以下、本発明の実施形態によるサスペンション制御装置を、4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1において、車両のボディを構成する車体1の下側には、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪2という)が設けられている。これらの車輪2は、タイヤ3を含んで構成されている。タイヤ3は、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。
サスペンション装置4は、車体1と車輪2との間に介装して設けられている。サスペンション装置4は、懸架ばね5(以下、スプリング5という)と、スプリング5と並列関係をなして車体1と車輪2との間に介装して設けられた減衰力調整式緩衝器(以下、可変ダンパ6という)とにより構成される。なお、図1は、1組のサスペンション装置4を、車体1と車輪2との間に設けた場合を模式的に図示している。4輪自動車の場合、サスペンション装置4は、4つの車輪2と車体1との間に個別に独立して合計4組設けられる。
ここで、サスペンション装置4の可変ダンパ6は、車体1側と車輪2側との間で調整可能な力を発生する力発生機構である。可変ダンパ6は、減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成されている。可変ダンパ6には、発生減衰力の特性(即ち、減衰力特性)をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ等からなる減衰力可変アクチュエータ7が付設されている。なお、減衰力可変アクチュエータ7は、減衰力特性を必ずしも連続的に調整する構成でなくてもよく、例えば2段階以上の複数段階で減衰力を調整可能なものであってもよい。また、可変ダンパ6は、圧力制御タイプでもよく、流量制御タイプであってもよい。
ばね上加速度センサ8は、車体1(ばね上)の上下加速度を検出する。ばね上加速度センサ8は、車体1の任意の位置に設けられている。ばね上加速度センサ8は、例えば可変ダンパ6の近傍となる位置で車体1に取り付けられている。ばね上加速度センサ8は、所謂ばね上側となる車体1側で上下方向の振動加速度を検出し、その検出信号を電子制御ユニット11(以下、ECU11という)に出力する。
車高センサ9は、車体1の高さを検出する。車高センサ9は、例えばばね上側となる車体1側に、それぞれの車輪2に対応して複数個(例えば、4個)設けられている。即ち、各車高センサ9は、各車輪2に対する車体1の相対位置(高さ位置)を検出し、その検出信号をECU11に出力する。車高センサ9およびばね上加速度センサ8は、車両の状態量を検出する車両状態量取得部を構成している。なお、車両の状態量は、車体1の上下加速度と車体1の高さに限らない。車両の状態量は、例えば、車体1の高さ(車高)を微分した相対速度、車体1の上下加速度を積分した上下速度などを含んでもよい。この場合、車両状態量取得部は、車高センサ9、ばね上加速度センサ8に加えて、車高を微分する微分器、上下加速度を積分する積分器なども有している。
路面計測センサ10は、路面のプロフィールを検出する路面プロフィール取得部を構成している。路面計測センサ10は、例えば複数のミリ波レーダによって構成されている。路面計測センサ10は、車両前方の路面状態(具体的には、検出対象の路面までの距離と角度、画面位置と距離を含む)を計測して検出する。路面計測センサ10は、路面の検出値に基づき、路面のプロフィールを出力する。
なお、路面計測センサ10は、例えばミリ波レーダとモノラルカメラを組み合わせたものでもよく、特開2011-138244号公報等に記載のように、左,右一対の撮像素子(デジタルカメラ等)を含むステレオカメラによって構成されてもよい。路面計測センサ10は、超音波距離センサ等によって構成されてもよい。
ECU11は、車両の姿勢制御等を含む挙動制御を行う制御装置として車両の車体1側に搭載されている。ECU11は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成されている。ECU11は、データの記憶が可能なメモリ11Aを有している。ECU11は、コントローラ12を備えている。
