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JP7497011B2 - カルボシランの製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、カルボシランの効率的な製造方法に関する。
Si-C結合を有するカルボシランは、医薬、農薬、光学材料、電子材料等の各種機能性化学品または各種機能性材料を製造するための精密合成用試薬、中間体等として利用される重要な化合物である。
それらカルボシランの一般的な製造法としては、クロロシラン、アルコキシシラン等に、グリニャール試薬、有機リチウム試薬等の有機金属化合物を反応させる方法(方法A)がよく知られている(特許文献1、非特許文献1)。
一方、触媒的な反応促進剤を用いて、特定のSi-OCOR’結合(OCOはオキシカルボニル基のO-C(=O)を示す。R’は、トリクロロメチル基(CCl)、ペンタフルオロフェニル基(C)、または、トリフロオロメチル基(CF)である。)を有するアシロキシシランからの脱炭酸(脱炭酸とはCOの脱離反応を示す。)を行って、Si-R’結合を有するカルボシランを製造する方法(方法B)が報告されている(非特許文献2、3、特許文献2、3)。
方法(B)では、アシロキシシランの種類に応じて、異なる反応促進剤が知られていた。たとえば、アシロキシシランがMeSi-OCOCl(Meはメチル基を示す。)の場合は、トリエチルアミン、N-メチルピロリジンが使用され(非特許文献1)、アシロキシシランがR”MeSi-OCOCl(R”は、メチル基、クロロメチル基、フェニル基、トリメチルシリル基、または水素原子である。)の場合は、4級アンモニウム塩(Et(PhCH)NCl、BuNBr;Et、Ph、Buは、それぞれ、エチル基、フェニル基、ブチル基を示す。)、カリウム塩/クラウンエーテル混合系(KCO/18-クラウン-6)が好ましく使用されている(非特許文献2)。また、アシロキシシランがMeSi-OCOCの場合は、ジメチルホルムアミド溶媒中で、KF、CsFが好ましく使用され(特許文献2)、アシロキシシランがMeSi-OCOCFの場合は、ジメチルホルムアミド溶媒中で、トリフルオロ酢酸カリウムが好ましく使用されている(特許文献3)。
米国特許第6160151号明細書 ロシア国特許出願公開第20130111741号明細書 仏国特許出願公開第2862972号明細書
第4版実験化学講座、24巻、122頁、丸善(1992) H.H.Hergott,G.Simchen,Synthesis,626-627(1980) A.N.Kornev,O.S.Donnikova,V.V.Semenov,Yu.A.Kurskii,Russ.Chem.Bull.,44,145-148(1995)
しかし、従来の方法に関しては、方法(A)では、(1)水または湿気に対する反応性が高いため、取り扱いが容易でなく危険性がある有機金属化合物を使用する必要がある、
(2)有機金属化合物の製造コストが一般に高い、(3)大量の金属塩化物が副生する、などの問題点がある。
また、方法(B)では、(1)これまでに知られていた反応促進剤の活性が十分ではないために、適用できるアシロキシシランが特定の種類に限定されている、(2)生成物の収率が低い、(3)反応系が均一系であるため、ろ過、遠心分離等の簡単な手法により反応促進剤を分離および回収することができない、(4)ジメチルホルムアミド溶媒を使用する場合は、ジメチルホルムアミドが有害物質であるため、環境および健康に対する影響を考慮する必要がある(日本国の厚生労働省は、特定の有害物質に関する作業環境の状態を評価するための指標として「管理濃度」を設定している。作業場所における当該有害物質の濃度は、管理濃度以下とすることが求められる。ジメチルホルムアミドの管理濃度は、10ppmである。)、などの問題点がある。
これらのことから、従来技術の問題点を解決できる、工業的により有利な方法が求められている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、Si-C結合を有するカルボシランを、より安全に効率よく製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アシロキシシランからの脱炭酸によるSi-C結合を有するカルボシランの生成が、(1)共役酸のpKaが特定の範囲の塩基触媒の存在下において効率よく進行すること、(2)特定の構造を有するアシロキシシランにおいて効率よく進行すること、(3)原系と生成系とのエネルギー差の計算値が一定の値以下の反応系において効率的に進行すること、などを見出して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
<1>
Si-OCOR結合(OCOはオキシカルボニル基のO-C(=O)を示す。Rは炭素数1~20の炭化水素基または水素原子を示し、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。)を有するアシロキシシランから、塩基触媒の存在下で、脱炭酸を行う脱炭酸反応工程を含む、Si-R結合を有するカルボシランの製造方法であって、次の(1)~(3)の何れかの条件を満たし、アシロキシシランを形成する前工程を含んでいてもよい、カルボシランの製造方法。
(1)前記塩基触媒が、共役酸のpKaが8~50の範囲である化合物;ホスファゼン化合物;二環式アミン化合物;グアニジン化合物;アミジン化合物;または、それらの化合物に由来する基を有する、有機ポリマー系の化合物もしくは無機系の化合物;である。
(2)前記Si-OCOR結合のRが、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基で置換されたアルキル基もしくはアリール基;または、アルキニル基;である。
(3)前記アシロキシシランからの脱炭酸でカルボシランが生成する反応のエネルギー差の計算値ΔU(エネルギー差の計算値ΔUとは、密度汎関数法(B3LYP/6-31G**の計算レベル)による原系と生成系のエネルギー差(生成系分子の合計の内部エネルギー-原系分子の内部エネルギー)の計算値を示す。)が、20kcal/mol以下である。
<2>
前記前工程が、次の(4)~(6)の何れかの工程であり、前記前工程と、それに続く脱炭酸反応工程とを連続的に行う、<1>に記載の製造方法。
