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JP7315971B2 - 刺繍ボタン及びその製造方法 - Google Patents
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JP7315971B2 - 刺繍ボタン及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、刺繍ボタン及びその製造方法に関し、特に、糸を縫製して形成され、ボタンとしての所望の強度、耐久性や硬度等を備えると共に、多様なデザインバリエーションを有し、小ロット生産が可能な刺繍ボタン及びその製造方法に関する。
特許文献1には、従来の衣類等に取り付けられるボタンとして、ポリエステル製ボタン、ABS樹脂製ボタンやナイロン製ボタン等の樹脂製ボタンが開示されている。そして、ポリエステル製ボタンは、棒管法や遠心成型法等により大量生産が可能であり、ABS樹脂製のボタンは、例えば、インジェクション方式による射出成型により大量生産が可能である。
また、特許文献2には、従来の衣類等に取り付けられるボタンとして、金属製ボタンが開示されている。そして、金属製ボタンは、プレス加工や切削加工により大量生産が可能である。
上述した樹脂製ボタンや金属製ボタンは、シャツ、ブラウス、上着、コート、パンツ等の衣類の前立て部や袖部に対して糸により固定される。そして、ユーザは、上記ボタンを衣類のボタンホール部に係止させ、あるいは、上記ボタンを衣類のボタンホール部から離脱させることで、ユーザは、衣類を着たり、あるいは、脱いだりすることが出来る。尚、上記ボタンは、衣類だけでなく、鞄やその他の小物類等、様々なものに用いられる。
実用新案登録第3127654号公報 特許第6785004号公報
ユーザが、衣類を着たり、脱いだりする際に、上記ボタンは、ボタンホール部に係止され、あるいは、ボタンホール部から離脱される。また、使用した衣類は、家庭やクリーニング店にて洗濯される。そのため、上記ボタンには、所望の強度、耐久性や硬度等が要求されるため、従来のボタンとしては、上記強度等を満たし易い樹脂製ボタンや金属製ボタンが多く用いられている。また、樹脂製ボタンや金属製ボタンは、大量生産が可能であり、製造コスト面からもメリットがある。
しかしながら、特に、樹脂製ボタンでは、大量生産により低コスト化は可能であるが、個々の衣類のデザインに合わせた個性的なデザイン化、例えば、ボタンの色のバリエーションが難しく、ファッション性に乏しいという課題がある。その一方、樹脂製ボタンを個々の衣類のデザインに合わせて、小ロットにて生産した場合には、低コスト化が難しいという課題がある。尚、金属製ボタンにおいても、上記樹脂製ボタンと同様に色のバリエーション等の個性的なデザイン化の課題を有している。
上記課題等から、昨今のファッション業界では、個々の衣類のデザインに合わせられる新たなボタンが求められている。そして、上述したように、ボタンとしての所望の強度、耐久性や硬度等を維持すると共に、コストの大幅な上昇を抑えながら、小ロット生産に対応可能なボタンが求められている。
また、高齢の方や指の力が弱い方にとっては、樹脂製ボタンや金属製ボタンは硬すぎて滑り易いため、上記ボタンを衣類のボタンホール部に係止させ、あるいは、上記ボタンを衣類のボタンホール部から離脱させる作業が大変であるという課題がある。
また、樹脂製ボタンや金属製ボタンをブラウス等の柔らかいシャツに取り付けた場合には、上記ボタンが重いため、上記ボタンを取り付けた前立て部が前方へと垂れてしまい、シャツのシルエットが崩れ易いという課題がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、糸を縫製して形成され、ボタンとしての所望の強度、耐久性や硬度等を備えると共に、多様なデザインバリエーションを有し、小ロット生産が可能な刺繍ボタン及びその製造方法を提供することにある。
本発明の刺繍ボタンは、複数の孔部が形成されると共に、縫製した糸から成る基部と、前記基部の一部と重畳するように、前記基部の端部に沿って形成されると共に、縫製した前記糸から成る壁部と、を有し、前記孔部は、前記糸によって囲まれた開口部であることを特徴とする。

また、本発明の刺繍ボタンでは、前記孔部は、前記壁部より内側の前記基部に対して、前記基部を貫通して形成され、前記壁部は、前記基部よりも前記孔部の貫通方向に突出して形成されることを特徴とする。
また、本発明の刺繍ボタンでは、前記基部の内部には、ベース体が形成されることを特徴とする。
また、本発明の刺繍ボタンでは、前記基部及び前記壁部は、前記糸のみから形成されることを特徴とする。
また、本発明の刺繍ボタンの製造方法では、縫製用基材を準備し、前記縫製用基材に対して糸を縫製し、所望の厚みを有する基部を形成すると共に、前記基部に複数の孔部を形成する工程と、前記基部の一部と重畳するように前記糸を重ねて縫製し、前記基部の端部に沿って壁部を形成する工程と、少なくとも前記縫製用基材の一部を除去し、前記基部と前記壁部とを有する刺繍ボタンを形成する工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の刺繍ボタンの製造方法では、前記縫製用基材に対して前記糸を縫製して前記孔部の元となる開口領域を複数有するベース体を形成する工程と、を更に備え、前記基部及び前記孔部を形成する工程では、前記ベース体に対して前記糸を重ねて縫製すると共に、前記開口領域の中心側から外側へと向けて放射状に前記糸を引っ張りながら縫製することを特徴とする。