ECU11は、その入力側がばね上加速度センサ8、車高センサ9および路面計測センサ10に接続され、出力側が可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7に接続されている。ECU11は、ばね上加速度センサ8による上下方向の振動加速度の検出値と、車高センサ9による車高の検出値と、路面計測センサ10による路面の検出値とに基づき、路面のプロフィールと車両状態量をコントローラ12に出力する。コントローラ12は、路面のプロフィールと車両状態量とに基づいて、サスペンション装置4の可変ダンパ6(力発生機構)で発生すべき力を求め、その命令信号をサスペンション装置4の減衰力可変アクチュエータ7に出力する。
ECU11は、例えば車両が10~20m程度を走行した数秒間に亘って、車両状態量と路面入力のデータをメモリ11Aに保存する。これにより、ECU11は、車両が所定の走行距離を走行したときの路面入力の時系列データ(路面プロフィール)と、車両状態量の時系列データとを生成する。コントローラ12は、路面のプロフィールと車両状態量の時系列データに基づいて、可変ダンパ6で発生すべき減衰力を調整するように制御する。
コントローラ12は、学習済みのDNN13(ディープニューラルネットワーク)を備えている。DNN13は、AI学習部であり、例えば4層以上の多層のニューラルネットワークによって構成されている。各層は、複数のニューロンを備えており、隣り合う2つの層のニューロンは、重み係数で結合されている。重み係数は、事前の学習によって設定されている。コントローラ12は、ばね上加速度センサ8による上下方向の振動加速度の検出値と、車高センサ9による車高の検出値と、路面計測センサ10による路面の検出値とに基づいて、路面入力の時系列データ(路面プロフィール)と、車両状態量の時系列データとを取得する。コントローラ12は、路面入力の時系列データと、車両状態量の時系列データとに基づいて、最適指令値の時系列データを出力する。このとき、最新の最適指令値が、現時点の最適な減衰力の指令値に対応する。これにより、コントローラ12は、現在の車両と路面に対して最も適切な減衰力の指令値を出力する。減衰力の指令値は、減衰力可変アクチュエータ7を駆動するための電流値に対応している。
次に、コントローラ12のDNN13の学習方法について、図2に示す説明図を参照して説明する。DNN13は、(1)直接最適制御指令値探索、(2)指令値学習、(3)重み係数ダウンロードの処理を実行することによって、構築される。
まず、直接最適制御指令値探索を実行するために、車両モデル21を含む解析モデル20を構成する。図2には、車両モデル21が1輪モデルの場合を例示した。車両モデル21は、例えば左右一対の2輪モデルでもよい。車両モデル21には、路面入力と、直接最適制御部22から最適指令値が入力される。直接最適制御部22は、以下に示す直接最適制御指令値探索の手順に従って、最適指令値を求める。
(1)直接最適制御指令値探索
直接最適制御部22は、事前に車両モデル21を含む解析モデル20を用いて、繰り返し演算により最適指令値を探索する。最適指令値の探索は、以下に示す最適制御問題と定式化し、最適化手法を用いて数値解析的に求める。
対象となる車両の運動は、状態方程式によって数1の式で表されるものとする。なお、式中のドットは、時間tによる1階微分(d/dt)を意味する。
ここで、xは状態量、uは制御入力である。状態方程式の初期条件は、数2の式のように与えられる。
初期時刻t0から終端時刻tfまでの間に課せられる等式拘束条件と不等式拘束条件は、数3の式および数4の式のように表される。
最適制御問題は、数1の式に示す状態方程式と、数2の式に示す初期条件と、数3および数4の式に示す拘束条件を満足しつつ、数5の式に示す評価関数Jを最小にするような制御入力u(t)を求める問題である。
上記のような拘束条件付きの最適制御問題を解くのは、非常に困難である。このため、最適化手法として拘束条件を簡単に扱うことができる直接法を用いる。この手法は、最適制御問題をパラメタ最適化問題に変換し、最適化手法を用いて解を得る方法である。
最適制御問題をパラメタ最適化問題に変換するため、初期時刻t0から終端時刻tfまでをN個の区間に分割する。各区間の終端時刻をt1,t2,…,tNと表すと、それらの関係は、数6に示す通りとなる。
