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JP7103382B2 - 臨界クラック膜厚測定用ゲージ及び耐クラック性試験装置 - Google Patents
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JP7103382B2 - 臨界クラック膜厚測定用ゲージ及び耐クラック性試験装置 - Google Patents

臨界クラック膜厚測定用ゲージ及び耐クラック性試験装置 Download PDF

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Description

本発明は、臨界クラック膜厚測定用ゲージ及び耐クラック性試験装置に関し、さらに詳しくは、スラリーを塗布・乾燥させることにより得られる乾燥膜の臨界クラック膜厚を測定するために用いられる臨界クラック膜厚測定用ゲージ、及びこれを用いた耐クラック性試験装置に関する。
固体粒子及び溶媒を含むスラリーを基材表面に塗布し、乾燥させると、固体粒子を含み、かつ、厚さが薄い膜(以下、これを「乾燥膜」ともいう)が得られる。このような方法は、二次電池用電極、燃料電池用電極、ガス拡散層の表面に形成される撥水層、キャパシタ電極、太陽電池電極などの製造に用いられている。しかしながら、このような方法により得られた乾燥膜は、乾燥過程でクラックが生じやすい。乾燥膜中にクラックが生じると、乾燥膜を各種デバイスに使用した時に動作不良の原因となる場合がある。そのため、乾燥膜中のクラックの有無を評価することは、重要である。
また、シリカやアルミナなどの粒子が分散したスラリーを成膜してセラミックスを作製する場合、スラリーを塗布・乾燥させることにより得られる乾燥膜が乾燥中にひび割れすることが問題となる。乾燥膜のひび割れは、乾燥膜の膜厚がある臨界値(臨界クラック膜厚)を超えた時に発生する。臨界クラック膜厚は、通常、スラリー組成により異なる。そのため、スラリーの臨界クラック膜厚を評価することは、重要である。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(a)電極触媒インクをPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート表面に約10μmの膜厚で塗布し、このシートを80℃で乾燥させて電極触媒塗膜とし、
(b)乾燥後の電極触媒塗膜の裏面より光を照射して、表面の画像を取得し、
(c)得られた画像において、光が透過した部分と非透過の部分とを二値化し、電極触媒塗膜の総面積に対する透過部分の面積の百分率をひび面積率(%)として算出する
ひび面積率の評価方法が開示されている。
特許文献2には、乾燥膜中のクラックの評価方法ではないが、
路面を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づき、撮影された路面のひび割れを検出するひび割れ検出部と、
前記ひび割れに基づき、所定の面積に占めるひび割れの面積の割合を示すひび割れ率を算出するひび割れ率算出部と
を備えたひび割れ解析装置が開示されている。
非特許文献1には、
(a)アプリケーターのギャップ等を変えることにより、膜厚の異なる多数の乾燥膜を作製し、クラックのない乾燥膜の最大膜厚を臨界クラック膜厚とする方法、及び、
(b)乾燥条件を変えて膜厚が不均一になるように乾燥させることにより、成り行き的に様々な膜厚の乾燥膜を作製し、クラックのない乾燥膜の最大膜厚を臨界クラック膜厚とする方法
が開示されている。
さらに、非特許文献2には、様々な深さの溝にスラリーを流し込み、乾燥させることにより、膜厚の異なる多数の乾燥膜を作製し、クラックのない乾燥膜の最大膜厚を臨界クラック膜厚とする方法が開示されている。
特許文献1に記載の方法を用いると、ひび面積率を求めることができる。しかしながら、特許文献1に記載の方法において、乾燥膜の膜厚は一定であり、乾燥膜の膜厚の測定も行われていない。そのため、特許文献1に記載の方法では、ある膜厚でのひび面積率を求めることはできるが、臨界クラック膜厚を求めることはできない。
一方、非特許文献1、2に記載の方法を用いると、臨界クラック膜厚を測定することができる。しかしながら、非特許文献1、2の方法を用いて臨界クラック膜厚を求めるためには、膜厚の異なる多数の乾燥膜を作製する必要がある。また、乾燥条件を変えて成り行き的に膜厚を変える方法は、条件設定が煩雑であり、かつ、狙い通りの膜厚とならないことが多い。
さらに、臨界クラック膜厚は、スラリー組成や乾燥条件だけでなく、スラリーが塗工される基材の材料や塗工速度にも依存する。しかしながら、1回の塗工(すなわち、実質的に1つの乾燥膜の作製)で臨界クラック膜厚を正確に測定することが可能な方法が提案された例は、従来にはない。また、臨界クラック膜厚の基材依存性や塗工速度依存性を簡便に評価することが可能な臨界クラック膜厚の測定方法が提案された例は、従来にはない。
特開2017-162660号公報 国際公開第2017/014288号
J. Am. Ceram. Soc. (1993)76, 2257-2264 Journal of Colloid and Interface Science 313(2007)160-168
本発明が解決しようとする課題は、1回の塗工で臨界クラック膜厚を正確に測定することが可能な臨界クラック膜厚測定用ゲージ、及びこれを用いた耐クラック性試験装置を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、臨界クラック膜厚の基材依存性を簡便に評価することが可能な臨界クラック膜厚測定用ゲージ、及びこれを用いた耐クラック性試験装置を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、臨界クラック膜厚の塗工速度依存性を簡便に評価することが可能な耐クラック性評価装置を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージは、以下の構成を備えている。
(1)前記臨界クラック膜厚測定用ゲージは、
台座と、
前記台座の上に着脱自在に載置された1又は2以上の傾斜スペーサと
を備えている。