また、本発明の刺繍ボタンの製造方法では、前記ベース体を形成する工程では、前記開口領域を囲むように前記糸をランニングステッチして形成することを特徴とする。
また、本発明の刺繍ボタンの製造方法では、前記基部及び前記壁部は、前記糸のみから形成されることを特徴とする。
本発明の刺繍ボタンは、糸を縫製して形成される。この構造により、刺繍ボタンが取り付けられる衣類等のデザインに応じて、糸の種類や糸の色等を適宜変更することで、様々なデザインの刺繍ボタンが小ロット単位にて製作可能となる。特に、糸のカラーバリエーションは、数百種類あることで、機械ミシンへの糸の設置作業により、簡単に色々なカラーバリエーションの刺繍ボタンが製作可能となる。
また、本発明の刺繍ボタンは、糸を縫製して形成され、複数の孔部が形成される基部と、基部の端部に沿って形成される壁部と、を有する。そして、壁部の大部分は、基部と重畳して形成され、所望の厚みを有すると共に、糸同士が複雑に絡み合い密集した状態となる。この構造により、刺繍ボタンは、糸により構成されるが、所望の強度、耐久性や硬度等を備え、また、繰り返しの洗濯によっても解れ難くなり、衣類等に固定され、繰り返し使用可能となる。
また、本発明の刺繍ボタンでは、基部の内部には、ベース体が形成される。そして、ベース体は、伸縮性の低い部材であり、その縫製過程にて様々な方向に引っ張られても、その形状が崩れ難い。この構造により、刺繍ボタンは、ベース体を有することで、縫製作業中に、その形状が崩れたりすることが防止される。
また、本発明の刺繍ボタンでは、基部及び壁部は、糸のみから形成される。この構造により、糸として、合成糸以外の天然素材をベースにした生分解性素材の糸等を用いて形成される場合には、脱プラスチック製品となり、環境性に優れた刺繍ボタンとなる。
本発明の刺繍ボタンの製造方法では、縫製用基材に糸を絡ませながら基部及び孔部を形成する工程と、基部とその一部を重畳させながら壁部を形成する工程と、縫製用基材の少なくとも一部を除去する工程と、を有する。この製造方法により、縫製用基材に対して複数の刺繍ボタンを連続して形成することが可能となり、刺繍ボタンの量産が実現される。
また、本発明の刺繍ボタンの製造方法では、縫製用基材にベース体を形成する工程と、を更に備え、孔部を形成する工程では、ベース体の開口領域に対して、その中心側から外側へと略放射状に糸を引っ張りながら縫製を行う。この製造方法により、複数の孔部が、基部の中心の周辺の所望の領域に形成されると共に、衣類等へ固定するための固定用糸が挿通可能な開口部として形成される。
また、本発明の刺繍ボタンの製造方法では、ベース体を形成する工程では、開口領域を囲むように糸をランニングステッチして形成する。この製造方法により、ベース体は、伸縮性の低い部材となり、様々な方向に引っ張られても、その形状が崩れ難くなる。
また、本発明の刺繍ボタンの製造方法では、基部及び壁部は、糸のみから形成される。この製造方法により、刺繍ボタンが取り付けられる衣類等のデザインに応じて、糸の種類や糸の色等を適宜変更することで、様々なデザインの刺繍ボタンが小ロット単位にて製作可能となる。
本発明の一実施形態である刺繍ボタンを説明する上面図である。 本発明の一実施形態である刺繍ボタンを説明する断面図である。 本発明の一実施形態である刺繍ボタンの変形例を説明する(A)上面図、(B)上面図、(C)上面図、(D)上面図、(E)上面図、(F)上面図である。 本発明の他の実施形態である刺繍ボタンの製造方法を説明するフロー図である。 本発明の他の実施形態である刺繍ボタンの製造方法を説明するフロー図である。 本発明の他の実施形態である刺繍ボタンの製造方法を説明する(A)概略図、(B)概略図である。 本発明の他の実施形態である刺繍ボタンの製造方法を説明する(A)概略図、(B)概略図である。
以下、本発明の一実施形態に係る刺繍ボタン10に関して図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、刺繍ボタン10の厚み方向は、基部11に形成される孔部13の貫通方向である。
図1は、本実施形態の刺繍ボタン10を説明する上面図であり、実際に製作された刺繍ボタン10である。図2は、本実施形態の刺繍ボタン10を説明する断面図であり、図1に示す刺繍ボタン10のA-A線方向の断面を模式的に示す。図3(A)から図3(F)は、本実施形態の刺繍ボタン10の変形例を説明する上面図である。
図1に示す如く、刺繍ボタン10は、機械ミシン(図示せず)を用いて、糸を縫製して形成され、主に、基部11と、基部11の端部11Aに沿って形成される壁部12と、基部11の中心領域に形成される孔部13と、を有する。そして、刺繍ボタン10は、シャツ、ブラウス、上着、コート等の衣類の台衿部、前立て部や袖部等に糸により縫い付けられ固定される。ユーザは、上記衣類を着る際には、刺繍ボタン10を相対する衣類のボタンホール部に係止し、一方、上記衣類を脱ぐ際には、刺繍ボタン10をボタンホール部から離脱させる。また、ユーザは、上記衣類を家庭にて洗濯し、乾燥させ、あるいは、クリーニング店にて洗濯し、乾燥させると共に、必要に応じて上記衣類に対してアイロン掛けを行う。
上記使用方法により、刺繍ボタン10は、ボタンホール部に対して着脱を繰り返し、また、重ね着した際には他の衣類と繰り返し擦れ、また、洗濯の際には洗剤水等の水に晒され、乾燥機にて高温状態に晒される。そのため、刺繍ボタン10としては一定の耐久性、強度や硬度が求められ、従来には、本実施形態のように糸を縫製して製作される刺繍ボタン10は存在しなかった。尚、本実施形態の刺繍ボタン10は、樹脂製のボタン等と同様に、一定の耐久性、強度や硬度を満たす。また、刺繍ボタン10は、従来の樹脂製ボタンや金属製ボタンと同様に、衣類だけでなく、鞄やその他の小物類等、様々なものに用いられる。
