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JP7261420B2 - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents
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JP7261420B2 - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関する。詳細には、機械的特性を従来レベル以上に向上させたタイヤ用ゴム組成物に関する。
タイヤを構成するゴム組成物は、弾性率、硬度などの機械的特性が優れたものが求められている。そして、この機械的特性を向上させるために、カーボンブラックやシリカなどの充填剤を配合する技術が知られている。
さらに、酸化セルロースナノファイバーと呼ばれる酸化による変性および解繊を経て得られる微細繊維をゴム組成物中に分散して含有させることによって、剛性、強度、および耐疲労性に優れたゴム組成物を提供する技術も知られている(特許文献1)。
特開2015-098576号公報
しかしながら、この酸化セルロースナノファイバーは極性基を有するため、疎水性であるゴム原料に配合する際に混合分散しにくく、また、酸化セルロースナノファイバーは水分を除去する乾燥工程において凝集して集束しやすいため、ゴム組成物中に酸化セルロースナノファイバーを配合しても均質に分散しにくいという課題がある。
そこで本発明は、酸化セルロースナノファイバーが均質に分散した、機械的特性を従来レベル以上に向上させたタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、ジエン系ゴムと、充填剤と、酸化セルロースナノファイバーとを含有し、前記ジエン系ゴムが、ニトロン化合物により形成されたカルボキシ基を有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含み、前記酸化セルロースナノファイバーの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して1~50質量部であるタイヤ用ゴム組成物が、酸化セルロースナノファイバーが均質に分散し、高いモジュラスおよび低い破断伸長比を有し、機械的特性が従来レベル以上に向上していることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は次の(1)~(6)である。
(1)ジエン系ゴムと、充填剤と、酸化セルロースナノファイバーとを含有し、前記ジエン系ゴムが、ニトロン化合物により形成されたカルボキシ基を有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含み、前記酸化セルロースナノファイバーの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して1~50質量部、好ましくは1~30質量部である、タイヤ用ゴム組成物。
(2)前記充填剤の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して30~90質量部である、(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3)前記ニトロン化合物が、N-フェニル-α-(4-カルボキシフェニル)ニトロン、N-フェニル-α-(3-カルボキシフェニル)ニトロン、N-フェニル-α-(2-カルボキシフェニル)ニトロン、N-(4-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロン、N-(3-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロンおよびN-(2-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(1)または(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4)前記充填剤が、カーボンブラックおよび/またはシリカである、(1)~(3)のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(5)前記酸化セルロースナノファイバーが、カルボキシ基を0.5~3.0mmol/g含有する酸化セルロースナノファイバーである、(1)~(4)のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(6)パルスNMR測定により、60℃においてsolid echo法で測定される緩和時間T2成分を3種類に分離した際の中間成分の緩和時間T2mが50~100μsである、(1)~(5)のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
