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JP7120212B2 - 無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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JP7120212B2 - 無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂とガラス繊維等の無機強化材を含有する無機強化ポリエステル樹脂組成物に関する。詳しくは、高剛性、高強度でありながら成形品の無機強化材の浮き等による外観不良が少なく、かつムラのない均一なシボ外観や鏡面外観を有する成形品を、広い条件幅で得ることができる無機強化ポリエステル樹脂組成物に関する。
一般にポリエステル樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、自動車部品、電気・電子部品、家庭雑貨品等に幅広く使用されている。中でもガラス繊維等の無機強化材で強化されたポリエステル樹脂組成物は、剛性、強度及び耐熱性が飛躍的に向上し、特に剛性に関しては無機強化材の添加量に応じて向上することが知られている。
しかしながら、ガラス繊維等の無機強化材の添加量が多くなると、ガラス繊維等の無機強化材が成形品の表面に浮き出しやすくなり、表面光沢が望まれる成形品においては、表面光沢低下が、艶消し表面の成形品においては、シボ外観不良が問題となる場合がある。
特にポリブチレンテレフタレートのような結晶化速度が速いポリエステル樹脂は、成形時の結晶化に伴い、金型への転写性が悪いため、満足する外観を得ることは非常に困難である。
一方、良好なシボ外観を得る方法として、ポリエステル樹脂に、アクリル系エステルゴム状重合体にヒドロキシ基を含有するビニル重合体とをグラフトした共重合体をブレンドする方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。ゴムを含むグラフト重合体とポリエステル樹脂とは単純にブレンドするだけでは良好に分散しないので、シボ転写性が一様に悪くなるシボムラの問題がある。特許文献1、2の方法は、このシボムラ抑制には効果があるものの、これからなる成形品は機械的特性、流動性が低くなってしまう問題がある。また、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートやポリカーボネート樹脂を利用する方法(例えば特許文献3、4)が提案されているが、特許文献3では、高い機械的強度や高剛性を得るために充填量を増量していくと外観が損なわれる不具合があり、特許文献4では、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートやポリカーボネート樹脂の配合量が多量であることが必要であるためか成形安定性や成形サイクルの点で満足できるものではなかった。
これらの欠点を改善したものとして、特許文献5が提案されたが、高剛性が要求される用途においては剛性が不足し、剛性を高めようと強化材を増量すると外観が低下する、さらには成形条件の幅が非常に狭く安定して良品が得にくい等の欠点が認められ、改善が求められていた。
近年、成形品の薄肉化・長尺化が進んでおり、さらなる高剛性化(曲げ弾性率が20GPaを超える)が求められている。また外観はこれまでと同等以上の品質が求められており、これらの品質バランスを達成することが非常に重要な課題であった。また、良外観を得るための成形条件幅が極端に狭い状態では様々な形状が存在する実際の生産に対しては使いにくいため、広い条件幅で良外観を得ることができる、使いやすい材料が当然ながら求められている。
特開2003-55414号公報 特開2002-194034号公報 特開2007-92005号公報 特開2008-120925号公報 国際公開第2015/008831号
本発明は、高剛性(曲げ弾性率が20GPaを超える)、高強度でありながら成形品の無機強化材の浮き等による外観不良及びソリ変形が少なく、かつムラのない均一なシボ外観を有する成形品を得ることができ、さらには非常に広い成形条件幅を有する、無機強化ポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するためにポリエステル系樹脂組成物の構成と特性を鋭意検討した結果、特定の樹脂を適正量含有し、各成分の比率を適正に調整することにより上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1] 共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)20~30質量部、ポリブチレンテレフタレート樹脂(B)1~5質量部、ポリカーボネート系樹脂(C)1~10質量部、ガラス繊維系強化材(D)60~70質量部及びエステル交換防止剤(E)0.05~2質量部を含有し、(A)~(E)の合計が100質量部である無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物であって、下記要件(1)及び(2)を満たすことを特徴とする無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
(1)無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物を射出成形して得られる成形品の曲げ弾性率が20GPaを超える。
