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JP7251049B2 - 多層構造重合体及び樹脂組成物 - Google Patents
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JP7251049B2 - 多層構造重合体及び樹脂組成物 - Google Patents

多層構造重合体及び樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、熱成形加工時においても、樹脂の変質を抑制することができる多層構造重合体に関する。
多層構造重合体、とりわけアクリル系多層構造重合体は透明性、耐候性に加え、耐衝撃性、柔軟性に優れているため、フィルム原料や耐衝撃改質剤として広く用いられている。このアクリル系多層構造重合体は乳化重合により製造され、乾燥粉体として回収される。その回収方法の一つに、乳化重合により製造された重合体ラテックスから酸及び/又は電解質を凝固剤として用いて凝固、脱水し、次いで回収した含水状重合体を乾燥し、粉体状にして回収する方法が特許文献1に開示されている。
ところが、このような方法により回収されたアクリル系多層構造重合体は脱水時の洗浄が不十分な場合には、凝固剤に含まれる多価金属イオンが残存することがある。多価金属イオンとアクリル系多層構造重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、構成する高分子鎖間でイオン架橋を形成し、流動性が経時的に低下することが知られている。流動性低下により、押出機内で滞留しやすくなり、熱履歴により樹脂が変質する等の問題が生じる場合がある。また、変質した樹脂が成形体中に混入すると、変質樹脂によるフィッシュアイが生成し、成形体の外観が悪くなる場合がある。更に、押出機内で樹脂が滞留すると、品種切替え時には前品種の混入を防止するために長時間置換操作を行なうか、頻繁に装置を分解して洗浄する必要があり、生産性が低下する問題がある。
このような問題を解決するため、高い凝析能力を有する凝析剤を選択し、凝析剤添加量を低減することで、高分子鎖と多価金属イオン間でのイオン架橋形成を抑制し、流動性の低下を防止する方法が特許文献2に開示されている。しかしながら、特許文献2の方法で提案されている手法では、凝固剤として酸を用いている例があり、回収時に廃水のpH調整工程が必要となるため、作業工程が煩雑になる。凝固剤として硫酸アルミニウムを用いている例については、熱履歴による成形品の着色が問題となることがある。
また、樹脂粉体に酸化防止剤等の安定剤を添加することで流動性の低下を防止する方法が特許文献3に開示されている。しかしながら、特許文献3の方法で提案されている手法では、成形時に酸化防止剤が揮発し、成形機を汚染する可能性がある。加えて、フィルムに添加する場合では、高温多湿条件下における酸化防止剤の継時的なブリードアウトが問題となることがある。
さらに、特許文献4にはラクトン環含有重合体の製造に用いる開始剤として、水素引き抜き能が高いt-ブチル型の過酸化物の代わりに水素引き抜き能が低いt-アミル型の過酸化物やアゾ化合物を開始剤として用いることで、ポリマー分子鎖中のラジカル発生量を低減させ、架橋反応を抑制する手法が開示されている。しかしながら、特許文献4に記載されている例は、全て直鎖構造のポリマーであり、多層構造重合体のようなゲル分を多く含んだ系では、これまで検討が行なわれてこなかった。
特開昭57-140161号公報 国際公開第2014/106952号 特開2013-136647号公報 特開2007-70607号公報
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、透明性、耐候性、耐衝撃性、柔軟性といったアクリル多層構造重合体が持ち併せる物性に優れるだけでなく、継時的な流動性低下を抑制することで、成形品の異物が少なくゲル化し難い多層構造重合体を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を行なった結果、多層構造重合体を製造するにあたり、t-ブチル型の過酸化物に代えて、t-アミル型の過酸化物、アゾ化合物等のように、ポリマー分子鎖から水素を引き抜く能力が低い重合開始剤を使用し、かつ重合開始剤の添加タイミングの制御により、重合時の夾雑物生成を抑制し、且つ熱履歴によるポリマーゲルの生成を効果的に抑制することを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] 多層構造を有し、下記条件(I)で測定した場合に下記式(1)を満足する、多層構造重合体;
<条件(I)>
測定温度230℃、負荷49N、添加剤を含まない条件でメルトフローレイト
