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JP7368470B2 - 細胞培養用容器の製造方法 - Google Patents
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JP7368470B2 - 細胞培養用容器の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞培養用容器の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、細胞培養用容器の製造方法、脱泡方法、及び前記方法により得られる細胞培養用容器を用いる細胞、スフェロイドの製造方法に関する。
従来、細胞を培養容器に播種する際に培養面に気泡が存在すると、培養不良となることが多いことから、播種前に超音波脱気、真空減圧脱気、遠心脱気等の脱泡処理を行って細胞培養が行なわれている(例えば、特許文献1)。
特開2017-205021号公報
しかしながら、従来技術の方法においては、大掛かりな装置が必要であったり、無菌環境外での操作によってコンタミネーションや汚染の可能性が生じたりするなど、未だ十分ではない。また、前記した処理を行わずに長時間プレウェッティングすることで気泡を除く方法もあるが、一部残存が認められたり、時間を要したりするために、更なる改良技術が望まれている。
また、小さい径の培養区画(ウェル)においては、そもそも気泡が抜けにくいといった課題があることが新たに判明した。
本発明は、新規な細胞培養用容器を製造する方法、及び該方法により得られる細胞培養用容器を用いる細胞、スフェロイドの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、気泡が存在しにくい細胞培養用容器を簡便で効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
またさらに、本発明は、細胞培養用容器の簡便で効率的な脱泡方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、培養区画(ウェル)の径が小さい培養容器においては、該区画に特定口径を有する部材から液を送液することで、簡便かつ効率的に、気泡がほとんど認められずに液を充填できることを見出し、更なる検討を行って本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記〔1〕~〔11〕に関する。
〔1〕 開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を有する細胞培養用基材と少なくとも前記凹部に培養液を供える細胞培養用容器の製造方法であって、口径が直径3mm以下の送液口部から、及び/又は、流速100cm/s以上で、送液用液を送液する工程を含む、細胞培養用容器の製造方法。
〔2〕 開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を有する細胞培養用基材と少なくとも前記凹部に培養液を供える細胞培養用容器の脱泡方法であって、口径が直径3mm以下の送液口部から、及び/又は、流速100cm/s以上で、送液用液を送液する、細胞培養用容器の脱泡方法。
〔3〕 開口部面積1cm2あたり0.001mL/s以上の流量で送液する、前記〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕 凹部の0.1~10mm上方から送液する、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 送液口部の口径が直径2.5mm以下である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 送液口部の直径と凹部開口部の直径の比(送液口部の直径/凹部開口部の直径)が30以下である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 細胞培養用基材が、開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シートである、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕 無菌環境下で行う、前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕 送液前に、細胞培養用基材に送液用液を予め注入する、前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕 前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の方法により得られた細胞培養用容器を用いる、細胞の培養方法。
〔11〕 前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の方法により得られた細胞培養用容器を用いる、スフェロイドの製造方法。
本発明により、細胞培養用容器を簡便に調製することができ、得られる細胞培養用容器は気泡の形成が認められにくく、細胞培養を効率的に行なうことが可能となる。
図1は、実施例1における脱泡処理前後の顕微鏡写真である。 図2は、実施例1において形成されたスフェロイドの顕微鏡写真である。 図3は、実施例2における脱泡処理前後の顕微鏡写真である。 図4は、実施例3における脱泡処理前後の顕微鏡写真である。
本発明の細胞培養用容器の製造方法は、開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を有する細胞培養用基材に、口径が直径3mm以下の送液口部から、及び/又は、流速100cm/s以上で、送液用液を送液する工程を含む。かかる工程によって、得られる細胞培養用容器は、前記基材と該凹部内に気泡を形成又は残存させにくい状態で該液とを備えるものとなる。このため、本発明の細胞培養用容器は、少なくとも凹部内に液が充填されていれば容器全体における液量は限定されない。凹部内の気泡は目視で確認されるものであってもよく、例えば、培養液が充填された際に、目視で気泡の形成や残存を確認することができる。
本発明の製造方法は、開口部の口径が直径1000μm以下の凹部をその表面に有する細胞培養用基材であれば適用でき、前記凹部内にて細胞を培養することができればよい。
凹部の口径は直径1000μm以下であれば特に限定はなく、例えば、800μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下のものであってもよい。また、下限は特に設定されず、例えば、10μmを挙げることができる。なお、凹部の直径とは開口部の最大径のことである。
凹部の開口部の面積としては、凹部1個あたり、例えば、0.5×10-3~5.0×10-1cm2の範囲内が例示され、1.0×10-1cm2、5.0×10-2cm2、2.0×10-2cm2、1.0×10-2cm2、5.0×10-3cm2、2.5×10-3cm2、2.0×10-3cm2、1.0×10-3cm2等が例示される。
凹部の深さは、細胞を培養することができれば特に限定されず、培養する細胞のサイズや凹部の形成方法等によって当該技術常識に従って適宜設定することができる。例えば、凹部の深さは、10nm以上(例えば、100nm以上)等であってもよく、1μm以上[例えば、5μm以上、10μm以上(例えば、10~1000μm、10~300μm)]等の範囲内であってもよい。