本発明によれば 、酸化セルロースナノファイバーが均質に分散した、高いモジュラスおよび低い破断伸長比を有するタイヤ用ゴム組成物、つまり機械的特性を従来レベル以上に向上させたタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。そして、このタイヤ用ゴム組成物により形成されたタイヤは、操縦安定性や耐久性が優れたものとなる。
横軸をM50の対数(log(M50(MPa)))、縦軸をλbの対数(logλb)とし、実施例1~4および比較例1~14のタイヤ用ゴム組成物についての各データをプロットした散布図である。なお、黒四角のプロットが実施例1~4のデータ(シリカ+CNF+ニトロン変性)、黒三角のプロットが比較例1、3、5および6のデータ(シリカ)、白抜三角のプロットが比較例2および4のデータ(シリカ+CNF)、白抜丸のプロットが比較例7、8および10のデータ(CB)、白抜四角のプロットが比較例9および11のデータ(CB+CNF)、黒丸のデータが比較例12~14のデータ(CB架橋剤増)である。
本発明について説明する。
本発明は、ジエン系ゴムと、充填剤と、酸化セルロースナノファイバーとを含有し、このジエン系ゴムが、ニトロン化合物により形成されたカルボキシ基を有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含み、酸化セルロースナノファイバーの含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して1~50質量部である、タイヤ用ゴム組成物である。
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物にゴム原料として使用するジエン系ゴムは、ポリマー主鎖に二重結合を有するゴムであり、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)などが示される。そして、このようなジエン系ゴムのゴムラテックスおよび/または液状ゴムを単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ジエン系ゴムの重量平均分子量は、50,000~3,000,000であることが好ましく、100,000~2,000,000であることがより好ましい。なお、本発明において、「重量平均分子量」とは、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定したものを意味する。
そして、本発明に係るタイヤ用ゴム組成物に使用するジエン系ゴムは、酸化セルロースナノファイバーとの親和性を高めるために、ニトロン化合物により形成されたカルボキシ基を有する変性ジエン系ゴム(以下、ニトロン変性ジエン系ゴムという場合もある)を5質量%以上含む必要があり、ニトロン変性ジエン系ゴムを8~100質量%含むのが好ましく、10~100質量%含むのがより好ましい。例えば、ニトロン変性ジエン系ゴムからなるジエン系ゴムを使用してもよく、また、ニトロン変性ジエン系ゴムと他の変性ジエン系ゴムからなるジエン系ゴムや、ニトロン変性ジエン系ゴムと非変性ジエン系ゴムからなるジエン系ゴムを使用してもよい。なお、本発明において「変性ジエン系ゴム」とは、その分子鎖の末端および/または側鎖にカルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アミド基等の極性基を有するジエン系ゴムを意味し、「非変性ジエン系ゴム」とは、その分子鎖の末端および/または側鎖に極性基を有さないジエン系ゴムを意味する。
このニトロン変性ジエン系ゴムは、上記ジエン系ゴムとニトロン化合物を反応させることにより形成されたカルボキシ基を有する変性ジエン系ゴムであり、ニトロン化合物との反応によって簡単且つ容易に変性ジエン系ゴムを取得できることが特徴である。また、酸化セルロースナノファイバーとの親和性向上およびジエン系ゴムの特性維持という観点から、反応に用いたジエン系ゴムが有する二重結合全量のうち0.02~5.0モル%がこのニトロン化合物によってカルボキシ基に変性されているのが好ましい、つまり、このニトロン変性ジエン系ゴムの変性率が0.02~5.0モル%であることが好ましく、0.1~4.0モル%であることがより好ましい。
そして、本発明においてニトロン変性ジエン系ゴムの製造に使用するニトロン化合物とは、カルボキシ基とニトロン結合(ニトロン基:下記化1の化学式(1)で表される基)とを有する化合物であり、このニトロン結合はジエン系ゴムが有する二重結合と環化付加反応し、五員環を形成する。なお、1分子のニトロン化合物が有するカルボキシ基が1~4個であり、ニトロン結合が1~3個であることが、好適な変性率である変性ジエン系ゴムを取得するという点から好ましく、1分子のニトロン化合物が有するカルボキシ基およびニトロン結合がそれぞれ1個であることがより好ましい。
Figure 0007261420000001
なお、上記化学式(1)中の*は結合点を表す。