(2)前記傾斜スペーサは、
前記台座の表面に、スラリーを塗工するための1又は2以上の溝を形成するためのものからなり、
前記スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に減少している。
本発明に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージは、前記台座と前記傾斜スペーサとの間に着脱自在に挿入された塗布基材をさらに備えていても良い。
本発明に係る耐クラック性評価装置は、
本発明に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージと、
前記臨界クラック膜厚測定用ゲージの溝内に前記スラリーを流し入れるためのスクレーパーと、
前記スクレーパーを前記溝の長手方向に沿って一定の速度で移動させるための塗工装置と、
前記スラリーを乾燥させた後、乾燥膜の臨界クラック膜厚を測定するための臨界膜厚測定装置と
を備えている。
台座の上に、スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に減少している傾斜スペーサを着脱自在に載置すると、台座の上に、スラリーの塗工方向に向かって深さが傾斜的に減少している溝を形成することができる。この溝にスラリーを流し込み、溝内のスラリーを乾燥させると、スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に減少している乾燥膜が得られる。さらに、乾燥膜のクラックの有無を観察し、クラックのない領域の膜厚の最大値を測定することにより、臨界クラック膜厚を評価することができる。
本発明に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージは、厚さが傾斜的に減少している乾燥膜が得られるので、1回の塗工で臨界クラック膜厚を測定することができる。また、台座と傾斜スペーサが着脱自在になっているので、台座又はその上に載置される塗布基材を変更することにより、臨界クラック膜厚の基材依存性を簡便に評価することができる。さらに、本発明に係る耐クラック性試験装置は、スクレーパーを一定の速度で塗工する塗工装置を備えているので、臨界クラック膜厚の塗工速度依存性を簡便に評価することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージの正面図(右上図)、平面図(右下図)、及び左側面図(左図)である。 本発明の第2の実施の形態に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージの正面図(右上図)、平面図(右下図)、及び左側面図(左図)である。 本発明の第3の実施の形態に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージの正面図(右上図)、平面図(右下図)、及び左側面図(左図)である。 本発明の第4の実施の形態に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージの正面図(右上図)、平面図(右下図)、及び左側面図(左図)である。
本発明の第1の実施の形態に係る耐クラック性評価装置の模式図である。 本発明の第2の実施の形態に係る耐クラック性評価装置の模式図である。 図7(A)は、乾燥膜に発生したクラックの概念図である。図7(B)は、クラックが発生した乾燥膜の実際の表示画像である。図7(C)は、図7(B)の二値化像である。図7(D)は、図7(C)の二値化像において複数の連続したピクセルが閾値を超える部位を表示した画像である。 溝の深さxと、実施例1で用いたスラリーを200mm/sで塗工し、乾燥させることにより得られる乾燥膜の厚さtとの関係を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 臨界クラック膜厚測定用ゲージ(1)]
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージの正面図(右上図)、平面図(右下図)、及び左側面図(左図)を示す。なお、図1においては、見やすくするために、部分的に実際の寸法より拡大又は縮小して描いてある。
図1において、臨界クラック膜厚測定用ゲージ(以下、単に「ゲージ」ともいう)10aは、
台座12aと、
台座12aの上に着脱自在に載置された傾斜スペーサ16a、16b、16cと、
台座12aと傾斜スペーサ16a、16b、16cとの間に着脱自在に挿入された塗布基材14と、
を備えている。
[1.1. 台座]
[1.1.1. 材料]
台座12aは、その表面に、塗布基材14と、傾斜スペーサ16a~16cとを着脱自在の載置するためのものである。台座12aの材料は、臨界クラック膜厚の測定に支障がなく、かつ、台座12aの上に塗布基材14及びスペーサ16a~16cを着脱自在に載置することが可能な限りにおいて、特に限定されない。台座12aの材料としては、例えば、ステンレス鋼などの金属、マコール(登録商標)などのセラミックス、アクリルなどの樹脂、ガラスなどがある。
[1.1.2. 形状]
台座12aは、厚さが一定の平行平板であっても良く、あるいは、スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に増加している傾斜板でも良い。「厚さが傾斜的に増加(減少)」とは、厚さが直線的に増加(減少)していることをいう。
図1に示す例において、台座12aは、スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に増加している傾斜板からなる。
台座12aの上面と下面とのなす角(以下、これを「傾斜角θ1」ともいう)、及び、台座12aの水平方向の長さL1は、臨界クラック膜厚の測定に支障がない限りにおいて、特に限定されない。
一般に、傾斜角θ1が過度に大きくなると、傾斜スペーサ16a~16cの表面が水平面から大きく傾き、スラリーの塗工が困難になる場合がある。そのため、傾斜角θ1は、傾斜スペーサ16a~16cの表面がほぼ水平になるように選択するのが好ましい。
