えば、単位時間・単位面積あたりの液通過量で示される。本発明で使用する透過性膜中空糸において、透過性は特に限定されるものではないが、例えば、1〜1000ml/m/hr/mmHg、更に好ましくは10〜500ml/m/hr/mmHgが好適である。
(幹細胞培養上清液の製造工程)
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法は、以下の工程を含む。
[a]透過性膜中空糸内腔に存在する幹細胞に培養液を供給する工程
[b]前記培養液を連続的または間欠的に前記中空糸内腔を移動(通過)させることにより前記幹細胞に前記培養液を接触させて前記幹細胞を培養する工程
[c]前記工程により得られた培養液を回収する工程
その順序は、例えば[a][b][c]の順に行えばよいが、操作の途中で2つ以上の工程が重複してもよい。ただし、[b]の工程開始が[a]の工程開始に先んじることはなく、[c]の工程開始が[b]の工程開始に先んじることはない。
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法は、前記以外の制限は特になく、例えば、前記中空糸を用い、幹細胞の培養を中空糸内腔側で行えば良い。たとえば、幹細胞を培養する際は、幹細胞縣濁液を中空糸内腔に注入すること等により幹細胞を中空糸表面に播種し、播種終了後、培養液を幹細胞が存在する中空糸内腔に灌流させる等して供給する。次いで、内腔側にて培養を行う。たとえば、供給された培養液を、連続的または間欠的に前記中空糸内腔を移動(通過)させることにより、前記幹細胞に前記培養液を接触させて前記幹細胞を培養する。なお、間欠的な移動(通過)とは、一時的に培養液の中空糸内での流れを止めたり進めたりする工程を繰り返すことを指す。ここで流れを止めたり進めたりする間隔設定は特に制限されず、等間隔でも不規則でもよい。培養液は、細胞に必要な養分や酸素などを供給し、逆に老廃物を排出する役割を有する。培養期間中、ガス交換および、細胞への栄養供給、老廃物除去のため、内腔側、外腔側ともに、培地を供給し続けることが好ましい。その際、ペリスタポンプ等を用いることにより、適切な速度で供給・排出し、あるいは循環させることができる。このようにして一定期間培養を行った後の培養液を回収すれば、本発明の幹細胞培養上清液を得ることができる。
(中空糸モジュール)
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法で使用する透過性膜中空糸は、筒状容器に数十本〜数万本の中空糸が束ねられた中空糸束を格納してモジュール化し、細胞培養容器としてもよい(このようなモジュールを、以下、中空糸モジュールとも呼ぶ)。中空糸モジュールには、培養基材に培地を供給することができる開口部と、培地を排出することができる開口部とを、それぞれ1つ以上有している必要がある。
このような透過性膜中空糸を用いたモジュールの構成は特に限定されないが、例えば図1に示すように、4つの開口部(端部導管および側部導管)を有するモジュールケース1本体に透過性膜中空糸2が適宜必要な本数束ねられて充填されている形態が挙げられる。この形態においては、前記4つの開口部のうち、2つの端部導管3はそれぞれ前記中空糸束の両端において各中空糸の中空部を閉塞しないように適当なシール材(例えば、ポリウレタン系ポッティング剤)により接続されており、前記端部導管3の一方から導入された液体などが中空糸内腔を通ってもう一方の端部導管3から導出される(すなわち、一方向に流れる)ように構成されている。一方、前記開口部のうち、残りの2つの側部導管4の内側の空間はそれぞれ前記モジュールケース1の内側であってかつ前記中空糸の外腔である空間(以下、単に「外腔側」とも呼ぶ。)と接続しており、前記側部導管4の一方から導入された液体などが膜中空糸の外腔側を通ってもう一方の側部導管4から導出される(すなわち、一方向に流れる)ように構成されている。
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法に、培養容器として前記中空糸モジュールを用いる場合、例えば、幹細胞懸濁液を前記端部導管より注入することにより播種し、播種終了後、培養液を幹細胞が存在する中空糸内腔に灌流させる等して供給すればよい。また、培養時には、中空糸内腔側への培養液の灌流と同時に、中空糸外腔側へも培地を側部導管より注入し灌流させることが好ましい。
