以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[第1実施形態]
<熱交換装置>
本発明の第1実施形態に係る熱交換装置10は、ナノ多孔質体20に応力を印加および解放することにより、機械的に変形させて、冷媒(媒体)60の脱離および吸着を行う。冷媒60の脱離時に発生する蒸発潜熱から得た冷熱を利用して対象を冷却することを特徴とする。熱交換装置10は、例えば、自動車の室内(内気)を冷却するカーエアコン(冷房)に適用することができる。
図1に示すように、熱交換装置10は、一対の熱交換部30A、30B(第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30B)、および装置全体の動作を制御する制御部40を有する。制御部40は、一対の熱交換部30A、30Bのうち一方の動作モードが脱離モードである間は他方の動作モードが吸着モードになるようにスイング運転する。これにより、脱離モードの熱交換部30A、30Bにおいて連続的に冷熱を生成することが可能となる。ここで、「脱離モード」とは、冷媒60をナノ多孔質体20から脱離させる動作モードである。また、「吸着モード」とは、冷媒60をナノ多孔質体20に吸着させる動作モードである。
熱交換装置10は、第1チャンバー32Aと第2チャンバー32Bとの間を冷媒60が移動可能に連通する配管50と、配管50の連通状態と遮断状態とを切り替えるバルブ51と、を有する。バルブ51を開くと配管50は連通状態となり、バルブ51を閉じると配管50は遮断状態となる。
[熱交換部30A、30B]
図1に示すように、第1熱交換部30Aは、第1ナノ多孔質体20Aと、第1応力付与部31Aと、第1チャンバー32Aと、第1空気調節部33Aと、を有する。同様に、第2熱交換部30Bは、第2ナノ多孔質体20Bと、第2応力付与部31Bと、第2チャンバー32Bと、空気調節部33Bと、を有する。
第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bは、同様の構成を有する。以下の説明では、第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bを総称して「熱交換部30A、30B」と称する。同様に、第1応力付与部31Aおよび第2応力付与部31Bを総称して「応力付与部31A、31B」と称する。また、第1チャンバー32Aおよび第2チャンバー32Bを総称して「チャンバー32A、32B」と称する。また、第1空気調節部33Aおよび第2空気調節部33Bを総称して「空気調節部33A、33B」と称する。また、第1ナノ多孔質体20Aおよび第2ナノ多孔質体20Bを総称して「ナノ多孔質体20」と称する。
[ナノ多孔質体20]
ナノ多孔質体20は、弾性を有し、収縮して冷媒60を脱離可能で、かつ、膨張して冷媒60を吸着可能なナノ多孔質の材料から構成される。ナノ多孔質体20は、応力付与部31A、31Bから応力を印加されて収縮して冷媒60を脱離し、応力を解放すると自由膨張して冷媒60を吸着する。
ここで、「弾性」とは、応力付与部31A、31Bによって外部から応力を印加して収縮させても、応力を解放することによって、可逆的に大きく変形してほぼ元の形状に回復する性質を意味する。ナノ多孔質体20の弾性限度は、冷媒60を脱離するために必要な応力印加よりも大きくなるように設計されている。ナノ多孔質体20の弾性限度は、熱交換装置10の適用対象の冷却規模等に応じて適宜設計することが好ましい。
また、「ナノ多孔質」とは、複数のナノレベルの細孔を有することを意味する。ナノレベルの細孔とは、好ましくは直径0.5~100nmであり、より好ましくは直径0.7~50nmであり、さらに好ましくは直径0.7~6nmのミクロ孔またはメソ孔である。なお、IUPAC(国際純正及び応用化学連合)では、直径2nm以下の細孔をミクロ孔(micropore)、直径2~50nmの細孔をメソ孔(mesopore)、直径50nm以上の細孔をマクロ孔(macropore)と定義している。
ナノ多孔質体20を収縮させるために必要な応力付与部31A、31Bの仕事量を低減する観点から、ナノ多孔質体20のヤング率は1.1GPa以下に設計することが好ましい。なお、ヤング率を1.1GPa以下に設計する理由については後述する。
図2Aに示すように、一般的に、固体表面はファンデルワールス力によるポテンシャルエネルギーが高く、冷媒60の分子を凝縮させる作用がある。特に、本実施形態に係るナノ多孔質体20では、図2Bに示すように、ナノ多孔質体20に吸着された冷媒60は、ナノレベルの小さな細孔壁に囲まれているため、固体表面のファンデルワールス力(物理吸着力)によるポテンシャルエネルギーが著しく高い。このとき、気体の冷媒60は、ナノ多孔質体20の細孔壁に液体の密度で吸着される。すなわち、ナノ多孔質体20への吸着は気体から液体への相変化と同質の現象であり、吸着熱は凝縮潜熱にほぼ等しい。
以下の説明では、冷媒60は、ナノ多孔質体20に吸着すると気体から液体へ相変化し、脱離すると液体から気体へ相変化するものとする。また、吸着熱は、凝縮潜熱に等しいとする。なお、ナノ多孔質体20への冷媒60の脱離および吸着による相変化は、後述する実施例において確認した。
図3は、冷媒60の状態図を示す。図3中に点線で示すように、ナノ多孔質体20の細孔壁に吸着された細孔内部の液体密度の冷媒60は、飽和蒸気圧よりも低い圧力の蒸気と平衡状態となっている。すなわち、ナノ多孔質体20の細孔壁に吸着された気体は、飽和蒸気圧よりも低い圧力で液体の状態となる。
図4Aは、ナノ多孔質体20を収縮させて冷媒60を脱離させる様子を示す図である。図4Aに示すように、ナノ多孔質体20は、応力を印加する(仕事Wns[J])と細孔が収縮し、細孔壁に吸着していた冷媒60は脱離する。このとき、液体の密度で吸着された冷媒60は、再び気体としてナノ多孔質体20の外部に放出される。熱交換装置10は、この脱離の際の蒸発潜熱QL[J]を冷熱として利用することによって、対象を冷却することができる。
図4Bは、収縮したナノ多孔質体20を自由膨張させて冷媒60を吸着させる様子を示す図である。図4Bに示すように、ナノ多孔質体20は、応力を解放すると、ナノ多孔質体20は自由膨張して細孔が元の大きさに戻り、冷媒60を再び吸着させることができる。上述したように、冷媒60は、ナノ多孔質体20の細孔壁に液体の密度で吸着される。すなわち、冷媒60は、ナノ多孔質体20へ吸着される際に、気体から液体へ相変化して、凝縮潜熱QH[J]を発生する。
ナノ多孔質体20を構成する材料としては、弾性を有し、収縮して冷媒60を脱離可能で、かつ、膨張して冷媒60を吸着可能な材料であれば特に限定されない。そのような材料としては、例えば、ゼオライトテンプレートカーボン(ZTC;Zeorite Template Carbon)、グラフェンメソスポンジ(GMS;Graphene MesoSponge)等が挙げられる。ゼオライトテンプレートカーボン(以下、「ZTC」と称する。)およびグラフェンメソスポンジ(以下、「GMS」と称する。)は、いずれも単層グラフェン骨格からなり、冷媒60の脱離および吸着に必要な多孔性および弾性特性を有している。
ZTCは、単層のグラフェンシートにより構成される。また、均一な細孔(直径約1.2nm)が三次元的に規則配列し、相互に連結しており、極めて高いBET比表面積と細孔容積を有する(最大でBET比表面積が4100m2/g、細孔容積が1.8cc/g)ことが知られている。なお、ZTCの規則構造は、X線回折装置(Rigaku,MiniFlex600,CuK)を用いて分析した。また、ZTCのBET比表面積は、液体窒素吸着(77K)(Microtrac BEL,BELSORB-max)を用いて分析した。
ZTCの製造方法については、Nishihara, H. et al., Chemistry-European Journal 15, 5355 (2009)等に記載されている。具体的には、まず、構造内部に空孔を有し、この空孔が網目状に連結した構造を有する多孔質材料(例えば、ゼオライト等)を鋳型として準備する。そして、この多孔質材料の表面および空孔の内部に加熱条件下で有機化合物(例えば、アセチレン、エチレン等)を導入し、加熱することによって当該有機化合物を炭化し、多孔質材料に炭素を堆積させる。ここで、有機化合物の炭化・炭素の堆積は、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により行うことができる。そして、鋳型である多孔質材料を除去する。この方法により、鋳型の三次元構造を反映した炭素材料(すなわち、ZTC)を容易に製造することができる。上記の方法により製造されたZTCは柔軟性および弾性に優れ、細孔の直径が約1.2nmから約0.7nmになるまで可逆的に弾性変形することができる。
GMSもまた、細孔壁の大部分が単層グラフェンから構成され、約6nm程度の微小な細孔を有するスポンジ状のメソ多孔体であり、ZTCと同様、活性炭に匹敵する極めて高いBET比表面積(約2000m2/g)を有している。その一方で、活性炭やカーボンブラックとは異なり腐食の原因となるグラフェンの端部をほとんど含んでいないことから、優れた耐食性(酸化耐性)も備えている。また、柔軟かつ強靭であるというグラフェンの性質に起因して、GMSは柔軟性および弾性に優れ、細孔の直径が約5.8nmから約0.7nmになるまで可逆的に弾性変形することができる。