凹部の開口部及び底面(底部)の形状は、円形に限られず、例えば、多角形や楕円であってもよく、底面の形状は開口部の形状と同一であっても異なるものであってもよい。また、底面は平板状(平坦状)であっても湾曲していてもよく、平滑であってもよいが、平坦及び/又は平滑な底面であることがより望ましい。底面の面積としては、凹部1個あたり、例えば、0.5×10-3~5.0×10-1cm2の範囲内が例示され、1.0×10-1cm2、5.0×10-2cm2、2.0×10-2cm2、1.0×10-2cm2、5.0×10-3cm2、2.5×10-3cm2、2.0×10-3cm2、1.0×10-3cm2等が例示される。また、底面の口径(長さ)は開口部の口径と同一であっても異なるものであってもよく、底面の口径が開口部の口径より小さいものであっても、底面の口径が開口部の口径より大きいものであってもよい。底面の口径としては、例えば、10~1000μm、10~700μm、10~600μm、10~500μm、10~400μm、10~300μmの範囲内が例示される。例えば、底面の口径が開口部の口径と同じ場合、凹部の形状としては柱形状が、なかでも、開口部と底面の形状が円形の場合は円柱形状が形成される。底面の口径が開口部の口径より小さい場合、凹部の形状としては、凹部の底面側に向かったテーパー形状が形成される。
底面の孔径と開口部の孔径の比(底面の孔径/開口部の孔径)は、特に限定されるものではないが、細胞の播種のしやすさ等の観点から、5/1~1/5、3/1~1/3、1/1~1/2が例示される。
また、開口部と隣接する開口部との間の距離(間隙)は、例えば、特に限定されるものではないが、所望する大量培養に応じて、例えば、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下などの範囲内が例示され、有限値であればよい。
開口部の孔径と凹部の深さの比(開口部の孔径/凹部の深さ)は、特に限定されるものではないが、細胞の播種のしやすさ等の観点から、5/1~1/5、3/1~1/3、2/1~1/1が例示される。前記範囲内の場合、細胞が凹部から飛び出し難く、また、脱泡の点で有利となりうる。
凹部の個数は、基材の面積や培養する細胞の種類等によって一概に設定することはできず、当該技術常識に従って適宜設定することができる。例えば、単位面積(cm2)あたりの下限個数は1個、10個、30個、50個など、上限個数は1000個、500個、300個、200個、100個などを例示することができる。また、基材表面における凹部の総数は、例えば、10個以上、100個以上、1000個以上、10000個以上、50000個以上など、適宜設定することができる。
本発明における細胞培養用基材は、その基材表面に上記のような凹部を持つ基材であれば、その材質は特に限定されない。細胞培養用基材の材質は、本発明の検討によれば、疎水性が高い程気泡の付着性が強くなるようであるが、本発明ではこのような疎水性の高い材質であっても簡便に気泡を除くことができる。疎水性が高い材質の例として、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン等)、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられるが、特に限定されず、公知のものであってよい。また、細胞培養用基材全体が同一の材質からなるものであっても、複数の材質で構成されるものであってもよい。具体的には、例えば、凹部と基材表面とで異なる材質のものであってもよく、さらに、凹部内の位置によって異なる材質で構成されていてもよい。
例えば、凹部の内側面と凹部の底面が異なる材質で構成される細胞培養用基材の一例として、凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シートを挙げることができる。かかる細胞培養用シートは、開口部の口径が小さいことに加え前記表面特性を有することで、例えば、培養液を注入しただけでは、図1(未脱泡)に示すように気泡が凹部に残存しやすくなるが、本発明により、凹部中の気泡の形成や残存が目視では確認されにくいものとなる。
「細胞接着性表面」とは、例えば、培養に用いる溶液中において、細胞が当該表面上に沈降した場合に、当該細胞が、ある一定の接着点を持って接着するような表面のことである。細胞接着性表面は、少なくとも細胞接着性を示す物質で構成されていればよい。
細胞接着性を示す物質としては、用いる細胞の細胞膜に存在するたんぱく質や糖鎖等の細胞表面分子に対して結合し得る物質であれば特に限られず用いることができる。親水性を示すものであっても疎水性を示すものであってもよいが、細胞接着性、スフェロイドの形成性等の観点から、親水性(特に、超親水性ではない親水性)又は疎水性(特に、超疎水性ではない疎水性)のものが好ましく、疎水性を示すものがさらに好ましい。また、細胞接着性を示す物質の接着性の程度は、細胞が凹部内から飛び出さない程度であってもよい。
このような物質の一例を挙げると、具体的には、生体から取得され若しくは合成された物質が挙げられ、例えば、タンパク質(コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等)や、合成樹脂(スチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、これらの混合物や表面改質物等)が含まれる。合成樹脂を選択する場合、合成樹脂自体の強度や耐熱性から、取り扱い性に優れる細胞培養用シートを得ることができる。また、生体適合性の観点から、該シートを用いて得られる培養細胞もしくはスフェロイドの均一性が向上する観点から、または、種々の細胞と適度に接着することにより培地交換作業が容易となる観点から、スチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂やポリイミド樹脂のような合成樹脂を選択することが好ましい。スチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂やポリイミド樹脂のような非生物由来の成分を選択することで、スチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂やポリイミド樹脂等を含む細胞培養用基材を用いて得られるスフェロイドは、再生医療や創薬等の分野への適用が容易となる。
ポリイミド樹脂は、上記のように細胞培養には好適に用いることができるが、通常、疎水性である上、前記したような小さい径の凹部を有する基材に適用した場合、液を単に注入しただけでは凹部に気泡が形成され、かつ、除去し難くなるため、該基材の素材として用いられることが敬遠されやすい。しかしながら、本発明により、前記のような径の凹部を有する基材に適用することが可能となる。ポリイミド樹脂としては、以下の式(I)で示される構成単位を含むポリイミド樹脂が例示できる。また、スフェロイド形成が良好であるという観点から、分子内にフッ素原子を有する樹脂が好ましく、含フッ素ポリイミド(含フッ素ポリイミド樹脂)がより好ましい。本発明で用いられるポリイミド樹脂は、典型的には、酸二無水物とジアミンとを各々1種以上重合させて得られるポリアミド酸をイミド化することにより得られる。ポリイミド樹脂は、ポリアミド酸を化学構造の一部に含んでいてもよい。ポリイミド樹脂を製造する方法としては、公知の手法で製造すればよい。一例として二段合成法が使用できる。ポリイミド樹脂の二段合成法は前駆体としてポリアミド酸を合成し、ポリアミド酸をポリイミドに変換する方法である。前駆体としてのポリアミド酸はポリアミド酸誘導体であってもよい。ポリアミド酸誘導体としては、例えばポリアミド酸塩、ポリアミド酸アルキルエステル、ポリアミド酸アミド、ビスメチリデンピロメリチドからのポリアミド酸誘導体、ポリアミド酸シリルエステル、ポリアミド酸イソイミドなどが挙げられる。ポリイミドとしてはピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからなるポリイミドが例示できる。フッ素原子を有する樹脂としては、例えば、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)/1,4-ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)共重合体、6FDA/1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPER)共重合体、6FDA/4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)/TPEQ共重合体、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)/2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、6FDA/2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)共重合体等の以下の式(I)で示される構成単位を含む含フッ素ポリイミド樹脂;エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等が例示できる。