連続的な入力u(t)は、数7に示すように、各区間の終端時刻における離散的な値uiで置き換えられる。
入力u0,u1,…,uNに対して状態方程式を初期条件x0から数値積分し、各区間の終端時刻における状態量x1,x2,…,xNを求める。このとき、各区間内の入力は、各区間の終端時刻で与えられる入力を一次補間して求める。以上の結果、入力に対して状態量が決定され、これによって評価関数と拘束条件が表現される。よって、変換したパラメタ最適化問題は、次のように表すことができる。
最適化すべきパラメタをまとめてXとすると、数8の式に示すようになる。
よって、数5の式に示す評価関数は、数9の式のように表される。
また、数3および数4の式に示す拘束条件は、数10および数11の式のように表される。
このようにして、前述のような最適制御問題は、数8ないし数11の式で表されるパラメタ最適化問題に変換することができる。
路面に応じた最適制御指令を求める問題を最適制御問題として定式化するための評価関数Jは、上下加速度Azが最少となって乗り心地が良く、かつ制御指令値uを小さくするように、数12の式のように定義する。ここで、q1,q2は重み係数である。q1,q2は、例えば実験結果等により予め設定されている。
直接最適制御部22は、このように定式化したパラメタ最適問題を最適化手法により数値解析的に求め、様々な路面での最適指令値を導出する。
(2)指令値学習
直接最適制御指令値探索により導出した最適指令値を出力とし、そのときの路面プロフィール、車両状態量を入力として、様々な路面の入出力を、人工知能となるDNN23に学習させる。DNN23は、学習用のディープニューラルネットワークであり、車載用のDNN13と同じ構成になっている。DNN23には、路面プロフィールとして路面入力の時系列データと、車両状態量の時系列データとが入力される。このとき、路面入力と車両状態量とに対応して最適指令値の時系列データを教師データとして、DNN23におけるニューロン間の重み係数が求められる。
(3)重み係数ダウンロード
指令値学習によって学習したDNN23の重み係数を、実際のECU11の指令値決定部となるDNN13に設定する。これにより、コントローラ12のDNN13が構成される。
(4)最適指令値計算
DNN13を含むコントローラ12は、車両に搭載される。コントローラ12の入力側には、ばね上加速度センサ8、車高センサ9および路面計測センサ10が接続されている。コントローラ12の出力側には、可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7に接続されている。コントローラ12は、ばね上加速度センサ8、車高センサ9および路面計測センサ10の検出信号に基づいて、路面入力と車両状態量とを取得する。コントローラ12は、路面プロフィールとして路面入力の時系列データと、車両状態量の時系列データとをDNN13に入力する。DNN13は、路面入力と車両状態量の時系列データが入力されると、学習結果に応じて最適指令となる可変ダンパ6に対する指令値を出力する。
このように、直接最適制御部22は、様々な条件において、直接最適制御指令をオフラインの数値最適化により導出する。その際の路面プロフィールおよび車両状態量と最適指令を人工知能(DNN23)に学習させる。この結果、ステップ毎の最適化を行うことなく、DNN13を搭載したコントローラ12(ECU11)によって、直接最適制御を実現することができる。
次に、DNN13による乗り心地性能の効果を確認するために、比較例による制御として従来通りのスカイフック制御則に基づくフィードバック制御と、第1の実施形態のDNN13による制御とについて、車両のシミュレーションによって乗り心地性能等を比較した。なお、シミュレーション条件は、例えばEセグメントのセダンを想定した車両諸元とした。シミュレーションモデルは、ばね上とばね下質量を考慮した1/4車両モデルを用いた。路面は、基本的なばね上の制振性能を確認するためうねり路を設定した。