(2)無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度をTC2(℃)とするとき、160℃≦TC2<180℃の範囲にある。
[2] 共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の共重合成分がイソフタル酸であり、その共重合量が全酸成分の10~40モル%であることを特徴とする[1]に記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[3] ガラス繊維系強化材(D)が、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.3~8である扁平断面ガラス繊維(D1)、繊維長30~150μmのガラス短繊維ミルドファイバー(D2)からなる群より選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
本発明によれば、ガラス繊維系強化材が多量に配合された樹脂組成物においても、金型内での樹脂組成物の固化(結晶化)速度(TC2が代替メジャーとなる)を特定の範囲に設定することにより、成形品表面のガラス繊維系強化材の浮き出しを抑制できるため、成形品の外観を大きく改善させることができる。さらに、特定のガラス繊維系強化材を特定の範囲で含有することにより、成形サイクルの大幅な増加をもたらすことなく、高強度・高剛性でありながら良好な鏡面外観の成形品を得ることができる上に、シボのある成形品に関して、漆黒感のある低輝度(グロス)でかつシボムラのない、非常に意匠性に優れた成形品を、広い成形条件幅で作製することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。以下に説明する、無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物を構成する各成分の含有量は質量部で記載し、(A)~(E)成分の合計が100質量部とした時の質量部である。
本発明における共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、本発明の樹脂組成物中の全ポリエステル樹脂中で主要成分の樹脂である。全ポリエステル樹脂中で、最も含有量が多いことが好ましい。構成する全酸成分を100モル%、構成する全グリコール成分を100モル%としたとき、1,4-ブタンジオールが80モル%以上かつ、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの合計が120~190モル%を占める樹脂である。共重合成分として、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合成分として含むことができる。中でも共重合成分として好ましいのはイソフタル酸であり、共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を構成する全酸成分を100モル%としたとき、イソフタル酸の共重合割合は10~40モル%が好ましく、20~40モル%がより好ましく、20~30モル%がさらに好ましい。共重合割合が10モル%未満では、金型への転写性が劣り、充分な外観が得にくい傾向があり、共重合量が40モル%を超えると、その添加量から成形サイクルの低下、離型性の低下を引き起こすことがある。
共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の分子量としては、具体的な共重合組成により若干異なるが、還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定)が0.4~1.5dl/gであることが好ましく、0.4~1.3dl/gがより好ましい。0.4dl/g未満ではタフネス性が低下する傾向があり、1.5dl/gを超えると流動性が低下する傾向がある。
共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の含有量は、20~30質量部であり、好ましくは25~30質量部である。20質量部未満であると、ガラス繊維等の浮きや金型転写不良による外観不良に対する成形条件幅が狭くなる傾向にあり、30質量部を超えると、成形品の外観は良好となるものの、成形サイクルが長くなってしまうため好ましくない。
本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂(B)は、特に制限されないが、構成する全酸成分を100モル%、構成する全グリコール成分を100モル%としたとき、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの合計が190モル%を超える樹脂であることが好ましく、共重合可能な成分としては、共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)と同様である。ポリブチレンテレフタレート樹脂(B)としては、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールからなるホモ重合体が好ましく用いられる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(B)の分子量としては、還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定)が、0.5~0.7dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.6~0.7dl/gの範囲である。