ここで、本実施形態の機械ミシンとは、家庭用ミシンや工業用ミシンを含む概念である。また、糸とは、上記機械ミシンにて縫製可能な糸であり、例えば、コットン(綿)、リネン(麻)、シルク(絹)、カシミヤ(山羊)、ウール(羊毛)等の天然繊維から成る糸、レーヨン、キュプラ等の再生繊維から成る糸、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン等の化学繊維から成る糸、また、金や銀等の金属またはシリカ、アルミナ等のセラミックス、炭素繊維等から成る無機繊維、及びそれらの無機材料等を被覆または複合した繊維から成る糸等、公知の糸が本発明に適用可能である。
図2に示す如く、基部11は、刺繍ボタン10の略全面に渡り配設される土台部分である。詳細は後述するが、刺繍ボタン10は、刺繍時に用いられる水溶性不織布等の縫製用基材22(図5参照)に対して糸を縫製して形成される。この製造方法により、基部11の厚み方向の略中心には、上記縫製用基材22の表裏面に形成されるベース体21が存在する。そして、ベース体21は、ランニングステッチにより形成され、伸縮性の低い部材となることで、その上面視の形状が基部11と略同形状となる。
尚、ベース体21は、ランニングステッチを用いて形成される場合に限定するものではなく、クロスステッチ、千鳥ステッチ、ジグザグステッチ、バックステッチやサテンステッチを用いて形成される場合や上記各種ステッチを組み合わせて形成される場合でも良い。
基部11は、その厚み方向において、ベース体21に対して糸を重畳して縫製することで、所望の厚みとなる。具体的には、基部11は、機械ミシンを用いて形成されることで、ベース体21の表面には上糸が密接に重畳して縫製され、一方、ベース体21の裏面には下糸が密接に重畳して縫製される。そして、基部11は、ベース体21を略中心にして、ベース体21の表裏面に略同等の厚みであり、略同形状に形成される。
基部11の縫製方法は後述するが、糸の縫製により基部11の厚みを実現するために、様々な縫製パターンを組み合わせ、糸を様々な方向に縫製し、糸同士を複雑に絡ませることで、糸の密集度が高まり、刺繍ボタン10として一体化し、その硬度、強度や耐久性が実現されると共に、解れ難い構造が実現される。
壁部12は、基部11の端部11Aに沿って形成される。壁部12の大部分が、基部11の径方向において、その間に基部11を挟み込むように重畳して形成される。そして、壁部12も基部11と同様に、機械ミシンを用いて形成されることで、基部11の表面には上糸が密接に重畳して縫製され、一方、基部11の裏面には下糸が密接に重畳して縫製される。そして、壁部12は、ベース体21を略中心にして、ベース体21の表裏面に略同等の厚みであり、略同形状に形成される。
壁部12の縫製方法は後述するが、糸の縫製により壁部12の厚みを実現するために、様々な縫製パターンを組み合わせ、糸を様々な方向に縫製し、糸同士を複雑に絡ませることで、糸の密集度が高まり、刺繍ボタン10として一体化し、その硬度、強度や耐久性が実現されると共に、解れ難い構造が実現される。
特に、壁部12の大部分は、その間に基部11を挟み込むように重畳して形成されることで、壁部12の形成領域は、刺繍ボタン10の中で最も厚い領域となり、最も硬度を有する領域となる。そして、壁部12は、基部11の端部11Aに沿って一環状に形成され、壁部12は、壁部12と重畳しない基部11の中央領域よりも、その厚み方向に突出して形成される。この構造により、刺繍ボタン10では、壁部12の形成領域の硬度が高くなり、端部11Aに沿って連続して形成されることで、刺繍ボタン10は、その厚み方向に折れ曲がれ難くなる。
上述したように、衣類等に固定された刺繍ボタン10は、ボタンホール部に対して繰り返し着脱される際に、その厚み方向に対して、ユーザにより繰り返し曲げ応力が加えられる。このとき、壁部12が基部11の端部11Aに沿って存在することで、刺繍ボタン10は略平板形状を維持し、ボタンホール部に対して確実に係止される。
また、壁部12の端部12Aは、基部11の端部11Aを外側から被覆して形成される。図2では、説明の都合上、端部11A,12A間に隙間を設けて示すが、実際には、糸が基部11の径方向に引っ張られながら重畳して形成されることで、壁部12は基部11に接触した状態となる。尚、縫製用基材22として水溶性不織布を用いた場合の乾燥工程や衣類と一緒に洗濯された際の乾燥時等にも糸が収縮し、壁部12は基部11に接触し、密着した状態となる。
更には、図1に示すように、壁部12の表皮層を構成する糸は、刺繍ボタン10の径方向に一定の幅にて縫製されると共に、刺繍ボタン10の周方向に、例えば3周程度連続して縫製される。この縫製方法により、壁部12は、糸同士が密接に形成されると共に、上述したように基部11の端部11Aとも密接に形成される。その結果、刺繍ボタン10が繰り返し使用されても、壁部12の端部12Aは、端部11Aと密接することで解れ難くなる。そして、刺繍ボタン10の耐久性が向上される。
