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JP6975441B2 - マーキング方法 - Google Patents
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JP6975441B2 - マーキング方法 - Google Patents

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本発明の実施形態は、固体材料の内部にマーカーを形成するための方法と装置、およびマーカーが形成された物品に関する。
情報を記録するという行為は、単に情報を伝達するという目的のみならず、物品を同定・証明するための手段(以下、マーキングと記す)としても利用される。マーキングを物品自体に直接施すことにより、マーキングによって形成される刻印(以下、マーカーとも記す)と物品を一体不可分とすることができる。これにより、物品に関する種々の情報、例えば物品の産出地、製造地、生産者、製造者、所有権の移転などにかかわる履歴、成分や純度などの特徴や性質などを物品自体に付与することができ、物品の追跡や真贋判定を容易に行うことができる。典型的なマーキング方法としては、物品に対する物理的な刻印が挙げられる。これは、物品の一部に対してレーザ照射や切削加工などを施して物理的に加工することで行われる。この方法では、物品自体に物理的構造変化が生じるため、物品の美観を損なう可能性があるものの、可視化されたマーカーを形成することができる。
非可視的なマーキング方法として、走査型トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いて物品の表面に原子を任意に配置する方法が知られている。他の方法としては、活性な窒素空孔中心(以下、NVセンター)を有するナノ粒子を物品上に塗布する方法が特許文献1に開示されている。NVセンターは可視光領域に吸収を持たないため肉眼では観測することはできないが、紫外光によって励起されてフォトルミネッセンスを示す。したがってこの方法は、物品自体に直接マーキングを施す手法ではないものの、物品の美観を大きく損なうことなくマーキングが可能であるという特徴を有している。
米国特許出願公開第2010/0062144号明細書
本発明の実施形態の目的の一つは、非可視的であり、かつ物品の内部に二次元的に分布したマーカーを物品に直接形成するための方法と装置、およびこのマーカーが形成された物品を提供することである。
本発明の実施形態の一つは、物品のマーキング方法である。このマーキング方法は、物品の表面から法線方向における深さが一定の面内に分布した発光中心層を、上記物品に直接形成することを含む。
本発明の実施形態の一つは、絶縁体と、絶縁体の表面から法線方向における深さが一定の面内に分布した発光中心層を含む、マーキングされた物品である。
本発明の実施形態の一つは、マーキング装置である。このマーキング装置は、荷電粒子を放射するように構成される放射線源と、互いに垂直な二つの方向に移動するように構成されるステージを有する。
本発明の実施形態の一つによって非可視的なマーカーを物品に直接形成することが可能となり、物品の美観や機能を損なうことなく、物品を同定、証明するための情報を物品に記録することができる。これにより、物品に係る様々な情報を容易に抽出、モニターすることができ、物品の同定が簡便になるとともにトレーサビリティを向上させることができる。さらに、マーカーに内包される情報、およびマーカーの存在自体に高い秘匿性を付与することができる。
本発明の一実施形態であるマーキング方法に供される物品の模式的斜視図、およびマーキング方法を示す模式的断面図。 本発明の一実施形態であるマーキング方法によって形成されるマーカーの模式的上面図、およびマーキングされた物品の模式的断面図。 本発明の一実施形態であるマーキングされた物品の模式的断面図。 本発明の一実施形態であるマーキング装置の模式図。 本発明の一実施形態であるマーキング装置の模式図。 本発明の一実施形態であるマーキング装置の照射位置調節機構。 本発明の一実施形態であるマーキング装置の照射位置調節機構。 本発明の一実施形態であるマーキング装置の模式図。 本発明の一実施形態であるマーカーの読取装置の概念図と構成例。 実施例1でマーキングされた物品、および検出されたマーカー。 実施例3でマーキングされた物品、および検出されたマーカー。
以下、本出願で開示される発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
