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JP7087778B2 - 射出成形方法および射出成形装置 - Google Patents
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JP7087778B2 - 射出成形方法および射出成形装置 - Google Patents

射出成形方法および射出成形装置 Download PDF

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本発明は、射出成形方法および射出成形装置に関する。
近年、自動車向け樹脂成形品における生産過程では、CO排出量が多くコストも高い塗装工程を廃止して、環境負荷の低減やコスト削減を狙った取り組みが盛んである。塗装代替技術の一つとして樹脂材料を事前に着色した着色ペレットを用いて射出成形を行う原着工法が広く知られている。
射出成形は、成形型内に形成された製品形状の製品部へ樹脂を充填させて固化させることによって樹脂成形品を成形する成形方法である。樹脂は、成形型内のランナーと呼ばれる流路を介して成形型内の製品部へ搬送される。ランナーとしては、流路内を加熱して樹脂を溶融させた状態で流動させるホットランナーと、流路内を加熱しないコールドランナーとがある。ホットランナーを用いた場合、成形型の構造が複雑になるため、コールドランナーに比べて成形型の費用やメンテナンス費用が大幅に高くなる。このため、コスト削減の観点から、ホットランナーよりもコールドランナーを用いる方が好ましい。例えば下記特許文献1では、コールドランナーを用いた射出成形方法が開示されている。
特開2013-129121号公報
ところで、一般的に、自動車向けに原着工法用の樹脂材料として汎用されている非晶性樹脂は、結晶性樹脂と比較して非常に高価な材料である。そこで、本発明者は、材料コストを低減する目的で原着工法に結晶性樹脂を用いることについて検討を進めた。
しかしながら、結晶性樹脂を用いて、上記特許文献1のような射出成形を実施すると、樹脂成形品に色ムラが発生することが判明した。本発明者がこの原因について鋭意検討した結果、コールドランナー内にファウンテンフロー現象が生じることが原因であることがわかった。すなわち、ファウンテンフロー現象により、成形型に接触して固化したスキン層、樹脂が固まらずに流れるコア層、およびスキン層とコア層との間に形成されるせん断層が発生する。せん断層では、摩擦熱によって高温になるため、硬化時間がゆっくり進み、結晶化が促進される。これにより、せん断層では、スキン層やコア層に比べて結晶化度が高い高結晶化領域が形成される。樹脂成形品の表面からの高結晶化領域の距離(深さ)がばらつくことによって、高結晶化領域において光が乱反射して、色ムラが発生することが判明した。
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、樹脂成形品の色ムラを抑制することができる射出成形方法および射出成形装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係る射出成形方法は、コールドランナーを介して溶融した熱可塑性樹脂を成形型内に形成された製品部に充填するまでの過程において、前記コールドランナーの本流路を流動する前記熱可塑性樹脂の流れを複数の分岐路に分流した後に合流させるものであり、それぞれの前記分岐路の流路断面積は、前記本流路の流路断面積以上の大きさを有する
上記目的を達成する本発明に係る射出成形装置は、成形型内に形成された製品部と、溶融した熱可塑性樹脂を前記製品部に充填するための流路を形成するコールドランナーと、を有し、前記コールドランナーは、本流路と、前記本流路を流動する前記熱可塑性樹脂の流れを分流する複数の分岐路と、複数の前記分岐路を流れる前記熱可塑性樹脂の流れを合流させる合流路と、を有し、それぞれの前記分岐路の流路断面積は、前記本流路の流路断面積以上の大きさを有する
上述の射出成形方法および射出成形装置によれば、ファウンテンフロー現象によってコールドランナー内で発生したコア層およびせん断層が分流された後、再び合流することによって撹拌されるため、せん断層とコア層の温度を均一化できる。これにより、製品部内のせん断層が固化して形成された高結晶化領域の樹脂成形品の表面からの距離(深さ)を均一にすることができる。その結果、高結晶化領域での光の乱反射によって生じる色ムラを抑制することができる。
