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JP7203749B2 - カーボンナノチューブ被覆電線 - Google Patents
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JP7203749B2 - カーボンナノチューブ被覆電線 - Google Patents

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Description

本発明は、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ線材を絶縁材料で被覆したカーボンナノチューブ被覆電線に関するものである。
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)は、様々な特性を有する素材であり、多くの分野への応用が期待されている。
例えば、CNTは、六角形格子の網目構造を有する筒状体の単層、又は略同軸で配された多層で構成される3次元網目構造体であり、軽量であると共に、導電性、熱伝導性、機械的強度等の諸特性に優れる。しかし、CNTを線材化することは容易ではなく、CNTを線材として利用する技術は提案されていない。
一方、多層配線構造に形成されるビアホールの埋め込み材料である金属の代替として、CNTを使用することが検討されている。具体的には、多層配線構造の低抵抗化のために、多層CNTの成長基点から遠い側の端部へ同心状に伸延した多層CNTの複数の切り口を導電層にそれぞれ接触させた多層CNTを、2以上の導線層の層間配線として使用した配線構造が提案されている(特許文献1)。
その他の例として、CNT材料の導電性をさらに向上させるために、隣接したCNT線材の電気的接合点に、金属等からなる導電性堆積物を形成したカーボンナノチューブ材料が提案され、このようなカーボンナノチューブ材料は広汎な用途に適用できることが開示されている(特許文献2)。
ところで、自動車や産業機器などの様々な分野における電力線や信号線として、一又は複数の線材からなる芯線と、該芯線を被覆する絶縁被覆とからなる電線が用いられている。芯線を構成する線材の材料としては、通常、電気特性の観点から銅又は銅合金が使用されるが、近年、軽量化の観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が提案されている。例えば、アルミニウムの比重は銅の比重の約1/3、アルミニウムの導電率は銅の導電率の約2/3(純銅を100%IACSの基準とした場合、純アルミニウムは約66%IACS)である。アルミニウム線材に、銅線材と同じ電流を流すためには、アルミニウム線材の断面積を、銅の線材の断面積の約1.5倍と大きくする必要があるが、そのように断面積を大きくしたアルミニウム線材を用いたとしても、アルミニウム線材の質量は、純銅の線材の質量の半分程度である。このことから、アルミニウム線材を使用することは、軽量化の観点から有利である。
特開2006-120730号公報 特表2015-523944号公報
電線の芯線を構成する主な線材として銅線、アルミニウム線などの金属線を使用する場合、金属線が樹脂等の絶縁材料で被覆されると光沢がなくなるため、被覆された金属線と被覆されていない金属線との判別が比較的容易である。一方、金属線と異なり、カーボンナノチューブは黒色で光沢がない材料であるため、芯線を構成する線材が主にカーボンナノチューブである場合、光沢の有無により線材が樹脂等で被覆されているか否かを判別することが困難である。そのため、芯線を構成する主な線材としてカーボンナノチューブを使用し、光透過性の高い絶縁材料で被覆すると、被覆の有無が目視で確認しにくい。よって、芯線を構成する線材として主にカーボンナノチューブを使用する場合には、絶縁被覆層の視認性が十分ではなく、改善の余地がある。更には、絶縁被覆層の有無が判別しにくいと、絶縁被覆層に対して印を付すなどの加工を行う毎に絶縁被覆の有無を確認する必要があり、作業性に劣ることがある。
従って、本発明は、絶縁被覆層の視認性が良好なカーボンナノチューブ被覆電線を提供することを目的とする。
本開示は以下の態様を提供する。
[1] 複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数又は複数からなるカーボンナノチューブ線材と、該カーボンナノチューブ線材を被覆する絶縁被覆層と、を備え、前記絶縁被覆層が、1.45以上の屈折率nを有する材料により構成されているカーボンナノチューブ被覆電線。
[2] 前記カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積に対する前記絶縁被覆層の径方向の断面積の比率が0.05以上である[1]に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[3] 前記カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積に対する前記絶縁被覆層の径方向の断面積の比率が、0.05以上1.50以下である[1]又は[2]に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[4] 前記絶縁被覆層を構成する材料の屈折率nが1.45以上1.70以下である[1]~[3]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[5] 前記絶縁被覆層を構成する材料が、熱可塑性樹脂である[1]~[4]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[6] 前記絶縁被覆層の径方向の断面積が、0.003mm以上40mm以下である[1]~[5]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[7] 