以下の実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
(実施形態)
[1.マーキング方法]
本発明の実施形態であるマーキング方法では、物品に荷電粒子(荷電粒子線)を直接照射し、これによって生じる非熱平衡過程の反応を利用し、物品内部に周囲とは異なる形態や欠陥を有する発光中心層を微視的な密度で誘発する。
図1(A)にマーキングに供される物品100の模式的斜視図を、図1(B)に図1(A)の鎖線A−A´に沿った断面模式図を示す。図1(B)では、物品100の表面とその近傍が模式的に示されている。
物品100は固体であり、マーキングを施す部分の表面から5μmまでの領域、表面から10μmまでの領域、表面から20μmまでの領域、表面から50μmまでの領域、あるいは表面から100μmまでの領域が絶縁体であればよい。したがって、これらの領域(以下、表面領域)よりも内部は絶縁体でも良く、導電体、あるいは半導体でも良い。表面領域は、発光中心の分布を蛍光により読み出しするために200nm以上900nm以下の紫外―可視光から赤外にかかる波長範囲の少なくとも一部において、透光性を有することができる。表面領域の透過率は、例えば80%以上100%以下、50%から100%以下、あるいは20%から100%以下になるよう、物品100を構成することができる。
絶縁体は有機化合物でも無機化合物でもよい。有機化合物としては、高分子材料が挙げられる。高分子材料はセルロースを含む天然高分子でも良く、合成高分子でも良い。無機化合物としては、金属や半金属の酸化物、窒化物、炭化物、ハロゲン化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩などが例示される。半金属の酸化物としては酸化ケイ素やそれを含むリン酸塩ガラスなどが代表例であり、炭化物としてはシリコンカーバイド(SiC)が挙げられる。ハロゲン化物としては、例えばフッ化カルシウム(蛍石)やフッ化リチウムなどから選択することができる。これらの無機化合物を単一、あるいは複数含有する鉱物も絶縁体として用いることができる。絶縁体は化合物である必要は無く、ダイアモンドなどの単体でも良い。
物品100の形状に制限はなく、板状でも良く、表面の全体、あるいは一部が曲面を有していてもよい。図1(A)には、8面体の形状を有する物品100が一例として示されている。
荷電粒子としては、例えばプロトン(H+)、重水素イオン(D+)、ヘリウムイオン(He+)、ヘリウムの原子核(He2+)などの軽荷電粒子、あるいは炭素イオン(C+)、ネオンイオン(Ne+)、アルゴンイオン(Ar+)などの重荷電粒子を用いることができる。
これらの荷電粒子は様々な方法で供給することができる。例えば放射線源として加速器を用い、数百keVから5MeVの加速電圧、典型的には3MeVの加速電圧で荷電粒子を加速する。得られる数十から数百μAの荷電粒子線102(ビーム電流)をビームキッカーで取り出し、取り出された荷電粒子線102をビームシフタやマイクロスリット、四重極電磁石などを用いて調整、収束し、マイクロビームへ変換する。静電スキャナと呼ばれる一対の電極(ビーム走査電極)を用いてこのマイクロビームを物品100上で走査して照射する(図1(B)参照)。これにより、荷電粒子線102を二つの方向(例えば互いに直交するX方向とY方向)に走査することができる。
なお、後述するように、荷電粒子線102の走査は、物品100を保持するためのステージを互いに直交する二つの方向に移動する、あるいは互いに直交する(互いに垂直な)二つの軸を中心に回転することで行ってもよい。
荷電粒子線102として非収束型の荷電粒子線102を用いてもよい。この場合、例えば加速器の替わりに放射性物質を密閉した放射線源を用い、ここから放射される非収束型の荷電粒子線102を用いることができる。非収束型の荷電粒子線102を用いる場合、荷電粒子線102を走査せず、紙や金属のマスクを物品100と放射線源の間に設置し、マスクの開口部を通して荷電粒子線102を物品100に照射してもよい。
図1(B)に示すように荷電粒子線102を物品100に照射すると、荷電粒子は表面から内部へ進行し、電離しながらその運動エネルギーを失っていく。運動エネルギーを失って速度が低下すると、速度の二乗に反比例して大きな抵抗を受け、ある一定速度まで速度が低下すると急激に低下して停止する。この時、停止点ではエネルギーの発生が極大となる。この極大はブラッグピークと呼ばれる。停止点では荷電粒子が与える高密度のエネルギーによって物品100の材料内部に欠陥が誘起され、発光中心層104が形成される。一方、停止点以外の領域では、物品100の材料に及ぼす荷電粒子線102の影響はほぼ無視することができる。したがって、物品100の内部の一定の深さにおいて選択的に発光中心層104を形成することができる。