0.5dl/g未満の場合は、樹脂のタフネス性が大きく低下するため、及び流動性が高すぎることによりバリが発生しやすくなる傾向がある。一方、0.7dl/gを超えると、本組成物では流動性が低下する影響でシボ成形品に対し均一な圧力がかかりにくくなるため、良好なシボ外観を得ることが困難になる(成形条件幅が狭くなる)傾向がある。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(B)の含有量は、1~5質量部であり、好ましくは2~5質量部であり、より好ましくは3~5質量部である。この範囲内にポリブチレンテレフタレート樹脂(B)を配合することにより、ガラス繊維等の浮きによる外観不良を起こすことなく、ヒケの発生による外観不良も起こさず、さらには離型性を良好にして成形サイクルを向上させることが可能となる。
本発明で用いられるポリカーボネート系樹脂(C)中のポリカーボネートは、溶剤法、すなわち、塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応または二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。ここで、好ましく用いられる二価フェノールとしてはビスフェノール類があり、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、つまりビスフェノールAがある。また、ビスフェノールAの一部または全部を他の二価フェノールで置換したものであっても良い。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンのような化合物やビス(3,5-ジブロモー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジクロロー4-ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類をあげることができる。ポリカーボネートは、二価フェノールを1種用いたホモポリマーまたは2種以上用いたコポリマーであっても良い。ポリカーボネート系樹脂(C)は、ポリカーボネートのみからなる樹脂が好ましく用いられる。ポリカーボネート系樹脂(C)としては、本発明の効果を損なわない範囲(20質量%以下)でポリカーボネート以外の成分(例えばポリエステル成分)を共重合した樹脂であっても良い。
本発明で用いられるポリカーボネート系樹脂(C)は特に高流動性のものが好ましく、300℃、荷重1.2kgで測定したメルトボリュームレート(単位:cm/10min)が20~100のものが好ましく用いられ、より好ましくは25~95、さらに好ましくは30~90である。20未満のものを用いると流動性の大幅な低下を招き、ストランド安定性が低下したり、成形性が悪化したりする場合がある。メルトボリュームレートが100超では、分子量が低すぎることにより物性低下を招いたり、分解によるガス発生等の問題が起こりやすくなる。
本発明で用いられるポリカーボネート系樹脂(C)の含有量は、1~10質量部であり、好ましくは2~8質量部である。1質量部未満であると、シボ外観に対する改善効果が少なく、10質量部を超えると結晶性の低下による成形サイクルの悪化や、流動性の低下による外観不良等が発生しやすくなるため、好ましくない。
本発明におけるガラス繊維系強化材(D)は、平均繊維径4~20μm程度で、カット長30~150μm程度のガラス短繊維であるミルドファイバー、平均繊維径1~20μm程度で、繊維長1~20mm程度に切断されたチョップドストランド状のものが好ましく使用できる。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。円形断面形状のガラス繊維としては、平均繊維径が4~20μm程度、カット長が2~6mm程度であり、ごく一般的なものを使用することができる。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円形、略長円形、略繭形であるものをも含み、偏平度が1.3~8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1~20μm、長径2~100μm程度のものを使用できる。これらのガラス繊維は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても良い。
ガラス繊維系強化材(D)は、外観、弾性率の観点から繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.3~8である扁平断面ガラス繊維(D1)が好ましく、ガラス浮きの抑制の観点から繊維長30~150μmのガラス短繊維ミルドファイバー(D2)が好ましい。ガラス繊維系強化材(D)としては、扁平断面ガラス繊維(D1)を必須成分として用いることがより好ましい。さらに好ましい態様は、扁平断面ガラス繊維(D1)とガラス短繊維ミルドファイバー(D2)を併用することである。この場合、ガラス繊維系強化材(D)の合計量を100質量%とすると、扁平断面ガラス繊維(D1)が60~100質量%、ガラス短繊維ミルドファイバー(D2)が0~40質量%であることが好ましく、より好ましくは扁平断面ガラス繊維(D1)が65~90質量%、ガラス短繊維ミルドファイバー(D2)が10~35質量%である。
ガラス繊維の平均繊維径、平均繊維長は電子顕微鏡観察にて測定することができる。
