JP7300642B2 - 特発性肺線維症の予後予測方法 - Google Patents
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Description
<1> 下記(a)~(c)の工程を含む、特発性肺線維症の予後を判定する方法
(a)被検体から分離された生体試料について、S100A4、CIRP及び14-3-3γから選択される少なくとも1のタンパク質の量を検出する工程、
(b)工程(a)で検出したタンパク質量を各タンパク質の基準量と比較する工程、
(c)工程(b)における比較の結果、前記被検体におけるタンパク質量が基準発現量よりも高い場合、前記被検体の特発性肺線維症の予後は不良であると判定する工程。
<2> 前記生体試料が血清である、<1>に記載の方法。
<3> <1>又は<2>に記載の方法により、特発性肺線維症の予後を判定するための薬剤であって、S100A4に結合する抗体、CIRPに結合する抗体及び14-3-3γに結合する抗体から選択される少なくとも1の抗体を含む薬剤。
<4> <1>又は<2>に記載の方法により特発性肺線維症の予後は不良であると判定された被検体に対して、特発性肺線維症の治療薬を投与する、及び/又は、肺移植を施す、特発性肺線維症の治療方法。
<5> S100A4に結合する抗体、CIRPに結合する抗体及び14-3-3γに結合する抗体から選択される少なくとも1の抗体と、前記抗体に対するアイソタイプコントロール抗体、陽性対照及び陰性対照から選択される少なくとも1の物品とを含む、特発性肺線維症の予後を判定するためのキット。
後述の実施例に示すとおり、特発性肺線維症患者の臨床検体(血清と肺組織)における各タンパク質量と、疾患進行(呼吸機能の低下)及び死亡率(生命予後)との関連性を検討した結果、S100A4、CIRP、14-3-3γの3つのタンパク質が、肺組織において、それぞれ健常コントロール(HC)と比較してIPF患者で強く発現していることを、本発明者らは明らかにした。さらに、これらタンパク質はIPF患者の肺組織における線維芽細胞が産生源となり、その発現レベルが肺の線維化活動性を反映し、疾患の進行に関与している可能性も本発明者らは見出した。
(a)特発性肺線維症を罹患している被検体から分離された生体試料について、S100A4、CIRP及び14-3-3γから選択される少なくとも1のタンパク質の量を検出する工程、
(b)工程(a)で検出したタンパク質量を各タンパク質の基準量と比較する工程、
(c)工程(b)における比較の結果、前記被検体におけるタンパク質量が基準発現量よりも高い場合、前記被検体の特発性肺線維症の予後は不良であると判定する工程。
上述の通り、本発明の判定方法においては、S100A4、CIRP及び14-3-3γから選択される少なくとも1のタンパク質の量を、各標的タンパク質に結合する抗体を用いて検出することにより、特発性肺線維症の予後を判定することができる。
特発性肺線維症患者の臨床経過は、月単位で進行する患者や階段状に悪化する患者だけでなく、年単位で悪化する患者、無治療でも長期に安定している患者、長期の安定した経過から急性に増悪する患者など多彩である。抗線維化薬や肺移植はいずれも治療関連合併症のリスクや生活の質の低下、高額な医療コストが問題となる場合もある。そのため、本発明の特発性肺線維症の予後を判定し、治療のタイミングを計れる本発明の方法は、特発性肺線維症の治療を行なう上で極めて有効である。既存のマーカーや臨床所見で特定できなかった予後不良患者に対し、より早期又は軽症の段階で抗線維化薬等による治療を開始することができ、生存期間が延長又は重症化を回避できる等の効果が期待できる。
(対象・診断)
