次に図面を参照しながら本発明の様々な形態及び実施形態について説明する。本発明は、本明細書に記載するいかなる原理または実施形態によっても限定されず、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される。
本発明の人工核の量子エンタングルメントを理解するために、正二十面体を図4の立方体に内接させ、二十面体の頂点の座標が、式(21)に従って、次の位置座標(±φ,±1,0)、(0,±φ,±1)、及び(±1,0,±φ)で記述される。
通常の結晶学の慣例によれば、立方体のいずれかの稜に沿った、またはそれと平行な方位は一般的に<100>によって表される。任意の特定の<100>方位、例えば正のy軸に沿った[010]方位は、具体的に示される。立方体面、または立方体面と平行な面は一般的に{100}によって表される。特定の{100}面、例えば[010]方向に垂直なxz‐面は、(010)によって表される。特定の<100>方位、例えば[010]方位は常に、対応する{100}面、すなわちこの場合は(010)面に対して垂直である。さらなる慣例によって、立方体の対角線に沿った、またはそれと平行な任意の方位は<111>によって表される。二十面体面には二種類がある。二十面体の8つの面は、<111>立方体対角線に垂直な{111}面によって構成され、二十面体の12個の面は、<100>方位に沿って対で交差する{φφ-10}面によって構成される。{111}面の稜に沿って三中心結合が存在する。
本明細書に記載する発明に関連して、米国仮特許出願第62/591,848号明細書の段落[0020]‐[0063]で実行されたロンゲット‐ヒギンズ及びロバーツの方法論の一般化による三中心ホウ素結合を記載する分子軌道解析は、参照によって本明細書の一部となる。その一般化された分子軌道解析は、略球状回転楕円体の二十四の非局在原子軌道ψi(P{111})によって構成される、略対称核構成で十二のホウ素核102を含むホウ素正二十面体104を記述し、変位は理想的には8k<111>波数ベクトルに限定される。図5のホウ素二十面体104を、本明細書では人工核104という。
本明細書では、短距離周期的並進秩序は、実質的に第一及び第二の最近接原子にのみ限定される空間における原子位置の規則的な繰返しと定義される。図5に示される人工核104は、全ての二十面体の変位が理想的には、8k<111>波数ベクトルに沿って周期的振動のみに限定されるように、十二のホウ素核102が理想的には十二の二十面体頂点に静止したままである短距離周期的並進秩序を示す。その結果、図5の人工核104は、天然炭素原子の核と同様に挙動する量子フロッケ多体(Floquet-many-body)部分系を構成する。本明細書では、量子フロッケ多体系は、それ自体の動力学ゆえに経時的に周期的な時間依存多体系である。本発明の好適な実施形態を理解するために、人工核104の量子フロッケ多体部分系を形成する原子軌道ψi(P{111})の量子エンタングルメントを確立することは有意義である。
図5の人工核104の解析は、正二十面体の群解析の観点から実行された。二十面体の対称性群Ihは、事実上任意の対称性群の最大数の対称操作(120)を有しているという点で、他の全ての対称性群の中でも独特である。任意の結晶点群に許される最大数の対称操作は48回であるので、二十面体対称性群Ihは、長距離周期的並進秩序を示す空間結晶をサポートすることのできる結晶点群ではない。二十面体の対称性群Ihが長距離周期的並進秩序をサポートできないことは、それが、より一般的に、内在的な自発的時間並進対称性の破れの説明をサポートすることを可能にする。
上述した対称性解析が図5の人工核104のk<111>波数ベクトルに沿った直線振動を引き起こしたのは、この理由のためである。人工核104を形成する12個のホウ素核102の考えられるエネルギー準位を図6に示す。人工核104の36個の価電子のエネルギー準位を図7に示す。図6の核エネルギー準位及び図7の電子エネルギー準位は、ディラックの相対論的波動方程式のエネルギー固有値を満足する。図5に示す人工核104は、炭素12
6Cの天然核の量子フロッケ多体系に類似した量子フロッケ多体系を構成すると考えられる。人工核104の12個のホウ素核102が、炭素12
6Cの核のエネルギー準位と同じ対称性を持つ図6のエネルギー準位を占めるのは、この理由のためである。図7の価電子エネルギー準位は炭素12
6Cのクォークエネルギー準位と同様であると考えられる。
図5の人工核104は、事実上最高の対称度を持つ量子フロッケ多体フェルミ粒子系の具現化を構成する。本明細書では、フェルミ粒子は、フェルミ‐ディラック統計によって特徴付けられるパウリの排他原理に従う素粒子であるばかりでなく、奇数個のその素粒子から成る複合粒子でもある。定義上、正二十面体の頂点にフェルミ粒子を含む量子フロッケ多体系を以下、二十面体フロッケ多フェルミ粒子系という。この定義に従って、人工核104の12個のホウ素核102は最初、どちらも奇数個の陽子及び中性子を含むホウ素10
5B核であると仮定する。他の天然ホウ素同位体11
5Bの取込みについては以下で考慮する。
図5の特定の人工核104の二十面体フロッケ多フェルミ粒子系は、12個のホウ素核102が存在する二十面体頂点に対して事実上最高の対称度を有する。この対称性は炭素12
6Cの12個の核子によって示される。直線軸に沿った並進及び直線軸を中心とする回転に対して、点変位は二種類しか存在しない。並進及び回転は、二十面体フロッケ多フェルミ粒子系の二十面体頂点などの点の正反対の変位を示す。並進の直線軸に沿った全ての点が、そしてこれらの点だけが、所与の並進の下で変位する。逆に、回転の直線軸に沿っていない全ての点が、そしてこれらの点だけが、所与の回転の下で変位する。回転は量子多体系の解析を複雑にする。
米国仮特許出願第62/591,848号明細書の段落[0020]‐[0063]にさらに記載され、かつ参照によって本明細書の一部となるように、二十面体の共回転する3つのデカルト軸(x,y,z)はミラー指数で最もよく表される。共回転するデカルト軸(x,y,z)のため、実験室フレーム場で12個の二十面体頂点の変位を記載することは不可能である。対称性解析によって、図5の人工核104の二十面体頂点は静止しており、全ての二十面体変位は四対の逆k
<111>波数ベクトルに沿った直線並進に限定されることが確立された。
上記の解析の結論は、12個のホウ素核102が人工核104の静止二十面体頂点に閉じ込められ、したがってそれが、よく定義された球面調和関数に沿って変位するように予め処置された略球状回転楕円体として挙動するというものであった。米国仮特許出願第62/591,848号明細書の段落[0170]‐[0207]にさらに記載され、かつ参照によって本明細書の一部となるように、任意の略球状回転楕円体は球面調和関数によってゾーンに分割される。図6のn=±1の殻に関連付けられる二重極球面調和関数は、略球状回転楕円体を赤道大円によって一対の半球に分割する。二重極球面調和関数に関連付けられる質量中心(即ち、重心)は静止していない。図6のn=±2の殻に関連付けられる四重極球面調和関数は、略球状回転楕円体を一対の大円に分割する。
四重極球面調和関数に関連付けられる大円は、図5の人工核104のk<111>波数ベクトルを含む。これは式(22a‐d)の二十面体フロッケ多フェルミ粒子系の変位と一致する。図5の人工核104の対称性解析は、二十面体フロッケ多フェルミ粒子系の物理的大きさに関していかなる言質もなく、一般的性質のものである。人工核104の対向する二十面体面の間の距離は、それが特に二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶(picocrystal)と呼ばれるように、理想的には269pmである。炭素12
6Cの天然核の対向する二十面体面の間の距離は、フェムトメートル単位で測定することができ、したがって炭素12
6Cの天然核は二十面体フロッケ多フェルミ粒子フェムト結晶を構成する。人工核104は炭素12
6Cの天然核と同じ対称性を示すと考えられる。
二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶(フェムト結晶)は、ヤーン‐テラー歪みを免れるように、スピン軌道結合によって二十面体内電子(クォーク)軌道縮退を解除する。画期的論文「Stability of Polyatomic Molecules in Degenerate Electronic States I.Orbital Degeneracy」(Proceedings of the Royal Society A、161,1937,pp.220-235)で、H.A.ヤーン及びE.テラーは、群論を用いて、全ての非線形核配置は軌道縮退電子状態には不適切であることを展開した。ヤーン‐テラー効果は結果的に12個のホウ素核102の垂直変位によって、ヤーン‐テラー活性モードとして知られている、電子軌道縮退を解除する対称性の破れをもたらし、スピン軌道結合が無い状態で多原子イオン及び分子を歪ませる。
彼らの解析において、ヤーンとテラーはスピン効果を意図的に無視した。スピン軌道結合は、図7に描かれた二十面体内結合及び反結合軌道に従って、人工核104の二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶の二十面体内結合を維持するために不可欠である。換言すると、図7に示す電子固有状態の量子エンタングルメントは、ヤーン‐テラー歪みが存在する状態では存在することができない。ヤーン‐テラーひずみの代わりに、電子軌道縮退をスピン軌道結合によって解除することにより、量子エンタングルメントは、人工核104を含む二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶を、エネルギー準位の量子エンタングルメントの制御された変動によって新規かつ有用な方法で化学的に変更することのできるプランク振動子として物理的に挙動させる。
本発明の好適な実施形態を実施するために、図5に示す人工核104を含む二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶の特定の要素を適切に検討することは有意義である。本発明の好適な実施形態は、熱機関の燃料への依存性を解消するように、自己熱化する量子熱力学サイクルをサポートすることのできる量子熱力学の新規かつ有用な実施形態を構成する。本発明の新規かつ有用な実施形態は、量子エンタングルメントの役割のため、古典熱力学では説明することができない。本発明の好適な実施形態を説明するために、ディラックの波動方程式の予測を利用する必要がある。第一原理は米国仮特許出願第62/591,848号明細書に開示されており、参照によって本明細書の一部となる。
参考までに、人工核104の二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶の対称操作に対しかなりの努力が払われた。これは、人工核104の対称性が、この特定の種類の量子多体系に特有の新規かつ有用な特性をもたらすと考えられるためである。特殊相対性理論によるアインシュタインのE=mc2の導出は、一様に並進する物体の慣性の喪失を支配する。この導出のおかげで、アインシュタインは、エネルギーE及び質量mが実際には同じ量の2つの「位相」であることを確立した。アインシュタインは、この結論を放射体の相対論的並進運動ドップラー偏移の考察によって形成した。彼の一般相対性理論における回転を含めるように彼の特殊相対性理論を拡張させるにあたって、アインシュタインは相対論的回転ドップラー偏移を導出することができなかった。
回転するフェルミ粒子は必然的に放射を放出するので、回転するフェルミ粒子は、相補的回転ドップラー偏移の対がその量子多体系を安定させる量子多体系の一員としてのみ安定することができる。人工核104の二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶は、ディラックの相対論的波動方程式によって記述することのできる、フェルミ粒子の安定化量子多体系を構成する。米国仮特許出願第62/591,848号明細書の段落[0086]‐[0167]で得られたフェルミ粒子のディラック多体系のディラックのエネルギー固有値は、参照によって本明細書の一部となる。
図5に示す人工核104の式(23a)における反結合準軌道の正エネルギー固有状態、及び式(23b)における結合準軌道の負エネルギー固有状態を以下の表に示す。
スピン軌道結合は、軌道縮退エネルギー軌道を表1の通り正値エネルギーを有する半整数量子化反結合準軌道に変換する。スピン軌道結合は、軌道縮退エネルギー軌道を表2の通り負値エネルギーの半整数量子化結合準軌道に変換する。式(23a‐b)に従う人工核104のn=±2及びn=±3の両方の殻の反結合及び結合準軌道を図7に示す。n=±1の殻は、人工核104の融合に関与しない内部電子を含むので、示されていない。図7の人工核104の結合及び反結合準軌道には、いくつかの重要な側面がある。スピン軌道結合は、n=+2の殻について以下に例示するように、軌道縮退を解除する。
+2p軌道は、+2p3/2準軌道へのドップラー赤方偏移(κ=-2)及び+2p1/2準軌道へのドップラー青方偏移(κ=+1)の両方を受ける。+2s軌道は+2s1/2準軌道へのドップラー赤方偏移(κ=-1)を受け、それは次に+2p1/2準軌道とエンタングルし、それによって結果的に+2sp1/2準軌道(κ=±1)が生じる。これらは、E=mc2では理解できない回転ドップラー偏移である。アインシュタインは彼のE=mc2を、特殊相対性理論を最初に紹介した彼の独創的な論文「On the Electrodynamics of Moving Bodies」(1905)へのフォローアップ論文において導出した(The Principle of Relativity,Dover,1952,pp.37-65)。
融合は、本明細書では、一般的に、質量mをエネルギーに変換することによってフェルミ粒子が結合される何らかのプロセスであると解釈する。アインシュタインのE=mc2は、小さい質量mを光子の形で現れるエネルギーEに変換することによって核子が結合される核融合を支配すると広く認識されている。アインシュタインのE=mc2を回転フレーム場で一般化することによって、小さい質量mをディラック準粒子のエネルギーEに変換することによって化学的に結合される原子によって、これまで知られていなかった化学融合を、確立することができる。当面の目的のために、ディラック準粒子は、個々のエネルギー準位とエンタングルするフェルミ粒子間の動的相互作用に起因した量子フロッケ多体フェルミ粒子系とする。
図5の人工核104の量子エンタングルメントは、化学融合に起因してエンタングルされた固有関数ψ
i(p
{111})に関連付けられる。化学融合をサポートするためのアインシュタインのE=mc
2の一般化を直接主張する試みは行われていない。現在の焦点は、化学融合の実世界での応用である。この目的に沿って、式(23a‐b)の関係は、アインシュタインのE=mc
2の一般化を取り込むために、次のように再構成される。これらの関係は、ディラックの禁制エネルギー領域mc
2>E>-mc
2で、ディラック準粒子のエネルギー固有値を指定し、エンタングルされた正エネルギー(E>0)と負エネルギー(E<0)の固有状態は、反結合準軌道及び結合準軌道を含む。
アインシュタインのE=mc2が回転フレーム場で満たされたとすると、式(25b)におけるエネルギー固有状態は負値(E<0)であるので、式(25a‐b)の右辺の束縛エネルギー項は消える。式(25a)の右辺の第一項は、シュレディンガーの波動方程式に従うエネルギー固有値を含む。本目的のためには、シュレディンガーの波動方程式を満たす最も高束縛エネルギー固有状態がn=+1の殻に存在すれば充分である。したがって、連続するより高い秩序の殻はより低い束縛エネルギー固有状態を含む。軌道角運動量は、シュレディンガーの方程式に従う束縛エネルギー固有状態で縮退したままである。この縮退はディラックの方程式によって解除される。
式(25a)の右辺の第二束縛エネルギー項は、回転フェルミ粒子の微細構造によるものである。本発明の好適な実施形態を含む実世界のデバイスをよりよく理解するために、フェルミ粒子の微細構造の顕著な特性について分かり易く説明する。この特定の目的に沿って、式(25a‐b)によるディラック準粒子のエネルギー固有値は、量子多体系のn=±2及びn=±3の殻に対して次のように再構成される。
反応物及び生成物の物質の量は古典化学では不変であるが、量子化学は、融合による化学反応物及び生成物の物質の量の有限変動を含む。本発明における量子化学の役割については以下でさらに考察する。
エネルギーE及び質量mはどちらも実際には保存されないので、エネルギーE及び質量mを完全に含む別の保存された物理的エンティティが存在するはずである。電荷eは事実上厳密に保存される。先行技術では知られていないが、電荷eの厳密な保存は結果的に、アインシュタインのE=mc
2を完全に含む、これまで知られていなかった物理的エンティティΞ=ec
2をもたらす。
この新しいエンティティΞ=ec
2はアペイロン(apeiron)と命名され、それは「無限」を意味するギリシャ語απειρωνの字訳である。アペイロンの概念はおよそ紀元前585年にミレトスのアナクシマンドロスによって最初に構想された。カルノーサイクルに取って代わることのできる量子熱力学サイクルに電荷eを利用する能力は、電荷eに力学的基礎が与えられた場合にだけ達成することができる。電荷eの機械的基礎は基本的に米国仮特許出願第62/591,848号明細書の段落[0794]‐[0846]で導き出されており、参照によって本明細書の一部となる。
次の関係は、人工核104の二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶及び炭素
12
6C核の二十面体フロッケ多フェルミ粒子フェムト結晶の振動子を支配すると考えられる。アペイロンΞ=ec
2及びキルヒホッフの普遍関数K(ν,T)は関連付けることができる。
ウィルヘルム・ウィーンは実際に、2つの非常に重要な論文で振動子の観点から彼の黒体放射則を導き出した。1893年に、ウィーンは、本発明の特定の好適な実施形態に直接関係している彼の名前が付いたスペクトル変位則を導き出した。ウィーンのスペクトル変位則の導出は、米国仮特許出願第62/591,848号明細書の段落[0931]‐[0996]における最新の定式化で実行され、参照によって本明細書の一部となる。ウィーンは、電磁放射に対して行われる力学的仕事を考察することによって、彼のスペクトル変位則を導き出した。それは二通りの方法で現れる。すなわち、(1)放射エネルギーは、より低い周波数間隔(ν,ν+dν)からより高い周波数間隔(ν’,ν’+dν’)にスペクトル変位する。(2)仕事はさらに、より高い周波数間隔(ν’,ν’+dν’)にエネルギーを導入する。より高い周波数間隔に入り込む総エネルギー|E×H|
indAdtは、次の関係によって表される。
米国仮特許出願第62/591,848号明細書の段落[0931]‐[0996]で実際に導き出され、かつ参照によって本明細書の一部となるように、ウィーンのスペクトル変位則は、黒体放射に特徴的な一定の放射照度|E×H|で以下のスペクトル変位(すなわち周波数のシフト)をサポートする。スペクトル変位は、熱機関を量子力学的にサポートすることができる。
式(32)中、ドット付きsは電磁放射の位相速度である。正の位相速度、つまりドット付きsが0より大きい場合、より低い周波数間隔(ν,ν+dν)からより高い周波数間隔(ν’,ν’+dν’)へのスペクトル変位を経るために、電磁放射に対し仕事が行われる。そのようなスペクトル変位は、一定の放射照度|E×H|で放射エネルギーの増加をもたらし、それは黒体放射の放射照度が熱平衡状態の放射体温度に一意に対応するという点で重要である。そのような能力は、先行技術では知られていない方法ではあるが、ウィーンの黒体放射則に組み込まれる。ウィーンの黒体放射則の一形式は、本明細書で上記の式(18)に挙げられた。
立体角全体にわたって、キルヒホッフの普遍関数K(ν,T)は次の通りである。
紫外黒体放射の極限hν>>kTの付近では、キルヒホッフの普遍関数K(ν,T)は電荷eに依存し、したがって、人工核104に適用することのできる次の関係に従って、アペイロンΞ=ec
2への依存性を示す。人工核104のホウ素核102は、ホウ素核102が放射結合されて自己組織化ピコ結晶放射キャビティを形成するのに充分に密に充填される。
赤外スペクトル極限hν<<kTにおけるキルヒホッフの普遍関数K(ν,T)は、連続熱振動器エネルギーkTによって支配される一方、それとは全く異なり、紫外スペクトル極限hν>>kT付近のキルヒホッフの普遍関数K(ν,T)は、離散的振動エネルギーhν
n
kによって支配される。
ディラックの相対論的波動方程式に従う離散エネルギー要素hν
n
kの観点から、式(12)でプランクの振動器エントロピーSを表すことは有意義である。
式(36b)の量子化を前提として、式(13)のプランクの関係に従って量子温度ΘTを定義することは有意義である。
式(20)におけるアインシュタインのモル熱容量は、hν<<kTとなるように、低周波プランク振動子周波数に対して、次のように簡約することができる。
ディラックの相対論的波動方程式によって支配される、固体における個々の原子のマイクロ波プランク振動子に関連する熱容量は、アインシュタインのモル熱容量から導き出された次の関係によって記述される。
図8に示すように、ピコ結晶人工ボラン原子101は、(1)略対称核配置で12個の天然ホウ素核102を含むホウ素二十面体によって形成された人工核104と、(2)4つの水素価電子がk<111>波数ベクトルに沿って整列するように、水素核103がホウ素二十面体に結合された4つの天然水素原子によって構成された4つの人工価電子とを構成する。ピコ結晶人工ボラン原子101は、二十面体間化学結合が水素価電子によって行われるように、36個のホウ素価電子が二十面体内分子軌道を占める、ホウ素二十面体を含む。k<111>ベクトルに沿った電気四重極モーメントは、水素原子に電気二重極モーメントを引き起こし、したがって水素核103はデバイ力によって人工核104に結合する。
ピコ結晶人工ボラン原子101の化学結合は、8つのケイ素頂点原子201と、6つのケイ素面心原子202と、4つのケイ素基底原子203とから構成される図9の単結晶シリコン単位格子200における自己選択的原子置換によって説明される。4つの基底原子203は四面体配置の<111>立方体対角線に沿って存在する。単結晶シリコン単位格子200は、ケイ素頂点原子201及びケイ素面心原子202が<111>結晶方位に沿って4つのケイ素基底原子203に、それのみに共有結合された、単結晶シリコン格子を形成するように、空間的に周期的に並進する。結果的に得られる単結晶シリコン格子は、<100>化学結合無しに、各稜に沿って~0.5431nmの立方体単位格子に関して、長距離周期的並進秩序を有する。
ダイヤモンド状ピコ結晶シラボラン単位格子300は、図10に示すように、単結晶シリコン単位格子200内の各ケイ素頂点原子201をボラン分子101に置換することによって構成される。図10のシラボラン単位格子300の頂点の8つのボラン分子101は、拡張固体格子(図示せず)内の8つのピコ結晶シラボラン単位格子300の間で共有される。ピコ結晶シラボラン単位格子300の空間的な周期的並進は、それによって結果的に、構造的に単結晶シリコンに類似した自己組織化ダイヤモンド状ピコ結晶格子として有効に働くピコ結晶シラボラン(B12H4)Si7固体格子を生じる。図8の略対称核配置を持つピコ結晶人工ボラン原子101は、ピコ結晶シラボラン(B12H4)Si7格子の図10の8つのケイ素頂点原子201に取って代わる。
