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JP7337127B2 - 圧粉磁心の製造方法 - Google Patents
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JP7337127B2 - 圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、圧粉磁心の製造方法に関する。
OA機器、太陽光発電システム、自動車など様々な用途にリアクトルといったコイル部品が用いられている。コイル部品は、コアにコイルが装着されている。そして、このコアとしては、圧粉磁心が用いられることが多い。
圧粉磁心は、例えば、FeSiAl系合金粉末などの軟磁性粉末の周囲に形成された絶縁層を形成させ、潤滑剤を添加したうえで、加圧成形することにより作製される。この加圧成形時の圧力は数ton~数十tonといったかなり高い圧力なので、軟磁性粉末を押し固めている。
圧粉磁心は、エネルギー交換効率の向上や低発熱などの要求から、小さな印加磁界で大きな磁束密度を得ることができる磁気特性と、磁束密度変化におけるエネルギー損失が小さいという磁気特性が求められる。磁束密度に関する磁気特性としては例えば透磁率(μ)が挙げられる。エネルギー損失に関する磁気特性としてはコアロスとも呼ばれる鉄損(Pcv)が挙げられる。鉄損(Pcv)は、ヒステリシス損失(Ph)と、渦電流損失(Pe)の和で表される。
特許第5929819号公報 特開2009-088502号公報
従来からヒステリシス損失の低減に関する研究や透磁率の向上に関する研究が進められている。例えば、特許文献1のように、結晶粒が粗大な場合に、低いヒステリシス損失が得られるなどといった研究が進められている。また、特許文献2のように、軟磁性粉末に熱処理を施すことで、軟磁性粉末内の結晶構造の歪みを減らして透磁率を高めるという研究が進められている。しかし、ヒステリシス損失を低減、かつ、透磁率の向上の両立を実現することは困難であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ヒステリシス損失の低減を図り、かつ、透磁率を向上の両立を実現可能な圧粉磁心の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、軟磁性粉末としてFeSiAl系合金粉末を用いた場合、3つの条件を満たして作製された圧粉磁心は、ヒステリシス損失を低減させ、かつ、高い透磁率の両立を実現することができるという知見を得た。
本発明の圧粉磁心の製造方法は、本発明者らによるこのような知見に基づき成されたものであり、上記の目的を達成するために、FeSiAl系合金粉末に第1の潤滑剤を添加する第1添加工程と、前記第1潤滑剤添加工程を経た前記FeSiAl系合金粉末を絶縁樹脂で被覆する被覆工程と、前記被覆工程を経た前記FeSiAl系合金粉末に第2の潤滑剤を添加する第2添加工程と、を含み、前記第1の潤滑剤は、融点が59℃以上135℃以下であり、前記第1添加工程前における前記FeSiAl系合金粉末は、X線回折における面指数111のピークに対する面指数220のピーク比が0.020以上0.030以下であり、かつ、下記数式(1)に基づく不均一歪の値が、0.232以上0.325以下であること、を特徴とする。
Figure 0007337127000001
数式(1)のうち、βは積分幅、Dは結晶子の大きさ、θは回析角、λはX線の波長、ηは不均一歪、を表す。
本発明によれば、ヒステリシス損失の低減を図り、かつ、透磁率を向上の両立を実現可能な圧粉磁心の製造方法を得ることができる。
各実施例及び各比較例の透磁率及びヒステリシス損失を比較したグラフである。 第1の潤滑剤の融点と透磁率の関係を示すグラフである。 第1の潤滑剤の融点とヒステリシス損失の関係を示すグラフである。
(実施形態)
本実施形態の圧粉磁心の製造方法について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