GMSの製造方法については、Nishihara, H. et al., Advanced Functional Materials, Vol. 26, 2016, 6418-6427.に記載されている。具体的には、まず、ナノサイズの球状基材として、アルミナ等(例えば、γ-アルミナ)からなる金属酸化物ナノ粒子を準備する。この材料は後述するCVD法による炭素被覆に対する高い触媒活性と、優れた耐焼結耐性を有している。
続いて、有機化合物を炭素源として用いたCVD法により、上記で準備した球状基材(金属酸化物ナノ粒子)の表面を炭素で被覆する。このCVD法を用いた炭素被覆によれば、球状基材(金属酸化物ナノ粒子)の全表面に均一な炭素層を形成することが可能である。なお、この際に用いられる有機化合物としては、メタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、ベンゼン等が挙げられるが、なかでも特に大量の炭素結晶による被覆が達成されうるという観点からは、メタンを炭素源として用いることが好ましい。なお、CVDプロセスにおいては、ガス流の流れを良くする目的で、石英砂(珪砂)などのスペーサーを球状基材(金属酸化物ナノ粒子)と混合した状態で有機化合物を導入してもよい。また、有機化合物の導入には窒素等の不活性ガスをキャリアガスとして用いてもよく、キャリアガスと炭素源(有機化合物)との混合ガスにおける炭素源の濃度は10~30体積%程度とすることが好ましい。
CVDプロセスが進行すると試料の色は黒色に変化する一方で当該試料を内包する反応容器(例えば、石英管)は透明に維持されることから、炭素の堆積は球状基材(金属酸化物ナノ粒子)の表面上のみに生じていることが確認できる。ここで、CVDプロセスを経ても球状基材(金属酸化物ナノ粒子)は焼結していないため、炭素被覆された球状基材の形状は炭素被覆前からほとんど変化しない。このようにして球状基材(金属酸化物ナノ粒子)の表面に被覆された炭素層の(平均)積層数は、CVDプロセスにおいて投入した炭素源(有機化合物)の量のほか、CVDの際の処理温度および処理時間などに基づいて制御可能であり、最終的に得られるGMSにおけるグラフェン層の(平均)積層数に対応している。この(平均)積層数の値は特に制限されないが、冷媒60に対して優れた脱離/吸着特性を示すという観点から、好ましくは0.90~3.0であり、より好ましくは0.95~2.0であり、さらに好ましくは0.98~1.5であり、特に好ましくは1.0~1.1である。なお、CVDプロセスにおける処理温度および処理時間についても特に制限はないが、処理温度は好ましくは800~1000℃であり、より好ましくは850~950℃である。また、処理時間は好ましくは1~10時間であり、より好ましくは2~6時間である。
その後、鋳型として用いられた球状基材(金属酸化物ナノ粒子)を化学エッチングによって除去し、当該球状基材の表面に被覆された炭素層のみを残す。この際、化学エッチングには強酸または強塩基の水溶液を用いればよい。強酸としては、例えば、フッ酸(HF)が挙げられる(この場合には室温でのエッチングが可能である)。また、強塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)が挙げられる(この場合には200~300℃程度に加熱することが好ましい)。化学エッチングによって球状基材(金属酸化物ナノ粒子)が除去されると、GMSの前駆体として、球状のメソ孔を有する炭素メソスポンジ(CMS;Carbon MesoSponge)が得られる。
最後に、このようにして得られた炭素メソスポンジ(CMS)を必要に応じて水洗した後、減圧条件下において、1500~2000℃(好ましくは1700~1900℃)程度の温度で、30分間~2時間程度の熱処理を施す。これにより、炭素層のグラフェンへの結晶化が進行し、GMSが得られる。ここで、炭素メソスポンジ(CMS)の有する球状のメソ孔は上述した熱処理の際の高温に対しても非常に安定であることから、このようにして得られたGMSにおいても炭素メソスポンジ(CMS)と同様のメソ孔が保持されている。GMSはこのようなメソ孔を有していることから、スポンジのように柔軟に弾性変形が可能である。このため、収縮して冷媒60を脱離可能であると共に、膨張しては冷媒60を吸着可能であり、本実施形態に係る熱交換装置10におけるナノ多孔質体20として好適に用いられうる。
[応力付与部31A、31B]
応力付与部31A、31Bは、図4Aに示すようにナノ多孔質体20に応力を印加して収縮させ、図4Bに示すように印加した応力を解放してナノ多孔質体20を自由膨張させる。これにより、応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質体20の細孔径を外部からの応力で制御することができる。
応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質体20に対して接近離反する方向に往復運動してナノ多孔質体20に応力を印加および解放することができる限りにおいてその構成は特に限定されない。応力付与部31A、31Bとしては、例えば、モーターの回転運動を利用した機械式プレス機や油圧等の流体圧を利用した液圧式プレス機などを使用することができる。
[チャンバー32A、32B]
チャンバー32A、32Bは、内部にナノ多孔質体20を収容する空間を有する容器である。チャンバー32A、32Bの内部は、真空または真空に近い低圧に保たれている。このため、冷媒60は比較的低い温度において液体から気体へ相変化することができる(図3を参照)。
[空気調節部33A、33B]
空気調節部33A、33Bは、チャンバー32A、32B内を低温の空気と熱伝導させた冷却状態と、高温の空気と熱伝導させた排熱状態とを切り替える。本実施形態の熱交換装置10は、対象を冷却するための装置であるため、低温の空気は、冷却する対象の雰囲気に相当する。空気調節部33A、33Bは、冷却状態にして対象を冷却するために必要な冷熱を熱交換部30A、30Bから取り出す。また、空気調節部33A、33Bは、排熱状態にして熱交換部30A、30Bから発生した熱を排熱する。
熱交換装置10を自動車のカーエアコン(冷房)に適用する場合は、例えば、低温の空気を車室内空気(内気)とし、高温の空気を車室外空気(外気)とすることができる。冷房を使用する夏季は、外気温度が内気温度よりも高く、例えば、外気温度は約303K、内気温度は約298Kとなる。以下の説明では、低温の空気を車室内の「内気」、高温の空気を車室外の「外気」として説明する。
[制御部40]
制御部40は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。後述の制御を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の制御が実現される。
制御部40は、応力付与部31A、31Bおよび空気調節部33A、33Bの動作を制御する。制御部40は、熱交換部30A、30Bにおける動作モードを、冷媒60をナノ多孔質体20から脱離させる脱離モードと、冷媒60をナノ多孔質体20に吸着させる吸着モードとに切り替える。
[冷媒60]
本実施形態では冷媒60として水を用いる。一般的な蒸気圧縮式の熱交換装置では、フロロカーボン系のHFC-134aが冷媒として広く用いられている。一般的な作用圧力は0.34~1.2MPa、温度範囲は277~323Kであり、高圧での運転が必要となるが、室温付近での運転が可能であり、その成績係数COPは、5~7程度である。一方で、水は、HFC-134aに対して、約16倍の蒸発潜熱を有するため、理論的には得られる冷熱は16倍になる。また、HFC-134a等のフロロカーボン系冷媒において、オゾン層破壊の問題は改善されてきているが、依然として地球温暖化係数は大きい。これに対して、水に代表される自然冷媒は、地球環境に悪影響を及ぼさない。
以上の理由から、冷媒60として水を用いることによって成績係数COPを向上できると共に地球環境にやさしい熱交換装置10を提供することができる。
なお、本発明に適用できる冷媒60は、水に限定されず、例えば、後述する実施例2のようにエタノールを用いることもできる。
<熱交換装置10の熱サイクル>
次に、図5を参照して、熱交換装置10による熱サイクルについて説明する。図5は、熱交換装置10の熱サイクルのT-S線図を示す。なお、本発明では、冷媒60を次の4種類に分けて考える。第1の種類は恒久的にナノ多孔質体20に吸着した状態で留まる分であり、これを冷媒61とする。第2の種類は、ナノ多孔質体20への応力印加や自由膨張により脱離および吸着するもののうち、内気の冷却に関与しない分であり、これを冷媒62とする。第3の種類は、ナノ多孔質体20への応力印加や自由膨張により脱離および吸着するもののうち、内気の冷却に関与する分であり、これを冷媒63とする。第4の種類は、ナノ多孔質体20に吸着せずに恒久的に気相として存在する分であり、これを冷媒64とする。なお、図5で考慮しているのは、冷媒63のみである。
熱交換装置10の熱サイクルは、逆カルノーサイクルである。逆カルノーサイクルは、状態1→状態2→状態3→状態4の順に冷媒63の状態を変化させる。図5中の状態1から状態2のプロセスは加熱、状態2から状態3のプロセスは等圧等温の吸着、状態3から状態4のプロセスは冷却、状態4から状態1のプロセスは等圧等温の脱離の各行程を示す。ここで、冷媒63は、状態1では低温T1の飽和蒸気であり、状態2では高温T2の過熱蒸気であり、状態3では高温T3の液体であり、状態4では低温T4の液体である。ここで、温度T1とT4は等しくTLであり、温度T2とT3は等しくTHである。