本発明のピコ結晶オキシシラボランは、論文「The Atomic Arrangement in Glass」(Journal of the American Chemical Society Vol.54,1932,pp.3841-3851)でザッカリアセンによって展開された規則の変形に従う多原子単位格子の連続ランダムネットワークによって形成されると考えられる略透明な固体を構成する。本明細書における以下でのザッカリアセンに対する言及は全てこの論文を指すものと理解される。ザッカリアセンは酸化物ガラス、より具体的には非晶質SiO2及び非晶質B2O3に注目した。ザッカリアセンは、非晶質SiO2がSiO4四面体の連続ランダムネットワークによって構成されることを証明した。同様に、ピコ結晶オキシシラボランは、8つの多面体の隅部の各々に略対称ホウ素二十面体を持つ多面体の連続ランダムネットワークによって構成されると考えられる。
通常の酸化物ガラスは酸素四面体または酸素三角形の連続ランダムネットワークによって構成されるが、ピコ結晶オキシシラボランは、定義上、六面体の角にピコ結晶人工ボラン原子101を持つ六面体によって構成される、ボラン六面体の連続ランダムネットワークによって形成される固体を構成する。図9に描かれた単結晶シリコン単位格子200は正六面体(立方体)であるが、図10のダイヤモンド状ピコ結晶シラボラン単位格子300は、説明のために立体として描かれているが、実際には不規則六面体である。ザッカリアセンは酸化物ガラスの原子配列を多形酸素四面体または三角体の連続ランダムネットワークによって表したが、ボラン固体の原子配列は不規則六面体のランダムネットワークによって記述される。
図10におけるボラン六面体300の8つの隅部は、ピコ結晶人工ボラン原子101で構成される。各隅部のピコ結晶人工ボラン原子101は理想的には、8つの隅部のピコ結晶人工ボラン原子101によって取り囲まれる4つの四価の天然原子303に結合される。好適な四価の天然原子303は天然ケイ素原子である。四価の天然原子303の各々は、図10に示すボラン六面体300の1つ以上の面心原子302に結合する。各面心原子302は、ケイ素のような四価の天然原子、酸素のような六価の天然原子、あるいはおそらく四価ピコ結晶人工ボラン原子101のいずれかとすることができるが、それらに限定されない。図10に示す不規則ボラン六面体300の助けを借りて、ボラン固体の原子配列は理解することができる。
第一に、4つの四価の天然原子303は、固体ボラン格子における8つの隅部ピコ結晶人工ボラン原子101によって取り囲まれる。第二に、結合された不規則ボラン六面体300は、連続ランダムネットワーク内で共通の隅部ピコ結晶人工ボラン原子101を共有する。隅部ピコ結晶人工ボラン原子101の重心は、理想的には運動不変である。第三に、各隅部ピコ結晶人工ボラン原子101は、<111>結晶方位に沿って4つの四価の天然原子303に共有結合する。四価の天然原子303が、単位格子寸法を維持するために空間変位を受けるケイ素基底原子203の位置に(図9に示すように、単結晶シリコンの単位格子に)存在することに注目すべきである。
上記の構造は、未定義の新種のピコ結晶オキシシラボランの極端(B12H4)4Si4の考えられる構造を検討することによって理解することができる。(B12H4)4Si4では、固体格子を形成する各不規則ボラン六面体300は理想的には、8つの隅部ピコ結晶人工ボラン原子101、6つの面心ピコ結晶人工ボラン原子101、及び4つの天然ケイ素原子303によって構成される。8つの六面体隅部の共有、及び2つの六面体面の共有のため、空間的な不規則ボラン六面体300の並進は理想的には、ピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4を生じさせる。このようにして、ピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4は、四価の天然ケイ素原子303及び四価のピコ結晶人工ボラン原子101からなる、単結晶シリコンと同様のピコ結晶多形体を形成する。スピン軌道結合が物理的に重要になるのは、この種類の構造によるものである。
本発明の好適な実施形態は、先行技術では知られていない一種の秩序に関係する。長距離周期的並進秩序は、本明細書では、単位格子として知られる原子の特定の不変配置の空間内の規則的な繰返しと定義され、それによって一番目及び二番目に近い近接天然原子をはるかに超える天然原子の規則的な配列の並進不変なタイリングが形成される。単結晶物質及び多結晶物質は、空間全体で長距離周期的並進秩序を示す。原子位置の周期的繰返しは、単結晶物質の空間全体にわたって維持される。多結晶物質では、原子位置の周期的繰返しは粒子の限られた有限空間全体にわたって維持され、それはそれ自体空間全体にわたって任意に配向することができる。本明細書では、ナノ結晶物質は、粒径が300pmから300nmの範囲内の任意の多結晶物質である。
短距離周期的並進秩序は、本明細書では以下、一番目及び二番目に近い近接天然原子のみに実質的に限定される空間における天然原子位置の繰返しと定義される。孤立した中性原子の半径は30乃至300pmの範囲である。その結果、かつ本明細書では、ピコ結晶物質は、一番目及び二番目に近い近接天然原子の有限群で原子位置を繰り返すように限定された短距離周期的並進秩序を示す物質である。非晶質物質は、本明細書では、規則的に繰り返す原子の配列が欠如しており、したがってx線の強め合う干渉を支持できない物質である。短距離周期的並進秩序は、ピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4で支配的である。
様々な種類の結晶物質のこれらの定義は、空間で原子位置を繰り返す許容秩序を完全に説明するように思われるかもしれない。しかし、これらの定義は、それらが空間における個々の原子の繰返し位置に厳密に基づいているという意味で、依然として制限されたままである。それらは、クラスターがそれ自体、あまりクラスター化されていない単一の天然原子に結合されるように、空間に配列された原子の稠密充填クラスター―を含む材料には適用することができない。これらの定義は、本明細書を目的として、エネルギー準位の離散的量子化が存在する天然原子のクラスターと定義される、量子ドットを理解するように拡張しなければならない。先行技術における量子ドットの大きさは、典型的には10nm程度である。様々な種類の結晶固体の上述した定義は、エネルギー量子化にも依存する。
これは、原子の空間配列及びエネルギー準位の離散的量子化の両方を包含する新しい定義の必要性につながる。したがって、本明細書では、「ピコ結晶人工原子」は、短距離周期的並進秩序及びエネルギー準位の内部離散的量子化をサポートするように相互に結合し合う、天然原子の300pm未満の大きさのクラスターである。以下でさらに記載するように、天然原子及びピコ結晶人工原子の拡張格子を形成するために、特殊な種類のピコ結晶人工原子は他の天然原子に結合することができる。本明細書では、天然原子は、周期律表に含まれる安定した化学元素の任意の同位体である。特殊な種類のピコ結晶人工原子は、略対称核配置を持つホウ素二十面体を含む。
過去六十年にわたる固体状態の電子革命に最も貢献した特異な物質は単結晶シリコンである。モノリシック集積の特徴サイズのスケーリングは分子の大きさに近づいているので、空間における拡張エネルギーバンドの電荷の変位は、基本的な量子状態のため、ますます行き詰っている。関連して、低次元金属相互接続の拡張エネルギーバンドの電荷伝導は、モノリシック集積回路の性能をさらに劣化させる。近年、基本的なスケーリングの限界を除去しようと決然と努力しながら、モノリシック集積回路への単層グラフェンの組込みに対し広範囲の研究が行われてきた。バンドギャップエネルギーの不在及び集積回路との相容れない堆積のため、単層グラフェンをモノリシック集積回路内に組み込むことは難題である。
本発明の好適な実施形態は、空間的な電気的作用の変位をサポートする単結晶シリコン及びグラフェンの物質融合によって、モノリシック集積回路のスケーリングの限界を除去する。図10を参照すると、図10でピコ結晶人工ボラン原子101がケイ素頂点原子201に取って代わることが見られる。特殊な事例のピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4では、6つの面心原子302は(図10には示されないが)ピコ結晶人工ボラン原子101である。各ピコ結晶人工ボラン原子101の短距離二十面体の対称性が維持されるため、ピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4は単結晶シリコンのような長距離周期的並進秩序を持たない。
長距離周期的並進秩序がないので、ピコ結晶シラボラン(B
12H
4)
4Si
4は、空間にわたる拡張伝導及び原子価エネルギーバンドを物理的にサポートすることができない。ピコ結晶人工ボラン原子101間のファンデルワールス力(より具体的にはデバイ力)の存在はさらに、ピコ結晶シラボラン(B
12H
4)
4Si
4において空間にわたる拡張伝導及び原子価エネルギーバンドを取り除く。しかし、ピコ結晶人工ボラン原子101の二十面体対称性は、先行技術では知られていない極めて新規な種類の電気的作用の変位を生じさせる。本発明の好適な実施形態の顕著な新規性及び有用性をより深く理解するために、式(36a‐b)の低周波極限を考える。
プランク振動子は、2つの振動子、すなわち(1)振動エネルギーU=kTを持つ熱的振動子、及び(2)振動エネルギーU=hν
n
Kを持つ量子振動子のハイブリッドを構成する。U=hν
n
Kを持つ離散的量子振動子の量子温度Θ
Tは具体的に、次式(38)によって与えられる。
表1‐2においてマイクロ波周波数ν
n
K=10.9GHzでは、人工核104の量子温度Θ
T=0.77°Kは、宇宙マイクロ波背景放射に関連する絶対温度2.72°Kよりはるかに低い。
対照的に、U=kTの連続熱的振動子の量子温度ΘTは、周囲温度Tよりずっと高い。ピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4を形成する人工核104は、開放二十面体フロッケ多フェルミ粒子ピコ結晶を構成するので、任意の人工核104の量子温度ΘTは周囲温度Tに固定される。ピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4の熱平衡をよりよく理解するために、式(23a‐b)及び表1‐2に従って、電子による二十面体内反結合及び結合固有状態の秩序充填を考慮することは有用である。n=±2及びn=±3の殻内の反結合及び結合エネルギー準位は、禁制エネルギー領域に対して大幅に大きく誇張される。
図11によると、4つの電子は最初にディラック準粒子の+2p3/2
4反結合準軌道を占め、かつ4つの電子は最初に-2p3/2
4結合準軌道を占める。図11の2つの結果はディラック準粒子を、シュレディンガーの非相対論的波動方程式に従うフェルミ粒子から区別する。第一に、ディラック準粒子の反結合準軌道の正エネルギー電子と結合準軌道の負エネルギー電子との間に荷電共役変換対称性が存在する。全てのエネルギー準位を正値と仮定するシュレディンガーの非相対論的方程式によって支配されるフェルミ粒子には、荷電共役変換対称性が存在しない。シュレディンガーの方程式によると、結合軌道によって形成される原子価エネルギーバンドの電荷伝導は、電子空孔から生じる可動正孔のためであると考えられる。負エネルギー電子と正エネルギー正孔(電子空孔)との間の物理的関係は後で展開する。
第二に、より高い角運動量準軌道±2p3/2
4には電子が充填される一方、奇妙なことに、より低い角運動量の準軌道±2sp1/2
0には、図11の通り、電子が欠如している。スピン軌道結合は、式(24a‐b)により表されるように、全整数量子化軌道から半整数量子化準軌道の二重項を形成する。まだ知られていない自然現象(本明細書では以下、スペクトル誘導という)によって、スピン軌道結合による任意の二重項のうち、より高い角運動量(j=l+1/2)の準軌道が最初に、ディラック準粒子のより低い角運動量(j=l-1/2)の準軌道より前に占めることが示されるであろう。スペクトル誘導は先行技術では知られていないが、本発明の好適な実施形態の成功する実施で使用される。
ディラック準粒子の束縛エネルギー固有状態は、本発明の好適な実施形態を含むホウ素二十面体の化学融合に関与する。n=±1の殻を占める内部電子は、ホウ素二十面体の化学結合に関与しない。以下で確立するように、電子微細構造のスペクトル量子数κは、殻が最高束縛エネルギー固有状態の場合を除いては、分極される。スペクトル量子数κは、式(23a)の通り、ディラック準粒子の正エネルギー反結合準軌道のn=+2及びn=+3の殻が最高束縛エネルギー固有状態である場合にのみ、負値であることは注目に値する。さらに、スペクトル量子数κは、式(23b)に従って、ディラック準粒子の負エネルギー結合準軌道のn=-2及びn=-3の殻が最高束縛エネルギー固有状態である場合にのみ、正値であることは注目に値する。
スピン軌道結合は、図11の通り、全整数量子化軌道を正エネルギー半整数量子化準軌道(n>0)の二重項に分離させる。相補的に、スピン軌道結合は、全整数量子化軌道を図11の負エネルギー半整数量子化準軌道(n<0)の対に分離させる。図11の半整数量子化準軌道は、式(23a‐b)のディラック準粒子のエネルギー固有値に従う。ディラック準粒子の半整数量子化準軌道の量子エンタングルメントは結果的に、各殻に前記殻で最高束縛エネルギーを持つ最高エネルギー準位をもたらす。この奇妙に見える現象(これについては後でさらに考察する)は、ギブズ自由エネルギーの相対的変化の観点から説明される。
n=±2の殻の|+2p
3/2
4>及び|-2p
3/2
4>固有状態は、式(44a‐b)の通り、ギブズ自由エネルギーの低減のため、図11の4つの電子によって満たされる。
図11における|±2p3/2
4>固有状態の占有は、|±2p1/2
0>固有状態の空孔とともに、|±2p3/2>固有状態のギブズ自由エネルギーが|±2sp1/2>固有状態のギブズ自由エネルギーより低いという事実による。本発明のピコ結晶オキシシラボランを含む人工核104の主要な特性は、各殻の基底固有状態のギブズ自由エネルギーより低いギブズ自由エネルギーの励起固有状態の存在である。
図11の安定した非充填殻状態は、スピン軌道結合によって生じる二重項のより高い角運動量準軌道への価電子の自発的励起によるものである。電子のこの自発的励起は、式(44a‐b)の通り、より低い角運動量固有状態|+2sp
1/2>に対してより高い角運動量固有状態|+2p
3/2>のギブズ自由エネルギーの減少によるものである。価電子が図12の|±2sp
1/2
2>固有状態を満たす場合、n=±2の殻は完全に閉じる。n=+3の殻では、|+3s
1/2>固有状態に対して、|+3d
5/2>及び|+3p
3/2>固有状態の電子のギブズ自由エネルギーの減少は正であり、したがって電子はスピン軌道結合によって上昇する。
n=-3の殻では、|-3s
1/2>固有状態に対して、|-3d
5/2>及び|-3p
3/2>固有状態の電子のギブズ自由エネルギーの減少は正値であり、したがって、価電子はスピン軌道結合によって下降する。
式(45a)におけるギブズ自由エネルギーの変化-ΔGκ
n(|+3d5/2>)>0は、電子に|+3d5/2>固有状態を占めさせる一方、式(46a)におけるギブズ自由エネルギーの変化-ΔGκ
n(|-3d5/2>)>0は、電子に|-3d5/2>固有状態を占めさせる。
式(45a)に従ったギブズ自由エネルギーの変化-ΔGκ
n(|+3d5/2>)=+17.9μeV及び式(46a)に従った-ΔGκ
n(|-3d5/2>)=-17.9μeVは、図13に示すようにディラック準粒子のn=±3の殻の部分占有をサポートする。式(45b)に従ったギブズ自由エネルギーのもっと小さい減少-ΔGκ
n(|+3d5/2>)=+13.4μeV及び式(46b)に従った-ΔGκ
n(|-3d5/2>)=+13.4μeVは、図14に提示されたディラック準粒子のn=±3の殻の占有をもたらす。最終的に、ディラック準粒子のn=±3の殻は、|±3sp1/2>固有状態が完全に満たされる場合に、図15に示すように閉じる。図11‐15に示すn=±2及びn=±3の殻の秩序占有は、先行技術では知られていない。
略対称核配置のホウ素二十面体によって物理的に構成されるディラック準粒子は、理想的には、図15に示すように価電子が占めるエンタングルされた二十面体内反結合及び結合軌道のため、その周囲に対して閉ざされた量子多体系である。略対称核配置を持つホウ素二十面体は、ホウ素核のためその周囲と相互作用することのできる半開放量子多体系に変換することができる。球状に変形した核を持つ、2つの天然に存在する安定なホウ素同位体10
5B及び11
5Bが存在する。偏平球状核は負の電気四重極モーメントを示し、逆に、偏長球状核は正の電気四重極モーメントを示す。安定核種のうち、ホウ素10
5Bは、変形核のため、核子当たり最大核電気四重極モーメントを示す安定な核種を構成する。
ホウ素
10
5Bは、3×ディラック定数である核角運動量と、+0.085×10
-28e-m
2である大きい正の核電気四重極モーメントとを有する一方、ホウ素
11
5Bは、3/2×ディラック定数である核角運動量と、+0.041×10
-28e‐m
2の核電気四重極モーメントとを有する。ホウ素核の核電気四重極モーメントに関連するエネルギーは、ガウスの法則を用いて次のように表される。
ホウ素の核電気四重極モーメントQ(B)に関連するエネルギーは、ピコ結晶シラボラン中のホウ素濃度n(B)に関係する。本目的のために主なホウ素同位体
10
5B及び
11
5Bは天然に存在する比率であると仮定して、ホウ素の核電気四重極モーメントは次の通りである。
この値を式(47)に適用すると、四重極エネルギーEQ(B)が得られる。
このエネルギーは、図15の|-3sp1/2>固有状態から図16の2つのディスエンタングルされた|-3s1/2>及び|-3p1/2>固有状態へのディスエンタングルメントに関連付けられ、また図15の|-3pd3/2>固有状態から図17の2つのディスエンタングルされた|-3p3/2>及び|-3d3/2>固有状態へのディスエンタングルメントにも関連付けられる。ホウ素の核電気四重極モーメントによる結合|-3sp1/2>及び|-3pd3/2>固有状態のディスエンタングルメントによって放出される総エネルギーEQ(B)=17.9μeV+13.4μeV=31.3μeVは、本明細書では、表2のディラック定数ωk
n列にて先に与えられている。
|-3sp
1/2>及び|-3pd
3/2>結合固有状態のディスエンタングルメントによって放出される総エネルギーEQ(B)=17.9μeV+13.4μeV=31.3μeVは、ピコ結晶シラボラン(B
12H
4)
4Si
4における比較的少数のホストピコ結晶人工ボラン原子101の自己熱をもたらす。量子温度Θ
Tは周囲温度T
0に固定されるので、小さい濃度2P
0のホストピコ結晶人工ボラン原子101は自己熱化される。
ピコ結晶シラボラン(B
12H
4)
4Si
4中のピコ結晶人工ボラン原子101の濃度は、~10
22cm
-3であるが、室温T
0でのイオン化ピコ結晶人工ボラン原子101の微量濃度は次の通りである。
図17の通り、ピコ結晶人工ボラン原子101の自己熱化は、ピコ結晶シラボラン(B
12H
4)
4Si
4を本質的にp型半導体として挙動させる。これは、図17の|-3sp
1/2>及び|-3pd
3/2>固有状態の局所的ディスエンタングルメントがピコ結晶人工ボラン原子101をそれらの周囲と相互作用させるためであり、それによって残りのエンタングルされた|-2sp
1/2>エネルギー固有状態を一対の電子の捕捉によってディスエンタングルする強い傾向を示す。任意の外部ソースから一対の電子を捕捉する能力が無ければ、ピコ結晶シラボラン(B
12H
4)
4Si
4は不均化し、部分的にディスエンタングルしたピコ結晶人工ボラン原子101をジアニオンとジカチオンの対にイオン化する。
実際の実験データに基づいて、p型ピコ結晶シラボランは、化学的にp-(B12H4)3Si5と表すことが最良である。式(52)で、α2は微細構造定数の二乗であり、それはp型ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5中のジアニオン‐ジカチオン対の微量の不均化のおおよその大きさをもたらす。したがって、p型ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5は、p型ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5固体をホストする~1022cm-3のピコ結晶人工ボラン原子101のB12H4の間に分布する~1018cm-3のイオン化ピコ結晶人工ボラン原子101のB12
2-H4及びB12
2+H4を含む半開放混合量子多体系である。静止ピコ結晶人工ボラン原子101の人工核104のイオン化は、様々な人工核104に捕捉された自由電荷によって電荷変位をもたらす。
不均化の相互イオン化の下で、一対の価電子が人工核104のディスエンタングルされた固有状態|-3p1/2
2>→|-3p1/2
0>から幾つかの隣接する人工核104にホッピングして、図18A‐Bの通り、残っているエンタングルされた結合固有状態|-2sp1/2
2>→|-2s1/2
2>+|-2p1/2
2>だけをディスエンタングルする。不均化は微量濃度の反対にイオン化された対のピコ結晶人工ボラン原子101のB12
2-H4及びB12
2+H4をもたらす。中性ピコ結晶人工ボラン原子101のB12H4の総濃度は~1022cm-3である一方、イオン化ピコ結晶人工ボラン原子101のB12
2-H4及びB12
2+H4のずっと小さい微量濃度は~1018cm-3である。2つの中性ピコ結晶人工ボラン原子101のB12H4のイオン化は、関連付けられる人工核104のB12
2-及びB12
2+のイオン化のおかげであることを理解されたい。
~10
18cm
-3の微量ジアニオンB
12
2-H
4及びジカチオンB
12
2+H
4は、~10
22cm
-3の中性ピコ結晶人工ボラン原子101のB
12H
4の間を効果的にホッピングし、その結果、ピコ結晶シラボランp‐(B
12H
4)
3Si
5の熱化が生じる。周囲T
0との熱平衡状態で、ピコ結晶人工ボラン原子101のプランク振動子の平均振動エネルギーU(T
0)は、次の通りである。
周囲との熱平衡状態で、式(53)の振動エネルギーは、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5における中性及びイオン化ピコ結晶人工ボラン原子101に対して同一である。~1018cm-3のイオン化ピコ結晶人工ボラン原子101の濃度はシラボランp‐(B12H4)3Si5の中性ピコ結晶人工ボラン原子101の濃度よりずっと小さい。
電荷は、誘起ポテンシャル井戸内に自己捕捉され得るので、自己捕捉されたポテンシャル井戸のある空間を準粒子として変位する。この種の準粒子はポーラロンと呼ばれる。電荷対を自己捕捉することも可能であり、それはバイポーラロンとして知られる。例として、「Emin, Polarons, Cambridge University Press,2013」を参照されたい。バイポーラロンの捕捉電荷の対は一般的に一対の電子または一対の正孔のいずれかとすることができる。高ホウ素固体は、未占有二十面体内結合軌道を充填することによって、電子安定性を達成するためにホウ素二十面体がイオン化する(B12→B12
2-)強い傾向のため、バイポーラロンの形成に特によく適している。移動電荷変位はピコ結晶オキシシラボランでは充分に異なり、それは特別な種類のバイポーラロンの点からよりよく説明される。