塗装工法によって塗装した樹脂成形品の概略断面図である。 原着工法によって原着した樹脂成形品の概略断面図である。 比較例に係る結晶性樹脂の結晶構造を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る結晶性樹脂の結晶構造を示す概略図である。 流路内を流動する結晶性樹脂のファウンテンフロー現象を説明するための模式図である。 比較例に係る樹脂成形品の結晶化分布を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の結晶化分布を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の結晶化分布を示す断面図である。 樹脂成形品の透過率と高結晶化領域の適正深さとの関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る射出成形装置を示す斜視図である。 図6に示す射出成形装置のスプルー、コールドランナーおよび製品部を示す斜視図である。 図7に示すコールドランナーの分岐路および合流路にける樹脂の流れを説明するための上面図である。 比較例に係るコールドランナーおよびファンゲート付近を流動中の樹脂の温度分布を示す図である。 図7に示す射出成形装置のコールドランナーおよびピンゲート付近を流動中の樹脂の温度分布を示す図である。 図7に示す射出成形装置のコールドランナーの分岐路および合流路を流動中の樹脂の温度分布を示す流路断面図である。 比較例に係る樹脂成形品の断面の結晶化度の分布を示す図である。 本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の断面の結晶化度の分布を示す図である。 変形例1に係る射出成形装置の成形型内を流動中の樹脂の温度分布を示す図である。 変形例2に係るコールドランナーの分岐路および合流路を示す図である。 変形例3に係るコールドランナーの分岐路および合流路を示す図である。 変形例4に係るコールドランナーおよび製品部を示す図である。
図1Aは、塗装工法によって塗装した樹脂成形品の概略断面図である。図1Aに示すように、塗装工法では、樹脂層2の表面に塗装層1を形成する。塗装層1は、一般的に、塗料を付着しやすくするためのプライマー塗装層1a、色彩を与えるベース層1b、および光沢を与えるクリアー層1cを含む複数の層から構成される。塗装工法によれば、樹脂成形品の表面に、発色が良好な高い意匠性とともに、耐傷付き性と耐衝撃性(以下、耐傷付き性および耐衝撃性を総称して「耐久性」とも称する)を与えることができる。一方で、塗装工法は、CO排出量が多くコストも高いため、環境負荷の低減やコスト削減の観点から、塗装代替技術として原着工法が注目されている。
図1Bは、原着工法によって原着した樹脂成形品の概略断面図である。原着工法は、樹脂材料を高輝度剤や着色顔料によって着色した着色ペレット3を用いて射出成形を行う。塗装を行う必要がないため、工数を減らして製造コストを削減できるとともに環境負荷の低減も可能となる。
しかしながら、原着工法には課題も多く、特に高い品質の求められる自動車向け部品に適用する場合には大きく2つの課題がある。第1の課題は、耐久性(耐傷付き性および耐衝撃性)の課題である。原着材料は、塗装された成形品に比べ表面硬度が低いため傷が付き易い。このため、材料硬度を高める必要があるが、背反として耐衝撃性が低下し両立が困難である。第2の課題は、原着工法用の樹脂材料のコストの課題である。原着工法用の樹脂材料は耐傷つき性向上のために高い表面硬度が求められると同時に、発色をよくするために高い透明度が求められる。このため、従来の原着工法には、ポリカーボネート(PC)樹脂やアクリル(PMMA)樹脂等の非晶性材料が用いられてきた。しかしながら、自動車向けに原着材料として汎用されている上記の非晶性樹脂は、発色性(透明性)および耐傷つき性は良いが塗装工法に用いられるPP樹脂等の結晶性樹脂と比較して材料の価格が非常に高い。
ここで、「非晶性樹脂」とは、結晶化しにくい樹脂のことを意味し、「結晶性樹脂」とは、結晶化しやすい樹脂のことを意味する。結晶化のしやすさは、結晶化度を指標として判断することができる。具体的には、結晶化度が所定の基準値よりも低い樹脂は非晶性樹脂と定義し、結晶化度が所定の基準値よりも高い樹脂は結晶性樹脂と定義する。結晶化度の基準値は、例えば、20~50%の範囲に設定することができる。なお、結晶化度は、材料の種類のみに起因するものではなく、成形条件等によっても調整することができる。
自動車向けに塗装工法用として汎用されている結晶性樹脂は、材料コストが安価である一方で、発色(透明性)が悪く、耐久性にも課題があるため、原着材料として用いるのは困難とされてきた。
そこで、本発明者は、結晶性樹脂を原着材料として用いるために透明性および耐久性を向上させることについて鋭意検討を重ねた。図2Aは、一般的な結晶性樹脂の結晶構造を示す概略図である。図2Aに示すように、結晶性樹脂の結晶5の大きさにばらつきがあった。これに対して、図2Bは、本発明の一実施形態に係る結晶性樹脂の結晶構造を示す概略図である。本発明者は、図2Bに示すように結晶6を微細化および均一化することによって、これまで透明化が困難とされてきた結晶化度の高い結晶性樹脂の透明性を向上させることに成功した。さらに、驚くべきことに、本発明者は、結晶性樹脂の結晶を微細化することによって、従来の結晶性樹脂と比較して非常に高い硬度と強度を備える結晶性樹脂が得られることを発見し、結晶性樹脂において課題だった耐久性も向上させることができることを見出した。
