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JP7330071B2 - 鉄筋コンクリート構造物の補強方法 - Google Patents
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JP7330071B2 - 鉄筋コンクリート構造物の補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄筋コンクリート構造物の補強方法に関する。
例えば、旧耐震設計法により設計され、現在供用されている鉄筋コンクリート構造物においては、現在の耐震設計法に示されるレベル2地震動等に相当する地震力を受けた際に、部材のせん断耐力や靱性が不足する可能性がある。特に、供用中の地下構造物等においては、補強施工を構造物の内側からしかできず、実際にせん断補強を行うことが難しい。
そこで、例えば背面に地山などが存在し、構造物の内側からしか補強施工ができない地中の既存鉄筋コンクリート構造物(ボックスカルバート等)の内側から削孔を行い、その孔内に可塑性グラウト等の充填材を先充填し、その後、異形棒鋼等の鋼棒の両端にプレート等が摩擦圧接により接合された、後施工プレート定着型せん断補強鉄筋(PHb :Post-Head-bar、ポストヘッドバー、尚、ポストヘッドバーは登録商標)等の補強鉄筋を差し込み、硬化させることにより、せん断補強鉄筋と鉄筋コンクリート構造物を一体化し、部材のせん断耐力を向上させ、地震時の靱性を確保する補強施工が行われている。
上記補強施工において、鉄筋コンクリート構造物の側壁等に対して横向きに孔を削孔し、充填材を充填し、補強鉄筋を横向きに挿入する、所謂横向き補強施工においては、孔に挿入された補強鉄筋の落下の恐れがないことから、孔に充填材を充填後、孔の途中位置(例えば、構造物の内側にある鉄筋当たりの位置)までの長さの補強鉄筋を挿入し、充填材の硬化を待つことなしに、補強鉄筋の端部(挿入側端部)と構造物の壁面までの間の隙間(例えば、かぶり相当の隙間)に、孔のかぶり部を閉塞する充填材を充填することが可能になる。
一方、鉄筋コンクリート構造物の天井等において上向きに孔を削孔し、充填材を充填し、補強鉄筋を上向きに挿入する、所謂上向き補強施工においては、孔に上向きに挿入された補強鉄筋の落下の恐れがあることから、補強鉄筋を孔に挿入後、補強鉄筋を下方から押さえるパッカー等が孔に挿入される。パッカー等を挿入した後、充填材の硬化を待つ必要があることから、例えば、一日の硬化時間を経て、翌日にパッカーを撤去し、上記するように孔のかぶり部を閉塞する充填材を充填することになる。従って、上向き補強施工では、横向き補強施工に比べて施工時間を要するといった課題が内在する。
ここで、特許文献1には、既存の鉄筋コンクリート構造物の上向きに開けた削孔に、せん断補強筋等の棒部材を上向きに挿入する場合において、棒部材の落下を防止することにより、従来の落下防止治具等の準備や施工を不要にして、工期短縮とコスト削減を可能にする、棒部材の上向き固定方法が提案されている。具体的には、鉄筋コンクリート構造物の上向きに開けた削孔に棒部材を上向きに挿入する場合において、棒部材の周囲に、その先端部側から後端部側に向けて延びる針部材を複数本設けておき、削孔に棒部材を上向きに挿入して、削孔面に棒部材周囲の針部材を食い込ませる固定方法である。ここで、針部材は、棒部材の先端部と後端部の周囲にそれぞれ設け、針部材を、棒部材への装着具の周囲に三本以上設けることにしている。
特開2016-183501号公報
特許文献1に記載の棒部材の上向き固定方法では、鉄筋を固定するための針部材が鉄筋や定着体の周囲に存在している。そのため、鉄筋を挿入する際に、針部材の周囲にモルタルが未充填となる空隙が生じる恐れがある。また、せん断補強効果を発揮するためには、充填モルタルを介して鉄筋の引張力や定着体の支圧力をコンクリートに伝達させることが肝要であるが、この伝達経路に異物である針部材が存在することや、上記する理由によって空隙が存在することにより、上記する引張力や支圧力の伝達を阻害する恐れもある。
さらに、鉄筋を固定するための針部材は、先端部側から後端部側に向けて延びる形状を有しているが、針部材が孔壁に掛かりながら、鉄筋を支持する強度を要することからこの針部材を鋼製の部材としたいものの、定着体の下側に鋼製の針部材を配置すると、鋼製の延び出した部分がかぶり部分を侵食する可能性があり、針部材を介した鉄筋の腐食に繋がり得る。