前記中空糸または中空糸モジュールは、適切な方法で滅菌し供給されることが好ましい。滅菌方法については、特に制限はないが、例えば、加圧加熱滅菌、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌等が挙げられる。
培養容器に中空糸モジュールを用いることにより、本発明の実施がより効率的に実施可能となる。中空糸モジュール内腔の細胞へ新鮮な培地を低速度で均一に供給することができ、培養上清の回収が効率良く実施できる。
(本発明に用いる細胞培養システム)
本発明の幹細胞培養上清液の製造方法においては、以下の[d]から[g]の構成を含む細胞培養システムを用いて培養を行えばよい。
[d]前記細胞培養容器
[e]少なくとも1つの培養液貯留容器
[f]前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器とを接続する流路網
[g]前記流路網に設けられ、前記細胞培養容器への培養液の供給、および/または前記細胞培養容器からの培養液の排出を制御する手段
前記システムで用いる細胞培養容器については、多孔性膜中空糸を用いたモジュールであって、前記中空糸の両端からそれぞれ内腔と接続する2つの開口部と、外腔と接続する2つの開口部を有する細胞培養容器であれば、特に限定されない。
(培養液貯留容器)
前記システムで用いる培養液貯留容器の形態や素材については特に限定されないが、ガス透過性を有することが望ましい。前記システムの一つの態様においては、前記中空糸モジュールを含む培養装置を構成し、それをCOインキュベーター内に設置して培養上清の作製を実施してもよいが、その際、ガス透過性を有する培養液貯留容器を用いれば、気泡発生などの問題点を有するガス交換用チューブを設置することなく、簡便に培養を行うことができる。このような培養液貯留容器としては、例えば、市販の細胞培養バッグ(ニプロ社製、東洋製罐社製のものなどが入手できる。)、プラスチック製ボトルなどが挙げられる。
(流路網)
前記システムにおいて、前記細胞培養容器にはいくつかの流路(流路網)が接続している。その構成(配管)は特に限定されないが、少なくとも前記細胞培養容器と前記液体培地貯留容器との接続部分を含み、前記液体培地貯留容器から前記液体培地貯留容器への培地の供給が可能なように配管されている必要がある。このような流路網として、少なくとも(1)前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器の中空糸内腔側の開口部との接続部分、および(2)前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器の中空糸外腔側の開口部との接続部分を含む流路網、が挙げられる。なお、本明細書において「接続」とは、直接繋がっている場合、および、配管などの流路を介して繋がっている場合のいずれであってもよい。
前記システムに用いる配管の素材は特に限定されない。例えば、シリコンチューブや、マスターフレックス(登録商標)、C−フレックス(登録商標)、タイゴン(登録商標)、ファーメド(登録商標)BPT、ファーマピュア(登録商標)、ノルプレン(登録商標)、サニテック(登録商標)などを用いることができる。前記液体培地貯留容器と前記細胞培養容器とを接続する部分の流路管については、ガス透過性を有する流路管を用いることが好ましい。例えば、シリコンチューブ等が好適に利用できる。
(培養液の供給、排出などを制御する手段)
前記システムには、前記流路網に設けられ、前記細胞培養容器への培養液の供給、および/または前記細胞培養容器からの培養液の排出を制御する手段が設けられている。細胞懸濁液や培養液の供給方法の形態は、特に限定されるものではないが、ペリスタポンプを用いた灌流や、培養液貯留容器が培養バッグなど軟質のものである場合は前記容器にローラーを当てて培地を絞り出す方法等が好適である。ポンプの設置場所は特に限定されないが、液体がポンプ部分を通過する際にゴミが混入する等のリスクを避けるため、排出側に設置することが好ましい。
(細胞培養システムの一態様)