(MFRとMFR30)を測定する;
MFR :230℃で4分保持後のメルトフローレイト、
MFR30:230℃で30分保持後のメルトフローレイト、
<式(1)>
70≦(MFR30/MFR)×100(%)≦150。
[2] 弾性共重合体と硬質共重合体から構成される、[1]の多層構造重合体。
[3] (メタ)アクリレート単位を50~100質量%含有する、[1]又は[2]の多層構造重合体。
[4] 一次粒子の質量平均粒子径が60~300nmである、[1]~[3]のいずれかの多層構造重合体。
[5] ゲル分率が20~99質量%である、[1]~[4]のいずれかの多層構造重合体。
[6] アセトン可溶分の質量平均分子量が40,000~100,000である、[1]~[5]のいずれかの多層構造重合体。
[7] [1]~[6]のいずれかの多層構造重合体と添加剤から構成される樹脂組成物。
[8] 結合解離エネルギー(BDE)が104kcal/mol以下であるラジカル重合開始剤を用いて、[1]~[6]のいずれかの多層構造重合体を得る、多層構造重合体の製造方法。
[9] 最外層の重合にのみ結合解離エネルギー(BDE)が104kcal/mol以下であるラジカル重合開始剤を用いる、[8]の多層構造重合体の製造方法。
[10] 単量体として(メタ)アクリレートを50~100質量%用いる、[8]又は[9]の多層構造重合体の製造方法。
本発明によれば、透明性、耐候性、耐衝撃性、柔軟性といったアクリル多層構造重合体が持ち併せる物性に優れるだけでなく、継時的な流動性低下を抑制することで、成形品の異物が少なくゲル化し難い多層構造重合体を提供することができる。
[多層構造重合体(A)]
本発明の多層構造重合体(A)は、多層構造を有し、下記条件(I)で測定した場合に下記式(1)を満足するものである。
<条件(I)>
測定温度230℃、負荷49N、添加剤を含まない条件でメルトフローレイト
(MFRとMFR30)を測定する。
MFR :230℃で4分保持後のメルトフローレイト
MFR30:230℃で30分保持後のメルトフローレイト
<式(1)>
70≦(MFR30/MFR)×100(%)≦150
式(1)において、「(MFR30/MFR)×100(%)」は流動性保持率を示す。流動性保持率は70~150%であり、75~135%が好ましく、80~120%がより好ましい。
流動性保持率が70%以上であれば、熱履歴によるポリマーの架橋が抑制され、成形品作製時にフィッシュアイ等の欠陥が発生しにくい。また、流動性保持率が150%以下であれば、ポリマーの分解が抑制され、成形品作製時の機械的物性等の低下が発生しにくい。従って、これらの範囲内であれば品質面で優位性がある。
多層構造重合体(A)は少なくとも2層からなる共重合体であり、材質としては透明性や耐候性の点から、アクリル系多層構造重合体が好ましい。
アクリル系多層構造重合体の場合、多層構造重合体(A)はアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート及びグラフト交叉剤を重合体の構成成分とする多層構造重合体が好ましい。さらに、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び/又は炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート並びにグラフト交叉剤を重合体の構成成分とする弾性共重合体(a1)、炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを重合体の構成成分とする硬質共重合体(a2)がこの順に重合されて得られた、アクリル系多層構造重合体が好ましい。
弾性共重合体(a1)及び硬質共重合体(a2)は組成の異なる単量体混合物を多段階で重合した重合体で構成されていてもよい。また、多層構造重合体は弾性共重合体(a1)及び硬質共重合体(a2)以外の重合体(例えば、中間共重合体(a3)。)を含んでいてもよい。
多層構造重合体(A)は、(メタ)アクリレート単位を50~100質量%含有する。多層構造重合体(A)中の(メタ)アクリレート単位の含有率は70~100質量%が好ましく、85~100質量%がより好ましい。
多層構造重合体(A)中の(メタ)アクリレート単位の含有率が50質量%以上であれば、成形品の透明性及び耐候劣化性が向上し、外観が良好となる。
多層構造重合体(A)の一次粒子の質量平均粒子径は、60~300nmであり、70~280nmが好ましく、80~260nmがより好ましい。粒子径が大きければ成形品の耐衝撃性が向上する。また、粒子径が小さければ成形品の透明性が向上し、外観が良好となる。
