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JP6961504B2 - 徐放性デバイス - Google Patents
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JP6961504B2 - 徐放性デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、徐放性デバイスに関する。
近年、骨感染症の治療や、人工骨(骨補填材)を補填する手術後の術後感染予防において、例えば、多孔質セラミックスで構成される人工骨に抗菌薬を含浸させることで保持して使用する抗菌性デバイスが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、一般的に、多孔質セラミックスで構成される人工骨では、人工骨に形成されている気孔の気孔径が大きく、これに起因して、保持させた抗菌薬が人工骨(抗菌性デバイス)から、人体に対して、一気に溶出する傾向を示すため、長期間の抗菌薬の徐放効果を得ることは困難であった。
そこで、非特許文献2では、筒状をなす小孔からなるスペースを人工骨に設け、このスペース内に抗菌薬を充填した後に蓋体でスペースに蓋をすることで、人工骨内に多量の抗菌薬を封入させることで保持する方法が提案され、これにより、抗菌薬の人工骨からの長期間の溶出を実現させている。
ところが、この非特許文献2の手法では、抗菌薬の封入量を増加させることで、抗菌薬の長期間の溶出を実現させているにすぎず、逆に、人工骨を補填した初期においては、極めて高濃度の抗菌薬が人体内に溶出し、その結果、細胞壊死を起こすおそれがあり、更に高濃度の抗菌薬が血中移行することによって、副作用が生じるおそれがあった。
なお、このような問題は、抗菌薬に限らず、人工骨に保持させる、骨形態形成タンパク質(BMP)、抗炎症薬、抗血栓薬等の他の薬物についても同様に生じている。
菅生 健 他 , Phosphorus Letter, 80, 12−18, 2014. 山下 康生 他 , Orthopaedic Ceramic Implants, 17, 45−48, 1997.
本発明の目的は、補填後の初期における高濃度の薬物の徐放を抑制しつつ、長期間の薬物の徐放効果を得ること、更に高濃度の薬物の血中移行による副作用を抑制できる徐放性デバイスを提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜()に記載の本発明により達成される。
(1) 複数の気孔同士が連通して形成された連通孔を有し、リン酸カルシウム系化合物を主材料として構成された多孔体と、薬物と、高分子とを備え、
前記薬物は、前記高分子と混合された混合物の状態で、前記多孔体内に保持されており、
前記薬物は、アミノ基を備える薬物であって、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、骨形態形成タンパク質(BMP)、抗炎症薬、又は抗血栓薬であり、前記高分子は、リン酸化プルランであり、
前記混合物は、25℃における粘度が15.0mPa・S以上5000mPa・S以下であることを特徴とする徐放性デバイス。
(2) 複数の気孔同士が連通して形成された連通孔を有し、リン酸カルシウム系化合物を主材料として構成された多孔体と、薬物と、高分子とを備え、
前記薬物は、前記高分子と混合された混合物の状態で、前記多孔体内に保持されており、
前記薬物は、アミノグリコシド系抗生物質であり、前記高分子はリン酸化プルランであり、
前記混合物は、25℃における粘度が15.0mPa・S以上5000mPa・S以下であることを特徴とする徐放性デバイス。
これにより、補填後の初期における高濃度の薬物の徐放を抑制しつつ、長期間の薬物の徐放効果を得ることができる。
) 前記多孔体は、内部空間を備え、該内部空間内に、前記混合物の状態で前記薬物が充填されている上記(1)または(2)に記載の徐放性デバイス。
このように、薬物が高分子に混合された状態の混合物の状態で、内部空間内に充填することで、補填後の初期における高濃度の薬物の徐放を抑制しつつ、長期間の薬物の徐放効果を得ることができる。
) 前記多孔体は、その相対気孔率が40%以上95%以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の徐放性デバイス。
これにより、多孔体の機械的強度の低下を防止しつつ、連通孔を介した、薬物の多孔体の外側への徐放、すなわち、多孔体が補填された補填部位に対する徐放を円滑に行うことができる。
) 前記連通孔は、その平均径が1μm以上200μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の徐放性デバイス。