前記カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積が、0.0005mm以上80mm以下である[1]~[6]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[8] 前記絶縁被覆層の偏肉率が、30%以上である[1]~[7]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[9] 前記絶縁被覆層の偏肉率が、80%以上である[1]~[8]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[10] 前記絶縁被覆層の偏肉率が、50%以上95%以下である[1]~[8]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[11] 前記絶縁被覆層の偏肉率が、50%以上65%以下である[10]記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[12] 前記カーボンナノチューブ線材が、複数の前記カーボンナノチューブ集合体からなり、複数の該カーボンナノチューブ集合体の配向性を示す小角X線散乱によるアジマスプロットにおけるアジマス角の半値幅Δθが60°以下である[1]~[11]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
[13] 複数の前記カーボンナノチューブの密度を示すX線散乱による散乱強度の(10)ピークにおけるピークトップのq値が2.0nm-1以上5.0nm-1以下であり、且つ半値幅Δqが0.1nm-1以上2.0nm-1以下である[1]~[12]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
本発明によれば、芯線を構成する主な線材としてカーボンナノチューブを使用しても、絶縁被覆層の視認性が良好なカーボンナノチューブ被覆電線を提供することができる。
本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ被覆電線の説明図である。 本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ被覆電線に用いるカーボンナノチューブ線材の説明図である。 (a)図は、SAXSによる複数のカーボンナノチューブ集合体の散乱ベクトルqの二次元散乱像の一例を示す図であり、(b)図は、二次元散乱像において、透過X線の位置を原点とする任意の散乱ベクトルqの方位角-散乱強度の一例を示すグラフである。 カーボンナノチューブ集合体を構成する複数のカーボンナノチューブのWAXSによるq値-強度の関係を示すグラフである。
本開示に係るカーボンナノチューブ被覆電線は、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数又は複数からなるカーボンナノチューブ線材と、該カーボンナノチューブ線材を被覆する絶縁被覆層と、を備え、前記絶縁被覆層が、1.45以上の屈折率nを有する材料により構成されている。絶縁被覆層が屈折率nの低い材料で構成されている場合、絶縁被覆層が光を散乱しにくい(光が透過しやすい)ため、被覆の有無を判別しにくい。一方で、絶縁被覆層が屈折率nの高い材料で構成されている場合、絶縁被覆層で光が散乱し、絶縁被覆層が白く濁っているように観察される。そのため、カーボンナノチューブ線材が絶縁被覆層で被覆されていることを容易に判別することが可能となる。また、絶縁被覆層の有無を目視により容易に判別することが可能となるため、絶縁被覆層に対して印を付すなどの加工を行う際の作業性も高めることができる。
本開示に係るカーボンナノチューブ被覆電線は、更に、カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積に対する前記絶縁被覆層の径方向の断面積の比率が、0.05以上であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性に優れたカーボンナノチューブ被覆電線を得ることができる。また、芯線としてカーボンナノチューブを使用したカーボンナノチューブ線材は、金属製の芯線とは異なり、熱伝導に異方性があり、径方向と比較して長手方向に優先的に熱が伝導する。すなわち、カーボンナノチューブ線材には、放熱特性に異方性があるため、金属製の芯線と比較して優れた放熱性を備えている。そのため、カーボンナノチューブを使用した芯線に被覆する絶縁被覆層の設計は、金属製の芯線の絶縁被覆層とは異なる設計とすることが必要になる。本開示によれば、カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積に対する絶縁被覆層の径方向の断面積の比率が0.05以上1.50以下であることにより、絶縁信頼性を損なうことなく、優れた放熱性を得ることができる。さらに、カーボンナノチューブ線材は金属製の線材と比べて軽量であるため、絶縁被覆層が形成されていても被覆電線の軽量化を図ることができる。
本開示に係るカーボンナノチューブ被覆電線は、更に、絶縁被覆層の偏肉率が、30%以上であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性に優れたカーボンナノチューブ被覆電線を得ることができ、さらに、絶縁被覆層の偏肉率が、80%以上であることにより、絶縁信頼性をより向上させることができる。また、絶縁被覆層の厚さ(被覆)が非均一である場合、絶縁被覆層上に観察される白く濁った部分にムラを視認できる。そのため、絶縁被覆層の有無をより判別しやすくなる。一方、絶縁被覆層の厚さ(被覆)が均一になるにつれて、絶縁被覆層全体の色合いが若干灰色になるように視認できるだけであり、絶縁被覆層の視認性は特に変わらない。そのため、絶縁被覆層の偏肉率が、50%以上95%以下であることにより、絶縁信頼性が高く、良好な視認性を付与することが可能となる。さらに、絶縁被覆層の偏肉率が、50%以上65%以下であることにより、絶縁被覆層の厚さ(被覆)が適度に非均一となり、その結果、絶縁被覆層の視認性をより向上させることができる。