これらのガラス繊維は、有機シラン系化合物、有機チタン系化合物、有機ボラン系化合物及びエポキシ系化合物等の、従来公知のカップリング剤で予め処理をしてあるものが好ましく使用することが出来る。
本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、目的に応じて、また特性を損なわない範囲において、上記のガラス繊維以外の無機強化材を併用することができる。具体的には、一般的に市販されている、マイカ、ワラストナイト、針状ワラストナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ等が挙げられ、これらは一般的に公知のカップリング剤で処理されているものでも問題なく使用できる。ガラス繊維以外の無機強化材を併用した場合、本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の各成分の含有量を考える際、ガラス繊維とそれ以外の無機強化材を合わせた量をガラス繊維系強化材(D)の含有量とする。ガラス繊維とそれ以外の無機強化材を併用する場合、ガラス繊維系強化材(D)中、ガラス繊維は50質量%以上使用することが好ましく、70質量%以上使用することがより好ましく、80質量%以上使用することがさらに好ましい。ただし、無機強化材としては、大きな核剤効果を発現する(たとえばタルクのような)ものは、少量の添加であっても本発明において規定している材料の降温結晶化温度(TC2)の範囲を超えてくるため、好ましくない。
本発明におけるガラス繊維系強化材(D)の含有量は、剛性・強度の観点から60~70質量部であり、好ましくは62~65質量部である。
本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、ガラス繊維系強化材(D)の合計量を100質量%とすると、扁平断面ガラス繊維(D1)60~100質量%、ガラス短繊維ミルドファイバー(D2)0~40質量%にすることにより、高い機械特性を持ちながら、良好な外観をも得ることができる。
本発明で用いられるエステル交換防止剤(E)とは、その名のとおり、ポリエステル系樹脂のエステル交換反応を防止する安定剤である。ポリエステル樹脂同士のアロイ等では、製造時の条件をどれほど適正化しようとしても、熱履歴が加わることによりエステル交換は少なからず発生している。その程度が非常に大きくなると、アロイにより期待する特性が得られなくなってくる。特に、ポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートのエステル交換はよく起こるため、この場合はポリブチレンテレフタレートの結晶性が大きく低下してしまうので好ましくない。本発明では、(E)成分を添加することにより、特にポリブチレンテレフタレート樹脂(B)とポリカーボネート系樹脂(C)とのエステル交換反応が防止され、これにより適切な結晶性を保持することができる。
エステル交換防止剤(E)としては、ポリエステル系樹脂の触媒失活効果を有するリン系化合物を好ましく用いることができ、例えば、株式会社ADEKA製「アデカスタブAX-71」が使用可能である。
本発明で用いられるエステル交換防止剤(E)の添加量は、0.05~2質量部が好ましく、0.05~1質量部がより好ましく、0.1~0.5質量部がさらに好ましい。0.05質量部未満の場合は求めるエステル交換防止性能が発揮されない場合が多く、2質量部を超えて添加してもその効果の向上はあまり認められないばかりか、逆にガス等を増やす要因となる場合がある。
本発明の無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物は、ガラス繊維系強化材(D)を60~70質量部含有するため、無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物を射出成形して得られる成形品の曲げ弾性率が20GPaを超えることが可能である。(良好な外観が維持できる範囲で)曲げ弾性率は高いほどよく、好ましくは23GPa以上である。本発明の無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物では、曲げ弾性率の上限は、30GPa程度である。
本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度をTC2とするとき、この値が160℃以上180℃未満の範囲にあることを特徴とする。なお、上記TC2とは、示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素気流下で20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、その温度で5分間保持したあと、10℃/分の速度で100℃まで降温させることにより得られるサーモグラムの結晶化ピークのトップ温度である。TC2が180℃以上になると、ポリエステル樹脂組成物の結晶化速度が速くなり金型内での結晶化が早く起こるため、特に無機強化材を多く含む組成では射出圧力の伝播速度が低下する傾向になり、射出物と金型との密着が不十分になることや結晶化収縮の影響により、ガラス繊維等の無機強化材が成形品表面で目立つ、いわゆるガラス浮き等が発生し、成形品の外観が悪くなってしまう。その場合、金型温度を120~130℃と高温にして成形品の固化を遅延させる方法が考えられるが、この方法では金型内で射出圧力が高い中心部分では表面光沢、外観が改善されるが、射出圧力が加わりにくい末端部分では、ガラス浮き等の不良が発生しやすくなるため、均一に良好な外観を得られにくい。また金型から取り出された後の成形品の温度が高くなるため、成形品のソリが大きくなってしまう。