状態1から状態2では、冷媒63は、低温TLの飽和蒸気から加熱されて高温THの過熱蒸気になる。このとき、冷媒63は、気体のまま相変化せずに温度が上昇する。同時に、冷媒61およびナノ多孔質体20の温度をTLからTHに上昇させるために顕熱Qsh1-2[J]が吸熱される。なお、冷媒63は気体であり、その顕熱は液体である冷媒61の顕熱に比べて小さいため無視できる。熱交換装置10の熱サイクルでは、「顕熱」は、冷媒61の温度変化に必要な熱量のみでなく、ナノ多孔質体20の温度変化に必要な熱量も含むものとする。
状態2から状態3では、収縮していたナノ多孔質体20が自由膨張することによって、冷媒63はナノ多孔質体20の細孔内に吸着する(図4Bを参照)。吸着により、冷媒63は、気体(水蒸気)から液体(水)へと相変化する。相変化に伴って凝縮潜熱QH[J]が排熱される。
状態3から状態4では、冷媒63は、高温THの液体から冷却されて低温TLの液体になる。このとき、冷媒61および63は、液体のまま相変化せずに温度が低下する。冷媒61、63およびナノ多孔質体20の温度をTHからTLに低下させるために、顕熱Qsh[J]が排熱される。なお、状態3および状態4では、冷媒63は、細孔内に吸着した状態である。また、状態3から状態4に至る間、気体である冷媒62が温度低下に伴いナノ多孔質体20Aに吸着されるため、系の気相圧力は一旦低下するが、ナノ多孔質体20を収縮させ冷媒62を脱離させることで系の気相圧力を元に戻し状態4に至らしめるものとする。
状態4から状態1では、ナノ多孔質体20を収縮させて冷媒63を脱離する(図4Aを参照)。状態3から状態4に至る間にナノ多孔質体20を収縮させるために必要な外部からの仕事と、状態4から状態1に至る間にナノ多孔質体20を収縮させるために必要な外部からの仕事との和をWns[J]とする。また、脱離により冷媒63は、液体(水)から気体(水蒸気)へと相変化する。相変化に伴って蒸発潜熱QL[J]が吸熱される。熱交換装置10は、蒸発潜熱QL[J]を冷熱として利用することにより対象を冷却することができる。
<熱交換装置10の制御方法>
次に、図6A~図6Hを参照して、本実施形態の熱交換装置10の制御方法について説明する。なお、以下の説明において、状態1~4は、図5に示す状態1~4のことを意味する。また、応力付与部31A、31Bおよび空気調節部33A、33Bの動作は、制御部40が制御する。
図6A~図6Hに示すように、本実施形態の熱交換装置10は、一対の熱交換部30A、30Bのうち一方の熱交換部の動作モードが脱離モードである間は他方の熱交換部の動作モードが吸着モードになるようにスイング運転する。
図6A~図6H中の「内気」は、空気調節部33A、33Bによってチャンバー32A、32B内を冷却対象である低温の空気(車室内空気)と熱伝導させた状態を示す。また、図6A~図6H中の「外気」は、空気調節部33A、33Bによってチャンバー32A、32B内を高温の空気(車室外空気)と熱伝導させた状態を示す。なお、空気調節部33A、33Bの図示は省略する。
[第1熱交換部30A:脱離モード、第2熱交換部30B:吸着モード]
図6A~図6Cは、第1熱交換部30Aが脱離モード、第2熱交換部30Bが吸着モードの状態の熱交換装置10を示す。
(脱離モード/吸着モードの開始)
図6Aは、第1熱交換部30Aの脱離モードおよび第2熱交換部30Bの吸着モードの開始時の状態を示す。この時、第1チャンバー32A内の冷媒63は、状態3と状態4との間、第2チャンバー32B内の冷媒63は、状態1と状態2との間のそれぞれ途中段階にある。第1チャンバー32A内の第1ナノ多孔質体20Aは、第1応力付与部31Aからの応力印加がなく自由膨張した状態である。第2チャンバー32B内の第2ナノ多孔質体20Bは、第2応力付与部31Bからの応力印加によって収縮した状態である。なお、バルブ51は閉じた状態である。
第1チャンバー32A内の冷媒62および63は、温度T4にて第1ナノ多孔質体20Aに吸着が完了した状態である。この時、第1チャンバー32Aの気相圧力は状態3および状態4より低い状態にある。第2チャンバー32B内の冷媒62および63は、温度T2にて第2ナノ多孔質体20Bから脱離が完了した状態である。この時、第2チャンバー32Bの気相圧力は状態2および状態3より高い状態にある。なお、吸着が完了した第1チャンバー32A内においても、冷媒64は吸着されずに気体の状態で残る。同様に、脱離が完了した第2チャンバー32B内においても、冷媒61は脱離されずに液体の状態で恒久的にナノ多孔質体20の内部に吸着された状態で残る。この恒久的にナノ多孔質体20に残る冷媒61は、顕熱変化のみを後述する成績係数COPの計算に考慮する。
第1熱交換部30Aでは、第1チャンバー32A内を冷却対象である内気と熱伝導させた状態である。第2熱交換部30Bでは、第2チャンバー32B内を外気と熱伝導させた状態である。
第1チャンバー32A内の温度T4は、第2チャンバー32B内の温度T2よりも低い。また、第1チャンバー32Aの内圧は、第2チャンバー32Bの内圧よりも低い。このため、バルブ51は閉じた状態とする。
第1熱交換部30Aは、脱離モードを開始すると、第1応力付与部31Aによって第1ナノ多孔質体20Aに圧縮応力を印加して第1ナノ多孔質体20Aを収縮させる。これにより、第1ナノ多孔質体20Aの細孔が収縮して、冷媒62を脱離する。
熱交換装置10では、第1熱交換部30Aと第2熱交換部30Bとが交互に脱離モードとなるが、COP計算に関係するのは、いずれかの熱交換部が脱離モードにおいて冷媒62および63を脱離するために必要な仕事Wns[J]である。
冷媒60は、脱離によって第1チャンバー32A内の圧力を増加させ、系を状態4に至らしめる。冷媒62の相変化に伴って蒸発潜熱QL3-4[J]が発生する。後述において説明するが、この蒸発潜熱QL3-4[J]は、図6Hに示す冷媒62の凝縮潜熱QH3-4[J]の分を相殺するために使われるため冷熱として利用されない。
一方で、第2熱交換部30Bは、吸着モードを開始すると、第2応力付与部31Bから第1ナノ多孔質体20Aに印加した応力を解放する。これにより、第2ナノ多孔質体20Bが自由膨張して細孔が元の形状に復元すると同時に、蒸気として存在している冷媒62を吸着する。すると第2チャンバー32B内の圧力は減少し、系は状態2に至る。相変化に伴って凝縮潜熱QH1-2[J]が発生する。凝縮潜熱QH1-2[J]は、空気調節部33Bによって外気へ排熱される。
上記プロセス中は、第1チャンバー32Aの内圧(蒸気圧)が上昇する一方で、第2チャンバー32Bの内圧(蒸気圧)は低下する。上記プロセス開始時は、第1チャンバー32Aの内圧が第2チャンバー32Bの内圧よりも低いため、第1チャンバー32Aの内圧は、第2チャンバー32Bの内圧に近づく。
(バルブ51を開く)
図6Bに示すように、第1チャンバー32Aの内圧と第2チャンバー32Bの内圧が等しくなったとき、バルブ51を開く。この時、第1チャンバー32A内の冷媒63は状態4、第2チャンバー32B内の冷媒63は状態2にある。バルブ51を開いた以降は、第1チャンバー32Aにおいて脱離した状態1の飽和蒸気は、配管50を介して第2チャンバー32Bへと移動して温度T2の過熱蒸気へと変化する。このように、飽和蒸気の冷媒63が第1チャンバー32Aから第2チャンバー32Bへ連続的に供給される。状態2から状態3へのエンタルピー変化(H3-H2)は、第2チャンバー32Bから外気へ排熱する熱量QH[J]に相当する。
第1熱交換部30Aでは、冷媒63の脱離によって蒸発潜熱QL[J]が発生する。バルブ51を開いた後の蒸発潜熱QL[J]は、内気を冷却するための冷熱として利用される。
(脱離モード/吸着モードの終了;バルブ51を閉じる)
図6Cは、第2ナノ多孔質体20Bがこれ以上自由膨張しない限界に達した状態を示す。この状態で第2熱交換部30Bの吸着モードを終了する。吸着モードの終了と同時に、第1熱交換部30Aは、第1ナノ多孔質体20Aへの応力印加を停止して脱離モードを終了する。脱離モード/吸着モードを終了したら、バルブ51を閉じる。
脱離モードおよび吸着モードを終了した段階で、第1チャンバー32A内の冷媒63は、状態1であり、第2チャンバー32B内の冷媒63は、状態3である。第1チャンバー32A内の温度TLは、第2チャンバー32B内の温度THよりも低い状態のままである。また、バルブ51を閉じた直後は、第1チャンバー32Aの内圧と第2チャンバー32Bの内圧は等しい。この時、第1チャンバー32A内で冷媒62の一部は、ナノ多孔質体20Aに吸着されている。また、第2チャンバー32B内で冷媒62の一部は、気相として存在している。
[動作モードの切り替え]
図6Dは、熱交換部30Aの動作モードを切り替える状態を示す図である。第1熱交換部30Aを吸着モードに切り替え、第2熱交換部30Bを脱離モードに切り替える。
第1熱交換部30Aでは、第1チャンバー32A内を内気と熱伝導した状態から、外気と熱伝導した状態に切り替える。第2熱交換部30Bでは、第2チャンバー32B内を外気と熱伝導した状態から内気と熱伝導した状態に切り替える。外気は内気よりも高温のため、第1チャンバー32A内の温度がTLからTHに上昇し、第2チャンバー32B内の温度がTHからTLに低下する。