以下に、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ被覆電線について、図面を用いながら説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ被覆電線(以下、「CNT被覆電線」ということがある。)1は、カーボンナノチューブ線材(以下、「CNT線材」ということがある。)10の外周面に絶縁被覆層21が被覆された構成となっている。すなわち、CNT線材10の長手方向に沿って絶縁被覆層21が被覆されている。CNT被覆電線1では、CNT線材10の外周面全体が、絶縁被覆層21によって被覆されている。また、CNT被覆電線1では、絶縁被覆層21はCNT線材10の外周面と直接接した態様となっている。図1では、CNT線材10は、1本のCNT線材10からなる素線(単線)となっているが、CNT線材10は、複数本のCNT線材10を撚り合わせた撚り線の状態でもよい。CNT線材10を撚り線の形態とすることで、CNT線材10の円相当直径又は断面積を適宜調節することができる。
図2に示すように、CNT線材10は、1層以上の層構造を有する複数のCNT11a,11a,・・・で構成されるカーボンナノチューブ集合体(以下、「CNT集合体」ということがある。)11の単数から、又は複数が束ねられて形成されている。ここで、CNT線材とは、CNTの割合が90質量%以上のCNT線材を意味する。なお、CNT線材におけるCNT割合の算定においては、メッキとドーパントは除かれる。図2では、CNT線材10は、CNT集合体11が、複数、束ねられた構成となっている。CNT集合体11の長手方向が、CNT線材10の長手方向を形成している。従って、CNT集合体11は、線状となっている。CNT線材10における複数のCNT集合体11,11,・・・は、その長軸方向がほぼ揃って配されている。従って、CNT線材10における複数のCNT集合体11,11,・・・は、配向している。素線であるCNT線材10の円相当直径は、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上4.0mm以下である。また、撚り線としたCNT線材10の円相当直径は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上15mm以下である。
CNT集合体11は、1層以上の層構造を有するCNT11aの束である。CNT11aの長手方向が、CNT集合体11の長手方向を形成している。CNT集合体11における複数のCNT11a,11a、・・・は、その長軸方向がほぼ揃って配されている。従って、CNT集合体11における複数のCNT11a,11a、・・・は、配向している。CNT集合体11の円相当直径は、例えば、20nm以上1000nm以下であり、より典型的には、20nm以上80nm以下である。CNT11aの最外層の幅寸法は、例えば、1.0nm以上5.0nm以下である。
CNT集合体11を構成するCNT11aは、単層構造又は複層構造を有する筒状体であり、それぞれ、SWNT(single-walled nanotube)、MWNT(multi-walled nanotube)と呼ばれる。図2では、便宜上、2層構造を有するCNT11aのみを記載しているが、CNT集合体11には、3層構造以上の層構造を有するCNTや単層構造の層構造を有するCNTも含まれていてもよく、3層構造以上の層構造を有するCNT又は単層構造の層構造を有するCNTから形成されていてもよい。
2層構造を有するCNT11aでは、六角形格子の網目構造を有する2つの筒状体T1、T2が略同軸で配された3次元網目構造体となっており、DWNT(Double-walled nanotube)と呼ばれる。構成単位である六角形格子は、その頂点に炭素原子が配された六員環であり、他の六員環と隣接してこれらが連続的に結合している。
CNT11aの性質は、上記筒状体のカイラリティ(chirality)に依存する。カイラリティは、アームチェア型、ジグザグ型、及びカイラル型に大別され、アームチェア型は金属性、ジグザグ型は半導体性及び半金属性、カイラル型は半導体性及び半金属性の挙動を示す。従って、CNT11aの導電性は、筒状体がいずれのカイラリティを有するかによって大きく異なる。CNT被覆電線1のCNT線材10を構成するCNT集合体11では、導電性をさらに向上させる点から、金属性の挙動を示すアームチェア型のCNT11aの割合を増大させることが好ましい。
一方で、半導体性の挙動を示すカイラル型のCNT11aに電子供与性もしくは電子受容性を持つ物質(異種元素)をドープすることにより、カイラル型のCNT11aが金属性の挙動を示すことが分かっている。また、一般的な金属では、異種元素をドープすることによって金属内部での伝導電子の散乱が起こって導電性が低下するが、これと同様に、金属性の挙動を示すCNT11aに異種元素をドープした場合には、導電性の低下を引き起こす。
このように、金属性の挙動を示すCNT11a及び半導体性の挙動を示すCNT11aへのドーピング効果は、導電性の観点からはトレードオフの関係にあることから、理論的には金属性の挙動を示すCNT11aと半導体性の挙動を示すCNT11aとを別個に作製し、半導体性の挙動を示すCNT11aにのみドーピング処理を施した後、これらを組み合わせることが望ましい。金属性の挙動を示すCNT11aと半導体性の挙動を示すCNT11aが混在した状態で作製される場合には、異種元素又は分子によるドーピング処理が効果的となるCNT11aの層構造を選択することが好ましい。これにより、金属性の挙動を示すCNT11aと半導体性の挙動を示すCNT11aの混合物からなるCNT線材10の導電性をさらに向上させることができる。