未治療のIPF患者95名と統計的に年齢・性別分布の差がない健常人(HC)50名を対象とした。IPFは国際ガイドラインに基づいて診断された(American journal of respiratory and critical care medicine.2002;165:277-304.、Travis WDら.、American journal of respiratory and critical care medicine.2013;188:733-48.、Raghu G.ら、American journal of respiratory and critical care medicine.2011;183:788-824.、Raghu Gら、American journal of respiratory and critical care medicine.2018;198:e44-e68. 参照)。IPFの急性増悪(AE-IPF)は、2016年の国際ワーキンググループの基準に基づいて診断された(Collard HR.ら、American journal of respiratory and critical care medicine.2016;194:265-75.参照)。
本検討では、上記対象から血清を採取し、バイオマーカー(S100A4、CIRP、14-3-3γ)の血清レベルを測定した。それらのバイオマーカー値と、血清採取日を起算日とした年齢、性別、起算日から1週間以内に測定された臨床的パラメーターや、起算日からの疾患進行(呼吸機能の悪化)や死亡との関連性を後方視的に解析した。起算日から1年以内の疾患進行(起算日から1年以内に%FVCの10%以上が低下する、呼吸機能の悪化)あるいは死亡を「予後不良」と定義した。生存期間は、起算日から死亡イベントあるいは最終生存確認までの日として算出された。
血清Krebs von den Lungen-6(KL-6)値は、患者から採取された静脈血血清(血清)を用いて、ECLIA法(ナノピア(登録商標)KL-6,積水メディカル製)によって測定された。
IPF患者から外科的肺生検によって採取されたホルマリン固定標本を用い、免疫染色を行った。また、IPFではない肺癌患者から切除された健常肺の部分のホルマリン固定標本を比較対照として用いた。これらの標本から5μm厚の切片を作成し、脱パラフィン処理を行った後、pH6.0のクエン酸バッファーを用いて30分間加熱した。そして、これらの切片を3%過酸化水素液と15分間反応させて内因性ペルオキシダーゼの阻害処理を行った。次に、切片を後述する一次抗体(抗S100A4抗体、抗CIRP抗体、抗14-3-3γ抗体)と1時間室温で反応させたのち、免疫組織化学染色試薬(ヒストファイン シンプルステインMAX-PO(M),ニチレイ社製)と30分間反応させた。切片上の免疫反応は、3,3-ジアミノベンジジン色素によって可視化され、さらにヘマトキシリンで核染色された。
抗S100A4抗体:ウサギ由来抗ヒトS100A4抗体(ab124805),Abcam社製,250倍希釈
抗CIRP抗体:ウサギ由来抗ヒトCIRP抗体(ab191885),Abcam社製,1000倍希釈
抗14-3-3γ抗体:ウサギ由来抗ヒト14-3-3gamma抗体(ab155050),Abcam社製,500倍希釈。
連続変数は中央値(median)と四分位範囲(IQR)で表記された。定性変数は数(n)とパーセント(%)で表記された。群間比較には、Wilcoxon/Kruskal-Wallis testやFisher’s exact testが用いられた。臨床的パラメーターとS100A4、CIRP、14-3-3γの相関はSpearman’s correlation testを用いて解析された。累積生存期間はKaplan-Meier法によって計算された。生存率の群間比較には、Log-rank testが用いられた。疾患進行のリスク因子解析にはロジスティック回帰分析が用いられた。この際、単変量のロジスティック解析で疾患進行と有意な関連性を示したすべての臨床的パラメーターを用いて多変量解析が行われた。起算日からの死亡イベントのリスク因子(生命予後不良因子)は、生存期間を用いたCox比例ハザードモデルによって算出された。この際、単変量のCox比例ハザード解析で死亡イベントと有意な関連性を示したすべての臨床的パラメーターを用いて多変量解析が行われた。本検討ではP-value<0.05を統計学的有意と判定した。統計解析には、JMP version 13.2.1(SAS Institute Inc)とEZR version 1.38(自治医科大学)等のソフトウェアを用いた。
[健常コントロールとIPF患者における血清S100A4の比較]
