以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。図1Aおよび図1Bに示されているように、本実施形態に係る内視鏡用牽引クリップ1は、クリップ本体2、コイルバネ3および有端輪状部材4を概略備えて構成されており、クリップ本体2と有端輪状部材4とを接続する牽引バネとして、コイルバネ3を用いるバネ付きクリップである。
クリップ本体2は、連結板部(連結部)21、一対のアーム部22および締め付けリング24を備えている。連結板部21は、略U字形状に折り曲げられた形状を有し、U字形状の各端部にそれぞれ連続して、外力が作用しない状態で先端側が略V字状に開脚して配置されたアーム部22が一体的に形成されている。
締め付けリング24は、アーム部22の基端側の連結板部21にスライド可能に外嵌されたリング状に形成された部材である。締め付けリング24は、インナーシース52およびインナーシース52に対して進退自在に配置され、該連結板部21に着脱可能に連結される開閉フック51を有するクリップ装置5(図5A~図5C参照、詳細後述)を用いて、スライドされる部材である。締め付けリング24は、連結板部21に開閉フック51が連結された状態で、開閉フック51をインナーシース52の先端部から引き込むことにより、インナーシース52の先端部で押されてスライドして、アーム部22を閉脚させる。
各アーム部22の先端部には、爪部23が一体的に形成されている。爪部23は、アーム部22の先端において、内側(すなわち、閉じ方向)を指向して折り曲げられることにより、形成されている。各爪部23は、その先端の中間部分に凹陥する切欠部(不図示)を有している。
クリップ本体2を構成する連結板部21と、一対のアーム部22と、一対の爪部23とは、一枚の薄く細長い板材を折り曲げ成形することにより形成されている。クリップ本体2を構成する板材の板厚は、特に限定されないが、好ましくは0.10~0.30mmである。板材としては、弾性を有する板材が好ましく、たとえばステンレス鋼が用いられる。
アーム部22は、図1Bに示されているように、それぞれ、基端部22aと、把持部22bとを有している。各アーム部22の把持部22bには、それぞれ貫通部22cが形成されている。これらの貫通部22cは、アーム部22(把持部22b)の所望の強度を損なうこと無く形成されている。これらの貫通部22cは、アーム部22が締め付けリング24で閉脚された際の弾性(反発力)調整の観点から形成されている。これらの貫通部22cの一方は、詳細は後述するが、コイルバネ3をクリップ本体2に連結するためにも用いられる。
連結板部21には、締め付けリング24がスライド可能に嵌め込まれている。締め付けリング24は、略円筒状のリング部材から構成されている。ただし、締め付けリング24は、線材をコイル状に巻回してなるスプリングで構成されてもよい。締め付けリング24は、その内側の案内孔に、連結板部21が挿通され、連結板部21の外周とアーム部22の基端部22aの外周との間を軸方向に移動(スライド)可能に装着(外嵌)されている。なお、締め付けリング24の材質としては、金属が好ましく、たとえばステンレス鋼が用いられる。
締め付けリング24が、図1Aまたは図1Bに示されているように、後方寄り(連結板部21)に配置された状態では、アーム部22は自己の弾性により開いた(開脚した)状態になっており、必要に応じて、図1Cに示されているように、締め付けリング24を先端寄りの位置(基端部22a)に移動(スライド)させることにより、アーム部22を閉じた(閉脚した)状態にすることができる。
コイルバネ3は、ステンレス鋼等の金属素線を巻回して形成された引張コイルバネである。コイルバネ3は、図2Aおよび図2Bに示されているように、金属素線を巻回してなる本体部31の一端にクリップ本体2に連結するためのクリップ用フック部32を、本体部31の他端に有端輪状部材4を装着(取り付ける)ための有端輪状部材用フック部33を有している。クリップ用フック部32は、略円筒状に巻回された金属素線(本体部31)の一端の略1周分(1周分以上であってもよい)に相当する部分を、本体部31の軸線に直交する面に対して略90度に折り曲げることにより形成されている。なお、クリップ用フック部32を別途作製して巻回された金属素線の一端に溶接固定するようにしてもよい。