Figure 0007368470000001
上記式(I)中、Xは酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、または2価の有機基のいずれかを示し;
Yは2価の有機基を示し;
、Z、Z、Z、Z、及びZは互いに独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれかを示し、
pは0または1である。
なお、ポリイミド樹脂において、式(I)で示される化学構造は、樹脂の構成単位ごとに異なってもよく、同一であってもよい。X、Y、Z、Z、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つはフッ素原子を1個以上含むことが好ましい。
上記式(I)中、p=0である場合にはXは存在していなくても(換言すれば、左右のベンゼン環が直接結合していても)よいが、p=1である場合には、左右のベンゼン環はXを介して結合する。
で示される2価の有機基としては、具体的には、アルキレン基、アリーレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基等が挙げられる。また、縮合環式の2価の炭化水素基、ヘテロ環縮合環式の2価の炭化水素基、及びこれらのオキシ基、チオ基であってもよい。これらの中でも、アルキレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基が好ましく、アルキレン基、アリーレンオキシ基がより好ましく、これらはフッ素原子で置換されていてもよい。上記アルキレン基の炭素数は、例えば1~12であり、好ましくは1~6である。
の例であるフッ素原子で置換されたアルキレン基としては、例えば、-C(CF-、-C(CF-C(CF-等を例示することができる。Xの例である上述したアルキレン基の中では、-C(CF-が好適である。
の例であるアリーレン基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
Figure 0007368470000002
の例であるアリーレンオキシ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
Figure 0007368470000003
の例であるアリーレンチオ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
Figure 0007368470000004
基材上にスフェロイドを良好に形成しうるという観点からは、Xで示される2価の有機基としては、上記b-2~b-10およびc-2~c-10からなる群から選択されるものでもよく、上記b-7~b-9およびc-7~c-9からなる群から選択されるものでもよく、b-8で表される構造であってもよい。
の例である上述したアリーレン基、アリーレンオキシ基及びアリーレンチオ基は、各々独立して、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である)、メチル基およびトリフルオロメチル基よりなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。アリーレン基、アリーレンオキシ基およびアリーレンチオ基に置換している好適な置換基は、フッ素原子および/またはトリフルオロメチル基であり、好適にはフッ素原子である。アリーレン基、アリーレンオキシ基およびアリーレンチオ基は、Yにフッ素原子が含まれない場合、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換されることが好ましい。
上記式(I)中、Yで示される2価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、芳香環を有する2価の有機基が挙げられる。詳しくは、1個のベンゼン環からなる基もしくは、2個以上のベンゼン環が炭素原子(すなわち、単結合、またはアルキレン基)、酸素原子、硫黄原子を介してまたは直接結合した構造を有する基が挙げられる。具体的には、以下の基を例示することができる。
Figure 0007368470000005
Figure 0007368470000006
Figure 0007368470000007
Figure 0007368470000008
Yの例である上述した芳香環を有する2価の有機基は、置換可能であれば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子、より好ましくはフッ素原子である)、メチル基およびトリフルオロメチル基からなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。芳香環を有する2価の有機基に置換している好適な置換基は、特にXにフッ素原子が含まれない場合は、フッ素原子および/またはトリフルオロメチル基であることが好ましく、より好適にはフッ素原子である。
スフェロイド形成性の観点から、上記式(I)中、Yはd-3、d-9、e-1~e-4、f-6、およびf-7からなる群から選択される構造であることが好ましく、より好ましくはe-1、e-3またはe-4の構造である。
上記式(I)中、Z、Z、Z、Z、Z、及びZは、各々同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子から選ばれ、XおよびYの少なくとも一方にフッ素原子が含まれない場合、Z、Z、Z、Z、Z、およびZの少なくとも1つはフッ素原子であることが好ましい。
スフェロイド形成性の観点から、本発明の好ましい一実施形態では、上記式(I)中、Xで示される2価の有機基が、-C(CF-、上記b-2~b-10およびc-2~c-10からなる群から選択され;かつ、Yが、d-3、d-9、e-1~e-4、f-6、およびf-7からなる群から選択される。本発明のより好ましい一実施形態では、上記式(I)中、Xで示される2価の有機基が、-C(CF-、b-7~b-9およびc-7~c-9からなる群から選択され;かつ、Yが、e-1、e-3およびe-4からなる群から選択される。
上記の式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンとの重合により得られるポリアミド酸を焼成する手法により得ることができる。なお、上記「式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂」のイミド化率は、100%でなくともよい。すなわち、式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、上記式(I)で表される構造単位のみからなるものであってもよいが、本発明の目的効果が損なわれない範囲において、環状イミド構造が脱水閉環せずにアミド酸のままである構成単位が一部に含まれていてもよい。