また、長さL1が過度に短くなると、臨界クラック膜厚の測定精度が低下し、あるいは、測定そのものが困難となる場合がある。一方、長さL1を必要以上に長くしても効果に差がなく、実益がない。従って、長さL1は、これらを考慮して選択するのが好ましい。
台座12aの幅は、スラリーを塗工するための1本の溝18を形成可能な幅でも良く、あるいは、複数本の溝18を形成可能な幅でも良い。台座12aの表面に複数本の溝18を形成すると、1回の塗工で複数個のデータを取得できるので、臨界クラック膜厚の測定精度がさらに向上する。図1に示す例では、台座12aは、2本の溝18を形成可能な幅を備えている。溝18の幅は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な幅を選択することができる。
さらに、台座12aの表面は、滑らかに仕上げられているのが好ましい。具体的には、台座12aの表面粗さは、1μm以下が好ましい。
[1.2. 塗布基材]
[1.2.1. 材料]
塗布基材14は、その表面にスラリーを塗布するためのものである。塗布基材14は、必ずしも必要ではなく、台座12aの表面に直接、スラリーを塗布することもできる。しかしながら、臨界クラック膜厚は、スラリーの性状だけでなく、スラリーが塗布される基材の材料にも依存する。そのため、台座12aと傾斜スペーサ16a~16cの間に塗布基材14を着脱自在に挿入すると、塗布基材14の材料を変更して塗工試験を繰り返すことが容易化する。また、これによって、臨界クラック膜厚の基材依存性を簡便に評価することができる。
塗布基材14の材料は、臨界クラック膜厚の測定に支障がなく、かつ、台座12aの上に塗布基材14を着脱自在に載置することが可能であり、かつ、塗布基材14の上にスペーサ16a~16cを着脱自在に載置することが可能な限りにおいて、特に限定されない。塗布基材14の材料としては、例えば、金属箔、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート、カーボンペーパー、燃料電池用電解質膜、PETフィルムなどの樹脂フィルム、カーボン材料を複合化した導電性フィルム、ジルコニアなどのセラミックス、チタン酸バリウムなどの誘電体を含む誘電体シートなどがある。
[1.2.2. 形状]
塗布基材14の大きさは、台座12aの表面に形成される溝18の底面が塗布基材14で構成される大きさである限りにおいて、特に限定されない。すなわち、塗布基材14の大きさは、台座12aの表面の大きさと同一であっても良く、あるいは、台座12aの表面の大きさより若干小さくても良い。
塗布基材14の厚さは、塗布基材14の着脱、及び、塗布基材14表面へのスラリーの塗工に支障がない限りにおいて、特に限定されない。
さらに、塗布基材14の表面は、滑らかに仕上げられているのが好ましい。具体的には、塗布基材14の表面粗さは、1μm以下が好ましい。
[1.3. 傾斜スペーサ]
[1.3.1. 材料]
「台座12aの上に傾斜スペーサ16a~16cが載置されている」とは、
(a)台座12aの上に直接、傾斜スペーサ16a~16cが載置されていること、又は、
(b)台座12aの上に塗布基材14が載置され、その上に傾斜スペーサ16a~16cが載置されていること
をいう。
傾斜スペーサ16a、16b、16cは、それぞれ、台座12aの表面に、スラリーを塗工するための1又は2以上の溝18を形成するためのものである。傾斜スペーサ16a~16cの材料は、臨界クラック膜厚の測定に支障がなく、かつ、台座12a又は塗布基材14の上にスペーサ16a~16cを着脱自在に載置することが可能な限りにおいて、特に限定されない。傾斜スペーサ16a~16cの材料は、特に、スラリーに含まれる溶剤に侵されない程度の耐食性を持ち、かつ、スクレーパーで押しても変形しない程度の硬さを持つものが好ましい。このような材料としては、例えば、ステンレス鋼などの金属、ガラス、PTFEやアクリルなどの樹脂、マコール(登録商標)などがある。
[1.3.2. 個数]
傾斜スペーサの個数は、スラリーを塗工するための少なくとも1つの溝18を形成可能な限りにおいて、特に限定されない。すなわち、傾斜スペーサの個数は、1個でも良く、あるいは、2個以上でも良い。図1に示す例では、傾斜スペーサ16a、16b、16cは、それぞれ、平面形状が矩形であり側面形状が楔形である楔形スペーサからなる。また、台座12aの上(すなわち、塗布基材14の上)には、複数個(図1の例では、3個)の楔形スペーサが平行に配置されている。その結果、塗布基材14の上には、2個の溝18が形成されている。
なお、「楔形スペーサが平行に配置されている」とは、完全に平行に配置されていることを意味するものではなく、スラリーを塗工可能な幅を持つ溝18を形成可能な限りにおいて、完全な平行から若干ずれていても良いことを意味する。
[1.3.3. 形状]
臨界クラック膜厚を測定するためには、溝18の深さは、スラリーの塗工方向に向かって傾斜的に減少している必要がある。そのためには、傾斜スペーサ16a~16cの厚さは、スラリーの塗工方向に向かって傾斜的に減少している必要がある。
傾斜スペーサ16a~16cの上面と下面とのなす角(以下、これを「傾斜角θ2」ともいう)、及び、傾斜スペーサ16a~16cの水平方向の長さL2は、臨界クラック膜厚の測定に支障がない限りにおいて、特に限定されない。
一般に、傾斜角θ2が小さくなるほど、臨界クラック膜厚の測定精度は高くなる。しかしながら、傾斜角θ2を必要以上に小さくすると、臨界クラック膜厚を測定するために必要な長さL2が過度に長くなる場合がある。従って、傾斜角θ2及び長さL2は、これらを考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
傾斜角θ2の絶対値は、台座12aの傾斜角θ1の絶対値と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。両者が一致していると、傾斜スペーサ16a~16cの表面を水平にすることができる。L2は、L1と同一であっても良く、あるいは、L1より短くても良い。図1に示す例においては、θ1=θ2、かつ、L1=L2になっている。
さらに、傾斜スペーサ16a~16cの表面は、滑らかに仕上げられているのが好ましい。具体的には、傾斜スペーサ16a~16cの表面粗さは、1μm以下が好ましい。
[1.3.4. 目盛り]