圧粉磁心は、OA機器、太陽光発電システム、自動車などに搭載されるコイル部品のコアに用いられる磁性体である。圧粉磁心は、軟磁性粉末により成る。軟磁性粉末は、潤滑剤を添加された後絶縁層を形成し、この絶縁層が形成された軟磁性粉末に再度潤滑剤を添加しうえで、加圧成形して成形体を作製する。そして、この成形体を熱処理することで圧粉磁心は作製される。具体的には、圧粉磁心は、(1)粉末熱処理工程、(2)第1添加工程、(3)被覆工程、(4)第2添加工程、(5)加圧成形工程、(6)成形体熱処理工程を経ることで作製される。
(1)粉末熱処理工程
粉末熱処理工程は、軟磁性粉末を熱処理する工程である。軟磁性粉末は、鉄と珪素とアルミニウムから成るFeSiAl系合金粉末が用いられる。FeSiAl系合金粉末は、例えば、Feに対して、7wt%から11wt%程度のSiと、4wt%から8wt%程度のAlとを含有させている。FeSiAl系合金粉末には、例えば、Feに対して1wt%から3wt%程度のNiが含まれていてもよい。さらに、FeSiAl系合金粉末にはCo、Cr又はMnが含まれていてもよい。
粉末熱処理工程では、非酸化雰囲気で1~6時間加熱する。非酸化雰囲気には、雰囲気中の0.01%等の低酸素雰囲気又は不活性ガス雰囲気が含まれる。不活性ガスとしては、HやNが挙げられる。熱処理温度としては、450℃以上550℃以下である。この粉末熱処理工程を経た後におけるFeSiAl系合金粉末は、面指数111のピークに対する面指数220のピーク比が0.02以上0.03以下で、かつ、不均一歪を0.232以上0.325以下である。
このピーク比は、リーベルト解析法によるX線回折によって算出する。ピーク比をこの範囲にすることで、ヒステリシス損失の低減を図ることができる。ここでいうピークとは、X線回折により得られた横軸が回折角度2θ(単位:deg)と縦軸X線強度(単位CPS=カウント/秒)のグラフにおける、ピークの高さ(縦軸の値、カウント数)を指す。つまり、面指数111のピークとは、面指数111におけるピーク高さを指し、面指数220のピークとは、面指数220におけるピーク高さを指す。
また、不均一歪とは、数万粒の粉末の集合体を観察し、各結晶格子面から見たときの歪のばらつきのことである。不均一歪は、FeSiAl系合金粉末の結晶構造をX線回析して、下記数式(1)から算出する。数式(1)で算出されるこの不均一歪の値は、0.232以上0.325以下である。この範囲にすることで、ヒステリシス損失の低減させることができる。
Figure 0007337127000002
数式(1)のうち、βは積分幅、Dは結晶子の大きさ、θは回析角、λはX線の波長、ηは不均一歪、を表す。
なお、FeSiAl系合金粉末のピーク比が0.02以上0.03以下であり、かつ、不均一歪を0.232以上0.325以下になるのであれば、粉末熱処理工程は省略してもよい。例えば、ガスアトマイズ法によりFeSiAl系合金粉末を製造する場合、高温で溶融したFeSiAl系合金粉末にガスを吹き付けて、その後、冷却する。この冷却するスピードを調整することで、ピーク比及び不均一歪を変えることができる。冷却スピードを調整するとは、例えば、ガスを吹き付けた後、水を吹き付けて冷却する際の水の量を調整することで冷却スピードを調整する手法、または、ガスを吹き付ける際のガスの流量や圧力を調整したり、溶融した合金が流れ出るノズル径を調整することで形成される粉末の粒径を変えることで、冷却スピードを調整する手法などが挙げられる。そのため、粉末熱処理工程に代えてこの冷却するスピードを調整して、ピーク比及び不均一歪を上記範囲内にしてもよい。
(2)第1添加工程
第1添加工程は、粉末熱処理工程を経たFeSiAl系合金粉末に対して、第1の潤滑剤を添加する工程である。第1の潤滑剤は、融点が59℃以上135℃以下のものを用いる。第1に潤滑剤の融点をこの範囲にすることで、高透磁率であり、かつ、ヒステリシス損失の低減させることができる。特に、第1の潤滑剤として、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、脂肪酸誘導体を用いることが好ましい。これらの種類を第1の潤滑剤として用いることで、より顕著に高透磁率及びヒステリシス損失低減を実現できる。
第1の潤滑剤の添加量は、FeSiAl系合金粉末に対して、0.1wt%以上0.6wt%以下が好ましい。この範囲にすることで、粉末の滑りがよくなり、密度が向上する。
(3)被覆工程