有端輪状部材用フック部33は、本体部31の他端の一部を略D字を描くように内側に折り曲げて、直線状に成形することにより形成されている。該直線状に成形された有端輪状部材用フック部33の先端部33aは、後述する有端輪状部材4を連結した際に、該有端輪状部材4の抜けを防止する観点から、図2Bに示されているように、巻回された金属素線(本体部31)にまで至るようにすることが好ましい。ただし、有端輪状部材4を連結した後に接着等により固定する場合には、該直線状に成形された直線部の先端は、巻回された金属素線(本体部31)に至っていなくてもよい。
有端輪状部材4は、図3Aおよび図3Bにも示されているように、クリップ本体2の一部にコイルバネ3を介して取り付けられる部材であり、クリップ装置5の開閉フック51でその一部を把持可能(連結可能)な有端ループ状に形成されたループ部41、およびコイルバネ3に連結するためのアダプタ部42を備えて構成されている。
有端輪状部材4のループ部41は、文具のゼムクリップに類似する形状を有する部材であり、外力が作用しない状態で、弾性を有する線材(素線)の一端4a側の一部41aと他端4b側の一部41bとが、互いに逆向きに側方から離間可能に近接または当接(圧接を含む)するように形成された部材である。なお、以下では、簡単のため、有端輪状部材4の弾性を有する線材の一端4a側の一部と他端4b側の一部とが互いに側方から離間可能に近接または当接するように形成された部分を、重複部41a,41bといい、該線材の一端4a側の当該一部を一端側重複部41aと、他端4b側の当該一部を他端側重複部41bという場合がある。
有端輪状部材4のループ部41は、本実施形態では、一対の直線状部の両端にそれぞれ半円弧状部を配置した略長円形状となっており、重複部41a,41bは、該一対の直線部の一方の一部に設けられている。なお、重複部41a,41bは、該一対の直線部の一方の全部に設けられていてもよいし、重複部41a,41bの一部または全部が、半円弧状部に設けられていてもよい。
本実施形態では、一端側重複部41aは一端4aに至っており、他端側重複部41bは他端4bには至っておらず、他端側重複部41bよりもさらに他端4b側の部分は他端側重複部41bに連続して直線状に延びている。なお、他端側重複部41bよりもさらに他端4b側の部分は、直線状ではなく、円弧状として、対応する半円弧状部の一部に沿って設けられていてもよい。また、他端側重複部41bよりもさらに他端4b側の部分を省き、すなわち他端側重複部41bを他端4bに至らせるようにしてもよい。
一端側重複部41aと他端側重複部41bとは、本実施形態では、互いに当接(圧接を含む)しているが、図4Aに示されているように、互いに近接、すなわち僅かに離間していてもよい。また、図4Bに示されているように、一端側重複部41aを一端4aにまで至らしめることなく、一端側重複部41aよりもさらに一端4a側の部分を内側に折り曲げることにより、誘導部を形成してもよい。誘導部を設けることにより、重複部41a,41b間にクリップのアーム部が入り込み易くなり、クリップからの取り外し作業(詳細後述)が行い易くなる。
また、本実施形態では、一端側重複部41aと他端側重複部41bとは、図3Aおよび図3Bに示されているように側方から当接、すなわち図3Aにおいて紙面に平行する方向(上下方向)に、図3Bにおいて紙面に直交する方向に側方から当接させているが、図4Cおよび図4Dに示されているように側方から当接、すなわち図4Cにおいて紙面に直交する方向に、図4Dにおいて紙面に平行する方向(上下方向)に側方から当接させてもよい。さらに、これらを斜め方向に当接させてもよい。
ループ部41は、後述するクリップ装置5のアウターシース54の先端部に収納し得る程度の可撓性を有している。ループ部41の断面形状は、本実施形態では、全長に渡って一様な略円形であるものとするが、ループ部41の断面形状は、楕円形や長円形、矩形やその他の多角形であってもよい。
また、ループ部41の平面視における形状は、本実施形態では、略長円形状であるものとしているが、楕円形や円形、矩形やその他の多角形であってもよく、これらの一部を切り取って2以上組み合わせて略ループ状としたものであってもよい。たとえば、それぞれ長軸方向の中央部で二分した半長円形と半楕円形とを、それぞれの対応する開放端で接合したような形状としてもよい。