発光中心層104は低密度で形成することができる。また、発光中心層104は可視光に対して透明、すなわち可視光領域に吸収を持たない、あるいは吸収が小さい。このため、発光中心層104は肉眼では検知することができない、あるいは検知が非常に困難である。同時に発光中心層104は光などの外部刺激により励起可能な準位を有しており、光照射によって励起されてフォトルミネッセンスを示す。例えば紫外線や可視光の光エネルギーを吸収することで、可視光領域や近赤外領域に発光(蛍光、あるいは/および燐光)を与える。したがって、例えば図1の領域106の拡大図(図2(A))、およびその鎖線B−B´に沿った断面模式図(図2(B))に示すように、荷電粒子線102を物品100上でX、Y方向に走査しながら照射して二次元に分布した発光中心層104を形成することで、非可視的な情報を物品100に記録することができ、かつ、光照射という外部刺激を与えることで情報を可視化して読み取ることができる。したがって、物品100に対して秘匿的に種々の情報を付与することができる。
ブラッグピークの特徴に起因し、ブラッグピークの位置、すなわち発光中心層104の物品100の表面からの深さは荷電粒子の飛程で決まる。換言すると、深さは加速エネルギーによって制御することができる。例えば荷電粒子線102を物品100の表面の法線方向から照射した場合、法線方向における発光中心層104の物品100の表面からの深さdは、荷電粒子のエネルギーによって決定される侵入長により任意に制御することができる(図2(B)参照)。したがって、加速エネルギーを固定することで深さdを一定にすることができる。その結果、物品100の表面から法線方向における深さが一定の面内に2次元的に分布した発光中心層104を、物品100に直接形成することができる。換言すると、物品100の表面に平行な面内に複数の発光中心層104を直接形成することができる。
物品100の表面が曲面である場合、その表面の法線方向から荷電粒子線102を照射してもよい。この場合も図3(A)に示すように、発光中心層104が形成される面は曲面となり、物品100の表面の法線方向において、深さdを一定にすることができる。
図2(A)では、マトリクス型二次元コードが情報として記録された例を示しているが、記録される情報に制限はない。したがって、発光中心層104により、一次元バーコードや画像、記号、数字、文字など、二次元で表現可能な形状を物品100内部に形成することができる。換言すると物品100は、物品100の表面の法線方向において表面から一定の深さに、表面に対して平行な面内において発光中心層104を複数含有することができる。
発光中心層104の厚さt(図2(B)参照)は荷電粒子のエネルギーによって決定される。あるいは物品100を保持するステージを荷電粒子線102に平行に移動することで厚さtを制御してもよい。
積層された複数の面内に複数の発光中心層104が形成されるよう、マーキングを行ってもよい。例えば図3(B)に示すように、最初に高い加速エネルギーを使用して得られる荷電粒子線102を利用して第1の発光中心層104_1を物品100の表面から深さd1の面内に形成する。次に低い加速エネルギーを使用して得られる荷電粒子線102を利用して第2の発光中心層104_2を物品100の表面から深さd2の面内に形成することで、複数の発光中心層104が形成される。複数の発光中心層104の形成順序に制約はなく、第2の発光中心層104_2を形成した後に第1の発光中心層104_1を形成してもよい。
あるいは、第1の発光中心層104_1と第2の発光中心層104_2の形成において異なる荷電粒子を用いてもよい。加速エネルギーや荷電粒子の種類よって発光中心層104の形態や化学的構造が異なる場合、第1の発光中心層104_1と第2の発光中心層104_2の吸収特性や発光特性が変化する。このため、読み出し時の励起波長を変える、あるいは読み出し時に検知する波長を選択することで、同一の領域から異なる複数の情報を読み出すことが可能となり、より高密度な情報を物品100に記録することができる。
上述したように、荷電粒子線102の照射によって物品100の内部で化学構造変化が生じ、これにより、周囲とは異なる形態や欠陥を有する発光中心層104が形成される。荷電粒子がプロトンやヘリウムの原子核などの軽荷電粒子である場合、発光中心層104の元素組成はその周辺の元素組成と同一、あるいは実質的に同一となる。したがって、発光中心層104の化学組成と発光中心層104と物品100の表面間の領域(中間領域)の化学組成が同一、あるいは実質的に同一な物品100を提供することができる。