被覆工程は、第1添加工程を経たFeSiAl系合金粉末に対して、絶縁樹脂を添加し、FeSiAl系合金粉末の周囲に絶縁層を形成させる工程である。即ち、FeSiAl系合金粉末の周囲には、絶縁樹脂から成る絶縁層が形成されている。絶縁層は、FeSiAl系合金粉末の周囲に形成されていれば、絶縁材料の付着の態様については問わない。つまり、絶縁樹脂は、FeSiAl系合金粉末の周囲を全て覆うように付着していてよいし、一部を覆うように付着し、FeSiAl系合金粉末の表面の一部が露出していてもよい。また、絶縁樹脂は、FeSiAl系合金粉末の各粒子の表面に付着していてもよいし、FeSiAl系合金粉末の凝集体の表面に付着していてもよいし、これらの付着の態様が混在するように付着していてもよい。
絶縁樹脂としては、シランカップリング剤、シリコーンレジン、又はこれらの混合物を用いることができる。即ち、シランカップリング剤、シリコーンレジンをそれぞれ単体で用いてもよいし、シランカップリング剤とシリコーンレジンを混合させて用いてもよい。
また、絶縁層は、単層であってもよいし、複数層であってもよい。例えば、絶縁層は、種類ごとに各層に分けた複数層で構成してもよいし、1種類又は2種類以上を混合した絶縁材料の単層で構成してもよい。本実施形態では、シランカップリング剤、シリコーンレジンを含んだ絶縁層がFeSiAl系合金粉末の周囲に形成されている。
シランカップリング剤としては、アミノシラン系、エポキシシラン系、イソシアヌレート系のシランカップリング剤を使用することができ、特に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。シランカップリング剤の添加量としては、FeSiAl系合金粉末に対して、0.05wt%以上1.0wt%以下が好ましい。シランカップリング剤の添加量をこの範囲にすることで、FeSiAl系合金粉末の流動性を向上させるとともに、成形された圧粉磁心の密度、磁気特性、強度特性を向上させることができる。
シリコーンレジンは、シロキサン結合(Si-O―Si)を主骨格に持つ樹脂である。シリコーンレジンを用いることで可撓性に優れた被膜を形成することができる。シリコーンレジンは、メチル系、メチルフェニル系、プロピルフェニル系、エポキシ樹脂変性系、アルキッド樹脂変性系、ポリエステル樹脂変性系、ゴム系等を用いることができる。この中でも特に、メチルフェニル系のシリコーンレジンを用いた場合、加熱減量が少なく、耐熱性に優れた絶縁層を形成することができる。シリコーンレジンの添加量は、FeSiAl系合金粉末に対して、0.6~2.0wt%であることが好ましい。添加量が0.6wt%より少ないと絶縁被膜として機能せず、渦電流損失が増加することにより磁気特性が低下する。添加量が2.0wt%より多いと圧粉磁心の密度低下を招く。
絶縁樹脂としてシランカップリング剤を添加した場合、FeSiAl系合金粉末とシランカップリング剤の混合物を加熱乾燥する。乾燥温度は、25℃以上200℃以下が好ましい。乾燥温度が25℃より低いと、溶剤が残留し絶縁被膜が不完全となる場合があるためである。一方、乾燥温度が200℃より高いと、分解が進み絶縁被膜として形成されなくなる場合があるためである。乾燥時間は、2時間程度である。
絶縁樹脂としてシリコーンレジンを添加した場合、FeSiAl系合金粉末とシリコーンレジンの混合物を加熱乾燥する。乾燥温度は、100℃以上200℃以下が好ましい。乾燥温度が100℃より小さいと絶縁被膜の形成が不完全となり、渦電流損失が高くなる場合があるためである。一方、乾燥温度が200℃より大きいと粉末が無機物となりバインダーとしての役割を果たさず、保形成が悪くなり、成形体の密度及び透磁率が低下する場合があるためである。乾燥時間は、2時間程度である。
(4)第2添加工程
第2添加工程は、被覆工程を経て絶縁層が形成されたFeSiAl系合金粉末に第2の潤滑剤を添加する工程である。第2の潤滑剤としては、必ずしも第1の潤滑剤と第2の潤滑剤を同一のものを用いる必要はない。第2の潤滑剤としては、第1の潤滑剤の種類の他、エチレンビスステアラマイド等融点が59℃以上135℃以下の範囲に含まれないものも用いることができる。