傾斜スペーサ16a~16cの表面には、溝18の深さの目盛り、又は、溝18内でスラリーを乾燥させることにより得られる乾燥膜の厚さの目盛りを備えているのが好ましい。乾燥膜の厚さは、実測することもできる。しかし、溝18の深さxと乾燥膜の厚さtとの関係が予め明らかにされている場合において、クラックが発生した位置の溝18の深さxを目盛りから読み取ることができた時には、溝18の深さxから、クラックが発生した箇所の乾燥膜の厚さtを推定することができる。
[1.4. 着脱手段]
「着脱手段」とは、塗工中にずれることがなく、かつ、容易に取り外しが可能となるような適度な固着力により2つの部材を結合させる手段をいう。
台座12aの表面に塗布基材14を載置した場合において、スラリーの塗工中に塗布基材14がずれると、臨界クラック膜厚を正確に測定するのが困難となる場合がある。一方、塗布基材14が台座12aの表面に強固に固着すると、塗布基材14の取り外しが困難となり、臨界クラック膜厚の基材依存性の評価が困難となる場合がある。
そのため、台座12aの表面に塗布基材14を載置する場合には、ゲージ10aは、台座12aの表面に塗布基材14を着脱自在に載置するための手段(着脱手段)を備えている必要がある。
この点は、傾斜スペーサ16a~16cも同様であり、ゲージ10aは、台座12aの表面又は塗布基材14の表面に傾斜スペーサ16a~16cを着脱自在に載置するための手段(着脱手段)を備えている必要がある。
着脱手段の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な手段を選択することができる。着脱手段としては、具体的には以下のようなものがある。
[1.4.1. 水張り]
「水張り」とは、2つの部材の間に薄い液膜を介在させ、液膜に含まれる液体の表面張力により2つの部材を密着させる手段をいう。水張りに用いられる液体は、通常、水であるが、水以外の液体(例えば、エタノール、1-プロパノールなどのアルコール)を用いても良い。
例えば、台座12aの表面に塗布基材14を水張りする場合、まず、台座12aの表面に霧吹きで水などの液体を吹きかけ、その上に塗布基材14を載せる。次いで、塗布基材14の上からスクレーパー、刷毛、ローラー等で押圧する。これにより、台座12aと塗布基材14の間の隙間から空気及び余分な液体が排出され、薄い液膜を介して両者が密着する。台座12a又は塗布基材14の表面に、傾斜スペーサ16a~16cを水張りする場合も同様である。
台座12aの上に塗布基材14を載置する場合、塗布基材14は、台座12aの上に水張りされていても良く、あるいは、台座12aの上に単に載置されているだけでも良い。塗布基材14が台座12aの上に単に載置されている場合であっても、台座12a及び傾斜スペーサ16a~16cが着脱手段(例えば、後述するマグネットチャック)を備えている場合には、傾斜スペーサ16a~16cと台座12aとの間に塗布基材14を挟むことにより、塗布基材14を固定することができる。
傾斜スペーサ16a~16dと台座12aの間で塗布基材14を挟む方法、あるいは、塗布基材14を台座12aの上に水張りする方法は、塗布基材14の厚さによらず塗布基材14を固定することができ、安価で簡便であるという利点がある。
[1.4.2. マグネットチャック]
台座12aが磁石又は電磁石を含む場合において、塗布基材14又は傾斜スペーサ16a~16cが磁性材料を含む時には、磁石又は電磁石の磁力を用いて、台座12aの表面に塗布基材14又は傾斜スペーサ16a~16cを着脱自在に載置することができる。
「塗布基材14又は傾斜スペーサ16a~16cが磁性材料を含む」とは、
(a)塗布基材14又は傾斜スペーサ16a~16cが、磁性材料からなること、
(b)塗布基材14又は傾斜スペース16a~16cが、樹脂等からなるマトリックスと、マトリックス中に分散している微細な磁性体の複合体からなること、又は、
(c)塗布基材14又は傾斜スペーサ16a~16cが、磁性材料を含む層と、磁性材料を含まない層の2層構造を備えていること、
をいう。
台座12aが電磁石を含む場合、傾斜スペーサ16a~16cは、磁性材料を含むものが好ましい。これは、電磁石をONにした時には、傾斜スペーサ16a~16c、塗布基材14(塗布基材14が挿入されている場合)、及び台座12aが強固に固定されるが、電磁石をOFFにすると磁力が断たれて容易に取り外すことができるためである。マグネットチャックは、最も安価で簡便に着脱できるので、着脱手段として特に好適である。
[1.4.3. 真空チャック]
塗布基材14及び/又は傾斜スペーサ16a~16cは、真空チャックを用いて台座12aに着脱自在に載置されていても良い。真空チャックを用いて、台座12aの表面に塗布基材14又は傾斜スペーサ16a~16cを着脱自在に載置する場合、台座12aに吸引穴(図示せず)を形成する。吸引穴を塞ぐように塗布基材14又は傾斜スペーサ16a~16cを載せ、吸引穴から吸引すると、台座12aの上に塗布基材14又は傾斜スペーサ16a~16cを密着させることできる。
同様に、塗布基材14の上にさらに傾斜スペーサ16a~16cを載せ、真空チャックを用いて傾斜スペーサ16a~16cを着脱自在に載置する場合、台座12a及び塗布基材14に吸引用の穴を形成すれば良い。
[1.4.4. 静電気]
塗布基材14及び/又は傾斜スペーサ16a~16cは、静電気を用いて、台座12aの上に着脱自在に載置されていても良い。静電気を用いて台座12aの上に塗布基材14を着脱自在に載置する場合、種々の方法を用いて、塗布基材14を帯電させれば良い。塗布基材14を帯電させる方法としては、例えば、コロナ放電により帯電させる方法、摩擦によって帯電させる方法などがある。静電気を用いて傾斜スペーサ16a~16cを着脱自在に固定する場合も同様である。
[1.4.5. 粘着剤、グリス]
塗布基材14及び/又は傾斜スペーサ16a~16cは、粘着剤やグリス等の粘性液体を用いて、台座12aに着脱自在に載置されていても良い。例えば、塗布基材14の裏面に、のり(例えば、水溶性のポリビニルアルコール)を塗布し、台座12aに密着させることで固定することができる。また、ゲージ10aを水や有機溶媒に浸漬すれば、塗布基材14を容易に剥がすことができる。粘性液体を用いて傾斜スペーサ16a~16cを着脱自在に固定する場合も同様である。