なお、荷電粒子として重荷電粒子を用いる場合、荷電粒子がイオン、あるいは原子として、あるいは物品100中の材料と結合した状態で存在することができる。この場合、発光中心層104の化学組成が中間領域の化学組成と異なる物品100が得られる。
上述したように、本実施形態のマーキング方法を適用することで、絶縁表面を有する物品に対し、情報を直接記録することができる。したがって鉱物、有価証券、紙幣、装飾品など、様々な物品に対して応用することができる。マーカーである発光中心層104は可視光領域に吸収を持たない、あるいは発光中心層104の欠陥密度は目視では認識できない程度に小さいため、物品の形状や美観を損ねることなく、マーカーを形成することができる。さらに、発光中心層104の励起波長を秘匿とすることで、情報の記録とその内容にも高い秘匿性を付与することができる。
[2.マーキング装置]
本発明の一実施形態のマーキング方法を実現するためのマーキング装置の一例を以下に説明する。図4に、放射線源として加速器を用いた場合のマーキング装置110の模式図を示す。
加速器(図示しない)としては、軽イオンマイクロビーム発生装置や重イオンマイクロビーム発生装置などを使用することができる。加速器は線形加速器でも良く、サイクロトンなどの円形加速器でもよい。
図示しないが、加速器で発生した荷電粒子線102はビームシフタやマイクロスリット、発散制限スリットなどを用い、適宜ビーム径や発散成分の制限、ビームエネルギーの調整を行ってもよい。例えば、物品100に照射される荷電粒子線102のビーム径が数μm、ビーム電流が数pAとなるよう、調整を行うことができる。その後荷電粒子線102はビーム収束磁石112を用いて一次元に収束される。図4では四重極電磁石で構成される二つのビーム収束磁石112を用いる例が示されている。
一次元に収束された荷電粒子線102は、一対の電極で構成される二組のビーム走査電極114_1、114_2を用い、互いに交差する二つの方向(図中、X方向、Y方向)に走査される。これにより、荷電粒子線102の照射位置を制御することができる。
物品100はステージ116上に保持、固定される。図示していないが、物品100は適宜クランプなどで固定することができる。物品100が板状である場合には、吸引チャックや静電チャックで固定してもよい。また、ステージ116にはX軸移動機構118、Y軸移動機構120を設け、互いに交差する二つの方向(例えばX方向、Y方向)に移動できるようにマーキング装置110を構成してもよい。ステージ116に移動機構を設けることで、荷電粒子線102に対してより広範囲に物品100を移動させることができ、広範囲にマーカーを形成することが可能となる。
図5に示すように、X軸移動機構118、Y軸移動機構120とともに、あるいはこれらに替わり、X軸回転機構122やY軸回転機構124を設けてもよい。これにより、ステージ116をX軸やY軸を中心に回転させることができ、曲がった表面を有する物品100に対してマーキングを行う場合、その表面に対して一定方向から荷電粒子線102を照射することができる。このため、曲がった表面を有する物品100に対しても、表面から法線方向に一定の深さの面内に発光中心層104を形成することが可能となる。
図示していないが、Z軸方向にステージ116を移動させるためのZ軸移動機構、あるいはZ軸を中心としてステージ116を回転するための機構を設けてもよい。あるいは、上述した移動機構の替わりにロボットアームを使用してもよい。
収束型の荷電粒子線102が物品100に照射される位置(すなわちマーキング位置)を精密に調整するための機構をマーキング装置110に設けてもよい。例えば図6に示すように、照射位置調節機構180としてビーム走査電極114_2とステージ116の間に設けられる開口ミラー182、およびステージ116上の物品100を観察するための撮像装置184をマーキング装置110に搭載することができる。
開口ミラー182は荷電粒子線102が通過可能な開口部183を有するミラーであり、開口部183の軸が荷電粒子線102のビーム軸と一致するように設置される。これにより、荷電粒子線102の照射方向と同一の方向から物品100を観察することができるのみならず、荷電粒子線102の照射中においても物品100の状態や位置を確認することができる。
ステージ116やその上に設置される物品100の観察は、開口ミラー182で反射される像を用いて行われる。この像は撮像装置184を介して詳細に観察、解析することができる。撮像装置184としては、フォトダイオードやイメージセンサーを用いればよい。必要に応じ、像を拡大するための顕微鏡186を開口ミラー182と撮像装置184の間に設けてもよい。顕微鏡186としては、長作動距離顕微鏡などを用いることができる。
