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JP7147326B2 - 成分濃度演算装置及び成分濃度演算方法 - Google Patents
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成分濃度演算装置及び成分濃度演算方法 Download PDF

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本発明は、溶鉄の精錬処理における成分濃度を予測する成分濃度演算装置及び成分濃度演算方法に関する。
溶鉄の精錬処理では、溶銑の脱硫処理が行われている。溶銑予備処理での脱硫は、例えば図10に示すような機械撹拌式脱硫装置(以下、「KR」ともいう。1を用いて実施される。KR1による脱硫処理は、図10に示すように、鍋10内の溶銑5に脱硫剤を添加し、インペラー21を駆動装置25により回転させて脱硫反応を促進させて行われる。溶銑5中に存在するSは製造される鋼板の品質を低下させる要因となるため、KR1による脱硫処理後の溶銑5中のS濃度(以下、「処理後S濃度」ともいう。)を、転炉へ引き渡す際の目標S濃度まで低減させることは重要である。一方で、KR処理において処理後S濃度を目標S濃度以下とすることを確実に達成するために脱硫剤を過剰投入してしまうと、製造コストを増加させることになる。このため、KR処理の操業条件の設定にあたっては、処理後S濃度を精度よく推定できることが望ましい。
例えば特許文献1には、溶銑予備処理操業における処理剤の投入条件を精度よく、かつ、実用上のばらつきを加味して、適正にガイダンスすることが可能な溶銑予備処理操業における処理剤の投入条件ガイダンス方法が開示されている。特許文献1では、ニューラルネットワークに処理剤投入条件を含む操業条件を変化させて繰り返し入力することにより処理剤の投入条件を決定し、実用上のばらつきを加えて評価することで、適切な処理剤投入条件を求める。これにより、処理剤投入条件と処理後の成分濃度との対応特性が線形性を示すか非線形性を示すかにかかわらず、推定精度を高めている。
また、特許文献2には、転炉工程における溶鉄炭素濃度を予測するモデルを構築することで、吹錬末期の酸素供給量を適正にガイダンスする方法が開示されている。特許文献2では、1次反応モデルにおける平衡状態の成分濃度と反応速度係数を推定するモデルを重回帰分析によって構築することによって、物理現象に則した可読性の高い予測モデルを構築している。
特開平8-269518号公報 特開2001-11520号公報
加藤賢悟、他2名、「Lasso分位点回帰の理論と損害保険への応用」、日本統計学会誌、2009年3月、Vol.38 No.2、p121-149
しかし、上記特許文献1の予測モデルは、入出力の関係に物理法則を伴わないブラックボックスモデリングにより構築されているため、物理現象に則さない予測を行ってしまうリスクが高く、制御には適さない。また、ブラックボックスモデリングであるため、モデルの可読性が低く予測結果に納得感を得られにくいといった課題がある。
さらに、上記特許文献2の手法では、平衡状態の成分濃度を推定するために、処理の末期を平衡状態であると仮定したデータを用いて予測モデルを構築している。このため、仮定が間違っていた場合、あるいは、平衡状態と仮定できるデータが十分に収集できない場合、予測モデルの精度が著しく劣化してしまうリスクがある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、溶鉄の精錬処理において、1次反応モデルにおける平衡状態の成分濃度及び反応速度係数を操業データに応じて推定することで、処理後成分濃度を精度良く予測することが可能な、新規かつ改良された成分濃度演算装置及び成分濃度演算方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、溶鉄の精錬処理における成分濃度を予測する成分濃度演算装置であって、過去の操業における実績データと下記式(A)で表される1次反応式とに基づいて、処理前の前提条件と処理に関する操業条件とを入力として、平衡状態の成分濃度[A]と反応速度係数kとを推定する動的パラメータ推定モデル、及び、動的パラメータ推定モデルを用いて推定された平衡状態の成分濃度[A]と反応速度係数kとに基づき成分濃度推定モデルを構築するモデル構築部と、成分濃度推定モデルを用いて、反応処理後の成分濃度[A]を推定する成分濃度推定部と、を備える、成分濃度演算装置が提供される。
Figure 0007147326000001
ここで、[A]は、反応処理前の成分濃度である。
成分濃度推定モデルは、動的パラメータ推定モデルによって算出される平衡状態の成分濃度[A]、反応速度係数k、及び、処理時間tを入力として、反応処理後の成分濃度[A]を出力してもよい。