[2. 臨界クラック膜厚測定用ゲージ(2)]
図2に、本発明の第2の実施の形態に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージの正面図(右上図)、平面図(右下図)、及び左側面図(左図)を示す。なお、図2においては、見やすくするために、部分的に実際の寸法より拡大又は縮小して描いてある。
図2において、臨界クラック膜厚測定用ゲージ10bは、
台座12aと、
台座12aの上に着脱自在に載置された傾斜スペーサ16dと、
台座12aと傾斜スペーサ16dとの間に着脱自在に挿入された塗布基材14と、
を備えている。
傾斜スペーサ16dは、複数個の楔形スペーサ(図1に示す傾斜スペーサ16a~16c)が根元部分(スラリー塗工の起点側)で連結しているものからなる。傾斜スペーサ16dは、溝18を形成するための側壁部分が根元部分で連結されているので、着脱が容易であり、かつ、塗工中にずれにくいという利点がある。
ゲージ10bに関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3. 臨界クラック膜厚測定用ゲージ(3)]
図3に、本発明の第3の実施の形態に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージの正面図(右上図)、平面図(右下図)、及び左側面図(左図)を示す。なお、図3においては、見やすくするために、部分的に実際の寸法より拡大又は縮小して描いてある。
図3において、臨界クラック膜厚測定用ゲージ10cは、
台座12aと、
台座12aの上に着脱自在に載置された傾斜スペーサ16eと、
台座12aと傾斜スペーサ16eとの間に着脱自在に挿入された塗布基材14と、
を備えている。
傾斜スペーサ16eは、複数個の楔形スペーサ(図1に示す傾斜スペーサ16a~16c)が根元部分(スラリー塗工の起点)及び先端部分(スラリー塗工の終点)の双方で連結しているものからなる。傾斜スペーサ16eは、溝18を形成するための側壁部分が根元部分及び先端部分の双方で連結されているので、着脱が容易であり、かつ、塗工中にずれにくいという利点がある。
ゲージ10cに関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[4. 臨界クラック膜厚測定用ゲージ(4)]
図4に、本発明の第4の実施の形態に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージの正面図(右上図)、平面図(右下図)、及び左側面図(左図)を示す。なお、図4においては、見やすくするために、部分的に実際の寸法より拡大又は縮小して描いてある。
図4において、臨界クラック膜厚測定用ゲージ10dは、
台座12bと、
台座12bの上に着脱自在に載置された傾斜スペーサ16fと、
台座12bと傾斜スペーサ16fとの間に着脱自在に挿入された塗布基材14と、
を備えている。
台座12bは、厚さが一定の平行平板からなる。傾斜スペーサ16fは、複数個の楔形スペーサ(図1に示す傾斜スペーサ16a~16c)が根元部分で連結したものからなる。傾斜スペーサ16fは、溝18を形成するための側壁部分が根元部分で連結されているので、着脱が容易であり、かつ、塗工中にずれにくいという利点がある。さらに、傾斜スペーサ16fの長さL2は、台座12bの長さL1より短くなっている。
ゲージ10dに関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[5. 耐クラック性評価装置(1)]
図5に、本発明の第1の実施の形態に係る耐クラック性評価装置の模式図を示す。
図5において、耐クラック性評価装置20aは、
臨界クラック膜厚測定用ゲージ10と、
臨界クラック膜厚測定用ゲージ10の溝18内にスラリーを流し入れるためのスクレーパー22と、
スクレーパー22を溝18の長手方向に沿って一定の速度で移動させるための塗工装置24と、
スラリーを乾燥させた後、乾燥膜26の臨界クラック膜厚を測定するための臨界膜厚測定装置30と
を備えている。
[5.1. 臨界クラック膜厚測定用ゲージ]
本実施の形態において、ゲージ10は、図1に示すゲージ10aと同一の構造を備えている。ゲージ10aの詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[5.2. スクレーパー]
スクレーパー22は、ゲージ10の溝18内にスラリーを流し入れるためのものである。溝18の左端(深さが最も深い部分)近傍に、相対的に多量のスラリーを落とし、スクレーパー22の先端をゲージ10の表面に所定の圧力で押しつけ、この状態でスクレーパー22を左側から右側方向(溝18の深さが浅くなる方向)に向かって移動させると、溝18内にスラリーを充填することができる。スクレーパー22の形状及び材料は、このような操作が可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
塗工後、溝18内に充填されたスラリーを乾燥させると、塗工方向に向かって厚さが傾斜的に減少している乾燥膜26となる。
[5.3. 塗工装置]
塗工装置24は、スクレーパー22を溝18の長手方向に沿って一定の速度で移動させるためのものである。溝18内へのスラリーの充填は、スクレーパー22を手でつかんで1~2秒間かけて引く(塗る)ことによっても行うことができる。しかしながら、スクレーパー22を手で引くと、塗工速度にムラが生じ、臨界クラック膜厚の測定精度が低下する。従って、塗工装置24は、スクレーパー22を一定の速度で移動させることが可能なものである必要がある。塗工装置24の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
[5.4. 臨界膜厚装置]
臨界膜厚測定装置30は、スラリーを乾燥させた後、乾燥膜26の臨界クラック膜厚を測定するためのものである。臨界膜厚測定装置30の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
臨界膜厚測定装置30は、具体的には、
乾燥膜26の表面のクラックを撮影する撮影装置(図示せず)と、
撮影装置で撮影された画像を処理する画像処理装置(図示せず)と