本発明は、既設の鉄筋コンクリート構造物を上向きに補強する補強方法に関し、せん断補強効果に優れ、補強鉄筋の腐食の恐れがなく、可及的に短時間に補強施工を実現することのできる、鉄筋コンクリート構造物の補強方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一態様は、
既設の鉄筋コンクリート構造物の下面から補強鉄筋を上向きに施工して鉄筋コンクリート構造物を補強する、鉄筋コンクリート構造物の補強方法であって、
前記鉄筋コンクリート構造物の前記下面から、上向きに孔を削孔する削孔工程と、
前記孔に充填材を充填する充填工程と、
前記補強鉄筋を前記孔に挿入してその下端を該孔の途中位置に位置決めし、板状弾性体を該孔に挿入して該孔の壁面に係止させ、該補強鉄筋を該板状弾性体により支持する挿入支持工程と、を有することを特徴とする。
本態様によれば、補強鉄筋を孔に挿入してその下端を削孔された孔の途中位置に位置決めし、板状弾性体を孔に挿入して孔の壁面に係止させ、補強鉄筋を板状弾性体により支持する挿入支持工程を有することにより、補強鉄筋と孔の間に鉄筋の引張力等の伝達を阻害する異物が無く、従ってせん断補強効果に優れた補強構造を施工することができる。
また、補強鉄筋の下端を支持する部材が板状弾性体であり、可及的に薄い部材であることにより、板状弾性体がかぶり部分を侵食する可能性が低減され、例えば金属製の板状弾性体を介した補強鉄筋の腐食を抑制できる。
さらに、孔に挿入された補強鉄筋を板状弾性体にて支持することにより、従来の施工方法のようにパッカー等を挿入して補強鉄筋の落下を防止し、充填材の硬化を待って例えば翌日にパッカーを撤去ことにより、横向き補強施工に比べて上向き補強施工が施工時間を要するといった課題も解消することができる。そのため、可及的に短時間で上向きの補強施工を実現することができる。
ここで、板状弾性体としては、金属製の板バネや、弾性のある板状の樹脂部材等が挙げられる。この板状弾性体は、鉄筋コンクリート構造物の下面側にある鉄筋のかぶりの外部に配設されもよいし、かぶりの内部に配設されもよい。尚、可塑性グラウト等の充填材を充填する充填工程は、削孔工程の後でかつ挿入支持工程の前の先充填であってもよいし、挿入支持工程の後の後充填であってもよい。
実際の補強方法では、既述する地中のカルバート等の天井等をその下面から上向きに施工するに当たり、電磁波レーダ測定装置等の鉄筋探査機を鉄筋コンクリート構造物の下面に走査させて既存鉄筋の位置を確認した後、既存鉄筋と干渉しない位置に上向き削孔が実施される。
さらに、孔のうち、板状弾性体よりも下方における充填材が満たされていない領域(例えば、孔において、既存鉄筋のかぶりに相当する領域)には、充填材が後充填されることにより、孔が充填材により完全に閉塞される。
また、本発明による鉄筋コンクリート構造物の補強方法の他の態様は、前記板状弾性体を、前記鉄筋コンクリート構造物の前記下面側にある鉄筋のかぶりの外部に位置決めすることを特徴とする。
本態様によれば、板状弾性体を、鉄筋コンクリート構造物の下面側にある鉄筋のかぶりの外部に位置決めすることにより、例えば金属製の板状弾性体を介した補強鉄筋の腐食を抑制することができる。ここで、「鉄筋のかぶりの外部」とは、板状弾性体が鉄筋のかぶり内に存在しないことから、既存の鉄筋コンクリート構造物において、下面側の鉄筋よりも板状弾性体が構造物の内側に存在することを意味する。そのため、上記する「補強鉄筋の下端を孔の途中位置に位置決め」することに関しては、補強鉄筋の下端に存在する板状弾性体が既存鉄筋のかぶりの外側に位置するように、当該補強鉄筋の下端が位置決めされることになる。
また、本発明による鉄筋コンクリート構造物の補強方法の他の態様は、前記板状弾性体が金属製であり、
前記挿入支持工程では、先端に磁石を備えた棒状治具の該先端に前記板状弾性体を磁気吸引させ、該棒状治具を介して該板状弾性体を前記孔に挿入することを特徴とする。
本態様によれば、棒状治具の先端に装着された磁石によって、金属製の板状弾性体を磁気吸引した状態で孔に挿入することにより、板状弾性体を落下させることなく、効率的に孔の奥まで挿入することができる。
また、本発明による鉄筋コンクリート構造物の補強方法の他の態様は、前記板状弾性体が一以上のスリットを有していることを特徴とする。