しかしながら、本発明者が開発した上記結晶性樹脂は、透明性および耐久性が向上する一方で、透明性が高いため色ムラの課題が顕著となることが判明した。一般的に、結晶化度と透明度は反比例の関係にある。結晶化度が高いほど透明度が低くなるため、結晶性樹脂の結晶化度が不均一の場合、結晶化度の違いによって屈折率が変化する。このため、図1Bに示すように、結晶性樹脂に対して入射した入射光7が屈折率の違いによって乱反射した反射光8によって色ムラとして認識される。
図3を参照して、結晶性樹脂の結晶化度が不均一となる理由について説明する。図3は、流路内を流動する結晶性樹脂のファウンテンフロー現象を説明するための模式図である。結晶性樹脂は、フローフロントにおいてファウンテンフロー(噴出し流れ)16と呼ばれる樹脂の流動現象を生じさせながら流路内を流れ方向Fに向かって流動する。流路内を流動する結晶性樹脂は、流路を形成する成形型に接触して冷やされて固化した低温(PP樹脂では約40℃)のスキン層13(固化層)と、樹脂が固まらずに流れる高温(PP樹脂では約200℃)のコア層18(流動層)を形成する。ここで、スキン層13では樹脂の固化が始まっているため粘度が急激に高くなる。一方、コア層18では、樹脂は流動し、樹脂の温度は高く粘度は低くなる。このため、スキン層13とコア層18との間には粘度差によってせん断力が発生したせん断層17が形成される。
せん断層17では、樹脂の流動中、常にせん断力が発生しているため摩擦熱によって発熱して高温(PP樹脂では約205~210℃)になる。ここで、結晶化度は、溶融状態から冷却して固化する過程で結晶化温度域をゆっくり降温(冷却速度を遅く)するほど結晶化が促進されて高くなる。このため、せん断層17では、高温状態から硬化時間がゆっくり進むことによって結晶化が進み、スキン層13やコア層18が固化した層に比べて結晶化度が高くなる高結晶化領域14(図4Aを参照)が形成される。
一方で、スキン層13では、成形型に接触して急激に冷やされるためコア層18に比べて結晶化度が低くなる。よって、固化後の結晶化度は、スキン層13、コア層18、せん断層17(高結晶化領域14)の順に高くなる。上述したように、結晶化度と透明度は反比例の関係にある。本発明者の検討によれば、結晶を微細化して透明度を高くした結晶性樹脂においても、結晶化度が大きくなる高結晶化領域14では透明性は低下し、色ムラのように見えることが判明した。特に、本発明者らが開発した透明度の高い結晶性樹脂の場合は、高結晶化領域14の色ムラの感度が高くなるため本課題が顕著となる。
図4Aは、比較例に係る樹脂成形品の結晶化分布を示す断面図である。図4Bおよび図4Cは、本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の結晶化分布を示す断面図である。本発明者は、色ムラの原因について鋭意検討した結果、図4Aに示すように高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの深さD1がばらつくことによって、色ムラが発生することを実験と分析により突き止めた。図4Aに示すように高結晶化領域14の深さD1にばらつきが生じていると、入射光7が乱反射して反射光8となり、色ムラとして認識される。本発明者のこれまでの研究により、結晶性樹脂の成形温度を均一にすることによって、図4Bおよび図4Cに示すように高結晶化領域14の深さD2、D3を均一に成形することができることがわかった。これにより、色ムラの発生を抑制することができる。
また、本発明者の検討によれば、図4Cに示すように、高結晶化領域14をスキン層13から離れた中心部11へ配置し、樹脂成形品の表面からの深さD3をより深くすることによって、色ムラの感度を低減できることがわかった。これは、図4Bに示すように、高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの深さD2が浅いと入射光7がスキン層13に近い高結晶化領域14で反射するため、反射光8が色ムラとして認識される感度が高くなる。これに対して、図4Cに示すように、高結晶化領域14のスキン層13からの深さD3をより深くすることによって、スキン層13からの距離が浅い領域に入射した入射光7が高結晶化領域14に到達する前に反射して反射光8となるため、色ムラとして認識される感度が低くなる。このように、高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの深さD3をより深くすることによって、色ムラに対する感度を低減することができる。