ここで、試験試料として、レーヨンで縫製した刺繍ボタン10とキュプラで縫製した刺繍ボタン10とを準備し、以下の試験を行った。刺繍ボタン10に対して、耐光試験(4級試験、JIS-L-0842、紫外線カーボンアーク灯光)、家庭洗濯試験(JIS-L-1930 C4Mに準じる、花王株式会社製洗剤を使用)、洗濯試験(JIS-L-0844・A-2号に準じる(50℃にて30分間)、合成洗剤1号を使用)、ドライクリーニング試験(パークロルエチレン JIS-L-0860:2008 A-1法(30℃にて30分間))、ドライクリーニング試験(石油系ドライソルベント JIS-L-0860:2008 B-1法(30℃にて30分間))、ホットプレッシング試験(JIS-L-0850に準じる、A-1法(110℃にて15秒間)、湿潤試験・強試験(湿式))、スチームプレス試験(スチーム4秒及びバキューム4秒を3回、蒸気圧は約4.5kg/cm)、摩擦試験(JIS-L-0849を応用しI型クロックメータを使用、乾式・湿式各10回 摩擦用白綿布を2枚重ねて試験)、ジャングル試験(低温恒温湿気を用い、温度70℃、湿度90%にて96時間保持)の各試験を実施した。尚、上記家庭洗濯試験では、その試験方法として、40℃の水に洗剤、被洗物を入れて洗濯し、脱水する工程、次に、水に被洗物を入れて濯ぎ、脱水する工程、次に、水に被洗物を入れて濯ぎ、脱水する工程、最後に、衣類乾燥機(温度約60℃)にて1時間乾燥する工程を行う。
上記試験は、従来の樹脂製ボタン等に対して行われる試験であり、上記試験の結果、レーヨンで縫製した刺繍ボタン10及びキュプラで縫製した刺繍ボタン10において、全て合格値をクリアし、実用可能であると共に、樹脂製ボタンと遜色ない結果が得られた。
孔部13は、図1にも示すように、基部11の中心CLの周囲に、例えば、4つ形成され、刺繍ボタン10を衣類等に固定する際の固定用糸の係止孔として用いられる。図2に示すように、孔部13は、基部11をその厚み方向(紙面上下方向)に貫通して形成され、その内周面が、厚み方向に延在する糸により形成される。つまり、孔部13は、糸によって囲まれた開口部となる。
詳細は後述するが、孔部13は、基部11を形成する際に一緒に形成され、ベース体21の開口領域41,42,43,44(図5参照)の中心側から外側へと糸を略放射状に引っ張りながら縫製して形成される。この縫製方法により、基部11の中心CL及び周辺領域であり、4つの孔部13の間には、糸が密集して厚くなる補強部14が形成される。つまり、孔部13は、開口領域41~44の形成領域に対して形成され、開口領域41~44は、孔部13を形成する際の元となる領域である。
具体的には、図1に示すように、4つの孔部13は、上面視略十字形状の基部11の区画部15にて区画される。区画部15は、基部11の一部であり、糸を縫製して形成される。そして、区画部15の中心には、上記補強部14が形成されると共に、区画部15の厚み方向の略中心にはベース体21の上面視略十字形状の補強芯部45(図5参照)が形成される。
この構造により、刺繍ボタン10は、シャツ等の衣類の着脱の際に、衣類へ固定する固定用糸により繰り返し引っ張られ、固定用糸が、区画部15や補強部14へと食い込むが、補強部14は、厚み方向に延在する糸が密接に絡み合い、厚く形成されることで、所望の引張強度が実現される。また、区画部15においても、その芯部に伸縮性の低いベース体21の補強芯部45が存在することで、せん断破壊に強くなり、所望の引張強度が実現される。
ここで、上記試験と同様に、試験試料として、レーヨンで縫製した刺繍ボタン10とキュプラで縫製した刺繍ボタン10とを準備し、ミネベアミツミ株式会社のTGE-5kNを試験機として用い、引張強度試験を行った。刺繍ボタン10の孔部13にピアノ線を挿通し、刺繍ボタン10を上記試験機の試料固定治具に固定した状態にて、引張速度50mm/分にて引っ張った。その試験結果として、破壊値の平均値として、レーヨンで縫製した刺繍ボタン10は5.90kgf、キュプラで縫製した刺繍ボタン10は5.54kgfという結果が得られた。尚、この引張試験での合格値は、4.00kgfであり、十分に実用可能な数値が得られた。また、上記試験試料としての刺繍ボタン10は、直径11mm~13mm、孔部13の形成領域の基部11の厚みが2mm~3mmである。
次に、図3(A)から図3(F)に示す如く、刺繍ボタン10の形状としては、図1に示す上面視略円形状に限定されるものではない。機械ミシンを用いて縫製可能なデザインであれば、様々な形状の刺繍ボタン10を形成することが出来る。そして、図3(A)から図3(F)に示す刺繍ボタン10においても、同様に所望の耐久性、強度や硬度を満たす。
例えば、図3(A)では、図1に示す円形状の壁部12の周囲にスカラップ刺繍による柄部31を形成した形状である。また、図3(B)では、図1に示す円形状の壁部12の周囲に花びら柄部32を形成した形状である。また、図3(C)では、円形状の基部11の周囲に、その外周に壁部12を有する花びら柄部33を形成した形状である。また、図3(D)では、刺繍ボタン10の形状がフットボール形状である。また、図3(E)では、刺繍ボタン10の形状が八角形形状である。また、図3(F)では、刺繍ボタン10の形状が四角形形状である。尚、図3(E)及び図3(F)に示すように、刺繍ボタン10の形状は、その他の多角形形状とすることも出来る。
次に、図4から図7を用いて、本発明の他の実施形態に係る刺繍ボタン10の製造方法に関して詳細に説明する。尚、刺繍ボタン10の製造方法の説明の際には、図1から図2を用いて説明した刺繍ボタン10の説明を参照し、刺繍ボタン10と同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