本態様によれば、板状弾性体が一以上のスリットを有していることにより、板状弾性体が孔に挿入される過程で孔壁から挿入反対方向への動摩擦力を受け、この動摩擦力に起因して挿入反対方向へ面外方向に変形しようとした際に、スリットを介して板状弾性体を面内方向へ先行して変形し易くできる。このように、板状弾性体が面外方向へ変形する前に面内方向へ先行して変形し、面外方向への変形が抑制されることにより、板状弾性体が面外方向である挿入反対方向へ変形して、既存鉄筋のかぶりに進入する(かぶりを侵食する)ことを抑制できる。
さらに、板状弾性体が一以上のスリットを有していることにより、板状弾性体を孔に挿入する過程で巻き込まれた空気を、スリットを介して孔の外へ逃がすことができる。そして、このように孔を介して巻き込んだ空気を抜きながら、例えば先充填されている充填材をスリットを介して板状弾性体の下方面側に漏れ出させることにより、板状弾性体と充填材の間に空隙が残ることが抑制される。
ここで、一以上のスリットを有している板状弾性体としては、その平面視形状がH形の形態(この形態では、二つのスリットを有する)、平面視円形で半径方向に延びる一つもしくは複数のスリットを有する形態等が挙げられる。
また、本発明による鉄筋コンクリート構造物の補強構造の一態様は、
既設の鉄筋コンクリート構造物の下面から補強鉄筋が上向きに埋設されている、鉄筋コンクリート構造物の補強構造であって、
前記鉄筋コンクリート構造物の前記下面から上向きに延設している孔と、
前記孔に挿入されている前記補強鉄筋と、
前記補強鉄筋の下端に当接して、前記孔の壁面に係止している板状弾性体と、
前記孔に充填硬化されている充填材と、を有することを特徴とする。
本態様によれば、上向きに延設している孔に挿入されている補強鉄筋が、その下端にあって孔の壁面に係止されている板状弾性体により支持され、孔に充填材が充填硬化されていることにより、補強鉄筋と孔の間に鉄筋の引張力等の伝達を阻害する異物が無く、せん断補強効果に優れた補強構造となる。
また、補強鉄筋の下端を支持する部材が板状弾性体であり、可及的に薄い部材であることにより、板状弾性体がかぶり部分を侵食する可能性が低減され、例えば金属製の板状弾性体を介した補強鉄筋の腐食が抑制された補強構造となる。
尚、本態様の補強構造においても、既述するように、板状弾性体が、鉄筋コンクリート構造物の下面側にある鉄筋のかぶりの外部に位置決めされていれば、例えば金属製の板状弾性体を介した補強鉄筋の腐食がより一層抑制される。
また、板状弾性体が一以上のスリットを有していれば、板状弾性体が面外方向である構造物の下面側に向かって変形することが抑制され、板状弾性体が既存鉄筋のかぶりを侵食しない補強構造が形成される。
本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法によれば、既設の鉄筋コンクリート構造物を上向きに補強する補強方法に関し、せん断補強効果に優れ、補強鉄筋の腐食の恐れがなく、可及的に短時間に補強施工を実現することができる。
実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法において適用される、板状弾性体の一例の斜視図である。 板状弾性体の他の例の斜視図である。 実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法において適用される、棒状治具の先端の磁石に板状弾性体が磁気吸引されている状態を示す斜視図である。 実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一例の工程図である。 図3に続いて、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一例を説明する工程図である。 孔に補強鉄筋を挿入する方法の一例を説明する図である。 図4に続いて、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一例を説明する工程図である。 図6のVII方向矢視図である。 図6に続いて、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一例を説明する工程図である。 図8に続いて、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一例を説明する工程図であり、かつ、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強構造の一例の縦断面図である。
以下、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法と補強構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[実施形態]