(4)前記Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-OR’結合(R’は
炭素数1~3の炭化水素基を示す。)を有するアルコキシシランに、(RCO)O(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸無水物を反応させて形成する工程。
(5)前記Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-R”結合(R”はアリル基を示す。)を有するアリルシランに、RCOH(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸を反応させて形成する工程。
(6)前記Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-Cl結合を有するクロロシランに、RCOH(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸を反応させて形成する工程。
<3>
前記塩基触媒が、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)、1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Bu)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(ABCO)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、または、それらに由来する基を有する有機ポリマーより選ばれる塩基である、<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>
前記Si-OCOR結合を有するアシロキシシランが、下記一般式(IA)~(ID)から選ばれるアシロキシシランである、<1>~<3>の何れかに記載の製造方法。
Si(OCOR)d (IA)
RCO(SiRm1OCOR (IB)
RCO(SiRO)m2(COR) (IC)
(R 10 SiOCO)11 (ID)
(これら式中、a、b、およびcは、それぞれ独立に、0または1であり;dは、1以上3以下の整数であり;a+b+c+d=4であり;m1およびm2は、それぞれ独立に、2以上の整数であり;Rは、前記と同義であり;R~R10は、それぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子であり、前記炭化水素基または前記アルコキシ基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよく;e、f、およびgは、それぞれ独立に、0または1であり;e+f+g=3であり;hは、2~4の整数であり;R11は、炭素数1~20のh価の炭化水素基であり、前記h価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
本発明により、Si-C結合を有するカルボシランを従来の方法に比べより安全に効率よく製造できるという効果を有する。
詳細には、本発明の一実施態様であるSi-C結合を有するカルボシランの製造方法(以下、「本実施態様に係る製造方法」と略す場合がある。)は、次のような特徴を有する。
(1)原料および塩基の取り扱いが容易で、安全性も高い。
(2)大量の塩などの廃棄物を生じない反応系である。
(3)固体塩基を使用する場合、塩基の分離および回収を容易に行うことができる。
本発明の製造方法は、製造プロセスの安全性向上、高効率化等を可能にするもので、従来技術に比べて経済性、低環境負荷性等の面で、大きな利点を有すると考える。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、特段の記載がない限り、本明細書中のある式中の記号が他の式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
本実施態様に係る製造方法は、Si-OCOR結合(OCOはオキシカルボニル基のO-C(=O)を示す。Rは炭素数1~20の炭化水素基または水素原子を示す。前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。)を有するアシロキシシランから、塩基触媒の存在下で、脱炭酸を行う脱炭酸反応工程を含む、Si-R結合を有するカルボシランを製造する方法である。
なお、本明細書において、「反応に関与しない基」とは、脱炭酸反応の反応活性、または脱炭酸反応および後述するアシロキシシラン形成反応の反応活性を示さず、かつ、これらの反応に悪影響を及ぼさない基を意味する。
本実施態様において、原料として使用できるアシロキシシランとしては、たとえば、下記一般式(IA)~(ID)で表されるアシロキシシランが挙げられる。
Si(OCOR)d (IA)
RCO(SiRm1OCOR (IB)
RCO(SiRO)m2(COR) (IC)
(R 10 SiOCO)11 (ID)
これら式中、a、b、およびcは、それぞれ独立に、0または1であり;dは、1以上3以下の整数であり;a+b+c+d=4である。また、m1およびm2は、それぞれ独立に、2以上の整数である。Rは、前記と同義である。R~R10は、それぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子であり、前記炭化水素基または前記アルコキシ基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。e、f、およびgは、それぞれ独立に、0または1であり;e+f+g=3である。hは、2~4の整数である。R11は、炭素数1~20のh価の炭化水素基であり、前記h価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。
~R10で表される炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