図5は、官能評価によって得られた樹脂成形品の透過率(透明度)と高結晶化領域14の適正深さとの関係を示すグラフである。高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの深さが適正深さよりも浅いと色ムラが発生し、適正深さ以上の深さであれば自動車部品として許容範囲内の色ムラ発生に抑えることができる。図5に示すように、樹脂成形品の透過率(透明度)が高いほど、高結晶化領域14の適正深さは深くなる。これは、透過率(透明度)が高い樹脂成形品ほど、より深く光を透過して高結晶化領域14によって生じる色ムラの感度が高くなるためである。したがって、透過率の高い樹脂成形品は、高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの深さをより深くする必要がある。一方で、透過率(透明度)が低い樹脂成形品ほど、光の透過が減るため高結晶化領域14によって生じる色ムラの感度が低くなる。したがって、高結晶化領域14の深さが浅くても色ムラに対する感度を抑制することが可能になる。図5のグラフから、樹脂成形品の透過率によって高結晶化領域14の最適な深さを求めることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。
なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[樹脂]
本発明の一形態は、熱可塑性樹脂のうち結晶性樹脂を用いた射出成形方法および射出成形装置である。本発明に適用される樹脂としては、図2Bに示すように結晶を微細化および均一化した結晶性樹脂を用いることが好ましい。これにより、上述したように、従来の結晶性樹脂に比べて透明性および耐久性を向上できるとともに、非晶性樹脂に比べて材料コストを低減することができる。結晶性樹脂の透明度としては、特に限定されないが、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。なお、図2Aに示すような結晶の大きさが不均一で透明度の低い結晶性樹脂を本発明に適用した場合においても色ムラを抑制する本発明の効果を奏する。以下の説明では、熱可塑性の結晶性樹脂を単に「樹脂」とも称する。
本発明に適用できる熱可塑性の結晶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等が挙げられる。上記の中でも、材料コストを低減する観点から、自動車の樹脂部品として汎用されているPP樹脂を好適に用いることができる。要求性能に応じて、PP樹脂にゴム、タルク、オイルなどの添加物を添加してもよいし、添加物を添加しないニートPP樹脂を用いてもよい。
[射出成形装置]
図6は、本発明の一実施形態に係る射出成形装置100を示す斜視図である。射出成形装置100は、溶融した樹脂を成形型110内に形成された製品部50に充填し、冷却して固化させることによって樹脂成形品を成形する装置である。
射出成形装置100は、成形型110と、樹脂を加圧した状態で成形型110に注入する樹脂注入部120と、を有する。なお、成形型110および樹脂注入部120の作動は公知のコントローラーによって制御してもよい。また、成形型110内の樹脂の圧力や温度を測定するセンサーを適宜設けてもよい。
成形型110は、固定型111と、固定型111に対して接近離反する方向に移動可能な可動型112と、を有する。成形型110の型開き方向は、特に限定されず、横開き型や縦開き型の成形型を用いることができる。より大きな成形品を成形しやすい観点から、図6に示すように横開き型の成形型を用いることが好ましい。また、図6に示す本実施形態では、固定型111および可動型112の2分割の分割型を用いているが、これに限定されず、3分割以上の分割型でもよい。
可動型112は、固定型111に対向する面にコールドランナー30および製品部50の形状に対応する形状の溝を有するキャビティ側の型である。固定型111は、可動型112の溝に対応する成形面を有するコア側の型である。可動型112は、樹脂注入部120から注入された樹脂をコールドランナー30へ搬送するための流路を形成するスプルー20をさらに有する。成形型110を閉じた状態で、固定型111と可動型112との間には、コールドランナー30および製品部50が形成される。なお、可動型112をコア側の型とし、固定型111をキャビティ側の型としてもよい。
図7は、図6に示す射出成形装置100のスプルー20、コールドランナー30および製品部50を示す斜視図である。図7に示すように、コールドランナー30と製品部50との間には、ピンゲート40が形成されている。