これにより、多孔体として求められる強度を維持することができ、さらに、連通孔を介した気孔同士間の薬物の移動が円滑に行われるため、この連通孔を介した薬物の多孔体からの徐放がより円滑に行われることとなる。
前記混合物中において、前記薬物が備えるアミノ基と、前記高分子が備えるリン酸基前記第1官能基と前記第2官能基とが反応することで得られた3次元ネットワークを形成している上記(1)ないし()のいずれかに記載の徐放性デバイス。
これにより、前記薬物が備えるアミノ基と、前記高分子が備えるリン酸基とを反応させることで、高分子と薬物とで構成される3次元ネットワークを、混合物中に形成させることができる。そのため、3次元ネットワークの形成に関与しない薬物(薬剤)が、この3次元ネットワークによって、混合物中において、より緻密に包含され、結果として、多孔体内により強固に薬物が保持されることとなる。そのため、徐放性デバイスの補填後の初期における高濃度の薬物の徐放をより的確に抑制しつつ、より長期間に亘って薬物を徐放させることができる。
本発明の徐放性デバイスによれば、補填後の初期における高濃度の薬物の徐放を抑制しつつ、長期間の薬物の徐放効果を得ることができ、さらに高濃度の薬物の血中移行による副作用を抑制することができる。
本発明の徐放性デバイスの第1実施形態が備える多孔体を示す分解斜視図である。 本発明の徐放性デバイスの第2実施形態が備える多孔体を示す斜視図である。 実施例1、2および比較例1における、ゲンタマイシンの徐放量と、時間(日)との関係を示すグラフである。 実施例3および比較例2、3における、ゲンタマイシンの徐放量と、時間(日)との関係を示すグラフである。
以下、本発明の徐放性デバイスを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<徐放性デバイス>
<<第1実施形態>>
まず、本発明の徐放性デバイスの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の徐放性デバイスの第1実施形態が備える多孔体を示す分解斜視図である。
本発明の徐放性デバイスは、複数の気孔同士が連通して形成された連通孔を有する多孔体100と、薬物と、高分子とを備え、この薬物は、高分子と混合された混合物の状態で、多孔体内に保持されていることを特徴とする。このように混合物を形成した状態で、薬物を多孔体内に保持させることで、徐放性デバイス(骨補填材)の補填部位に対する補填後の初期における高濃度の薬物の徐放を抑制することができ、かつ、長期間の薬物の徐放を維持することができる。
[多孔体100]
多孔体100は、図1に示すように、本実施形態では、穴部15を備える本体部10と、穴部15に蓋をする蓋体20とを有しており、蓋体20により穴部15に蓋をすることで多孔体100に内部空間が形成され、この内部空間内に、薬物が高分子と混合された混合物を形成した状態で充填(収納)されている。
本体部10は、その中心部に上下方向に設けられ上面に開口を有する穴部15を備え、その全体形状が有底円筒状をなしている。
蓋体20は、その全体形状が円錐台状をなしており、その外径が上端から下端に向かって漸減しており、円状をなす上面の半径が下面の半径よりも大きくなっている。
これにより、本体部10の穴部15を蓋体20で蓋をする際に、穴部15の開口に蓋体20の外周面が、その途中で係止され、その結果、穴部15が蓋体20により蓋がなされることで、本体部10の穴部15における内周面と穴部15の下面とで画成される内部空間が形成される。
この内部空間の容量は、混合物を形成して充填される薬物の充填量、さらには、徐放性デバイス(多孔体100)の大きさ(容量)によっても若干異なるが、0.01cm以上1cm以下であることが好ましく、0.05cm以上0.5cm以下であることがより好ましい。これにより、長期間に亘って薬物を徐放させるための充分量の薬物(混合物)を内部空間内に充填させることができる。
この多孔体100は、本実施形態では、本体部10および蓋体20とともに、複数の球状気孔(気孔)を有するものであり、これら球状気孔同士が連通して形成された連通孔を構成している。
この多孔体100の相対気孔率は、40%以上であるのが好ましく、65%以上であるのがより好ましい。相対気孔率をかかる範囲内に設定することにより、球状気孔同士が確実に連通して連通孔が形成される。その結果、連通孔が三次元的に連通した気孔構造が形成される。そのため、この連通孔を介した、内部空間に充填された薬物の多孔体100の外側への徐放、すなわち、多孔体100(骨補填材)が補填された補填部位に対する徐放を円滑に行うことができるようになる。また、相対気孔率の上限値の制限は特にないが、多孔体100(骨補填材)の機械的強度の観点から、95%以下であることが好ましい。
また、球状気孔の平均気孔径は、120μm以上150μm以下であるのが好ましく、130μm以上150μm以下であるのがより好ましい。さらに、その標準偏差は、55μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのがより好ましい。