第1熱交換部30Aでは、第1チャンバー32A内の温度がTLからTHに上昇したことによって、冷媒61および第1ナノ多孔質体20Aの温度をTLからTHに上昇させるために顕熱Qsh1-2[J]が吸熱される。顕熱Qsh1-2[J]は、外気から吸熱するため、後述する成績係数COPの計算では無視できる。また、冷媒63が状態1(低温気体)から状態2(高温気体)に変化するため顕熱が発生するが、これも外気から吸熱するため、無視できる。
また、ナノ多孔質体20の物理吸着量は高温になるほど小さい。従って、第1熱交換部30Aでは、温度TLで脱離平衡に達していた状態から温度THに加熱されると冷媒62の脱離が進行する。冷媒62の脱離により蒸発潜熱QL1-2[J]が発生する。蒸発潜熱QL1-2[J]は、外気から吸熱するため、後述する成績係数COPの計算では無視できる。なお、脱離に伴い、第1チャンバー32A内の圧力は状態1および状態2の圧力よりも高くなっている。
第2熱交換部30Bでは、第2チャンバー32B内の温度がTHからTLに低下したことによって、冷媒61、63が状態3(高温液体)から状態4(低温液体)に変化する。このため、第2熱交換部30Bでは、冷媒61、63および第2ナノ多孔質体20Bの温度をT3からT4に低下させるために顕熱Qsh[J]が内気に排熱される。その結果、顕熱Qsh[J]が冷却対象である内気の温度を上昇させてしまうため、熱エネルギーの損失が生じる。従って、成績係数COPの計算では、冷熱として得られる蒸発潜熱QL[J]から顕熱Qsh[J]を差し引く必要がある。
また、ナノ多孔質体20の物理吸着量は低温であるほど大きい。従って、第2熱交換部30Bでは、温度THで吸着平衡に達していた状態から温度TLに冷却されると冷媒62の吸着が進行する。冷媒62の吸着により凝縮潜熱QH3-4[J]が発生する。この凝縮潜熱QH3-4[J]は、冷却対象である内気の温度を上昇させてしまう。しかしながら、後述する図6Eに示す蒸発潜熱QL3-4[J]と相殺することができるため、後述する成績係数COPの計算では無視できる。
なお、ナノ多孔質体20の物理吸着量と温度との関係(図13を参照)については後述の実施例において詳細に説明する。
第1熱交換部30Aでは脱離が起こり、第2熱交換部30Bでは吸着が起こるため、第1チャンバー32Aの内圧が第2チャンバー32Bの内圧よりも低くなる。このとき、バルブ51は閉じた状態のため、チャンバー32A、32B間の内圧の差によって冷媒60が低温の第2チャンバー32Bから高温の第1チャンバー32Aへ逆流することを防止できる。以上の理由から、熱交換部30A、30Bの動作モードを切り替える際(図6Dを参照)には、バルブ51を閉じた状態にしておくことが好ましい。
[第1熱交換部30A:吸着モード、第2熱交換部30B:脱離モード]
図6E~図6Gは、第1熱交換部30Aが脱離モード、第2熱交換部30Bが吸着モードの状態を示す。図6E~図6Gは、図6A~図6Cの第1熱交換部30Aの動作モードと第2熱交換部30Bの動作モードを入れ替えた図である。2つの熱交換部30A、30Bの脱離モードの動作と吸着モードの動作はそれぞれ同じであるため、前述した説明と重複する事項については前述の記載を参照して説明を省略する。
(脱離モード/吸着モードの開始)
図6Eは、図6Aの熱交換部30A、30Bの動作モードを入れ替えた図である。図6Eは、第1熱交換部30Aの吸着モードおよび第2熱交換部30Bの脱離モードの開始時の状態を示す。第1チャンバー32A内の温度THは、第2チャンバー32B内の温度TLよりも高い。
吸着モードの第1熱交換部30Aでは、前述した図6Aの第2熱交換部30Bの動作と同様に、ナノ多孔質体20を自由膨張させて冷媒62をナノ多孔質体20に吸着させる。吸着によって外気に排熱する凝縮潜熱QH1-2[J]が発生する。
脱離モードの第2熱交換部30Bでは、前述した図6Aの第1熱交換部30Aの動作と同様に、第2応力付与部31Bによってナノ多孔質体20を収縮させて冷媒62を脱離させる。脱離によって内気から吸熱する蒸発潜熱QL3-4[J]が発生する。
上記プロセス中は、第1チャンバー32Aの内圧(水蒸気圧)が低下する一方で、第2チャンバー32Bの内圧(水蒸気圧)は上昇する。上記プロセス開始時は、第1チャンバー32Aの内圧が第2チャンバー32Bの内圧よりも高いため、第1チャンバー32Aの内圧は、第2チャンバー32Bの内圧に近づく。
(バルブ51を開く)
図6Fは、図6Bの熱交換部30A、30Bの動作モードを入れ替えた図である。図6Fに示すように、第1チャンバー32Aの内圧と第2チャンバー32Bの内圧が等しくなったとき、バルブ51を開く。この時、第1チャンバー32A内の冷媒63は状態2、第2チャンバー32B内の冷媒63は状態4にある。
ここで、バルブ51を閉じて(図6Cを参照)からバルブ51を開く(図6Fを参照)までに、第2熱交換部30Bで吸着した冷媒62の量と脱離した冷媒62の量は等しい。これは、バルブ51を閉じるときとバルブ51を開くときに、第1チャンバー32Aの内圧と第2チャンバー32Bの内圧が等いためである。従って、図6Eに示す第2熱交換部30Bの脱離によって内気から吸熱した蒸発潜熱QL3-4[J]は、図6Dに示す第2熱交換部30Bの吸着によって内気に排熱した凝縮潜熱QH3-4[J]に等しい。このため、凝縮潜熱QH3-4[J]によって内気の温度を上昇させた分は、蒸発潜熱QL3-4[J]で相殺することができる。このため、内気の冷却は、バルブ51を開いた後の蒸発潜熱QL[J]によって行われる。
冷却に寄与しない蒸発潜熱QL3-4[J]を生成するための仕事をW1[J]とし、冷却に寄与する蒸発潜熱QL[J]を生成するための仕事をW2[J]とすると、仕事Wns[J]は、次の式で表すことができる。
ここで、仕事W1[J]は、対象を冷却するためのエネルギーではないが、凝縮潜熱QH3-4[J]の分を相殺するために必要なエネルギーである。このため、成績係数COPの計算に考慮する必要がある。従って、後述する成績係数COPの計算では、仕事Wns[J]を用いる。
前述した図6Bの動作と同様に、第2チャンバー32Bにおいて脱離した状態1の飽和蒸気は、配管50を介して第1チャンバー32Aへと移動して状態2の過熱蒸気へと変化する。これにより、冷媒60が第2チャンバー32Bから第1チャンバー32Aへ連続的に供給される。
(脱離モード/吸着モードの終了;バルブ51を閉じる)
図6Gは、図6Cの熱交換部30A、30Bの動作モードを入れ替えた図である。第1熱交換部30Aの吸着モードおよび第2熱交換部30Bの脱離モードを終了したら、バルブ51を閉じる。このとき、第1チャンバー32A内の温度THは、第2チャンバー32B内の温度TLよりも高い状態のままである。
[動作モードの切り替え]
図6Hは、熱交換部30Aの動作モードを切り替える状態を示す図である。第1熱交換部30Aを脱離モードに切り替え、第2熱交換部30Bを吸着モードに切り替える。
第1熱交換部30Aでは、第1チャンバー32A内を外気と熱伝導した状態から内気と熱伝導した状態に切り替える。第2熱交換部30Bでは、第2チャンバー32B内を内気と熱伝導した状態から、外気と熱伝導した状態に切り替える。これにより、第1熱交換部30Aの温度はT3からT4に変化し、第2熱交換部30Bの温度はT1からT2に変化する。動作モードの切り替えによって図6Aに示す状態となる。
以上説明したように、熱交換装置10の制御では、図6A~図6Hに示す動作を繰り返すことによって、一対の熱交換部30A、30Bの動作モードを交互にスイング運転する。これにより、脱離モードの熱交換部30A、30Bにおいて連続的に蒸発潜熱QL[J]による冷熱を生成することが可能となる。
図7は、対比例に係る一般的な吸着式熱交換装置の構成を示す。なお、図7中の状態1~4は、図5の状態1~4に対応する。
図7に示すように、対比例に係る熱交換装置は、減圧下で冷媒を加熱して気化させる蒸発器、気化した冷媒を脱離および吸着する吸着剤を備える吸着器、および気化した冷媒を凝縮する凝縮器を有する。対比例に係る熱交換装置では、蒸発器での蒸発潜熱QL[J]を冷却に利用している。吸着剤への冷媒の脱離/吸着の際には、冷媒は相変化せずに気体(水蒸気)のままであるため潜熱は生じない。脱離/吸着は、冷媒の輸送に利用されている。対比例に係る熱交換装置では、蒸発器での蒸発潜熱を冷却に利用しているため、蒸発器での減圧や加熱に大きなエネルギーが必要となる。また、媒体を吸着した吸着剤を再生するための加熱にもエネルギーが必要となる。その結果、成績係数COPが低下してしまう。
これに対して、本実施形態に係る熱交換装置10は、ナノ多孔質体20に応力を印加することで冷媒63を相変化させて蒸発潜熱(脱離熱)QL[J]を冷熱として利用する。また、冷媒63をナノ多孔質体20から脱離させる際に、吸着剤を再生するための加熱や、蒸発器による減圧や加熱が不要となるため、脱離に必要なエネルギーを小さくすることができる。これにより、成績係数COPを向上させることができるため、使用するナノ多孔質体20の量を減らすことができる。蒸発器や凝縮器が不要となり、ナノ多孔質体20の量を減らすことができるため、熱交換装置10を小型化することができる。
<成績係数COPの計算方法>
次に、本実施形態に係る熱交換装置10の成績係数COPの計算方法について説明する。