シミュレーション結果を、図3および図4に示す。図3は、ばね上上下加速度RMS値(実効値)を示している。図3中の縦軸は、フワフワ感領域である第1周波数領域(0.5-2Hz)の実効値を示している。図3中の横軸は、フワフワ感以外の振動領域である第2周波数領域(2-50Hz)の実効値を示している。図3に示すように、第1の実施形態による制御は、比較例による制御(スカイフック制御則)と比較して、第1周波数領域と第2周波数領域の両方で振動が低減している。この結果、第1の実施形態による制御は、低周波のばね上制振性と高周波の振動遮断性を両立し、従来の制御(スカイフック制御則)と比較して、性能向上していることが分かる。
図4に、ばね上加速度等の時間変化の結果を示す。これにより、第1の実施形態による制御は、従来の制御(スカイフック制御則)と比較して、路面入力が変化する手前から減衰力を高く設定している。このため、第1の実施形態による制御は、比較例による制御(スカイフック制御則)と比較して、0.6秒付近までは加速度が大きいものの、その後は加速度のピーク値が小さく、波形も滑らかで、うねり路通過後の収束性も改善されていることが分かる。これらにより、第1の実施形態による制御は、比較例による制御(スカイフック制御則)と比較して、高い制振性能と滑らかさを実現できていることが分かる。
かくして、本実施形態によれば、サスペンション制御装置は、車両の車体1と車輪2との間に介装して設けられ、車体1と車輪2との間の力を調整可能な可変ダンパ6と、車両の状態量を検出する車両状態量取得部(ばね上加速度センサ8および車高センサ9)と、路面のプロフィールを検出する路面プロフィール取得部(路面計測センサ10)と、車両状態量取得部および路面プロフィール取得部の取得結果に基づいて可変ダンパ6の発生力を調整するように制御するコントローラ12と、を備えている。コントローラ12は、車両状態量取得部および路面プロフィール取得部の取得結果に基づいて可変ダンパ6に対する指令値を学習するAI学習部となるDNN13を有している。このとき、DNN13は、事前に評価関数Jを最小となるように最適化手法によって求められた指令値と車両状態量取得部および路面プロフィール取得部の取得結果を学習している。
これにより、各路面に応じた真の最適な指令により制御することが可能となるため、乗り心地と操縦安定性能を向上することができる。また、セミアクティブサスペンション(可変ダンパ6)のように非線形な制御対象でも、複雑なモデル化なしに制御構築が可能になる。各路面、車両、可変ダンパ6の特性を考慮した直接最適制御をECU11に実装するのは演算時間からして現在の技術では組み込みできない。しかしながら、直接最適指令を事前に学習させた人工知能(DNN13)であればECU11(コントローラ12)に組み込むことができる。このため、直接最適制御をECU11によって実現することができる。
次に、図5は第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、車両の上下挙動に基づいて可変ダンパをフィードバック制御するフィードバック制御部を追加したことにある。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施形態によるECU30は、第1の実施形態によるECU11と同様に構成されている。このため、ECU30は、メモリ30Aを有している。これに加え、ECU30は、コントローラ31を備えている。
コントローラ31は、学習済みのDNN13を備えている。これに加え、コントローラ31は、フィードバック制御部32を備えている。フィードバック制御部32は、例えば特許文献1に開示されたコントローラと同様に構成されている。このため、フィードバック制御部32は、例えばスカイフック制御則に基づいて、車両状態量取得部としてのばね上加速度センサ8から出力されるばね上加速度から目標減衰力を算出する。フィードバック制御部32は、算出した目標減衰力に基づいて、可変ダンパ6の減衰力を制御する。なお、フィードバック制御部32は、スカイフック制御則に限らず、双線形最適制御、H∞制御等のような他の制御則に基づいて、可変ダンパ6を制御してもよい。
このとき、ECU30は、車両状態量取得部としての車高センサ9から出力される車高に基づいて、ばね上とばね下間の相対速度を取得する。緩衝器の伸長行程と縮小行程との間で行程反転するときのように、相対速度が低速なときには、フィードバック制御部32は、目標減衰力を低下させた補正減衰力を算出し、この補正減衰力に対応した制御信号を緩衝器に出力する。これにより、減衰力の急変に起因する異音やジャークの発生を低減することができる。