上記の中空糸モジュールや培養液貯留容器、ペリスタポンプなどにより構成される培養システムをCOインキュベーター内に設置し、本発明の実施の一つの態様例としたものを図2に示す。図2において、5および6はそれぞれ、ガス透過性を有する培養液貯留容器(細胞培養バッグなど)である。培養液貯留容器5からは、中空糸モジュール7の端部導管3aに、流路が接続され、培養液貯留容器5に入っている培地が中空糸内腔側に移送できるようになっている。他方、培養液貯留容器6からは、中空糸モジュール7の側部導管4aに、流路が接続され、培養液貯留容器6に入っている培地が中空糸外腔側に移送できるようになっている。中空糸モジュール7の内腔側を通過した培養液は、端部導管3bから排出され、ペリスタポンプ8を経由して、培養上清回収容器11まで流路が接続され、中空糸モジュール内腔を通過した培養上清が回収できるようになっている。一方、中空糸モジュール7の外腔側を通過した培養液は、側部導管4bから排出され、ペリスタポンプ9を経由して、廃液回収容器10に回収される。
(中空糸内腔における幹細胞の培養)
前記システムを用いて本発明の幹細胞培養上清液の製造方法を実施する場合、例えば、前記の透過性膜中空糸モジュールを用いる場合、中空糸への培地の供給は、内腔側および外腔側の2ルートが必要である。その際、培地の供給にあたり、培養液貯留容器は内腔側および外腔側で別々のものを用いても良いし、1つの容器から内腔側および外腔側の両方に培地を供給しても良い。また、中空糸内腔側と外腔側の水圧差や浸透圧差により、内腔から外腔、あるいは外腔から内腔へと培養液が流れることは極力抑えることが望ましい。何故なら、中空糸内腔を流れてきた培養液には、細胞が放出した物質が多く含まれるのに対し、中空糸外腔側には細胞が存在しないため、外腔側を流れる培養液中には細胞が放出する物質は、極めて少量であるためである。即ち、中空糸の一端の開口部から内腔へと流入した培養液は、なるべく外腔への流出や外腔からの流入の干渉などを受けず、そのまま、もう一方の開口部から流出していくことが望ましい。
(培養上清を作製するための培養液)
培養に用いられる培養液は特に限定されず、間葉系幹細胞の培養液として通常用いられるものであれば良いが、幹細胞の培養上清液を治療等の目的で生体に適用する場合には、培養液中の動物血清がなるべく少ない、あるいは動物血清を含まないことが望ましい。このため、血清を含む培養液を用いて幹細胞を培養する場合、充分に細胞が増えた状態になったところで低血清培養液や無血清培養液に交換し、最終的に血清含有量が少ない、または血清を含まない培養上清液を得ることが出来る。また、無血清でも幹細胞の培養を可能とするよう成分を調整された培養液を用いて最初から細胞培養を行い、血清を含まない培養上清液を得ることも可能である。
(培養上清の回収)
前記のような理由により、本発明により培養上清を得るには、中空糸内腔を流れてきた培養液は、中空糸外腔を流れてきた培養液とは区別して、容器に回収することが好ましい。
(培養液が流れる速度)
細胞培養における培養液、特に中空糸内腔を細胞に接して流れる培養液の流速については、流速を厳密に制御することが好ましい。流速が遅すぎると、細胞への栄養供給が十分になされず、細胞が増殖しにくくなる。逆に、流速が速すぎても、細胞周囲の環境変化が激しく、細胞が周りの環境に馴染めず、細胞が増殖しにくくなる。このように、培養液、特に中空糸内腔を流れる培養液の流速は、細胞増殖度合いや環境に応じて、調整することが好ましい。細胞増殖度合いを調べる方法は、特に限定されないが、培養液中のグルコースや乳酸塩の濃度等の測定結果をもとに行うことが出来る。細胞が播種された側に流す培養液の好ましい流速は、0.01〜1mm/minである。一方、細胞が播種されていない側に流す培養液の好ましい流速は、0.02〜5mm/minである。
本発明において、中空糸内腔を流れる培養液、即ち、前記培養液貯留容器から中空糸モジュールの中空糸内腔を通過し、培養上清回収容器へと流れる培養液の流れは、一方向であることが好ましい。ここで、一方向とは、中空糸モジュールへの培地の導入から導出のルートが常に同じ方向であることを言う。具体的には、例えば、中空糸モジュールにおける培地の導入口と導出口がそれぞれ1つずつ存在し、培地が常に導入口から導出口に向けて流れる形態が挙げられる。一方、中空糸の外腔側を流れる培養液については、一方向に流れても良いし、一旦、細胞培養容器から導出された培地が再度導入口から導入される、いわゆる循環式であってもよい。