高二十面体ホウ素固体の先行技術において、2つの異なる種類のバイポーラロンが特定されている。逆スピンの一対の正孔を一重項ヤーン‐テラーバイポーラロンに自己捕獲することができるように、電子軌道縮退は原子変位の対称性を破る振動によって解除することができる。全く異なる方法で、逆スピンの一対の正孔は、特殊なバイブロニック(すなわち振動的かつ電子的)固有状態での対称性の破れによって、軟化一重項バイポーラロンに自己捕捉することができる。これら二種類の一重項バイポーラロンは、異なる物理的特性を示す。一重項ヤーン‐テラーバイポーラロンの自己捕捉正孔対は、光吸収によって基底固有状態から励起することができるが、一重項軟化バイポーラロンの自己捕捉正孔対は同様に励起することができない。正孔対は一重項軟化バイポーラロンに自己捕捉されたままであり、格子の原子振動の自由エネルギーの低下によって安定化が生じる。
異常に高いゼーベック係数は、0.15≦x≦1.7の組成範囲にわたって炭化ホウ素B12+xC3-xで発生することが知られているが、ゼーベック係数及び炭化ホウ素の伝導メカニズムの物理的根拠は、文献内で議論されている。「Unusual Properties of Icosahedral Boron‐rich Solids」(Journal of Solid‐State Chemistry,Vol.179,2006,pp.2791-2798)でエミン(Emin)によって確立されたように、バイポーラロン正孔のホッピングと矛盾しない低い熱活性化正孔移動度は、ホットプレス炭化ホウ素で観察される。~1021cm-3の高いバイポーラロン正孔濃度にもかかわらず、~1019cm-3の低いスピン密度が磁化率測定によって炭化ホウ素に確認された。この不均衡は、逆スピンの正孔対の自己捕捉に起因する。
キャリア誘起光吸収バンドが炭化ホウ素で観察されていないので、エミンと他の研究者らは、ホットプレス炭化ホウ素のスピン密度の明らかな減少は、一重項軟化バイポーラロン正孔対の形成をもたらす対称性を破る振動のためであると仮定した。一重項軟化バイポーラロンのキャリア誘起形成は、対称性を破る格子振動の軟化のため、ゼーベック係数の増加に寄与する。0.15≦x≦1.7の組成範囲にわたる炭化ホウ素B12+xC3-x内のゼーベック係数の別の増大は、軟化バイポーラロン正孔のホッピングによるエントロピーの変化に関係付けることができる。格子振動のキャリア誘起軟化及び一重項軟化バイポーラロン正孔対のホッピングによるゼーベック係数への寄与は、組成の変動に対してほとんど反応しない。部分的に不均化のため、炭化ホウ素B12+xC3-xの組成範囲にわたってゼーベック係数の変動が存在する。
炭化ホウ素の不均化は、炭化ホウ素のホウ素二十面体のヤーン-テラー歪みのため、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5の不均化とは全く異なる。電子軌道縮退はピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5ではスピン軌道結合によって解除され、ヤーン-テラー歪みを免れる対称核配置が維持される。ヤーン及びテラーは彼らの論文でスピン効果を無視した。図5の対称核配置を持つホウ素二十面体をサポートする三中心化学結合は、絡み合った回転及び振動の自由度に起因して、式(22a‐d)に従って、三中心結合に垂直なk<111>波数ベクトルに沿って振動を引き起こす。
回転自由度の変化が必然的に振動自由度の変化に対応しており、その逆も真であるような絡み合った回転及び振動の自由度を本明細書では以下、回転振動自由度という。本発明のピコ結晶オキシシラボラン(B12H4)xSiyOzが従来の化学とは一線を画すのはここである。「Symmetry and Spectroscopy」(Oxford Univ. Press,1978)と題する書籍の113ページに、Harris及びBertolucciは、「θ及びψのいずれもV(r)の形に依存しないので、分子の振動に対して我々が選択したモデルにかかわらず、回転波動関数は同じになるだろう」と記載した。これは、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5の不均化に影響する絡み合った回転振動自由度のため、対称核配置を持つホウ素二十面体の場合には該当しない。
不均化とは、熱力学の第二法則に従って混合のエントロピーが最大化される不可逆的な非周期的プロセスである。不均化を定量化するために、ボランジカチオンにイオン化されるイオン化ボラン分子のフラクションをcで表す。可動イオンに関連する混合のエントロピーは一般的に、次の関係によって記述することができる。
式(52)のピコ結晶シラボランp‐(B
12H
4)
3Si
5の不均化は、次式をサポートする等数のジアニオン及びジカチオン(c=0.5)が存在するように、混合の電荷誘起エントロピーの最大化をもたらす。
ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5の自己熱化及び不均化の顕著な新規性及び有用性は、未定義の新種のピコ結晶オキシシラボランの反対側の極端p-(B12
2-H4)2Si4O2
2+を検討することによって理解することができる。実際に、イオン化固有状態は、原子工学による量子エンタングルメントの制御された変動によって、静止ピコ結晶人工ボラン原子101の人工核104の間で変位する。これはピコ結晶オキシシラボランの酸素含有種を必要とし、p-(B12
2-H4)2Si4O2
2+は好適な酸素含有種である。天然酸素原子304は、図19による単位格子の6つの面心原子を占める。
ライナス・ポーリング(Linus Pauling)は、彼の著書「The Nature of the Chemical Bond」(Cornell University Press, Third Edition,1960,pp.64-108)で電気陰性度を展開する中で、共有結合のイオン性の尺度として電気陰性度を確立した。ポーリングの電気陰性度の概念は二中心化学結合を仮定したが、それは本発明のピコ結晶オキシシラボランに直接適用できない。ピコ結晶人工ボラン原子101は水素価電子によって他の天然原子と共有結合する。ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5の有用性は強い親和性に依存しており、電子対を捕捉して、それによって、何もしなければ唯一のエンタングルされた二十面体内結合準軌道となる|-2sp1/2>固有状態をディスエンタングルする。電子対の捕捉が実現されると、中性ピコ結晶人工ボラン原子101のB12H4は、イオン化ピコ結晶人工ボラン原子101のB12
2-H4に変換されるので、図17の電子配置は図20に描かれたものになる。
ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5はそれ故に、大きい量子電気陰性度を持つと言われる。ピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+は逆に、完全にディスエンタングルされた二十面体内負エネルギー結合固有状態のため、低い量子電気陰性度を持つ。図21のフォノボルタイックセル400は、金属電極403を介在させた、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5領域401及び薄いピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+領域402の複数の結合された対によって構成される。フォノボルタイックセル400は一般的に、金属電極403を介在させて結合された領域401及び402のそのような対によって構成されることを理解されたい。
任意の2つの結合されたピコ結晶シラボランp‐(B
12H
4)
3Si
5及びオキシシラボランp‐(B
12
2-H
4)
2Si
4O
2
2+領域は、それぞれp型アイソタイプ整流器404のアノード領域401及びカソード領域402を構成する。フォノボルタイックセル400は、金属電極403を介在させて複数のp型アイソタイプ整流器404から構成される。好適な金属はアルミニウムである。ピコ結晶オキシシラボランp‐(B
12
2-H
4)
2Si
4O
2
2+領域402は実質的に可動正孔が無い一方、室温の結合されたピコ結晶シラボランp‐(B
12H
4)
3Si
5アノード領域401は、~10
18cm
-3の微量濃度で可動正孔を含む。したがって、可動正孔はピコ結晶シラボランp‐(B
12H
4)
3Si
5アノード領域401から各p型アイソタイプ整流器404の結合されたピコ結晶オキシシラボランp‐(B
12
2-H
4)
2Si
4O
2
2+カソード領域402へ自発的に拡散し、領域401と領域402の間の混合のエントロピーは次式に従って最大化する。
理想的な条件下では、エンタルピーの変化による寄与は存在しない。その結果、混合のエントロピーのキャリア誘起変化によるゼーベック係数への寄与は、p‐(B
12H
4)
3Si
5では消失する。
ピコ結晶シラボランp‐(B
12H
4)
3Si
5とは明らかに対照的に、ピコ結晶オキシシラボランp‐(B
12
2-H
4)
2Si
4O
2
2+は、理想的な条件下ではバイポーラロン正孔対が存在しないため、混合の無限ゼーベック係数を示す。
上記混合条件が理想的であることを強調することは正当である。ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5を含むホウ素二十面体の占有エネルギー準位は理想的には、図18A‐Bに示される。同様に、ピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+を含むホウ素二十面体の占有エネルギー準位は理想的には、さらに図20内で提示される。フォノボルタイックセル400の結合された領域401及び領域402は、各ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5領域401から結合されたピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+領域402へのバイポーラロン正孔対の拡散をサポートする。バイポーラロン正孔対は、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5領域401の|-3p1/2
0>固有状態から結合されたピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+領域402の|-2p1/2
0>固有状態に自発的に拡散する。各p型アイソタイプ整流器404のアノード及びカソード領域401及び402間の可動正孔の混合は、異なる組成の結合された領域によるものである。
アノード領域401とカソード領域402との間の可動正孔の混合は、混合のエントロピーSmixが最大になるまで自発的に進む不可逆プロセスである。このプロセスは、電気的負荷に送られた電荷が、各p型アイソタイプ整流器404のピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401の可動電子‐正孔対の自己熱化及び不均化によって完全に補充された場合にだけ、図21に示すフォノボルタイックセル400で継続的に持続させることができる。これは、カルノーサイクルを一般化する量子熱力学サイクルの観点からよりよく説明することができる。上記の目的に従って、次に、図2のカルノーサイクルに匹敵するようにフォノボルタイックセル400を支配する量子熱力学サイクルを構成することは有意義である。これらの2つの熱力学サイクルを比較するために、図2でクラウジウス(1851)によってラベル付けされた状態は、図22に従って新しいラベルに変更される。
図22内のカルノーサイクルのパワーストロークは、自然冷却下での理想気体作動物質の断熱膨張A→Bである。図22の断熱膨張A→B中に、理想気体作動物質は、上昇した温度T0+dTからより低い周囲温度T0に固定されるまで自然冷却される。熱力学的仕事は、断熱膨張A→B中に作動物質によって実行される。比較として、図23の量子熱力学サイクルのパワーストロークは、自然冷却下の可動正孔作動物質の断熱混合A→Bである。図23による断熱混合A→B中に、混合のエントロピーの変化のため、ゼーベック係数(単位電荷当たりのエントロピー)の変化が存在する。
混合のエントロピーの変化Smixによるゼーベック係数αmixは、単相炭化ホウ素B12+xC3-xの組成範囲0.15≦x≦1.7にわたった、B13C2の場合の零からB12.15C2.85の場合の105μV/Kまでの範囲である。図21に示すフォノボルタイックセル400による起電力の発生は、結合された領域のゼーベック係数の差によるものであるが、これを炭化ホウ素の結合された組成によって実現することは不可能である。これは、ヤーン‐テラー理論によれば、炭化ホウ素における二十面体の対称性の破れに起因して、電気エネルギーを要求に応じて印加負荷に連続的に送達しながら、結合された炭化ホウ素領域間の混合エントロピーの差を維持する能力が排除されるためである。これは、今から説明するように、図21に示すフォノボルタイックセル400において結合されたシラボランp‐(B12H4)3Si5領域401及びオキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+領域402によって改善することができる。
図23における初期状態Aで、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401内の各軟化バイポーラロン正孔対は、電荷2e+及び振動回転エネルギーU(T0)=3kT0を含む(hνn
k<<kT0であるため)。初期状態Aで、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401内の各軟化バイポーラロン電子対は、電荷2e-及び振動エネルギーU(T0)=3kT0を含む(hνn
k<<kT0であるため)。低レベル放出状態で、それによって拡散されるバイポーラロン正孔対の濃度が濃度p0を優に下回るように、断熱混合A→B中に、バイポーラロン正孔対は、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401から、結合されたピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402に自由に拡散する。
断熱混合A→B状態でピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+領域402に注入されるバイポーラロン正孔対2e+は、結合された金属電極403に拡散し、そこで捕集される。同時に、バイポーラロン電子対2e-は、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401から結合された金属電極403に自発的に拡散し、そこで捕集される。このようにして、過渡電流が、図21に示すフォノボルタイックセル400で断熱混合A→B中に、アノード電極403からカソード電極403に正の方向に流れる。低レベルの放出状態で、断熱混合A→B中に温度が図23のAにおけるT0からBにおけるT0-dTまで低下する間、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401におけるBでのバイポーラロン電子‐正孔濃度はp0を維持する。
断熱混合A→B中のそのような温度の低下は、断熱混合A→B中に混合のエントロピーSmixの不可逆的な増加が、図23の不可逆的な量子熱力学サイクルで何らかの他の種類のエントロピーの不可逆的な増加によって補完される場合にのみ、維持することができる。そうすることによって、図22のカルノーサイクルの基本的な限界を改善することができる。ルドルフ・クラウジウスは、J.ケスティン(Kestin)によって編集されたThe Second Law of Thermodynamics(Dowden, Hutchinson & Ross,1976, p.162)内の「On Different Forms of the Fundamental Equations of the Mechanical Theory of Heat and Their Convenience for Application」と題する彼の1865年の論文で、エントロピーを物理学に導入した。この論文をクラウジウス(1865)という。クラウジウス(1865)は、用語「エントロピー」を「何かに向かっていくこと」を意味するギリシャ語のεμτροπχηの字訳として導入した。
クラウジウス(1865)ではそういうものとして明示的に使用されていないが、経路に依存しない厳密な微小変動はここではdで表される一方、経路に依存する厳密でない微小変動はここでは、バー付きのdによって表される。これらの2つの微小変動の間の区別は、熱力学第二法則の概論に関係がある。クラウジウス(1865)における方程式(2)は次のように表される。
彼が被積分関数を経路依存性と認識していたとしても、クラウジウス(1865)が被積分関数の分子をdQと表したことを強調することは正当である。式(1)の不等式の方向は、dQ(ここで、dはバー付きのd)が作動物質によって抽出された経路に依存する無限小の熱であると定義されるという事実によるものである。dQ(ここで、dはバー付きのd)が作動物質によって放出される熱に関して定義される場合、不等式は逆転する。クラウジウス(1865)によって理解されたように、不等式は不可逆性を表す。すなわち、「ここでは、等号は、循環プロセスを構成する全ての変化が可逆的である場合に使用されるものである。変化が可逆的でない場合、不等号が優勢である」。クラウジウス(1865)は不可逆サイクルを規定した。「今、物体が、循環プロセスを構成しない変化または一連の変化を被り、その変化の中で初期状態とは異なる最終状態に到達した場合、物体がこの最終状態から初期状態に進むことを可能にするような特徴の追加的変化を導入すれば、この一連の変化から循環プロセスを行うことができる」。後で記載するように、図23のフォノボルタイックセル400の量子熱力学サイクルは、次式に従う不可逆サイクルを構成する。
図23の初期状態のフォノボルタイックセル400の結合されたピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401内の二十面体内電子エネルギー状態は、図24A‐Bに示される。イオン化人工核104におけるバイポーラロン正孔対2e+は、図24Bに示された|-3p1/2
0>固有状態の欠乏電子対によるものである。これらの欠乏価電子は、隣接する人工核104にホッピングし、結果的に、図24Aに描かれたディスエンタングルされた固有状態|-2sp1/2
2>→|-2s1/2
2>+|-2p1/2
2>のバイポーラロン電子対2e-が得られる。図24Aにおける|-2p1/2
2>固有状態内のバイポーラロン電子対2e-及び図24Bにおける|-3p1/2
0>固有状態内の相補的バイポーラロン正孔対2e+の存在は、イオン不均化によるものである。
上述したように、不均化は結果的に、フォノボルタイックセル400の各p型アイソタイプ整流器404のピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401を含む~1022cm-3の中性人工核104の間に分布する~1018cm-3の微量濃度のバイポーラロン電子‐正孔対を生じる。図24C‐Dに示すように、バイポーラロン正孔は理想的には、図23における初期状態Aでフォノボルタイックセル400のピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402に存在しない。図24A‐Bによるピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401と、図24C‐Dに示されたピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402とにはどちらにも電荷中性が存在する。断熱混合A→B中に、バイポーラロン正孔対は、図25B‐Cの通り、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401からピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402に拡散する。
ピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402に注入されたバイポーラロン正孔対は、図26C‐Dの通り前記カソード領域402に接触している金属電極403に向かってホッピングする。断熱混合A→Bの終わりに、ピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402でホッピングする可動バイポーラロン正孔対2e+は次に、カソード領域402に接触している金属電極403によって捕集される。また図23の断熱混合A→Bの同じ終わりでは、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401でホッピングする可動バイポーラロン電子対2e-は、アノード領域401に接触している金属電極403によって捕集される。図23の断熱混合A→Bの終わりは、部分的に、図27A‐Dに示すフォノボルタイックセル400の電子エネルギー準位によって提示される。
図27A‐Dの各p型アイソタイプ整流器404のアノード及びカソード電極403によって、比較的少数のバイポーラロン電子‐正孔対だけが捕集されることを理解すべきである。図27A-Bには明示されないが、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401には、~1018cm-3のバイポーラロン電子‐正孔対がまだ残っている。バイポーラロン電子‐正孔対濃度は物質の量に依存する示量性熱力学変数である。低レベルの放出が仮定されているので、バイポーラロン電子‐正孔対濃度p0は断熱混合A→Bで実質的に変化しない。温度に対しては同じことを言うことができない。温度は示強性熱力学変数であるので、図21のフォノボルタイックセル400における断熱混合A→Bの結果として、温度は無限小量dTだけ減少する。
断熱混合A→B状態で変位したバイポーラロン電子‐正孔対は、一対の電荷2e-または2e+及び振動エネルギー3kT0(hνn
k<<kT0であるため)を含む、イオン化可動プランク振動子である。このようにして、電極403によって捕集される各移動電荷のエネルギーは、等分配定理により3/2kT0である。断熱混合A→B中の熱エネルギーの損失は、図23のAにおけるT0からBにおけるT0-dTへの温度の低下を引き起こす。この温度低下は、フォノボルタイックセル400を含むp型アイソタイプ整流器404のピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401におけるイオン化人工核104の外部濃度(extrinsic concentration)を乱す。静止天然ホウ素核102の核電気四重極モーメントは変化しないので、式(50)の左辺は不変のままである。その結果、断熱混合A→Bによる温度低下はバイポーラロン正孔対の局在化を顕現させる。
外部濃度p>p
0は、等温遷移B→C中に、ピコ結晶シラボランp‐(B
12H
4)
3Si
5アノード領域401で増大する。