<板状弾性体>
はじめに、図1A及び図1Bを参照して、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法において適用されるとともに、実施形態に係る補強構造を形成する、板状弾性体について説明する。ここで、図1A及び図1Bは、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法において適用される、板状弾性体の一例の斜視図である。
図1Aに示す板状弾性体10は、平面視が略H形で薄厚(例えば、0.5mm乃至1mm程度)の金属製の板バネ等により形成される。弾性体本体11に二本のスリット12が開設されることにより、二本の側片11aがそれぞれの中央位置において繋ぎ片11bにて繋がれた構成を有している。
また、各側片11aの外側の隅角部には面取りが施されて湾曲部13が形成されており、隅角部に設けられている各湾曲部13により、鉄筋コンクリート構造物の下面から上向きに削孔される断面円形の孔に対して、板状弾性体10が挿通され易くなっている。
板状弾性体10の平面視における寸法は、板状弾性体10が孔に挿通され易く、かつ、孔の途中位置において板状弾性体10が孔の壁面に係止して補強鉄筋50(図4等参照)を下方から支持できる(程度の係止状態を形成できる)寸法に設定されている。より詳細には、板状弾性体10の素材(金属、樹脂)等により、その変形性能が異なることから、板状弾性体10の素材と孔の寸法との関係、さらには、上記する孔への挿入のし易さと補強鉄筋50を支持した状態で孔に係止されること等を勘案して、板状弾性体10の平面寸法が設定される。尚、二本のスリット12により奏される効果に関しては、以下で詳説する。
一方、図1Bに示す板状弾性体10Aは、金属製で薄厚の円盤状の弾性体本体14により形成され、平面視においてその半径方向に一本のスリット15を有している。板状弾性体10Aの平面視における寸法も、その変形性能や挿入される孔の断面寸法等に基づき、例えば孔よりも若干大き目の寸法に設定される。尚、適用される板状弾性体は、図1A及び図1Bに示す板状弾性体10,10A以外にも、平面視楕円形、平面視十字形等、多様な形状が適用できる。
<棒状治具>
次に、図2を参照して、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法において適用される、棒状治具について説明する。ここで、図2は、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法において適用される、棒状治具の先端の磁石に板状弾性体が磁気吸引されている状態を示す斜視図である。
棒状治具20は、鉄筋コンクリート構造物の下面から上向きに削孔される孔よりも断面寸法が小さく、その先端に磁石21を備えている。補強施工においては、作業員が棒状治具20を把持し、磁石21の先端に金属製の板状弾性体10(もしくは板状弾性体10A等)をX方向に磁気吸引した状態で、孔に板状弾性体10を挿入する。板状弾性体10が磁石21に磁気吸引されていることにより、板状弾性体10が孔の孔壁から動摩擦力を受けながら孔に挿入される際に、板状弾性体10が下方に落下することが抑制される。
<補強方法及び補強構造>
次に、図3乃至図9を参照して、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法と補強構造の一例について説明する。ここで、図3、図4、図6、図8、図9は順に、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一例の工程図であり、図9はさらに、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強構造の一例を示す縦断面図である。
図示する補強対象となる鉄筋コンクリート構造物30は、その背面32に地山Gが存在する地中の既設構造物であり、地下道や地下共同溝等を形成するボックスカルバート等である。そして、鉄筋コンクリート構造物30の有する、例えば天井等において、その下面31から補強鉄筋を上向きに施工して鉄筋コンクリート構造物30を補強する、鉄筋コンクリート構造物の補強方法である。尚、実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法と補強構造が適用される鉄筋コンクリート構造物は、図示例のように地中のボックスカルバート等に限定されるものではない。