多層構造重合体(A)のゲル分率は、20~99質量%であり、30~95質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましい。ゲル分率が高ければ成形品の耐衝撃性が向上する。また、ゲル分率が低ければ成形品の熱劣化異物の生成が抑制され、外観が良好となる。
多層構造重合体(A)のアセトン可溶分の質量平均分子量(Mw)は40,000~100,000であり、45,000~95,000が好ましく、50,000~90,000がより好ましい。Mwが高ければフィルム等の成形品において靱性に優れる。また、Mwが低ければ押出機内で滞留しにくく、成形品の熱劣化異物の生成が抑制される。
[弾性共重合体(a1)]
弾性共重合体(a1)は、-150~0℃のガラス転移温度(Tg)をもつ重合体であることが耐衝撃発現性の面で好ましい。そのような観点から、弾性共重合体(a1)を構成する成分としては、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
弾性共重合体(a1)は、その全体を100質量%として、上記のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を50質量%以上用い、必要に応じて、その他のアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン等を共重合成分として得られる。これらの中でも、耐候性に優れることから、ブタジエンを含まないことが好ましい。
弾性共重合体(a1)としては、特許文献2に記載されているアクリル系ゴム(A)と同様のものが挙げられる。
[硬質共重合体(a2)]
硬質共重合体(a2)は、70~120℃のTgをもつ重合体であることが成形品の表面硬度の面で好ましい。そのような観点から、硬質共重合体(a2)を構成する成分としてはアルキルメタクリレートが好ましく、アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
このようなアルキルメタクリレートの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート及びn-ブチルメタクリレートが挙げられる。
硬質共重合体(a2)は、その全体を100質量%として、上記のアルキルメタクリレートの少なくとも1種を50質量%以上用い、必要に応じて、その他のアルキルメタクリレート、アルキルアクリレート;アクリル酸低級アルコキシ、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体等を共重合成分としてもよい。
ここで、アルキルアクリレートは「弾性共重合体(a1)」で挙げた単量体を用いることができる。
硬質共重合体(a2)は最終段目の重合体であり、多層構造重合体(A)の外層を構成する。
硬質共重合体(a2)中のアルキルメタクリレート単位の含有率は、50~100質量%が好ましく、51~100質量%がより好ましく、60~100質量%が更に好ましい。
硬質共重合体(a2)中のアルキルアクリレート単位の含有率は、0~20質量%が好ましい。
硬質共重合体(a2)中のその他の単官能単量体単位の含有率は、0~49質量%が好ましく、0~40質量%がより好ましい。
多層構造重合体(A)の全体100質量%中に占める、硬質共重合体(a2)の比率は、例えばフィルム用途における重合体の製膜性、フィルムの耐衝撃性等の点から、30~95質量%が好ましい。
[多層構造重合体(A)の重合]
多層構造重合体(A)を構成する単量体は、乳化剤の存在下で乳化重合される。乳化重合は任意の単量体組成で実施できる。
乳化重合に際しては、乳化剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤等、公知の添加剤を用いることができる。
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物と還元性スルホキシ化合物との組み合せからなるレドックス系開始剤又はアゾ化合物が挙げられる。過酸化物又はアゾ化合物については、ポリマー分子鎖から水素を引き抜く能力が低い開始剤の使用が好ましい。
ここで、水素引き抜き能の強弱は結合解離エネルギー(BDE)で表現され、104kcal/mol以下が好ましく、100kcal/mol以下がより好ましい。
水素引き抜き能が低いラジカル重合開始剤は、硬質共重合体(a2)の製造時に用いることが好ましい。
具体的には、弾性共重合体(a1)の製造時には水素引き抜き能が高いラジカル重合開始剤を用い、硬質共重合体(a2)の製造時には水素引き抜き能が低いラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