例えば、2層構造又は3層構造のような層数が少ないCNTは、それより層数の多いCNTよりも比較的導電性が高く、ドーピング処理を施した際には、2層構造又は3層構造を有するCNTでのドーピング効果が最も高い。従って、CNT線材10の導電性をさらに向上させる点から、2層構造又は3層構造を有するCNTの割合を増大させることが好ましい。具体的には、CNT全体に対する2層構造又は3層構造をもつCNTの割合が50個数%以上であることが好ましく、75個数%以上であることがより好ましい。2層構造又は3層構造をもつCNTの割合は、CNT集合体11の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察及び解析し、100個のCNTのそれぞれの層数を測定することで算出することができる。
次に、CNT線材10におけるCNT11a及びCNT集合体11の配向性について説明する。
図3(a)は、小角X線散乱(SAXS)による複数のCNT集合体11,11,・・・の散乱ベクトルqの二次元散乱像の一例を示す図であり、図3(b)は、二次元散乱像において、透過X線の位置を原点とする任意の散乱ベクトルqの方位角-散乱強度の関係を示すアジマスプロットの一例を示すグラフである。
SAXSは、数nm~数十nmの大きさの構造等を評価するのに適している。例えば、SAXSを用いて、以下の方法でX線散乱画像の情報を分析することで、外径が数nmであるCNT11aの配向性及び外径が数十nmであるCNT集合体11の配向性を評価することができる。例えばCNT線材10についてX線散乱像を分析すると、図3(a)に示すように、CNT集合体11の散乱ベクトルq(q=2π/d、dは格子面間隔)のx成分であるqよりも、y成分であるqの方が比較的狭く分布している。また、図3(a)と同じCNT線材10について、SAXSのアジマスプロットを分析した結果、図3(b)に示すアジマスプロットにおけるアジマス角の半値幅Δθは、48°である。これらの分析結果から、CNT線材10において、複数のCNT11a,11a・・・及び複数のCNT集合体11,11,・・・が良好な配向性を有しているといえる。このように、複数のCNT11a,11a・・・及び複数のCNT集合体11,11,・・・が良好な配向性を有しているので、CNT線材10の熱は、CNT11aやCNT線材10をCNT集合体11の長手方向に沿って円滑に伝達して行きながら放熱されやすくなる。従って、CNT線材10は、上記CNT11a及びCNT集合体11の配向性を調節することで、放熱ルートを長手方向、径の断面方向にわたり調節できるので、金属製の芯線と比較して優れた放熱特性を発揮する。なお、配向性とは、CNTを撚り集めて作製した撚り線の長手方向へのベクトルVに対する内部のCNT及びCNT集合体のベクトルの角度差のことを指す。
複数のCNT集合体11,11,・・・の配向性を示す小角X線散乱(SAXS)のアジマスプロットにおけるアジマス角の半値幅Δθにより示される一定以上の配向性を得ることで、CNT線材10に優れた放熱特性を付与させる点から、アジマス角の半値幅Δθは、60°以下が好ましく、50°以下が特に好ましい。
次に、CNT集合体11を構成する複数のCNT11aの配列構造及び密度について説明する。
図4は、CNT集合体11を構成する複数のCNT11a,11a,・・・のWAXS(広角X線散乱)によるq値-強度の関係を示すグラフである。
WAXSは、数nm以下の大きさの物質の構造等を評価するのに適している。例えば、WAXSを用いて、以下の方法でX線散乱画像の情報を分析することで、外径が数nm以下であるCNT11aの密度を評価することができる。任意の1つのCNT集合体11について散乱ベクトルqと強度の関係を分析した結果、図4に示すように、q=3.0nm-1~4.0nm-1付近に見られる(10)ピークのピークトップのq値から見積られる格子定数の値が測定される。この格子定数の測定値と、ラマン分光法、TEMなどで観測されるCNT集合体の直径とに基づいて、CNT11a、11a,・・・が平面視で六方最密充填構造を形成していることを確認することができる。従って、CNT線材10内で複数のCNT集合体の直径分布が狭く、複数のCNT11a,11a,・・・が、規則正しく配列、すなわち、高密度を有することで、六方最密充填構造を形成しているといえる。
このように、複数のCNT集合体11,11・・・が良好な配向性を有していると共に、更に、CNT集合体11を構成する複数のCNT11a,11a,・・・が規則正しく配列して高密度で配置されているので、CNT線材10の熱は、CNT集合体11の長手方向に沿って円滑に伝達して行きながら放熱されやすくなる。従って、CNT線材10は、上記CNT集合体11とCNT11aの配向構造や密度を調節することで、放熱ルートを長手方向、径の断面方向にわたり調節できるので、金属製の芯線と比較して優れた放熱特性を発揮する。
高密度を得ることで優れた放熱特性をより付与させる点から、複数のCNT11a,11a,・・・の密度を示すX線散乱による散乱強度の(10)ピークにおけるピークトップのq値が2.0nm-1以上5.0nm-1以下であり、且つ半値幅Δq(FWHM)が0.1nm-1以上2.0nm-1以下であることが好ましい。
CNT集合体11及びCNT11の配向性、並びにCNT11aの配列構造及び密度は、後述する、乾式紡糸、湿式紡糸、液晶紡糸等の紡糸方法と該紡糸方法の紡糸条件とを適宜選択することで調節することができる。
次に、CNT線材10の外面を被覆する絶縁被覆層21について説明する。