あるいは図7に示すように、顕微鏡186の替わりにカセグレンレンズ190をビーム走査電極114_2とステージ116の間に、カセグレンレンズ190の光軸と荷電粒子線102の光軸が一致するように設けてもよい。カセグレンレンズ190によって拡大された像を開口ミラー182で反射し、顕微鏡192へ導入することで、照射位置を直接確認することができる。
荷電粒子線102によって元素を励起して特性X線などの高エネルギー光子を発生させ、マーキング位置の記録や再現を行うことができる。例えば、照射位置調節機構180にX線検出器(例えばSi(Li)半導体型光検出器やシリコンドリフト型半導体X線検出器)194をステージ近傍に設け、物品100からの特性X線などの高エネルギー光子を検出する。必要に応じ、物品から散乱する荷電粒子を除去するためのアブソーバー196をステージ116とX線検出器194の間に設けてもよい。荷電粒子線102の照射によってマーキングから得られるX線の強度をX線検出器194で測定する。これと同時に、ステージ116上の固定された位置、例えば荷電粒子線102の光軸とステージ116が交差する位置を座標として制御装置198を用いて記録する。得られたX線強度分布と座標のデータ、およびステージ116と物品との相対位置を用いることで、物品100上の照射位置を把握、記録することができる。また、異なる物品100に対してもマーキングを再現することも容易となる。
非収束型の荷電粒子線102を放射する放射線源130を用いる場合には、荷電粒子線102を走査せず、マスク132を用いてマーカーを形成してもよい。この場合、例えば図8に示すように、マスク132を放射線源130とステージ116の間に配置できるよう、マスクホルダー134をマーキング装置に設けてもよい。これにより、単一のマスク132を用いて同一のマーカーを大量の物品100に形成することができる。
重荷電粒子を照射してマーキングを行う場合、加速器である重イオンマイクロビーム発生装置に替わってイオンドーピング装置、イオンインプランテーション装置などのイオン注入装置を用いてもよい。この場合も荷電粒子は非収束型の荷電粒子線102を与えるため、マスク132を用いてマーカーを形成すればよい。
[3.読取装置]
上述したマーキング方法を利用して作製される、本発明の実施形態の一つであるマーキングされた物品100から、マーキングを読み取るための読取装置の一例を以下に説明する。
図9(A)に、本発明の一実施形態の読取装置140の基本構成を示す。読取装置140は、光源142、および任意の構成である光検出器144を含む。光源142に制限はなく、レーザのような単色性の高い光源でも良く、水銀ランプや重水素ランプ、アークランプなどのランプ、あるいは半導体ダイオード(LED)などの発光素子でも良い。レーザとしては、エキシマレーザやアルゴンイオンレーザなどのガスレーザ、YAGレーザや半導体レーザなどの固体レーザ、あるいは色素レーザなどの液体レーザを用いることができる。光検出器144としては、アバランシェフォトダイオード(APD)やバイポーラトランジスタを含むフォトダイオード(PD)などのフォトダイオード、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)イメージセンサーや相補型金属酸化物半導体(CMOS)イメージセンサーなどのイメージセンサーなどが挙げられる。マーカーのサイズが小さい場合、あるいはマーカーである発光中心層104からの発光が微弱である場合には、顕微光学系を設けてもよい。なお、マーカーのサイズが十分に大きい場合や発光中心層104から十分に強い発光が観察できる場合には、光検出器144を用いず、目視で、あるいは光学顕微鏡を用いてマーカーを読み取ってもよい。
顕微光学系を含む読取装置150の構成例を図9(B)に示す。読取装置150は、励起光の光源としてレーザ光源152を含む。レーザ光源152から射出されたレーザは適宜ミラー154を用いてND(Neutral Density)フィルター156へ導入され、光量が調整される。NDフィルター156は複数用いてもよい。その後、レーザは例えばショートパスフィルタなどのバンドパスフィルター158に導入され、励起に不要な光が除去される。その後レーザはハーフミラー162を介して対物レンズ164に導入される。その際、顕微光学系の設置環境に応じ、適宜シングルモードファイバー(SMファイバー)160やミラー154を用い、レーザの光路を調節してもよい。対物レンズ164としては、例えば開口数1.35、直径60mm程度のレンズを用いることができ、アクチュエーターステージに搭載することでその焦点を調整することができる。