炭化水素基がアルキル基の場合、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~16、より好ましくは1~12である。アルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基の具体例としては、炭素数が1~6のアルコキシ基、炭素数が1~6のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、およびハロゲン原子をより具体的に示せば、メトキシ基、エトキシ基、ヘキソキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;およびフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、2-メトキシエチル基、3-エトキシプロピル基、2-メトキシカルボニルエチル基、トリフルオロメチル基、3-クロロプロピル基等が挙げられる。
また、炭化水素基がアリール基の場合、炭化水素環系または複素環系の1価の芳香族有機基を使用できる。アリール基が炭化水素環系の場合、炭化水素環系の炭素数は、好まし
くは6~18、より好ましくは6~14である。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられる。また、アリール基が複素環系の場合、複素環中のヘテロ原子は硫黄、酸素原子等である。また、アリール基の炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは4~8である。アリール基の具体例としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられる。
アリール基の水素原子の一部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基の具体例としては、上記のアルキル基の場合に示したもの等を挙げることができる。また、その他の反応に関与しない基として、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基、オキシエチレンオキシ基等が挙げられる。
反応に関与しない基で置換されたアリール基の具体例としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、オクトキシフェニル基、メチル(メトキシ)フェニル基、フルオロ(メチル)フェニル基、クロロ(メトキシ)フェニル基、ブロモ(メトキシ)フェニル基、2,3-ジヒドロベンゾフラニル基、1,4-ベンゾジオキサニル基等が挙げられる。
さらに、炭化水素基がアラルキル基の場合には、アラルキル基の炭素数は、好ましくは7~19、より好ましくは7~15である。アラルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基の具体例としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、2-ナフチルメチル基、9-アントリルメチル基、(4-クロロフェニル)メチル基、1-(4-メトキシフェニル)エチル基等が挙げられる。
また、炭化水素基がアルケニル基の場合には、アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~18、より好ましくは2~14である。アルケニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基の具体例としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等の他、上記に示したアリール基等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基、9-デセニル基、2-フェニルエテニル基、2-(メトキシフェニル)エテニル基、2-ナフチルエテニル基、2-アントリルエテニル基等が挙げられる。
炭化水素基がアルキニル基の場合、アルキニル基の炭素数は、好ましくは2~18、より好ましくは2~16である。アルキニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基の具体例としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等の他、上記に示したアリール基等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルキニル基の具体例としては、フェニルエチニル基、1-プロピニル基、3-フェニル-1-プロピニル基等が挙げられる。
一方、R~R10が、アルコキシ基の場合は、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~16、より好ましくは1~12である。アルコキシ基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基の具体例としては、前記のアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロヘキソキシ基等が挙げられる。
また、R~R10が、ハロゲン原子の場合、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、または臭素原子等であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子、より好ましくは塩素原子である
11は、炭素数1~20のh価の炭化水素基を示す。R11で表される炭素数1~20のh価炭化水素基とは、炭素数1~20のアルカン、芳香族環等から水素原子をh個除いた連結基である。h価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~16、より好ましくは1~12である。h価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。
なお、hは、2~4の整数であり、好ましくは2である。
h価の炭化水素基がアルカンから水素原子をh個除いた脂肪族連結基である場合、アルカンの炭素数は、好ましくは1~16、より好ましくは1~12である。アルカンから水素原子をh個除いた脂肪族連結基に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基の具体例としては、R~R10で表されるアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。
具体的な脂肪族連結基としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、メトキシエタン、エトキシプロパン、メトキシカルボニルエタン、ジフルオロメタン、クロロプロパン等から水素原子をh個除いた基が挙げられる。