図4は、本実施形態の刺繍ボタン10の製造方法を説明するフロー図である。図5は、本実施形態の刺繍ボタン10の製造方法の縫製工程を説明するフロー図である。図6(A)及び図6(B)は、本実施形態である刺繍ボタン10の基部11及び孔部13の縫製方法を説明する概略図である。図7(A)及び図7(B)は、本実施形態の刺繍ボタン10の壁部12の縫製方法を説明する概略図である。
図4に示す如く、ステップS1において、作業者は、例えば、パーソナルコンピューターを操作し、刺繍ボタン10を縫製するためのデザインデータを生成する。デザインデータは、機械ミシンによる加工条件が設定されたデータである。そして、デザインデータは、ベース体21、基部11、壁部12及び孔部13を形成する際、機械ミシンの作業テーブル上に設置された縫製用基材22(図5参照)に対して、針を打ち込む座標パターン、縫製速度、使用するステッチの種類、送り出す糸の長さ等、刺繍ボタン10を製作するための必要な条件を有する。尚、上記座標パターンでは、針は同じ位置で上下方向を往復するが、作業テーブル上の縫製用基材22を固定する枠体が移動することで実現される。そして、以下の説明では、その説明の都合上、縫製作業の際に針が移動する内容として説明を行う。
ステップS2において、作業者は、機械ミシンによる縫製作業を制御する制御部、例えば、機械ミシンと接続したパーソナルコンピューターへと上記デザインデータを記憶させる。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成され、機械ミシンを制御するための各種演算等を実行する。尚、機械ミシンと接続したパーソナルコンピューターにて、上記デザインデータを生成する場合でも良い。
ステップS3において、作業者は、機械ミシンに対して縫製用の糸、枠体に固定した縫製用基材22等を設置した後、上記パーソナルコンピューターの操作部を操作し縫製作業を開始する。機械ミシンは、上記制御部により制御され、縫製用基材22に対して針を打ち込み、縫製用基材22の裏面側にて回転釜を介して上糸と下糸とを絡めながら縫製を行い、ベース体21、基部11、壁部12及び孔部13を有する刺繍ボタン10を製作する。そして、本実施形態では、枠体内の1枚の縫製用基材22に対して、例えば20個の刺繍ボタン10が連続して形成される。
ステップS4において、機械ミシンでの縫製作業の終了後、作業者は、複数の刺繍ボタン10が形成された縫製用基材22を作業テーブル上の枠体から取り出し、縫製用基材22から個々の刺繍ボタン10を取り出す。
ここで、縫製用基材22として、水溶性不織布や熱剥離フィルムが用いられる。水溶性不織布としては、例えば、シンワ株式会社の水溶性不織布新タイプや三菱ケミカルホールディングスグループのハイセロン(製品名称)等が用いられる。また、熱剥離フィルムとしては、刺繍用熱剥離フィルムや農業用フィルム等があり、例えば、パールヨット株式会社のトリックフィルム(製品名称)等が用いられる。
縫製用基材22として水溶性不織布を用いた場合には、作業者は、複数の刺繍ボタン10が形成された水溶性不織布をぬるま湯や水に浸し、刺繍ボタン10の内部に配設される部分を含めて水溶性不織布を溶解させる。その後、作業者は、上記ぬるま湯から刺繍ボタン10を取り出し、刺繍ボタン10に付着する水をふき取る等、刺繍ボタン10の脱水処理を行う。その後、作業者は、自然乾燥や乾燥機を利用して、刺繍ボタン10の乾燥処理を行う。この乾燥作業にて、刺繍ボタン10内の水分が除去されると共に、刺繍ボタン10が全体として収縮することで、基部11と壁部12との密集度が高まる。そして、刺繍ボタン10を構成する糸同士が、密接した状態となることで、刺繍ボタン10としての一定の耐久性が得られ、繰り返し使用されても解れ難くなる。尚、本工程では、刺繍ボタン10の用途に応じて撥水処理を施すことで、刺繍ボタン10の汚れ防止や更なる耐久性向上が実現される。
一方、縫製用基材22として熱剥離フィルムを用いた場合には、作業者は、複数の刺繍ボタン10が形成された熱剥離フィルムを、例えば、180℃~200℃程度に加熱された鉄板上に載置し、刺繍ボタン10の形成領域以外の熱剥離フィルムを溶かす。その後、作業者は、熱剥離フィルムが溶けることで鉄板上にて個々にばらけた状態の刺繍ボタン10を取り出し、刺繍ボタン10の外形面に残存する熱剥離フィルムを除去する。そして、熱剥離フィルムを用いた場合には、刺繍ボタン10の内部に熱剥離フィルムが残存することで、刺繍ボタン10としての強度に寄与し、また、刺繍ボタン10の糸の解れ難さにも寄与する。
ステップS5において、取り出した個々の刺繍ボタン10の外観検査を行い、その検査結果後には刺繍ボタン10の仕上げ作業を行う。そして、刺繍ボタン10は顧客へと納品される。
図5に示す如く、刺繍ボタン10の縫製工程では、ステップS11において、縫製用基材22の表裏面にベース体21を形成する。ベース体21は、刺繍ボタン10の土台となる部分であり、その上面視において、基部11と略同じ大きさであり、略同形状の円形状に形成される。そして、ベース体21は、ランニングステッチにて形成されることで伸縮性の低い部材となる。
また、図示したように、ベース体21の中心領域には、4つの開口領域41~44が形成され、その開口領域41~44は、それぞれ略十字形状の補強芯部45により区画される。そして、補強芯部45は、ランニングステッチにより縫製用基材22に対して糸が2列に隣接して形成される。尚、上述したように、補強芯部45は、区画部15(図1参照)でのせん断破壊を防止するための部材であり、上記隣接する糸の本数は、所望の引張強度に応じて任意に設計変更が可能である。