図3に示すように、削孔に際して、まず、鉄筋コンクリート構造物30であるボックスカルバートの内部INにいる作業員(図示せず)が、天井の下面31に電磁波等を用いた鉄筋探査機90をY1方向に走査させ、天井の下面側にある鉄筋40の位置を特定する。図示例のボックスカルバート30の天井においては、床版の主筋を形成する、相互に直交するX方向及びY方向に延設する鉄筋40が配筋されている。尚、床版を形成する相互に交差する鉄筋40は、X方向とY方向のいずれか一方の方向に延設する鉄筋40のみが主筋であってもよい。
鉄筋探査機90の走査により特定された鉄筋40の存在しない下面31において、レッグドリル、ドリフター等の削岩機(図示せず)を用いて、作業員が所定径で所定延長の孔35を上向きに削孔する(削孔工程)。尚、図示例では、地山側の鉄筋45の近傍までの長さを有する孔35が削孔されており、下面側の鉄筋40の下面31までのかぶりはsである。
次に、図4に示すように、孔35の開口36から注入ホース(図示せず)を差し込み、可塑性グラウト等の充填材60を先充填する(充填工程)。ここで、「先充填」とは、補強鉄筋50を挿入する前に充填材60を孔35に充填することを意味する。尚、孔35に補強鉄筋50を挿入し、図1A等で示した板状弾性体10等を孔35に挿入して補強鉄筋50を下方から支持させた後に充填材を充填する後充填を適用してもよい。板状弾性体10がスリット12を有していることにより、このような後充填も可能になる。
例えば、孔35において、下面側の鉄筋40よりも若干奥側当たりまでの範囲に充填材60を先充填した後、孔35に対して補強鉄筋50を上向きであるY2方向に挿入する。
ここで、補強鉄筋50は、異形棒鋼等の鋼棒51の両端に鋼製プレート52,53が摩擦圧接により接合された、後施工プレート定着型せん断補強鉄筋である。補強鉄筋50の長さは、例えば、先端の鋼製プレート53が孔35の先端に当接し、後端の鋼製プレート52が下面側の鉄筋40の上方に位置する長さである。より詳細には、後端の鋼製プレート52は、後施工される板状弾性体10がかぶりsを侵さない孔35の途中位置に配設されるようになっており、図示例では、下面側において相互の交差する鉄筋40のうち、上方の鉄筋40と同程度の位置に後端の鋼製プレート52が配設されている。
また、鋼製プレート52,53の直径は孔35の直径よりも小径に設定されており、従って、充填材60が充填されている孔35に補強鉄筋50を挿入した際に、後端の鋼製プレート52の側方から下方に充填材60が僅かに漏れ出し、鋼棒51と鋼製プレート52,53の間の凹凸に充填材60が隙間なく回り込み、充填材60と補強鉄筋50の間に隙間のない態様で補強鉄筋50が充填材60内に埋設される。
この孔35への補強鉄筋50の挿入においては、図5に示すようにエア混入防止カバー80が適用されるのがよい。エア混入防止カバー80は、中央に挿通孔81を備えたドーナツ状を呈し、挿通孔81に通じる一つの半割スリット82を有しており、比較的硬質であってかつ半割スリット82の左右を広げるとY3方向に若干変形し、元に戻る樹脂素材(例えばウレタン)の部材である。
補強鉄筋50を孔35に挿入するに当たり、エア混入防止カバー80の半割スリット82の左右を広げて、挿通孔35に補強鉄筋50の鋼棒51を入れ込み、半割スリット82の左右を元に戻し、左右の側面に開設されているピン孔83にコの字状の繋ぎピン84を差し込んで、エア混入防止カバー80の半割スリット82の左右を固定する。
そして、作業員が下方からエア混入防止カバー80を開口36に押し当てた状態で、補強鉄筋50を孔35へY2方向に挿入していく。このように、エア混入防止カバー80を適用しながら補強鉄筋50を孔35に挿入することにより、補強鉄筋50の挿入の際にエアが孔35に導入されること(エアの巻き込み)を抑制することができる。
次に、図6に示すように、棒状治具20の先端の磁石21に板状弾性体10を磁気吸引させた状態で、棒状治具20を用いて、開口36を介して孔35に上向きのY4方向に板状弾性体10を挿入する。この際、板状弾性体10は、孔35の孔壁に摺接しながら挿入されることから、この挿入過程で孔壁から挿入反対方向への動摩擦力Qを受ける。この動摩擦力Qにより、板状弾性体10は挿入反対方向へ面外方向に変形しようする。
しかしながら、板状弾性体10は二本のスリット12を有していることから、図7に示すように、スリット12を介して板状弾性体10を面内方向であるY5方向へ先行して変形し易くなっている。このように、板状弾性体10が面外方向へ変形する前に面内方向へ先行して変形し、面外方向への変形が抑制されることにより、板状弾性体10が面外方向である挿入反対方向へ変形して、下面側の鉄筋40のかぶりsに進入する(かぶりsを侵食する)ことを抑制することができる。