平均気孔径をかかる範囲内に設定することにより、混合物としての球状気孔内の通過を抑制しつつ、球状気孔すなわち連通孔を介して薬物を多孔体100の外部に徐放することができる。さらに、標準偏差をかかる範囲内に設定することにより、球状気孔がより均一なものとなっていると言え、より均一な薬物の徐放、さらに、多孔体100を足場として用いて、より均一な骨再生を実現することができる。
なお、本明細書中において、「相対気孔率」とは、多孔体100(本体部10、蓋体20)において気孔が占める割合(%)を表し、例えば、(1−W/D/V)×100、[式中、Wは乾燥重量、Vは体積、Dは理論密度の関係式より求めることができる。
また、本明細書中において、「球状気孔」とは、多孔体100において、気泡や高分子の球状ビーズ等に由来して形成された球状をなす気孔である。その気孔径は、例えば、マイクロCT装置等を用いて、多孔体100の所定の部分における断面画像を取得し、その断面画像に基づいて、気孔径を測定することにより得ることができる。そして、測定された各球状気孔の気孔径から、その平均気孔径および標準偏差を求めることができる。
なお、球状気孔の気孔径を求めるための画像解析は、例えば、SEM画像より気孔径を円相当径として測定して行われる。
また、多孔体100が備える気孔は、本実施形態のように、球状をなす球状気孔である必要はなく、例えば、楕円状や偏平状をなす不定形なものであってもよい。
さらに、このような多孔体100では、隣り合う球状気孔同士が連通することにより、連通孔が形成される。この連通孔の平均径は、1μm以上200μm以下であるのが好ましく、10μm以上100μm以下であるのがより好ましい。連通孔の平均径を、かかる範囲内に設定することにより、多孔体100として求められる強度を維持することができる。また、連通孔を介した球状気孔同士間の薬物の移動が円滑に行われるため、この連通孔を介した薬物の多孔体100からの徐放がより円滑に行われることとなる。
このような多孔体100は、セラミックス系化合物やチタン系化合物で構成される無機多孔体と、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂材料で構成される有機多孔体とのいずれであってもよいが、無機多孔体であることが好ましい。これにより、多孔体100に、優れた生体親和性を発揮させることができる。
また、無機多孔体は、セラミックス系化合物で構成されるセラミックス多孔体であることが好ましく、リン酸カルシウム系化合物で構成されるリン酸カルシウム多孔体であることがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト(HAP)、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく、1.5〜2.0のものがより好ましく用いられる。
なお、チタン系化合物としては、例えば、チタン(チタン粉末)、酸化チタン、炭化チタン、窒化チタン、塩化チタン、チタン酸バリウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのチタン系化合物の中でも、チタンが好ましく用いられる。
[高分子]
高分子は、薬物と混合された混合物を形成した状態で、多孔体100が備える本体部10および蓋体20により形成された内部空間内に充填されており、この混合物を形成することで、混合物に対して適切な範囲の粘度となる粘稠性を付与して、徐放性デバイス(骨補填材)の補填後の初期における高濃度の薬物の徐放を抑制し、かつ、長期間に亘って薬物を徐放する機能を発揮する。
この高分子としては、特に限定されないが、例えば、多糖類およびポリエーテルであることが好ましく、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。多糖類およびポリエーテルは、優れた生体親和性を有しているため、高分子として好ましく用いられる。
多糖類としては、例えば、プルラン、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、セルロース、コンドロイチン、ヒアルロン酸、マルトデキストリン、デンプン(アミロース、アミロペクチン)またはこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、多糖類またはポリエーテルの誘導体としては、後述する薬物が第1官能基を備えるものである場合、この第1官能基と反応性を有する第2官能基が導入されたものであることが好ましい。これにより、混合物中において、第1官能基と第2官能基とが反応して、高分子(多糖類またはポリエーテル)と薬物とで構成される3次元ネットワークが形成されるが、この3次元ネットワークが形成されることにより得られる効果等については、後の薬物の説明において詳述する。