動的パラメータ推定モデルは、ニューラルネットワークにより構築してもよい。
成分濃度推定部は、処理後成分濃度の分位点を出力してもよい。
成分濃度演算装置は、成分濃度推定モデルに基づいて、予測成分濃度が予め設定された成分濃度以下となる操業条件を探索する最適解探索部をさらに備えてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、溶鉄の精錬処理における成分濃度を予測する成分濃度演算方法であって、過去の操業における実績データと下記式(A)で表される1次反応式とに基づいて、処理前の前提条件と処理に関する操業条件とを入力として、平衡状態の成分濃度[A]と反応速度係数kとを推定する動的パラメータ推定モデル、及び、動的パラメータ推定モデルを用いて推定された平衡状態の成分濃度[A]と反応速度係数kとに基づき成分濃度推定モデルを構築するモデル構築ステップと、成分濃度推定モデルを用いて、反応処理後の成分濃度[A]を推定する成分濃度推定ステップと、を含む、成分濃度演算方法が提供される。
Figure 0007147326000002
ここで、[A]は、反応処理前の成分濃度である。
以上説明したように本発明によれば、溶鉄の精錬処理において、1次反応モデルにおける平衡状態の成分濃度及び反応速度係数を操業データに応じて推定することで、処理後成分濃度を精度良く予測することができる。
本発明の一実施形態に係る操業条件演算装置の機能構成を示すブロック図である。 同実施形態に係る予測モデルの一例を示す説明図である。 同実施形態に係る操業条件演算処理を示すフローチャートである。 図2に示した予測モデルによる予測処理後S濃度の予測精度評価結果を示すグラフである。 ある1チャージの実績に対して処理時間のみを変化させたときの、予測モデルにより得られる予測処理S濃度を示すグラフである。 ある1チャージの実績に対して処理時間のみを変化させたときの、R-dipと予測処理後S濃度との関係を示すグラフである。 予測モデルに99%分位点回帰モデルを適用した場合の、予測処理後S濃度の予測精度評価結果を示すグラフである。 副材量投入量に関して、過去の実績データから混合ガウス分布によって推定した確率密度関数に基づき設定された解の探索範囲の一例を示すグラフである。 同実施形態に係る操業条件演算装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。 機械撹拌式脱硫装置(KR)の概略構成を示す説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について、機械撹拌式脱硫装置(KR)の処理後S濃度予測を例に詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.操業条件演算装置の機能構成>
まず、図1及び図2に基づいて、本発明の一実施形態に係る操業条件演算装置について説明する。図1は、本実施形態に係る操業条件演算装置100の機能構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る予測モデルの一例を示す説明図である。
本実施形態に係る操業条件演算装置100は、溶銑の脱硫処理における操業条件の最適化処理を行うための情報処理装置である。操業条件演算装置100は、図1に示すように、実績データ取得部110と、モデル構築部120と、制約条件設定部130と、最適解探索部140と、出力部150とを備える。
実績データ取得部110は、精錬処理後成分濃度を推定するモデルの構築に用いる過去の操業における実績データを、実績データ記憶部200から取得する。実績データは、精錬処理後成分濃度としてKR処理後S濃度の推定モデルの構築においては、KR処理において測定された測定値あるいは測定値に基づき算出される値を含む。例えば、溶銑温度、溶銑重量、処理前C濃度、処理前Si濃度、処理前Mn濃度、処理前P濃度、処理前S濃度、湯面高さ、インペラー高さと撹拌速度との関数(R-dip)、インペラー使用回数、粉CaO装入量、2次スラグ装入量、Al濃度等が実績データとして取得される。実績データ取得部110は、所定数の過去の操業における実績データを取得し、モデル構築部120及び制約条件設定部130へ出力する。
モデル構築部120は、実績データ取得部110により取得された実績データに基づいて、処理後S濃度を出力する予測モデルを構築する。本実施形態に係るモデル構築部120により構築される予測モデルは、物理的な解釈のしやすい脱硫反応モデルに基づくグレイボックスモデルである。具体的には、例えば図2に示すような予測モデルが構築される。
脱硫速度式を下記式(1)に示す。なお、Kは、反応速度係数であり、下記式(1-1)で表される。Aは反応界面積、kは物質移動係数、Vは溶鉄重量、[%S]は溶鉄S濃度、[%S]は平衡点における溶鉄S濃度である。