ポリアミド酸合成反応は有機溶媒中で行われることが好適である。ポリアミド酸合成反応に用いられる有機溶媒としては、原料である酸二無水物とジアミンとの反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メタノール等の極性溶媒;トルエンやキシレン等の非極性溶媒等が挙げられる。中でも、極性溶媒を用いることが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物として使用されてもよい。アミド化反応後の反応混合物をそのまま熱イミド化に供してもよい。前記ポリアミド酸の溶液中の前記ポリアミド酸の濃度は特に限定されないが、得られる樹脂組成物の重合反応性と重合後の粘度、その後の製膜、焼成での取り扱いやすさの観点から、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。前記樹脂組成物の粘度は特に限定されるものではないが、公知の測定方法に従って測定することができ、例えば、23℃において1~20Pa・s、好ましくは3~15Pa・sの範囲内である。
前記ポリアミド酸を、熱イミド化または化学イミド化のいずれかによりイミド化して含フッ素ポリイミドを含む樹脂組成物を得る。特定の実施形態では、前記ポリアミド酸を、加熱処理によりイミド化(熱イミド化)して含フッ素ポリイミドを含む樹脂を得る。熱イミド化で得られたポリイミドは、触媒の残存の可能性がなく、細胞培養用途ではより好ましい。
熱イミド化によりイミド化する場合、例えば、前記ポリアミド酸を、空気中で、またはより好ましくは窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、或いは真空中で、好ましくは温度50~400℃、より好ましくは100~380℃、好ましくは時間0.1~10時間、より好ましくは0.2~5時間の条件下で焼成してイミド化反応を行うことによりポリイミドを含む樹脂組成物を得ることができる。
熱イミド化反応に供する前記ポリアミド酸は、適当な溶媒中に溶解された形態であることが好ましい。溶媒としては、ポリアミド酸を溶解するものであれば良く、ポリアミド酸合成反応に関して上記した溶媒を用いることもできる。
化学イミド化によりイミド化する場合では、適当な溶媒中で後述の脱水環化試薬の使用によりポリアミド酸を直接イミド化することができる。
前記脱水環化試薬は、ポリアミド酸を化学的に脱水環化してポリイミドとする作用を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。このような脱水環化試薬としては、第三級アミン化合物を単独で用いるか、または、第三級アミン化合物とカルボン酸無水物とを組合せて用いることが、イミド化を効率よく促進させうる点で好ましい。
第三級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも特に、ピリジン、DABCO、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタンが好ましく、DABCOがより好ましい。3級アミンは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
カルボン酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも特に、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。カルボン酸無水物は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
化学イミド化においてポリアミド酸を溶解する溶媒としては、溶解性に優れる極性溶媒が好適である。例えば、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらの中でも特に、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN-メチルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上であることが均一反応をする観点から好ましい。アミド化反応の溶媒としてこれらの溶媒を用いた場合、アミド化反応後の反応混合物からポリアミド酸を分離せずそのまま化学イミド化に用いることができる。
ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000~2000000、好ましくは8000~1000000であり、さらに好ましくは20000~500000である。なお、本明細書において、樹脂の重量平均分子量は公知の測定方法に従って測定することができ、重量平均分子量が上記範囲であることにより、ポリイミド樹脂の合成および取扱い、フィルム化、スフェロイド形成性がより良好となる。
細胞接着性表面は、前記した細胞接着性を示す物質以外に、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤成分をさらに含んでもよい。
細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面[疎水性(特に、超疎水性でない疎水性)の細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面]は、静的水接触角が70°以上であってもよく、転落角が15°以上であってもよく、また、静的水接触角が70°以上かつ転落角が15°以上であってもよい。
特に、細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面[疎水性(特に、超疎水性でない疎水性)の細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面]は、静的水接触角が70°以上であることが好ましい。細胞接着性表面がこのような条件を満たすことにより、スフェロイド形成がより一層促進される。スフェロイド形成性の観点から、静的水接触角は、より好ましくは75°超であり、さらに好ましくは77°以上、よりさらに好ましくは79°以上、特に好ましくは80°以上(例えば80°超)であり、静的水接触角の上限は、例えば150°未満であり、好ましくは120°以下(例えば、120°未満)であり、より好ましくは110°以下であ、特に100°以下(例えば99°未満、98°以下、97°以下、95°以下等)であり、さらに好ましくは90°未満である。
一方、細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面[親水性(特に、超親水性でない親水性)の細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面]の静的水接触角は、好ましくは65°以下、より好ましくは55°以下、さらに好ましくは50°以下であってもよい。なお、下限値は、0°以上であってもよく、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であってもよい。
また、同様の観点から、細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面の転落角は、18°以上、19°以上、20°以上、22°以上、24°以上、26°以上、28°以上、30°以上の順で高いほど好ましい。転落角の上限値は、例えば80°未満であり、好ましくは70°以下(例えば70°未満)であり、より好ましくは60°以下(例えば60°未満)であり、さらに好ましくは50°以下(例えば50°未満)である。
なお、このような静的水接触角や転落角は、細胞接着性表面における値であってもよく、細胞接着性を示す物質(又は細胞接着性表面を構成する物質)における値であってもよい。
なお、前記表面特性は公知の方法に従って測定することができる。例えば、静的水接触角や転落角は、例えば後述の方法等により測定してもよい。
細胞接着性を示す表面が凹部の底面を構成する場合、細胞接着性を示す物質が、凹部の底面を占める割合としては、特に限定はされないが、凹部の底面のうち、90%以上、95%以上、99%以上、実質的に底面全てを占めることが好ましい。また、底面における細胞接着性表面は観察性の観点から平坦状(平底状、平板状)であることが好ましい。
「細胞非接着性表面」とは、例えば、培養に用いる溶液中において、細胞が当該表面上に沈降した場合に、当該細胞が、その形状をほとんど変化させず、全く接着しないか又は一時的に弱く接着したとしても自然に脱離する表面のことである。細胞非接着性表面は、少なくとも細胞非接着性を示す物質で構成されていればよい。