一方、相対速度が高速なときには、フィードバック制御部32は、低速なときに比べて目標減衰力の制限を緩和した補正減衰力を算出し、大きな値の補正減衰力に対応した制御信号を出力する。この結果、相対速度が高速なときには、緩衝器によって大きな減衰力を発生させて、制振性を確保することができ、乗り心地を向上することができる。
コントローラ31は、DNN13の学習状態等に応じて、DNN13とフィードバック制御部32とのうちいずれか一方を選択する。例えばDNN13が学習済みの場合には、コントローラ31は、DNN13を選択する。この場合、コントローラ31は、DNN13によって、可変ダンパ6の減衰力を制御する。
これに対し、例えばDNN13が未学習な場合には、コントローラ31は、フィードバック制御部32を選択する。また、DNN13が学習済みであっても、学習した路面プロフィールと大きく異なる路面を走行する場合にも、コントローラ31は、フィードバック制御部32を選択する。これらの場合、コントローラ31は、フィードバック制御部32によって、可変ダンパ6の減衰力を制御する。
かくして、第2の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、AI学習部となるDNN13に、車両の上下挙動に基づいて可変ダンパ6をフィードバック制御するフィードバック制御部32を追加した。これにより、DNN13が未学習の状態では、コントローラ31は、フィードバック制御部32によって可変ダンパ6を制御する。この結果、第2の実施形態では、従来技術と同程度の乗り心地制御の性能を担保することができる。また、学習済みの路面においても、DNN13によるAI制御とフィードバック制御部32によるフィードバック制御とを組み合わせることにより、車両諸元変化に対する対応が可能となる。
なお、未学習の路面を走行した場合は、路面プロフィールを記憶してもよく、外部サーバに送信してもよい。この場合、直接最適制御部は、新たに取得した未学習の路面プロフィールに基づいて、最適指令値を求める。その後、路面プロフィールと最適指令値を追加してDNNのニューロン間の重み係数を再度学習する。学習が完了した後、車両に搭載したDNNの重み係数を更新する。これにより、次に同じ路面を走行するときには、DNNを用いて可変ダンパ6の減衰力を最適制御することができる。
次に、図6は第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、前輪と後輪でそれぞれ異なるDNNの重みを設定し、4輪独立して可変ダンパを制御することにある。なお、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第3の実施形態によるサスペンション制御装置は、3輪(左前輪FL、右前輪FR、右後輪RR)の車体1の上下加速度を検出するばね上加速度センサ8FL,8FR,8RRと、4輪(左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RR)の車高を検出する車高センサ9FL,9FR,9RL,9RRと、左輪(LH)のタイヤが計測する路面プロフィールを計測する路面計測センサ10Lと、右輪(RH)のタイヤが計測する路面プロフィールを計測する路面計測センサ10Rと、を備えている。路面計測センサ10Lは、左輪のタイヤが走行する路面プロフィールを出力する。路面計測センサ10Rは、右輪のタイヤが走行する路面プロフィールを出力する。なお、路面計測センサ10Lと路面計測センサ10Rとに代えて、単一の路面計測センサを備えてもよい。この場合、単一の路面計測センサは、左輪のタイヤが走行する路面プロフィールと右輪のタイヤが走行する路面プロフィールとを出力する。
第3の実施形態によるECU40は、3輪の上下加速度から4輪の上下加速度を算出する4輪加速度算出部41を備えている。この場合、ばね上加速度センサ8FL,8FR,8RRと、車高センサ9FL,9FR,9RL,9RRと、4輪加速度算出部41とは、車両状態量取得部を構成している。