さらに、高分子の重量平均分子量は、高分子の種類によっても異なり、特に限定されるものではないが、例えば、10,000以上3,000,000以下であるのが好ましく、500,000以上2,000,000以下であるのがより好ましい。これにより、高分子と薬物とを混合した混合物に対して、より適切な範囲の粘度を付与することができるため、多孔体100の内部空間内に混合物を充填することにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。なお、混合物の粘度の範囲については、後述することとする。
また、混合物中における高分子の充填量は、高分子の充填量をA[mg]とし、混合物中における薬物の充填量をB[mg]としたとき、A/Bが1.0超100.0以下であることが好ましく、3.0以上30.0以下であることがより好ましい。これにより、混合物の粘度を適切な範囲に設定して、この混合物中において、薬物を確実に保持することができる。
[薬物]
薬物は、高分子と混合された混合物の状態で、多孔体100が備える本体部10および蓋体20により形成された内部空間内に充填され、この混合物の状態で粘稠性が付与されることで、徐放性デバイス(骨補填材)の補填後の初期において高濃度で徐放されるのが抑制され、かつ、長期間に亘って適切な濃度範囲で徐放性デバイスから徐放されるよう設定されており、徐放性デバイスから生体に移行することで、薬理作用を発揮するものである。
この薬物としては、薬理作用を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、骨形態形成タンパク質(BMP)、抗炎症薬、抗血栓薬等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、抗菌薬であることが好ましい。薬物として抗菌薬を用いることで、徐放性デバイスの補填後の初期における高濃度の抗菌薬の徐放を抑制しつつ、長期間の抗菌薬の徐放効果を得ることができる。そのため、徐放性デバイスが補填された部位において細胞壊死を起こすのを的確に抑制または防止するとともに、かかる部位における細菌の増殖を長期に亘って的確に抑制または防止することができ、さらに、高濃度の抗菌薬の血中移行による副作用を抑制することができる等の顕著な効果を得ることができる。
抗菌薬としては、例えば、サワシリン、パセトシンのようなペニシリン系抗生物質、ケフレックス、ケフラール、セフゾンのようなセフェム系抗生物質、クラリス、クラリシッドのようなマクロライド系抗生物質、ミノマイシン、レダマイシンのようなテトラサイクリン系抗生物質、ホスミシンのようなホスホマイシン系抗生物質、カナマイシン、ゲンタマイシンのようなアミノグリコシド系抗生物質、クラビット、タリビッド、オゼックスのようなニューキノロン系抗菌剤、バンコマイシン、テイコプラニンのようなグリコペプチド系抗生物質等が挙げられる。
このような抗菌薬は、多孔体100の内部空間内に充填される充填量が、力価として、0.1mg以上50mg以下であることが好ましく、0.1mg以上30mg以下であることがより好ましい。これにより、抗菌薬を長期間に亘って、徐放性デバイスから、徐放させることができるようになる。
なお、抗真菌薬としては、例えば、トリコマイシン、ナイスタチンのようなポリエン系抗真菌薬、エコナゾール、ミコナゾールのようなイミダゾール系抗真菌薬、フルコナゾール、イトラコナゾールのようなトリアゾール系抗真菌薬、ブテナフィンのようなアリルアミン系抗真菌薬、フルシトシンのようなフルシトシン(5−FC)系抗真菌薬等が挙げられる。
抗ウイルス薬としては、例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、ラミブジンのような核酸合成阻害型抗ウイルス薬、ザナミビル、オセルタミビルのような細胞内進入抑制型抗ウイルス薬、インターフェロンのような宿主感染防御能亢進型抗ウイルス薬等が挙げられる。
骨形態形成タンパク質(BMP)としては、未分化間葉系細胞に対して骨芽細胞への分化を誘導することにより骨形成を促す活性を有するものであればよく、例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−12(以上、ホモダイマー)、もしくは、これらのBMPのヘテロダイマーまたは改変体(すなわち、天然に存在するBMPのアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、天然に存在するBMPと同じ活性を有するタンパク質)等が挙げられる。