細胞非接着性を示す物質としては、培養に用いる細胞が接着しないか、又は用いる細胞の細胞膜に存在するたんぱく質や糖鎖等の細胞表面分子に対して結合しない物質であれば特に限られず用いることができ、生体適合性を有するものであっても、有さないものであってもよい。
また、細胞非接着性を示す物質(又は細胞非接着性表面)は、疎水性を示すものであっても親水性を示すものであってもよく、例えば、超撥水性(超疎水性)のものや超親水性のものであってもよい。細胞の非接着性、スフェロイドの均一性および形成性等の観点から、疎水性(特に超疎水性)[例えば、疎水性又は親水性(特に疎水性)の細胞接着性表面又は当該表面を構成する樹脂(さらにはその接触角)に対してより疎水性(特に超疎水性)]を示す物質が特に好ましいが、親水性(特に超親水性)[例えば、親水性又は疎水性(例えば、疎水性)の細胞接着性表面又は当該表面を構成する樹脂(さらにはその接触角)に対してより親水性(特に超親水性)]を示す物質も好ましい。
このような物質の一例を示すと、具体的には、例えば、(ポリ)エチレングリコール及びその誘導体、MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)及びその誘導体、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)及びその誘導体等を含む化合物あるいはそれら化合物の重合体[例えば、poly-HEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)等]、SPC(セグメント化ポリウレタン)及びその誘導体等の化合物や、生体から取得されたタンパク質(アルブミン等)、細胞が接着しない糖鎖(アガロース、セルロース等)を、細胞の種類に応じて適宜選択して用いることができる。なかでも、細胞接着性表面や合成樹脂との接着性の観点から、または、細胞培養用基材ないし細胞培養用シートの製造工程を簡素化できる観点から、または、得られる培養細胞もしくはスフェロイドの均一性が向上する観点から、MPC及びその誘導体あるいはそれらの重合体が好ましい。
なお、細胞非接着性を示す物質は、取扱性、所望の疎水性(例えば、超疎水性)・親水性(例えば、超親水性)の程度等に応じて、適宜、変性したものを使用してもよい。例えば、親水性の物質を架橋処理等することで、親水性と水に対する低溶解性を両立させてもよい。また、原料となる物質(例えば、疎水性又は親水性)を、適宜、疎水化処理ないし親水化処理(例えば、疎水性基ないし親水性基の導入等)し、所望の疎水性ないし親水性の材質を得てもよい。
細胞非接着性を示す物質の固定化は、これらを含有する溶液を基材表面上で乾燥させる方法、当該物質を溶融させて圧着する方法、基材に塗布した当該物質をUV等のエネルギー線で硬化させる方法、当該物質が有する官能基と基材上の官能基との間で化学反応(例えば、カルボキシル基やアミノ基等の官能基間の縮合反応等)を起こさせて共有結合を形成させる方法、又は当該物質が有するチオール基と基材に予め形成された金属(プラチナ、金等)薄膜とを結合させる方法により、当該基材表面上に固定化することができる。固定化する際の厚みは特に限定されず、0.01~1000μmが例示される。
細胞非接着性を示す表面が凹部の内側面を構成する場合、細胞非接着性を示す表面が凹部の内側面を占める割合としては、特に限定はされないが、培養細胞の付着性を低減させる程度であることが好ましい。好ましくは内側面の面積の90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは全てを占めることが好ましい。
細胞非接着性を示す表面は、培養される細胞のサイズを均一にしたり、円形度を向上させたりする観点から、その表面特性として、例えば、静的水接触角を指標として判断することができる。例えば、前記細胞非接着性を示す物質で形成された疎水性表面である場合、静的水接触角は、好ましくは90°以上、より好ましくは93°以上、さらに好ましくは95°以上である。また、150°以下であってもよく、好ましくは130°以下、より好ましくは120°以下である。
一方、親水性表面である場合、静的水接触角は、好ましくは65°以下、より好ましくは55°以下、さらに好ましくは50°以下である。また、0°以上であってもよく、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上である。
このような物質の一例を示すと、疎水性が高いMPC(又は当該MPCで形成された表面)では、静的水接触角が、例えば90°以上、100°以上のような静的水接触角を実現しうる。
なお、このような静的水接触角は、細胞非接着性表面における値であってもよく、細胞非接着性を示す物質(又は細胞非接着性表面を構成する物質)における値であってもよい。
また、静的水接触角は、例えば後述の方法等により測定してもよい。
得られるスフェロイドのサイズ均一性及び円形度を向上させる観点から、細胞接着性表面と細胞非接着性表面との接着程度のバランスをとることが好ましい。よって、仮に、細胞非接着性表面が細胞に接着性を示すものであっても、細胞接着性表面より低接着性であればよい。例えば、上記の静的水接触角を指標とした場合、細胞非接着性表面(又は細胞非接着性を示す物質)における静的水接触角の差(又はその絶対値)が3°以上(例えば、5°以上)であることが好ましく、10°以上(例えば、12°以上)であることがより好ましく、15°以上であることがさらに好ましい。また、上記差(又はその絶対値)の上限は、細胞非接着性表面(又は細胞非接着性を示す物質)及び細胞接着性表面(又は細胞接着性を示す物質)の疎水性・親水性の組み合わせ等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、100°、90°、80°、70°、60°、50°、40°、30°などであってもよい。
これらの特性を有する表面は、凹部の内側面が細胞非接着性表面に、凹部の底面が細胞接着性表面となるよう、それぞれ独立して、当該特性を有する物質がベース材表面に物理的又は化学的に固定又は配置されて形成されたものであっても、前記該当箇所が当該特性を有する物質で作製したシート状のもので構成されてもよい。
また、前記した細胞培養用シートにおいては、凹部の辺縁部でもあるシート表面は、細胞培養用シート製造の簡便化の観点から細胞非接着性表面を有していてもよい。シート表面の細胞非接着性表面は、凹部の内側面と同じ細胞非接着性表面であっても、異なる細胞非接着性表面であってもよい。同じ細胞非接着性表面の場合は、シート表面と凹部の内側面は連続した表面を有していてもよい。
かかる構成の凹部を有する細胞培養用シートは、凹部の底面を含む層と凹部の内側面を含む層を含む層状構造物であってもよい。ここで、凹部の内側面を含む層とは、層自体は貫通孔を有する層を構成している。よって、前記シートの一態様として、貫通孔を有する細胞非接着性表面を有する層と、細胞接着性表面を有する層を含む積層物である態様を挙げることができる。
貫通孔を有する細胞非接着性表面を有する層は、貫通孔を形成する観点から、または細胞培養用シートの製造を簡略化する観点から、細胞非接着性を示す物質を層状のベース材に固定化したものが好ましい。
層状のベース材としては、当該技術分野で公知のものであれば用いることができる。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、シリコン等の合成樹脂、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成ゴムや天然ゴム、ガラス、セラミック、ステンレス鋼等の金属材料等からなる板状体が挙げられる。透明のベース材であることも好ましい形態の一つである。
層状のベース材への細胞非接着性を示す物質の固定化は、作業性の観点から、後述の貫通孔を形成してから、固定化を行うことが好ましい。