ECU40は、遅延部42L,42Rを備えている。遅延部42Lの入力側は、路面計測センサ10Lに接続されている。遅延部42Lの出力側は、後輪DNN45Lに接続されている。遅延部42Rの入力側は、路面計測センサ10Rに接続されている。遅延部42Rの出力側は、後輪DNN45Rに接続されている。遅延部42L,42Rは、ホイールベースを車速で割った値(時間)だけ路面プロフィールを遅延させて後輪DNN45L,45Rに出力する。
ECU40は、その入力側がばね上加速度センサ8FL,8FR,8RR、車高センサ9FL,9FR,9RL,9RRおよび路面計測センサ10L,10Rに接続され、出力側が4輪の可変ダンパ6FL,6FR,6RL,6RRの減衰力可変アクチュエータ7FL,7FR,7RL,7RRに接続されている。ECU40は、ばね上加速度センサ8FL,8FR,8RR、車高センサ9FL,9FR,9RL,9RRおよび路面計測センサ10L,10Rによる検出値に基づき、路面のプロフィールと車両状態量をコントローラ43に出力する。コントローラ43は、路面のプロフィールと車両状態量とに基づいて、可変ダンパ6FL,6FR,6RL,6RR(力発生機構)で発生すべき力を求め、その命令信号を減衰力可変アクチュエータ7FL,7FR,7RL,7RRに出力する。
コントローラ43は、学習済みの前輪DNN44L,44Rと後輪DNN45L,45Rを備えている。前輪DNN44L,44Rと後輪DNN45L,45Rは、第1の実施形態によるDNNと同様に構成されている。このため、前輪DNN44L,44Rと後輪DNN45L,45Rは、AI学習部であり、例えば4層以上の多層のニューラルネットワークによって構成されている。各層は、複数のニューロンを備えており、隣り合う2つの層のニューロンは、重み係数で結合されている。重み係数は、事前の学習によって設定されている。前輪DNN44L,44Rと後輪DNN45L,45Rは、例えば第1の実施形態と同様に、1輪モデルの車両モデルを用いた学習によって取得した重み係数が設定されている。好ましくは、前輪DNN44L,44Rと後輪DNN45L,45Rは、4輪の車両モデルを用いた学習によって取得した重み係数が設定されている。
コントローラ43は、ばね上加速度センサ8FL,8FR,8RRによる上下方向の振動加速度の検出値と、車高センサ9FL,9FR,9RL,9RRによる車高の検出値と、路面計測センサ10L,10Rによる路面の検出値とに基づいて、路面入力の時系列データ(路面プロフィール)と、車両状態量の時系列データとを4輪別々に取得する。
このとき、前輪DNN44Lは、路面入力の時系列データと、車両状態量の時系列データとに基づいて、左前輪用の最適指令値の時系列データを出力する。前輪DNN44Rは、路面入力の時系列データと、車両状態量の時系列データとに基づいて、右前輪用の最適指令値の時系列データを出力する。後輪DNN45Lは、路面入力の時系列データと、車両状態量の時系列データとに基づいて、左後輪用の最適指令値の時系列データを出力する。後輪DNN45Rは、路面入力の時系列データと、車両状態量の時系列データとに基づいて、右後輪用の最適指令値の時系列データを出力する。
かくして、第3の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施形態では、前輪DNN44L,44Rと後輪DNN45L,45Rとを備えている。このため、前輪と後輪で別々に可変ダンパ6FL,6FR,6RL,6RRを制御することができる。これに加え、第3の実施形態では、前輪DNN44L,44Rと後輪DNN45L,45Rで異なる重みが設定され、4輪独立で可変ダンパ6FL,6FR,6RL,6RRが制御される。路面計測センサ10L,10Rは、左輪(LH)と右輪(RH)のタイヤが走行する路面プロフィールを出力する。このため、第3の実施形態のサスペンション制御装置は、左右輪で路面が異なる場合でも対応可能である。左右輪の路面プロフィールが異なると、各輪の挙動がそれぞれ異なる。このため、それに対応するために、第3の実施形態では、各輪の車高情報および加速度情報を各輪のDNN(前輪DNN44L,44Rと後輪DNN45L,45R)に入力し、各輪の指令値を算出する。算出した指令値を各輪の可変ダンパ6FL,6FR,6RL,6RRに出力し制御を行う。