アダプタ部42は、本実施形態では、ループ部41と一体的に形成された略矩形板状の部位であり、板面に略垂直な方向に貫通するバネ用貫通孔42aが形成されている。このバネ用貫通孔42aには、コイルバネ3の有端輪状部材用フック部(直線部)33が嵌入可能な略円形の孔である。バネ用貫通孔42aの内径はコイルバネ3の有端輪状部材用フック部(直線部)33の外径と同等かまたは僅かに大きい値に設定されている。
有端輪状部材4のコイルバネ3に対する連結は、コイルバネ3の有端輪状部材用フック部(直線部)33を必要に応じて外側(先端部33aが本体部31の端部から離間する方向)に弾性変形させつつ、アダプタ部42のバネ用貫通孔42aを貫通するように嵌入(挿通)させた状態で、アダプタ部42の開放端側がコイルバネ3(本体部31)の内側に位置するように挿入・配置して、有端輪状部材用フック部33の弾性変形を解除する。これにより、有端輪状部材4は、コイルバネ3に連結される(取り付けられる)。このように、アダプタ部42をコイルバネ3に連結するための作業は容易であるとともに、アダプタ部42がコイルバネ3から脱落してしまうことも防止される。なお、アダプタ部42がコイルバネ3から脱落することをより確実に防止するため、有端輪状部材用フック部33とアダプタ部42bのバネ用貫通孔42aとの接触部分を接着するようにしてもよい。
有端輪状部材4は、本実施形態では、熱可塑性高分子材料の射出成型品からなる。ただし、有端輪状部材4は、ステンレス鋼等の金属から形成してもよい。有端輪状部材4の素材として熱可塑性高分子材料を用いる場合には、具体的にはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂やポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを例示することができる。
ループ部41の長径(長軸方向の寸法)は5~10mm程度、短径(短軸方向の寸法)は2~5mm程度、ループ部41の断面の直径は0.2~0.5mm程度とすることができる。バネ用貫通孔42aの直径は0.1~0.3mm程度とすることができる。
なお、本実施形態では、アダプタ部42は、ループ部41とともに一体的に射出成型することによって形成しているが、別部材として構成して、ループ部41に接着等により固定するようにしてもよい。また、アダプタ部42は省略してもよい。この場合には、図4Eおよび図4Fに示されているように、ループ部41が挿通(遊嵌)し得る程度の貫通孔34aを有する略板状のアダプタ部材34を、コイルバネ3の有端輪状部材用フック部33に取り付け、該アダプタ部材34の貫通孔34aにループ部41を挿通(遊嵌)することにより、ループ部41をコイルバネ3に連結することができる。また、コイルバネ3の有端輪状部材用フック部33を、クリップ用フック部32と同様なリング状として、これにループ部41を挿通することにより、ループ部41をコイルバネ3に連結してもよい。
上述したような内視鏡用牽引クリップ1は、たとえば、図5Aおよび図5Bに示されているようなクリップ装置5の先端部(遠位端部)に装着・収納され、クリップ装置5のシース部(インナーシース52およびアウターシース54)を、内視鏡の処置具案内管内に挿入して、処置すべき粘膜(生体組織)まで導かれる。
図5Aまたは図5Bに示されているように、クリップ装置5は、開閉フック51、インナーシース52、駆動ワイヤ53、アウターシース54、補強コイル55、アウターシース操作部56、インナーシース操作部57、およびワイヤ操作部58を概略備えて構成されている。
チューブ状のアウターシース54には、同じくチューブ状のインナーシース52が挿通されており、インナーシース52には駆動ワイヤ53が挿通されている。インナーシース52はアウターシース54内で摺動(スライド)可能となっており、駆動ワイヤ53はインナーシース52内で摺動(スライド)可能となっている。
アウターシース54は可撓性を有する中空チューブからなり、本実施形態ではコイルチューブを用いている。コイルチューブとしては、金属(ステンレス鋼)等からなる長尺平板を螺旋状に巻回してなる平線コイルチューブを用いることができる。ただし、丸線コイルチューブまたは内面平コイルチューブを用いてもよい。アウターシース54の内径は、2.0~3.0mm程度である。