本実施形態に係る熱交換装置10は、外部からの仕事Wns[J]によってナノ多孔質体20から冷媒63を脱離させて、得られた蒸発潜熱QL[J]を冷熱として利用する。上述したように、図5に示す熱サイクルの状態3から状態4では、顕熱Qsh[J]による熱エネルギーの損失が生じる。従って、成績係数COPの計算では、蒸発潜熱QL[J]から顕熱Qsh[J]を差し引く必要がある。加えて、ナノ多孔質体20は完全な弾性体ではないため、ナノ多孔質体20の内部摩擦Qf[J]で損失する分も差し引く必要がある。このため、熱交換装置10の成績係数COPは次の式で与えられる。
状態3→4のプロセスは全体としては等圧変化である。従って、顕熱Qshは、液体状態の冷媒60の比熱cre[Jkg-1K-1]とナノ多孔質体20の比熱cns[Jkg-1K-1]を用いて次の式で表すことができる。
ここで、wns[kg]は、ナノ多孔質体20の重量、wre-ads[kg]は、温度THにおいてナノ多孔質体20に吸着された冷媒60の量である。これは、冷媒61と冷媒63の和となる。また、温度THは、吸着モードのチャンバー32A、32B内の温度に相当し、温度TLは、脱離モードのチャンバー32A、32B内の温度に相当する。なお、吸着モードのチャンバー32A、32B内において、冷媒60の蒸気は量が少なく、その顕熱の影響はQshに比べて極めて小さいため、無視することができる。
状態4において、冷媒63は、液体状態でナノ多孔質体20に吸着している。ナノ多孔質体20に対して、機械的な応力を印加して仕事W2[J]を入力すると、吸着された冷媒63は、飽和蒸気に相変化する(状態1)。状態4→1のプロセスは等圧変化である。従って、蒸発潜熱QL[J]は、次の式で表すことができる。
ここで、wre[kg]は、応力印加によってナノ多孔質体20から脱離する冷媒60の量、ΔvapHは、冷媒60が液体から気体に相変化する時のエンタルピー変化である。ただし、wre[kg]は、第1チャンバー32Aと第2チャンバー32Bとを接続する配管50のバルブ51を開いた後に脱離した冷媒63の量とする。これは前述したように、バルブ51を開く前の脱離によって発生した蒸発潜熱QL3-4[J]は、凝縮潜熱QH3-4[J]の分を相殺するために使われるため冷熱として利用されないからである。
本発明の逆カルノーサイクルにおける成績係数COPは、次の式で表すことができる。
式(5)において、Wns[J]は、ナノ多孔質体20のヤング率E[Pa]に依存する。ここで、ヤング率E[Pa]の定義は次の通りである。
ここで、応力σf[Pa]は、ナノ多孔質体20の単位面積あたりに作用する圧力(面圧)である。ひずみεdは、ナノ多孔質体20から冷媒60を脱離させる際に、最も圧縮した状態のナノ多孔質体20の最大ひずみである。応力σf[Pa]の定義は次の通りである。
ここで、F[N]は、ナノ多孔質体20に作用する圧力である。S[m2]は、ナノ多孔質体20の断面積である。ひずみεdの定義は次の通りである。
ここで、x[m]は、ナノ多孔質体20の変形量である。L0[m]は、ナノ多孔質体20の初期状態の長さである。
冷媒60を含んだ状態のヤング率E[Pa]が変化しないと仮定すると、Wnsは、次の式で表すことができる。
ここで、V0[m3]は、ナノ多孔質体20の初期の体積である。従って、次の式のように変形できる。
式(10)が、本発明の成績係数COPの計算式になる。式(10)において、wre、wre-ads、V0は、それぞれナノ多孔質体20の重量wnsで表現することが可能である。状態3において、wre-adsは、wnsを用いて次の式で表すことができる。
ここで、ρre[kgm-3]は、冷媒(液体)60の密度、Vns[m3kg-1]は、ナノ多孔質体20の細孔容積、φnsは、冷媒60が充填されている細孔容積のVnsに対する比である。すなわち、φnsVnsは、冷媒60が充填されている細孔の容積、もしくは細孔内に充填されている冷媒60の容積に相当する。ρreφnsVnsは、温度THにおける吸着等温線から直接、決めることができる。
V0は、ナノ多孔質体20の見かけ密度ρns-ap[kgm-3]とナノ多孔質体20の重量wns[kg]を用いて次の式のように表すことができる。
温度THのある任意の動作圧力P[kPa]において、応力無印加状態のナノ多孔質体20は、wnon-TH[kg]の冷媒60を吸着する。これは、図5の状態3に相当する。
次に、熱交換部30Aの温度をT3からT4へ、熱交換部30Bの温度をT1からT2をに切り替える。このとき、チャンバー32A、32B間のバルブ51は閉じた状態とし、チャンバー32Bから32Aへの冷媒60の蒸気の移動を防止する。熱交換部30Aの温度がT3からT4に低下すると、気相であった冷媒62がナノ多孔質体20に吸着し、凝縮潜熱QH3-4が発生すると共に気相の圧力が減少する。続いてナノ多孔質体20に応力を印加して仕事W1[J]を入力し、冷媒62を脱離させる。すると、蒸発潜熱QL3-4が発生すると共に気相の圧力が増加し、状態4となる。この時、ナノ多孔質体20に吸着している冷媒60の量はwnon-T3[kg]である。
次に、ナノ多孔質体20に応力を印加して圧縮し、冷媒63を脱離する。これは、図5の状態4から状態1に相当する。温度T4(=T1)において最大圧縮後のナノ多孔質体20中には、wpress-T1[kg]の冷媒60が残留して吸着されている(状態1)。従って、脱離モードにおける冷媒60の脱離量w4-1[kg]は、次の式で表すことができる。
次に、熱交換部30Aの温度をT1からT2(=T3)へ、熱交換部30Bの温度をT3からT4(=T1)へ切り替える。この時、チャンバー32A、32B間のバルブ51は閉じた状態とし、チャンバー32Aから32Bへの冷媒60の蒸気の移動を防止する。熱交換部30Aの温度がT1からT2に上昇すると、ナノ多孔質体20に吸着されていた冷媒62が脱離し、蒸発潜熱が発生すると共に気相の圧力が増加する。続いてナノ多孔質体20を自由膨張させ、冷媒62を吸着させる。すると、凝縮潜熱が発生すると共に気相の圧力が減少し、状態2となる。この時、ナノ多孔質体20はwpress-T1の量の冷媒60を吸着している。従って、吸着モードにおける冷媒60の吸着量w2-3[kg]は、次の式で与えられる。
wnon-TH、wpress-TL、wpress-THは、TL、THにおける非圧縮時、および圧縮時の図13に示した吸着等温線から得ることができる。ここで、ナノ多孔質体20への冷媒の吸着量がTL、THにおいて変化がなく、単純に細孔容積によって決定されると仮定すると、wre-ads=wnon-TL=wnon-TH、wpress=wpress-TL=wpress-THとなるので、wre=w4-1=w2-3として式(15)に示すように単純化して計算が可能となる。この仮定の下で、以下に示すようなCOPとEの関係を導き出すことが可能である。なお、本システムの動作圧力P[kPa]は、高い成績係数COPを達成するように、任意の値を選択することができる。
脱離モードにおいて、ナノ多孔質体20を圧縮し、εdのひずみとなっている時に、ナノ多孔質体20の細孔容積は、VnsからVcom[m3kg-1]に変化する。一方で、細孔壁によって占められている体積(1/ρns)は変化しない。ここで、ρns[kgm-3]は、ナノ多孔質体20の真密度、すなわち固体部分の密度を意味している。従って、Vcomは、次の式となる。
w4-1とw2-3は等しいので、wreは、次の式のように近似することができる。
ところで、ナノ多孔質体20の見かけ密度ρns-ap[kgm-3]とρns、Vnsの間には以下の関係がある。
従って、式(17)は、次の式となる。
式(10)、(11)、(12)と式(19)から、本システムのCOPは、ナノ多孔質体の重量(wns)に依存しないことが分かる。
以上説明した本実施形態に係る熱交換装置10の作用効果を説明する。
本実施形態に係る熱交換装置10は、弾性を有し、収縮して冷媒(媒体)60を脱離可能で、かつ、膨張して媒体を吸着可能なナノ多孔質体20と、ナノ多孔質体20に応力を印加して収縮させる応力付与部31A、31Bと、ナノ多孔質体20を内部に収容するチャンバー32A、32Bと、を備える熱交換部30A、30Bを有する。該熱交換装置10は、応力付与部31A、31Bの動作を制御して、熱交換部における動作モードを、ナノ多孔質体20に応力を印加して収縮させて媒体をナノ多孔質体20から脱離させる脱離モードと、応力を解放してナノ多孔質体20を膨張させて冷媒60をナノ多孔質体20に吸着させる吸着モードとに切り替える制御部40をさらに有する。
上記熱交換装置10によれば、ナノ多孔質体20に応力を印加および解放して収縮膨張させることによって、ナノ多孔質体20に冷媒60を脱離および吸着させて相変化による潜熱を発生させることができる。これにより、冷媒60の脱離または吸着により発生した潜熱を冷熱または温熱に直接的に利用することができるため、蒸発器や凝縮器が不要となる。また、潜熱を得るために蒸発器や凝縮器において減圧や加熱冷却が不要となるため、熱サイクルに必要なエネルギーを小さくすることができる。これにより、成績係数COPを向上させることができるため、使用するナノ多孔質体20の量を減らすことができる。このように、蒸発器や凝縮器が不要となり、ナノ多孔質体20の量を減らすことができるため、熱交換装置10を小型化することができる。熱交換装置10は、小型化できるため、特に、設置スペースの限られているカーエアコンに好適に適用することができる。