これにより、弾性共重合体(a1)の重合安定性及び耐衝撃性を確保すると共に、硬質共重合体(a2)の熱架橋を抑制することができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、t-アミルハイドロパーオキサイド、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のt-アミル型の過酸化物系開始剤;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミダジン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート等のアゾ系開始剤が挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ここで、多層構造重合体(A)は乳化重合で製造されるため、これらのラジカル重合開始剤のうち、水溶性が高いラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には水100gに対して1g以上溶解するラジカル重合開始剤が好ましく、5g以上がより好ましい。
前述した水素引き抜き能と併せると、上述した具体例の中ではt-アミルハイドロパーオキサイドや2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレートが特に好適である。
尚、重合開始剤の使用量は、単量体の組合せや反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
ラジカル重合開始剤の添加方法としては、各層の重合中に連続的に添加してもよいし、各層の重合開始前に一括して添加してもよい。さらに、反応をスムーズに進めるため、反応系を窒素で置換してもよい。
また、残存した単量体を除去するために、反応終了後に反応系を昇温してもよい。また、反応系に触媒を添加してもよい。
本発明の多層構造重合体(A)は、乳化重合によって得られた多層構造重合体のラテックスを凝固、回収、粉砕して得られる。
ラテックスを凝固するために用いる酸及び/又は電解質としては、例えば、硫酸、塩酸等の無機酸;塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の無機塩;蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム等の有機塩が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、凝固力と多層構造重合体中に残存した際の成形品への着色の影響を考慮すると多価の有機塩を用いることが好ましく、2価の有機塩を用いることがより好ましく、カルシウム塩を用いることが更に好ましい。
[添加剤(B)]
添加剤(B)は、多層構造重合体(A)以外の化合物であり、例えば、酸化防止剤、光安定剤といったラジカル捕捉剤、滑剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、加工助剤が挙げられる。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、多層構造重合体(A)と添加剤(B)から構成され、多層構造重合体(A)100質量部に対して、添加剤(B)を0~20質量部含有することが好ましい。
樹脂組成物は、多層構造重合体(A)100質量部に対して、添加剤(B)を0~10質量部含有することがより好ましい。添加剤(B)の含有量が20質量部以下であれば、成形時又は保管時に、添加剤(B)(例として、酸化防止剤。)の揮発を抑制できる。尚、樹脂組成物は、添加剤(B)を含まなくてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。実施例において「部」は「質量部」を表す。また、実施例中の略号は以下の通りである。
MMA :メチルメタクリレート
nBA :n-ブチルアクリレート
AMA :アリルメタクリレート
BDMA :1,3-ブチレングリコールジメタクリレート
CHP :クメンハイドロパーオキサイド
tBH :t-ブチルハイドロパーオキサイド
VA057:2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート(商品名:「VA-057」、和光純薬工業(株)製)
TAH85:t-アミルハイドロパーオキサイド(商品名:「ルペロックスTAH85」、アルケマ吉富(株)製)
nOM :n-オクチルメルカプタン
RS610NA:モノn-ドデシルオキシテトラオキシエチレン燐酸ナトリウム(商品名:「フォスファノールRS-610NA」、東邦化学工業(株)製)
実施例における各種物性の測定は、以下の方法に従って実施した。
(1)MFR