Figure 0007147326000003
上記式(1)より、脱硫時間tにおける溶鉄S濃度は、下記式(2)で表すことができる。なお、[%S]はKR処理開始時の溶鉄S濃度、tは巻き込み完了時間である。
Figure 0007147326000004
上記式(2)のうち、平衡点における溶鉄S濃度[%S]及び係数A・kは、操業条件によって変化する未知の値である。ここで、巻き込み完了時間tの影響は係数Kに内包されると仮定し、t=0とすると、推定すべき動的パラメータは、平衡点における溶鉄S濃度[%S]及び係数A・kの2つとなる。一般的には、操業条件によって変化する複数の動的パラメータを同時に推定せずに、平衡点における溶鉄S濃度[%S]の値を、例えば[%S]=4[e-3%]に固定したり、KR処理は平衡状態に至らない領域と仮定して[%S]=0に固定したりすることで、係数A・kを推定していた。これに対し、本願発明者は上記式(2)において溶鉄S濃度[%S]は2つの関数F(x)、G(x)の組み合わせで表現可能であることに着目し、下記式(3)に示すように、関数を同時推定することを想到した。
Figure 0007147326000005
関数F(x)は、平衡論的寄与に関する関数であり、平衡点における溶鉄S濃度を模擬している。平衡点における溶鉄S濃度は、溶銑温度、スラグ組成、脱硫材、成分及びメタル重量に依存する。さらに、平衡点における溶鉄S濃度は、粒が細かくなると平衡点も変化することから撹拌方法にも依存するとも言われている。
関数G(x)は、速度論的寄与に該当する関数である。速度論の観点からは、溶鉄S濃度は、撹拌方法だけでなく、巻き込み完了時間という観点から溶銑温度や成分にも依存すると考えられる。
このように、複数の関数(本実施形態では関数F(x)、G(x))を推定しなければいけないが、F(x)、G(x)の真値が分からないため、機械学習手法等を用いて個別に関数を推定することはできない。そこで、本実施形態では、図2に示すように、まず関数F(x;w)と関数G(x;w)とを、上記式(3)に基づく合成モデル(成分濃度推定モデル)により合成して得られる処理後S濃度の予測値y^と、実績の処理後S濃度yで表現される損失関数J(y、y^)を最小化するようなパラメータw、wとを算出することで、F(x)、G(x)を同時に推定する。これにより、入力と出力の訓練データのみ用意すれば2つの動的パラメータである関数F(x)、G(x)を同時に推定することが可能となる。
動的パラメータを推定する動的パラメータ推定モデルである関数F(x;w)、G(x;w)を表す関数には、例えばニューラルネットワークや重回帰モデル、多項式回帰モデル等を用いればよい。機械学習モデルにより推定すべきパラメータは、関数F(x;w)、G(x;w)のパラメータW=[w,w]である。ここで、損失関数を下記式(4)のように誤差の2乗和として定義する。なお、yは実績処理後S濃度、y^は予測モデルの出力である予測処理後S濃度を表す。なお、本明細書においては予測処理後S濃度を「y^」と表すが、これは、図2に示す予測モデルの出力として「y」の上部に「^」が記載されたものと同意である。
Figure 0007147326000006
パラメータw,wは、下記式(5)のように更新される。なお、αは学習係数、n、nはF(x;w)、G(x;w)のパラメータの個数である。
Figure 0007147326000007
以上より、図2に示す予測モデルの出力である予測処理後S濃度y^は、下記式(6)で表される成分濃度推定モデルによって求められる。
Figure 0007147326000008
このように、モデル構築部120は、図2に示すように脱硫反応モデルに基づき、物理現象を考慮した予測モデルを構築する。例えば、上記特許文献1では、溶銑予備処理における処理剤の投入条件を予測モデルにより推定するが、この予測モデルは、ニューラルネットワークにより構築された所謂ブラックボックスモデルである。これに対して、本実施形態に係るモデル構築部120により構築される予測モデルは、脱硫反応モデルに基づくグレイボックスモデルであり、予測精度を向上させるだけでなく、物理的に解釈し易いモデルとなっている。
なお、一般的な回帰モデルは期待値を予測するモデルであるため、このようなモデルにより得られた予測値に基づきKR処理の制御を行うことは脱硫不足を招く可能性がある。そこで、KR処理で脱硫不足とならないように、図2に示す予測モデルを、予測処理後S濃度が実績処理後S濃度を所定の確率で上回るモデルとするため、分位点回帰モデルをさらに適用してもよい。分位点回帰モデルは、被説明変数の分布の分位点を説明する回帰モデルである(例えば、非特許文献1参照)。分位点回帰モデルでは、被説明変数の1/4分位、中央値(1/2分位)、3/4分位それぞれの分位点に対応する被説明変数の分布の分位点を持つ線形モデルを構築している。推定の際には、推定対象の分位点に対応する線形モデルを用いて、任意の説明変数での被説明変数の分布の分位点を推定する。例えば、図2に示す成分濃度推定モデルの後に、99%分位点回帰モデルを設定することで、99%の確率で実績処理後S濃度が予測処理後S濃度より大きくすることができ、KR処理での脱硫不足をより確実に防ぐことができる。