また、本実施形態に係る熱交換装置10は、一対の熱交換部30A、30Bと、一対の熱交換部30A、30Bの一対のチャンバー32A、32B間を冷媒60が移動可能に連通する配管50と、をさらに有する。制御部40は、各々の熱交換部30A、30Bにおける動作モードを、吸着モードと脱離モードとに交互に切り替える。これにより、一対の熱交換部30A、30Bの間で吸着モードと脱離モードとを交互に切り替えることによって、連続的に蒸発潜熱が生成される。これにより、効率的に冷熱を得ることができる。
また、本実施形態に係るナノ多孔質体20のヤング率Eは、1GPa以下である。ナノ多孔質構造体を収縮させて冷媒60を脱離させるのに必要な応力を低減することによって仕事Wns[J]が小さくなるため、成績係数COPを大きくすることができる。
また、本実施形態に係る冷媒(媒体)60は、水である。蒸発潜熱が高い水を冷媒60に利用することによって、成績係数COPをより大きくすることができる。
また、本実施形態に係るナノ多孔質体20を形成する多孔質材料のBET比表面積が、800~4200m2/gの範囲である。表面積の大きいナノ多孔質体20を使用することによって冷媒60の吸着量を増加させることができる。これにより、ナノ多孔質体20の使用量を減らすことができる。
また、本実施形態に係るナノ多孔質体20は、ゼオライトテンプレートカーボン(ZTC)またはグラフェンメソスポンジ(GMS)によって形成される。これにより、ナノ多孔質体20に応力を印加および解放して収縮膨張させることによって、ナノ多孔質体20に冷媒60を確実に脱離および吸着させて相変化による潜熱を発生させることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[実施例1]
(ZTCの調製)
本実施例に係るZTCは、Nishihara, H. et al., Chemistry-European Journal 15, 5355 (2009)を参考に合成を行った。ゼオライトX(Union Showa, 13X)を電気炉に設置し、窒素気流中873Kまで昇温させた。873Kに到達したら、窒素を20vol%アセチレン80vol%窒素に切り替え4時間化学気相蒸着(CVD)を行い、ゼオライトX細孔の中にカーボンを析出させた。その後、窒素のみのフローに切り替え、温度を1123Kまで上げ、3時間保持した。試料を室温まで冷却した後、ゼオライトXは、フッ酸(47wt%,Wako pure chemical industries)で取り除き、ZTCを得た。
<ZTCの体積弾性率および弾性特性>
実施例1で調製したZTCの体積弾性率の測定および弾性特性を確認する実験を行った。比較例としては、活性炭(Shirasagi-P, Japan EnviroChemicals, Ltd.)を用いた。
(体積弾性率の測定)
実施例1と比較例に対して、水銀等方圧試験を行って応力-体積ひずみ曲線を測定した。得られた応力-体積ひずみ曲線から体積弾性率を算出した。水銀等方圧試験は、等方圧プレス下で、水銀ポロシメーター(Micromerit-ics Instrument Corporation, Autopore IV 9510)を用いた水銀圧入法により圧縮応力と細孔の体積との関係を測定する試験である。具体的には、予め真空処理した実施例1と比較例の試料を密閉チャンバーにセットし、真空下でチャンバーに水銀を導入した。応力(等方圧)P[MPa]において水銀が試料全体に行き渡った時の体積VHg[m3]を測定した。応力P[MPa]と細孔の体積ひずみVHg/V0との関係を図8に示す。
図8に示すように、応力が20MPa以下においては、VHgは、水銀が粒子間隙に浸透するため急激に低下する。試料の体積弾性率K[MPa]は、応力が50~150MPaのときの応力-体積ひずみ曲線の直線近似から計算した。直線近似式は、次の式で表すことができる。
ここで、V0[m3]は、初期の細孔の体積である。
50MPa以上で起こる現象を機械的圧縮による細孔の変形と仮定し、上記直線近似式から体積弾性率を計算した。実施例1のZTCの体積弾性率は、0.70GPaであった。比較例の活性炭の体積弾性率は、1.7GPaであった。なお、活性炭の場合は大きな細孔を有するため、過小評価している可能性がある。
なお、ZTCを等方均質弾性体と仮定すると、体積弾性率K[MPa]とヤング率E[Pa]との関係は、次の式で表すことができる。
(弾性特性)
実施例1で調製したZTCの単粒子および比較例に係る活性炭の単粒子を試料として用いた。試料に圧縮応力を印加し、その後解放した際の形状の変化を観察した結果を図9に示す。具体的には、試料をアルミ基板上に設置し、SEM装置内のタングステンプローブで圧縮を行い、in situで単粒子の変形の観察を行った。続いて、プローブを粒子から離し、単粒子が復元する様子を観察した。
ZTCの粒子と活性炭の粒子の形状は、SEM(Hitachi,S-4800)で観察した。単粒子への応力印加による粒子変形のin situ観察には、SEM(AD Science,PS4-2MM2LC-TH)を用いた。タングステンプローブ(GGB Industries,PT-14-6705-B)の先端は、Ga-focusedイオンビーム装置(FEI,Helios NanoLab 600i)を用いて、予め垂直にカットし平面出しを行ったものを使用した。
図9に示すように、ZTCは、圧縮応力の印加(約30%圧縮)および解放によって可逆的に形状が変形することが確認できた。一方、活性炭では、同様の圧縮で簡単に破壊され、可逆的な形状変化を示さなかった。
<応力印加時の水の脱離および吸着測定>
実施例1で調製したZTCに応力を印加した際の水の脱離および吸着を確認する実験を行った。図10は、密閉したチャンバー内で試料に応力を印加または解放した際の水の脱離量および吸着量を測定するためのプレスチャンバー装置である。プレスチャンバー装置のチャンバーには直線導入機が接続してあり、試料に密閉チャンバー内で応力を印加できるように構成している。
まず、実施例1で調製したZTC粒子を、テフロン(登録商標)バインダー5wt%と混合し、シート状の試料を形成した。試料は423Kで真空乾燥し、プレスチャンバー装置のin situ測定用のチャンバー内にセットした。チャンバーを自動ガス吸着装置(BEL Japan,BELSORB-max)に締結し、チャンバーの内圧をモニタリングできるようにした。測定に十分な量の試料を確保するため、シート状の試料をステンレスの金属板で挟み積層する形でチャンバー内にセットした。in situ測定に先立って、積層した試料を数回プレスし、試料の弾性変形を安定化させた。
直線導入機のトルクと積層した試料に印加される応力との関係は、次に述べる別の実験により予め確認を行った。トルクセンサーが付属するラチェット(Kyoto Tool Co.,GEK085-W36)を直線導入機に装着し、直線導入機を回すトルクを測定できるようにした。直線導入機の先端部分が試験機(Shimadzu,AG-50kNXplus)のロードセルに接触するように固定した状態で、ラチェットを回し、ハンドルを回すトルクとロードセルに印加される応力との関係を調べた。上記関係を利用することで、積層した試料に印加される応力は、直線導入機のトルクで制御した。
実施例1のZTCと比較例の活性炭に対して、298Kにおける応力印加状態と応力無印加状態の水の脱離/吸着等温線の測定結果を図11に示す。ここで、実施例1のZTCに印加する応力は、83MPaとし、比較例の活性炭に印加する応力は、120MPaとした。
図11の結果から、相対圧P/P0=0.94(P:水蒸気圧、P0:飽和水蒸気圧)において、実施例1の83MPaの応力印加状態では、応力無印加状態に比べて水の吸着量が約31%低減することが確認された。これは、ZTCの変形によって細孔容積が31%低減したためと考えられる。ZTCの細孔は、1.4nm間隔で周期的に並んだグラフェンの間隙に存在する。ZTCが変形する際、細孔径が減少するが、グラフェンの厚さは不変である。このため、細孔が31%縮んだ場合、ZTC全体では23%のひずみであると見積ることができる。一方、比較例の活性炭に関しては、120MPaの応力印加状態においても、応力無印加状態と比較して吸着量に変化は見られなかった。この結果は、活性炭が柔軟性を持たないためである。
<水の脱離/吸着および相変化の確認>
次に、実施例1のZTCに応力を印加/解放することによって、水の脱離/吸着および水(液体)/水蒸気の相変化が起こることを確認する実験を行った。まず、水蒸気(相対圧P/P0=0.69)を応力無印加状態の実施例1のZTCを配置した298Kのチャンバー内に導入した。圧力減少が無くなり平衡に到達した後、80MPaまでの応力をZTCに印加し水蒸気を脱離させ、チャンバー内の圧力をモニターした。10分後、応力を解放し、ZTCを自由膨張させて10分間放置した。応力印加/解放サイクルは、4回実施した。応力印加および解放を繰り返したときのチャンバー内の水蒸気圧の変化を測定した結果を図12に示す。応力印加による死容積の減少は、0.13cm3であり、全容積(59cm3)の0.2%に過ぎないことを確認した。これは、相対圧P/P0の上昇分にしてわずか0.0014である。従って、図12で観察された相対圧P/P0の上昇(約0.09)は、機械的プレスによる強制的な吸着水の脱離によって生成した水蒸気によるものと考えられる。
続いて、機械的な応力によって、吸着した水を水蒸気に相変化させる試験を実施した。予め、チャンバーに水蒸気を導入し、相対圧P/P0=0.69において、ZTCに水蒸気を吸着させた。続いて応力をZTCのシートに83MPa印加したところ、チャンバーの水蒸気圧は、0.79まで上昇した(図12中の(i))。なお、この圧縮によって生ずる死容積の減少は、無視できるほど小さいことは予め確認できている。