等温相転移B→Cの下で、バイポーラロン正孔対の外部正孔対濃度p>p0は、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401で増大する。これは量子熱化と量子局在化との間の量子相転移を構成し、それにより転移のエントロピーStransは減少する。エントロピーは、前記エントロピーの減少がどこか別の場所でのエントロピーの増加によって厳密に補償される場合に、かつその場合にだけ、減少することができる。
図23の等温相転移B→Cの下での転移のエントロピーStransの減少は、潜熱交換を含む。図22によるカルノーサイクルの古典的な事例では、潜熱-dQB→Cは等温圧縮B→C中に周囲に放出される。等温相転移B→C中に、フォノボルタイックセル400の潜熱放出は存在しない。基本的に量子熱力学が古典的熱力学と異なるのはこの点である。前述の通り、エンタングルメントは根本的に量子力学を古典力学から区別する。さらに上述した通り、二十面体の対称操作は原子軌道ψi(p{111})のエンタングルメントを最大化し、結果的に、式(23a‐b)のディラックの相対論的エネルギー固有値に従う二十面体内反結合及び結合電子エネルギー準位を生じる。
上記のエンタングルメントのため、人工核104の電子軌道縮退は、ヤーン‐テラー歪みの代わりにスピン軌道結合によって解除される。本発明のピコ結晶オキシシラボランが他の全ての高二十面体ホウ素(icosahedral boron-rich)固体から区別されるのは、このためである。すなわち、先行技術の全ての公知の高二十面体ホウ素固体では、二十面体の対称性はヤーン‐テラー歪みによって破られる。本目的のためには、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5の温度の低下が必然的に、エンタングルメントのエントロピーSentの増加をもたらし、電子が潜熱の抽出によって図27Bの状態から図28Bに示される状態に励起されることで充分である。エンタングルメントのエントロピーSentの増加は、転移のエントロピーStransの減少を厳密に補償する。
等温相転移B→C中に抽出される潜熱は、図28Bの価電子の励起によって、貯蔵される電気エネルギーに物理的に変換される。これを達成する物理的手段については後述する。本目的のためには、カルノーサイクルとは異なり、等温相転移B→C中に潜熱が周囲に放出されないことで充分である。量子局在化は、量子エンタングルメントの物理的性質による支配的な現象である。外因的なバイポーラロン電子‐正孔対濃度p>p0は、等温相転移B→Cの下で増加した量子局在化のため、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401内で増加する。バイポーラロン電子‐正孔対が充分に局在化される場合、ホウ素核102の核電気四重極モーメントは、局在化するバイポーラロン電子‐正孔対の自己熱化C→Dを生じさせる。
前記自己熱化を図29Bに示す。電子がエンタングルされた二十面体内反結合準軌道からディスエンタングルされた結合準軌道内に落下する場合に放出されたエネルギーは、図29Bの局在化する中性人工核104の温度を上昇させる。自己熱化C→Dによるこの温度上昇は、周囲温度T0で固定される。自己熱化C→Dの下で、自己熱化された中性人工核104は、図30A‐Bに表された方法でイオン化不均化を受ける。結果的に生じるバイポーラロン正孔対濃度p>p0は、図23の通り断熱自己熱化C→D中に局在化したままである。量子相転移はホウ素核102の核電気四重極モーメントによって誘起される。
その結果、等温相転移D→Aは、次式に従って、フォノボルタイックセル400のピコ結晶シラボランp‐(B
12H
4)
3Si
5アノード領域401内のバイポーラロン正孔対濃度pの低下を引き起こす。
図23の等温相転移D→Aは、図24A-BにしたがってDにおける局在化状態からAにおける元の熱化状態への転移のエントロピーStransの補償されない増加に関連付けられる。人工核104のエンタングルメントのエントロピーSentは自発的に減少することができないので、等温相転移D→Aは転移のエントロピーStransの補償されない増加を構成する。二十面体内エネルギー準位のディスエンタングルメントに関連付けられるエンタングルメントのエントロピーSentの減少は、図23に表された断熱自己熱化C→D中のホウ素核102の核電気四重極モーメントによるものである。
等温相転移D→Aは必然的に、周囲から潜熱T
0dS
trans(ここで、dはバー付きのd)を抽出する。フォノボルタイックセル400の等温相転移D→A中の潜熱T
0dS
trans(ここで、dはバー付きのd)の抽出は、ギブズ(1873)によって元々考えられたが、物理的には実現されなかったエントロピー平衡を構成する。等温相転移D→A中のエントロピー平衡の結果、周囲から抽出された潜熱T
0dS
trans(ここで、dはバー付きのd)は、A→B中に混合のギブズ自由エネルギーdG
mix(ここで、dはバー付きのd)の減少に直接変換される。
ゼーベック係数は単位電荷当たりのエントロピーを構成するので、上記関係はゼーベック係数に関して表すことができる。
この関係は、次式によって記載される相補的ゼーベック効果をサポートする。
図23の量子熱力学サイクルは、図21のフォノボルタイックセル400を説明するために、図31で変更される。図22の可逆カルノーサイクルは正味消費潜熱dQD→A -dQB→C(ここで、dはバー付きのd)を、理想気体作動物質の断熱膨張A→Bに関連付けられる熱力学的仕事-dWに変換するが、図31の不可逆量子熱力学サイクルは取り出された潜熱eT0dαtras(ここで、dはバー付きのd)を、ユニークな電荷作動物質の断熱混合A→Bに関連付けられる起電力eVoutに変換する。図21のフォノボルタイックセル400の出力電圧Voutが、第二熱源の必要無く、周囲からの潜熱の等温取出しeT0dαtras(ここで、dはバー付きのd)によるものであることは、極めて重要である。
カルノー機関は温度が異なる2つの熱源の間で動作する可逆熱力学的機関を構成するが、図21のフォノボルタイックセル400は、異なる温度の第二熱源を必要とすることなく、周囲熱源と熱平衡状態で動作する不可逆熱電機関である。図21のフォノボルタイックセル400は、先行技術の全ての熱機関の根本的な限界を改善する。
第一に、かつ最重要事項として、フォノボルタイックセル400は、枯渇性エネルギー源を使用して燃焼または他のプロセスによって高温の熱源を生成する必要性を排除する。図21のフォノボルタイックセル400のエネルギー源は生物圏の潜在エントロピーである。要求に応じて仕事を実行する機関は、上記の仕事のおかげで生物圏のエントロピーを必然的に増大させる。フォノボルタイックセル400によって電気的負荷に送られる熱電仕事eVoutは、元々ギブズ(1873)によって考えられたように、周囲のエントロピー低減から直接変換され、したがって要求に応じた仕事の実行のおかげで、生物圏に正味エントロピー変化は存在しない。すなわち、フォノボルタイックセル400の動作による生物圏のエントロピーの減少は、印加された電気的負荷によって要求に応じて行われる仕事に関連付けられる生物圏のエントロピーの増加によって補償される。
本発明の実施形態の顕著な新規性及び有用性は、NASAによって十年間にわたって平均した実際のデータを用いて作成された図32の地球のエネルギー収支の点から明確にすることができる。地球の大気に衝突する太陽放射は、120THzの放射周波数に対応する5,777°Kの実効温度である太陽の光球から放射される。地球によって300°Kで放射される赤外放射は、6.2THzの周波数である。図32の大気からの後方放射の放射照度は340W/m
2である(または34mW/cm
2でもある)。地球のエネルギー収支は、式(16)でプランクの黒体放射則を用いて構成することができる。
式(16)のプランクの黒体放射則は、任意の温度で熱平衡状態の黒体放射体によって放射される分光放射輝度を完全に説明する。様々な放射体温度に対しプランクの黒体放射則に従う様々な分光放射輝度曲線のプロットを図33に提供する。全波長及び全立体角にわたる各分光放射輝度曲線の積分は結果的に、放射照度として知られる電力束密度|E×H|を生じる。黒体放射の放射照度は、放射体温度のみの関数である。一次近似として、地球の表面は、温度T
0=300°K及び|E×H|=34mW/cm
2の放射照度で大気と熱平衡状態の黒体として扱われる。ウィーンのスペクトル変位則は式(32)の関係をサポートし、それはT
0=300°Kで地球の表面に適用することができる。
ウィーンのスペクトル変位則は、放射体温度に対応する一定の放射照度|E×H|=34mW/cm2での放射によって行われる仕事を規定する。T=5,777°Kにおける太陽の光球の放射の周波数は、ν´=120THzである。比較として、T0=300°Kで地球の表面によって放出される赤外地球放射の周波数は、ν=6.2THzである。地球の表面はT0=300°Kで大気と熱平衡状態にあると仮定して、地球の表面に衝突する120THzの太陽放射、及び地球の表面によって放出される6.2THzの地球放射は、式(64)に従って、一定の放射照度|E×H|=34mW/cm2で発生する。120THzでの光子のエネルギーは0.50eVである一方、6.2THzでの光子のエネルギーは25.9meVである。
地球の生物圏のエネルギー収支は、一定の放射照度|E×H|=34mW/cm2での入射太陽放射と出射地球放射との間のエネルギー差としてみることができる。地球の生物圏のこのエネルギー収支は大雑把なものであるが、本発明の好適な実施形態の新規性及び有用性を記述するのに役立つ。熱力学的機関によって要求次第行われる仕事は、カルノーサイクルでは必然的に効率が限定されているが、生物圏に潜熱を排出し、それによって生物圏のエントロピーを増大する。これは、カルノー熱機関が温度の異なる2つの熱源の間で動作する可逆的熱力学的機関にすぎないという事実の結果、生じる。他の全ての熱力学的機関は、カルノー熱機関より効率の低い不可逆的熱機関である。
カルノー熱機関は、高温の熱源から潜熱を抽出し、生物圏に関連付けられる低温の熱源により少ない潜熱を放出する。カルノー熱機関の可逆性のため、放出された潜熱に関連付けられるエントロピーは、抽出された潜熱に関連付けられるエントロピーと同じである。要求に応じて熱力学的仕事を実行するカルノー熱機関の能力は、高温熱源を生成する不可逆発熱化学反応(典型的には燃焼)の自発性によるものである。燃焼は熱エネルギーの大気中への放出によって生物圏を混乱させ、さらに、化学的副生成物の放出によって大気を有害に混乱させる。熱力学的機関による仕事の実行は、生物圏のエントロピーを増大させる。
気候変動に関して、熱力学的機関による生物圏のエントロピーの不自然な補償されない増大の転換点は、現在、議論のまとになっている。しかし、熱力学的機関の広範な普及が、ますます増大するエントロピーのため、生物圏を有害にも混乱させていることは反論の余地がない。要求に応じて仕事を実行することにより、生物圏のエントロピーの有害な増大を是正する唯一の手段は、ギブズ(1873)が考えたエントロピー平衡化を利用することである。すなわち、「これらの条件下で外部系のエントロピーを減少させることのできる最大量を見出す必要がある。これは明らかに、物体のエネルギーを変化させることなく、あるいはその体積を増大させることなく、物体のエントロピーを増大させることのできる量である」。これはギブズ自由エントロピーである。
先行技術には、物体のエネルギーを変化させることなく、あるいはその体積を増大させることなく、物体のエントロピーを増加させる公知の方法は存在しない。この欠点は、本発明の好適な実施形態によって、キルヒホッフの黒体を先行技術では知られていない方法で利用することによって是正される。キルヒホッフの黒体によって放出される放射の記述は、プランクの黒体放射則によって正確に提供されているが、前記放射を放出するプランク振動子の物理的基礎は先行技術では依然として不明のままである。先行技術では、放射が、カルノーサイクルによって課せられた制限を免れる光電池に起電力を発生させることができることが知られている。可動電子‐正孔対の放射生成は太陽放射照度によって制限され、したがって光電池の電力密度は直接エネルギー変換には小さすぎる。
先行技術における全ての公知の形態の再生エネルギーの低い電力密度は、図21のフォノボルタイックセル400の人工核104のプランク振動子の振動エネルギーの新規かつ有用な利用によって是正される。フォノボルタイックセル400における等温相転移B→C中のエンタングルメントエントロピーSentの補償されない増加は、ギブズ(1873)によって予言された通り、周囲のエントロピーの減少の原因である。図32の地球のエネルギー収支と調和して必要に応じて仕事を実行する唯一の方法は、要求に応じて実行される仕事に関連付けられるエントロピーの増加によって補償される、生物圏のエントロピーの減少を生じさせることである。図21のフォノボルタイックセル400の独自性は、後述するように、生物圏のエントロピーの誘起される減少によって必要に応じた仕事を実行することである。
本発明は、水素及び任意選択的に酸化剤の存在下でホウ素及びケイ素の水素化物を加熱することから誘導される、新しい種類の固体状態組成物を含む。この組成範囲の物質は、以下「ピコ結晶オキシシラボラン(picocrystalline oxysilaboranes)」と呼ばれ、式「(B12H4)xSiyOz」で表され、末端にそれぞれ(B12H4)4Si4及び(B12
2-H4)2Si4O2
2+を含む。x、y、及びzはそれぞれ2≦x≦4、3≦y≦5、及び0≦z≦2の範囲の数字である。ピコ結晶オキシシラボラン(B12H4)xSiyOzは、以下「オキシシラボラン」と呼ばれ「(B12Hw)xSiyOz」で表されるより広い組成範囲の固体状態物質に含まれる。w、x、y、及びzは、それぞれ3≦w≦5、2≦x≦4、3≦y≦5、及び0≦z≦3の範囲の数字である。これらの新規の組成物は、水素が含まれるため、「ボラン(boranes)」と記載される。
図34は、単結晶(001)シリコン基板501上に堆積されたピコ結晶オキシシラボラン502の高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)による顕微鏡写真を示す。界面層503は、後で説明する特定の堆積条件によるものである。単結晶シリコン基板501のHRTEM高速フーリエ変換(FFT)画像を図35に示す。ピコ結晶オキシシラボラン膜502のFFT画像を図36に示す。図35のシリコン基板501のFFT画像は、長距離周期的並進秩序を持つ単結晶格子に典型的なものであるが、図36のピコ結晶オキシシラボラン膜502のFFT画像は、本発明の実施形態に影響を及ぼす理由で、単結晶格子または非晶質ガラスに特徴的ではない短距離秩序を示す。
ピコ結晶オキシシラボラン502の短距離秩序をよりよく理解するために、強め合う電子波干渉をサポートする原子の平行ブラッグ面間の面間格子d間隔に対する、単結晶シリコン基板501のHRTEM回折強度を図37にグラフで示す。図37に示された最も高い強度ピークは、単結晶シリコン基板501の原子の平行{111}面間の3.135Åの面間格子d間隔に関する。図37における他の高強度ピークは、単結晶シリコン基板501の原子の平行{220}面間の1.920Åの面間d間隔に関する。HRTEM顕微鏡法によって得られた図38に示すピコ結晶オキシシラボラン膜502のFFT回折パターンには、特異な高強度ピークは存在しない。
図36のピコ結晶ボラン膜502のFFT画像における不鮮明な円形リングは、図38のd=2.64Åとd=2.74Åとの間の不鮮明な面間格子間隔に対応する。この不鮮明なリングの重要性をより完全に理解するために、図39に示されるように、薄いピコ結晶ボラン膜の従来のω‐2θX線回折(XRD)パターンについて検討することは有意義である。従来のω‐2θXRD回折パターンでは、X線ビームの入射角ω及び回折X線ビームの角度2θは両方とも比較的一定しており、X線回折角度2θにわたってともにまとまって変化する。そうすることによって。一組の規則的間隔の格子面は、鋭い回折ピークを生じる。図39にスキャンされた薄いピコ結晶ボラン膜もまた、単結晶(001)シリコン基板上に堆積された。図39の高強度ピークは、規則的間隔のケイ素格子面からのX線回折に関連付けられる。
図39に2θ=13.83°及び2θ=34.16°付近を中心に2つの不鮮明な回折ピークが存在する。これらの低強度の不鮮明な回折ピークは両方とも、薄いピコ結晶ボラン膜に関連付けられる。薄い膜に関連付けられる回折ピークを基板に関連付けられる回折ピークから切り離すために、微小角X線回折(GIXRD)分光法を利用した。この種類の分光法は低入射角(glancing-angle)X線回折とも呼ばれる。それら2つの用語は交換可能に使用される。図39にスキャンされた同じピコ結晶ボラン膜のGIXRDスキャンを図40に示す。小さい視斜角ωの場合、GIXRD回折ピークは、シリコン基板ではなく、薄いピコ結晶ボラン膜の原子の規則的間隔の格子面によるものである。
ピコ結晶ボラン膜は、おそらく回折角2θ=52.07°付近の不鮮明な回折ピークによる短距離秩序を除いて、図40では非晶質膜のようにみえる。図41にスキャンされたピコ結晶ボラン膜のGIXRDスキャンでは、X線ビームの固定入射角はω=6.53°であり、X線検出器は2θ=7.0°から2θ=80°までの回折角度の範囲にわたって変化した。図41では2θ=13.07°に鋭い低強度X線ピークが存在する。このX線回折ピークは、図39の2θ=13.83°付近の広範囲の低強X線ピークに含まれる、d=6.76Åの面間格子d間隔に対応する。このX線回折ピークは、固定X線入射角ω=6.53°のブラッグ条件に関係する。固定X線入射角ωが変化すると、他のGIXRDスキャンでは新しいX線入射角ωに対応して異なるブラッグピークが得られる。GIXRDスキャンでX線入射角に関係するある範囲の低強度X線ピークの存在は、ピコ結晶ボラン膜が非晶質ではないことを証明しているので、この挙動は奇妙である。
しかし、解析はさらに、ピコ結晶ボラン膜が多結晶ではないことを説明する。多結晶膜は無秩序に配置された多数の結晶粒から構成され、したがって全ての組の規則的な面間格子間隔が、多結晶粒の無秩序配置のおかげで、任意のGIXRDスキャンでブラッグ条件に持ち込まれる。これは図40‐41の事例には該当しない。ここで、実験回折データを本明細書で上述した理論的対称性解析と調和させることによって、ピコ結晶ボラン膜の構造の考えられる説明を提起する。
20C3二十面体対称操作は、10対の平行な(反転しているが)三角面の中点を結ぶ軸回りの120°の回転で正二十面体を変化させない。1.77Åの稜を持つホウ素正二十面体の場合、平行な三角面の面間格子間隔はd=2.69Åである。この二十面体内格子間隔は、1.54ÅのX線(これは上記の図の全てのXRDスキャンで使用されたX線波長である)に対する2θ=33.27°の回折角に対応する。この回折角は、図39のω-2θXRDスキャンにおける2θ=34.16°の広がった低強度回折ピークに含まれ、それは、図36の不鮮明な円形の電子回折リングに関係する。次に、X線及び電子回折ピーク及びリングの広がりについて考えられる説明を提供することは有意義である。
ホウ素二十面体の対称核配置は、12個の二十面体頂点におけるホウ素核が全て同じであることを前提とする。実際にはそうではない。球状変形した核を有する2つの安定な天然のホウ素同位体10
5B及び11
5Bが存在する。偏平球状核は負の電気四重極モーメントを示し、偏長球状核は正の電気四重極モーメントを示す。267の安定核種のうち、ホウ素10
5Bは、核子当たりの核電気四重極モーメントが最大の安定核種であり、ホウ素核を不安定化させる傾向がある。ホウ素10
5Bは、核角運動量3h(ここで、hは、ディラック定数)及び+0.111×10-24e‐cm2の大きい正の核電気四重極モーメントを示す。ホウ素11
5Bは、核角運動量3/2h(ここで、hは、ディラック定数)及び+0.0355×10-24e‐cm2の正の核電気四重極モーメントを示す。
ホウ素の天然の同位体は~20%が10
5Bであり、~80%が11
5Bである。本目的のために、本発明のピコ結晶オキシシラボランのホウ素二十面体を含むホウ素核が天然の同位体比率で分布していると仮定すると、ホウ素核の重心は二十面体面の幾何学的中心から変位する。これはホウ素二十面体の対称核配置を変形させる傾向がある。この変形は、西澤の「Isotopic Enrichment of Tritium by Using Guest-Host Chemistry」(Journal of Nuclear Materials,Vol.130,1985,p.465)によって論じられた、同位体濃縮に関係させることができる。西澤はゲスト-ホスト熱化学を使用して、クラウンエーテル及びアンモニウム錯体によって核施設の排水から放射性トリチウムを除去した。クラウンエーテルによって弱く閉じ込められたアンモニウムNH3は、三角形の隅部に3つの水素核を持ち幾何学的中心に重心がある対称三角形に存在する。三角形の稜に沿った水素核間の距離は1.62Åである。1つの水素原子がトリチウム原子に置換されると、重心はトリチウム原子の方向に0.28Åだけ変位する。
トリチウム化アンモニウムにおける三角形の幾何学的中心からの重心の移動は、エントロピーの増加によるギブズ自由エネルギーの減少に関連付けられる。必然的に、トリチウム化アンモニウム(クラウンエーテルによって弱く閉じ込められた)の同位体濃縮は自発的熱化学反応を構成し、そこでギブズ自由エネルギーの減少が、エンタルピーの正の増加を超えるエントロピーの正の増加の結果として生じる。ピコ結晶オキシシラボランにおいて同様の条件を確立することができる。
ピコ結晶オキシシラボランを含むホウ素二十面体における、ホウ素同位体10
5B及び11
5Bの混合による幾何学的歪みは、構成ホウ素二十面体の10組の略平行な平面による、二十面体内の強め合うX線回折パターンに関連付けられるブラッグピークの広がりを引き起こす。しかし、この同位体歪みはホウ素二十面体の大部分で同様に維持されると考えられ、したがって、ブラッグピークは、連続ランダム多面体ネットワークの隅部のホウ素二十面体によって形成される平行な面間の強め合う二十面体間X線回折パターンに関連付けられる。隅部ホウ素二十面体の面心間の距離はランダムに変化し、したがって2θ=13.83°付近の範囲にわたる各X線入射角に対し、二十面体面間に鋭いブラッグピークが発生する。
ナノ結晶固体は典型的には、粒径が300nm未満の小さい粒子の多結晶固体と認識される。粒径が小さくなるにつれて、周期的並進秩序は短距離になり、X線回折ピークは広くなる。典型的なナノ結晶物質は長距離秩序が欠如しているが、本発明のピコ結晶オキシシラボランは、短距離周期的並進秩序とともに、略対称核配置を持つホウ素二十面体の自己整列のためと考えられる長距離結合配向秩序を備えている。本明細書では、定義上、ピコ結晶ボラン固体は、微小角入射X線回折(GIXRD)を施されると鋭いX線回折ピークによる長距離結合配向秩序を示す、少なくともホウ素及び水素から成る固体である。
ピコ結晶オキシシラボランを特徴付ける長距離結合配向秩序を理解するために、人工核104に注目することは有意義である。ピコ結晶オキシシラボランを構成する人工核104は、短距離周期的並進秩序をサポートするように、略対称核配置を持つホウ素二十面体である。人工核104の10対の平行な面は理想的にはd=269pmによって分離され、それは2θ=33.27°で広い二十面体内X線回折ピークをサポートする。上述の通り、人工核104における二十面体内X線回折ピークは、2つのホウ素同位体10
5B及び11
5Bの混合によって広げられる。本発明の好適な実施形態で「広い」X線回折ピーク及び「鋭い」X線回折ピークが意味するものについて、より厳密に定義することは有意義である。