未治療のIPF患者95名とHC50名から採取された血清のS100A4値を、ELISA法(Code No.CY-8086 CircuLex S100A4 ELISA Kit Ver.2(株式会社医学生物学研究所製))を用いて測定したところ、図1に示すとおり、HC群と比較し、IPF患者群の血清S100A4値は有意に高値であった。興味深いことに、すべてのHCの血清S100A4値は本キットの測定感度以下(0.28ng/mL)であった。IPF患者群の中にも血清S100A4値が測定感度以下であった患者群が存在する一方、血清S100A4値が高い一群も存在した。そのため前者をS100A4低値群、後者をS100A4高値群として定義し、後に比較した。
肺癌患者における正常肺組織部位を健常コントロール(HC)とし、外科的肺生検によって得られたIPF患者の肺組織におけるS100A4の発現を、免疫染色法を用いて比較検討した。その結果、図2に示すとおり、HCでは、肺胞マクロファージ(図2Bの矢頭)や正常肺胞構造にまばらなS100A4発現が認められた(図2Bの矢印)。対照的に、IPF患者の肺組織では、びまん性かつ部分的に強いS100A4発現が認められた(図2のE)。特に、幼若な線維芽細胞巣(図2のHの矢頭)や成熟した線維化組織の周囲と正常肺胞組織との境界領域に、豊富なS100A4発現細胞が浸潤していた(図2のHの矢印)。以上の所見から、S100A4はIPF患者の肺組織における線維芽細胞が産生源となり、その発現レベルが肺の線維化活動性を反映し、疾患の進行に関与している可能性が示唆された。
IPF患者における血清S100A4値と臨床パラメーターとの相関を検討したが、表1に示すとおり、有意な相関は認められなかった。血清S100A4値は既存の臨床パラメーターとは独立した挙動を示した。
S100A4高値群と低値群の患者背景を比較したところ、表2に示すとおり、PaO2値がS100A4低値群で低い以外に、有意な差はなかった。しかし、予後不良率は、有意にS100A4高値群で高かった。
IPF患者における血清S100A4値と、起算日から1年以内の疾患進行との関連性をロジスティック回帰分析にて解析したところ、表3に示すとおり、単変量解析ではPaO2低値や%FVC低値、血清S100A4高値が疾患進行と有意に関連した。さらに、これらの単変量解析で有意だった変数を用いて多変量解析を行ったところ、血清S100A4高値は、独立した疾患進行のリスク因子であることがわかった。
[健常コントロールとIPF患者における血清CIRPの比較]
未治療のIPF患者95名とIPF患者と年齢・性別が統計的に年齢・性別分布の差がない健常人コントロール(HC)50名から採取された血清のCIRP値を、ELISA法(CY-8103 Human CIRP ELISA Kit(株式会社医学生物学研究所製))を用いて測定したところ、図4に示したとおり、HC群と比較し、IPF患者群の血清CIRP値は有意に高値であった。興味深いことに、ほとんどのHCの血清CIRP値は、本キットの測定感度以下(0.201ng/mL)であった。IPF患者群の中にも血清CIRP値が測定感度以下であった患者群が存在する一方、血清CIRP値が測定感度以上の高い一群も存在した。そのため前者をCIRP低値群、後者をCIRP高値群として定義し、後に比較した。
肺癌患者における正常肺組織部位を健常コントロール(HC)とし、外科的肺生検によって得られたIPF患者の肺組織におけるCIRPの発現を、免疫染色法を用いて比較検討した。その結果、図5に示すとおり、HCでは、一部の正常肺胞構造にかすかなCIRP発現が認められた(図5のBの矢印)。対照的に、IPF患者の肺組織では、びまん性の強いCIRPの発現が認められた(図5のE)。特に、幼若な線維芽細胞巣(図5のHの矢頭)や線維化組織の周囲と増殖した細胞の核内に強くCIRPが発現していた(図5のHの矢印)。以上の所見から、CIRPはIPF患者の肺組織における線維化領域が産生源となり、その発現レベルが肺の線維化活動性を反映し、疾患の進行に関与している可能性が示唆された。
IPF患者における血清CIRP値と臨床パラメーターとの相関を検討したが、表5に示すとおり、有意な相関は認められなかった。血清CIRP値は既存の臨床パラメーターとは独立した挙動を示した。