貫通孔は、好ましくはその壁が前記した凹部の内側面に相当するものであり、開口部やその反対の端部の孔径や形状は、前記した凹部と同様に設定することができる。また、貫通孔の深さは細胞非接着性表面を有する層の厚みに相当するが、前記した凹部の深さにも相当し、凹部と同様に設定することができる。なお、細胞非接着性を示す物質を層状のベース材に固定化する場合は、細胞非接着性を示す物質の層として、例えば、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、細胞非接着性を示す物質の層と基材を含めた層全体の厚みが、前記した細胞非接着性表面を有する層の厚みの範囲内になるのであれば適宜設定することができる。
貫通孔の形成は、前記したサイズの貫通孔が形成できるのであれば特に限定されず、実施することができる。例えば、穿孔加工(ドリル等)、光微細加工(レーザー(例えば、CO2レーザー、エキシマレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー)等)、エッチング加工、エンボス加工等により形成することができる。前記加工において、貫通孔の形状がテーパー形状になるような加工であってもよく、その際に、端部の周囲が変形して、開口部の辺縁部と、開口部と隣接する開口部の中間領域に位置する部分の層厚みが異なるような構造を形成してもよい。
細胞接着性表面を有する層の厚みは、例えば、1nm以上、4mm以下であり、1μm以上、1mm以下であることが好ましく、凹部の底面厚みと同じであっても良い。
前記細胞培養用シートとしては、前記した細胞接着性表面を有する層と細胞非接着性表面を有する層との間に、さらに接着層(粘着層)を含む態様も含む。
接着層としては、当該技術分野で公知のものであれば用いることができる。例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、合成ゴム、天然ゴムなどが挙げられ、好ましくは低溶出性の接着層を用いることができる。市販の両面テープなどを用いてもよい。
接着層の厚みは、特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、適宜設定することができる。例えば、0.5~100μmが例示される。
前記細胞培養用シートは、貫通孔を有する細胞非接着性表面を有する層及び細胞接着性表面を有する層をこの順に積層して製造することができる。上記以外の層が積層されていても良く、空洞を有する層が積層されていても良い。
各層を積層する際には、予め調製した各層を順に積層するものであってもよく、予め調製した層上に別途、層を形成する方法であってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。具体的には、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材等の有機ポリマーフィルム、セラミックス、金属、ガラス等)の上に、細胞接着性を示す物質をキャスティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工して加熱することにより細胞接着性表面を有する層をシート状に成形することができる。一方、細胞非接着性表面を有する層のベース材に対して、貫通孔を形成後、細胞非接着性を示す物質を表面にコーティングして、細胞非接着性表面を有する層を予め調製することができる。そして、上記で成形した細胞接着性表面を有する層の剥離シートを剥離後に、別途調製した細胞非接着性表面を有する層を積層することで、製造することができる。なお、細胞非接着性表面を有する層と細胞接着性表面を有する層の積層においては、前記した接着層(粘着層)を用いて積層してもよく、あるいは、溶着(高周波溶着、超音波溶着等)、圧着(熱圧着等)により積層してもよい。
細胞培養用シートは、厚みは特に限定されないが、取り扱い性の観点から、10~5000μmが好ましく、10~2000μmがより好ましい。シート面積も特に限定されず、例えば、0.01~10000cm2、好ましくは0.03~5000cm2が例示される。
かくして得られた細胞培養用シート等の細胞培養用基材は、公知の細胞培養装置にそのまま設置して用いる観点から、対象装置の大きさに合わせて、適宜サイジング加工してもよい。その一方の表面に細胞を含む培地を載せて細胞培養を実施すればよく、該細胞培養用基材を培養用のプレート、プレートの各ウェル、培養シャーレ(培養ディッシュ)、フラスコ、培養バック等の筐体に収容して固定し、固定した該細胞培養用基材の一部または全面において細胞培養を実施することができる。
かかる細胞培養用基材を収容した容器に送液を行なう。送液に用いる装置又は器具としては、例えば、口径が直径3mm以下の送液口部を少なくとも有するものである。送液口部は、直径が3mm以下の送液口を有するものが挙げられ、例えば、2.5mm以下、2.0mm以下、1.7mm以下の口径を有するものであってもよい。また、凹部から気泡を取り除くための送液流量や送液流速の観点から、送液口部の直径と凹部開口部の直径の比(送液口部の直径/凹部開口部の直径)は、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下であることが好ましい。下限は特に限定されず、例えば、0.1以上を挙げることができる。なお、送液口部の直径とは送液口部の最大内径のことである。
送液口部は、前記した大きさの口径を有するのであれば、その形状や材質は特に限定されない。例えば、公知のディスペンサーの送液口部において前記口径を有するように製造または調整されたものや、前記口径を有する注射針、鈍針カニューレ、チップ、ゾンデなども用いることができる。
また、前記送液用装置又は器具は、前記送液口部以外に、送液用液を保持する部材を有するものが好ましい。具体的には、カートリッジやタンク、ボトルであってもよく、シリンジなども用いることができる。その大きさ(容量)や形状、材質は特に限定されない。前記部材は、送液口部とチューブなどを介して間接的に又は直接的に結合していてもよく、一体型に形成されたものであってもよい。
送液用液は、特に限定されない。培養液そのものを用いてもよいし、生理食塩水や緩衝液などを用いてもよい。送液用液として培養液を用いない場合には、送液後に凹部内に充填された液を除去し、その際には完全になくならない程度まで除去してもよく、その後培養液に交換することで、あるいは、送液後にそのまま培養液を加えることで、細胞培養用基材の凹部に培養液を充填した状態にすることができる。また、送液前に、送液用液を事前に細胞培養用基材に注入してから前記送液を行うことができ、この事前注入を行なった際には凹部内に気泡が確認されてもよい。事前注入の方法や送液用液の液量は特に限定されない。
送液の方法は、前記送液口部から流出して凹部内を送液用液で充填することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、凹部の開口上端面の0.1~10mm上方に送液口部の先端を配置して送液する方法が挙げられる。その際に、送液口部の先端が、基材が設置された培養用容器に予め注入された液内に浸かる位置となるよう配置されてもよい。配置する送液口部は基材1個あたり1個でも、2個以上であってもよい。また、複数の凹部に一度に送液してもよく、細胞培養用基材そのものを、あるいは送液口部を移動させて連続的に又は間欠的に送液してもよい。また、自動化されていても手動であってもよい。一旦送液した後に凹部上方に存在する液を吸引して、再度、同じ凹部の上方でまたは異なる凹部の上方で送液してもよい。この場合、少量の送液と吸引を繰り返すと泡が生じ易くなることから、一度の送液量としては、例えば、10mL以上であってもよく、10~50mLが例示される。
送液流速は、例えば、100cm/s以上を挙げることができる。また、200cm/s以上、250cm/s以上、300cm/s以上などであってもよい。また、上限としては、基材上の細胞非接着性物質が剥離しなかったり、基材が破損したりしない流速が挙げられ、例えば、2000cm/sなどが挙げられる。
また、送液流量としては、特に限定されず、例えば、開口部面積1cm2あたり0.001mL/s以上が例示される。0.01mL/s以上、0.03mL/s以上、0.05mL/s以上、0.07mL/s以上などであってもよく、上限としては、例えば、20mL/sが挙げられる。