鋭いX線回折ピークは、半値強度におけるピーク幅がピーク高さの少なくとも十分の一であることによって特徴付けられる。逆に、広いX線回折ピークは、半値強度におけるピーク幅がピーク高さの半分を超えることによって特徴付けられる。図40で2θ=52.07°のX線回折ピークは、小粒の特徴である広いX線回折ピークである。図39のω-2θXRDスキャンで2θ=34.16°のX線回折ピークは、人工核104による強め合う二十面体内X線回折が原因の広いX線回折ピークである。本発明の好適な実施形態は、2θ=33.27°付近の広いX線回折ピークをサポートする人工核104によって構成される。ピコ結晶オキシシラボランの拡張三次元ネットワークは、不規則二十面体の空間的並進によって形成される。
正二十面体の五重対称性は正六面体(立方体)の四重対称性と両立しない、したがって並進不変な方法で、二十面体量子ドットを頂点にして空間的に正六面体の単位格子を周期的に並進させることは不可能である。図10に示す不規則ボラン六面体300では、対称性の破れが発生するはずである。先行技術で最もよく知られた高ホウ素固体では、二十面体の五重対称性はヤーン‐テラー歪みによって破られ、したがって二十面体間結合は二十面体内結合より強くなる傾向がある。先行技術の高ホウ素固体が反転分子と呼ばれるのは、これが理由である。二十面体の対称性の破れによる二十面体の五重対称性の排除は、ホウ素二十面体の結合非局在化に関連付けられる球状芳香族性を低減させる。
二十面体人工核104の五重回転対称性は維持され、したがって不規則ボラン六面体300の四重対称性は破れる。各不規則ボラン六面体300は六面体の隅部の人工核104によって形成される。人工核104は、五重回転対称性を維持する略対称核配置のホウ素二十面体によって形成されることを理解されたい。五重回転対称性はX線回折または電子回折によって観察することはできないが、人工核104の五重回転対称性による新規の電子及び振動特性は観察可能である。人工核104は、短距離並進秩序をサポートする一番目及び二番目に最も近い隣接天然ホウ素原子102の規則的な配列によって構成される。
天然原子と同様に、ピコ結晶オキシシラボランの人工原子101は、300pm未満の空間の領域にエネルギー準位の離散的量子化を制限する。しかし、人工核104の離散エネルギー準位は天然原子の離散エネルギー準位とは基本的に異なる。問題は従来の化学の分光学的原理である。分光学的原理は、Harris及びBertolucciの著書「Symmetry and Spectroscopy」(Oxford Univ. Press,1978)を参照することによって明確になる。彼らの書物の1~2ページで、ハリス(Harris)とベルトルッチ(Bertolucci)は、次のように強調している。「赤外周波数の光は一般的に分子を1つの振動エネルギー準位から別の準位に促進することができる。したがって我々は赤外分光法を振動分光法と呼ぶ。可視光及び紫外光はずっと高いエネルギーを持ち、分子の電子ポテンシャルエネルギーが変化するように分子中の電子の再分布を促進することができる。したがって我々は可視及び紫外分光法を電子分光法と呼ぶ」。
ピコ結晶オキシシラボランの人工核104では、回転自由度、振動自由度、及び電子自由度が、マイクロ波放射に応答して電子の再分布をサポートする回転振動エネルギー準位に完全に絡み合っている。マイクロ波エネルギー準位間の電子の再分布は、二十面体の対向する対の面間の理想的な間隔d=269pmに対応する回折角2θ=33.27°で広がった回折ピークをサポートすることのできる、略対称二十面体の五重回転対称性から生じるエネルギー準位の内部量子化によるものである。天然核とは異なり、人工核104は検出可能なインフラストラクチャを有する。
ピコ結晶オキシシラボランの不規則ボラン六面体300の隅部は人工核104によって占められるので、二十面体間X線回折ピークは最も近い人工核104に関連付けられる。図10を参照すると、人工核104の対応する二十面体面は理想的には、好適な組成範囲にわたってピコ結晶オキシシラボラン(B12H4)xSiyOz(ここで2≦x≦4、3≦y≦5、0≦z≦2)に自己整列する。不規則ボラン六面体300の対称性の破れのため、人工核104の二十面体面の自己整列は、人工核104の二十面体の体心間のランダム分離の存在下で維持される。分子内の天然原子の配列は典型的には、原子価電子の結合角で説明される。この性質は、天然原子には外部から分かる核インフラストラクチャが欠如しているという事実に関係する。
ピコ結晶オキシシラボランの人工核104は、図5のように二十面体の各頂点にホウ素核102を持つ略対称二十面体に関連付けられるインフラストラクチャを示す。略対称核配置を維持するために、人工核104のホウ素核102は、図5の通り、ピーク電子密度が理想的に4つのk<111>波数ベクトルに垂直な8つの二十面体面の中心付近に存在するように、三心結合によって化学的に構成される。人工核104が放射状ホウ素価電子を持たないケージド(caged)ホウ素二十面体を含むことは重要である。人工原子101は、水素原子によってピコ結晶オキシシラボラン中の天然原子に結合し、それは次にデバイ力によって結合される。
不規則ボラン六面体300における人工原子101の自己整列は結果的に、水素核103の価電子をk<111>波数ベクトルに沿って整列させる。不規則ボラン六面体300の四価の原子303の4つの価電子はk<111>波数ベクトルに沿って整列するので、人工原子101はk<111>波数ベクトルに沿って水素原子により四価の原子303と共有結合する。人工原子101の20個の二十面体面が自己整列し、かつ二十面体の体心が有限範囲にわたってランダムに変化する場合、人工原子101と天然の四価の原子303との間の結合角は、k<111>波数ベクトルに沿って整列する。
二十面体面の自己整列及び人工核104の二十面体体心のランダム空間変動は、X線回折分光法によって評価することができる。これは、天然原子とは異なり、人工核104が、周期的に繰り返す一番目及び二番目に最も近い隣接ホウ素原子のインフラストラクチャを備えているためである。人工核104の短距離周期的並進秩序は、平行な二十面体面間の面間隔d=269pmに関連付けられた二十面体内回折ピークによって検出される。ピコ結晶オキシシラボランの短距離周期的並進秩序は、従来のω‐2θX線回折の下で、少なくとも部分的に回折角範囲32°<2θ<36°内に存在する広いX線回折ピークによって特徴付けられる。人工核104の短距離周期的並進秩序は、好適な組成範囲にわたってピコ結晶オキシシラボランを形成する不規則ボラン六面体300の隅部の検出をサポートする。
最も近い隣接人工核104内の平行面のため、二十面体間X線回折ピークは、回折角範囲12°<2θ<16°に含まれる従来のX線回折の下で、集合的に広いX線回折ピークを生じる。従来のω‐2θX線回折では、X線入射角ω及び回折角2θは比較的一定に維持され、非常に広い範囲の回折角にわたって集合的に変化する。従来のω‐2θX線回折は、ピコ結晶オキシシラボランの人工核104の自己整列を単独で確立することができない。この欠点は、従来のω‐2θ線回折が微小角入射X線回折(GIXRD)によってさらに増強される場合に改善することができる。多数のブラッグ条件を従来のω‐2θX線回折の下で検出することができるが、GIXRD回折には、各固定X線入射角ωに対し1つだけの特別なブラッグ条件が存在する。
隅部人工核104の平行面の間の強め合う二十面体間X線干渉のため、6°<ω<8°の範囲の任意の固定X線入射角ωに対し、ピコ結晶オキシシラボランには鋭いX線回折ピークが存在する。最も近い隣接隅部人工核104の二十面体体心は、~640pmの制限された有限範囲にわたってランダムに分離される。ピコ結晶オキシシラボランの不規則ボラン六面体300における隅部人工核104のランダム分離はある範囲の鋭いX線回折ピークをもたらす。任意の固定入射角度ωに対する鋭いX線回折ピークの存在は、長距離結合配向秩序に特徴的である。好適なピコ結晶オキシシラボランについては実際の実施例によって記載する。
本発明のオキシシラボラン膜を作製する方法は、大気より低い圧力に維持された密閉チャンバ内で、ホウ素、水素、ケイ素、及び酸素を含むガス蒸気を、加熱された基板上に通過させることによって、固体膜の沈積を引き起こす化学気相蒸着法である。好適な蒸気は亜酸化窒素N2Oならびにホウ素及びケイ素の低次水素化物であり、ジボランB2H6及びモノシランSiH4が最も好ましい。どちらの水素化物も水素キャリアガス中で希釈することができる。水素希釈ジボラン及びモノシラン、ならびに任意選択的に亜酸化窒素を、~200°C超に加熱された試料上に、~1乃至30torrの圧力で通すことによって、固体オキシシラボラン膜が好適な条件下においてピコ結晶オキシシラボラン中で基板上に自己組織化する。
加熱は、半導体処理の当業者に一般的に知られている装置で実現することができる。例として、モリブデンサセプタは、抵抗加熱または誘導加熱することのできる固体基板キャリアを提供することができる。基板は、抵抗加熱石英管内でサセプタ無しで加熱することができる。全てのこれらの方法では、オキシシラボラン膜がその上に堆積される加熱面が(意図される堆積基板以外に)存在することができる。基板は、以前の堆積によって被覆された加熱表面からの反応器ガス放出を最小化する低圧急速熱化学気相蒸着法で、ハロゲンランプによる放射熱によって冷壁反応器でサセプタ無しに加熱することができる。本発明のピコ結晶オキシシラボランを調製するための好適な方法については、様々な実施例における処理が検討された後で記載する。
堆積温度が~350℃を超える場合はいつでも、水素化効果は実質的に排除することができる。逆に、堆積温度を~35℃未満に低下させることによって、薄いピコ結晶固体を著しく水素化することができ、したがって、水素を化学結合に活発に組み込むことができるようになる。~350℃未満で堆積したピコ結晶オキシシラボラン固体中の水素の相対原子濃度は、通常、酸素の混入度合いに応じて10乃至25%の範囲である。水素がピコ結晶オキシシラボラン固体の化学結合に活発に組み込まれない場合、それはより特定的にオキシシラボライド固体と呼ばれる。実質的に酸素が欠如しているオキシシラボラン固体は、より特定的にシラボラン固体と呼ばれる。
酸素は、個々の酸素原子によって、または水分子の一部として、ピコ結晶オキシシラボラン固体に導入することができる。水分子を含むピコ結晶オキシシラボラン固体は含水性であると言われる一方、相対的にごく少量の水とともに個々の水素原子及び酸素原子によって構成されたピコ結晶オキシシラボラン固体は無水性であると言われる。含水性ピコ結晶オキシシラボラン固体は、明らかに捕捉された水の変化のため、時間の経過とともに色及びストイキオメトリが変化する傾向にあることが観察されている。特に明記しない限り、本明細書で以下に記載する実施形態におけるピコ結晶オキシシラボラン固体は、無水性であると理解される。水和を最小化するために、堆積反応器には、反応チャンバを周囲の湿気への直接的な曝露から分離するロードロックチャンバが取り付けられる。しかし、吸収された湿気を試料装填中に完全に除去することは難しい。
色の変化に加えて、水和はホウ素対ケイ素比を変えることができる。オキシシラボランの1つの好適な実施形態では、ホウ素対ケイ素比は理想的には六である。水和無しでオキシシラボランに原子状酸素を組み込むと、ホウ素対ケイ素比が減少する一方、水分子を含水性オキシシラボランに組み込むと、ホウ素対ケイ素比が増加する傾向がある。これらの効果は両方とも同時に存在し得る。無水オキシシラボランへの酸素の好適な導入は、亜酸化窒素によるものである。ホウ素、ケイ素、及び酸素原子の間のオキシシラボラン中のホウ素の相対原子濃度は、理想的には~83%である。水和効果の無い状態では、ホウ素、ケイ素、及び酸素原子の間のホウ素の相対原子濃度は、~89%を著しく超えない。水和に対する感受性は部分的に、オキシシラボラン膜における相対酸素原子濃度、及び酸素が導入される方法に依存する。
自己組織化ピコ結晶オキシシラボランは、単結晶シリコンなどの共有結合半導体を使用する電子集積回路で有用な特徴を有する。オキシシラボラン固体の電子特性は、ウエハ堆積中における処理条件によって制御された方法で修正することができる。ピコ結晶オキシシラボランは長距離結合配向秩序を示す。X線光電子分光法(XPS)は、ピコ結晶オキシシラボラン中のホウ素1s電子の結合エネルギーを~188eVと確定した。それは二十面体ホウ素分子の化学結合に特徴的である。~532eVの酸素1s電子結合エネルギーは、金属酸化物中の酸素1s電子結合エネルギーのそれと非常によく似ており、かつ固体中の酸素1s電子のそれとは異なっている
本発明のオキシシラボラン固体中のケイ素2p電子結合エネルギーは、組成範囲全体で~99.6eVの鋭いエネルギーピークを示す。これは幾つかの理由から重要である。第一に、オキシシラボランにおける2つのエネルギーピークの不在は、Si‐Si結合及びSi‐B結合が同一結合エネルギーを有することを暗示している。第二に、オキシシラボラン中のケイ素2p電子の測定された結合エネルギーは本質的に、ダイヤモンド格子における四面体化学結合によって形成された単結晶シリコンのそれである。二酸化ケイ素におけるケイ素2p電子結合エネルギーは、~103.2eVである。オキシシラボランが非晶質二酸化ケイ素上に堆積される場合、2つの組成物におけるケイ素2p電子結合エネルギーに明らかな違いが存在する。オキシシラボラン中のケイ素2p電子結合エネルギーは、ピコ結晶オキシシラボランの自己組織化のため、非晶質酸化物の上に堆積されるにも拘わらず、ダイヤモンド格子における単結晶シリコンのそれである。
化学気相蒸着処理条件を適切に制御することによって、ピコ結晶オキシシラボラン(B12H4)xSiyOzは、一方の組成極端をピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4によって、かつ他方の組成極端をピコ結オキシシラボラン(B12
2-H4)2Si4O2
2+によって限定された、好適な組成範囲(2≦x≦4、3≦y≦5、0≦z≦2)で自己組織化する。好適な組成範囲のピコ結晶オキシシラボラン(B12H4)xSiyOzの自己組織化は、本明細書にて後で展開する理由によるものである。好適な処理条件をよりよく理解するために、オキシシラボラン(B12)xSiyOzHwのより広い範囲(0≦w≦5、2≦x≦4、3≦y≦5、0≦z≦3)の非推奨の種の処理が、ピコ結晶ホウ素固体の限定数の実施例によって教示される。
次に、本発明に係るオキシシラボラン組成の様々な実施形態を、例として記載するが、発明の範囲はそれらに限定されない。当業者には理解されるであろうが、本発明は、その趣旨または基本的な特徴から逸脱することなく、他の形で実施されてよい。本明細書の以下の開示及び記載は、本発明の範囲の限定ではなく、例証であることを意図している。最初の幾つかの実施例は、より広い範囲(0≦w≦5、2≦x≦4、3≦y≦5、0≦z≦3)の(B12)xSiyOzHwにおけるシラボライド及びオキシシラボランの処理を教示する2つの実施例の助けを借りて、ピコ結晶シラボラン(B12H4)4Si4の好適な処理を教示するものである。
<実施例1>
4点プローブによって測定した場合に8.7オーム/スクエアの抵抗が生じるように、15Ω・cmの抵抗率を有する100mm径単結晶(001)p型シリコン基板504中に、リンを拡散させた。酸化物を、フッ化水素酸デグレーズ(deglaze)によって、試料ウエハから除去した。試料を、Gyurcsikらの「A Model for Rapid Thermal Processing, IEEE Transactions on Semiconductor Manufacturing,Vol.4,No.1,1991,p.9」に記載されている種類の急速熱化学蒸着(RTCVD)室内に入れた。試料ウエハを石英リング上に載せた後、RTCVD室を閉鎖し、10mmtorrの圧力まで機械的に排気させた。364sccmの流量において水素中3体積%のジボラン混合物B2H6(3%)/H2(97%)と、390sccmの流量において水素中7体積%のモノシラン混合物SiH4(7%)/H2(93%)とを、RTCVD蒸着室内に導入した。
反応ガス流量を、3.29torrの圧力において安定化させ、続いて、ハロゲン電球を30秒間点灯し、試料ウエハを605℃に維持するように調節した。図42に示されているように、薄いシラホウ化物固体506を、ドナードープ領域505上に堆積させた。シラホウ化物固体506の組成を、X線光電子分光法(XPS)によって調べた。ホウ素1s電子の結合エネルギーは、二十面体ホウ素と一致する187.7eVと測定された。ケイ素2p電子の結合エネルギーは、単結晶(001)n型シリコンに特有の99.46eVと測定された。シラホウ化物固体506のXPS深さプロファイルでは、シラホウ化物固体506内のホウ素及びケイ素の相対原子濃度はそれぞれ、86%及び14%と測定された。ラザフォード後方散乱分光法(RBS)は、薄いシラホウ化物固体506中のホウ素及びケイ素の相対原子濃度をそれぞれ、83.5%及び16.5%と決定した。
薄いシラホウ化物固体506中の相対水素濃度を、水素原子が入射高エネルギーヘリウム原子によって弾性的に散乱する水素前方散乱(HFS)によって測定した。水素前方散乱(HFS)は、種々の試料の電荷積分に変動を生じる入射ヘリウム原子の傾斜角により、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)ほど定量的ではない。単位立体角当たりの水素数は一定であるが、立体角自体は種々の試料間で変化し得る。水素は、検出されなかった。水素が存在しない状態においてホウ素とケイ素とから構成される任意の固体は、シラホウ化物組成物と呼ばれる。
二次イオン質量分光(SIMS)分析では、シラホウ化物固体506の11
5B/10
5B比を天然存在比4.03と決定した。本実施例のシラホウ化物固体506に水素または同位体濃縮が存在しないのは、堆積温度によるためである。シラボランの水素化は、以下の実施例において論じるように、堆積温度が~350℃未満であるときに、または酸素が導入されるときに実現することができる。本実施例のシラホウ化物固体406は、X線回折によって、ピコ結晶ホウ素固体であることが確認された。本実施例のピコ結晶シラホウ化物固体406のGIXRD走査を図43に示す。2θ=14.50°における回折ピークは、GIXRD走査のX線入射角ω=7.25°と関連するブラッグ条件に相当する。
<実施例2>
未希釈亜酸化窒素N2Oを704sccmにおいて導入したこと、及び水素化物ガスの流量を2倍にしたことの2点を除いて、上記の実施例1に説明した手順を行った。728sccmの流量において水素中3体積%のジボラン混合物B2H6(3%)/H2(97%)、780 sccmの流量において水素中7体積%のモノシラン混合物SiH4(7%)/H2(93%)と、704sccmの流量において未希釈亜酸化窒素N2Oとを導入した。蒸気流量を9.54torrにおいて安定化させ、続いて、ハロゲン電球を30秒間点灯し、試料基板404を605℃に維持するように調節した。図44に示されているように、オキシシラボラン固体507を、ドナードープ領域505上に堆積させた。薄いオキシシラボラン固体507の組成を、X線回折分光法によって評価した。
薄いオキシシラボラン固体507の通常のω‐2θXRD走査を図45に示す。2θ=13.78°及び2θ=33.07°付近の広がった回折ピークは、ピコ結晶ホウ素固体に特有のものである。これは、図46のGIXRD走査によってさらに補強され、2θ=13.43°の回折ピークは、X線入射角ω=6.70°と関連するブラッグ条件に相当する。オキシシラボラン固体507の組成を、XPS分光法によって確認した。ホウ素1s電子の結合エネルギーは187.7eVであり、ケイ素2p電子の結合エネルギーは99.46eVであり、これらは実施例1と同じである。酸素1s電子の結合エネルギーは、524eVであった。XPSによって測定したところ、ホウ素、ケイ素及び酸素の相対バルク原子濃度は、81%、12%及び7%であった。
ラザフォード後方散乱分光法(RBS)及び水素前方散乱法(HFS)の両方によって、本実施例によるオキシシラボラン膜507内のホウ素、水素、ケイ素及び酸素の相対バルク原子濃度をそれぞれ、72%、5.6%、13.4%及び9.0%と決定した。本実施例のピコ結晶ホウ素固体507はボラン固体ではなく、むしろ、水素原子がほぼ確実に酸素原子に結合している高酸素組成物(B12)2Si3.5O2.5Hとして、さらに十分に特徴付けられる。二次イオン質量分析(SIMS)では、実験誤差内において、同位体比11
5B/10
5Bが2つのホウ素同位体の天然存在比であることを確認した。まもなく証明されるように、11
5B/10
5Bにおける天然存在同位体比の存在は、マイクロ波エネルギーに応答して電子の再分布を促すことが可能な絡み合った回転振動エネルギー準位(rovibronic energy levels)が存在しないことを示す。
<実施例3>
ホウ素水素化物及びケイ素水素化物の熱分解を、テーブル上に固定した5インチ径石英堆積管を備える水平抵抗加熱反応器内において、低圧化学蒸着(LPCVD)により行った。抵抗発熱体を電動トラック上に取り付け、これによって、75mmのシリコン基板を、室温において管前面の石英ホルダー上に載せることができた。試料を載せた時に石英壁に吸着した水蒸気は、その後の化学反応のための水蒸気源を供給した。20Ω・cmの抵抗率の75mm径単結晶(001)n型シリコン基板508を、石英管内の石英ホルダー上に載せ、石英管を密封し、30mmtorrの基準圧力まで機械的に排気した。
図47に示されているように、180sccmの流量において水素中3体積%のジボラン混合物B2H6(3%)/H2(97%)、及び120sccm流量において水素中10体積%のモノシラン混合物SiH4(10%)/H2(90%)を導入することによって、高ホウ素膜509を(001)n型シリコン基板508上に堆積させた。ガス流量を、360mmtorrの堆積圧力において安定化させた。電動発熱体を試料上に移した。石英管及び石英試料ホルダーの熱質量により、堆積温度を、~20分の温度上昇後に230℃において安定化させた。熱分解を、230℃において8分間持続させ、続いて、電動発熱体を引き出し、反応ガスを安定にした。シラボラン膜509中のホウ素及びケイ素の相対原子濃度を、異なる種類の分光法によって測定した。
シラボラン膜509のX線光電子分光法(XPS)の深さプロファイルを行った。シラボラン膜509中の酸素は、石英壁からの水蒸気のガス放出によるものである。図48は、シラボラン固体409中のホウ素、ケイ素及び酸素の相対原子濃度がそれぞれ、85%、14%及び1%であることを示す。ホウ素1s電子の結合エネルギーは187eVであり、これは、二十面体ホウ素分子の結合に特有のものである。ケイ素2p電子のXPS結合エネルギーは99.6eVであり、これは、(001)単結晶シリコンのケイ素2p電子に特有のものである。酸素1s電子のXPS結合エネルギーは、532eVと測定された。ラザフォード後方散乱分光法(RBS)によるシラボラン固体509の深さ分析では、ホウ素及びケイ素の相対バルク原子濃度はそれぞれ、82.6%及び17.4%と測定された。
図49のオージェ電子分光法(AES)の深さプロファイルは、シラボラン固体509中のホウ素、ケイ素及び酸素の相対原子濃度がそれぞれ、73.9%、26.1%及び0.1%であることを示す。固体509の厚さは、XPS、AES及びRBSによって、998Å、826Å及び380Åと確認された。ホウ素、水素及びケイ素の相対バルク原子濃度はすべて、本実施例のシラボラン固体509のRBS/HFS深さプロファイルによって、66.5%、19.5%及び14.0%と確認された。同位体濃縮の存在を確認するために、二次イオン質量分析(SIMS)の深さプロファイルを行った。11
5Bに対するホウ素10