を備えているものが好ましい。
また、画像処理装置は、
画像を二値化する手段と、
二値化された画像の中で、複数の連続した画素がしきい値を超えている領域をクラックとして検出する手段と
を備えているものが好ましい。
[5.4.1. 撮影装置]
撮影装置は、乾燥膜26の表面のクラックを撮影し、画像化できるものであれば良い。撮影装置としては、
(a)乾燥膜26の表面を撮影するカメラ、光学顕微鏡、
(b)乾燥膜26の表面に光を照射し、乾燥膜26の割れに伴う反射光の変化を受光装置で検出する装置、
(c)乾燥膜26の裏面から光を照射し、乾燥膜26の割れに伴う透過光の変化を受光装置で検出する装置、
(d)赤外線熱画像カメラ(サーモグラフィ)を使って表面温度分布を映像化する装置、
(e)渦電流の流れ難い部分や位相変化を測定し、これを画像化する装置、
(f)超音波でクラックを検出し、これを画像化する装置、
などがある。
[5.4.2. 画像処理装置]
[A. 二値化]
撮影装置を用いて画像を撮影した後、画像処理装置を用いて、得られた画像をある閾値で二値化する。二値化の閾値の最適値は、光量や試料の反射率、カメラの感度などにより依存する。そのため、画像処理装置は、手動で二値化の閾値を調整可能なもの、または、閾値の最適値を求めるアルゴリズムを備えているものが好ましい。
[B. クラックの検出]
次に、二値化の結果、複数の連続したピクセルが閾値を超えるものをクラックとして検出する。パラメータとしては、クラックの面積、クラックを楕円近似したときの長軸長さ、クラックの面積密度(=Σクラック面積/総面積)などがある。画像処理装置は、このような機能を備えているものであれば良い。
[5.5. 用途]
本実施の形態に係る耐クラック性評価装置は、種々のスラリーの臨界クラック膜厚を測定するために用いることができる。例えば、本発明は、二次電池電極材料、燃料電池電極材料、燃料電池撥水層材料、キャパシタ電極材料、太陽電池電極材料、センサー用セラミックス部品用材料、排ガス触媒などの材料を含むスラリーの臨界クラック膜厚の測定に用いることができる。
この場合、スラリーの粘度が低すぎると、塗工が完了してから乾燥が完了するまでの間に、スラリーが溝18の一部が流れ出し、厚さが傾斜的に減少している乾燥膜26が得られない場合がある。そのため、臨界クラック膜厚測定用のスラリーは、せん断速度が0.01s-1であるときの粘度が1000mPa・s以上であるものが好ましい。
[6. 耐クラック性評価装置(2)]
図6に、本発明の第2の実施の形態に係る耐クラック性評価装置の模式図を示す。
図6において、耐クラック性評価装置20bは、
臨界クラック膜厚測定用ゲージ10と、
臨界クラック膜厚測定用ゲージ10の溝18内にスラリーを流し入れるためのスクレーパー22と、
スクレーパー22を溝18の長手方向に沿って一定の速度で移動させるための塗工装置24と、
スラリーを乾燥させた後、乾燥膜26の臨界クラック膜厚を測定するための臨界膜厚測定装置30と
を備えている。
耐クラック性評価装置20bは、ゲージ10として、図4に示すゲージ10dが用いられている。この点が、第1の実施の形態に係る耐クラック性評価装置20aとは異なる。その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[7. 臨界クラック膜厚の測定方法]
[7.1. 臨界クラック]
通常、乾燥膜26の厚さが薄いときには、クラックは発生しない。そのため、膜厚が薄い方から順に乾燥膜26の観察を行い、最初にクラックが表れた箇所を「最小の膜厚を与える位置(位置x)」とする。また、最初に表れたクラック、すなわち、溝18の最も浅い位置にあるクラックを臨界クラックとして特定する。画像処理装置を用いて画像を二値化すると、このような処理が容易化する。
[7.2. 臨界クラック膜厚]
臨界クラック膜厚の測定方法としては、例えば、
(a)位置xでの乾燥膜26の膜厚を実測する方法、
(b)予め測定した溝18の深さxと乾燥膜26の厚さtの関係の校正曲線(t=f(x))を求めておき、深さxから乾燥膜26の厚さtを算出する方法、
などがある。
本発明においては、いずれを用いても良い。また、校正曲線を多項式で近似する場合、多項式は単調増加で、その次数は3次以下が好ましい。
膜厚を実測するための装置は、非破壊でクラックの段差(すなわち、膜厚)を読み取るものでも良く、あるいは、乾燥膜26を破壊して、その断面から膜厚を求めるものでも良い。このような装置としては、例えば、
(a)レーザー光による光切断法により膜厚を測定する装置、
(b)エリプソメータ、共焦点顕微鏡、レーザー変位計、三角測量計などの非接触光学式測定装置を用いて膜厚を測定する装置、
(c)ステレオ法、アクティブステレオ法、光レーダー法などの表面形状測定法を用いて膜厚を測定する装置、
(d)触針式プロファイリングシステム、電磁式膜厚計、渦電流式膜厚計などの接触式測定装置を用いて膜厚を測定する装置、
などがある。
[8. 作用]
台座の上に、スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に減少している傾斜スペーサを着脱自在に載置すると、台座の上に、スラリーの塗工方向に向かって深さが傾斜的に減少している溝を形成することができる。この溝にスラリーを流し込み、溝内のスラリーを乾燥させると、スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に減少している乾燥膜が得られる。さらに、乾燥膜のクラックの有無を観察し、クラックのない領域の膜厚の最大値を測定することにより、臨界クラック膜厚を評価することができる。
本発明に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージは、厚さが傾斜的に減少している乾燥膜が得られるので、1回の塗工で臨界クラック膜厚を測定することができる。また、台座と傾斜スペーサが着脱自在になっているので、台座又はその上に載置される塗布基材を変更することにより、臨界クラック膜厚の基材依存性を簡便に評価することができる。さらに、本発明に係る耐クラック性試験装置は、スクレーパーを一定の速度で塗工する塗工装置を備えているので、臨界クラック膜厚の塗工速度依存性を簡便に評価することができる。