絶縁被覆層21は、1.45以上の屈折率nを有する材料で構成されている。これにより、CNT線材10に対して高い視認性を示す絶縁被覆層21を備えたCNT被覆電線1を得ることができる。屈折率nの下限値については、1.50であることが好ましく、1.53であることがより好ましく、1.58であることがさらに好ましい。屈折率nをこのような下限値に制御することにより、絶縁被覆層21の厚みを変えることなく視認性を高めることができると共に、カーボンナノチューブ線材をより軽量化できる、電線をより細線化できるなどの利点を有する。一方、屈折率nの上限値については、例えば、1.70以下とすることができ、1.68以下であることが好ましく、1.63以下であることが更に好ましい。上述した絶縁被覆層21の屈折率nの上限値及び下限値については、適宜組み合わせが可能であり、例えば、1.45以上1.70以下、又は1.58以上1.70以下とすることができる。この場合には、上述した利点の組み合わせをそれぞれ得ることができる。屈折率nは、例えば、ASTM D542により測定した値に基づいて判定することができる。この方法により決定した数値を示すものであれば、カタログ値をそのまま適用してもよい。
絶縁被覆層21の材料としては、芯線として金属を用いた被覆電線の絶縁被覆層に用いる材料の中から、例えば、上述した屈折率nを有する熱可塑性樹脂を挙げることができる。上述した屈折率nを有する熱可塑性樹脂(以下、「高屈折率樹脂」と称する場合がある)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、n:1.66~1.67)、ポリビニルアルコール(PVA、n:1.49~1.55)、ポリエチレン(n:1.53)、ポリプロピレン(n:1.49)、ポリアセタール(n:1.48)、ポリスチレン(n:1.59~1.61)、ポリカーボネート(n:1.59)、ポリ塩化ビニル(n:1.52~1.55)、ポリ酢酸ビニル(n:1.45~1.47)、ポリメチルメタクリレート(n:1.48~1.50)、アクリル樹脂(n:1.49~1.53)等を挙げることができ、これらの中から、適宜選択することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。
2種以上の高屈折率樹脂を用いる場合には、組み合わせについて特に制限はなく、絶縁被覆層に用いる少なくとも1つの材料が上述した屈折率nを満たせば、他方の材料は、1.50以下の屈折率nを有するものであってもよい。この場合には、絶縁被覆層21全体の屈折率nが上述した範囲内となることが好ましい。
絶縁被覆層21は、図1に示すように、一層としてもよく、これに代えて、二層以上としてもよい。また、必要に応じて、CNT線材10の外面と絶縁被覆層21との間に、さらに、熱硬化性樹脂の層が設けられていてもよい。
なお、絶縁被覆層21を構成する材料が熱硬化性樹脂の場合、屈折率nは、樹脂に、屈折率を変更可能な添加物を加えることで調整可能である。
CNT被覆電線1では、CNT線材10の径方向の断面積に対する絶縁被覆層21の径方向の断面積の比率は、0.05以上であることが好ましい。前記断面積の比率の下限値は、より好ましくは0.20であり、更に好ましくは0.50である。また、前記断面積の比率の上限値については、好ましくは1.50であり、より好ましくは1.00であり、更に好ましくは0.80である。前記断面積の比率が0.05以上であることにより、CNT被覆電線1に優れた絶縁信頼性を付与することができる。さらに、前記断面積の比率について、このような上限値を設けることにより、芯線が銅、アルミニウム等の金属線と比較して軽量のCNT線材10である上に、絶縁被覆層21の厚さを薄肉化できることから、絶縁信頼性を損なうことなく、CNT線材10の熱に対して優れた放熱特性を得ることができる。また、絶縁被覆層21で被覆された電線の軽量化を図ることができる。上述した前記断面積の比率の上限値及び下限値については、適宜組み合わせが可能であり、例えば、0.05以上1.50以下、又は0.20以上0.80以下とすることができる。この場合には、上述した利点の組み合わせをそれぞれ得ることができる。
また、CNT線材10単独では、長手方向における形状維持が難しい場合があるところ、前記断面積の比率にて絶縁被覆層21がCNT線材10の外面に被覆されていることにより、CNT被覆電線1は、長手方向における形状を維持することができ、また、曲げ加工等の変形加工も容易である。従って、CNT被覆電線1は、所望の配線経路に沿った形状に形成することができる。
さらに、CNT線材10は、外面に微細な凹凸が形成されていることから、アルミニウム又は銅の芯線を用いた被覆電線と比較して、CNT線材10と絶縁被覆層21との間の接着性が向上し、CNT線材10と絶縁被覆層21との間の剥離を抑制することができる。
CNT線材10の径方向の断面積は適宜設定でき、例えば、下限値としては0.0005mm、0.003mm、0.006mm、0.01mm、又は0.03mmとすることができ、上限値としては80mm、60mm、20mm、10mm、5mm、又は2mmとすることができる。CNT線材10の径方向の断面積の上限値及び下限値については、適宜組み合わせが可能であり、0.0005mm以上80mm以下が好ましく、0.01mm以上10mm以下が更に好ましく、0.03mm以上2mm以下が特に好ましい。CNT線材10の径方向の断面積をこの範囲に制御することにより、視認性が高く、かつ被覆も含めた電線の径を細くでき、細いながら視認性のよい被覆電線を得ることができる。
CNT線材10の径方向の断面積は、軸方向の10cmごとに5箇所の断面から測定した数値を平均した値である。CNT線材10の径方向の断面積は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察の画像から測定することができる。具体的には、CNT被覆電線1の径方向断面のSEM像(100倍~10,000倍)を得た後に、CNT線材10の外周で囲われた部分の面積からCNT線材10内部に入り込んだ絶縁被膜層21の材料の面積を差し引いた面積をCNT線材10の径方向断面積とする。CNT被覆電線1が、複数本のCNT線材10を撚り合わせた撚り線である場合には、撚り線を構成する個々のCNT線材10の径方向断面積を積算することにより得られた面積を、CNT線材10の径方向断面積とする。