対物レンズ164から照射される光が物品100のマーカーに吸収され、マーカー中の発光中心層104から発光が得られる。この発光は対物レンズ164によって集光されたのち、ハーフミラーを介して平凸レンズ166に導入されてさらに集光される。平凸レンズ166はシリンドリカルレンズでも球面レンズでも良い。集光された発光をピンホール168に通過させ、発光中心層104からの発光以外の光(例えば物品100からの散乱光や反射光)を除去し、その後平凸レンズ170に導入されて一次元の光へ変換される。
加工された光はバンドパスフィルター172に導入される。発光中心層104からの発光は励起光よりも波長が長いため、ここではロングパスフィルターをバンドパスフィルター172として用いればよい。このようにして集光、調整された発光が光検出器144へ導入されてマーカーが読み取られる。なお、必要に応じ、平凸レンズ174を光検出器144とバンドパスフィルター172の間に設置して集光を行ってもよい。光検出器144としては、上述したフォトダイオードや光電子増倍管、イメージセンサーなどを用いればよい。
さらに任意の構成として、読取装置150に分光器178を設けてもよい。この場合、発光の一部をハーフミラー176を用いて取出し、これをSMファイバーなどを通して分光器に導入すればよい。これにより、発光のスペクトルを得ることができ、発光が発光中心層104からの発光であるか否かを正確に判断することができる。
上述した読み取り方法は、主に可視光領域の光を利用するものであるが、荷電粒子として重イオンを用いた場合、マーカー中に存在する荷電粒子の元素を利用して読取を行ってもよい。例えば蛍光X線分析を用い、X線照射によってマーカーから発生する蛍光X線を検知することでマーカーを読み取ることができる。この場合読取装置は、X線を発生するためのX線管やSi(Li)半導体検出器を主要な構成として含むことができる。あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)観察において用いる電子線を物品100に照射し、マーカーから発生する特性X線のエネルギーや波長を測定して読取を行ってもよい。この場合には、読取装置としてはエネルギー分散形X線分析装置(EDS)、あるいは電子プローブマイクロ分析装置(EPMA)が搭載されたSEMを用いればよい。励起エネルギーとしてX線や電子線ではなく、イオンを用いてもよい。この方法は粒子線励起X線分析(PIXE分析)と呼ばれ、高速のイオンをマーカーに照射して発生する特性X線のエネルギーが測定される。この場合、読取装置の主な構成としては、イオンを加速するための加速器、加速されたイオンを含むイオンビームを調整するためのビームライン、および発生する特性X線を測定するためのPIXE検出器などが挙げられる。
上述したように本実施形態を適用することで、種々の物品100に直接マーキングを行うことができ、物品100自体を情報記録媒体として機能させることができる。このため、物品100の複製を効果的に防止することができる。さらに、物品100中にマーカーとして導入される発光中心層104は、物品100の材料やマーキング方法によって励起波長が変化する。このため、物品100の材料ごとに励起波長が異なる。マーカーは目視では実質的に検知することができないため、記録情報は、マーキングされた領域、マーカーの励起方法、および記録の読み取り(復元)方法のすべてを把握することで初めて読み取ることが可能となる。したがって本実施形態によって物品に付与された情報は、秘匿的記録として利用することができる。
(実施例1)
本実施例では、ダイアモンド薄膜に対してマーキングを行った例を示す。ダイアモンド薄膜は化学気相堆積(CVD)法を用いて形成し、その大きさは2mm×2mm、厚さは500μmであった。このダイアモンド薄膜に対し、プロトンを加速して得られる荷電粒子線を走査しながら照射し、マーキングを行った。荷電粒子線のビーム径は約1μm、典型的なビーム電流は50pA、総照射時間は約3000sであった。
マーキングを行ったダイアモンド薄膜中の情報の読み取りは、励起光としてYAGレーザの第2高調波(532nm)を用い、光検出器としてフォトダイオードを用いて行った。図10(A)の左側の図に示すように、励起光を照射しない状態では、マーカーを検知することはできなかった。これに対して図10(A)の右図に示すように、励起光を吸収したマーカーからは発光が観察され、記録した情報(ここでは二次元コード)を確認することができた。以上のことから、情報がマーキングによって記録できること、記録された情報が非可視であること、および記録された情報が励起光を利用することで読み取り可能であることが確認された。