スプルー20は、溶融した樹脂をコールドランナー30へ搬送するための流路であり、可動型112を貫通する貫通孔によって形成される。図7に示すスプルー20は、上流側(成形型110の外側)から下流側(コールドランナー30側)へ向かって流路断面積が大きくなるように形成されている。これにより、スプルー20の圧力損失を低減し、円滑に樹脂を流動させることができる。なお、本明細書において、「流路断面積」とは、樹脂の流動方向に直交する断面の面積のことを意味する。
コールドランナー30は、本流路31と、本流路31を流れる樹脂の流れを分流する複数の分岐路32と、複数の分岐路32を流れる樹脂の流れを合流させる合流路33と、合流路33とピンゲート40とを連結する連結部35と、を有する。合流路33の延長線上には、スラグ溜まり34を設けている。スラグ溜まり34によって、冷えて固化した樹脂が製品部50に流れ込むことを抑制することができる。
射出成形装置100を用いた射出成形方法では、コールドランナー30の本流路31を流動する樹脂の流れを複数の分岐路32に分流した後に合流路33に合流させる(以下、「分流合流」とも称する。)。これにより、図3を参照して、ファウンテンフロー現象によってコールドランナー30内で発生したコア層18およびせん断層17が分流された後、再び合流することによって撹拌されるため、せん断層17とコア層18の温度を均一化できる。これにより、製品部50内の樹脂の温度が均一になるため、図4Bおよび図4Cに示すように、高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの距離(深さ)D2、D3を均一にすることができる。その結果、高結晶化領域14での光の乱反射によって生じる色ムラを抑制することができる。
また、本流路31および合流路33は、略直線状に延在するように形成される。樹脂が分岐路32において分流する前後で直線状に流動するため、蛇行する場合に比べて分流合流による撹拌作用を向上させることができる。
図8は、図7に示すコールドランナー30の分岐路32および合流路33における樹脂の流れを説明するための上面図である。図8に示すように、分岐路32の形状は、三角形である。樹脂の流れは分岐路32において2つに分流し、合流路33に合流する。2つに分流された樹脂の流れ方向Fのなす角θ1は、鋭角(図8では約60度)である。分流された樹脂の流れは、互いに向かい合う方向に合流した後、合流路33に流れる。このように、樹脂を比較的緩やかに分流した後に、向かい合う方向に合流させることによって、分流合流による撹拌作用がより一層向上する。
なお、本実施形態では、2つの分岐路32に分流する例を示しているが、分岐路32の数はこれに限定されず、例えば、3つ以上としてもよい。分岐路32の数が多いほど、分流合流によって樹脂を撹拌する効果が高くなる一方で、成形型110の構造が複雑になるため製造コストが高くなる。上記観点から、分岐路32の数は、最適な値に設定することが好ましい。
コールドランナー30内の樹脂は成形後に廃棄されるため、廃棄される樹脂の量を減らして歩留まりを向上させる観点から、流路断面積はできるだけ小さくすることが好ましい。一方で、コールドランナー30の流路断面積が小さすぎると、流動抵抗が大きくなり、樹脂を円滑に流すことができなくなる。上記の観点から、最適なコールドランナー30の流路断面積を適宜選択することが好ましい。
また、分岐路32の流路断面積は、本流路31の流路断面積以上の大きさを有する。これにより、分岐路32における圧力損失を低減して円滑な樹脂の流れを形成することができる。
コールドランナー30の流路断面の形状は、特に限定されず、例えば、半円、真円、半楕円、台形、四角等が挙げられる。本実施形態では、コールドランナー30の流路断面形状は、半円としている。なお、分岐路32の流路断面の形状は、本流路31や合流路33と同じ形状としてもよいし、異なる形状としてもよい。分岐路32における圧力損失を低減する観点からは、分岐路32の流路断面の形状は、本流路31や合流路33と同じ形状とすることが好ましい。
ピンゲート40の流路断面積S1は、コールドランナー30の流路断面積、より具体的には連結部35の流路断面積S2よりも小さくなるように形成されている。これにより、ピンゲート40を通過する際に、流路断面積が小さくなるため、樹脂にせん断力が発生して発熱して、製品部50内に流入する樹脂の温度が上昇する。このように、分流合流とピンゲート40とを併用することによって、ピンゲート40を通過した後に樹脂の温度上昇と均一な温度分布が得られる。均一な樹脂の温度上昇によって、スキン層13とコア層18との温度差がさらに小さくなるためスキン層13の生成が遅れ、スキン層13とコア層18との間のせん断力によって発生するせん断層17の生成が遅れる。せん断層17が生成されるまでに成形型110から熱を奪われてスキン層13は徐々に固化が始まるので、製品部50内のせん断層17が固化して形成された高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの距離(深さ)D3がより長くなる。その結果、図4Cに示すように、高結晶化領域14を表層から離れた中心部11に形成することができるため、高結晶化領域14での光の乱反射によって生じる色ムラの感度を低減することができる。