ステップS12において、ベース体21に対して、クロスステッチ、千鳥ステッチ、ジグザグステッチ、バックステッチやサテンステッチ等、各種ステッチによる、あるいは各種ステッチを組み合わせた様々な縫製パターンを用いて孔部を形成する。また、同工程にて、糸を開口領域41~44の中心側から、例えば、八方向等の多方向の外側へと引きながら縫製することで、孔部13を形成する。基部11の厚みとしては、例えば、ベース体21の表裏面側にそれぞれ1mm~3mm程度となり、総合的に2mm~6mm程度となる。
上述したように、縫製用基材22の表裏面側のベース体21は、ランニングステッチにより形成されることで、その伸縮性が低くなり、基部11や壁部12の縫製工程の間、その形状が維持される。そして、針が上記デザインデータの座標データ通りにベース体21の所望の箇所に打ち込まれることで、基部11とベース体21とが、上面視にてずれることなく形成される。また、ベース体21が、基部11の厚み方向の略中心部に配置されることで、基部11の形状が崩れることなく、基部11はベース体21と略同形状に形成される。
ここで、図6(A)及び図6(B)に示す如く、孔部13は、基部11を形成する工程にて同時に形成される。本実施形態では、各開口領域41~44内に打ち込まれた針が、その後、開口領域41~44の外側の基部11の端部11A近傍に打ち込まれる。あるいは、各開口領域41~44内に打ち込まれた針が、他の開口領域41~44内へと打ち込まれる。つまり、孔部13の縫製作業では、例えば、送り出す糸の長さ等を調整すると共に、開口領域41~44の中心側から放射状に開口領域41~44の外側へと糸を引っ張り、開口領域41~44を外側へと広げるように針を移動させる。尚、図6(A)及び図6(B)の説明では、機械ミシンの針が反時計回り方向に進む場合について説明するが、この場合に限定するものではなく、デザインデータの製作により、針が時計回り方向に進む場合でも良い。
図6(A)では、例えば、開口領域41~44をベース体21の外側へと広げる場合の縫製パターンの1つを示す。開口領域41では、針は、P1,P2,P3,P4,P2,P5,P6,P2,P7,P8,P2,P9,P10,P2,P11,P12,P2,P13,P14,P2,P15,P16,P2の順序にて反時計回りに進む。
そして、P1とP3との離間距離、P4とP5との離間距離、P6とP7との離間距離、P8とP9との離間距離、P10とP11との離間距離、P12とP13との離間距離、P14とP15との離間距離は、針の打ち込む位置が重ならない程度、例えば、針の太さ1本分となる。その一方、P3とP4との離間距離、P5とP6との離間距離、P7とP8との離間距離、P9とP10との離間距離、P11とP12との離間距離、P13とP14との離間距離、P15とP16との離間距離は、例えば、針の太さ5本分となる。
尚、P2は、開口領域41の略中心である。そして、P1とP16の位置は、それぞれP2との結ぶラインが、隣接する開口領域42,44に若干引っ掛かる程度のぎりぎりの位置である。また、上述したP1~P16のピッチ間の設定は、刺繍ボタン10の大きさや形状等により任意の設計変更が可能である。
次に、開口領域41での縫製作業を終えた後、開口領域42においても同様に、孔部13の縫製作業を行う。図示したように、針は、P2からP21へと移動した後、P21,P22,P23,P24,P22,P25,P26,P22,P27,P28,P22,P29,P30,P22,P31,P32,P22,P33,P34,P22,P35,P36,P22の順序にて反時計回りに進む。尚、P21~P36の位置関係は、上述したP1~P16の位置関係と同じであり、ここではその説明を省略する。
次に、開口領域42での縫製作業を終えた後、開口領域43及び開口領域44においても、順次、同様の縫製作業を繰り返す。そして、刺繍ボタン10の形状や厚さにもよるが、開口領域41~44の1サイクルを終えた後、複数回、このサイクルを繰り返す場合でも良く、また、図6(B)にて説明する別の縫製パターンに移行する場合でも良い。
上述したように、孔部13の縫製工程では、開口領域41~44の中心側から外側へと針を移動させる際に、糸の送り出し量は、例えば、P2とP3間の直線距離分として設定されるが、基部11が厚みを有することで、P2とP3間の糸は、その厚み分だけ厚み方向に湾曲し、上記設定量よりも長く必要となる。その結果、P2の座標位置に落された糸は、ベース体21が存在しないため、開口領域41の外側へと引っ張られることで、縫製用基材22が破けたり、あるいは縫製用基材22が開口領域41の外側へ寄せられる。そして、針が上記P1からP16までの経路を辿ることで、縫製用基材22のみから成る開口領域41では、孔部13としての開口部が形成される。尚、その他の開口領域42~43でも同様に、孔部13としての開口部が形成される。尚、P2やP22のように、開口領域41~44内に打ち込まれる針の位置を若干ずらしながら、上記孔部13の縫製作業を行う場合でも良い。
図6(B)では、例えば、開口領域41~44をベース体21の内側へと広げる場合の縫製パターンの1つを示す。針は、P41,P42,P43,P44,P45,P46,P47,P48,P49,P50,P51,P52,P53,P54,P55,P56,P57,P58,P59,P60,P61の順序にて進む。そして、開口領域41~44の内側では、針を打ち込む位置が重ならないように、開口領域41~44の外側から内側へと徐々に移行しながら縫製を行う。
図示したように、例えば、針は、開口領域41~44間を2周反時計回りに移動した後、開口領域41~44の略中心を通過するように対角線方向に移動を繰り返すことで、開口領域41~44の内側においても、糸が略放射状に縫製される。