本発明では、特に、ニトロン化合物として下記化2の化学式(2)で表されるN-フェニル-α-(4-カルボキシフェニル)ニトロン、化学式(3)で表されるN-フェニル-α-(3-カルボキシフェニル)ニトロン、化学式(4)で表されるN-フェニル-α-(2-カルボキシフェニル)ニトロン、化学式(5)で表されるN-(4-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロン、化学式(6)で表されるN-(3-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロン、および化学式(7)で表されるN-(2-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロンからなる群より選択される少なくとも1種を使用することがより好ましい。
Figure 0007261420000002
ニトロン変性ジエン系ゴムは、原料として用いるジエン系ゴムとニトロン化合物とを、例えば80~200℃の条件下で1~60分間混合することによって反応させて製造することができる。この反応におけるニトロン化合物の使用量は、原料として用いるジエン系ゴム100質量部に対して、0.3~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。また、得られたニトロン変性ジエン系ゴムは、未反応のニトロン化合物を含んでいてもよい。
なお、変性ジエン系ゴムあるいはタイヤ用ゴム組成物中における、ゴム分子鎖の末端および/または側鎖のカルボキシ基含有量は、JIS K6230:2006「ゴム-赤外分光分析法による同定方法」にしたがって、カルボキシ基中のC=Oの吸収(1580cm-1スペクトル)とメチレン基の吸収(1460cm-1のスペククル)から予め作成した検量線に基づき求めることができる。
また、本発明に係るタイヤ用ゴム組成物に配合する充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、クレイ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム、レシチン等を例示することができる。これらの充填剤は、単数または複数を組み合わせて配合することができ、特に、カーボンブラックおよび/またはシリカを配合するのが、タイヤ用ゴム組成物の強度向上および高硬度化や、酸化セルロースナノファイバーをより均質に分散させるという観点からより好ましい。タイヤ用ゴム組成物における充填剤の含有量としては、ジエン系ゴム100質量部に対して、30~90質量部であるのが好ましく、40~70質量部であるのがより好ましい。
なお、本発明において「カーボンブラック」とは、工業的に品質制御して製造された直径3~500nm程度の炭素微粒子を意味し、「シリカ」とは、二酸化ケイ素(SiO2)もしくは二酸化ケイ素によって構成される物質を意味する。
さらに、本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は酸化セルロースナノファイバーを含有するが、ここで、本発明において「酸化セルロースナノファイバー」とは、水酸基の一部がカルボキシ基、アルデヒド基、リン酸基、亜リン酸基およびザンテート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基に酸化されたセルロースからなる平均繊維径が1~1000nmの極細繊維を意味する。
酸化セルロースナノファイバーの原料となるセルロースは、木材由来または非木材(バクテリア、藻類、綿など)由来のいずれでもよく、特段限定されない。酸化セルロースナノファイバーの作製方法としては、例えば、原料となるセルロースに水を加え、ミキサー等により処理して、水中にセルロースを分散させたスラリーを調製し、これに化学的な酸化処理を施し、セルロースを変性して解繊しやすくしてから分散機などによって機械的なせん断力をかけて解繊する方法が例示される。このように解繊することにより、低いエネルギーでより細かく均質に酸化セルロースナノファイバーを解繊できる。化学的な酸化処理としては、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(以下、「TEMPO」という)、4-アセトアミド-TEMPO、4-カルボキシ-TEMPO、4-アミノ-TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPO、4-フォスフォノオキシ-TEMPO、リン酸エステル、過ヨウ素酸などの酸化処理剤による処理を挙げることができる。また、高圧式や超音波式などの装置によってセルロースの機械的解繊を行ってから化学的酸化処理を行ってもよい。
この酸化セルロースナノファイバーは、極性基(変性基)としてカルボキシ基を有するのが、ニトロン変性ジエン系ゴムを含むジエン系ゴムとの親和性がより高まるため好ましい。この酸化セルロースナノファイバーが含有するカルボキシ基の含有量は、好ましくは0.5~3.0mmol/g、より好ましくは0.6~2.5mmol/g、更に好ましくは0.8~2.2mmol/g、更により好ましくは1.0~2.0mmol/gである。なお、このカルボキシ基含有量は、前述した酸化処理剤の添加量および/または酸化処理時間により調節することができる。