次に、図1および図7は第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、フルビークルモデルを用いて最適指令値を導出することにある。なお、第4の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
コントローラ12のDNN54の重み係数を学習するときに、直接最適制御指令値探索を実行する。このとき、第1の実施形態では、解析モデル20に含まれる車両モデル21には、1輪モデルを用いた。これに対し、第4の実施形態では、解析モデル50に含まれる車両モデル51には、4輪モデルを用いる。このため、車両モデル51は、車輪となる左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、右後輪2RRを含んでいる。また、車両モデル51は、左前輪2FLのサスペンション装置4FLと、右前輪2FRのサスペンション装置4FRと、左後輪2RLのサスペンション装置4RLと、右後輪2RRのサスペンション装置4RRと、を含んでいる。サスペンション装置4FL,4FR,4RL,4RRは、スプリング5と可変ダンパ6FL,6FR,6RL,6RRとを備えている。これに加え、車両モデル51は、例えば車両のピッチ、ロールを考慮したモデルとなっている。このとき、左前輪2FLと右前輪2FRとの間に前輪用のスタビライザ52Fが設けられている。左後輪2RLと右後輪2RRとの間に前輪用のスタビライザ52Rが設けられている。このため、車両モデル51は、スタビライザ反力を考慮して車両状態量を求めることができる。なお、車両モデル51は、図7に示す4輪モデルに限らず、各種の4輪モデルが使用可能である。
車両モデル51には、路面入力と、直接最適制御部53から最適指令値が入力される。直接最適制御指令値探索として、直接最適制御部53が最適指令値を求める方法は、第1の実施形態による直接最適制御部22が最適指令値を求める方法と同様である。
第1の実施形態と同様に、直接最適制御指令値探索により導出した最適指令値を出力とし、そのときの路面プロフィール、車両状態量を入力として、様々な路面の入出力を、人工知能となるDNNに学習させる。DNNは、学習用のディープニューラルネットワークであり、車載用のDNN54と同じ構成になっている。DNNには、路面プロフィールとして路面入力の時系列データと、車両状態量の時系列データとが入力される。このとき、路面入力と車両状態量とに対応して最適指令値の時系列データを教師データとして、DNNにおけるニューロン間の重み係数が求められる。
指令値学習によって学習したDNNの重み係数を、実際のECU11の指令値決定部となるDNN54に設定する。これにより、コントローラ12のDNN54が構成される。
かくして、第4の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。第4の実施形態では、フルビークルモデルからなる車両モデル51を用いて最適指令値を求める。このため、DNN54は、実際の車両に近い挙動を考慮した最適指令値を出力することができ、例えばビッチやロールの抑制効果を高めることができる。
前記各実施形態では、車両状態量取得部は、ばね上加速度センサ8と車高センサ9とを備えるものとした。本発明はこれに限らず、車両状態量取得部は、例えばばね上加速度センサ8と車高センサ9とに加えて、ばね上加速度センサ8による上下方向の振動加速度の検出値と、車高センサ9による車高の検出値とに基づき、車両の状態量を算出する部分を含んでもよい。また、車両状態量取得部は、ばね上加速度センサ、車高センサからの検出信号に加えて、例えば車速等のような車両状態に関係する情報をCAN(Controller Area Network)からの信号に基づいて取得し、これらの情報を考慮して車両の状態量を算出または推定してもよい。この場合、車両状態量取得部は、各種のセンサに加えて、ECU11,30,40内の演算部分によって構成される。