CIRP高値群と低値群の患者背景を比較したところ、表6に示すとおり、%FVCがCIRP高値群で低かったが、その他に有意な差はなかった。しかし、予後不良率は、有意にCIRP高値群で高かった。
IPF患者における血清CIRP値と、起算日から1年以内の疾患進行との関連性をロジスティック回帰分析にて解析したところ、表7に示すとおり、単変量解析ではPaO2低値や%FVC低値、血清CIRP高値は疾患進行と有意に関連した。さらに、これらの単変量解析で有意だった変数を用いて多変量解析を行ったところ、血清CIRP高値は、独立した疾患進行のリスク因子であることがわかった。
[健常コントロールとIPF患者における血清14-3-3γの比較]
未治療のIPF患者95名とIPF患者と年齢・性別が統計的に年齢・性別分布の差がない健常人コントロール(HC)50名から採取された血清の14-3-3γ値を、ELISA法(CY-8082 14-3-3 Gamma ELISA Kit(株式会社医学生物学研究所製))を用いて測定した。その結果、図7に示すとおり、HC群と比較し、IPF患者群の血清14-3-3γ値は有意に高値であった。
肺癌患者における正常肺組織部位を健常コントロール(HC)とし、外科的肺生検によって得られたIPF患者の肺組織における14-3-3γの発現を、免疫染色法を用いて比較検討した。その結果、図8に示すとおり、HCでは、一部の正常肺胞構造に14-3-3γ発現が認められた(図8のBの矢印)。対照的に、IPF患者の肺組織では、びまん性の強い14-3-3γ発現が認められた(図8のE)。特に、幼若な線維芽細胞巣(図8のHの矢頭)や線維化組織周囲に強くCIRPが発現していた(図8のHの矢印)。以上の所見から、14-3-3γはIPF患者の肺組織における線維化領域が産生源となり、その発現レベルが肺の線維化活動性を反映し、疾患の進行に関与している可能性が示唆された。
IPF患者における血清14-3-3γ値と臨床パラメーターとの相関を検討したが、表9に示すとおり、有意な相関は認められなかった。血清14-3-3γ値は既存の臨床パラメーターとは独立した挙動を示した。
IPF患者における血清14-3-3γ中央値36815AU/mlをカットオフとして、14-3-3γ高値群と低値群の患者背景を比較したところ、表10に示すとおり、%FVCが14-3-3γ高値群で低かったが、その他に有意な差はなかった。
IPF患者における血清14-3-3γ値と、起算日から1年以内の疾患進行との関連性をロジスティック回帰分析にて解析したところ、表11に示すとおり、単変量解析ではPaO2低値や%FVC低値、血清14-3-3γ高値は疾患進行と有意に関連した。さらに、これらの単変量解析で有意だった変数を用いて多変量解析を行ったところ、血清14-3-3γ高値は、疾患進行と関連する傾向が認められた。
Claims (4)
- 下記(a)~(c)の工程を含む、特発性肺線維症の予後を判定する方法
(a)被検体から分離された生体試料について、CIRP、14-3-3γ及びS100A4から選択される少なくとも1のタンパク質の量を検出する工程、
(b)工程(a)で検出したタンパク質量を各タンパク質の基準量と比較する工程、
(c)工程(b)における比較の結果、前記被検体におけるタンパク質量が基準発現量よりも高い場合、前記被検体の特発性肺線維症の予後は不良であると判定する工程。 - 前記生体試料が血清である、請求項1に記載の方法。
- 請求項1又は2に記載の方法により、特発性肺線維症の予後を判定するための薬剤であって、CIRPに結合する抗体、14-3-3γに結合する抗体及びS100A4に結合する抗体から選択される少なくとも1の抗体を含む薬剤。
- CIRPに結合する抗体、14-3-3γに結合する抗体及びS100A4に結合する抗体から選択される少なくとも1の抗体と、前記抗体に対するアイソタイプコントロール抗体、陽性対照及び陰性対照から選択される少なくとも1の物品とを含む、特発性肺線維症の予後を判定するためのキット。
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