得られた多層構造重合体について、(株)テクノ・セブン製のメルトインデクサー(L243)を用いて、JIS K7210(A法)に従い、加熱時間4分及び30分でのMFR(メルトフローレート)を測定した。
MFRの測定条件は、温度を230℃、荷重を49Nとし、試料切り取り時間の間隔は、試料のMFR値に応じ60秒又は120秒とした。尚、測定時に酸化防止剤等の添加剤は含まれないものとする。
(2)流動性保持率
下記式から流動性保持率を求めた。
流動性保持率=(MFR30/MFR)×100(%)
但し、MFR30は30分保持後のメルトフローレイトであり、MFRは4分保持後のメルトフローレイトである。
(3)質量平均分子量(Mw)
重合体のMwを、以下の方法により求めた。
後述する「ゲル分率」の測定で得た「上澄み液1」のアセトンを揮発させ、これをテトラヒドロフランに溶解させた試料について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(機種名:「HLC-8200」、東ソー(株)製)、カラム(商品名:「TSK-GEL SUPER MULTIPORE HZ-H」、東ソー(株)製、内径4.6mm×長さ15cm×2本)、溶離液(テトラヒドロフラン)を用いて、温度40℃で測定を行なった。
標準ポリスチレンによる検量線から、Mwを求めた。
(4)ガラス転移温度(Tg)
ポリマーハンドブック[Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)]に記載されている値を用いてFOXの式から算出した。
(5)質量平均粒子径
重合体ラテックスの質量平均粒子径は、紫外可視分光光度計(UV-1850、SHIMADZU(株)製)を用いて測定した。
(6)ゲル分率
得られた多層構造重合体(A)0.5gにアセトン50mlを加え、65℃で4時間撹拌した。その後、4℃、14000rpmで30分間遠心分離し、上澄み液1を取り除いた後に再度アセトンを50ml加え、再度同条件で遠心分離した。上澄み液2を除いた後、沈降したゲル部分を8時間真空乾燥して質量を測定し、以下の式によりゲル分を算出した。尚、上澄み液1はアセトンを揮発させ、Mwの測定に供した。
ゲル分=(ゲル部分の質量(g)/0.5)×100(%)
[実施例1]
<多層構造重合体(A-1)の製造>
攪拌機を備えた容器に脱イオン水8.5部を仕込んだ後、MMA0.3部、nBA4.5部、BDMA0.2部、AMA0.05部及びCHP0.025部からなる単量体成分を容器内に投入し、室温下にて攪拌して混合した。次いで、攪拌しながら、RS610NA1.1部を前記容器内に投入し、攪拌を20分間実施して乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水186.5部を投入し、70℃に昇温した。さらに、脱イオン水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA0.0003部を加えて調製した混合物を重合容器内に一度に投入した。次いで、窒素下で攪拌しながら、調製した乳化液を8分間に亘って重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、第一弾性共重合体を得た。
続いて、MMA1.5部、nBA22.5部、BDMA1.0部及びAMA0.25部からなる単量体成分を、CHP0.016部と共に、90分間に亘って前記重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、第一弾性共重合体及び第二弾性共重合体を含む弾性共重合体(a1-1)を得た。
尚、第一弾性共重合体単独のTgは-48℃、第二弾性共重合体単独のTgは-48℃であった。
続いて、MMA6部、nBA4部及びAMA0.075部からなる単量体成分を、CHP0.0125部と共に、45分間に亘って前記重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性共重合体(a1-1)の上に中間共重合体(a3-1)を形成した。尚、中間共重合体(a3-1)単独のTgは20℃であった。
続いて、0.251部のVA057に対して7.5部の水を加えた水溶液を前記重合容器に一括添加した。その後、MMA55.2部、nBA4.8部及びnOM0.22部からなる単量体成分を140分間に亘って前記重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間共重合体(a3-1)の上に硬質共重合体(a2-1)を形成した。
以上の工程により、多層構造重合体(A-1)100部を含む多層構造重合体ラテックス300部を得た。尚、硬質共重合体(a2-1)単独のTgは84℃であった。