h価の炭化水素基が芳香族環から水素原子をh個除いた芳香族連結基である場合には、当該芳香族環は、芳香族炭化水素環または芳香族複素環である。
芳香族炭化水素環の場合、芳香族炭化水素環の炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等が挙げられる。
芳香族環が芳香族複素環の場合、芳香族複素環中のヘテロ原子は硫黄、酸素原子等である。また、芳香族複素環の炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは4~8である。芳香族複素環の具体例としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン等が挙げられる。
芳香族環から水素原子をh個除いた芳香族連結基に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基の具体例としては、R~R10で表されるアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。また、その他の反応に関与しない基として、芳香族環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基、オキシエチレンオキシ基等が挙げられる。
具体的な芳香族連結基としては、ベンゼン、メチルベンゼン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ブトキシベンゼン、オクトキシベンゼン、メチル(メトキシ)ベンゼン、フルオロ(メチル)ベンゼン、クロロ(メトキシ)ベンゼン、ブロモ(メトキシ)ベンゼン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、1,4-ベンゾジオキサン等から水素原子をh個除いた基が挙げられる。
さらに、Rは炭素数1~20の炭化水素基または水素原子を示し、Rが炭化水素基の場合は、炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~16、より好ましくは1~12である。炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基の具体例としては、R~R10で表されるアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。
Rで表される炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。それらの基の具体例としては、前記のR~R10
の基の説明で示したもの等が挙げられる。
それらの基の中で、反応性の点では、Rは、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基で置換されたアルキル基もしくはアリール基、または、アルキニル基であることが好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子がより好ましい。
それらの基の具体例を示すと、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、フルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、クロロメチル基、ペンタクロロエチル基、ニトロメチル基、シアノメチル基、ペンタフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、フルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、テトラクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ジクロロフェニル基、クロロフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、エチニル基、プロピニル基、フェニルエチニル基を挙げることができる。
m1およびm2は、それぞれ独立に、2以上の整数であり、その上限は本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、通常2000以下、好ましくは1000以下である。m1およびm2は、2であることが特に好ましく、すなわち、式(IB)および式(IC)で表されるアシロキシシランは、それぞれ、アシロキシ基を2個有するジシランおよびジシロキサンであることが特に好ましい。
以上より、前記一般式(IA)のアシロキシシランの具体例としては、トリメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMe)、ジメチルビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSiMe)、メチルトリス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSiMe)、テトラキス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSi)、トリ(エトキシ)(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)Si(OEt))、ジ(エトキシ)ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSi(OEt))、トリ(メトキシ)(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)Si(OMe))、ジ(メトキシ)ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSi(OMe))、トリクロロ(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiCl)、ジクロロビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSiCl)、トリメチル(2,3,5,6-テトラフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