制約条件設定部130は、操業条件に対する制約条件を確率密度関数により設定し、処理後成分濃度に対する制約条件を設定する。操業条件に対する制約条件を「尤度制約条件」ともいい、処理後成分濃度に対する制約条件を「処理後成分濃度制約条件」ともいう。解とする操業条件の探索が、処理後成分濃度の推定モデルの信頼できる範囲内で行われることで、実行可能な操業条件を求めることができる。そこで、制約条件設定部130により、解を探索する範囲を制約条件として設定する。
尤度制約条件の設定は、具体的には、制約条件設定部130は、まず、処理後成分濃度の推定モデルの構築に用いた訓練データから、説明変数の全てまたは一部の説明変数の同時確率密度関数(例えば、混合ガウス分布)から推定する。そして、制約条件設定部130は、推定した密度関数を基に訓練データの対数尤度を計算し、パラメトリック(対数正規分布等)あるいはノンパラメトリック(カーネル密度推定法等)な手法によって推定される対数尤度の1次元確率密度関数を基に推定モデルが信頼できる管理限界を求める。この管理限界が尤度制約条件として設定される。また、処理後成分濃度制約条件には、処理後成分濃度の上限値または下限値のうち少なくともいずれか一方が規定される。
なお、制約条件設定部130は、最小化すべき操業コストを評価関数としてさらに設定してもよい。制約条件設定部130は、後述の最適解探索部140により操業条件を探索する際に操業コストを考慮する場合にのみ、操業コストに関する評価関数を設定し、最適解探索部140へ出力する。
最適解探索部140は、モデル構築部120により構築された予測モデルを用いて、尤度制約条件及び処理後成分濃度制約条件を満たす操業条件を探索する。また、最適解探索部140は、操業コストを考慮して操業条件を探索する場合には、推定モデルを用いて、尤度制約条件及び処理後成分濃度制約条件を満たし、かつ、最小化すべきコストを設定した評価関数を最小化する操業条件を探索する。なお、最適解探索部140は、操業条件の探索において、モデル構築部120により構築された予測モデルを用いて反応処理後の成分濃度を推定しており、成分濃度推定部としての機能を有している。最適解探索部140は、探索の結果、最適かつ実行可能な操業条件を、最適操業条件とする。最適操業条件は、出力部150を介して出力してもよい。出力部150は、例えば情報を表示可能なディスプレイ、音声出力可能なスピーカ等である。
<2.操業条件演算処理>
図3に基づき、本実施形態に係る操業条件演算装置100による操業条件演算処理について説明する。図3は、本実施形態に係る操業条件演算処理を示すフローチャートである。
(S100:予測モデル構築処理)
まず、操業条件演算装置100は、実績データ取得部110により実績データ記憶部200から過去の操業における実績データを取得すると、モデル構築部120により、脱硫反応モデルに基づく予測モデルを構築する。具体的には、例えば図2に示すような予測モデルが構築される。
図2に示す予測モデルは、物理式に則った上記式(6)で表される成分濃度推定モデルにより予測処理後S濃度を出力するが、上述したように、脱硫時間tにおける溶鉄S濃度を出力するためには、平衡点における溶鉄S濃度[%S]及び係数A・kの2つの動的パラメータを設定する必要がある。従来、脱硫反応モデルにおいてこれらの動的パラメータをある値に仮定し、処理後S濃度が算出されていたが、本実施形態に係る予測モデルは、平衡点における溶鉄S濃度[%S]及び係数A・kの2つの動的パラメータも機械学習モデルにより合わせて推定されるように構成される。
すなわち、図2に示すように、平衡論的寄与に関する関数F(x)の出力値、速度論的寄与に関する関数G(x)の出力値、処理時間t、溶鉄重量V、及び、KR処理前のS濃度[%S]が成分濃度推定モデルへ入力され、予測処理後S濃度が出力される。このとき、平衡論的寄与に関する関数F(x;w)の出力値と、速度論的寄与に関する関数G(x;w)の出力値とは、動的パラメータ推定モデルにより算出される。モデル構築部120は、これらの機械学習モデルを上記式(5)に基づき更新し、損失関数が最小となるときの関数F(x;w)、G(x;w)を決定し、最適解探索部140にて用いる予測モデルを構築する。