なお、前記各実施形態では、路面プロフィール取得部は、路面計測センサ10によって路面のプロフィールを検出した。本発明はこれに限らず、路面プロフィール取得部は、例えばGPSデータを基にしてサーバから情報を取得するものでもよく、車車間通信により他車から情報を取得するものでもよい。また、路面プロフィール取得部は、ばね上加速度センサ8による上下方向の振動加速度の検出値と、車高センサ9による車高の検出値とに基づき、路面のプロフィールを推定してもよい。この場合、路面プロフィール取得部は、各種のセンサに加えて、ECU11,30,40内の演算部分によって構成される。
前記各実施形態では、サスペンション制御装置は、車両状態量取得部と路面プロフィール取得部とを有するものとした。本発明はこれに限らず、サスペンション制御装置は、路面プロフィール取得部を有さなくてもよい。この場合、サスペンション制御装置のコントローラは、車両状態量取得部のみの取得結果に基づいて力発生機構の発生力を調整する。コントローラは、車両状態量取得部の取得結果に基づいて力発生機構に対する指令値を学習するAI学習部を有する。コントローラのAI学習部は、事前にある評価関数を最小となるように最適化手法によって求められた指令値と車両状態量取得部の取得結果を学習している。
前記各実施形態では、力発生機構としてセミアクティブダンパからなる可変ダンパ6である場合を例に説明した。本発明はこれに限らず、力発生機構としてアクティブダンパ(電気アクチュエータ、油圧アクチュエータのいずれか)を用いるようにしてもよい。前記各実施形態では、車体1側と車輪2側との間で調整可能な力を発生する力発生機構を、減衰力調整式の油圧緩衝器からなる可変ダンパ6により構成する場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えば力発生機構を液圧緩衝器の他に、エアサスペンション、スタビライザ(キネサス)、電磁サスペンション等により構成してもよい。
前記各実施形態では、4輪自動車に用いる車両挙動装置を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2輪、3輪自動車、または作業車両、運搬車両であるトラック、バス等にも適用できるものである。
前記各実施形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
次に、上記実施形態に含まれるサスペンション制御装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様のサスペンション制御装置は、車両の車体と車輪との間に介装して設けられ、前記車体と前記車輪との間の力を調整可能な力発生機構と、車両の状態量を検出または推定する車両状態量取得部と、前記車両状態量取得部の取得結果に基づいて前記力発生機構の発生力を調整するように制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記車両状態量取得部の取得結果に基づいて前記力発生機構に対する指令値を学習するAI学習部を有することを特徴としている。
第2の態様のサスペンション制御装置は、車両の車体と車輪との間に介装して設けられ、前記車体と前記車輪との間の力を調整可能な力発生機構と、車両の状態量を検出または推定する車両状態量取得部と、路面のプロフィールを検出または推定する路面プロフィール取得部と、前記車両状態量取得部および前記路面プロフィール取得部の取得結果に基づいて前記力発生機構の発生力を調整するように制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記車両状態量取得部および前記路面プロフィール取得部の取得結果に基づいて前記力発生機構に対する指令値を学習するAI学習部を有することを特徴としている。
第3の態様としては、第1の態様において、前記コントローラのAI学習部は、事前にある評価関数を最小となるように最適化手法によって求められた指令値と前記車両状態量取得部の取得結果を学習していることを特徴としている。
第4の態様としては、第2の態様において、前記コントローラのAI学習部は、事前にある評価関数を最小となるように最適化手法によって求められた指令値と前記車両状態量取得部および前記路面プロフィール取得部の取得結果を学習していることを特徴としている。
第5の態様としては、第1ないし第4のいずれかの態様において、前記コントローラは、前記車両状態量取得部による車両の状態量から求められる目標減衰力を算出するフィードバック制御部をさらに備えることを特徴としている。