絶縁被覆層21の径方向の断面積は適宜設定でき、例えば、下限値としては0.0003mm、0.003mm、0.006mm、又は0.02mmとすることができ、上限値としては40mm、20mm、5mm、又は2mmとすることができる。絶縁被覆層21の径方向断面積の上限値及び下限値については、適宜組み合わせが可能であり、絶縁性と放熱性の観点から、0.003mm以上40mm以下が好ましく、0.02mm以上2mm以下が特に好ましい。また、絶縁被覆層21の平均肉厚は、例えば、0.01mm以上1mm以下が好ましく、0.01mm以上0.7mm以下が特に好ましい。
絶縁被覆層21の径方向の断面積及び絶縁被覆層21の平均肉厚は、それぞれ、軸方向の10cmごとに5箇所の断面から測定した数値を平均した値である。断面積及び肉厚は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察の画像から測定することができる。具体的には、CNT被覆電線1の径方向断面のSEM像(100倍~10,000倍)を得た後に、CNT線材10の外周を被覆する絶縁被覆層21の部分の面積とCNT線材10内部に入り込んだ絶縁被膜層21の材料の面積との合計を、絶縁被覆層21の径方向断面積とする。絶縁被覆層21の径方向の断面積には、CNT線材10間に入り込んだ樹脂も含む。絶縁被覆層21の平均肉厚は、CNT被覆電線1の径方向断面積と同じ面積となる円の半径と、CNT線材10の径方向断面積と同じ面積になる円の半径の差とする。
前記断面積の比率が0.05以上1.50以下の範囲である場合、CNT線材10の径方向の断面積は、例えば、0.0005mm以上20mm以下が好ましく、0.006mm以上5mm以下が特に好ましい。また、絶縁被覆層21の径方向の断面積は、例えば、0.0005mm以上0.5mm以下が好ましく、0.001mm以上0.2mm以下が特に好ましい。また、絶縁被覆層21の平均肉厚は、例えば、0.002mm以上0.5mm以下が好ましく、0.01mm以上0.1mm以下が特に好ましい。
絶縁被覆層21の長手方向に対し直交方向(すなわち、径方向)の肉厚は、CNT被覆電線1の耐摩耗性等の機械的強度を向上させる点から均一化されていることが好ましい。具体的には、絶縁被覆層21の偏肉率は、例えば、優れた絶縁信頼性を付与させる点から30%以上が好ましく、絶縁信頼性をより向上させる点から80%以上が特に好ましい。また、CNT被覆電線1の縦断面における絶縁被覆層21の厚さ(被覆)が均一に近くなりすぎると、絶縁被覆層21上にムラが観察されにくくなる。そのため、絶縁被覆層21の偏肉率は、例えば、高い絶縁信頼性および良好な視認性を付与させる点から50%以上95%以下であることが好ましい。さらに、絶縁被覆層21の偏肉率が、50%以上65%以下であることにより、絶縁被覆層21の肉厚が適度に非均一となり、これにより、絶縁被覆層21の視認性をより向上させることができる。なお、「偏肉率」とは、CNT被覆電線1の長手方向中心側の任意の1.0mにおいて10cmごとに、径方向の同一断面について、それぞれ、α=(絶縁被覆層21の肉厚の最小値/絶縁被覆層21の肉厚の最大値)×100の値を算出し、各断面にて算出したα値を平均した値を意味する。また、絶縁被覆層21の肉厚は、例えば、CNT線材10を円近似してSEM観察の画像から測定することができる。ここで、長手方向中心側とは、線の長手方向からみて中心に位置する領域をさす。
絶縁被覆層21の偏肉率は、例えば、押出被覆にてCNT線材10の外周面に絶縁被覆層21を形成する場合、押出工程時にダイスへ通すCNT線材10の長手方向の張り具合を高めることで向上させることができる。
次に、本発明の実施形態例に係るCNT被覆電線1の製造方法例について説明する。CNT被覆電線1は、まず、CNT11aを製造し、得られた複数のCNT11aからCNT線材10を形成し、CNT線材10の外周面に絶縁被覆層21を被覆することで、製造することができる。また、本発明のCNT被覆電線1は、CNT線材10に直接絶縁被覆層21を設けていても、CNT線材10に直接絶縁被覆してから撚り合わせた電線であってもよい。
CNT11aは、浮遊触媒法(特許第5819888号)、基板法(特許第5590603号)などの手法で作製することができる。CNT線材10の素線は、乾式紡糸(特許第5819888号、特許第5990202号、特許第5350635号)、湿式紡糸(特許第5135620号、特許第5131571号、特許第5288359号)、液晶紡糸(特表2014-530964号公報)等で作製することができる。
上記のようにして得られたCNT線材10の外周面に絶縁被覆層21を被覆する方法は、アルミニウムや銅の芯線に絶縁被覆層を被覆する方法を使用でき、例えば、絶縁被覆層21の原料である熱可塑性樹脂を溶融させ、CNT線材10の周りに押し出して被覆する方法を挙げることができる。
本発明の実施形態例に係るCNT被覆電線1は、ワイヤハーネス等の一般電線として使用することができ、また、CNT被覆電線1を使用した一般電線からケーブルを作製してもよい。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」又は「%」は質量基準である。
[実施例1~20及び比較例1~3]
(1) CNT線材の製造方法について