ピンゲート40によって樹脂の流路を小さくすることによって上記効果が得られる一方で、流路が小さすぎると流動抵抗の増大などによる成形性の悪化が懸念される。この観点から、連結部35の流路断面積S2に対するピンゲート40の流路断面積S1の絞り割合(S1/S2)は、10~40%とすることが好ましく、20~30%とすることがより好ましい。なお、ピンゲート40の絞り割合は、成形する樹脂成形品(製品)の大きさや使用する樹脂の粘度に合わせて最適な値を適宜選択することが好ましい。
製品部50は、樹脂成形品の製品形状を有する成形型110内の空洞によって形成される。
次に、図9~図11Bを参照して、本実施形態に係る射出成形方法および射出成形装置100の効果を確認するために行った解析結果について説明する。
図9は、比較例に係るコールドランナー30aおよびファンゲート40a付近を流動中の樹脂の温度分布を示す図である。図9に示す比較例では、コールドランナー30aは分岐路を有していない点、およびピンゲートの代わりにファンゲート40aを用いる点で上述した本実施形態の形態とは異なる。ファンゲート40aは、コールドランナー30aの連結部35から製品部50に向かって流路断面が大きくなるように形成されている。
図9に示すように、コールドランナー30aが分岐路を備えない場合、樹脂が撹拌されないため、コールドランナー30a中で発生する樹脂の温度ムラがそのまま製品部50へ伝達される。このため、図9に示す解析結果では、ファンゲート40aを通過した後の樹脂の温度は左右対称ではなく、中心に温度が極端に低い領域が生じている。製品部50内で樹脂の温度ムラが発生すると、固化後の樹脂の結晶化度の違いによって光が乱反射して樹脂成形品の表面に色ムラが発生してしまう。
図10Aは、図7に示す本実施形態に係る射出成形装置100のコールドランナー30およびピンゲート40付近を流動中の樹脂の温度分布を示す図である。図10Bは、図7に示す射出成形装置100のコールドランナー30の分岐路32および合流路33を流動中の樹脂の温度分布を示す流路断面図である。図10Aおよび図10Bに示す例では、コールドランナー30の流路断面を直径5mmの半円形状とし、本流路31、分岐路32および合流路33においてほぼ同一の形状および大きさとした。また、ピンゲート40の断面を1.5mm×1.5mmの正方形とした。ピンゲート40の絞り割合は、22.9%であった。
図10Aおよび図10Bに示すように、本流路31においてファウンテンフロー現象によって不均一だった樹脂の温度は、分岐路32を通過した後に均一化する(樹脂の温度の高い部分と低い部分との温度差が低減する)ことがわかった。また、図10Aに示すように、ピンゲート40を通過した後の樹脂の温度は上昇し、さらに均一化し、左右対称の温度分布を示すことがわかった。
図11Aは、比較例に係る樹脂成形品の断面の結晶化度の分布を示す図である。図11Bは、本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の断面の結晶化度の分布を示す図である。
図9に示すようにファンゲート40aを通過させた樹脂が固化して得られた樹脂成形品の断面の結晶化度の分布では、図11Aに示すように高結晶化領域14が表面に近い位置に形成される。上述したように高結晶化領域14の深さが浅いと入射光7がスキン層13に近い高結晶化領域14で反射するため、反射光8が乱反射した場合に色ムラとして認識される感度が高くなる。
一方で、図10Aおよび図10Bに示すように、ピンゲート40を通過させた樹脂が固化して得られた樹脂成形品の断面の結晶化度の分布では、図11Bに示すように高結晶化領域14が表層から離れた中心部11に形成される。これにより、高結晶化領域14での光の乱反射によって生じる色ムラの感度を低減することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る射出成形方法は、コールドランナー30を介して溶融した樹脂(熱可塑性樹脂)を成形型110内に形成された製品部50に充填するまでの過程において、コールドランナー30の本流路31を流動する樹脂の流れを複数の分岐路32に分流した後に合流させる。
また、本実施形態に係る射出成形装置100は、成形型110内に形成された製品部50と、溶融した樹脂を製品部50に充填するための流路を形成するコールドランナー30と、を有する。コールドランナー30は、本流路31と、本流路31を流れる樹脂の流れを分流する複数の分岐路32と、複数の分岐路32を流れる樹脂の流れを合流させる合流路33と、を有する。