また、酸化セルロースナノファイバー中のカルボキシ基含有量は、以下の方法により測定することができる。
まず、乾燥質量を精秤したセルロース試料から0.5~1質量%スラリーを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記式を用いてカルボキシ基含有量を決定する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=V(ml)×0.05/セルロース試料の乾燥質量(g)
なお、酸化セルロースナノファイバーは、前述した酸化処理により化学的に変性するのに加えて、ニトロン変性ジエン系ゴムを含むジエン系ゴムとの親和性をより高めるために、解繊工程のあとにセルラーゼ処理、カルボキシメチル化、エステル化、カチオン性高分子による処理などを施すことができる。
そして、この酸化セルロースナノファイバーの平均繊維径は1~1000nmであり、好ましくは1~200nmである。また酸化セルロースナノファイバーの平均アスペクト比(平均繊維長さ/平均繊維径)は好ましくは10~1000、より好ましくは50~500である。平均繊維径が上記範囲未満であるおよび/または平均アスペクト比が上記範囲を超えると、酸化セルロースナノファイバーの分散性が低下する可能性がある。また平均アスペクト比が上記範囲未満であるおよび/または平均繊維径が上記範囲を超えると酸化セルロースナノファイバーのゴム補強性能が低下する可能性がある。
ここで、本発明において酸化セルロースナノファイバーの「平均繊維径」および「平均繊維長さ」とは、固形分率で0.05~0.1質量%の酸化セルロースナノファイバー水分散体を調製し、TEM観察またはSEM観察により、構成する繊維の大きさに応じて適宜倍率を設定して電子顕微鏡画像を得て、この画像中の少なくとも50本以上において測定した繊維径および繊維長さの平均値を意味する。そして、このようにして得られた平均繊維長さおよび平均繊維径から、平均アスペクト比を算出する。
本発明においては、ジエン系ゴム100質量部に対して、この酸化セルロースナノファイバーを1~50質量部、好ましくは3~45質量部、より好ましくは5~40質量部、更に好ましくは5~30質量部配合する。酸化セルロースナノファイバーの配合量が1質量部未満であると、得られるタイヤ用ゴム組成物の機械的特性を十分に改良することができない可能性がある。また、酸化セルロースナノファイバーの配合量が50質量部を超えると、タイヤ用ゴム組成物の生産コストが高くなる可能性がある。
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、さらに、シランカップリング剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、接着用樹脂、粘着剤、素練り促進剤、老化防止剤、ワックス、加工助剤、アロマオイル、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤、架橋剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を適量配合することができ、これらの添加剤を公知の方法で混練してタイヤ用ゴム組成物とし、加硫、架橋などを行うのに使用することができる。
そして、このようにして得られる本発明のタイヤ用ゴム組成物は、パルスNMR測定により、60℃において、solid echo法で測定される緩和時間T2成分を3種類(3つの成分)に分離した際の中間成分の緩和時間T2mが50~100μs(マイクロ秒)であるのが好ましい。この緩和時間T2(水素原子核のスピン-スピン緩和時間)は、短いほど分子運動性が低いことを意味し、分子運動性が低いとは、ゴム分子と酸化セルロースナノファイバーなどの他の成分との相互作用が強いことを示している。つまり、前記緩和時間であるタイヤ用ゴム組成物は、酸化セルロースナノファイバーなどがより均質に分散し、補強性がより高まっており、機械的特性がより向上しているといえる。
タイヤ用ゴム組成物をパルスNMR測定する方法、その測定条件、および中間成分の緩和時間T2mを求める方法は以下のようにすることができる。
24時間トルエンに浸漬することを3回繰り返して可溶分を除去したタイヤ用ゴム組成物の試験片を直径9mmのNMR管に注入し、パルスNMR装置JNM-MU25(日本電子社製)を用いて、solid echo法にて60℃下のスピン-スピン緩和時間(T2)を求める。T2を測定する際の条件は、ゴム量が0.3g以上あれば積算回数は1000~10000の間が好ましく、積算回数が1000以下の場合は測定精度が低くなる可能性がある。そして、得られた信号の減衰曲線を緩和時間T2の長いほうから、それぞれ1(W1)、1~2(W2)、2(W3)のワイブル係数(W:但し、W1≦W2≦W3)を用いて下記数1に示す数式(1)でカーブフィティングすることで3成分に分離する。なお、異なる3つのワイブル係数(W1<W2<W3)を用いて3成分に分離するのがより好ましい。以上により、それぞれの成分に関して、緩和時間と水素原子の組成を求めることが出来る。酸化セルロースナノファイバー含有ゴム組成物の場合、60℃において、緩和時間が最も短いものは酸化セルロースナノファイバーの結晶由来の水素原子に起因するものと考えられ、中間成分の緩和時間T2mが酸化セルロースナノファイバーと結合しているゴム分子に起因するものであると考えられる。