浮遊触媒気相成長(CCVD)法を用い、CNT製造装置の電気炉によって、1300℃に加熱された、内径φ60mm、長さ1600mmのアルミナ管内部に、炭素源であるデカヒドロナフタレン、触媒であるフェロセン、及び反応促進剤であるチオフェンを含む原料溶液を、スプレー噴霧により供給した。電気炉には、キャリアガスとしての水素を、9.5L/minで供給した。生成したCNTを、連続的に巻き取りながら回収し、直径約100μm、長さ75mのCNT線材を得た。次に、得られたCNT線材を、大気下において500℃に加熱し、さらに酸処理を施すことによって高純度化を行った。その後、高純度化したCNT集合体に対し、硝酸ドープを施すことにより、撚り線用の素線を得た。続いて、得られた素線を、表1に示す本数分で束ね、一端を固定した状態でもう一端をひねることで、撚り線とした。ひねる回数は、1mあたり200回とした。
(2) CNT線材の外面に絶縁被覆層を被覆する方法について
表1に示すとおりに、以下に挙げる各種熱可塑性樹脂を用いて、通常の電線製造用押出成形機を用いて導体周囲に押出被覆することにより絶縁被覆層を形成し、下記表1の実施例と比較例のCNT被覆電線を作製した。
・ポリビニルアルコール(PVA)(屈折率n=1.53)
「デンカポバール」 デンカ社製
・ポリビニルアルコール(PVA)(屈折率n=1.55)
「ゴーセノール」 日本合成化学社製
・ポリビニルアルコール(PVA)(屈折率n=1.50)
「ポバール」 クラレ社製
・ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(屈折率n=1.42)
「KFポリマー」 クレハ社製
・ポリスチレン(PS)(屈折率n=1.60)
「GPPS」 PSジャパン社製
・ポリスチレン(PS)(屈折率n=1.59)
「HIPS」 PSジャパン社製
・ポリメチルメタクリレート(PMMA)(屈折率n=1.50)
「スミペックス」 住友化学社製
・ポリメチルメタクリレート(PMMA)(屈折率n=1.48)
「デルペット」 旭化成社製
・ポリエチレンテレフタレート(PET)(屈折率n=1.67)
「クラペット」 クラレ社製
・ポリ塩化ビニリデン(PVDC)(屈折率n=1.60)
「Ixan」 ソルベイ社製
・ポリプロピレン(PP)(屈折率n=1.49)
「住化ノーブレン」 住友化学社製
・四フッ化エチレンエチレン共重合(ETFE)(屈折率n=1.42)
「Fluon ETFE」 旭硝子社製
・四フッ化エチレン(PTFE)(屈折率n=1.35)
「Fluon PTFE」 旭硝子社製
(a)CNT線材の断面積の測定
CNT線材の径方向の断面をイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製IM4000)により切り出した後、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製SU8020、倍率:100倍~10,000倍)で得られたSEM像から、CNT線材の径方向の断面積を測定した。CNT被覆電線の長手方向中心側の任意の1.0mにおいて10cmごとに同様の測定を繰り返し、その平均値をCNT線材の径方向の断面積とした。なお、CNT線材の断面積として、CNT線材内部に入り込んだ樹脂は測定に含めなかった。
(b)絶縁被覆層の断面積の測定
CNT線材の径方向の断面をイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製IM4000)により切り出した後、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製SU8020、倍率:100倍~10,000倍)で得られたSEM像から、絶縁被覆層の径方向の断面積を測定した。CNT線材の長手方向中心側の任意の1.0mにおいて10cmごとに同様の測定を繰り返し、その平均値を絶縁被膜層の径方向の断面積とした。従って、絶縁被覆層の断面積として、CNT線材に入り込んだ樹脂も測定に含めた。
(c)SAXSによるアジマス角の半値幅Δθの測定
小角X線散乱装置(Aichi Synchrotoron)を用いてX線散乱測定を行い、得られたアジマスプロットからアジマス角の半値幅Δθを求めた。
(d)WAXSによるピークトップのq値及び半値幅Δqの測定
広角X線散乱装置(Aichi Synchrotoron)を用いて広角X線散乱測定を行い、得られたq値-強度グラフから、強度の(10)ピークにおけるピークトップのq値及び半値幅Δqを求めた。
(e)偏肉率の測定
CNT被覆電線の長手方向中心側の任意の1.0mにおいて10cmごとに径方向の同一断面について、それぞれ、α=(絶縁被覆層の肉厚の最小値/絶縁被覆層の肉厚の最大値)×100の値を算出し、各断面にて算出したα値を平均した値として測定した。また、絶縁被覆層21の肉厚は、例えば、円近似したCNT線材10の界面と絶縁被覆層21の最短距離として、SEM観察の画像(倍率:100倍~10,000倍)から測定することができる。
(f)平均肉厚の測定
上記(a)と同様にして得られたCNT被覆電線の径方向断面のSEM像(100倍~10,000倍)から、CNT被覆電線の径方向断面積を測定した。上記(a)で得られたCNT線材の径方向断面積と同じ面積となる円(CNT線材相当円)と、CNT被覆電線の径方向断面積と同じ面積となる円(CNT被覆電線相当円)とをそれぞれ得て、CNT被覆電線相当円の半径から、CNT線材相当円の半径との差を求め、平均肉厚とした。
CNT被覆電線の上記各測定の結果について、下記表1に示す。
上記のようにして作製したCNT被覆電線について、以下の評価を行った。
(1)放熱性
100cmのCNT被覆電線の両端に4本の端子を接続し、四端子法で抵抗測定を行った。この際、印加電流は2000A/cmとなるように設定し、抵抗値の時間変化を記録した。測定開始時と10分間経過後の抵抗値を比較し、その増加率を算出した。CNT電線は温度に比例して抵抗が増加するため、抵抗の増加率が小さいものほど放熱性に優れると判断することができる。抵抗の増加率が5%未満のものを「〇」、5%以上10%未満のものを「△」、10%以上のものを「×」とした。
(2)絶縁信頼性