逆に、TC2が160℃未満の場合は、結晶化速度が遅くなりすぎ、結晶化が遅いゆえに金型への張り付き等による離型不良が発生したり、突き出し時に変形が起こったりすることがある。また、成形時の圧力によりシボのより奥深くまで樹脂がはいりこむことが容易になるため、金型内の樹脂の収縮時や離型の際にシボがずれたりすることでシボの深さが不均一になりやすくなり、良好なシボ外観を得ることが困難になってくる。本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、これらの成形時懸念点を鑑み、最適なTC2となるよう調整を実施したものであるため、金型温度が100℃以下でも良好な外観と成形性を得ることができる。
TC2の調整は共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリブチレンテレフタレート樹脂(B)の含有量の調整によって可能であり、これらの成分は収縮率や離型性等にも大きく影響するため、これらの調整でTC2を狙いの範囲にすることにより、良好な外観が得られる成形条件幅が極めて広く、他特性に悪影響を与えずに成形が可能となることを見出した。本発明によれば、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物100質量%中に、ガラス繊維系強化材(F)が60質量%を超えて含まれる、ガラス浮きが極めて生じやすい組成においても、共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の配合効果により広い成形条件幅で良好な外観を得ることができる。
したがって、本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を用いて、金型温度90℃程度で成形すると、幅広い射出速度、幅広い成形条件で良好な表面外観を得ることが可能であり、特にシボ加工の施した金型に対して、非常に漆黒感のある、シボムラのない均一な外観を有した成形品を得ることができる。
その他、本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、本発明としての特性を損なわない範囲において、公知の各種添加剤を含有させることができる。公知の添加剤としては、例えば顔料等の着色剤、離型剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、変性剤、帯電防止剤、難燃剤、染料等が挙げられる。これら各種添加剤は、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を100質量%とした時、合計で5質量%まで含有させることができる。つまり、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物100質量%中、前記(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)の合計は95~100質量%であることが好ましい。
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミド等が挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。
本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造する方法としては、上述した各成分及び必要に応じて各種安定剤や顔料等を混合し、溶融混練することによって製造できる。溶融混練方法は当業者に周知のいずれの方法を用いることが可能であり、単軸押し出し機、二軸押出し機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等を使用することができる。中でも二軸押出し機を使用することが好ましい。一般的な溶融混練条件としては、二軸押出し機ではシリンダー温度は240~290℃、混練時間は2~15分である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は、以下の方法によって測定したものである。
(1)ポリエステル樹脂の還元粘度
0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。(単位:dl/g)
(2)降温結晶化温度(TC2)
示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素気流下で20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、その温度で5分間保持したあと、10℃/分の速度で100℃まで降温させることにより得られるサーモグラムの結晶化ピークのトップ温度で求めた。
(3)成形品外観(ガラス繊維浮き、ヒケ)
シリンダー温度275℃、金型温度90℃にて、20mm×150mm×3mmの短冊状成形品を射出成形により成形する際、充填時間が1.6秒になる射出速度範囲で成形し、その外観をガラス繊維浮き、ヒケの観点からそれぞれ目視により観察した。
○:表面にガラス繊維等の浮きやヒケ(またはジェッティング)による外観不良がなく、良好
△:一部(特に成形品の末端部分等)に、若干の外観不良が発生している
×:目視で容易に確認できる外観不良が発生している
(4)離型性