そして、P41~P61の1サイクルを終えた後、針の打ち込む位置を開口領域41~44の中心側へ近づけながら、複数回このサイクルを繰り返す。その後、図6(A)にて説明した上記縫製パターンに移行する場合でも良い。あるいは、図6(A)及び図6(B)に示す上記縫製パターンの他に、孔部13の周囲の基部11の厚みを実現するため、円周方向に千鳥ステッチやジグザグステッチを数周回行う縫製パターンや、その他の縫製パターンを織り交ぜることで、糸同士が様々な方向にて複雑に絡み合うことで、ベース体21と基部11とが一体化し、また基部11自身も一体化する。
上記縫製方法により、基部11では、所望の厚みや糸の高い密集状態が実現され、刺繍ボタン10は、糸が解れ難くなると共に、刺繍ボタン10として所望の形状を維持すると共に、ボタンとしての機能を満たすための硬度、耐久性や強度が得られる。
一方、孔部13は、開口領域41~44の中心側から略放射状に外側へと糸を引っ張りながら縫製されることで、開口部として形成される。そして、開口領域41~44の内側に針を打ち込む場合には、上糸及び下糸はそれぞれ孔部13の貫通方向に延在し、孔部13の内側面は、孔部13の貫通方向に延在する糸により形成される。上述したように、ベース体21は伸縮性の低い部材であり、開口領域41~44の位置が大きくずれることなく維持されることで、孔部13の位置は、基部11の中心CLの周囲に大きくずれることなく形成される。
ステップS13において、基部11に対して、様々な縫製パターンを用いて、様々な方向に糸を絡ませながら、壁部12を形成する。壁部12の縫製工程では、機械ミシンの針は、基部11を貫通し、基部11の裏面側にて、回転釜を介して上糸と下糸とを絡ませる作業を繰り返す。そして、壁部12は、基部11の端部11Aに沿って、基部11と重畳しながら一環状に形成され、4つの孔部13は、壁部12の内側の基部11に形成された状態となる。
図7(A)では、壁部12の厚みを増すための縫製パターンの1つを示す。一点鎖線51の間の領域が壁部12の形成領域である。そして、針は、壁部12の形成領域において、P71,P72,P73,P74,P75,P76,P77,P78の順序にて反時計回り進む。このとき、P71とP72との間では、例えば、周方向に延在する糸が、径方向に隣接するように5回のバックステッチを行う。次に、P72とP73との間でも同様に、周方向に延在する糸が、径方向に隣接するように5回のバックステッチを行う。そして、同様の縫製作業をP77とP78との間まで繰り返し、1サイクルとする。その後、針の打ち込む位置が重ならない様に、最初のP71の位置を反時計回り方向にずらしながら、このサイクルを壁部12の形成領域内にて、例えば3周繰り返すことで、糸同士が厚み方向へと重畳し壁部12の厚みが増大する。
図7(B)では、壁部12の厚みを増すための別の縫製パターンの1つを示す。一点鎖線51にて示す壁部12の形成領域において、基部11と重量するように、反時計回りに一定ピッチにて千鳥ステッチを行う。そして、反時計回りに千鳥ステッチを1周する縫製作業を1サイクルとし、針の打ち込む位置が重ならない様に、反時計回り方向にずらしながら、このサイクルを壁部12の形成領域内にて、例えば3周繰り返す。この縫製パターンは、図7(A)に示す縫製パターンとは糸の縫製方向が異なることで、糸同士が複雑に絡み合い、基部11と壁部12とが一体化すると共に、糸同士が厚み方向へと重畳し壁部12の厚みが増大する。尚、図7(A)及び図7(B)の説明では、機械ミシンの針が反時計回り方向に進む場合について説明するが、この場合に限定するものではなく、デザインデータの製作により、針が時計回り方向に進む場合でも良い。
その後、図1に示すように、壁部12では、図7(A)及び図7(B)にして縫製した糸を被覆するように、糸が基部11の径方向に一定幅にて形成されるように、基部11の端部11Aに沿って一環状に縫製を行う。このとき、周方向に隣接する糸の一部が重畳し、あるいは接触するように、隙間なく糸を縫製する。そして、反時計回りに1周する縫製作業を1サイクルとし、このサイクルを壁部12の形成領域内にて、例えば3周繰り返すことで、糸が周方向や厚み方向にて密接に重畳した壁部12が形成される。
上述したように、糸の縫製方向を様々な方向とし糸同士を複雑に絡ませながら、糸の密集度を高めることで、所定の硬度、強度や耐久性を有する基部11及び壁部12が形成される。特に、壁部12の大部分は、その間に基部11を挟み込むように、基部11と重畳して形成されることで、刺繍ボタン10を衣類等に取り付け繰り返し使用する際に、刺繍ボタン10が折れ曲がれ難くなる。
また、刺繍ボタン10は、上述したように、糸を縫製して形成されることで、樹脂製ボタンと同形状の場合には、例えば、その重さが1/3程度に軽量化される。この構造により、刺繍ボタン10が、ブラウス等の柔らかいシャツの前立て部に取り付けられた場合でも、前立て部が前方へと垂れ難くなり、シャツのシルエットを保つことが出来る。
また、刺繍ボタン10は、ボタンとして機能するための所定の硬度や強度は有するが、樹脂製ボタン等と比較して柔軟性を有する。この構造により、高齢の方や指の力が弱い方でも、刺繍ボタン10を衣類のボタンホール部に係止させ、あるいは、刺繍ボタン10を衣類のボタンホール部から離脱させる作業が容易となる。