Figure 0007261420000003
なお、上記数1に示す数式(1)において、M(t)はパルス印加後の経過時間(t)における静磁場に直交する平面内での磁気モーメント磁化を、M0はパルス印加直後の最大磁気モーメント磁化を意味する。
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、常法にしたがえばよく、特段限定はされない。製造方法の一例としては、ニトロン変性ジエン系ゴムを含むジエン系ゴムラテックスおよび/または液状ゴムと、充填剤、酸化セルロースナノファイバーおよび他の成分とを混練、混合することによりタイヤ用ゴム組成物を製造することができる。なお、加硫系成分(硫黄および加硫促進剤)や架橋剤を使用する場合には、これ以外の成分を先に高温で混合し、冷却してから加硫系成分等を混合するのが好ましい。
また、酸化セルロースナノファイバーを含む酸化セルロースナノファイバー水分散液およびニトロン変性ジエン系ゴムを含むジエン系ゴムラテックスおよび/または液状ゴムを所定量混合してスラリー液を調製した後、これを常法により乾燥してゴムマスターバッチを製造し、この得られたゴムマスターバッチと、その他の成分とを混練、混合する方法によって製造してもよい。そして、この得られたタイヤ用ゴム組成物を使用して、加工、成形、加硫などの工程によりタイヤを製造することができる。
なお、タイヤ用ゴム組成物製造に用いる酸化セルロースナノファイバー水分散液の濃度は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%であるとよい。酸化セルロースナノファイバー水分散液の濃度をこのような範囲内にすることにより、水分散液中において解繊された酸化セルロースナノファイバーをより均質に分散させることができる。ジエン系ゴムと酸化セルロースナノファイバーとの混合方法は、特に限定されるものではなく、例えばロール混練装置、プロペラ式撹拌装置、ホモジナイザー、ロータリー撹拌装置、および電磁撹拌装置などを用いることができる。特にロール混練装置を用いたロール混練法により混合するのが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR;日本ゼオン社製,NIPOL SBR 1502、重量平均分子量5.0×105)100質量部とN-フェニル-α-(4-カルボキシフェニル)ニトロン3質量部とをミキサーで170℃の条件下で3分間混合することで、N-フェニル-α-(4-カルボキシフェニル)ニトロンにより形成されたカルボキシ基を有するSBRであるニトロン変性ジエン系ゴム(変性SBR)を得た。この変性SBRは、上記SBRが有する二重結合全量のうち0.8モル%がN-フェニル-α-(4-カルボキシフェニル)ニトロンによってカルボキシ基に変性されていた。つまり、この変性SBRの変性率は0.8モル%であった。
上記のSBR(非変性SBR)または変性SBRを使用して、下記表1に示す原料を配合してタイヤ用ゴム組成物を製造した。
具体的には、シリカ粒子(Solvay社製,Zeosil 1165)、酸化セルロースナノファイバー(CNF:カルボキシ基を1.5mmol/g含有、日本製紙社製,Cellenpia)、カーボンブラック(CB、東海カーボン社製,Seast KH)からなる群から選ばれる1以上、ならびに酸化亜鉛(ZnO、正同化学工業社製)、ステアリン酸(日油社製)を、非変性SBRまたは変性SBR100質量部に対する割合(phr:per hundred rubber)として下記表1に示す量を配合して、混合温度160℃の条件において接線式ミキサーにより3分30秒間混錬して各混合物を得た。次に、この各混合物に加硫系成分(加硫促進剤(大内新興化学工業社製,ノクセラーNS-P)、硫黄(四国化成工業社製,ミュークロン OT-20))および架橋剤である過酸化物(日油社製,パークミルD)を下記表1に示す量配合して、混合温度100℃の条件においてオープンロールにより混錬し、これを所定の金型中において160℃15分間プレス加硫して、加硫ゴム試験片に調製した実施例1~4および比較例1~14のタイヤ用ゴム組成物を得た。
Figure 0007261420000004
得られた実施例1~4および比較例1~14の加硫ゴム試験片からJIS3号ダンベル状の試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251:2010に準拠して行い、50%伸長時における引張応力(M50:MPa)を室温(20℃)にて測定した。なお、M50の対数が大きいほど硬いタイヤ用ゴム組物であることを意味する。