インナーシース52は可撓性を有する中空チューブからなり、本実施形態ではワイヤチューブを用いている。ワイヤチューブは、たとえば金属(ステンレス鋼)等からなる複数本のワイヤ(ケーブル)を中空となるように螺旋状に撚ってなる中空撚り線からなるチューブである。なお、インナーシース52としては、主としてワイヤチューブを用い、その先端側の一部のみをコイルチューブとしたものを用いてもよい。インナーシース52の内径は、1.5~2.5mm程度である。
駆動ワイヤ53は可撓性を有するワイヤからなり、本実施形態ではワイヤロープを用いている。ワイヤロープは、たとえば金属(ステンレス鋼)等からなる複数本のワイヤ(ケーブル)を螺旋状にねじってなる撚り線からなるロープである。ただし、駆動ワイヤ53としては、インナーシース52と同様なワイヤチューブを用いてもよい。
クリップ装置5のシース先端に配置される開閉フック51は、図5Cに示されているように、その先端に向かって略V字状に配置された弾性体からなる一対のアーム部51a,51aを有し、インナーシース52との協働によって、開脚(開いた)状態と閉脚(閉じた)状態の二つの状態をとり得るようになっている。開閉フック51の一対のアーム部51a,51aの先端部には、内側(互いに相対する側)に折り曲げられることにより爪部51b,51bが形成されており、クリップ本体2の連結部21を把持して連結できるようになっている。
開閉フック51の基端部は、一対のアーム部51a,51aの基端部に連続して略U字状に形成されたU字状部51cとなっている。爪部51b,51bを含む一対のアーム部51a,51aおよびU字状部51cは弾性体からなる一つの細長い板材を適宜に折り曲げる(塑性変形させる)ことにより形成することができる。特に限定されないが、開閉フック51を構成する板材の板厚は0.20~0.24mm程度であり、幅は0.6mm程度である。板材としては、たとえばステンレス鋼が用いられる。
インナーシース52内にスライド可能に挿入された駆動ワイヤ53の先端(遠位端)には、略円環状に形成された円環部材53aがレーザ溶接等により一体的に溶接固定されている。円環部材53aの外径は1.2mm程度、内径は0.8~1.0mm程度である。
開閉フック51は、円環部材53aに挿通され、U字状部51cが円環部材53aに遊嵌されるように配置されることにより、駆動ワイヤ53の遠位端に首振り可能に取り付けられる。開閉フック51を、このような円環部材53aおよび該円環部材53aに遊嵌されるU字状部51cを介して駆動ワイヤ53の先端に取り付けることにより、開閉フック51は、図5Cにおいて矢印a1方向に自在に回動することができるようになっている。
図5Aおよび図5Bに戻り、アウターシース54の基端(近位端)側近傍は補強コイル55に挿入されて該補強コイル55に一体的に固定されている。補強コイル55はアウターシース操作部56に一体的に固定されており、アウターシース操作部56の内側にインナーシース操作部57の遠位端側の部分が挿入配置されている。アウターシース操作部56は、インナーシース操作部57に対して、先端(遠位端)側に移動した位置と基端部(近位端)側に移動した2つの位置との間で位置決め可能にスライドし得るようになっている。
インナーシース操作部57には、ワイヤ操作部58がスライド可能に保持されており、インナーシース操作部57にはインナーシース52が固定されている。駆動ワイヤ53の基端はワイヤ操作部58に固定されている。
ワイヤ操作部58をインナーシース操作部57に対して先端側(遠位端側)にスライドさせると、インナーシース52が駆動ワイヤ53に対して引き込まれて、駆動ワイヤ53の先端の開閉フック51がインナーシース52の先端から突出して、自己の弾性により開脚する。ワイヤ操作部58をインナーシース操作部57に対して基端側(近位端側)にスライドさせると、駆動ワイヤ53がインナーシース52に対して引き込まれて、駆動ワイヤ53の先端の開閉フック51がインナーシース52内に入り込みつつ、徐々に閉脚し、インナーシース52内に埋没することにより、完全に閉脚するようになっている。
アウターシース操作部56をインナーシース操作部57に対して基端側の位置にスライドすると、インナーシース52をアウターシース54の先端から突出させることができ、反対に、アウターシース操作部56をインナーシース操作部57に対して先端側の位置にスライドすると、インナーシース52の先端をアウターシース54内に収納(埋没)させることができるようになっている。