もっとも、第2の潤滑剤は、第1の潤滑剤の融点と同様、融点が59℃以上135℃以下のものを用いた方が好ましい。後述の条件Cに示すように、高透磁率、かつ、ヒステリシス損失の低減できる条件として、第1の潤滑剤の融点が重要となる。そのため、第2の潤滑剤も第1の潤滑剤の融点の範囲内にすることで、順番を間違えて添加する虞を防止できる。
より好ましくは、第2の潤滑剤は、第1の潤滑剤と同一のものを用いることがより好ましい。即ち、第1の潤滑剤にステアリン酸を用いる場合には、第2の潤滑剤にもステアリン酸を用いた方が好ましい。第1の潤滑剤と第2の潤滑剤の種類を同一にすることで、順番を間違えて添加する虞を防止できるとともに、2種類の潤滑剤を用意する必要がなくなる。また、使用量の管理もしやすいので、生産性も向上する。
第2の潤滑剤の添加量は、FeSiAl系合金粉末に対して、0.2wt%以上0.7wt%以下が好ましい。なお、第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤の合計の添加量は、FeSiAl系合金粉末に対して、0.3wt%以上0.8wt%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、粉末の滑りがよくなり、密度が向上する。
(5)加圧成形工程
加圧成形工程は、絶縁層が形成されたFeSiAl系合金粉末を加圧成形することにより、圧粉成形体を作製する工程である。まず、FeSiAl系合金粉末を金型に充填し、その後、成形時の圧力は10~20ton/cmで加圧し、圧粉成形体を得る。
(6)成形体熱処理工程
成形体を熱処理は、加圧成形工程を経て作製された成形体を熱処理する工程である。成形体熱処理工程では、窒素ガス中、窒素と水素の混合ガス、0.01%等の低酸素雰囲気等の非酸化性雰囲気中にて、600℃以上且つFeSiAl系合金粉末の周囲に形成された絶縁層が破壊される温度(例えば、850℃とする)よりも低い温度で、熱処理を行う。この成形体熱処理工程を経ることで圧粉磁心が作製される。
以上の工程を経て作製された圧粉磁心は、以下の条件A~条件Cを満たしている。この3つの条件を満たすことで、ヒステリシス損失の低減を図り、かつ、透磁率を向上の両立が実現できる。
(条件A)第1添加工程前におけるFeSiAl系合金粉末の不均一歪が0.232以上0.325以下の範囲であり、かつ、ピーク比が0.02以上0.03以下の範囲であること。
(条件B)潤滑剤を2回添加していること。
(条件C)第1の潤滑剤は、融点が59℃以上135℃以下であること。
また、第2の潤滑剤は、第1の潤滑剤と同一の種類のものを用いた方が好ましい。条件Cに示すように、第1の潤滑剤の融点が59℃以上135℃以下であることが重要となる。そのため、第2の潤滑剤は、第1の潤滑剤と同一の種類のものを用いることで、順番を間違えて添加する虞を防止できる。
(実施例)
実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1、2並びに比較例1乃至7の圧粉磁心を作製した。実施例1、2並びに比較例1乃至7の圧粉磁心は、下記条件A~Cの各条件を満たしているか否かが異なる。なお、表1に、実施例1、2並びに比較例1乃至7の圧粉磁心が、下記条件A~Cの各条件を満たしているか否かを示す。
(条件A)第1添加工程前におけるFeSiAl系合金粉末の不均一歪が0.232以上0.325以下の範囲であり、かつ、ピーク比が0.02以上0.03以下の範囲であること。
(条件B)潤滑剤を2回添加していること。
(条件C)潤滑剤は、融点が59℃以上135℃以下であること。
Figure 0007337127000003
実施例1は、上記条件A~Cを全て満たすように、次にとおり作製した。まず、FeSiAl系合金粉末を目開き150μmの篩に通し、その後、窒素雰囲気において、温度450℃で2時間熱処理を行った。
ここで、粉末熱処理を行ったFeSiAl系合金粉末の結晶構造を観察した。具体的には、面指数111のピークに対する面指数220のピーク比及び不均一歪をX線回折により測定した。X線回析装置は、全自動X線回析装置(BRUKER社製 D2 PHASER:Cu管球、X線の波長λ=0.154nm)を使用した。その結果は、上記表1に示すとおりである。