ここで、図2に示した予測モデルによる予測処理後S濃度の予測精度評価結果を図4に示す。予測モデルの構築にあたり、全5780チャージの実績データのうち、前半4000チャージの実績データを予測モデル構築用の訓練データとし、残りの1780チャージの実績データをモデル評価用の評価データとして使用した。関数F(x;w)、G(x;w)を表す動的パラメータ推定モデルは、それぞれ中間層が1層のニューラルネットワークとした。図4の評価データについての予測結果に示すように、予測処理後S濃度と実績処理後S濃度とはおおよそ一致しており、RMSE(Root Mean Squared Error)も1.644と低い値を示していた。
また、ニューラルネットワークにより推定された速度論的寄与に関する関数G(x)に基づき算出した値G(x)/Vと、溶銑見込み温度との相関関係を調べたところ、強い正の相関があることが確認された。一方で、実験において、反応速度定数Kと溶銑温度との間にも正の相関があることが確認され、反応速度定数Kのオーダーが値G(x)/Vと近いことも確認された。これより、値G(x)/Vは反応速度定数Kを模擬しているとみなすことができると考えられる。
また、図5に、ある1チャージの実績に対して処理時間のみを変化させたときの、予測モデルにより得られる予測処理S濃度を示す。図5に示すように、処理時間の経過とともに予測処理後S濃度は減少し、次第に平衡点に達することを確認できる。同様に、ある1チャージの実績に対して処理時間のみを変化させたときの、R-dipと予測処理後S濃度との関係を図6に示す。図6に示すように、R-dipと予測処理後S濃度との関係は2次関数のような曲線で表されており、既知の物理的な知見とも一致する。これより、ニューラルネットワークによるグレイボックスモデルを予測モデルとして用いることで、予測精度を向上させつつも、物理的な解釈をし易いモデルを構築することができることがわかる。
さらに、図2に示す予測モデルを、予測処理後S濃度が実績処理後S濃度を所定の確率で上回るモデルとするため、99%分位点回帰モデルを適用した場合の、予測処理後S濃度の予測精度評価結果を図7に示す。図7は、図4と同様の実績データを用いて、分位点回帰モデルを含む予測モデルを構築した。図7の評価データについての予測結果に示すように、99%の確率で実績処理後S濃度が予測処理後S濃度より大きくすることができていることがわかる。
(S110:制約条件設定処理)
次いで、制約条件設定部130により、実績データの分布領域を規定する確率密度関数を制約条件として設定する(S110)。予測モデルの信頼できる範囲内で解を探索するため、本実施形態では複雑な同時確率密度関数を推定可能な混合ガウス分布による信頼度判定を実施する。
具体的には、まず、期待値予測モデルの構築に用いた訓練データから、説明変数の全てまたは一部の説明変数の同時確率密度関数(混合ガウス分布を仮定)を推定する。そして、制約条件設定部130は、推定した密度関数を基に訓練データの対数尤度を計算し、パラメトリック(対数正規分布等)あるいはノンパラメトリック(カーネル密度推定法等)の手法によって推定される対数尤度の確率密度関数を基に予測モデルが信頼できる管理限界を求める。制約条件設定部130は、この管理限界を制約条件として設定し、最適解探索部140へ出力する。
図8に、副材量投入量に関して、過去の実績データから混合ガウス分布によって推定した確率密度関数に基づき設定された解の探索範囲(すなわち、制約条件)の一例を示す。図8では、分布1に粉CaO装入量-二次スラグ装入量、分布2に粉CaO装入量-処理時間、分布3に粉CaO装入量-B-Alについて、訓練データの分布と推定された確率密度関数により設定される解の探索範囲とを示している。図8に示すように、確率密度関数により設定される解の探索範囲は、訓練データの分布に合致している。制約条件設定部130は、確率密度関数により設定された解の探索範囲から外れる実績データを除外する制約条件を生成し、最適解探索部140へ出力する。また、制約条件設定部130は、処理後成分濃度制約条件として、処理後成分濃度の上限値または下限値のうち少なくともいずれか一方を設定し、最適解探索部140へ出力する。なお、操業条件を探索する際に操業コストを考慮する場合には、上記制約条件とともに、制約条件設定部130によって、最小化すべき操業コストを評価関数として設定し、最適解探索部140へ出力すればよい。
(S120:最適解探索処理)
その後、最適解探索部140により、制約条件設定部130により構築された予測モデルと制約条件設定部130により設定された制約条件とに基づき、最適操業条件を探索する。すなわち、最適解探索部140は、下記式(7)~(10)で表される最適化問題を解き、最適解を求める。下記式(7)において、関数f(u,v)は分位点回帰モデルを表す関数であり、関数g(a)は制約条件を表す関数である。なお、分位点回帰モデルを表す関数f(u,v)及び確率密度関数p(u)は非線形関数であるため、数理解法で解くことができない。このため、本実施形態では最適化手法として進化的アルゴリズムの1つである差分進化法を用いる。