また、刺繍ボタン10は、機械ミシンに設置する糸の種類や糸の色を適宜変更し、デザインデータを選択することで、様々なデザインとして形成される。そして、上記糸の変更により、残存した糸は、次の縫製の機会に機械ミシンに再設定することで使用可能である。一方、樹脂製ボタンの場合には、デザインを変更する場合には、金型の清掃作業や樹脂材料の調合作業、射出条件の設定作業等、その変更作業には時間と労力を有する。更には、デザインの形状が異なる場合には、各デザインに対して専用の金型が必要となり、製造コストが大幅に増大する。以上より、刺繍ボタン10では、樹脂製ボタン等と比較して、衣類等のデザインに応じて、糸の種類や糸の色等を適宜変更することで、簡易に様々なデザインの刺繍ボタンが小ロット単位にて製作可能となる。
また、刺繍ボタン10の製造方法では、機械ミシンに複数の糸を設定して適宜糸を選択しながら製作することが出来る。例えば、太さの異なるレーヨン糸を準備し、基部11や壁部12の強度や厚みが必要な箇所には太いレーヨン糸を使用し、刺繍ボタン10の意匠面に柄を形成する際には、細いレーヨン糸を用いることで、個性ある刺繍ボタン10を製作することも可能となる。また、レーヨン糸等の刺繍糸では、何百種類のカラーバリエーションを有し、機械ミシンへの糸の取り付け作業により、容易に様々なカラーバリエーションの刺繍ボタン10が製作される。
尚、本実施形態では、縫製用基材22の表裏面にランニングステッチ等を用いてベース体21を形成し、ベース体21をベース材として刺繍ボタン10を形成する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、ベース体21の代用材料として、布地、生地、フェルト、フィルム等のベース材を用い、その表裏面に基部11、壁部12及び孔部13を形成し、刺繍ボタン10とする場合でも良い。そして、ベース材としては、布地等のように予め開口領域41~44が形成される場合でも良く、あるいは、フィルムのように縫製工程にて破くことが可能な材料の場合には予め開口領域41~44が形成されない場合でも良い。上述したように、縫製用基材22表面にベース材を形成し、ベース材を被覆するように刺繍ボタン10を形成することで、刺繍ボタン10の外形も崩れ難くなると共に、所望の強度、耐久性や硬度等を備える。
また、刺繍ボタン10では、基部11に4つの孔部13を形成する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。孔部13は、刺繍ボタン10を衣類等へ固定するための係止孔であり、衣類等のデザインに合わせて、例えば、2つや3つの場合でも良く、任意の設計変更が可能である。
また、刺繍ボタン10は、糸を縫製して形成される場合について説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、公知の樹脂の含浸技術を用いて、刺繍ボタン10に樹脂を含浸させることで、刺繍ボタン10としての硬度を高めると共に、糸を解れ難くする場合でも良い。その結果、樹脂が含浸された刺繍ボタン10は、その強度や耐久性が高められる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
10 刺繍ボタン
11 基部
11A 端部
12 壁部
13 孔部
14 補強部
15 区画部
21 ベース体
22 縫製用基材
41,42,43,44 開口領域
45 補強芯部

Claims (8)

  1. 刺繍ボタンであって、
    複数の孔部が形成されると共に、縫製した糸から成る基部と、
    前記基部の一部と重畳するように、前記基部の端部に沿って形成されると共に、縫製した前記糸から成る壁部と、を有し、
    前記孔部は、前記糸によって囲まれた開口部であることを特徴とする刺繍ボタン。
  2. 前記孔部は、前記壁部より内側の前記基部に対して、前記基部を貫通して形成され、
    前記壁部は、前記基部よりも前記孔部の貫通方向に突出して形成されることを特徴とする請求項1に記載の刺繍ボタン。
  3. 前記基部の内部には、ベース体が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刺繍ボタン。
  4. 前記基部及び前記壁部は、前記糸のみから形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の刺繍ボタン。
  5. 縫製用基材を準備し、前記縫製用基材に対して糸を縫製し、所望の厚みを有する基部を形成すると共に、前記基部に複数の孔部を形成する工程と、
    前記基部の一部と重畳するように前記糸を重ねて縫製し、前記基部の端部に沿って壁部を形成する工程と、
    少なくとも前記縫製用基材の一部を除去し、前記基部と前記壁部とを有する刺繍ボタンを形成する工程と、を有することを特徴とする刺繍ボタンの製造方法。
  6. 前記縫製用基材に対して前記糸を縫製して前記孔部の元となる開口領域を複数有するベース体を形成する工程と、を更に備え、
    前記基部及び前記孔部を形成する工程では、前記ベース体に対して前記糸を重ねて縫製すると共に、前記開口領域の中心側から外側へと向けて放射状に前記糸を引っ張りながら縫製することを特徴とする請求項5に記載の刺繍ボタンの製造方法。
  7. 前記ベース体を形成する工程では、前記開口領域を囲むように前記糸をランニングステッチして形成することを特徴とする請求項6に記載の刺繍ボタンの製造方法。
  8. 前記基部及び前記壁部は、前記糸のみから形成されることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の刺繍ボタンの製造方法。
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