また、この各ダンベル状の試験片について、JIS K6251:2010に準拠し、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件での切断時伸び(=切断時の伸び率:Eb)を測定し、破断伸長比(λb)を算出した。なお、破断伸長比(λb)とは、JIS K6251に規定される切断時伸び(%)を100で除してから1を加えた値を意味し、λbの対数が大きいほど伸びやすいタイヤ用ゴム組成物であることを意味する。
さらに、実施例1~4および比較例1~14の加硫ゴム試験片について、パルスNMR測定により、60℃においてsolid echo法で測定される緩和時間T2成分を3種類に分離した際の中間成分の緩和時間T2mを求めた。具体的には、24時間トルエンに浸漬することを3回繰り返して可溶分を除去した各試験片を直径9mmのNMR管に注入し、パルスNMR装置JNM-MU25(日本電子社製)を用いて、solid echo法にて60℃下のスピン-スピン緩和時間(T2)を求めた。T2を測定する際の条件は、積算回数を5000回とし、得られた信号の減衰曲線を緩和時間T2の長いほうから、それぞれワイブル係数としてW1は1、W2は下記表2に示す値、W3は2を用いて数1に示す数式(1)でカーブフィティングすることで3成分に分離し、中間成分の緩和時間T2mを求めた。
これらの結果について、下記表2に示すとともに、横軸をM50の対数、縦軸をλbの対数とするグラフにプロットした(図1)。この結果、比較例1~6と実施例1~4との結果の対比からわかるように、変性SBRを使用し、充填剤(シリカ)および酸化セルロースナノファイバーを所定量含有させたタイヤ用ゴム組成物とすることで、破断伸長比(伸び)を維持しつつ高いモジュラスを有する(強靱な)タイヤ用ゴム組成物となること、つまり、酸化セルロースナノファイバーなどが均質に分散し、機械的特性が従来レベル以上に向上したタイヤ用ゴム組成物が得られることが示された。また、実施例1~4のタイヤ用ゴム組成物はいずれも、パルスNMR測定により、60℃においてsolid echo法で測定される緩和時間T2成分を3種類に分離した際の中間成分の緩和時間T2mが100μs未満であり、酸化セルロースナノファイバーが均質に分散した組成物であると認められた。
一方で、比較例7、8、10と比較例9、11~14との結果の対比から、非変性SBRを使用し、充填剤(カーボンブラック)を配合して製造したタイヤ用ゴム組成物に対して、さらに酸化セルロースナノファイバーの添加や架橋剤の増加を行ったタイヤ用ゴム組成物としても、硬さは増すものの、伸びの特性が低下してしまうことが示された。
Figure 0007261420000005

Claims (5)

  1. ジエン系ゴムと、充填剤と、酸化セルロースナノファイバーとを含有し、
    前記ジエン系ゴムが、カルボキシ基を有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含み、
    前記変性ジエン系ゴムの前記カルボキシ基が、カルボキシ基とニトロン結合とを有するニトロン化合物によって変性されて形成されたものであり、さらに、前記変性ジエン系ゴムの前記ニトロン化合物による変性率が0.1~4.0モル%であり、
    前記酸化セルロースナノファイバーが、カルボキシ基を0.5~3.0mmol/g含有する酸化セルロースナノファイバーであり、
    前記酸化セルロースナノファイバーの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して1~50質量部である、タイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記充填剤の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して30~90質量部である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記ニトロン化合物が、
    N-フェニル-α-(4-カルボキシフェニル)ニトロン、
    N-フェニル-α-(3-カルボキシフェニル)ニトロン、
    N-フェニル-α-(2-カルボキシフェニル)ニトロン、
    N-(4-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロン、
    N-(3-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロンおよび
    N-(2-カルボキシフェニル)-α-フェニルニトロンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記充填剤が、カーボンブラックおよび/またはシリカである、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. パルスNMR測定により、60℃においてsolid echo法で測定される緩和時間T2成分を3種類に分離した際の中間成分の緩和時間T2mが50~100μsである、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
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