次に、上述した内視鏡用牽引クリップ1の使用方法について、図6A,図6B,図7A,図7B,図8A~図8Eを参照して説明する。
クリップ本体2において、連結板部21の外周で基端部22aの近くに締め付けリング24が外嵌された状態では、断面U字状の連結板部21には連結孔25が形成される(図1A、図6A参照)。この連結孔25に、図5Aに示すクリップ装置5の開閉フック51を係合させ、開閉フック51をインナーシース52の内部に引き込むことで、開閉フック51が閉脚し、内視鏡用牽引クリップ1のクリップ本体2がインナーシース52の先端に取り付けられる(図6A参照)。
この状態で、内視鏡用牽引クリップ1(クリップ本体2、コイルバネ3および有端輪状部材4)が連結されたインナーシース52の先端部をアウターシース54内に引き込み、図6Bに示されているように、内視鏡用牽引クリップ1(クリップ本体2、コイルバネ3および有端輪状部材4)の全体をアウターシース54の遠位端部の内側に収納する。
この状態では、クリップ本体2の締め付けリング24は連結板部21に位置したままであり、アーム部22はアウターシース54の内壁の作用によって閉脚している。また、有端輪状部材4のループ部41は、アウターシース54の内壁の作用によって、弾性的に変形した状態で、該アウターシース54内に収納される。
内視鏡用牽引クリップ1が装着されたクリップ装置5のシース部の先端部を、体内に挿入された不図示の内視鏡の処置具案内管を介して、切除(剥離)処置を行うべき粘膜の近傍に位置させる。次いで、アウターシース54を基端側にスライドさせることにより、内視鏡用牽引クリップ1をアウターシース54の遠位端から突出させる。これにより、図6Aに示されているように、アーム部22が自己の弾性により開脚した状態となるとともに、有端輪状部材4のループ部41が自己の弾性により元の形状に戻る。
次に、図7Aを参照する。アーム部22が開脚した状態で、粘膜の切除(剥離)すべき部位(病変部)Xが、一対のアーム部22の間に存在するように、クリップ本体2を位置させる。次いで、インナーシース52を駆動ワイヤ53に対して先端側にスライドさせることにより、締め付けリング24がアーム部22の先端側にスライドする。その結果、アーム部22が徐々に閉脚し(互いに近づき)、病変部Xを挟んで一方の側の粘膜と他方の側の粘膜とが手繰り寄せられる。
インナーシース52を駆動ワイヤ53に対して先端側にさらにスライドさせることにより、締め付けリング24がアーム部22の把持部22b側に移動し(図1C参照)、内視鏡用牽引クリップ1(クリップ本体2)による病変部Xの把持が完了する。この状態で、インナーシース52を駆動ワイヤ53に対して基端側にスライドさせることにより、開閉フック51がインナーシース52の遠位端から押し出されて開脚し、内視鏡用牽引クリップ1(クリップ本体2)の開閉フック51による把持(係合)が解除され、内視鏡用牽引クリップ1(クリップ本体2)の病変部Xに対するクリッピングが完了する。
次に、一旦内視鏡からクリップ装置5を抜き去ってから、別途用意された他のクリップ(通常のクリップ)7を、クリップ装置5(またはクリップ装置5と同様の構成を備える別途用意されたクリップ装置)の先端部に装着し、通常のクリップ7が装着されたクリップ装置5のシース部の先端部を、病変部Xに対向(対峙)する適宜な部位(対向部位)Yの近傍まで搬送する。なお、通常のクリップ7としては、図1A~図1Cに示した内視鏡用牽引クリップ1からコイルバネ3および有端輪状部材4を取り外したクリップ本体2と同様の構成のクリップを用いることができる。
次いで、通常のクリップ7の一対のアーム部72の一方で有端輪状部材4のループ部41を掬い上げ(ループ部41の一部を一対のアーム部72の間の部分に位置させて)、コイルバネ3を引き延ばしつつ、上述のクリップ本体2による病変部Xの把持と同様に、通常のクリップ7を対向部位Yにクリッピングする。これにより、コイルバネ3の弾性力(張力)によって病変部Xが牽引される(つり上げられる)。この状態にした後、内視鏡の処置具案内管を介して内視鏡用電気メス8を挿入して、その内視鏡用電気メス8を用いて病変部Xの外周を切開する。病変部Xは切開により剥離された部分からコイルバネ3の弾性力(張力)によってつり上げられるので、病変部Xの切開により剥離された部分が視界を遮ったり、手技の邪魔になったりすることなく、病変部Xの全周を容易かつ確実に切開することができる。