5Bの同位体濃縮は、SIMS深さプロファイルによって証明された。天然存在11
5B/10
5B比が4.03であるのに対し、SIMS分析では、シラボラン固体509の11
5B/10
5B比は3.81と測定された。
実施例3の膜は、酸素の低い相対原子濃度が水の形態であると考えられるため、シラボラン固体509と称する。その結果、この膜は、含水シラボラン固体509とより良好に称する。実施例3の含水シラボラン固体509から、図39の通常のω‐2θXRD回折パターンと、図41のGIXRD回折パターンをともに得た。その結果、含水シラボラン固体509は、上述した定義によればピコ結晶ボラン固体である。含水シラボラン固体509の、図39による通常のω‐2θXRD回折パターンは、実質的に図45によるオキシシラボラン固体507のものであるが、2つのピコ結晶ホウ素固体は、基本的に、ホウ素11
5Bに対するホウ素10
5Bの同位体濃縮によって区別される。この区別は、本発明の好ましい実施形態に影響を及ぼす。
本発明の目的の1つは、自己組織化ピコ結晶オキシシラボランの新規な属を確立することであって、当該新規な属は、マイクロ波放射に応答して回転振動エネルギー準位の間で電子の再分配を促進し、それは、ホウ素11
5Bに対するホウ素10
5Bの同位体濃縮によって特徴付けられる非補償エントロピーの増加によるマイクロ波放射による。そのような電子の再分配の新規性及び有用性は、他の実施例によってさらに理解することができる。
<実施例4>
図50を参照すると、周囲から堆積室を隔離するロードロックシステムによって、EMCORE D‐125 MOCVD反応器内の抵抗加熱モリブデンサセプタ上に、抵抗率が30Ω・cmの100 mm径単結晶(001)p型シリコン基板510を入れた。堆積室を50mmtorr未満に排気させ、続いて、360sccmの流量において水素中3体積%のジボラン混合物B2H6(3%)/H2(97%)、及び1300sccmの流量において水素中2体積%のモノシラン混合物SiH4(2%)/H2(98%)を、堆積室内に導入し、その後、反応ガスを混合させた。ガス流量が安定したら、堆積室の圧力を9torrに調節し、モリブデンサセプタを1100rpmにおいて回転させた。
基板の温度を、抵抗加熱回転サセプタによって280℃まで上昇させた。堆積温度が280℃において安定したら、化学反応を5分間進行させ、続いて、サセプタの加熱を停止し、試料を80℃未満まで冷却させた後に、堆積室から試料を取り出した。図50に示されているように、ポリマー半透明色を有する薄い膜511を、基板510上に堆積させた。シラボラン固体511の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、166nmと測定された。シラボラン固体511は滑らかであり、粒子構造の徴候は見られなかった。シラボラン固体511は、目に見える水和効果を示さなかった。図51のXPS深さプロファイルでは、バルク固体511中のホウ素及びケイ素の相対原子濃度をそれぞれ89%及び10%と確認した。
RBS及びHFS分析では、ホウ素、水素及びケイ素の相対原子濃度を、66%、22%及び11%と測定した。本実施例のシラボラン固体511は、測定可能な水和効果を示さなかったことを除いて、実施例3のシラボラン固体509と非常に類似している。シラボラン固体511の電気特性を、水銀プローブによる掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により測定した。シラボラン固体511の電流電圧特性の線形及び両対数グラフを図52‐53に示す。シラボラン固体511の非線形電流電圧特性は、空間電荷制限伝導電流に起因し、これは、図53による緩和の開始を越えてオームの法則から外れる。
固体の空間電荷制限電流伝導は、モットとガーニーの「Electronic Processes in Ionic Crystals, Oxford University Press,second edition,1948,pp.168-173」によって、提案された。モットとガーニーは、チャイルド(Child)の真空管デバイスの法則(Child's law of vacuum-tube devices)と同様に、固体誘電体が介在する電極間の空間電荷制限電流密度Jが、外部起電力Vによって二次的に変化することを明らかにした。ここで、dは電極間隔、μは電荷移動度、εは、半導体固体誘電体の誘電率である。モット・ガーニーの法則は、ガウスの法則によって電場の発散がゼロになることがないために、単極性の過剰な移動電荷が存在するときには何時でも満たされる。明らかにされるように、ピコ結晶オキシシラボランの空間電荷制限伝導電流は、従来技術においてこれまで知られていなかった電荷伝導機構に起因している。
正味の電荷密度が固体中で消失して電荷の中性が保たれる場合、伝導電流密度Jは、以下の関係式のオームの法則に従ってVに応じて直線的に変化する。ここで、nは移動電荷の密度である。伝導機構間の境界は、緩和時間に関係している。
固体中の伝導電流密度は従来、オームの法則、式(65)とモット・ガーニー則、式(65)とによって制限されていた。オームの法則が満たされる場合、動電荷の通過時間tは必ず緩和時間よりも長くなって、電荷の中立性が維持される。通過時間が緩和時間より短い場合、伝導電流はモット・ガーニー則に従って空間電荷制限される。空間電荷制限電流の条件は以下の通りである。
モットとガーニーによる固体の空間電荷制限伝導の研究は、誘電体に固有な低い移動電荷密度に起因して、誘電体に焦点が当てられていた。しかしながら、誘電体は通常、移動空間電荷の存在に抵抗する大きなトラップ密度を有している。ランパート(Lampert)の「Physical Review、Vol。 103、No.6、1956、p.1648」によれば、半導体におけるワンキャリア電流‐電圧特性は、典型的には3つの曲線によって制限される:オームの法則、モット・ガーニー則、及びトラップ充填(trap-filled)限界曲線。二次電流‐電圧依存性は、ツーキャリア電荷伝導の三次依存性に拡張される。
<実施例5>
亜酸化窒素を40sccmの流量において導入した、という唯一の点を除いて、実施例4に説明した手順を行った。図54に示されているように、ポリマー半透明色を有する薄いオキシシラボラン膜512を、(001)単結晶p型シリコン基板510上に堆積させた。オキシシラボラン膜の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、159nmと測定された。図55のXPS深さプロファイルでは、バルクオキシシラボラン固体512中のホウ素、ケイ素及び酸素の相対原子濃度をそれぞれ、88.0%、10.4%及び1.6%と確認した。酸素の含有は、実施例4の図50のシラボラン固体511をこの実施例の図54のオキシシラボラン固体512に変換させた。酸素の組込みでは、実施例4のシラボラン固体511に対して本実施例のオキシシラボラン固体512を変化させた。
本実施例のオキシシラボラン膜512の電気インピーダンスを、水銀プローブによって供給される掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により測定した。本実施例のオキシシラボラン固体512のインピーダンス特性の線形及び両対数グラフをそれぞれ図56‐57に示す。本実施例のオキシシラボラン固体512のインピーダンスは、実施例4のシラボラン固体511と比べて増加した。シラボラン固体511中の空間電荷制限電流は、四次電流電圧特性で飽和する一方で、本実施例のオキシシラボラン固体512の空間電荷制限電流は、図57に示されているように、五次の電流電圧特性において飽和した。空間電荷電流は、移動電荷ドリフトによって制限される。
<実施例6>
亜酸化窒素の流量を40sccmから80sccmへ増加させた、というただ1点を除いて、実施例5に説明した手順を行った。この実施例のオキシシラボラン固体512の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、147nmと測定された。図58のXPS深さプロファイルでは、バルクオキシシラボラン固体412中のホウ素、ケイ素及び酸素の相対原子濃度をそれぞれ、88.1%、9.5%及び2.5%と確認した。本実施例のオキシシラボラン固体512中のホウ素の相対原子濃度は、実施例5中のオキシシラボラン固体512と同じである。本実施例のオキシシラボラン固体512中のケイ素の原子濃度は、実施例5のオキシシラボラン固体512のケイ素の原子濃度と比べて減少した。本実施例のオキシシラボラン固体512中の酸素のバルク原子濃度は、実施例5のピコ結晶オキシシラボラン固体512の酸素の原子濃度と比べて増加した。
RBS及びHFS分析では、ホウ素、水素及び酸素の相対バルク原子濃度をそれぞれ、63%、23%、11%及び3%と測定した。酸素の相対原子濃度はそのRBS検出限界に近いため、正確ではない。本実施例によるオキシシラボラン膜のインピーダンスを、水銀プローブによって得られる掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により測定した。オキシシラボラン固体512のインピーダンス特性の線形及び対数グラフをそれぞれ図59‐60に示す。本実施例によるオキシシラボラン固体512のインピーダンス特性は、実施例5におけるオキシシラボラン固体512のインピーダンスよりも適度に大きなインピーダンスを示した。
<実施例7>
亜酸化窒素の流量を80sccmから100sccmへ増加させた、という唯一の点を除いて、実施例6に説明した手順を行った。この実施例のオキシシラボラン固体512の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、140nmと確認された。図61のXPS深さプロファイルでは、オキシシラボラン固体512中のホウ素、ケイ素及び酸素の相対原子濃度をそれぞれ、85.9%、10.7%及び3.4%と確認した。本実施例のオキシシラボラン固体512のインピーダンスを、水銀プローブによって得られる2つの掃引信号を用いて、HP‐4145分析器により測定した。本実施例のオキシシラボラン固体512の電流電圧特性の線形及び両対数グラフを図62‐63に示す。本実施例のオキシシラボラン固体512は、実施例6のインピーダンスよりもわずかに高いインピーダンスを示した。
<実施例8>
亜酸化窒素の流量を100sccmから300sccmへ増加させた、という唯一の点を除いて、実施例7に説明した手順を行った。この実施例の薄いオキシシラボラン固体512の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、126nmと測定された。図64のXPS深さプロファイルでは、本実施例のオキシシラボラン固体512中のホウ素、ケイ素及び酸素の相対バルク原子濃度は、83.4%、10.5%及び6.2%と測定された。オキシシラボラン固体512のインピーダンスを、HP‐4145パラメーター分析器によって測定した。この実施例のオキシシラボラン固体512のインピーダンス特性の線形グラフ及び両対数グラフを図65‐66に示す。
<実施例9>
亜酸化窒素の流量を300sccmから500sccmへ増加させた、という点を除いて、実施例8の手順を行った。本実施例の薄いオキシシラボラン固体512の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、107nmと測定された。図67のXPS深さプロファイルでは、本実施例のバルクオキシシラボラン固体512中のホウ素、ケイ素及び酸素の相対原子濃度を、82.4%、10.0%及び7.6%と確認した。RBS及びHFS分析では、ホウ素、水素及び酸素の相対バルク原子濃度を、66%、20%、9%及び5%と確認した。酸素の相対原子濃度は、そのRBS検出限界に近い。本実施例のオキシシラボラン固体512のインピーダンスを、水銀プローブによって得られる掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により測定した。本実施例のオキシシラボラン固体512のインピーダンス特性の線形及び両対数グラフは、図68‐89にある。
本実施例のオキシシラボラン固体512は、酸素が多く含まれ、これによって、自己組織化ピコ結晶オキシシラボラン(B12H4)xSiyOzの好ましい組成範囲内(2≦x≦4、3≦y≦5、及び0≦z≦2)には存在せず、オキシシラボラン(B12)xSiyOzHwより広い組成範囲(0≦w≦5、2≦x≦4、3≦y≦5、0≦z≦3)に含まれる。ピコ結晶オキシシラボランが、単結晶シリコンの表面電気化学ポテンシャルを調節し、同時に電気を通すように、単結晶シリコンの表面フェルミ準位をピニング解除することは重要である。この特性をさらに十分に認識するために、単結晶シリコンによって電気化学整流器が形成される例を考慮することは有意義である。
先行技術では、単結晶シリコン領域と、異なる仕事関数の結合材料との間の移動電荷拡散と関連する望ましくない接触電位により、電荷を伝導しながら、禁制エネルギー領域全体にわたって単結晶シリコン領域の電気化学ポテンシャルを変化させることは、可能ではなかった。この欠陥は、実例による自己組織化ピコ結晶オキシシラボランによって改善される。
<実施例10>
単結晶シリコンを、径100mm及び厚さ525μmの(001)ホウ素ドープp型単結晶基板521上にエピタキシャルに堆積させた。縮退単結晶シリコン基板521の抵抗率は0.02Ω・cmであり、これは、4×1018cm-3のアクセプター濃度に相当する。非縮退p型単結晶シリコン層522を、シリコン基板421上に堆積させた。エピタキシャルシリコン層522の厚さは15μm、抵抗率は2Ωcmであり、これは、~7×1015cm-3のアクセプター不純物濃度に対応する。すべての酸化物を、フッ化水素酸デグレーズによって除去した。酸デグレーズの後、周囲から堆積室を隔離するロードロックシステムによって、シリコン基板521を、EMCORE MOCVD反応器内の抵抗加熱サセプタ上に差し込んだ。堆積室を50mmtorr未満に排気させ、続いて、150sccmの流量において水素中3体積%のジボラン混合物B2H6(3%)/H2(97%)、及び300sccmの流量において水素中2体積%のモノシランSiH4(2%)/H2(98%)を、堆積室内に導入した。亜酸化窒素N2Oを、100sccmの流量において導入した。
ガスを混合させた後に、堆積室内に入れた。反応ガスが安定したら、サセプタを1100rpmにおいて回転させながら、堆積室の圧力を1.5torrに調節した。基板の温度を、2分間で230℃まで上昇させた。そして、サセプタの温度をさらに260℃まで上昇させ、続いて、安定化させ、化学反応を12分間進行させた。サセプタの加熱を安定にし、反応ガス中で試料を80℃未満に冷却させた後に、堆積室から試料を取り出した。オキシシラボラン膜523を堆積させた。厚さは、可変角分光偏光解析法によって、12.8nmと測定された。厚さにより、オキシシラボラン膜523は、着色を示さなかった。
アルミニウムを、ベルジャー型蒸発器(bell-jar evaporator)内において基板521の裏側全体に蒸着させ、その後、同様のアルミニウム層を、ベルジャー型蒸発器内のシャドーマスクを介してオキシシラボラン膜523上に蒸着させた。図70に示されているように、上側のアルミニウムはカソード電極524を形成し、裏側のアルミニウムはアノード電極525を形成した。本実施例のp型アイソタイプ電気化学整流器520の電気特性を、マイクロプローブによってアノード電極525及びカソード電極524から得られる掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により測定した。本実施例のp型アイソタイプ電気化学整流器520の線形電流電圧特性を、図71‐72において、2つの異なる電流電圧範囲で示す。電気化学整流器520は、表面電気化学ポテンシャルの変動によって、p‐n接合によらずに、非対称の電気コンダクタンスを達成する。
図71に示されているように、カソード電極524がアノード電極525に対して負にバイアスされている(順方向にバイアスされている)場合、より顕著に大きな電流が流れる。カソード電極524がアノード電極525に対して正にバイアスされている(逆方向にバイアスされている)場合、~1Vを超える逆方向バイアスの増加に伴って、はるかに小さな電流が増加する。増加した逆方向バイアス電流は、理想的ではない処理条件に起因する有害な界面効果によると考えられる。順方向バイアス及び逆方向バイアスの対数電流電圧プロットを図73‐74に表す。非対称的な電流伝導は内部電場に起因している。
<実施例11>
亜酸化窒素N2Oの流量を20sccmから65sccmへ増加させた、という唯一の点を除いて、実施例10に説明した手順を行った。本実施例のオキシシラボラン膜523の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、12.4nmと測定された。本実施例のp型アイソタイプ電気化学整流器520の電気特性を、マイクロプローブによってアノード電極525及びカソード電極524から得られる掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により測定した。本実施例のp型アイソタイプ電気化学整流器520の線形電流電圧特性を、図75‐76において、2つの異なる範囲で示す。順方向バイアス及び逆方向バイアスの対数電流電圧プロットを図77‐78に示す。この実施例のオキシシラボラン膜523のバルク組成は実質的に典型的なオキシシラボラン(B12
2―H4)2Si4O2
2+のものであるが、以下に述べる理由から整流は理想的ではないように見える。
<実施例12>
260℃における反応時間を12分から6分へ短縮したことを除いて、上述した実施例11の手順を行った。本実施例のオキシシラボラン膜523の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、7.8nmと測定された。本実施例のp型アイソタイプ電気化学整流器420の電気特性を、2つのマイクロプローブによってアノード電極525及びカソード電極524から得られる掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により測定した。本実施例のp型アイソタイプ電気化学整流器520の線形電流電圧特性を、図79‐81において、3つの異なる電流電圧範囲で示す。順方向バイアス及び逆方向バイアスの対数電流電圧特性を図82‐83に示す。本実施例の整流特性は、大部分が、より薄い膜23により、実施例10‐11と比べて改善されている。
<実施例13>
亜酸化窒素N2Oを導入しなかったことを除いて、実施例12の手順を行った。図84に表されているシラボラン膜526の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、11.4nmと測定された。デバイス520の電気特性を、マイクロプローブによってアノード電極525及びカソード電極524から得られる掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により測定した。デバイス520の線形電流電圧特性を図85‐86に示す。順方向バイアス及び逆方向バイアスの対数電流電圧プロットを図87‐88に示す。
ピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+と、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5の相違は、酸素の重要な役割による、実施例11及び実施例13の電気化学デバイス520の整流における根本的な相違によって例証される。これら2つの実施例のデバイス520における相違は、ピコ結晶膜523及び526の酸素濃度である。図75を参照すると、実施例11のp型アイソタイプ電気化学整流器520の電流は、カソード電極524がアノード電極425に対して次第に順方向にバイアスされる(すなわち、負にバイアスされる)につれて、著しく増加する。図77に示されているように、実施例11のp型アイソタイプ電気化学整流器520における順方向バイアス電流は、低電流においてバイアス電圧とともに直線的に増加し、緩和電圧を超えて四次の電圧依存性により増加する。実施例11における整流器520の順方向バイアス電流電圧特性は、緩和電圧を超えて、オキシシラボラン膜523によって空間電荷制限され、それゆえに、輸送時間は緩和時間よりも短い。
電気化学整流器520が逆方向にバイアスされる場合、異なる状況が発生する。ここで図75を参照すると、実施例11のp型アイソタイプ電気化学整流器520の電流は、カソード電極524がアノード電極525に対して逆方向にバイアスされる(すなわち、正にバイアスされる)につれて、大きく減少したレートで増加する。これは、実施例11のオキシシラボラン膜523が理想的にはほぼ、閉殻電子配置における固体を構成するピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+である、という事実による。図77の両対数グラフによって表される伝導電流は、注入された荷電プラズマに特有のものである。
電荷プラズマが半導体または誘電体に注入される場合、十分に高いレベルの電荷注入が、電荷中性条件の破れ(breakdown in charge neutrality)によって空間電荷制限電流密度を生じるまで、電流密度及び電圧は直線的に変化する。半導体への高レベル電荷注入は、空間電荷制限電流密度の電圧に対する二次依存性をもたらす傾向がある一方で、誘電体への高レベル電荷注入は、空間電荷制限電流密度の電圧に対する三次依存性をもたらす傾向がある。半導体と誘電体との間の主な相違は、半導体が、負または正の極性の大きな移動電荷濃度を特徴とするのに対し、誘電体がごくわずかな移動電荷濃度を特徴とすることである。
原則として、図77における整流器520の両対数電流電圧特性は、実施例11のオキシシラボラン膜523が、理想的には誘電体の閉殻電子配置と同様の閉殻電子配置を有するピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+のバルク組成であるので、誘電体に注入された荷電プラズマに特有である必要がある。「Current Injection in Solids, Academic Press, 1970, pp. 250-275」においてランパートとマークが明らかにしたように、移動電荷拡散は、いずれかの接点の拡散距離内において任意の誘電体のプラズマ注入電流電圧特性に対して影響力を有しており、これによって、電流密度は、電圧とともに指数関数的に変化する。誘電体の長さが拡散距離よりもはるかに大きい場合、移動電荷ドリフトが電流電圧特性に対して影響力を有し、これによって、電流は、緩和電圧Vまで電圧とともに直線的に変化し、それは、三次変化で空間電荷制限される。
例えば、ランパートとマークによる上述の参考文献によれば、真性シリコン領域の長さが4mmであるシリコンPINダイオードは、10Vの緩和電圧を超える印加電圧に対する電流密度の三次依存性を有する空間電荷制限電流電圧特性を示す。PINダイオードの真性シリコン領域の長さがおよそ1mmに減少する場合、電流密度は、移動電荷拡散の独占により、印加電圧とともに指数関数的に変化する。図77を再び参照すると、実施例11の電気化学整流器50は、ピコ結晶オキシシラボランP‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+バルク組成を有した、わずか12.4nmの薄いオキシシラボラン膜523において、ドリフト空間電荷制限電流電圧特性を有する。