(1)中空糸モジュールによる間葉系幹細胞の培養及び培養上清の作製
細胞播種前に予めコラーゲン(新田ゼラチン)をコートした中空糸モジュール(中空糸はPES/PVP製、内径200μm、外径260μm、膜厚30μm、孔半径75Å、東洋紡)を用い、図2に示すものと同様の構成装置をCOインキュベーター内に設置し、本実施例を行った。中空糸内腔にヒト骨髄間葉系幹細胞(CELL APPLICATIONS Inc.)を播種(播種細胞数は、5.0×10cells/モジュール)した。このとき、中空糸モジュール(中空糸内径基準)の総培養面積は98cmであるため、細胞播種密度は、約5100cells/cmであった。培養液は、培養開始(細胞播種)から96時間後までは、10%ウシ胎児血清(ライフテクノロジーズ)を添加したDMEM GlutaMAX(ライフテクノロジーズ)を用い、培養上清を採取する96時間以降は、MF−medium,間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡)を用いた。MF−mediumは、血清を1%しか含まない低血清培養液である。
図3に、本発明の方法による培養上清作製のスケジュールを示す。細胞播種(培養開始)から7日間(168時間後)の培養を実施した。この間、中空糸内腔を流れる培養液の流速(線速度)は、細胞播種を行ってから96時間後までは、平均0.066mm/min、96時間後から144時間後までは、平均0.20mm/min、144時間後から168時間後までは、平均0.33mm/minとした。一方、中空糸外腔を流れる培養液の速度は、培養開始から終了まで、3.4mm/minとした。細胞培養上清は、培養開始96時間後から168時間後までの72時間分を回収し、後の性能評価に用いるまで、4℃に保存した。培養上清の量は、計7.9mlであった。尚、流速については、中空糸内腔、外腔それぞれから流出する流量を測定し、中空糸断面積等をもとに算出した。培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、1.2×10個の細胞が回収された。
(2)シャーレを用いた間葉系幹細胞の培養及び培養上清の作製(従来法)
2枚のコラーゲンコートシャーレ(培養面積55cm、旭テクノガラス)にヒト骨髄間葉系幹細胞(CELL APPLICATIONS Inc.)を細胞播種密度が約5100cells/cmとなるよう播種した。培養液は、実施例1と同様に、細胞播種から96時間までは、10%ウシ胎児血清(ライフテクノロジーズ)を添加したDMEM GlutaMAX(ライフテクノロジーズ)を用い、96時間以降はMF−medium,間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡)に培地を交換した。
図3に、従来法による培養上清作製のスケジュールを示す。培養開始48時間後、および96時間後に、培養液交換を実施した。その後、培養液交換をせず、培養開始から168時間で100%コンフルエントに達したところで培養を終了した。この最後の培地交換から培養終了までの72時間の培養を行った培養液を培養上清として回収した。培養上清の量は、計10.0mlであった。培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、2.6×10個の細胞が回収された。
(3)回収した培養上清の評価(VEGFおよびIGFの濃度測定)
上記、(1)および(2)の方法にて回収したそれぞれの培養上清について、組織再生に関わる性能を評価するため、培養上清に含まれるVEGF(血管内皮細胞増殖因子)およびIGF(インスリン様成長因子)の濃度を測定した。
VEGFの定量には、human VEGF ELISA Kit(R&D Systems)を用いた。
培養上清中のVEGF濃度を測定した結果を図4に示す。この結果、従来法にて回収した培養上清中のVEGF濃度が、561.6pg/mlであったのに対し、本発明により回収された培養上清中では、3597.1pg/mlであり、明らかな高濃度を示した。また、この濃度から、72時間の培養時間中に回収された総VEGF量は、従来法では、5616pgであるのに対し、本発明では、28417.1pgであった。