測定を終えた後、第1の潤滑剤として、ステアリン酸(融点59℃)をFeSiAl系合金粉末に対して0.3wt%添加して混合した。その後、シランカップリング剤をFeSiAl系合金粉末に対して0.5wt%、シリコーンレジンをFeSiAl系合金粉末に対して1.2wt%を順次混合し、温度150℃で2時間乾燥させた。
凝集を解消する目的で圧粉磁心用粉末を目開き850μmの篩に通し、第2の潤滑剤として、第1の潤滑剤と同様のステアリン酸をFeSiAl系合金粉末に対して0.2wt%添加した。第2の潤滑剤を添加したFeSiAl系合金粉末を金型に充填し、加圧成形を行い、外径16.5mm、内径11.0mm、高さ5.0mmの各圧粉成形体を得た。プレス成形の圧力は、15ton/cmで行った。これにより、圧粉成形体が作製された。圧粉成形体が作製された後、この圧粉成形体を温度700℃の窒素雰囲気下で2時間熱処理を行った。これにより、実施例1の圧粉磁心が作製された。
実施例2は、FeSiAl系合金粉末の熱処理温度のみが実施例1と異なる。実施例2は、550℃で粉末熱処理を行った。
比較例1は、潤滑剤を2回混合させなかった点、潤滑剤としてエチレンビスステアラマイド(融点140℃)を用いた点が実施例1とは異なり、条件B及びCを満たしていない。即ち、比較例1は、粉末熱処理を行ったFeSiAl系合金粉末に潤滑剤を添加せず、シランカップリング剤及びシリコーンレジンを混合し、その後、絶縁層が形成されたFeSiAl系合金粉末に、潤滑剤としてエチレンビスステアラマイドを0.5wt%混合した。その他の製造方法及び製造条件は実施例1を同一である。
比較例2は、FeSiAl系合金粉末を熱処理しなかった点、第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤としてエチレンビスステアラマイド(融点140℃)を用いた点が実施例1とは異なり、条件A及びCを満たしていない。即ち、比較例2は、粉末熱処理を行うことなくピーク比及び不均一歪を測定し、その後、第1の潤滑剤としてエチレンビスステアラマイドを0.3wt%混合し、さらに、第2の潤滑剤としてエチレンビスステアラマイドを0.2wt%混合した。その他の製造方法及び製造条件は実施例1を同一である。
比較例3は、FeSiAl系合金粉末を熱処理しなかった点、潤滑剤を2回混合させなかった点が実施例1とは異なり、条件A及びBを満たしていない。即ち、比較例3は、粉末熱処理を行うことなくピーク比及び不均一歪を測定し、その後、潤滑剤を添加することなく、シランカップリング剤及びシリコーンレジンを混合し、その後、絶縁層が形成されたFeSiAl系合金粉末に、潤滑剤としてステアリン酸(融点135℃)を0.2wt%混合した。その他の製造方法及び製造条件は実施例1を同一である。
比較例4は、第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤としてエチレンビスステアラマイド(融点140℃)を用いた点のみが実施例1とは異なり、条件Cを満たしていない。その他の製造方法及び製造条件は実施例1を同一である。
比較例5は、FeSiAl系合金粉末を熱処理しなかった点のみが実施例1と異なり、その他の製造方法及び製造条件は実施例1を同一である。即ち、比較例5は、条件Aを満たしていない。比較例6は、FeSiAl系合金粉末の熱処理温度のみ実施例1と異なる。即ち、比較例6は、800℃でFeSiAl系合金粉末の熱処理を行った点以外の製造方法及び製造条件は実施例1を同一である。即ち、比較例6は、条件Aを満たしていない。
比較例7は、潤滑剤を2回混合させなかった点のみが実施例1とは異なり、条件Bを満たしていない。即ち、比較例7は、粉末熱処理を行ったFeSiAl系合金粉末に潤滑剤を添加することなく、シランカップリング剤及びシリコーンレジンを混合し、その後、絶縁層が形成されたFeSiAl系合金粉末に、潤滑剤としてステアリン酸(融点135℃)を0.5wt%混合した。その他の製造方法及び製造条件は実施例1を同一である。
このように作製された各圧粉磁心にφ0.5mmの銅線で1次巻線17ターン、2次巻線17ターンの巻線を巻回し、ヒステリシス損失を測定した。測定条件は、周波数100kHz、最大磁束密度Bm=100mTとした。鉄損、ヒステリシス損失及び渦電流損失については、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY-8219)を用いて算出した。この算出は、鉄損の周波数曲線を次の(1)~(3)式で最小2乗法により、ヒステリシス損失係数、渦電流損失係数を算出することで行った。