これは、オキシシラボラン膜523のデバイ長がおよそ4nm未満である程度に外部移動電荷濃度が十分に大きい場合にのみ可能である。好ましい組成範囲(2≦x≦4、3≦y≦5、及び0≦z≦2)にわたる自己組織化ピコ結晶オキシシラボラン(B12H4)xSiyOzの外部移動電荷濃度p0は、理想的には対称的な核配置を有するホウ素二十面体の核電気四重極モーメントによって、p0≒1018cm-3付近において理想的には一定である。外部濃度p0は、バンドギャップの峡帯化(bandgap narrowing)の開始に起因する単結晶シリコン中の不純物ドーピング濃度に関係する。ピコ結晶オキシシラボラン(B12H4)xSiyOzは、閉殻電子配置を示し、また、シリコンにおけるバンドギャップの峡帯化の開始付近で外部移動電荷の集積も示すので、新規組成物である。
ピコ結晶オキシシラボラン(B
12H
4)
xSi
yO
zにおける好ましい組成範囲(2≦x≦4、3≦y≦5、0≦z≦2)にわたる電荷伝導の鍵となる要素は、ホウ素二十面体の核電気四重極から生じる不変の外部電荷濃度p
0であり、その結果として、従来の半導体不純物ドーピングの影響を受けない。外部電荷濃度p
0は、オキシシラボラン膜への酸素の混入によっては影響されない。これを理解するために、式(66)及び式(67)を組み合わせて以下の関係を得る。
緩和時間τは電荷移動度μと外部電荷濃度p0の両方に依存する一方で、緩和電圧Vは後者に依存ており、これは、ピコ結晶シラボラン(B12H4)xSiyOzにおいて好ましい組成範囲(2≦x≦4、3≦y≦5、0≦z≦2)に対して不変である。結果として、同じの厚さを有するオキシシラボラン膜は、同じ緩和電圧Vを有する。実施例13に従って堆積されたピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5固体526は、11.4nmの厚さと、図87‐88の緩和電圧Vτ≒0.2Vとを有する。実施例11のピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+固体523は、12.4nmの厚さと、図77‐78の緩和電圧Vτ≒0.2Vとを有する。実施例13により堆積されたピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5固体526及び実施例11により堆積されたピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+固体523は、同じ緩和電圧Vτ=0.2Vを共有するが、電荷移動度が異なるために、導電率は異なる。結果として、エンタルピーは、電荷拡散が主に混合のエントロピーに起因するように、本質的に一定である。
バイポーラロン正孔対は、フォノボルタイックセル400のピコ結晶オキシシラボランp‐(B
12
2-H
4)
2Si
4O
2
2+カソード領域402内に約2デバイ長だけ拡散する。領域401と領域402の冶金学的接合部の周囲の空間電荷領域では、図21のフォノボルタイックセル400にて、開回路電場Eが領域402のオキシシラボランジカチオンから生じ、領域401のシラボランジアニオンで終わる。力線は電荷対と関連しており、電場の広がりは領域402中へと約2デバイ長さL
Dであるので、フォノボルタイックセル400の結合領域401と結合領域402との間の開回路電場Eは、以下のように第1近似によって与えられる。
量子熱化によって生成されたプランク振動子は、3kの理想熱容量を有するので、式(69)の電場は、以下のようになる。
室温では、式(70)の電場Eは、約4nmのデバイ長LDに対して~5×104V/cmである。図21のフォノボルタイックセル400のカソード領域402の厚さが拡散長さよりも小さい場合にのみ、式(70)の開回路電場はそれ自体、部分的に、結合されたアノード領域401とカソード領域402との間の開回路起電力Vとして表れる。室温では、電場に蓄積される電気エネルギーは~39meVである。式(70)の電場は、空間電荷制限電流密度が少なくとも部分的に拡散制限されている場合にのみ、外部電極に表れる。
上記実施例における最も薄いピコ結晶オキシシラボラン膜は、実施例12における7.8nmであるが、その膜厚は、空間電荷制限電流密度が少なくとも部分的には移動電荷拡散に起因するほどには十分に薄くはない。フォノボルタイックセル400の外側カソード電極403と外側アノード電極403の間に開回路電圧Voutを発生させるためには、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401とピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402の厚さは、~4nm未満でなければならない。これは、以下の実施例で説明するような問題を提起する。
<実施例14>
図89を参照すると、堆積チャンバを隔離するロードロックシステムによって、EMCORE D‐125 MOCVD反応器内の抵抗加熱モリブデンサセプタ上に、5Ω‐cmの抵抗率を有する直径100mmの単結晶(001)p型シリコン基板527が装填された。堆積チャンバを50mtorr以下に排気し、その後、150sccmの流量にて水素中で3体積%のジボラン混合物B2H6(3%)/H2(97%)と、300sccmの流量にて水素中で2体積%のモノシラン混合物SiH4(2%)/H2(98%)とを、堆積チャンバ内に導入した。同時に、未希釈の亜酸化窒素N2Oを20sccmの流量で導入した。反応ガスは、堆積チャンバに入る前に混合された。反応ガスが安定すると、サセプタを1100rpmで回転させながら、チャンバ圧力を1.2torrに調整した。さらに温度を上げる前に、抵抗加熱サセプタによって基板温度を230℃に上げた。
2分後、サセプタの温度をさらに260℃に上げると、サセプタは安定して、12分間化学反応を進行させることができた。サセプタ加熱を安定させて、堆積チャンバから取り出す前に、試料を反応ガス中で80℃未満に冷却した。図89に示すように、シリコン基板527上に薄いオキシシラボラン膜528が堆積した。この実施例のオキシシラボラン膜528の厚さは、可変角分光エリプソメトリーによって8.2nmであると確認された。厚さが薄いと、オキシシラボラン膜528に有害な異常が生じる。
本実施例のオキシシラボラン膜528のX線光電子分光法(XPS)は、薄い厚さによって難しかった。XPSは、複数回の表面測定を繰り返す間に試料をアルゴンスパッタリングすることで深さプロファイルを確認するために使用できる表面分析方法である。光電子は実際の表面に制限されず、むしろ、5.0nmを超える表面下の深さから放出され得る。深さプロファイルの分解能をより良くするために、射出角を20°に減少させて、光電子の脱出深さが2.5nm程度になるようにした。この実施例のオキシシラボラン膜528の厚さは8.2nmであるので、各バルク測定値は、界面効果をそれに統合する。最良のデータ点は、各界面からわずか4.1nmである。そのような理解によって、図90のこの実施例のオキシシラボラン膜528のXPS深さプロファイルは、ピークホウ素濃度におけるホウ素、ケイ素、及び酸素の相対的バルク原子濃度を83.4%、11.1%、及び5.5%として確立した。
ピークホウ素濃度での組成は、典型的なピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+一致する。有害な組成変動(実際の異常と測定異常の両方)が両方のインタフェースの近くで起こる。この実施例でおいてXPS深さプロファイルによって測定された典型的なピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+の組成偏差は、内部光電子の結合エネルギー、特にシリコン2p電子結合エネルギーの変化に関係している。酸素1s電子の結合エネルギーは、表面で531.5eV、本実施例のオキシシラボラン膜528の中央付近で531.4eV、シリコン基板527付近で530.8eVと測定された。本実施例のホウ素1s電子結合エネルギーは、表面で187.3eV、本実施例のオキシシラボラン膜528の中央で187.6eV、シリコン基板527付近で187.6eVであると、XPSによって測定された。これらの結合エネルギーはほぼ理想的である。
これらの結合エネルギーは、上記の実施例においてXPSによって測定されたホウ素結合エネルギーと一致する。しかしながら、他の全ての実施例とは全く異なるのは、表面近くのシリコン2p電子結合エネルギーに二重エネルギーピークが存在することであり、より低いピークは99.7eVである。シリコン2p電子の結合エネルギーは、オキシシラボラン膜528の中央及びシリコン基板527の近くで99.3eVである。この単一エネルギーピークの結合エネルギーは、先に開示された実施例における単一エネルギーピークと一致する。この実施例と同様なピコ結晶オキシシラ ボラン固体の熱処理プロファイルは、図91にある。温度は縦座標に沿って示されており、経過実行時間は横座標に沿って秒単位で示されている。
図91では、冷却時間が12分(840乃至1680秒)であることが注目に値する。膜の完全性は、より急速な冷却によって改善できる。この実施例のオキシシラボラン膜528の望ましくない表面酸化が試料の冷却中に起こったことが知られている。この有害な酸化は、図21に示すフォノボルタイックセル400においては排除されなければならない。さらに、好ましい温度への温度上昇中に自然酸化物及び他の吸着汚染物質が導入されることで、過剰の酸素及びケイ素がシリコン基板527の近くのオキシシラボラン膜528に組み込まれることが知られている。図34の高分解能透過型電子顕微鏡写真(HRTEM)に示されるように、有害な界面層503は、約2nmの厚さである。その界面層は、図21に示されるフォノボルタイックセル400の正常な動作を妨げる。
ピコ結晶アノード領域401及びカソード領域402の組成の有害な変動を改善するためには、図21のフォノボルタイックセル400は、その場で不変の堆積温度で処理される必要がある。フォノボルタイックセル400の金属電極403は、適切なアルミニウム前駆体を用いたMOCVD堆積によってその場で堆積される。そのような前駆体の1つは、トリメチルアミンアラン(TMAA)H3AlN(CH3)3である。TMAAによるアルミニウムナノワイヤの堆積は、「Benson et al.,“Chemical Vapor Deposition of Aluminum Nanowires on Metal Substrates for Electrical Energy Storage Applications,”ACS Nano 6(1),pp.118-125(2012)」に詳細に論じられている。例えば、実施例14に従って、シリコンウエハのような適切な基板をEMCORE D-125 MOCVD反応器に挿入することができ、これは50mtorr未満にポンプで排気される。
トリメチルアミンアラン(TMAA)H3AlN(CH3)3を水素キャリアガスによって50sccmの流量で堆積チャンバに導入する。堆積チャンバの圧力は、基板が~230℃に加熱されている間、2乃至4torrに調整される。約10nmのアルミニウムを堆積させた後、TMAAの流れを停止し、150sccmの流量にて水素中で3体積%のジボラン混合物B2H6(3%)/H2(97%)と、300sccmの流量にて水素中で2体積%のモノシラン混合物SiH4(2%)/H2(98%)とを、堆積チャンバ内に導入する。基板温度を~230℃に維持し、~1乃至3nmのピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5の薄層が堆積されるまで、反応を数分間進行させる。そして、水素化物ガスが流れている間に、20sccmの流量で、希釈されていない亜酸化窒素N2Oを堆積チャンバに急速に導入する。
基板温度を~230℃に維持し、~1乃至3nmのピコ結晶オキシシラボランンp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+の薄層が堆積されるまで、反応を数分間進行させる。そして、水素化物と亜酸化窒素の流れを停止し、TMAAの水素キャリアガスが50sccmの流量で堆積チャンバに再導入される。約10nmのアルミニウムが堆積するまで反応を進行させる。プロセスのこの時点において、p型アイソタイプ整流器404がその場に形成されている。堆積圧力及び温度を調整することで、アルミニウム堆積中における炭素の共堆積を最小限に抑え、薄いアノード領域401及びカソード領域402の成長速度を最適化できることを理解のこと。
ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401及びピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402の堆積時間は、上記の領域の厚さを最小にするように調整できる。上述したようなp型アイソタイプ整流器404のその場堆積は、その場MOCVD堆積によって図21に示されるフォノボルタイックセル400を形成するように、その場で繰り返されて、その結果、フォノボルタイックパイル(phonovoltaic pile)と言われるp型アイソタイプ整流器404が多数得られる。その場フォノボルタイックセル400は、20‐50個のp型アイソタイプ整流器404を有するフォノボルタイックパイルを備える。MOCVD堆積チャンバから取り外されると、従来のリソグラフィを使用してp型アイソタイプ整流器404のフォノボルタイックパイルをプラズマエッチングすることによって、個々のフォノボルタイックセル400が形成される。
上述したように、p型アイソタイプ整流器404のピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401及び結合ピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402との冶金学的接合部を横切る開回路電場Eは、約2デバイ長さLDだけその各領域へと延びる。p型アイソタイプ整流器404の開回路電場Eの大きさは、理想的には式(70)で与えられる。ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401及びピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402の厚さをデバイ長未満(すなわち、~4nm未満)に形成することで、開回路力線の圧縮によって行われる仕事は、各p型アイソタイプ整流器404の開回路電圧として表れる。各p型アイソタイプ整流器404の開回路電圧は、~26mVで最適化することができる。本発明の好ましい実施形態は、開回路電圧を維持する。
本発明に基づいて作製されたフォノボルタイックセル400の非常に新規な動作モードの論理的説明は、ギブズ自由エネルギー及びギブズ自由エントロピーに関して与えられると考えられる。これら2つのエンティティは、「“A Method of Geometrical Representation of the Thermodynamic Properties of Substances by Means of Surfaces,”Transactions of the Connecticut Academy,II.pp.382-404,December 1873」のギブズ(1873)に厳密に従う方法で定義される。本明細書では、ギブズ自由エネルギーは、物体または多体系を、その体積を増加させることなく、またはそのエントロピーを減少させることなく縮小させることができるエネルギーである。Gibbs(1873)によれば、Gibbs自由エネルギーは、図92の「[E]の軸に平行に測定された散逸エネルギーの面からの初期状態を表す点Aの距離によって幾何学的に表される」。
本明細書では、ギブズ自由エントロピーは、物体または多体系を、そのエネルギーを変化させること、またはその体積を増大させることなく増大させることができるエントロピーである。ギブズ(1873)の初期の説示によれば、ギブズ自由エントロピーは、図93の「[S]の軸に平行に測定された散逸エネルギーの面からの初期状態を表す点の距離によって幾何学的に表される」。ギブズ自由エネルギーは、非平衡状態の平衡化において従来技術において広く使用されている。本発明の好ましい実施形態は、新規かつ有用な方法でギブズ自由エントロピーを利用する。ギブズ自由エネルギー及びギブズ自由エントロピーは、図21のフォノボルタイックセル400の動作を表す図23の量子熱力学サイクルに関与している。最初の焦点は、図23の等温相転移B→Cの間のギブズ自由エントロピーである。
ピコ結晶オキシシラボランを含む人工核104の体積は、フォノボルタイックセル400の動作において不変のままである。ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401のエネルギー及び温度は、等温相転移B→Cの間、両方とも不変である。相転移エントロピーStransの減少は、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401における人工核104のギブズ自由エントロピーによるものである。等温相転移B→Cの間、(正二十面体内(intraicosahedral)エンタングルメントエントロピーSentの形態の)ギブズ自由エントロピーは、無補償の増加を受けて、人工核104の量子局在化が起こり、それが、ギブズ自由エントロピーの研究においてギブズ(1873)によって予言されたように、相転移エントロピーStransの減少を伴う。
エンタングルメントエントロピーSentに関連して、人工核104がギブズ自由エントロピーの自発的増加を被るという新規な能力は、本発明の好ましい態様の新規かつ有用な性質でああって、それは先行技術における他の既知の二十面体高ホウ素固体によっては示されない。フォノボルタイックセル400のギブズ自由エントロピーを利用する能力は、正二十面体対称性を保持している人工核104の結果であって、従来技術における他の全ての二十面体高ホウ素固体におけるヤーン-テラー歪みによる多原子電子軌道縮退のリフティングの代わりにスピン軌道結合による多原子電子軌道縮退のリフティングに起因している。これは、1861年にマクスウェルによって最初に考案された非常に斬新で有用なローレンツ力が、その後すぐに従来技術で恒常的に失われたためである。
実際に電荷を移動させることなく空間全体に電気的作用を移動させる能力は、ジェームス・クラーク・マクスウェルによって最初の電磁気学の発展において考案された。「The Scientific Papers of James Clerk Maxwell,Vol.I,Dover,2003,p.526」の「A Dynamic Theory of the Electromagnetic Field」と題された1865年の独創的な論文の中で、以下に近代的な形で要約されるように、マクスウェルは、電磁場の彼の一般的方程式を明示的に導入した。
式(71a‐f)は、マクスウェルが、18つのデカルト成分を含む18個の式で特定した6つのベクトル式を含む。式(71g)のスカラー方程式はガウスの法則の表現であり、式(71h)のスカラー方程式は連続方程式である。1865年、マクスウェルは20個の変数を使って20個の方程式で電磁場の一般方程式を表現した。マクスウェルによって導入された非常に重要な概念があり、それは、従来技術において長年にわたって失われている。この失われた概念が現代の集積回路に与える大きな影響のため、マクスウェルの失われた概念についての説得力のある議論がもたらされる。
マクスウェルは常に、ベクトルポテンシャルAとスカラーポテンシャルφを用いて彼の電磁場の方程式を表現した。現代では、マクスウェルの電磁場の一般式をマクスウェルのポテンシャルAとφを含まない場の方程式で表すのが一般的である。現代の集積回路に影響を与えるマクスウェルの電磁気学における重要な失われた概念をよりよく理解するために、マクスウェルの方程式の現代形による場の方程式として式(71a-h)を指定することは有意義である。この目的に従って、次の一連の電磁場方程式を検討する。
ニュートンのドット表記法は式で使用されており、オーバードットは、任意の変数の全時間微分を表すと理解される。時間変動は明示的または暗黙的に発生する可能性があるため、これは重要である。ジャクソン(Jackson)によって論じられているように(Classical Electrodynamics,Second Edition,John Wiley & Sons,1975,p.212)、全時間微分は、速度vを含めることによって対流微分の助けを借りて拡張できる。式(72b-c)の対流微分から次の関係が得られ、式(73b)の発散は式(73d)によって消える。
一般に、瞬間速度vは、1861年乃至1865年にマクスウェルによって認識された異なる2つの速度に分解できる。一般に、微小な電磁擾乱は、拡大不可能な電磁擾乱の空間を通る運動による速度r(ここで、rはドット付き)と、電磁擾乱の周期的振動による位相速度s(ここで、sはドット付き)とによって特定することができる。マクスウェルによるファラデーの誘導法則の一般化は、従来のローレンツ力ではないが、ローレンツ力の磁気成分v×Bをもたらした。確認できるように、マクスウェルの導出を調べると、式(73a-d)のように、瞬間速度vが位相速度s(ここで、sはドット付き)であることが明らかである。
∇・Dr(ここで、rはドット付き)を含む項は、空間を通る拡大不可能な電磁擾乱(s・=0)(ここで、sはドット付き)の変位に関連する伝導電流密度Jであって、
式(74a‐d)はより身近な形式で特定できる。外積の非可換乗数のために、s×B(ここで、sはドット付き)とB×s(ここで、sはドット付き)の極性が異なることに注意する必要がある。似たようなことは、D×s(ここで、sはドット付き)とs×D(ここで、sはドット付き)にも存在する。
式(75a‐d)における2つの項、すなわち、スペクトル誘導∇×s×B(ここで、sはドット付き)及びスペクトル変位電流密度∇×s×D(ここで、sはドット付き)は、従来技術において知られていない。これら2つの用語の両方とも、1861年にマクスウェルによって別の論文「“On Physical Lines of Force,”in The Scientific Papers of James Clerk Maxwell,Vol.I,Dover,2003,p.526」で物理学に導入されたローレンツ力の形態に関係している。本稿では、マクスウェルは、命題XIの目的を「動いている物体の起電力を見つけること」と述べた。命題XIのマクスウェルの式(69)は、現代では以下のように記載される。
括弧内の用語は、拡大可能な電磁擾乱のx座標の微小な変動を含む。そのような座標の変動を無視すると、式(76)はファラデーの誘導法則のx成分に帰着する。命題XIの導出を数学的に実行する際に、マクスウェルは1861年に次の関係式を(現代の公式で)得た。
命題XIの式(77)におけるマクスウェルの電場Eは、次のように表される。
この場の関係は、ヘンドリック・ローレンツがわずか7歳だった1861年にマクスウェルによって最初に導き出された新しいタイプのローレンツ力を支持する。式(77)におけるスペクトル誘導∇×s×B(ここで、sはドット付き)(マクスウェルの項ではない)の深い物理的意義を理解するため、導出が、米国仮特許出願第62/591,848号の段落[0682]‐[0703]に提供されており、参照により本明細書の一部となる。
人工核104は、12個の天然ホウ素原子の正二十面体への化学融合により形成されており、ほぼ対称的な核配置であって、36個のホウ素価電子のすべてが正二十面体内結合及び反結合準軌道を占める。先に開示したように、融合は必然的に質量のエネルギーへの変換を含む。図5の人工核104では、少量の質量は、ディラック準粒子の「ジグザグ運動」(ツィッターベベーグング)に変換される。米国仮特許出願第62/591,848号に導出され、参照により本明細書に組み込まれるように、ディラック準粒子の「ジグザグ運動」(ツィッターベベーグング)は、以下をもたらす。