臨界クラック膜厚tcは、Griffithの条件に基づいて与えられた指標であり、次の式(1)で与えられる。
t≧tc=2Gc*/Zσ2 …(1)
但し、
Zは、無次元パラメータ、
*は、ヤング率、
cは、臨界ひずみエネルギー解放率(破壊靱性の尺度)、
σは、引張応力。
乾燥膜26の膜厚tが臨界クラック膜厚tc以上になると、クラックが発生・伸展する。しかし、tがtc未満では、クラックは発生・伸展しない。そのため、乾燥膜26の臨界クラック膜厚tcを比較することで、スラリーの耐クラック性を評価できる。
さらに、tcは、スラリーの塗工速度の影響を受ける。これは、スラリーが擬塑性流体であり、塗工時にスラリーにせん断速度がかかると、スラリー中の粒子の構造が壊れるためと考えられる。そのため、tcを測定する際には、一定の塗工速度で試験する必要がある。
(実施例1~4、比較例1)
[1.スラリーの作製]
[1.1. 実施例1、4]
スラリーには、燃料電池の電極を製造するための触媒インクを用いた。白金担持カーボン(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E、Vulcan(登録商標) XC72R):0.80gに超純水:6.46gを加えて、攪拌と脱泡を行った。そこに、ナフィオン(登録商標)分散液(デュポン社製、DE2020):1.89gと、1-プロパノール:2.70gを加えて、さらに攪拌と脱泡を行った。超音波ホモジナイザー(SMT(株)製、MODEL UH-600)で分散処理を行うことで、触媒インクを調製した。
[1.2. 実施例2~3、比較例1]
スラリーには、燃料電池の電極を製造するための触媒インクを用いた。白金担持カーボン(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E、Vulcan(登録商標) XC72R):1.05gに超純水:5.00gを加えて、攪拌と脱泡を行った。そこに、ナフィオン(登録商標)分散液(デュポン社製、DE2020):2.49gと、エタノール:1.86gを加えて、さらに攪拌と脱泡を行った。超音波ホモジナイザー(SMT(株)製、MODEL UH-600)で分散処理を行うことで、触媒インクを調製した。
[2. 試験方法]
[2.1. 粘度]
レオメータ(Anton Paar社製、MCR301)を用いて、せん断速度が0.01s-1のときの粘度を測定した。測定には、コーンプレート(径:50mm、角度:1°、ギャップ:0.101mm)を用いた。温度は、25℃とした。
[2.2. 耐クラック性]
[2.2.1. 耐クラック性試験装置]
図5に示す耐クラック性評価装置20aを用いて、スラリーの耐クラック性試験を行った。台座12aの上に、塗布基材14を設置し、さらにステンレス鋼製の傾斜スペーサ16a~16cを合体させ、溝18を形成した。溝18の最も深いところは、100μmであった。塗布基材14には、PTFEシート(実施例1~3、比較例1)、又は、ガラス基板(実施例4)を用いた。
塗工装置24には、BYK Gardner Company社製、byko-dryveを用いた。撮影装置には、CMOSカメラ(ポイントグレイリサーチ(株)製、GS3-US-32S4M-C)を用いた。臨界クラック膜厚の測定には、共焦点顕微鏡(レーザーテック(株)製、OPTELICE H1200)を用いた。
[2.2.2. 塗工試験]
溝18の深い方の先端に十分な量の触媒インク(0.2mL程度)を流し込んだ。塗工装置24に接続されたスクレーパー22の先端がゲージ10aの表面に垂直になるように保持しながら、溝18の長手方向に沿ってスクレーパー22を所定の速度で引き、溝18に触媒インクを満たした。
スクレーパー22の移動速度は、10mm/s(実施例1~2、4)、又は、200mm/s(実施例3)とした。なお、比較例1については、塗工装置24を用いることなく、スクレーパー22を手でつかんで1~2秒で一気に引いた。
触媒インクを溝18に流し込んでからスクレーパー22を引き終わるまでの一連の操作は、触媒インクの乾燥を防ぐために、20s以内に実施した。
さらに、スクレーパー22を引き終わった後、室温(24℃、75RH%)において保持し、十分乾燥させた。
[2.2.3. 最小厚さを与える溝の深さxの測定]
CMOSカメラで乾燥膜26の表面の画像を取得した。画像解析ソフトImage Jを用いて、画像のグレースケール化(8bit)と二値化を行った。二値化の閾値は、30とした。
次に、得られた二値化像について、Image Jのanalyzer particleの機能を用いて、複数の連続したピクセルが閾値を超える部位(クラック)の検出を行った。クラック検出の閾値は、5pixcelsとした。さらに、最も浅い位置に形成されたクラックの位置から、最小厚さを与える溝18の深さx(臨界クラック膜厚を与える位置の溝18の深さxc)を算出した。
[2.2.4. 臨界クラック膜厚の算出]
予め、溝18の深さxと乾燥膜26の厚さtの関係を調べた。厚さtは、乾燥膜26の一部をスパチュラで削り取ってできた塗布基材14と乾燥膜26表面の段差を、高さ分解能:約0.1μmで読み取った。溝の深さxが50μm、75μm、100μmの箇所の乾燥膜26の厚さtをそれぞれ測定した。得られた溝18の深さxと乾燥膜26の膜厚tを用いて、これらの関係を一次式で近似した。得られた1次式に、[2.2.3.]で得られたxcを代入し、臨界クラック膜厚(tc)を算出した。
[3. 結果]
[3.1. 画像処理の実例]
図7(A)に、乾燥膜に発生したクラックの概念図を示す。図7(B)に、クラックが発生した乾燥膜の実際の表示画像を示す。図7(C)に、図7(B)の二値化像を示す。図7(D)に、図7(C)の二値化像において複数の連続したピクセルが閾値を超える部位を表示した画像を示す。
図7より、溝18の深さxが深くなるほど、クラックの個数が増え、かつ、単位面積当たりのクラックの面積が大きくなることが分かる。これは、溝18の深さxが深くなるほど、乾燥膜26の厚さが厚くなり、クラックが発生しやすくなるためと考えられる。
図8に、溝18の深さxと、実施例1で用いたスラリーを200mm/sで塗工し、乾燥させることにより得られる乾燥膜26の厚さtとの関係を示す。図8より、実施例1で用いたスラリーを200mm/sで塗工した場合、xとtの間に比例関係が成り立つこと、及び、その関係は、y=0.1382xで表されることが分かる。この式から、例えば、溝の深さxが43μmの場合、その位置での乾燥膜26の厚さは、5.9μmと見積もられる。