続けて、応力を解放すると、水蒸気圧は減少したが(図12中の(ii))、このことはZTCが自由膨張して元の形状に戻ると共に、空孔が回復し、水蒸気が再度吸着されることを示している。
また、応力印加/解放により可逆的に水を脱離/吸着できることも明らかとなった(図12中の(iii))。この結果から、応力印加/解放による水/水蒸気の相転移が可逆的であり、ZTCが本発明に係るナノ多孔質体20として適用できることが確認できた。
<ZTCの物理吸着量と温度との関係>
図13は、実施例1のZTCについて、298K(TL)、303K(TH)で測定を実施した2つの水吸着等温線と、これら2つの温度においてZTCを83MPaで圧縮した際の吸着等温線の予想を示した図である。図13のポイントIは、298Kで測定した応力無印加状態のZTCの水吸着等温線である。図13のポイントIVは、303Kで測定した応力無印加状態のZTCの水吸着等温線である。
ポイントIIとポイントIIIは、ポイントIとポイントIVの水吸着等温線の実測値を69%に補正して、83MPaの応力印加状態での水吸着等温線を再現した値である。図13のポイントIIは、298Kで83MPaの応力印加状態のZTCの水吸着等温線である。図13のポイントIIIは、303Kで83MPaの応力印加状態のZTCの水吸着等温線である。なお、水蒸気圧2.9kPaにおいて、ZTCの83MPaの応力印加状態の吸着量が応力無印加状態の吸着量の69%に減少することは、図11に示す応力印加時の水の脱離/吸着等温線の測定結果から確認した。
<成績係数COPの算出>
図13の水吸着等温線と、上述に示した成績係数COPの計算式(式(10))、式(11)、式(12)、式(13)、式(17)および式(19)を用いて、ZTCをナノ多孔質体20として熱交換装置10を運転する場合の成績係数COPの値を計算した。
運転条件は、TH=303K、TL=298K、P=2.9kPaとした。また、ZTCには83MPaの応力を印加するものとする。
図14は、ZTC/PTFEシートを用いて得られた応力ひずみ曲線の測定結果である。このデータを用いて、2.9kPaの水蒸気圧におけるCOPを式(10)をベースとして計算できる。
この式において、それぞれΔvapH=2453kJkg-1、cre=4.184kJkg-1K-1とした。高温側と低温側の温度差(TH-TL)は、5Kである。cnsはグラファイトの値を用いて0.72kJkg-1K-1とした。式(12)から、V0=wns/ρns-ap=0.001976wnsである。さらに、図11のin situ測定の際に別途測定した応力-ひずみ曲線より、ZTCシートのヤング率は0.38GPaと求められる。したがって、83MPaを印加した際のひずみεdは0.23となる。wre-adsは、wnsで表すことができ、ポイントIに示す温度TH=303Kにおける応力無印加状態のナノ多孔質体20の吸着量(51.1mmolg-1=0.92kgkg-1)wnsから、wre-ads=0.92wnsとなる。
式(15)に示したように、wreは、wre-adsとwpress-TLとの差である。wpress-TLは、図13のポイントIIに示す温度TL=298Kにおける圧縮したZTCシートの吸着量(42.8mmolg-1=0.77kgkg-1)wnsから、0.77wnsと表すことができる。従って、wre=0.92wns-0.77wns=0.15wnsとなる。
図14のハッチング部分の面積から、ZTCの内部摩擦によるエネルギー損失φf[J]は計算することができ、0.34となる。エネルギー損出は熱となり、冷却すべき部屋の温度を上げることになるので、損失分は差し引くことになる。TH=303K、TL=298K、P=2.9kPaにおけるCOPは、上記に示した数値を式(10)に代入して求めることができるが、17.2と算出される。
続いて、成績係数COPとひずみεdの近似関係を計算する。式(10)において、ΔvapH=2453kJkg-1、cre=4.184kJkg-1K-1、T3-T4=20Kであると仮定する。cnsの値は、グラファイトの値として、0.72kJkg-1K-1と仮定できる。従って、式(10)は、次の式で表すことができる。
式(11)、式(12)、および式(19)を代入すると、次の式となる。
式(21)において、ρre、φns、Vnsは、温度T3における吸着等温線(図13のポイントIVを参照)より決定することが可能である。ρreは1000kgm-3であり、ρns-apは一般的な細孔材料においては大きくても約1000kgm-3である。Vnsは、大きくても0.003m3kg-1程度である。φnsは1と仮定する。以上から、成績係数COPは、ヤング率Eとひずみεdを用いて、式(24)で近似することができる。
図15は、式(24)で得られた熱交換装置10の成績係数COPとナノ多孔質体20のひずみ量εdに依存するヤング率Eとの近似曲線を示した図である。近似曲線は、上述した式(24)を用いて計算した。ひずみεdが小さくなればなるほど、成績係数COPは大きくなるが、一方で、ひずみεdが小さくなるほど、ナノ多孔質体20の体積を増加させることになる。その結果、熱交換装置10を大型化してしまうことになる。従って、ひずみεdは、0.2以下であることが好ましい。図15に示すように、ひずみεdが0.2以下の条件で成績係数COPを10以上とするには、ナノ多孔質体20のヤング率Eは、1.1GPa以下にする必要がある。以上の理由から、ナノ多孔質体20のヤング率Eは、1.1GPa以下に設計することが好ましい。
[実施例2]
実施例2には、熱交換装置10にナノ多孔質体20としてGMSを用い、冷媒60としてエタノールを用いた例を示す。
(GMSの調製)
GMSは、単層グラフェン骨格を有し、大きな空孔率および弾性を有する。GMSの合成法は、Advanced Functional Materials, Vol. 26, 2016, 6418-6427.を引用した。
アルミナナノ粒子(Taimei Chemicals,TM300)を電気炉に設置し、窒素気流中1173Kまで昇温させた。1173Kに到達したら、窒素ガスを20vol%メタン、80vol%窒素に切り替え、2hのCVDによりアルミナナノ粒子の表面に炭素を析出させた。その後、窒素のみのフローに切り替え、室温まで冷却した。得られたカーボン被覆アルミナナノ粒子をフッ酸(47wt%,Wako pure chemical industries)に浸漬し、アルミナナノ粒子を取り除いた。得られたメソポーラスカーボンは、アルゴン気流中(10Pa)2073Kで焼成し、GMSを得た。
GMSは、主に単層グラフェンからなり、大きな弾性を持ち合わせている。GMSの応力無印加時と90MPaの応力印加時(298K)におけるエタノールの脱離/吸着曲線を図16に示す。P/P0=0.92における吸着量は、応力印加に伴い、58%まで低減した。GMSの真密度を一般的な炭素材料の値2.0g/cm3と仮定すると、全細孔容積は2.79cm3/gである。これらの値を用いると、GMS全体としての変形量は36%と算出される。
図17は、GMSにおいてエタノールの脱離/吸着等温線(298K)を測定した際、脱離測定の途中でGMSに応力を印加した結果である。吸着が完了し、図17中のA点に示される脱離点が観測されるが、A点の測定が完了した直後にGMSに90MPaを印加すると、次の測定点はB点となった。すなわち、A点からB点に相対圧は上昇した。この結果から、実施例2の熱交換装置10においても、応力印加時に相変化(液体→気体)が起こっていることを確認した。以上の結果は、GMSも本発明に係るナノ多孔質体20として適用できることを示している。
[第2実施形態]
図18は、第2実施形態に係る熱交換装置100の構成を示す概略断面図である。熱交換装置100の応力付与部200は、吸着モードの一方の熱交換部のナノ多孔質体の膨張による反発応力を、脱離モードの他方の熱交換部のナノ多孔質体を収縮させるための応力に変換する応力変換部230を有する点で前述した第1実施形態と異なる。なお、応力付与部200以外の構成は前述した第1実施形態と同様のため、同一の符号を付してその説明を省略する。
第1実施形態に係る熱交換装置10では、2つのチャンバー32A、32Bに対して2つの応力付与部31A、31Bがそれぞれ装着され、2つの応力付与部31A、31Bをそれぞれ独立に制御して2つのナノ多孔質体20A、20Bに応力を印加および解放していた。第2実施形態に係る熱交換装置100では、2つのチャンバー32A、32Bに対して1つの応力付与部200が装着され、1つの応力付与部200を制御して2つのナノ多孔質体20A、20Bに応力を印加および解放する。
熱交換装置100は、一対の熱交換部30A、30Bのうち一方の動作モードが脱離モードである間は他方の動作モードが吸着モードになるようにスイング運転する。したがって、熱交換装置100は、一方のチャンバー32A、32B内のナノ多孔質体20A、20Bに応力を印加して圧縮する際に、他方のチャンバー32A、32B内のナノ多孔質体20A、20Bから応力を解放して自由膨張させる。
第1チャンバー32Aおよび第2チャンバー32Bは、中心面Cに対して対称に配置されている。以下、応力付与部200の構成について詳細に説明する。