Pcv =Kh×f+Ke×f2・・(1)
Ph =Kh×f・・(2)
Pe =Ke×f2・・(3)
Pcv:鉄損
Kh :ヒステリシス損失係数
Ke :渦電流損失係数
f :周波数
Ph :ヒステリシス損失
Pe :渦電流損失
さらに、各圧粉磁心の透磁率を測定した。透磁率は、鉄損の測定時に最大磁束密度Bmを設定したときの振幅透磁率とし、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社製:4284A)を使用して算出した。透磁率は、直流電流を重畳させずに磁界がゼロの初透磁率(0kA/m)を測定した。
測定結果を表2に示す。また、実施例1及び2並びに比較例1乃至7の透磁率及びヒステリシス損失を比較したグラフを図1に示す。
Figure 0007337127000004
表2及び図1に示すように、3つの条件を満たす実施例1及び2は、ヒステリシス損失(Ph)が200(kw/m)程度以下であり、かつ、透磁率が150以上であり、3つ条件を1つ又は2つ満たしていない比較例1乃至7と比べて、ヒステリシス損失の低減及び高透磁率の両立ができている。
たしかに、条件B及び条件Cを満たす比較例5は、透磁率が162であり、また、条件B及び条件Cを満たす比較例6は、ヒステリシス損失が200(kw/m)である。しかし、不均一歪が0.381で、かつ、ピーク比が0.016の比較例5は、ヒステリシス損失が214(kw/m)であり、ヒステリシス損失が高く、ヒステリシス損失の低減及び高透磁率の両立は実現できていない。また、不均一歪が0.044で、かつ、ピーク比が0.080の比較例6は、透磁率が121であり、透磁率が向上しておらず、ヒステリシス損失の低減及び高透磁率の両立は実現できていない。そのため、条件Aとしては、実施例1及び2が示すように、不均一歪が0.232以上0.325以下の範囲であり、かつ、ピーク比が0.02以上0.03以下の範囲にすると、ヒステリシス損失の低減及び高透磁率の両立が実現できることが確認された。
次に、実施例1の第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤の種類のみを変えた実施例3乃至6並びに比較例9及び10を作製した。その他の製造方法及び製造条件は実施例1を同一である。つまり、実施例3乃至6並びに比較例9及び10は、条件A及びBは満たしている。各実施例及び各比較例に用いた第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤の種類については、下記表3に示すとおりである。なお、下記表3に示す潤滑剤は、カプリン酸以外は粉末状のものであり、表3記載の平均粒子径とは、メジアン径D50の粒子径を指す。
Figure 0007337127000005
実施例3は、第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛(融点135℃)を用いた。実施例4は、第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛(融点120℃)を用いた。実施例5は、第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤として、オクタデカン酸マグネシウム(融点115℃)を用いた。実施例6は、第1の潤滑剤及び第2の潤滑剤として、脂肪酸誘導体(融点80℃)を用いた。
一方、比較例9は、第1の潤滑剤としてラウリン酸(融点43℃)、第2の潤滑剤としてステアリン酸(融点59℃)を用いた。比較例10は、第1の潤滑剤としてカプリン酸(融点17℃)、第2の潤滑剤としてステアリン酸(融点59℃)を用いた。
これらの各実施例及び各比較例について、透磁率及びヒステリシス損失を測定した。測定方法、測定条件及び測定機器は、上述したものと同一である。測定結果を表4に示す。また、図2は、第1の潤滑剤の融点と透磁率の関係を示すグラフであり、図3は、第1の潤滑剤の融点とヒステリシス損失の関係を示すグラフである。
Figure 0007337127000006