凝析剤として、多層構造重合体(A-1)100部に対して3部となるように濃度を調製した酢酸カルシウム水溶液を容器に入れ、撹拌しながら85℃に昇温した。続いて、多層構造重合体ラテックスを10分間に亘って連続的に前記容器に添加した。添加後、90℃に昇温して5分間保持した。次に、容器を室温まで冷却してから重合体を脱イオン水で洗浄した。次に、重合体を遠心脱水(1300G、3分間)で濾別し、白色の重合体を得た。その後、この重合体を75℃で48時間乾燥させて白色粉体状の多層構造重合体(A-1)を得た。
用いたラジカル重合開始剤の詳細を表1に、得られた多層構造重合体(A-1)の各種物性を表2に示す。
Figure 0007251049000001
Figure 0007251049000002
[実施例2、比較例1、2]
<多層構造重合体(A-2~A-4)の製造>
表2に示すラジカル重合開始剤の種類及び量を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多層構造重合体(A-2)~(A-4)を得た。
得られた多層構造重合体(A-2)~(A-4)の各種物性を表2に示す。
実施例より、次のことが明らかとなった。
実施例1、2で得られた多層構造重合体は、水素引き抜き能の低いラジカル重合開始剤を用いたため、流動性保持率に優れ、加熱時間が長くなっても流動性の低下が少なかった。そのため、多層構造重合体を含む樹脂組成物を押出機で押出しても、滞留しにくくなり、熱可塑性樹脂の変質も抑制され、熱劣化物によるフィッシュアイが生じにくくなる。
更に、押出機で滞留しにくい場合、置換樹脂量が少量で済むため、品種切替え時等の置換が容易であり、生産性が向上する。
一方、比較例1、2においては、水素引き抜き能の高いラジカル重合開始剤を用いたため、流動性保持率が実施例に比べ、低い値となった。

Claims (8)

  1. 多層構造を有し、下記条件(I)で測定した場合に下記式(1)を満足し、-150~0℃のガラス転移温度を持つ弾性共重合体(a1)、及び70~120℃のガラス転移温度を持つ硬質共重合体(a2)を有する多層構造重合体であって、
    前記弾性共重合体(a1)が全体を100質量%としてアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種に由来の単位を50質量%以上含有し、前記硬質共重合体(a2)が全体を100質量%としてアルキルメタクリレート(ただし、アリルメタクリレートを除く)の少なくとも1種に由来の単位を50~100質量%含有し、
    前記多層構造重合体が、結合解離エネルギー(BDE)が104kcal/mol以下であるラジカル重合開始剤を用いて重合した重合体であり、ゲル分率が40~90質量%である、多層構造重合体;
    <条件(I)>
    測定温度230℃、負荷49N、添加剤を含まない条件でメルトフローレイト
    (MFR4とMFR30)を測定する;
    MFR4:230℃で4分保持後のメルトフローレイト、
    MFR30:230℃で30分保持後のメルトフローレイト、
    <式(1)>
    70≦(MFR30/MFR4)×100(%)≦150。
  2. 前記弾性共重合体(a1)が、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種とグラフト交叉剤とを重合体の構成成分とし、
    前記硬質共重合体(a2)が炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを重合体の構成成分とする、請求項1に記載の多層構造重合体。
  3. 一次粒子の質量平均粒子径が60~300nmである、請求項1又は2に記載の多層構造重合体。
  4. アセトン可溶分の質量平均分子量が40,000~100,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層構造重合体。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の多層構造重合体と添加剤から構成される樹脂組成
    物。
  6. 結合解離エネルギー(BDE)が104kcal/mol以下であるラジカル重合開始
    剤を用いて、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層構造重合体を得る、多層構造重合
    体の製造方法。
  7. 最外層の重合にのみ結合解離エネルギー(BDE)が104kcal/mol以下であ
    るラジカル重合開始剤を用いる、請求項6に記載の多層構造重合体の製造方法。
  8. 単量体として(メタ)アクリレートを50~100質量%用いる、請求項6又は7に記
    載の多層構造重合体の製造方法。
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