応力付与部200は、円筒状のシリンダー210と、シリンダー210内を移動可能な2つのピストン220A、220Bと、2つのピストン220A、220Bの間を連結する応力変換部230と、プレス部240A、240Bとを有する。プレス部240A、240Bは、2つのピストン220A、220Bのそれぞれに固定され、ナノ多孔質体20A、20Bに応力を印加および解放する。
応力変換部230は、固定軸O1周りを回転する第1リンク部材231と、ピストン220Aに連結される第2リンク部材232と、ピストン220Bに連結される第3リンク部材233と、を有する。応力変換部230は、第1リンク部材231、第2リンク部材232および第3リンク部材233を連結する連結部234をさらに有する。固定軸O1は、中心面C上に配置されている。連結部234は、固定軸O1周りを回動自在な可動軸O2を有する。
第1リンク部材231の一端は、固定軸O1周りを回転可能に固定軸O1に固定される。第1リンク部材231の他端は、可動軸O2周りを回転可能に連結部234に連結される。
第2リンク部材232の一端は、ピストン220Aに固定された第1軸O3周りを回転可能にピストン220Aに連結される。第2リンク部材232の他端は、可動軸O2周りを回転可能に連結部234に連結される。同様に、第3リンク部材233の一端は、ピストン220Bに固定された第2軸O4周りを回転可能にピストン220Bに連結される。第3リンク部材233の他端は、可動軸O2周りを回転可能に連結部234に連結される。
図19A~図19Dは、第2実施形態に係る熱交換装置100の動作を説明するための概略断面図である。なお、応力付与部200の動作は、制御部40が制御する。
図19Aは、第1実施形態の図6A、図6G、図6Hに対応する状態を示す図である。図19Bは、第1実施形態の図6Bに対応する状態を示す図である。図19Cは、第1実施形態の図6C、図6D、図6Eに対応する状態を示す図である。図19Dは、第1実施形態の図6Fに対応する状態を示す図である。各状態に対応する熱交換部30A、30Bの動作モードについては前述した第1実施形態と同様のため説明を省略する。
図19Aでは、第1チャンバー32A内の第1ナノ多孔質体20Aは、応力付与部200からの応力印加がなく自由膨張した状態である。第2チャンバー32B内の第2ナノ多孔質体20Bは、応力付与部200からの応力印加によって収縮した状態である。第1軸O3から中心面Cまでの距離L1は、第2軸O4から中心面Cまでの距離L2よりも短くなる。
図19Aの状態から第1リンク部材231を固定軸O1を中心に左周りに回転させると、連結部234は、第1チャンバー32A側へ移動する。連結部234の移動に伴って、第2リンク部材232および第3リンク部材233が第1チャンバー32A側へ移動する。これにより、2つのピストン220A、220Bは、第1チャンバー32A側へ移動する。
ピストン220Bの移動に伴って、第2チャンバー32B内の第2ナノ多孔質体20Bからは応力が徐々に解放される。これにより、第2ナノ多孔質体20Bが自由膨張する。第2ナノ多孔質体20Bの自由膨張による反発応力は、プレス部240B、ピストン220Bおよび第3リンク部材233を介して第2リンク部材232に伝達される。第2リンク部材232は、当該反発応力を第1チャンバー32A内の第1ナノ多孔質体20Aを圧縮させるための応力として利用する。すなわち、応力変換部230は、第2ナノ多孔質体20Bの自由膨張による反発応力を第1ナノ多孔質体20Aを圧縮させるための機械的エネルギーWrns[J]に変換する。
図19Aの状態から第1リンク部材231を固定軸O1を中心に左周りに90度回転させさせると図19Bの状態となる。図19Bでは、可動軸O2は、中心面C上に配置されている。この状態で、第1軸O3から中心面Cまでの距離L1は、第2軸O4から中心面Cまでの距離L2に等しくなる。
図19Bの状態から第1リンク部材231を固定軸O1を中心に左周りにさらに90度回転させると、連結部234は、第1チャンバー32A側へさらに移動して図19Cの状態となる。第1軸O3から中心面Cまでの距離L1は、第2軸O4から中心面Cまでの距離L2よりも長くなる。これにより、第1チャンバー32A内の第1ナノ多孔質体20Aは、最も圧縮した状態となり、第2チャンバー32B内の第2ナノ多孔質体20Bは、応力から解放された状態となる。
図19Cの状態から第1リンク部材231を固定軸O1を中心に左周りにさらに回転させると、連結部234は、第2チャンバー32B側へ移動する。図19A、図19Bのときと同様に、応力変換部230は、第1ナノ多孔質体20Aの自由膨張による反発応力を第2ナノ多孔質体20Bを圧縮させるための機械的エネルギーWrns[J]に変換する。
図19Cの状態から第1リンク部材231を固定軸O1を中心に左周りに90度回転させると図19Dの状態となる。図19Dでは、可動軸O2は、中心面C上に配置されている。この状態で、第1軸O3から中心面Cまでの距離L1は、第2軸O4から中心面Cまでの距離L2に等しくなる。
以上のように、熱交換装置100の制御では、図19A~図19Dに示す動作を繰り返すことによって、一対の熱交換部30A、30Bの動作モードを交互にスイング運転する。これにより、脱離モードの熱交換部30A、30Bにおいて連続的に蒸発潜熱QL[J]による冷熱を生成することが可能となる。また、応力変換部230は、ナノ多孔質体20A、20Bの自由膨張による反発応力を熱交換装置100を作動するための機械的エネルギーWrns[J]に変換して回収することができる。
COP算出式のベースは式(5)に示した通りであるが、図19A~図19Dに示すように、応力変換部230がナノ多孔質体20A、20Bの応力解放時の自由膨張による反発応力を回収可能な機械的エネルギーWrns[J]として回収できる場合は、分母になる加えるエネルギーから差し引くことができるため、式(25)で示すことができる。
図20に示すように、ナノ多孔質体20A、20Bの解放時の自由膨張による反発応力に伴う回収可能な機械的エネルギーWrns[J]は、ナノ多孔質体の応力-ひずみ曲線のヒステリシスから得ることができる。また、失われるエネルギーは内部摩擦Qf[J]で失われる分を差し引くことにより得られる。なお、図20は、図14と同じ条件で測定したナノ多孔質体の応力-ひずみ曲線を表す図である。
式(28)を式(25)に代入すると、次のようになる。
式(3)~(9)に代入していくと、反発応力を回収するシステムのCOP算出式は式(30)に示す形となる。
この式において、実施例1と同一の条件、それぞれΔvapH=2453kJkg-1、cre=4.184kJkg-1K-1、高温側と低温側の温度差(TH-TL)=5K、cns=0.72kJkg-1K-1とし、図11のin situ測定の際に別途測定した応力-ひずみ曲線(図14、図20)より、ZTCシートのヤング率は、0.38GPa、と求められる。したがって、83MPaを印加した際のひずみεdは0.23、ポイントIに示す温度TH=303Kにおける応力無印加状態のナノ多孔質体20の吸着量(51.1mmolg-1=0.92kgkg-1)wnsから、wre-ads=0.92wns、ポイントIIに示す温度TL=298Kにおける圧縮したZTCシートの吸着量(42.8mmolg-1=0.77kgkg-1)wnsから、0.77wnsとなるので、wre=0.92wns-0.77wns=0.15wns、図14のハッチング部分の面積から、ZTCの内部摩擦によるエネルギー損失φf[J]は計算することができ、0.34をそれぞれ代入すると、図13の条件であるTH=303K、TL=298K、P=2.9kPaにおける反発応力を回収するシステムにおけるCOPを算出できるが、そのCOPは実施例1の17.2から50.6に改善される。
以上説明したように、本実施形態に係る熱交換装置100の応力付与部200は、吸着モードの一方の熱交換部30A、30Bのナノ多孔質体20A、20Bの膨張による反発応力を、脱離モードの他方の熱交換部30A、30Bのナノ多孔質体20A、20Bを収縮させるための応力に変換する応力変換部230をさらに有する。応力変換部230は、一方のナノ多孔質体20A、20Bの自由膨張による反発応力を他方のナノ多孔質体20A、20Bを圧縮させるための機械的エネルギーWrns[J]に変換する。その結果、ナノ多孔質体20A、20Bの自由膨張の反発応力を効率良く回収できるようになる。
[第2実施形態の変形例]
応力変換部を備える熱交換装置の構成は図18に示す形態に限定されず適宜変更可能である。例えば、図18に示す形態では、応力変換部およびチャンバー32A、32Bを水平に締結した例を示したが、図21に示すようにV型に締結したシステムでも同様な効果が得られる。
また、図18、図21では、2つのチャンバーを組み合わせた例を示しているが、3つのチャンバー、あるいは必要に応じて4つ以上のチャンバーを組み合わせても同様な効果が得られる。
以上、本発明の実施形態に係る熱交換装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
例えば、本発明の熱交換装置を、脱離時の蒸発潜熱から得た冷熱を利用して対象を冷却する冷却装置(冷凍機)に適用した場合を例に挙げて説明したが、吸着時の凝縮潜熱から得た温熱を利用して対象を加熱する加熱装置(ヒートポンプ)に適用してもよい。
また、一対(2つ)の熱交換部を有するバッチ式の熱交換装置として説明したが、これに限定されず、1つの熱交換部によって構成してもよいし、3つ以上の熱交換部によって構成してもよい。