JIS C 3215-0-1:2014の箇条13.3に準拠した方法で行った。試験結果が表9に記載されたグレード3を満たすものを「◎」、グレード2を満たすものを「〇」、グレード1を満たすものを「△」、いずれのグレードにも満たないものを「×」とした。
(3)視認性
実施例1~20及び比較例1~3のCNT被覆電線と被覆していないCNT線材のそれぞれについて、10cmのサンプルを200本ずつ作製した。得られたサンプルを箱に入れてよく混ぜた。この状態から1分間で、絶縁被覆層の有無に基づいてサンプルを分ける作業を行った。正確に分けられた本数が100本以上の場合、視認性が優れていると判定して「◎」とし、正確に分けられた本数が50本以上の場合、視認性が良好であると判定して「○」とし、正確に分けられた本数が50本未満の場合には、視認性が劣るとして「×」とした。
上記評価の結果を下記表1に示す。
Figure 0007203749000001
上記表1に示すように、1.45以上の屈折率nを有する樹脂を絶縁被覆層として有する実施例1~20のCNT被覆電線は、樹脂の種類が異なるものであっても、視認性が良好であることがわかった。また、実施例1~20のCNT被覆電線では、0.05以上1.50以下のCNT線材の径方向断面積に対する絶縁被覆層の径方向断面積の比率も備えており、絶縁信頼性を損なうことなく、優れた放熱性も得られることがわかった。さらに、実施例4、6、8~10、19~20のCNT被覆電線では、偏肉率が50%以上65%以下であるため、優れた視認性が得られることがわかった。
さらに、実施例1~20では、アジマス角の半値幅Δθは、いずれも60°以下であった。従って、実施例1~20のCNT線材では、CNT集合体は優れた配向性を有していた。さらに、実施例1~20では、強度の(10)ピークにおけるピークトップのq値は、いずれも2.0nm-1以上5.0nm-1以下であり、半値幅Δqは、いずれも0.1nm-1以上2.0nm-1以下であった。従って、実施例1~20のCNT線材では、CNTも優れた配向性を有していた。
一方で、絶縁被覆層の樹脂の屈折率nが1.45未満の比較例1~3では、樹脂の種類が同じものであって、良好な視認性が得られなかった。
1 カーボンナノチューブ被覆電線
10 カーボンナノチューブ線材
11 カーボンナノチューブ集合体
11a カーボンナノチューブ
21 絶縁被覆層

Claims (12)

  1. 複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の複数からなるカーボンナノチューブ線材と、該カーボンナノチューブ線材を被覆する絶縁被覆層と、を備え、
    複数の前記カーボンナノチューブ集合体の配向性を示す小角X線散乱によるアジマスプロットにおけるアジマス角の半値幅Δθが60°以下であり、
    前記絶縁被覆層が、1.45以上の屈折率nを有する材料により構成されているカーボンナノチューブ被覆電線。
  2. 前記カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積に対する前記絶縁被覆層の径方向の断面積の比率が0.05以上である請求項1に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  3. 前記カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積に対する前記絶縁被覆層の径方向の断面積の比率が、0.05以上1.50以下である請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  4. 前記絶縁被覆層を構成する材料の屈折率nが1.45以上1.70以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  5. 前記絶縁被覆層を構成する材料が、熱可塑性樹脂である請求項1~4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  6. 前記絶縁被覆層の径方向の断面積が、0.003mm以上40mm以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  7. 前記カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積が、0.0005mm以上80mm以下である請求項1~6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  8. 前記絶縁被覆層の偏肉率が、30%以上である請求項1~7のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  9. 前記絶縁被覆層の偏肉率が、80%以上である請求項1~8のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  10. 前記絶縁被覆層の偏肉率が、50%以上95%以下である請求項1~8のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  11. 前記絶縁被覆層の偏肉率が、50%以上65%以下である請求項10に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
  12. 複数の前記カーボンナノチューブの密度を示すX線散乱による散乱強度の(10)ピークにおけるピークトップのq値が2.0nm-1以上5.0nm-1以下であり、且つ半値幅Δqが0.1nm-1以上2.0nm-1以下である請求項1~11のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ被覆電線。
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