(実施例2)
本実施例では、鉱物材料である蛍石に対してマーキングを行った例を示す。図10(B)の左図に示すように、用いた蛍石はほぼ正八面体の形状を有し、一片の長さは約30mmであった。この蛍石の一つの面に対し、プロトンを加速して得られる荷電粒子線を走査しながら照射し、マーキングを行った。荷電粒子線のビーム径は約1μm、典型的なビーム電流は50pA、総照射時間は約2000sであった。
マーキングを行った蛍石中の情報の読み取りは、励起光としてUVランプ(波長365nm)を用い、励起光を目視で、あるいは光学顕微鏡を用いて確認することで行った。図10(B)の左図に示すように、励起光を照射しない状態ではマーカーを観測することができなかった。これに対し図10(B)の右図に示すように、励起光を吸収したマーカーからは発光が観察され、記録した情報(ここでは二次元コード)を確認することができた。以上のことから、情報がマーキングによって記録できること、記録された情報が非可視であること、および記録された情報が励起光を利用することで読み取り可能であることが確認された。
(実施例3)
本実施例では、リン酸塩ガラスに対してマーキングを行った例を示す。図11(A)に示すように、用いたリン酸塩ガラスはほぼ正方形の形状を有し、一片の長さは約35mmであった。ここで、リン酸塩ガラス上の数字は物理的加工によって刻印がされたものである。このリン酸塩ガラスの一つの面に対し、プロトンを加速して得られる荷電粒子線を走査しながら照射し、マーキングを行った。荷電粒子線のビーム径は約1μm、典型的なビーム電流は50pA、照射時間は20sであった。
マーキングを行ったリン酸塩ガラス中の情報の読み取りは、励起光としてUVランプ(波長365nm)を用い、励起光を目視で確認することで行った。図11(A)に示すように、UVランプを照射しない状態では、刻印された数字以外のマーカーは検知できないことが分かる。これに対し、図11(B)、およびその拡大図である図11(C)に示すように、励起光を照射した状態では、励起光を吸収したマーカーから発光が得られ、記録した情報(ここでは複数のドットによって形成された図形)を確認することができた。以上のことから、情報がマーキングによって記録できること、記録された情報が非可視であること、および記録された情報が励起光を利用することで読み取り可能であることが確認された。
100:物品、102:荷電粒子線、104:発光中心層、104_1:第1の発光中心層、104_2:第2の発光中心層、106:領域、110:マーキング装置、112:ビーム収束磁石、114:ビーム走査電極、116:ステージ、118:X軸移動機構、120:Y軸移動機構、122:X軸回転機構、124:Y軸回転機構、130:放射線源、132:マスク、134:マスクホルダー、140:読取装置、142:光源、144:光検出器、150:読取装置、152:レーザ光源、154:ミラー、156:NDフィルター、158:バンドパスフィルター、160:SMファイバー、162:ハーフミラー、164:対物レンズ、166:平凸レンズ、168:ピンホール、170:平凸レンズ、172:バンドパスフィルター、174:平凸レンズ、176:ハーフミラー、178:分光器、180:照射位置調節機構、182:開口ミラー、183:開口部、184:撮像装置、186:顕微鏡、190:カセグレンレンズ、192:顕微鏡、194:X線検出器、196:アブソーバー、198:制御装置

Claims (8)

  1. 物品の表面から法線方向における深さが一定の面内に分布した発光中心層を、前記物品に対して荷電粒子を照射することによって前記物品に直接形成することを含む、マーキング方法。
  2. 前記発光中心層は、前記面内に複数分布するように形成される、請求項1に記載のマーキング方法。
  3. 前記荷電粒子はプロトン、またはヘリウムの原子核である、請求項1に記載のマーキング方法。
  4. 前記荷電粒子の照射は、前記物品が搭載されるステージを互いに垂直な二つの方向に移動させながら行う、請求項1に記載のマーキング方法。
  5. 前記荷電粒子の照射は、前記物品が搭載されるステージを互いに垂直な二つの軸を中心として回転させながら行う、請求項1に記載のマーキング方法。
  6. 前記深さは5μm以上100μm以下である、請求項1に記載のマーキング方法。
  7. 前記発光中心層は、フォトルミネッセンスを示す、請求項1に記載のマーキング方法。
  8. 前記物品は絶縁体を含む、請求項1に記載のマーキング方法。
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