,3,5,6-FHCO)SiMe)、トリメチル(2,4,6-トリフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,4,6-FCO)SiMe)、トリメチル(2,6-ジフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,6-FCO)SiMe)、トリメチル(2-フルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2-FCCO)SiMe)、トリメチル(2,4,6-トリクロロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,4,6-ClCO)SiMe)、トリメチル(2,6-ジクロロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,6-ClCO)SiMe)、トリメチル(2-クロロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2-ClCCO)SiMe)、トリメチル(3,4,5,6-テトラフルオロ-2-ニトロフェニルカルボニルオキシ)シラン([2-(ON)CCO]SiMe)、トリメチル(2-ニトロフェニルカルボニルオキシ)シラン([2-(ON)CCO]SiMe)、トリメチル(2-シアノフェニルカルボニルオキシ)シラン([2-(NC)CCO]SiMe)、ジメチルフェニル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)S
iMePh)、ジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)(ビニル)シラン((CCO)SiMe(CH=CH))、(3-シアノプロピル)ジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMe[(CHCN])、トリメチル(トリフルオロアセチルオキシ)シラン((CFCO)SiMe)、ジメチルビス(トリフルオロアセチルオキシ)シラン((CFCOSiMe)、トリ(エトキシ)(トリフルオロアセチルオキシ)シラン((CFCO)Si(OEt))、ジ(メトキシ)ビス(トリフルオロアセチルオキシ)シラン((CFCOSi(OMe))、トリクロロ(トリフルオロアセチルオキシ)シラン((CFCO)SiCl)、トリメチル(ペンタフルオロプロピオニルオキシ)シラン((CFCFCO)SiMe)、トリメチル(トリクロロアセチルオキシ)シラン((CClCO)SiMe)、(エトキシ)ジメチル(トリクロロアセチルオキシ)シラン((CClCO)SiMe(OEt))、ジ(エトキシ)メチル(トリクロロアセチルオキシ)シラン((CClCO)SiMe(OEt))、トリ(エトキシ)(トリクロロアセチルオキシ)シラン((CClCO)Si(OEt))、トリクロロ(トリクロロアセチルオキシ)シラン((CClCO)SiCl)、ジクロロビス(トリクロロアセチルオキシ)シラン((CClCOSiCl)、トリメチル(ジクロロアセチルオキシ)シラン((CHClCO)SiMe)、トリメチル(クロロアセチルオキシ)シラン((CHClCO)SiMe)、トリメチル(クロロジフルオロアセチルオキシ)シラン((CClFCO)SiMe)、トリメチル(トリブロモアセチルオキシ)シラン((CBrCO)SiMe)、トリメチル(フェニルエチニルカルボニルオキシ)シラン((PhC≡C)COSiMe)、トリメチル(1-プロピニルカルボニルオキシ)シラン((MeC≡C)COSiMe)等を挙げることができる。
一方、前記一般式(IB)のアシロキシシランの具体例としては、1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシラン((CCO)SiMeSiMe(OCOC))、1,1,2,2,3,3-ヘキサメチル-1,3-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)トリシラン((CCO)SiMeSiMeSiMe(OCOC))等を挙げることができる。
また、前記一般式(IC)のアシロキシシランの具体例としては、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシロキサン((CCO)SiMeOSiMe(OCOC))、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)トリシロキサン((CCO)SiMeOSiMeOSiMe(OCOC))等を挙げることができる。
前記一般式(ID)のアシロキシシランの具体例としては、2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン(1,3-C(COSiMe)、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン(1,4-C(COSiMe)等を挙げることができる。
さらに、本実施態様に係る製造方法で使用されるアシロキシシランとしては、アシロキシシランからの脱炭酸でカルボシランが生成する反応のエネルギー差の計算値ΔUが、20kcal/mol以下であるアシロキシシランも、好ましく利用される。ΔUの上限は、好ましくは18kcal/mol以下、より好ましくは16kcal/mol以下であり、また、ΔUの下限は特に制限されないが、通常1kcal/mol以上である。アシロキシシランからの脱炭酸反応は、生成系の分子の合計の内部エネルギーが原系の分子の
内部エネルギーよりも高いため、熱力学的には吸熱的反応となり、加熱等による外部からのエネルギー供給が必要な反応である。しかるに、ΔUが上記範囲内であることにより、反応に要するエネルギーが十分小さくなり、300℃程度以下の加熱温度でも脱炭酸反応を進行させることができると考えられる。
ここで、エネルギー差の計算値ΔUとは、密度汎関数法(B3LYP/6-31G**の計算レベル)による原系と生成系とのエネルギー差(生成系分子であるカルボシランとCOの内部エネルギーの合計から原系分子であるアシロキシシランの内部エネルギーを差し引いたエネルギー=U(カルボシランの内部エネルギー)+U(COの内部エネルギー)-U(アシロキシシランの内部エネルギー))の計算値を示す。