上記構成を備える射出成形方法および射出成形装置100によれば、ファウンテンフロー現象によってコールドランナー30内で発生したコア層18およびせん断層17が分流された後、再び合流することによって撹拌されるため、せん断層17とコア層18の温度を均一化できる。これにより、製品部50内のせん断層17が固化して形成された高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの距離(深さ)を均一にすることができる。その結果、高結晶化領域14での光の乱反射によって生じる色ムラを抑制することができる。
また、コールドランナー30を使用することによって、流路内ではファウンテンフロー現象が生じるため、コールドランナー30を介して樹脂が流入した製品部50内にも図3に示すような低温のスキン層13および高温のせん断層17、コア層18が形成される。このため、樹脂成形品の最表層には結晶化度が低く硬度の高いスキン層13が形成され、最表層よりも中心部11側では結晶化度が高く靭性(粘り強さ)の高い層が形成される。その結果、最表層では耐傷つき性が高く、最表層よりも中心部11側では衝撃によるエネルギーを吸収する耐衝撃性を高めることができるため、耐久性をより向上することができる。
また、コールドランナー30を通過した樹脂をコールドランナー30よりも流路断面積の小さいピンゲート40を通過させて製品部50に充填する。これにより、ピンゲート40を通過する際に、流路断面積が急激に小さくなるため、樹脂にせん断力が発生して発熱して、樹脂の温度が上昇する。分流合流とピンゲート40とを併用することによって、ピンゲート40通過後に温度上昇と均一な温度分布が得られる。したがって、均一な樹脂の温度上昇によって、スキン層13とコア層18の温度差が小さくなるためスキン層13の生成が遅れ、スキン層13とコア層18との間のせん断によって発生するせん断層17の生成が遅れる。せん断層17が生成されるまでに成形型110から熱を奪われてスキン層13は徐々に固化が始まるので、製品部50内のせん断層17が固化して形成された高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの距離(深さ)がより長くなる。その結果、高結晶化領域14を表層から離れた中心部11に配置することができるため、高結晶化領域14での光の乱反射によって生じる色ムラの感度を低減することができる。
また、コールドランナー30を樹脂に流動させる際に、分岐路32に分流する前後において樹脂を直線状に流動させる。これにより、樹脂が分流する前後で直線状に流動することによって、蛇行する場合に比べて分流合流による撹拌作用を向上させることができる。これにより、せん断層17とコア層18の温度をさらに均一化して、製品部50内のせん断層17が固化して形成された高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの距離(深さ)を均一にすることができる。その結果、高結晶化領域14での光の乱反射によって生じる色ムラを抑制することができる。
また、分岐路32の流路断面積は、本流路31の流路断面積以上の大きさを有する。これにより、分岐路32における圧力損失を低減して円滑な樹脂の流れを形成することができる。その結果、分流合流による撹拌作用をより一層向上させることができるため、高結晶化領域14での光の乱反射によって生じる色ムラを抑制することができる。
また、樹脂(熱可塑性樹脂)は、結晶性樹脂である。これにより、高結晶化領域14が発生しやすくなるため、分流合流によって色ムラを抑制する効果がより顕著となる。
次に、変形例に係る射出成形方法および射出成形装置を説明する。なお、前述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
<変形例1>
図12は、変形例1に係る射出成形装置の成形型内を流動する樹脂の温度分布を示す図である。変形例1に係る成形型は、ピンゲートの代わりに、コールドランナー30の連結部35から製品部50に向かって流路断面が大きくなるように形成されたファンゲート240を備える点で前述した実施形態と相違する。図12に示すように、変形例1に係る射出成形装置においても、前述した実施形態と同様に、分岐路32における分流合流によってコア層18およびせん断層17を撹拌して温度を均一化できる。これにより、製品部50内のせん断層17が固化して形成された高結晶化領域14の樹脂成形品の表面からの距離(深さ)を均一にすることができる。その結果、前述した実施形態と同様に、高結晶化領域14での光の乱反射によって生じる色ムラを抑制することができる。
<変形例2、変形例3>