病変部Xの切除が完了したならば、図7Bに示されているように、内視鏡用電気メス8を内視鏡から抜き去った後に、クリップが装着(連結)されていない状態のクリップ装置5(またはクリップ装置5と同様の構成を備える別途用意されたクリップ装置)の先端部を、有端輪状部材4のループ部41の近傍に位置させ、開閉フック51をインナーシース52の先端から突出させて開脚させる。この状態で、図8Aに示されているように、ループ部41の適宜な一部(重複部41a,41b以外の一部、たとえば重複部41a,41bに対向する直線状部の一部)を把持し得るようにその位置を調整する。
次いで、図8Bに示されているように、駆動ワイヤ53に対してインナーシース52を先端側に押し出して、開閉フック51を閉脚させて、ループ部41の一部を開閉フック51で把持して、ループ部41をインナーシース52の先端に当接させた状態とする。これにより、ループ部41は、インナーシース52の遠位端に連結(装着)された状態となる。
この状態から、図8Cに示されているように、通常のクリップ7の一方のアーム部72のループ部41内に通されている一部72aに対して、インナーシース52の遠位端の位置および姿勢を適宜に変更調整して、ループ部41の一端側重複部41aと他端側重複部41bとの間の部分に、これらを弾性変形させつつ、アーム部72の一部72aが入り込むようにする。次いで、図8Dに示されているように、アーム部72の一部72aが重複部41a,41bの間を通過するように、インナーシース52の先端部を移動させ、これらの間を全て通過させることにより、図8Eに示されているように、ループ部41がアーム部72から分離、すなわち、有端輪状部材4を含む内視鏡用牽引クリップ1が通常のクリップ7から取り外される。
これにより、病変部Xは、通常のクリップ7から取り外された内視鏡用牽引クリップ1とともに、体外に摘出することが可能となるので、当該クリップ装置5または別途準備された内視鏡用把持鉗子等を用いて、これを体外に摘出することができる。
上述した実施形態に係る内視鏡用牽引クリップ1の有端輪状部材4(ループ部41)は、クリップ本体2の一対のアーム部22を閉脚させるために締め付けリング24をスライドさせるクリップ装置5を用いて、通常のクリップ7から取り外すことができるため、有端輪状部材4を切断するために、内視鏡用鋏鉗子や内視鏡用電気メス等の切断器具を別途準備する必要がない。したがって、内視鏡用鋏鉗子のような有端輪状部材4を切断するためだけに用いる切断器具を別途準備する必要がなく、コストも低減することができる。また、内視鏡用電気メスのような体内組織を不意に傷つけてしまうおそれがある切断器具の使用を避けることができる。また、上述した実施形態に係る内視鏡用牽引クリップ1の有端輪状部材4は、ループ部41とアダプタ部42とを一体的に有しているため、特許文献2に記載のようなアダプタ部材を別途用いる必要がなく、その構成が簡略である。
なお、図示は省略するが、たとえば図7Aにおいて、術者が、病変部Xの切開の途中で、あるいは切開を開始する前に、病変部Xの牽引方向の変更を希望する場合には、次のような手順で、これを行うことができる。すなわち、通常のクリップ7と同様の別のクリップを、該通常のクリップ7から離間した適宜な位置にクリッピングしておく。そして、図8A~図8Eに示した上記の手順により通常のクリップ7からループ部41を取り外した後に、図8A~図8Eに示した上記の手順と逆の手順により、ループ部41の重複部41a,41b間を弾性変形させつつ当該別のクリップのアーム部を通過させることにより、内視鏡用牽引クリップ1を当該別のクリップに連結させることができる。これにより、内視鏡用牽引クリップ1による牽引方向や牽引力を変更することができる。
特に、上述した実施形態では、ループ部41は、たとえば図3Aに示したように、ループ部41の他端側重複部41bよりも他端4b側の部分が他端側重複部41bに連続して直線状に延びており、ループ部41の一端側重複部41aに連続する円弧状の部分から徐々に離間しているため、当該別のクリップに連結する際に、この離間部分を誘導部としてアーム部の一部を重複部41a,41bに挿入することができる。したがって、当該別のクリップに対する連結作業を容易に行うことができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。