上記(3)の条件で成形する際、射出工程終了後の冷却時間を7秒に設定したときの離型性で判定を実施した(トータル成形サイクルは20秒)。10ショット連続で成形可能な場合は「○」、10ショット未満で、もしくは毎ショット離型不良が発生する場合は「×」とした。
(5)曲げ弾性率
ISO-178に準じて測定した。試験片は、シリンダー温度275℃、金型温度90℃の条件で射出成形した。
実施例、比較例において使用した配合成分を次に示す。
[共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)]
(A-1)TPA/IPA//1,4-BD=70/30//100(モル%)の組成比の共重合体、東洋紡社製、東洋紡バイロン(登録商標)の試作品、還元粘度0.73dl/g
(略号はそれぞれ、TPA:テレフタル酸、IPA:イソフタル酸、1,4-BD:1,4-ブタンジオール成分を示す。)
(A-2)TPA/IPA//1,4-BD=80/20//100(モル%)の組成比の共重合体、東洋紡社製、東洋紡バイロン(登録商標)の試作品、還元粘度0.90dl/g
[ポリブチレンテレフタレート樹脂(B)]
(B)ポリブチレンテレフタレート:東洋紡社製 還元粘度0.58dl/g
[ポリカーボネート系樹脂(C)]
(C)ポリカーボネート:住化ポリカーボネート社製、「カリバー200-80」、メルトボリュームレート(300℃、荷重1.2kg)80cm/10min
[ガラス繊維系強化材(D)](繊維径、繊維長は電子顕微鏡観察による測定値)
(D-1)日東紡社製「CSG3PL830S」、偏平断面、長径と短径の比:2(短径10μm、長径20μm)、平均繊維長3mm
(D-2)セントラルグラスファイバー社製「EFH-100-31」、ミルドファイバー(シラン処理)、平均繊維長100μm、平均繊維径11μm
(D-3)日本電気硝子社製「T-120H」、円形断面、平均繊維長3mm、平均繊維径11μm
[エステル交換防止剤(E)]
(E)エステル交換防止剤:ADEKA社製 「アデカスタブAX-71」
実施例、比較例の無機強化ポリエステル樹脂組成物は、上記原料を表1に示した配合比率(質量部)に従い計量して、35φ二軸押出機(東芝機械社製)でシリンダー温度270℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練した。強化材以外の原料はホッパーから二軸押出機へ投入し、強化材はベント口からサイドフィードで投入した(強化材を2種以上使用した場合は別々のサイドフィードから投入した)。得られた無機強化ポリエステル樹脂組成物のペレットは、乾燥後、射出成形機にて各種評価用サンプルを成形した。評価結果は表1に示した。
Figure 0007120212000001
表1から明らかなように、実施例1~8では、曲げ弾性率20Gpa以上の高剛性でありながら、TC2が160℃≦TC2<180℃の範囲にあることで、比較的長尺の成形品に対し低速の成形条件においても良好な外観を得ることが可能であることがわかる。
一方、比較例1~5では、特に外観と離型性の両立が困難であることが、実施例に比べ劣る理由となる。すなわち、良好な外観および適正な成形サイクルによる連続成形が可能となる成形条件が見出せないか、もしくは非常にピンポイントとなってしまう可能性が高いため、さまざまな形状に対しての自由度がないばかりか、生産性が低下する問題がある。
本発明によれば、高強度、高剛性(曲げ弾性率20GPaを超える)で、かつ良好な表面外観の成形品を広い成形条件幅で安定して得ることができるため、産業界に寄与すること大である。

Claims (2)

  1. 共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)20~30質量部、ポリブチレンテレフタレート樹脂(B)1~5質量部、ポリカーボネート系樹脂(C)1~10質量部、ガラス繊維系強化材(D)60~70質量部及びエステル交換防止剤(E)0.05~2質量部を含有し、(A)~(E)の合計が100質量部である無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物であって、前記共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の共重合成分がイソフタル酸であり、その共重合量が全酸成分の10~40モル%であり、前記ガラス繊維系強化材(D)が、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.3~8である扁平断面ガラス繊維(D1)、繊維長30~150μmのガラス短繊維ミルドファイバー(D2)からなる群より選ばれる1種または2種以上を含み、下記要件(1)及び(2)を満たすことを特徴とする無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
    (1)無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物を射出成形して得られる成形品の曲げ弾性率が20GPaを超える。
    (2)無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度をTC2(℃)とするとき、160℃≦TC2<180℃の範囲にある。
  2. 請求項1に記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
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