図13および図14は、コールドランナーの分岐路の変形例を示す図である。前述した実施形態では、コールドランナーの分岐路の形状は、三角形であるとしたが(図8を参照)、これに限定されず、例えば、図13に示す変形例2の分岐路232のように円形でもよいし、図14に示す変形例3の分岐路332のように矩形(ひし形)でもよいし、分岐路を立体的に配置してもよい。図13に示す変形例2の分岐路232のように円形とすることにより、樹脂の流れ方向Fが曲線に沿うため渦流等の発生を抑制できる。また、図14に示す変形例3の分岐路332のようにひし形とすることにより、2つに分流された樹脂の流れ方向Fのなす角θ2、および合流する樹脂の流れ方向Fのなす角θ3を90度または鋭角にすることができる。これにより、樹脂の分流および合流の流れをより円滑にすることができるため、撹拌作用をより一層向上させることができる。
<変形例4>
図15は、変形例4に係るコールドランナーおよび製品部50を示す図である。前述した実施形態では、ピンゲートを製品部50に一点だけ配置したが、ピンゲートの個数や位置は特に制限されず、例えば、図15に示す変形例4のように複数(例えば、3か所)のピンゲート440を設けてもよい。また、本流路431を複数(例えば、3つ)に分岐させてそのそれぞれに分岐路432を設けてもよい。ピンゲート440の個数や配置は、製品部50の大きさや形状等に合わせて適宜選択することが好ましい。
以上、実施形態および変形例を通じて本発明に係る射出成形方法および射出成形装置を説明したが、本発明は実施形態および変形例において説明した内容のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
例えば、スプルーとコールドランナーとの間にホットランナーを設けてもよい。このような構成によれば、ホットランナーによって樹脂を溶融した状態で長距離搬送することができる。これにより、スプルーと製品部との間の距離が長い場合でも、樹脂が固化して流路が閉塞することなく円滑に樹脂を流動させることができる。また、スキン層としてランナー内で固化する樹脂の量を低減させることができるため、歩留まりを向上させることができる。
また、コールドランナーの本流路および合流路は、直線状に形成されるとしたが、これに限定されず、曲線状に形成してもよい。
また、実施形態および変形例に記載した各構成を適宜組み合わせてもよい。
13 スキン層、
14 高結晶化領域、
17 せん断層、
18 コア層、
20 スプルー、
30 コールドランナー、
31、431 本流路
32、232、332、432 分岐路、
33 合流路、
35 連結部、
40、440 ピンゲート、
50 製品部、
100 射出成形装置、
110 成形型、
111 固定型、
112 可動型。

Claims (8)

  1. コールドランナーを介して溶融した熱可塑性樹脂を成形型内に形成された製品部に充填するまでの過程において、
    前記コールドランナーの本流路を流動する前記熱可塑性樹脂の流れを複数の分岐路に分流した後に合流させるものであり、
    それぞれの前記分岐路の流路断面積は、前記本流路の流路断面積以上の大きさを有する、射出成形方法。
  2. 前記コールドランナーを通過した前記熱可塑性樹脂を、前記コールドランナーよりも流路断面積の小さいピンゲートを通過させて前記製品部に充填する、請求項1に記載の射出成形方法。
  3. 前記コールドランナーを前記熱可塑性樹脂に流動させる際に、前記分岐路に分流する前後において前記熱可塑性樹脂を直線状に流動させる、請求項1または請求項2に記載の射出成形方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂である、請求項1~のいずれか1項に記載の射出成形方法。
  5. 成形型内に形成された製品部と、
    溶融した熱可塑性樹脂を前記製品部に充填するための流路を形成するコールドランナーと、を有し、
    前記コールドランナーは、本流路と、前記本流路を流動する前記熱可塑性樹脂の流れを分流する複数の分岐路と、複数の前記分岐路を流れる前記熱可塑性樹脂の流れを合流させる合流路と、を有し、
    それぞれの前記分岐路の流路断面積は、前記本流路の流路断面積以上の大きさを有する、射出成形装置。
  6. 前記コールドランナーと前記製品部との間にピンゲートを有し、
    前記ピンゲートの流路断面積は、前記コールドランナーの流路断面積よりも小さい、請求項に記載の射出成形装置。
  7. 前記コールドランナーの前記本流路および前記合流路は、直線状に形成される、請求項または請求項に記載の射出成形装置。
  8. 前記熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂である、請求項のいずれか1項に記載の射出成形装置。
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