また、前記送液は無菌環境下で行うことができる。本発明においては、凹部内に液を充填できれば、必要により、細胞培養に要する公知の処理(例えば、安全キャビネット内での培養液交換、インキュベーター内での静置)を細胞培養用基材に行ってもよい。
このようにして、少なくとも凹部内に気泡を形成又は残存させにくい状態で培養液を充填した細胞培養用容器を製造することができる。なお、本発明においては、液が存在しない所に液を充填して形成された気泡であっても、充填後しばらく放置してから形成された気泡であっても、除くことができる。
得られた細胞培養用容器は、気泡抜けが目視で確認できることから利便性も高く、また、気泡が培養面に存在しにくいことから、培養して得られる細胞やスフェロイドの均一性が高いものである。よって、本発明はまた、前記方法により製造された細胞培養用容器を用いる、細胞の培養方法、ならびに、スフェロイドの製造方法を提供する。即ち、本発明の細胞の培養方法、及び、スフェロイドの製造方法は、前記した送液工程を少なくとも含むものであれば特に限定はない。細胞の培養工程やスフェロイドの培養工程では、公知技術に従って適宜設定することができる。
また、本発明における送液は、凹部内に気泡を形成又は残存させにくくなって、培養液を充填することができることから、本発明の一態様として、開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を有する細胞培養用基材と少なくとも前記凹部に培養液を供える細胞培養用容器に、口径が直径3mm以下の送液口部から、及び/又は、流速100cm/s以上で、送液用液を送液する、培養液を含有する細胞培養用容器の脱泡方法を提供することができる。ここでの送液方法や適用できる基材は、本発明の細胞培養用容器の製造方法を参照して設定することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、室温とは20~30℃を意味する。
製造例1
<細胞接着性表面を有する層の調製(含フッ素ポリイミドフィルムの調製)>
500mL容量の三口フラスコに、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物25.332g(0.057モル)、N-メチルピロリドン166.60gを仕込み溶解した。そこへ、1,4-ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン16.668g(0.049モル)をN-メチルピロリドン71.4gに溶解したものを滴下投入し、窒素雰囲気下室温で撹拌後、5日間保持することで、含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物(固形分濃度15質量%、6FDA/TPEQポリアミド酸)を得た。該ポリアミド酸の重量平均分子量は15.3万で、粘度は6.7Pa・sであった。なお、ポリアミド酸の重量平均分子量と、焼成後の含フッ素ポリイミドの重量平均分子量とは実質的に同一である。
上記で得られた含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物を、焼成後の含フッ素ポリイミドフィルムの厚みが40μmとなるようにダイコーターを用いてガラス基体上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、360℃にて1時間、窒素雰囲気下で塗膜の焼成を行った。その後、焼成物をガラス基体から剥離して、含フッ素ポリイミドフィルムを得た。この含フッ素ポリイミドフィルムの静的水接触角は83.2°、転落角は26.4°であった。
上記における物性の測定方法は以下の通りである。
(重量平均分子量の測定)
装置:東ソー株式会社製HCL-8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM-H
溶離液(LiBr・H2O、リン酸入りNMP):0.01mol/L
測定方法:0.5重量%の溶液を溶離液で作製し、ポリスチレンで作製した検量線をもとに分子量を算出する。
(粘度の測定)
装置:アズワン製 粘度計 VISCOMETER TV-22
設定:VI RANGE:H ROTOR No.6 SPEED:10rpm
粘度計校正用標準液:日本グリース(株) JS 14000
測定方法:粘度計校正用標準液で校正後、ワニス0.3gを用いて測定する。(測定温度:23℃)
(静的水接触角の測定)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM-500)
測定方法:表面(細胞非接着性表面又は細胞接着性表面)又はフィルム(細胞非接着性又は細胞接着性を示す物質で形成したフィルム)上に水2μLを滴下した直後の液滴の付着角度を測定する(測定温度:25℃)。
(転落角の測定)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM-500)
測定方法:表面(細胞非接着性表面又は細胞接着性表面)又はフィルム(細胞非接着性又は細胞接着性を示す物質で形成したフィルム)上に水25μLを滴下した後、シートを連続的に傾けていき、流れ落ちた際の角度を転落角とする(測定温度:25℃)。
<細胞非接着性表面を有する層の調製>
両面テープ(厚み25μm)の片面の剥離テープを剥離後透明なPETフィルム(厚み250μm)に貼り合わせたものに対して、CO2レーザーを用いて、直径300μm、ピッチ500μmで千鳥配置の貫通孔を形成した(形成された貫通孔:400個/cm2、42000個/シート、レーザー入射側孔径500μm、レーザー放出側孔径300μm)。その後、PETフィルム側の表面にスピンコーター(ミカサ製:MS-A150)を用いて、MPCポリマー溶液(0.5%エタノール溶液)を厚みが0.05μmとなるようにコーティングし、50℃の乾燥機内で2時間乾燥処理して、細胞非接着性表面を有する層[PETフィルムのコーティング層(MPCポリマーのコーティング層)側の静的水接触角107.5°]を得た。
<細胞培養用シート・細胞培養用基材の調製>
次いで、細胞非接着性表面を有する層の両面テープのもう一方の剥離テープを除去した側の面に、上記で作製した細胞接着性表面を有する層を貼りあわせて、細胞培養用シートを調製した(シート厚み:315μm)。得られた細胞培養用シートを培養プレート内へ設置し、細胞培養に用いる細胞培養用基材を完成した。
実施例1
上記で調製した細胞培養用基材を用いて脱泡処理を行った。具体的には、安全キャビネット内で、はじめに細胞培養用基材へ20mL程度のPBSをデカントで加えた(この時の培養容器の状態は図1の未脱泡状態であり、99%程度のウェルに気泡が認められた)。次に、18Gノンベベル針(内径0.9mm、テルモ製)を取り付けた20mLオールプラスチック(ニプロ製)に20mLのPBSを充填し、針の先端が容器内のPBSの液中に浸かる位置(凹部開口上端面から2mm程上方)で水平移動させながらシリンジを押し出すことによって、基材全表面の1/3程度の範囲に8秒程で全量を送液(開口部面積1cm2あたり約0.09mL/s、流速約393cm/s)した後、次いで、容器内のPBSをシリンジで吸い取ってシリンジにPBSを再充填してから、再び、残る範囲に対しても同様の送液を繰り返して脱泡を行った(図1の脱泡済みの状態)。ほとんどのウェルに気泡が認められなくなったが、気泡が残った部分に対しては上記の脱泡を同様にして行った。かかる処理により、ほぼ全ての気泡を除くことができた。その後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で15分間静置した後、再びシリンジに充填したPBSを押し出すことで新たに生じた気泡を取り除いた。このような脱泡後、凹部からPBSが完全にはなくならないようにPBSを除去してから、1%抗生物質を含んだKBM ADSC-2培地を21mL加えて、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で1晩静置して、凹部に培養液が充填された培養基材を有する培養容器を得た。