図8に示すように、板状弾性体10が下面側の鉄筋40のかぶりsを侵食しない態様で、下方の鋼製プレート52と当接し、孔35の孔壁に係止される。板状弾性体10が孔壁に係止された状態において、補強鉄筋50は板状弾性体10により下方から支持される(以上、挿入支持工程)。
このように、補強鉄筋50が板状弾性体10により下方から支持されることにより、従来の施工方法のように、パッカー等を孔に挿入し、充填材の硬化を待って、例えば補強鉄筋の挿入の翌日にパッカーを撤去する必要がなくなり、横向き補強施工と同様に短い施工時間にて上向き補強施工を行うことが可能になる。
尚、板状弾性体10が一以上のスリット12を有していることにより、板状弾性体10を孔35に挿入する過程で巻き込まれた空気を、スリット12を介して孔35の外へ逃がすことができる。そして、このように孔35を介して巻き込んだ空気を抜きながら、例えば先充填されている充填材60をスリット12を介して板状弾性体10の下方面側に漏れ出させることにより、板状弾性体10と充填材60の間に空隙が残ることが抑制される。
図8において、板状弾性体10の下方に充填材60が若干漏れ出しているものの、開口36までの間のかぶりsの領域には、空隙SPが残っている。そこで、図9に示すように、この空隙SPに対して充填材60と同素材の充填材65を充填し、空隙SPを閉塞する。そして、充填材60,65が硬化することにより、補強構造70が施工される。
補強構造70では、補強鉄筋50と充填材60の間に空隙が存在せず、また、補強鉄筋50の周囲に異物が存在していないことから、充填材60を介して補強鉄筋50の引張力や鋼製プレート52,53の支圧力を鉄筋コンクリート構造物30に有効に伝達することができ、せん断補強効果に優れた補強構造となる。また、補強構造70では、補強鉄筋50を下方から支持する金属製の板状弾性体10が既存鉄筋40のかぶりsを侵食していないことから、板状弾性体10を介した補強鉄筋50の腐食が抑制される。
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
10,10A:板状弾性体
11,14:弾性体本体
11a:側片
11b繋ぎ片
12,15:スリット
20:棒状治具
21:磁石
30:鉄筋コンクリート構造物(既設の鉄筋コンクリート構造物、ボックスカルバート)
31:下面
32:背面
35:孔
36:開口
40:鉄筋(既存鉄筋、下面側の鉄筋)
45:鉄筋(既存鉄筋、地山側の鉄筋)
50:補強鉄筋(後施工プレート定着型せん断補強鉄筋)
51:鋼棒(異形棒鋼)
52,53:鋼製プレート
60:充填材(可塑性グラウト)
70:補強構造(鉄筋コンクリート構造物の補強構造)
80:エア混入防止カバー
81:挿通孔
82:半割スリット
83:ピン孔
84:繋ぎピン
90:鉄筋探査機
G:地山
IN:構造物の内側
s:かぶり

Claims (3)

  1. 既設の鉄筋コンクリート構造物の下面から補強鉄筋を上向きに施工して鉄筋コンクリート構造物を補強する、鉄筋コンクリート構造物の補強方法であって、
    前記鉄筋コンクリート構造物の前記下面から、上向きに孔を削孔する削孔工程と、
    前記孔に充填材を充填する充填工程と、
    前記補強鉄筋を前記孔に挿入してその下端を該孔の途中位置に位置決めし、板状弾性体を該孔に挿入して該孔の壁面に係止させ、該補強鉄筋を該板状弾性体により支持する挿入支持工程と、を有し、
    前記板状弾性体が金属製であり、
    前記挿入支持工程では、先端に磁石を備えた棒状治具の該先端に前記板状弾性体を磁気吸引させ、該棒状治具を介して該板状弾性体を前記孔に挿入することを特徴とする、鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  2. 前記板状弾性体を、前記鉄筋コンクリート構造物の前記下面側にある鉄筋のかぶりの外部に位置決めすることを特徴とする、請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  3. 前記板状弾性体が一以上のスリットを有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
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