まず、比較例9及び10を見ると、ヒステリシス損失が230(kw/m)程度と高く、透磁率も130よりも低い。比較例9及び10は、第2の潤滑剤は条件Cを満たしているものの、第1の潤滑剤は条件Cを満たしてない。そのため、第1の潤滑剤において、条件Cを満たすことが重要であることが確認された。
そして、第1の潤滑剤の融点が59℃以上135℃以下の実施例1、実施例3乃至6は、透磁率が140より高く、かつ、ヒステリシス損失が200(kw/m)より小さく、高透磁率で、かつ、ヒステリシス損失の低減の両立ができている。一方で、第1の潤滑剤の融点が135℃よりも高い比較例1や第1の潤滑剤の融点が59℃よりも低い比較例9及び10は、透磁率が130程度よりも低く、ヒステリシス損失も210(kw/m)よりも高い結果となっている。そのため、条件Cとしては、第1の潤滑剤の融点が59℃以上135℃以下の範囲であると、高透磁率で、かつ、ヒステリシス損失の低減の両立が実現できることが確認された。
実施例1、実施例3乃至6は、すべて透磁率が140よりも高い高透磁率となっているが、その中でも実施例1、実施例4及び実施例6は、透磁率が150を超えており、極めて高い透磁率となっている。そのため、第1の潤滑剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛(融点120℃、平均粒子径0.54μm)、脂肪酸誘導体を用いることが特に高い透磁率になることが確認された。
コアの密度を上げることで透磁率を上げることができるので、高い成形圧力で軟磁性粉末を成形していた。もっとも、成形圧力を高くするほど、軟磁性粉末同士の摩擦や軟磁性粉末内に歪みが生じやすく、ヒステリシス損失が悪化してしまう。そのため、高透磁率で、かつ、ヒステリシス損失の低減の両立は困難であった。
しかし、本発明者らの鋭意研究の結果、潤滑剤を2回に分けて添加すること、1回目の潤滑剤の種類は、融点が59℃以上135℃以下であること、潤滑剤を添加する前のFeSiAl系合金粉末の不均一歪が0.232以上0.325以下の範囲であり、かつ、ピーク比が0.02以上0.03以下の範囲であること、という3つの条件を満たすと高透磁率で、かつ、ヒステリシス損失の低減の両立が実現できると見出し、上記のとおりそれが確認された。
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

Claims (4)

  1. FeSiAl系合金粉末に第1の潤滑剤を添加する第1添加工程と、
    前記第1添加工程を経た前記FeSiAl系合金粉末を絶縁樹脂で被覆する被覆工程と、
    前記被覆工程を経た前記FeSiAl系合金粉末に第2の潤滑剤を添加する第2添加工程と、
    を含み、
    前記第1の潤滑剤は、融点が59℃以上135℃以下であり、
    前記第1添加工程前における前記FeSiAl系合金粉末は、
    X線回折における面指数111のピークに対する面指数220のピーク比が0.020以上0.030以下であり、
    かつ、
    下記数式(1)に基づく不均一歪の値が、0.232以上0.325以下であること、
    を特徴とする圧粉磁心の製造方法。
    Figure 0007337127000007
    数式(1)のうち、βは積分幅、Dは結晶子の大きさ、θは回析角、λはX線の波長、ηは不均一歪、を表す。
  2. 前記第1の潤滑剤及び前記第2の潤滑剤は、同一の種類であること、
    を特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  3. 前記第1の潤滑剤は、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム又は脂肪酸誘導体の何れかであること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉磁心の製造方法。
  4. 透磁率を140以上にすること、
    を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の圧粉磁心の製造方法。
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