実施例1で用いたスラリーを10mm/sで塗工した場合も同様であり、xとtの間に比例関係が成り立ち、その関係は、y=0.0968xと表されることが分かった。
[3.2. 臨界クラック膜厚]
表1に、合計3回行った臨界クラック膜厚の測定結果を示す。なお、表1には、スラリーの塗工条件も併せて示した。表1より、以下のことが分かる。
(1)実施例3は、実施例2に比べて臨界クラック膜厚が大きい。これは、スラリーが擬塑性流体であるために、塗工速度が速くなるほど、より強いせん断力がスラリーにかかり、粒子の構造が壊れやすくなるためと考えられる。
(2)比較例1は、実施例2、3に比べて、臨界クラック膜厚のバラツキが大きい。これは、一定の速度で塗工しなかったために、塗工時のせん断力が一定とならず、粒子構造が壊れる部分と壊れない部分が存在しているためと考えられる。このことから、臨界クラック膜厚のバラツキを小さくするには、一定の速度で塗工する必要があることが分かった。
(3)実施例4は、実施例1に比べて臨界クラック膜厚が小さい。これは、塗布基材14の材質が臨界クラック膜厚に影響を与えることを示している。その理由は定かではないが、基材が変わると、スラリーと基材の濡れ性や乾燥膜と基材との密着性が変化するためと考えられる。これらのことから、塗布基材14の材料が不適切であると、濡れ不良やハジキ等に由来してクラックが発生したり、実際の塗工では発生しない欠陥が発生する可能性があることが分かる。従って、臨界クラック膜厚を測定する際には、塗布基材14には、実際に塗工する基材と同じ材料を用いることが好ましい。
Figure 0007103382000001
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る臨界クラック膜厚測定用ゲージ及び耐クラック性評価装置は、二次電池電極材料、燃料電池電極材料、燃料電池撥水層材料、キャパシタ電極材料、太陽電池電極材料、センサー用セラミックス部品用材料、排ガス触媒などの材料を含むスラリーの臨界クラック膜厚の測定に用いることができる。
10a~10d 臨界クラック膜厚測定用ゲージ
12a、12b 台座
14 塗布基材
16a~16f 傾斜スペーサ
18 溝
20a、20b 耐クラック性試験装置
22 スクレーパー
24 塗工装置
26 乾燥膜
30 臨界膜厚測定装置

Claims (13)

  1. 以下の構成を備えた臨界クラック膜厚測定用ゲージ。
    (1)前記臨界クラック膜厚測定用ゲージは、
    台座と、
    前記台座の上に着脱自在に載置された1又は2以上の傾斜スペーサと
    を備えている。
    (2)前記傾斜スペーサは、
    前記台座の表面に、スラリーを塗工するための1又は2以上の溝を形成するためのものからなり、
    前記スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に減少している。
  2. 前記台座と前記傾斜スペーサとの間に着脱自在に挿入された塗布基材をさらに備えた請求項1に記載の臨界クラック膜厚測定用ゲージ。
  3. 前記塗布基材は、
    (a)前記傾斜スペーサと前記台座の間に挟まれて固定され、又は、
    (b)前記台座の上に水張りされている
    請求項2に記載の臨界クラック膜厚測定用ゲージ。
  4. 前記台座は、磁石又は電磁石を含み、
    前記傾斜スペーサは、磁性材料を含む
    請求項1から3までのいずれか1項に記載の膜厚測定用ゲージ。
  5. 前記台座は、厚さが一定の平行平板からなる請求項1から4までのいずれか1項に記載の臨界クラック膜厚測定用ゲージ。
  6. 前記台座は、前記スラリーの塗工方向に向かって厚さが傾斜的に増加している傾斜板からなる請求項1から4までのいずれか1項に記載の臨界クラック膜厚測定用ゲージ。
  7. 前記傾斜スペーサは、楔形スペーサからなり、
    前記台座の上には、複数個の楔形スペーサが平行に載置されている
    請求項1から6までのいずれか1項に記載の臨界クラック膜厚測定用ゲージ。
  8. 前記傾斜スペーサは、複数個の楔形スペーサが根元部分で連結している形状を備えている請求項1から6までのいずれか1項に記載の臨界クラック膜厚測定用ゲージ。
  9. 前記傾斜スペーサは、複数個の楔形スペーサが根元部分及び先端部分で連結している形状を備えている請求項1から6までのいずれか1項に記載の臨界クラック膜厚測定用ゲージ。
  10. 請求項1から9までのいずれか1項に記載の臨界クラック膜厚測定用ゲージと、
    前記臨界クラック膜厚測定用ゲージの溝内に前記スラリーを流し入れるためのスクレーパーと、
    前記スクレーパーを前記溝の長手方向に沿って一定の速度で移動させるための塗工装置と、
    前記スラリーを乾燥させた後、乾燥膜の臨界クラック膜厚を測定するための臨界膜厚測定装置と
    を備えた耐クラック性評価装置。
  11. 以下の構成をさらに備えた請求項10に記載の耐クラック性試験装置。
    (1)前記臨界膜厚測定装置は、
    前記乾燥膜の表面のクラックを撮影するための撮影装置と、
    前記撮影装置で撮影された画像を処理するための画像処理装置と
    を備えている。
    (2)前記画像処理装置は、
    前記画像を二値化する手段と、
    二値化された画像の中で、複数の連続した画素がしきい値を超えている領域をクラックとして検出する手段と
    を備えている。
  12. 二次電池電極材料、燃料電池電極材料、燃料電池撥水層材料、キャパシタ電極材料、太陽電池電極材料、センサー用セラミック部品材料、又は、排ガス触媒を含むスラリーの臨界クラック膜厚の測定に用いられる請求項10又は11に記載の耐クラック性試験装置。
  13. せん断速度が0.01s-1であるときの粘度が1000mPa・s以上であるスラリーの臨界クラック膜厚の測定に用いられる請求項10から12までのいずれか1項に記載の耐クラック性試験装置。
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