Figure 0007147326000009
なお、上記変数は以下の通りである。
Figure 0007147326000010
決定変数uは、最適操業条件として求める対象変数であり、例えば、インペラー初期高さ、処理時間、撹拌速度、粉CaO装入量、二次スラグ装入量、B-Alとする。重みは、KR処理のコストに関し、各決定変数uに対してそれぞれ設定される。また、訓練データが分布している領域内で解を探索するために、対数数度関数(すなわち、確率密度関数)p(u)が対数尤度閾値である管理限界α以下となるように、尤度制約条件として、式(8)の制約式が設定される。さらに、処理後成分濃度が目標上限S濃度以下となるように、処理後成分濃度制約条件として、式(9)の制約式が設定される。さらに、各決定変数の値が指定された上下限値[u lower,u upper]の範囲に収まるように、尤度制約条件として、式(10)の制約式が設定される。具体的には、例えば下記表1に示すような値が設定される。
Figure 0007147326000011
式(1)で表される評価関数JはKR処理における操業コストとして副材コストを表している。最適解探索部140は、上記式(7)及び式(8)~(10)で表される最適化問題を解き、処理後S濃度の成分適中率の向上とコスト削減を達成する最適操業条件を求める。
<3.ハードウェア構成>
次に、図9を参照しながら、本発明の実施形態に係る操業条件演算装置100のハードウェア構成について、詳細に説明する。図9は、本実施形態に係る操業条件演算装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
操業条件演算装置100は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、操業条件演算装置100は、さらに、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、操業条件演算装置100内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータなどを記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータなどを一次記憶する。これらはCPUバスなどの内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、操業条件演算装置100の操作に対応したPDAなどの外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。操業条件演算装置100のユーザは、この入力装置909を操作することにより、操業条件演算装置100に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、操業条件演算装置100が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、操業条件演算装置100が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データなどからなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、操業条件演算装置100の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイスなどにより構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、操業条件演算装置100に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディアなどである。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)などであってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器などであってもよい。