試験例1
<細胞の拡大培養>
細胞は、ヒト脂肪由来幹細胞(Human adipose derived stem cell:AdSC)を用いた。AdSCはメーカー品(ロンザ社、PT-5006)を購入して使用した。
凍結細胞を37℃の恒温水槽で溶解させ、5%FBS、1%抗生物質を含んだKBM ADSC-2培地(基礎培地、コージンバイオ製)9mLに加えた。次いで、210×gで5分間の遠心処理を施した後、上清を除去して1mLの基礎培地に分散させた。800mL細胞培養用フィルターキャップ付フラスコ(住友ベークライト製)に細胞懸濁液を加えた後の全量が30mLとなるように基礎培地を予め加えておき、そこに細胞懸濁液を1.5×106細胞/フラスコとなるように加え、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で培養(拡大培養)を行った。
<スフェロイドの作製>
培養用フラスコから培地を除去し、細胞剥離液accutase(プロモセル製)を5mL添加した後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で5分程度保持して細胞を剥離した。次いで、剥離液を回収し、PBSを用いて総量が15mLとなるようにしてチューブへ移した。210×gで5分間遠心処理を施し、4mLの1%抗生物質を含んだKBM ADSC-2培地で懸濁させて、細胞数のカウントを行った。その後、1.0×106細胞/mLの濃度となるように調製した。
実施例1で調製した培養容器から培地を除去し、500細胞/穴となるように細胞を播種した。安全キャビネット内で15分静置した後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて3日間培養した(図2)。
結果、未脱泡の場合には、気泡の残存が散見されるが、本発明の方法により得られた培養容器の凹部内には、気泡が確認できなかった(図1)。また、本発明の方法により得られた培養容器を用いることで、ほぼ全てのキャビティ内にスフェロイドを作製することができた(図2)。容器をプレートスキャナー(スクリーン製)で撮影し、得られた画像を9分割して各地点でのスフェロイド作製効率を算出したところ、スフェロイド作製効率は99±1%(9か所の平均値)であった。
実施例2
各ウェルの培養面に開口部口径が2.5μmの凹部が複数設けられているNanoCulture Plate MS Pattern High-Binding 24 well(SCIVAXライフサイエンス製)を用いる以外は、実施例1を参照にして培養容器を得た。具体的には、18Gノンベベル針(内径0.9mm、テルモ製)を取り付けた20mLオールプラスチック(ニプロ製)にPBSを充填し、各ウェルにおいて、針の先端が凹部開口上端面から2mm程上方となる位置で、8秒程で20mLを送液(開口部面積1cm2あたり約0.09mL/s、流速約393cm/s)して脱泡した。
実施例3
各ウェルの培養面に開口部口径が2.5μmの凹部が複数設けられているNanoCulture Plate MS Pattern Low-Binding 24 well(SCIVAXライフサイエンス製)を用いる以外は、実施例1を参照にして培養容器を得た。具体的には、18Gノンベベル針(内径0.9mm、テルモ製)を取り付けた20mLオールプラスチック(ニプロ製)にPBSを充填し、各ウェルにおいて、針の先端が凹部開口上端面から2mm程上方となる位置で、8秒程で20mLを送液(開口部面積1cm2あたり約0.09mL/s、流速約393cm/s)して脱泡した。
試験例2
実施例2と実施例3の培養容器について、脱泡処理前の培養基材に培養液を充填した場合(未脱泡)と対比して顕微鏡観察を行なった。泡が残っている部分は黒く、泡が残っていない部分が白く見える部分である。
実施例2(図3)及び実施例3(図4)の24ウェルプレートにおいても気泡が形成されにくいことが確認され、実施例1よりも小さい径の凹部を有する容器でも脱泡することができ、また、培養面の素材に左右されずに脱泡することができた。従来は遠心によって脱泡していたが、本手法を用いることで無菌環境から容器を出すことなく脱泡することができた。
本発明の方法により、気泡の影響を受けにくい細胞培養用容器を簡便に調製することができ、細胞培養の作業自体も効率的に行なうことが可能となるので、例えば、スフェロイド含有製剤などの細胞製剤の分野に好適に用いることができる。

Claims (14)

  1. 開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を有する細胞培養用基材と少なくとも前記凹部に培養液を供える細胞培養用容器の製造方法であって、送液前に、送液用液を事前に細胞培養用基材に注入してから、凹部の0.1~10mm上方から、口径が直径3mm以下の送液口部から、流速100cm/s以上、かつ開口部面積1cm 2 あたり0.001mL/s以上の流量で、注入された液内に浸かる位置で、送液用液を送液する工程を含む、細胞培養用容器の製造方法。
  2. 開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を有する細胞培養用基材と少なくとも前記凹部に培養液を供える細胞培養用容器の脱泡方法であって、送液前に、送液用液を事前に細胞培養用基材に注入してから、凹部の0.1~10mm上方から、口径が直径3mm以下の送液口部から、流速100cm/s以上、かつ開口部面積1cm 2 あたり0.001mL/s以上の流量で、注入された液内に浸かる位置で、送液用液を送液する、細胞培養用容器の脱泡方法。
  3. 径が直径2.5mm以下の送液口部から送液する、請求項1又は2記載の方法。
  4. 200cm/s以上で送液する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 細胞培養用容器をCO2インキュベーター内で静置する工程を含む、請求項2~4のいずれかに記載の方法。
  6. 開口部面積1cm2あたり0.01mL/s以上の流量で送液する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
  7. 口径が直径2.5mm以下の送液口部から、流速200cm/s以上、かつ開口部面積1cm 2 あたり0.01mL/s以上の流量で、送液用液を送液する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
  8. 口径が直径2.0mm以下の送液口部から、流速250cm/s以上、かつ開口部面積1cm 2 あたり0.03mL/s以上の流量で、送液用液を送液する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
  9. 送液口部の直径と凹部開口部の直径の比(送液口部の直径/凹部開口部の直径)が30以下である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
  10. 細胞培養用基材が、開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シートである、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
  11. 無菌環境下で行う、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
  12. 送液前に、細胞培養用基材に送液用液を予め注入する、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
  13. 請求項1~12のいずれかに記載の方法により細胞培養用容器を製造又は脱泡し、得られた細胞培養用容器を用いる、細胞の培養方法。
  14. 請求項1~12のいずれかに記載の方法により細胞培養用容器を製造又は脱泡し、得られた細胞培養用容器を用いる、スフェロイドの製造方法。
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