抗炎症薬としては、例えば、アスピリンのようなサリチル酸系鎮痛剤、メフェナム酸のようなアントラニール系鎮痛剤、インドメタシン、アセメタシンのようなインドール酢酸系鎮痛剤、ジクロフェナックのようなフェニル酢酸系鎮痛剤、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセンのようなプロピオン系鎮痛剤等を含むシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬としての非ステロイド消炎鎮痛薬、抗TNF−α抗体、抗IL−6抗体のような抗サイトカイン抗体、サイトカイン結合蛋白質等を含む抗サイトカイン薬等が挙げられる。
抗血栓薬としては、例えば、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウムのようなヘパリン、ワルファリンカリウムのようなワルファリン、アルガトロバンのような抗トロンビン薬、ウロキナーゼ、チソキナーゼ、アルテプラーゼ、ナテプラーゼのような血栓溶解薬、塩酸チクロピジン、シロスタゾール、イコサペント酸エチルのような血小板凝集抑制薬等が挙げられる。
また、薬物は、第1官能基を備えるものであることが好ましい。薬物が第1官能基を有する場合、高分子(多糖類またはポリエーテルの誘導体)として、第1官能基と反応性を有する第2官能基が導入されたものを選択することで、第1官能基と第2官能基とを反応させて、高分子と薬物とで構成される3次元ネットワークを、混合物中において形成させることができる。そのため、混合物中において、3次元ネットワークの形成に関与しない薬物が、この3次元ネットワークによって包含された包含物を形成することとなり、結果として、多孔体100内により強固に薬物が保持されるため、混合物中に高分子と薬物とを混合させることにより得られる効果を顕著に発揮させることができる。すなわち、徐放性デバイスの補填後の初期における高濃度の薬物の徐放をより的確に抑制しつつ、より長期間に亘って薬物を徐放させることができる。
この混合物の25℃における粘度は、15.0mPa・S以上5000mPa・S以下であることが好ましく、20.0mPa・S以上3500mPa・S以下であることがより好ましい。混合物の粘度をかかる範囲内に設定することで、混合物中に高分子と薬物とを混合させることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
薬物が備える第1官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これに対して、第1官能基が水酸基である場合、第2官能基としては、例えば、アルコキシ基等が挙げられ、また、第1官能基がカルボキシ基である場合、第2官能基としては、例えば、ビニル基(炭素−炭素二重結合)、アセチレン基(炭素−炭素三重結合)、アミノ基等が挙げられ、さらに、第1官能基がアミノ基である場合、第2官能基としては、例えば、リン酸基、硫酸基、ビニル基(炭素−炭素二重結合)、カルボキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、第1官能基がアミノ基であり、第2官能基がリン酸基である組み合わせが好ましい。この第1官能基と第2官能基との組み合わせであれば、第1官能基と第2官能基とを優れた反応性をもって反応させることができるため、混合物中において、前記3次元ネットワークをより確実に形成して包含物の状態とさせることができる。なお、第1官能基がアミノ基であり第2官能基がリン酸基である組み合わせの薬物と高分子(多糖類の誘導体)としては、具体的には、アミノグリコシド系抗生物質としてのゲンタマイシンと、リン酸化プルランとの組み合わせが挙げられる。
<第2実施形態>
次に、本発明の徐放性デバイスの第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の徐放性デバイスの第2実施形態が備える多孔体を示す斜視図である。
以下、第2実施形態の徐放性デバイスについて、前記第1実施形態の徐放性デバイスとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態の徐放性デバイスは、徐放性デバイスが備える多孔体100の構成が異なること以外は、前記第1実施形態の徐放性デバイスと同様である。
すなわち、第2実施形態の徐放性デバイスにおいて、多孔体100は、蓋体20が省略され、本体部10単独で構成され、さらに、この本体部10の全体形状が直方体状(立方体状)をなし、穴部15の形成が省略されている。
この本体部10では、多孔体が備える球状気孔(連通孔)内に、混合物が含浸することで充填されており、この連通孔内の混合物から、直接、徐放性デバイスが補填された補填部位に、薬物が徐放される。
このような第2実施形態の徐放性デバイスによっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上、本発明の徐放性デバイスを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の徐放性デバイスにおいて、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