接続ポート917は、機器を操業条件演算装置100に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS-232Cポートなどがある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、操業条件演算装置100は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイスなどで構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カードなどである。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデムなどであってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IPなどの所定のプロトコルに則して信号などを送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワークなどにより構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信などであってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る操業条件演算装置100の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100 操業条件演算装置
110 実績データ取得部
120 モデル構築部
130 制約条件設定部
140 最適解探索部
150 出力部
200 実績データ記憶部

Claims (6)

  1. 溶鉄の精錬処理における成分濃度を予測する成分濃度演算装置であって、
    反応処理後の成分濃度[A]を推定する成分濃度推定モデルを構築するモデル構築部と、
    前記成分濃度推定モデルを用いて、反応処理後の成分濃度[A]を推定する成分濃度推定部と、
    を備え
    前記モデル構築部は、
    下記式(A)で表される1次反応式において、操業条件によって変化する動的パラメータである平衡状態の成分濃度[A] 及び反応速度係数kを、それぞれ、操業条件x で表される関数F(x )及び操業条件x で表される関数G(x )の動的パラメータ推定モデルで置き換え、
    前記関数F(x )及び前記関数G(x )に置き換えた下記式(A)において、前記関数F(x )のパラメータw 及び前記関数G(x )のパラメータw を、過去の操業における実績データを用いて損失関数を最小化するように設定することにより、前記平衡状態の成分濃度[A] 及び前記反応速度係数kを同時に推定し、
    推定された前記平衡状態の成分濃度[A] 及び前記反応速度係数kを用いて、前記成分濃度推定モデルを構築する、成分濃度演算装置。
    Figure 0007147326000012
    ここで、[A] は反応処理前の成分濃度、tは処理時間である。
  2. 前記成分濃度推定モデルは、前記動的パラメータ推定モデルによって算出される前記平衡状態の成分濃度[A]、前記反応速度係数k、及び、処理時間tを入力として、反応処理後の成分濃度[A]を出力する、請求項1に記載の成分濃度演算装置。
  3. 前記動的パラメータ推定モデルは、ニューラルネットワークにより構築される、請求項1または2に記載の成分濃度演算装置。
  4. 前記成分濃度推定部は、処理後成分濃度の分位点を出力する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成分濃度演算装置。
  5. 前記成分濃度推定モデルに基づいて、予測成分濃度が予め設定された成分濃度以下となる操業条件を探索する最適解探索部を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の成分濃度演算装置。
  6. 溶鉄の精錬処理における成分濃度を予測する成分濃度演算方法であって、
    反応処理後の成分濃度[A]を推定する成分濃度推定モデルを構築するモデル構築ステップと、
    前記成分濃度推定モデルを用いて、反応処理後の成分濃度[A]を推定する成分濃度推定ステップと、
    を含み、
    前記モデル構築ステップでは、
    下記式(A)で表される1次反応式において、操業条件によって変化する動的パラメータである平衡状態の成分濃度[A] 及び反応速度係数kを、それぞれ、操業条件x で表される関数F(x )及び操業条件x で表される関数G(x )の動的パラメータ推定モデルで置き換え、
    前記関数F(x )及び前記関数G(x )に置き換えた下記式(A)において、前記関数F(x )のパラメータw 及び前記関数G(x )のパラメータw を、過去の操業における実績データを用いて損失関数を最小化するように設定することにより、前記平衡状態の成分濃度[A] 及び前記反応速度係数kを同時に推定し、
    推定された前記平衡状態の成分濃度[A] 及び前記反応速度係数kを用いて、前記成分濃度推定モデルを構築する、成分濃度演算方法。
    Figure 0007147326000013
    ここで、[A] は反応処理前の成分濃度、tは処理時間である。
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