シュレディンガーは、1930年にディラック準粒子にツィッターベベーグング(ジグザグ運動)を最初に発見し、命名した。しかしながら、シュレディンガーは、式(79a)でコンプトンツィッターベベーグング周波数2mc
2/h(ここで、hはバー付き)だけを発見した。従来技術では知られていないが、式(79b)に定義されているツィッターベベーグングg周波数2cσ・p/h(ここで、pは⌒付き、hはバー付き)は、本発明の好ましい実施形態において重要な役割を果たす。本明細書では、フォノンは、周期的な弾性配置に起因した原子または分子の一定周波数の集団振動である。式(26a‐b)の右側にある2つの振動束縛エネルギー項は、質量の減少によってツィッターベベーグングを誘導する。
式(26a-b)の右辺の括弧に囲まれた最初の束縛エネルギーのツィッターベベーグングは、電子の質量を~2α2/8πだけ減少させ、これは、正二十面体内結合及び結合軌道をサポートする~1.08eVのエネルギー差を生じる。対応するツィッターベベーグング周波数は、電気的作用の伝導に寄与するのには高すぎるが、それは、正二十面体内エンタングルメントエントロピーSentの補償されていない増加により、正二十面体内結合準軌道から正二十面体内反結合準軌道への価電子のスペクトル誘導をサポートする。エンタングルメントエントロピーSentは、フォノボルタイックセル400におけるスペクトル誘導による移動電子‐正孔対の生成をサポートするギブズ自由エントロピーを構成する。
これは、フォノボルタイックセル400のp型アンアイソタイプ整流器404をシリコン光起電力セルのp‐n型アンアイソタイプ整流器414と比較することによって、よりよく理解することができる。この目的から、暗所でのp‐n型アンアイソタイプ整流器414を図94Aに示し、p型アイソタイプ整流器404を図98Bに示す。これらの図及び他の関連する図においては、新規の概念の提示を容易にするために、様々な寸法がかなり誇張されている。図94Aのp‐n型アンアイソタイプ整流器414は、アクセプタドープ単結晶シリコンp-Siアノード領域411と、結合ドナードープ単結晶シリコンn-Siカソード領域412とによって構成される。これらの領域は、2つのアルミニウム電極413によって電気的に接触している。熱平衡は、結合領域411と結合領域412との間での移動正孔及び移動電子の拡散によって、p‐n型アンアイソタイプ整流器414内に確立されて、開回路電場が不動ドナーイオンとアクセプタイオンの間に存在する。
p‐n型アンアイソタイプ整流器414内の不動ドナーとアクセプタイオンの間の開回路電場線は、不動電荷密度が移動電荷密度をはるかに超える空乏空間電荷領域に存在する。結果として、p‐n型アンアイソタイプ整流器414における結晶回復力(crystalline restoration force)は、移動電荷再結合である。対照的に、図94Bのp型アイソタイプ整流器404内の開回路電場は、移動ジカチオンとジアニオンとの間に広がる。p型アイソタイプ整流器404内の移動性ジカチオン及びジアニオンは、ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401とピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402の冶金学的接合部を開回路条件下で横断する電荷拡散によるものである。
p型アイソタイプ整流器404内の移動ジカチオンとジアニオンの間の開回路電場線は、稼働電荷密度が不動電荷密度をはるかに超える蓄積空間電荷領域内に存在する。その結果として、p型アイソタイプ整流器404内の結晶回復力は、移動電荷生成である。ピコ結晶シラボランp‐(B12H4)3Si5アノード領域401とピコ結晶オキシシラボランp‐(B12
2-H4)2Si4O2
2+カソード領域402の厚さは両方ともデバイ長より小さいことから、図94Bのp型アイソタイプ整流器404では、開回路電流を止めるために、アノード電位はカソード電位より下に浮遊する。伝導に利用可能な移動電子‐正孔対が存在しないことから、暗所ではp‐n型アンアイソタイプ整流器414に開回路電圧は発生しない。これは、衝突放射線hνに応答して図95Aの移動電子‐正孔対が放射線を発生することによって改善される。
p-n型アンアイソタイプ整流器414内の不動のアクセプタイオンとドナーイオンの間の開回路電場は、空乏空間電荷領域にランダムに拡散する移動電子‐正孔対を分離する。この電荷分離により、移動正孔はアノード電極413に向かって拡散し、移動電子はカソード電極413に向かって拡散する。開回路条件下では電流が流れないので、図96Aによれば、アノード電位はカソード電位を超えて浮遊する。図97Aの光起電力セルのp‐n型アンアイソタイプ整流器414及び図97Bのフォノボルタイックセルのp型アイソタイプ整流器404のアノード電極とカソード電極の間に電気的負荷が印加されると、電流が流れる。p‐n型アンアイソタイプ整流器414の開回路電圧が~0.6Vであるのに対して、p型アイソタイプ整流器404の開回路電圧は~26mVである。
フォノボルタイックセル404のp型アイソタイプ整流器404の出力電圧は、光起電力セルのp‐n型アンアイソタイプ整流器414の出力電圧よりも数桁低い。この差異は、固体デバイスの電力密度が通常、電流密度の変動に起因して何桁も変動するので、非常に当てにならない。この点に関して、p‐n型アンアイソタイプ整流器414とp型アイソタイプ整流器404の間の反対極性差が重要である。アノードがカソードの上に浮くので、図97Aの光起電力セルのp‐n型アンアイソタイプ整流器414によって逆バイアス電流が外部電気負荷に供給される。反対に、陽極が陰極より下に浮くので、図97Bのフォノボルタイックセル400のp型アイソタイプ整流器404によって順方向バイアス電流が外部電気負荷に供給される。この違いは非常に重要である。
整流器の順方向バイアス電流密度は通常、逆方向バイアス電流密度より数桁大きい。光起電力セルのp‐n型アンアイソタイプ整流器414によって電気負荷に供給される逆バイアス電流密度におけるこの制限は、太陽放射照度における制限と完全に一致する。光起電力セルの最大電力密度は、太陽放射照度によって34mW/cm2未満に制限されている。光起電力セルの効率は、p‐n型アンアイソタイプ整流器414の結晶回復力が移動電荷再結合であるという点で基本的に制限されており、これは、電荷生成の好ましい結晶回復力に反する。これはまた、空間にわたって拡張伝導帯及び価電子帯をサポートする単結晶半導体の接触技術における制限によるものである。
単結晶シリコン格子が、力学的仕事がない状態で固有状態の広範な変化をサポートする能力を利用する実用的な手段は、その構造によって基本的に制限されている。第一に、単結晶シリコンは。単結晶シリコン基板上にのみエピタキシャル堆積することができる。第二に、単結晶シリコン格子の終端は、それと電気的に接触するために、タムーショックレイ状態をもたらし、それは、伝導帯底部と価電子帯頂部との間の禁制エネルギー領域内で電気化学ポテンシャルを固定する。電気化学ポテンシャルのこのピン止めは、電極の金属仕事関数とは無関係に整流接触をもたらす。例えば、バーディーンの「“Surface States at a Metal Semi-Conductor Contact,”Phys.Rev.10,No.11,1947,p.471」を参照のこと。タムーショックレイ界面準位密度を低減する必要がある。
周知の処理技術によって、結晶質シリコン領域を非晶質二酸化ケイ素膜で終端させることによって、タムーショックレイ界面状態密度の実質的な減少を実現でき、表面電気化学ポテンシャルは、デバイス動作において、禁制エネルギー領域全体にわたって変調され得る。電場効果トランジスタは、二酸化ケイ素薄膜を介在させた容量結合電極によって単結晶シリコン表面の導電率を変調する能力を利用する。しかしながら、二酸化ケイ素の非常に高い抵抗率~1016Ω・cmのために、二酸化ケイ素は半導体接触領域から除去される必要がある。半導体接触領域におけるタムーショックレイ状態を大幅に減少させるために、半導体表面は退化的にドーピングされて、アイソタイプホモ接合を形成し、半導体表面の電気化学ポテンシャルは伝導帯または価電子帯に固定される。
金属またはシリサイドを劣化半導体表面に合金化することで、移動電荷がポテンシャル障壁を通ってアイソタイプホモ接合へトンネルすることができる。低レベル注入下では、アイソタイプホモ接合は、高抵抗半導体領域に対するオーム接触として機能する。しかしながら、この種のオーム接触は、電気化学ポテンシャルが外部電極間で変化する電気化学整流器における単結晶半導体の使用を妨げる。この欠点は、自己組織化ピコ結晶オキシシラボランを形成するようにピコ結晶人工ボラン原子101で天然シリコン原子を置き換えることによって。改善できる。上述したように、自己組織化ピコ結晶オキシシラボランは、単結晶シリコンと適合する結合配向秩序を示す
p型アイソタイプ整流器404内の移動電荷伝導は、~0.01cm2/ V・secの移動度を有するピコ結晶人工ボラン原子101の人工核104間ホッピングによる。フォノボルタイックセル400は、順方向バイアス条件下で電気的負荷に電流を供給するが、その電流密度は、ホッピング移動度に起因して低下する。しかしながら、このトレードオフは、光起電力セルよりもはるかに好ましい電力密度をもたらす。この利点をより完全に理解するために、フォノボルタイックセル400の予測製造コスト分析を図98に提供する。立証されたように、フォノボルタイックセル400内のp型アイソタイプ整流器404のフォノボルタイックパイルは、コンピュータ制御下で、MOCVDリアクタ内にてその場堆積される。実効処理コストは、フォノボルタイックセル400のフォノボルタイックパイルの処理コストとされる。
ホッピング移動度による比抵抗は100μΩ‐cm2と仮定されている。この比抵抗はさらに一層の技術的改良によって減少され易いと考えられる。6.76W/cm2の電力密度は、光起電力セルのp‐n型アンアイソタイプ整流器の電力密度より200倍以上大きい。光起電力セルとは異なり、フォノボルタイックセル400のp型アイソタイプ整流器404は、コンピュータ制御下で、フォノボルタイックパイル内にてその場堆積できる。比較のために、図98のフォノボルタイックパイルは36個のp型アイソタイプ整流器404を含むと仮定する。図99Aの熱電子変換器の電力密度と一致する243W/cm2の電力密度は、1つの太陽電池のそれよりも4桁大きい。2.25ドル/kWの電力コストは、再生可能エネルギーの既知の形態のコストをはるかに下回り、燃焼と競合する。
米国特許第307,031号は、電子機器にかつて付与された最初の特許である。この特許の発明者であるトーマス A.エジソンは、新しい現象を明らかにした:「私は、導電性物質が白熱電球の球体の中の空いた空間のどこかに挿入されて、その導電性物質が、電球の外側で白熱電導体の一方の端子、好ましくは正の端子と接続されているならば、ランプの動作中、電流の一部はこのように形成されたシャント回路を通過し、そのシャントにはランプ内の空隙の一部が含まれている」。この現象は、後にエジソン効果として知られるようになった。本明細書では、エジソン効果は、一方の金属電極(カソード電極と呼ばれる)が他方の金属電極(アノード電極と呼ばれる)よりも十分に大きな温度差で加熱される場合における、真空領域内の一対の金属電極間の電荷の流れの現象である。
図99Aに示すように、アノード電極の上方で、カソード電極が十分に大きい温度差によって加熱されると、カソード電極から真空領域に自由電子が熱電子的に放出される。そして、自由電子は自ら進んで低温のアノード電極に向かって拡散する。開回路電流は存在し得ないので、カソード電位は、開回路電流を阻止するようにアノード電位より下に浮遊する。熱電子変換器は太陽放射照度の制限を免れるが、カルノー効率によって制限される。必要とされているのは、太陽放射照度またはカルノー効率のいずれによっても制限されない固体エジソン効果である。
本明細書では、固体エジソン効果は、両方とも周囲温度にある2つの金属電極間の電荷の流れの現象であって、それら電極は、ゼーベック係数が異なる2つの隣接ゾーンを有する固体半導体材料によって介在されており、直接的または間接的に金属電極間に加えられる受動電気的負荷への電荷の流れによって周囲のエントロピーの減少を引き起こす。ゼーベック係数が異なる連続材料領域間に過渡的な電荷の流れが存在し得るが、前記領域間の混合のエントロピーの増加が、少なくとも間接的に、赤外ツィッターベベーグング共鳴によるより高いエネルギーの反結合エネルギー準位への価電子のスペクトル誘導によるものである場合に限り、電荷の流れは連続的に持続される。
マクスウェルは、1861年に独創的論文「On Physical Lines of Force」の中でスペクトル誘導を(その名前ではないが)考え出したが、スペクトル誘導の実際の使用は従来技術では起こらなかった。これはまた、これまで実用的な材料及び装置で生じたツィッターベベーグングを十分に利用することができなかったことによる。フォノボルタイックセル400は、近赤外ツィッターベベーグング共鳴を利用して、新規で有用な方法で空間中にて電荷を移動させる。本発明の他の好ましい実施形態は、式(79b)に加えられたマイクロ波ツィッターベベーグングを利用する。マクスウェルの変位電流を一般化するような方法で、空間を通して電気的作用を変位させるが、電荷は変位させない。マクスウェルの電気的作用は、外部から印加された時間依存性の周期的駆動力によって空間にわたって変位するが、電気的作用はここでは固有のツィッターベベーグングによって変位する。
「On Physical Lines of Force」の第III部で、マクスウェルは次のように述べている。「ここに、2つの独立した物体がある。1つはそれらがそれらを通る電気の通過を許すものであり、もう1つはそれらが電気を通すことが許されることなくそれら介して伝えられる電気的作用を許すものである。…。起電力が導体に作用する限り、それは抵抗と出会うと、電気エネルギーを熱に継続的に変換する電流を生成する。そして、それはプロセスの如何なる反転によっても電気エネルギーとして回復することができない。…。誘導下の誘電体では、各分子内の電気が変位して片側がプラスになり、反対方が電気的にマイナスなるが、電気は完全に分子とつながっており、分子間を通過することないと考えられる。」
マクスウェルの変位電流は、空間上での電荷の動きに関連する実際の電流ではなく、時間依存電場に起因して変位した電気的作用である。導体内の電荷の変位は、時間に依存しない電場に起因する。電場Eは一般に、単位電荷当たりの力であって、電場Eに応じた導体内の電荷の変位は、ジュール加熱を伴う仕事を構成する。マクスウェルは、導電体における電荷のモノポール変位は常に電気エネルギーの熱エネルギーへの変換を伴うことを強調した。電気の移動には起電力が関与するが、これは通常の力学的力とは一致しなかった。当該技術分野において必要とされているものは、起電力によって電気が変位する無電場材料である。
本発明のフォノボルタイックセル400の動作は、人工核104間のホッピングによる空間を通る電荷の移動を含む一方で、他の好ましい実施形態は、全ての原子価電子が分子結合中に残っている状態での空間を通しての電気的作用の新規な変位を含む。そのような条件を達成するためには、天然ホウ素原子102の核電気四重極モーメントの物理的影響を排除する必要がある。この特定の目的に従って、微量金属不純物を、天然ホウ素原子102の核電気四重極モーメントによる不純物濃度と同じ不純物濃度で導入することができ、これは、実施例によって明らかにされている。
<実施例15>
図100を参照すると、ヒ化ガリウム基板531上に二酸化ケイ素膜602を堆積させた。チタン膜533及び金膜534を、二酸化ケイ素膜602上に蒸着させた。基板531を、実施例14のD‐125 MOCVD室内の抵抗加熱サセプタ上に載せた。そして、MOCVD室を、50mmtorr未満に機械的に排気させ、続いて、360sccmの流量において水素中3体積%のジボラン混合物B2H6(3%)/H2(97%)と、1300sccmの流量において水素中2体積%のモノシラン混合物SiH4(2%)/H2(98%)とを、堆積室内に導入した。同時に、150sccmの流量において未希釈亜酸化窒素N2Oを導入した。ガスを混合させ安定化させた後に、堆積室内に入れた。反応ガス流量が安定したら、MOCVD室圧力を20torrに調節し、モリブデンサセプタを1100rpmにおいて回転させた。
基板の温度を、抵抗加熱回転サセプタによって240℃まで上昇させた。堆積温度が240℃において安定した後、化学反応を20分間進行させ、続いて、サセプタの加熱を停止し、試料を80℃未満まで冷却させた後に、堆積室から試料を取り出した。図100に示されているように、オキシシラボラン膜535を金膜534上に堆積させた。膜の厚さは、可変角分光偏光解析法によって、91.8 nmと測定された。図101のXPS深さプロファイルでは、オキシシラボラン膜535中のホウ素、ケイ素及び酸素のそれぞれの相対原子濃度を、85.2%、10.0%及び3.8%と確認した。オキシシラボラン膜535中の金の微量不純物濃度を測定するために、二次イオン質量分析(SIMS)を行った。
図102のSIMS深さプロファイルでは、金原子濃度は~1018cm-3と測定された。RBS及びHFS分析では、ホウ素、水素、ケイ素及び酸素の相対原子濃度は、70%、17%、10%及び3%と測定された。図103に従って、ベルジャー型蒸発器内のシャドーマスクを介してアルミニウムを蒸発させることにより、金属電極536及び537を金膜上に蒸着させた。オキシシラボラン膜535の電流電圧特性を、金属電極536及び537上に配置された2つのマイクロプローブによって得られる掃引信号を用いて、HP‐4145パラメーター分析器により確認した。オキシシラボラン膜535の電流電圧特性のグラフを図104に示す。オキシシラボラン膜535の電流電圧特性は、オーム伝導電流を示すとともに、マイクロプローブ測定装置による2.9Ωの抵抗を有する。
微量不純物としての金の混入は、空間電荷効果を排除することによって、オキシシラボラン膜605の電気特性を変化させる。金などの貨幣金属の微量混入による伝導変化の論理的説明は、マクスウェルの電磁気学の発展によって与えられるかもしれないと考えられる。マクスウェル方程式の再定式化は、米国仮特許出願第62/591,848号の段落[0682]‐[0703]に完全に記載されており、参照により本明細書の一部となる。マクスウェルの定式化された場の方程式は、次のように表される。
マクスウェルによる電気と磁気の統一は、変位電流密度∂D/∂tを含むように式(80c)でアンペアの回路法則の一般化をもたらした。マクスウェルの変位電流は、実際の電荷の変位なしに、空間を通る電磁エネルギーの変位をサポートする。マクスウェルの変位電流によって空間を伝播する放射の電力束密度は、ポインティングベクトルE×Hで表される。マクスウェルの変位電流に起因した電磁放射の場合、空間を通って変位した放射パワーはある種の外部周期的駆動力によってもたらされる必要がある。マクスウェルの再定式化された場の方程式は、式(75a‐d)でさらに一般化されて、従来技術では知られていないスペクトル誘導∇×s×B(ここで、sはドット付き)とスペクトル変位電流密度∇×s×D(ここで、sはドット付き)を含む。
参照により本明細書の一部となる米国仮特許出願第62/591,848号の段落[0757]‐[0780]にさらに記載されているように、積分形のスペクトル誘導は、ディラックの相対論的波動方程式に隠されている。
以下の関係は、米国仮特許出願第62/591,848号の段落[0757]‐[0780]に導出されており、参照により本明細書の一部となる。
上記の関係は、ディラックに従うクライン‐ゴルドンとシュレディンガーの式の融合によるものであって、先行技術においてこれまでに知られていない一対の項を含む。上記の関係は、これまで未知であった2つの項が等しい場合に、クライン-ゴルドンの式に帰着する。
式(83)の右辺の項σ・p(ここで、pは⌒付き)は、式(79b)に記載されているマイクロ波ジッターに関する。上述したように、マイクロ波ツィッターベベーグングの存在は先行技術では知られていない。式(83)の上記の関係は、本明細書中でマイクロ波ツィッターベベーグングアハラノフ-ボーム効果と呼ばれる新規かつ有用な現象を表す。マイクロ波ツィッターベベーグングアハラノフ-ボーム効果によってピコ結晶オキシシラボランに周期的な駆動力が生じ、外部機関の助けを借りずに、空間を通して電磁出力密度E×Hを変位させることができると考えられる。
モノリシック集積回路の物理的寸法は、分子寸法に向かって拡大縮小されていることから、既存のスケーリングパラダイムの拡張エネルギーバンドは、ハイゼンベルグの量子条件に起因した基本的な理由で崩壊する。従来技術における集積回路のスケーリングパラダイムは、共有結合半導体領域の平面スケーリングを含んでおり、電荷モノポールは、電荷モノポールの平均自由行程が典型的にはホスト半導体格子原子の原子間間隔よりも数桁大きい拡張エネルギー帯において変位する。この種の電荷モノポール変位は、集積回路のフロントエンドオブライン(FEOL)製造と同様にバックエンドオブライン(BEOL)製造にも存在する。
有害な抵抗効果を減少させるために、従来技術では、BEOL相互接続をアルミニウムから銅に変換した。しかしながら、銅中の電子の平均自由行程は39nmであって、銅線幅が50nm未満に縮小されると、抵抗率の大幅な増加が起こる。関連する方法では、シリコントランジスタの形状寸法が約28nm未満に縮小されると寄生リーク電流が生じる。これは、空間にわたる広いエネルギー帯域内に移動電荷モノポールを閉じ込めることが基本的に不可能であるからである。ディープナノスケール(deep-nanoscale)集積回路内の拡張エネルギー帯域に移動電荷モノポールを閉じ込める試みに応じて、他のいくつかの有害なスケーリング効果が生じる。必要とされているのは、空間にわたる電荷モノポールの実際の変位を含まない新しい種類の統合された電気変位である。ここでは、マイクロ波ツィッターベベーグングアハラノフ-ボーム効果が使用される。
マイクロ波ツィッターベベーグングアハラノフ-ボームによって空間を介して変位された電磁パワー密度E×Hは、電荷の変位に伴う実際の抵抗を招くことなく、スペクトル変位電流密度∇×s×D(ここで、sはドット付き)をサポートすると考えられる。結果として、本発明の好ましい実施形態は、有効電流密度が特定の最大電流密度を超えない限り、理想的には常温超伝導体として作用すると考えられる。さらに、最大電流密度はグラフェンのそれに匹敵すると考えられる。本発明のピコ結晶オキシシラボランは、グラフェンとは異なり、ピコ結晶オキシシラボランの堆積が低温コンフォーマル気相堆積によるものであるという点で、BEOL相互接続として非常に有用である。酸素を含まない金ドープピコ結晶シラボランが、BEOL相互接続として最も有用であると考えられる。
金をドープしたピコ結晶シラボラン中に~1018cm-3の微少不純物濃度の金原子を組み込むことは、オキシシラボラン膜を堆積させる形成ガス中に金前駆体を含めることによって、達成することができる。適切な金前駆体は、揮発性有機金属ジメチル金(III)錯体であり、このような金前駆体は、ジメチル金(III)アセテート(CH3)2Au(OAc)が好ましい。金前駆体は、MOCVD反応器内の水素キャリアガスによって、オキシシラボラン膜の形成ガスに導入することができる。微量金不純物の混入によって、ピコ結晶オキシシラボランの電気伝導性は、制御されて実質的に増加する。