例えば、本発明では、前記第1、第2実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
さらに、前記実施形態の徐放性デバイスでは、本体部10の形状が有底円筒状または立方体状をなす場合について説明したが、かかる形状のものに限定されず、本体部10は、例えば、球状、円錐台状、円柱状およびスティック状等の形状をなすものであってもよい。また本体部10は、人工骨頭、人工関節、人工椎体あるいは椎体ケージ等の少なくても一部分をなすものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.高分子としてリン酸化プルランを用いた場合の検討
(実施例1)
1−1.多孔体の製造
<1> まず、Ca/P比1.67のハイドロキシアパタイト(HAP)の一次粒子(平均粒径:80nm)の造粒体からなる二次粒子(平均粒径:25μm)100重量部を含有するスラリーを調製した。そして、スラリーをホモジナイザー(エスエムテー社製、「PA92」)に投入した。
<2> 次に、純水27重量部に界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸EDT)1.4重量部を添加した水溶液にメチルセルロース粉体3.4重量部を加え、攪拌脱泡機(シンキー製、「あわとり練太郎ARE-250」)にて分散混合を行い、ペースト状バインダーを調製した。
<3> 次に、前記工程<1>で調製したスラリーに対して、前記工程<2>で調製したペースト状バインダーを添加することにより、ペースト状バインダーが添加されたスラリー(混合スラリー)を得た。なお、この際の、スラリーおよびペースト状バインダーの温度は、それぞれ、20℃および35℃とした。
<4> 次に、ペースト状バインダーがスラリーに完全に分散してから、起泡させた。
<5> 次に、得られた気泡含有スラリーを、83℃でゲル化させた。その後、得られたゲルを83℃に保持することで気泡含有スラリーを乾燥させ、これにより、グリーンブロック(焼結前ブロック)を得た。
<6> 次に、グリーンブロックを、それぞれ、有底円筒状をなすもの、および、円錐台状をなすものに加工した。その後、大気中において、1050℃で2時間の条件でグリーンブロックを焼結することにより、ハイドロキシアパタイト(HAP)で構成される焼結体を、それぞれ、有底円筒状をなす底面78.5mm×高さ10mm(穴部:底面12.6mm×深さ7mm)の本体部10、および、円錐台状をなす下底面13.8mm×上底面7.5mm×高さ3mmの蓋体20として得た。なお、焼結体は、連通孔を有する多孔体であった。
1−2.混合物の調製
高分子として予め合成したリン酸化プルラン(30.0mg)と、抗菌剤としての5%ゲンタマイシン(8.0mg(力価);SIGMA社製)との混合物を、注射用水(726mg)と混合することで混合物(包含物)を調製した。なお、得られた混合物の粘度は28.1mPa・Sであった。
1−3.徐放性デバイスの製造
前記1−2.で調製した混合物を、前記1−1.で製造した本体部10が備える穴部15に充填した後に、前記1−1.で製造した蓋体20で穴部15に蓋をすることにより、実施例1の徐放性デバイスを製造した。
(実施例2)
前記1−2.において、リン酸化プルランの含有量を100.0mg、注射用水の含有量を656mgに変更して混合物を調製したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2の徐放性デバイスを製造した。なお、得られた混合物の粘度は3156mPa・Sであった。
(比較例1)
前記1−2.において、リン酸化プルランの添加を省略し、注射用水の含有量を756mgに変更して混合物を調製したこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1の徐放性デバイスを製造した。なお、得られた混合物の粘度は10.4mPa・Sであった。
1−4.徐放性デバイスの評価
実施例1、2および比較例1の徐放性デバイスについて、それぞれ、10mL PBS液(リン酸緩衝生理食塩水)に24時間浸漬した後に、徐放性デバイスを取り出し、その後、PBS液中に徐放されたゲンタマイシンの含有量(徐放量)を、HPLC装置(HITACHI社製、「ELITE LaChrom」)を用いて測定するとともに、取り出した徐放性デバイスを、新たなPBS液に浸漬した。この徐放性デバイスのPBS液に対する浸漬を、14日間繰り返して実施した。
その結果を、図3に示す。
図3から明らかなように、実施例1、2の徐放性デバイスでは、混合物中において、ゲンタマイシンがリン酸化プルランにより包含されることで、比較例1の徐放性デバイスと比較して、補填後の初期(1日後)における高濃度のゲンタマイシンの徐放を抑制しつつ、長期間(14日間)に亘ってゲンタマイシンを徐放している結果を示した。