IGFの定量には、human IGF−I ELISA Kit(R&D Systems)を用いた。
培養上清中のIGF濃度を測定した結果を図5に示す。この結果、従来法にて回収した培養上清中のIGF濃度が、1864.6pg/mlであったのに対し、本発明により回収された培養上清中では、13798.0pg/mlであり、明らかな高濃度を示した。また、この濃度から、72時間の培養時間中に回収された総VEGF量は、従来法では、18.6ngであるのに対し、本発明では、109.0ngであった。
(4)回収した培養上清の評価(活性化マクロファージに対する効果測定)
上記、(1)および(2)の方法にて回収したそれぞれの培養上清について、抗炎症作用を評価した。これは、マクロファージ様細胞株であるRAW264.7細胞(大日本製薬)を、リポ多糖類(LPS)で刺激し、刺激により産生される炎症性サイトカイン(TNF−α)の産生を測定することにより評価した。
測定は以下のように実施した。即ち、RAW264.7細胞を、10%ウシ胎児血清(ライフテクノロジーズ)を含むRPMI1640培地(ライフテクノロジーズ)に懸濁し、24ウェルプレートに5×10個/ウェルで播種した。24時間培養後に、培養液の半分を前記(1)または(2)の培養上清に交換した。この1時間後、LPSを最終100ng/mlとなるよう添加し、更に3時間培養した後、培養液を回収し、Mouse TNF−αELISA Kit(R&D Systems)を用いて、培養液中のTNF−αを測定した。
培養上清によるTNF−α産生抑制効果を図6に示す。この結果、本発明の方法により作製した間葉系幹細胞の培養上清は、従来法で作製した培養上清に比べ、顕著にTNF−αの産生を抑制していることがわかった。
前記(3)及び(4)に示された結果より、本発明により作製された幹細胞の培養上清は、従来のものに比べ、生理活性物質に富み、組織再生や抗炎症作用に優れたものであると言える。
本発明により、組織再生や抗炎症など、様々な作用を有する幹細胞の培養上清を簡便かつ高効率に製造することを可能とする。
1 モジュールケース
2 透過性膜中空糸
3 端部導管
4 側部導管
5、6 培養液貯留容器
7 細胞培養容器(中空糸モジュール)
8、9 ペリスタポンプ
10 廃液回収容器
11 培養上清回収容器

Claims (5)

  1. 幹細胞培養上清液の製造方法であって、以下の[a]から[c]の工程を含む、方法。
    [a]細胞培養容器内の透過性膜中空糸の内表面に播種した幹細胞に培養液を0.01〜1mm/minの線速度で供給し、細胞が播種されていない側に培養液を0.02〜5mm/minの線速度で供給して前記幹細胞を培養する工程
    [b]前記幹細胞を培養する際に、前記培養液に血清を添加した培養液を用いて前記幹細胞を増殖する工程
    [c]増殖した幹細胞に無血清培養液または低血清培養液を接触させて得られた培養上清を回収する工程
  2. 前記細胞培養容器は、透過性膜中空糸を格納したモジュールであって、前記中空糸の内腔と連通する2つの開口部と、前記モジュールの内側かつ前記中空糸の外腔と連通する2つの開口部を有するものである、請求項1に記載の方法。
  3. 以下の[d]から[g]の構成を含む細胞培養装置を用いて前記幹細胞の培養を行う、請求項1または2に記載の方法。
    [d]前記細胞培養容器
    [e]少なくとも1つの培養液貯留容器
    [f]前記細胞培養容器と前記培養液貯留容器とを接続する流路網
    [g]前記流路網に設けられ、前記細胞培養容器への培養液の供給および/または前記細胞培養容器からの培養液の排出を制御する手段
  4. 前記透過性膜中空糸の孔半径が、1〜500Åであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記幹細胞が間葉系幹細胞であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の方法。
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