2.高分子としてポリエチレングリコールを用いた場合の検討
2−1.徐放性デバイスの製造
(実施例3)
前記1−2.において、リン酸化プルランに代えて、ポリエチレングリコール(500mg)を用い、注射用水の含有量を256mgに変更して混合物を調製し、多孔体100として、有底円筒状をなす底面176.6mm×高さ12mm(穴部:底面38.5mm×深さ8mm)の本体部10と、円錐台状をなす下底面40.7mm×上底面28.3mm×高さ3mmの蓋体20とを有するものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例3の徐放性デバイスを製造した。なお、得られた混合物の粘度は575mPa・Sであった。
(比較例2)
前記1−2.において、ポリエチレングリコールの添加を省略し、ゲンタマイシン原薬粉末の含有量(力価)を80.2mg、注射用水の含有量を0mgに変更し、原薬粉末を直接穴部15に充填したこと以外は、前記実施例3と同様にして、比較例2の徐放性デバイスを製造した。
(比較例3)
前記1−2.において、ポリエチレングリコールの添加を省略し、注射用水の含有量を756mgに変更して混合物を調製したこと以外は、前記実施例3と同様にして、比較例3の徐放性デバイスを製造した。なお、得られた混合物の粘度は10.4mPa・Sであった。
2−2.徐放性デバイスの評価
実施例3および比較例2、3の徐放性デバイスについて、それぞれ、10mL PBS液(リン酸緩衝生理食塩水)に24時間浸漬した後に、徐放性デバイスを取り出し、その後、PBS液中に徐放されたゲンタマイシンの含有量(徐放量)を、HPLC装置(HITACHI社製、「ELITE LaChrom」)を用いて測定するとともに、取り出した徐放性デバイスを、新たなPBS液に浸漬した。この徐放性デバイスのPBS液に対する浸漬を、21日間繰り返して実施した。
その結果を、図4に示す。なお、図4のグラフ中における、縦軸は、PBS液中におけるゲンタマイシンの含有量を、PBS液の容量、および、徐放性デバイスにおけるゲンタマイシンの充填量で換算した(除した)値を示す。
図4から明らかなように、実施例3の徐放性デバイスでは、混合物中において、ゲンタマイシンがポリエチレングリコールにより包含されることで、比較例2、3の徐放性デバイスと比較して、補填後の初期(1日後)における高濃度のゲンタマイシンの徐放を抑制しつつ、長期間(21日間)に亘ってゲンタマイシンを徐放している結果を示した。
10 本体部
15 穴部
20 蓋体
100 多孔体

Claims (6)

  1. 複数の気孔同士が連通して形成された連通孔を有し、リン酸カルシウム系化合物を主材料として構成された多孔体と、薬物と、高分子とを備え、
    前記薬物は、前記高分子と混合された混合物の状態で、前記多孔体内に保持されており、
    前記薬物は、アミノ基を備える薬物であって、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、骨形態形成タンパク質(BMP)、抗炎症薬、又は抗血栓薬であり、前記高分子は、リン酸化プルランであり、
    前記混合物は、25℃における粘度が15.0mPa・S以上5000mPa・S以下であることを特徴とする徐放性デバイス。
  2. 複数の気孔同士が連通して形成された連通孔を有し、リン酸カルシウム系化合物を主材料として構成された多孔体と、薬物と、高分子とを備え、
    前記薬物は、前記高分子と混合された混合物の状態で、前記多孔体内に保持されており、
    前記薬物は、アミノグリコシド系抗生物質であり、前記高分子はリン酸化プルランであり、
    前記混合物は、25℃における粘度が15.0mPa・S以上5000mPa・S以下であることを特徴とする徐放性デバイス。
  3. 前記多孔体は、内部空間を備え、該内部空間内に、前記混合物の状態で前記薬物が充填されている請求項1または2に記載の徐放性デバイス。
  4. 前記多孔体は、その相対気孔率が40%以上95%以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の徐放性デバイス。
  5. 前記連通孔は、その平均径が1μm以上200μm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の徐放性デバイス。
  6. 前記混合物中において、前記薬物が備えるアミノ基と、前記高分子が備えるリン酸基が反応することで得られた3次元ネットワークを形成している請求項1ないしのいずれか1項に記載の徐放性デバイス。
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