アシロキシシランがアシロキシ基を1個または複数個有するモノシランの場合、それらの具体例としては(角括弧内は、ΔUの計算値(kcal/mol)を示す。複数のアシロキシ基がある場合は、1個のアシロキシ基が脱炭酸反応を起こす場合の計算値を示す。)、(エチニルカルボニルオキシ)トリクロロシラン((HC≡CCO)SiCl)[0.67]、(1,3-ブタジイニルカルボニルオキシ)トリメチルシラン((HC≡CC≡CCO)SiCl)[4.81]、(エチニルカルボニルオキシ)トリメチルシラン((HC≡CCO)SiMe)[5.72]、テトラキス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSi)[6.18]、ジクロロビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO2SiCl)[6.19]、ビス(ペンタフルオロフェニル)ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO2Si(C)[6.38]、(ジシアノメチルカルボニルオキシ)トリメチルシラン([(NC)CHCO]SiMe)[6.47]、トリメチル(1-プロピニルカルボニルオキシ)シラン((MeC≡CCO)SiMe)[6.57]、トリクロロ(シアノメチルカルボニルオキシ)シラン((NCCHCO)SiCl)[6.67]、トリメチル(フェニルエチニルカルボニルオキシ)シラン((PhC≡CCO)SiMe)[6.76]、トリクロロ(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiCl)[7.27]、(トリクロロメチルカルボニルオキシ)トリクロロシラン((CClCO)SiCl)[7.28]、アセトキシトリクロロシラン((MeCO)SiCl)[7.79]、メチルトリス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMe)[7.96]、(ベンジルカルボニルオキシ)トリクロロシラン((PhCHCO)SiCl)[8.08]、トリクロロ(ニトロメチルカルボニルオキシ)シラン((ONCHCO)SiCl)[8.17]、トリクロロ(メトキシカルボニルメチルカルボニルオキシ)シラン((MeOCOCHCO)SiCl)[8.24]、メチル(ペンタフルオロフェニル)ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSiMe(C))[8.55]、ジアセトキシジクロロシラン((MeCO)SiCl)[8.56]、(アリルカルボニルオキシ)トリクロロシラン((CH=CHCHCO)SiCl)[8.58]、(トリブロモメチルカルボニルオキシ)トリメチルシラン((CBrCO)SiMe)[8.64]、ジメチルビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSiMe)[8.73]、(ペンタフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCOSi(C))[8.92]、トリエチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiEt)[8.96]、トリエチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiEt)[8.96]、ジクロロ(ペンタフルオロフェニル)(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiCl(C)[8.98]、ジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ビニルシラン((CCO)SiMeVi)[8.99]、クロロジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiClMe)[9.00]、トリメチル(トリクロロメチルカルボ
ニルオキシ)シラン((CClCO)SiMe)[9.00]、トリクロロ(クロロメチルカルボニルオキシ)シラン((ClCHCO)SiCl)[9.18]、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMe(C))[9.26]、トリアセトキシ(トリクロロメチルカルボニルオキシ)シラン((ClCCO)Si(OCOMe))[9.43]、トリメチル(テトラフルオロ-4-ピリジルカルボニルオキシ)シラン((4-CNCO)SiMe)[9.44]、アセトキシトリフルオロシラン((MeCO)SiF)[9.82]、(3-シアノプロピル)ジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMe[(CHCN])[10.01]、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)Si(C)[10.01]、トリクロロ(トリフルオロメチルカルボニルオキシ)シラン((CFCO)SiCl)[10.03]、ジメチルフェニル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMePh)[10.10]、トリメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMe)[10.10]、トリメトキシ(ペンタフルオロフェニルカルボイルオキシ)シラン((CCO)Si(OMe))[10.13]、メチルビス(ペンタフルオロフェニル)(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMe(C)[10.14]、トリメチル(ニトロメチルカルボニルオキシ)シラン([CH(NO)CO]SiMe)[10.29]、トリメチル(2,3,5,6-テトラフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,3,5,6-CHCO)SiMe)[10.34]、トリメチル(トリフルオロメチルスルホニルメチルカルボニルオキシ)シラン((CFSOCHCO)SiMe)[10.36]、トリクロロ(プロピオニルオキシ)シラン((EtCO)SiCl)[10.52]、トリクロロ(メトキシメチルカルボニルオキシ)シラン((MeOCHCO)SiCl[10.70]、トリメトキシ(トリクロロメチルカルボニルオキシ)シラン((CClCO)Si(OMe))[10.78]、トリクロロ(2-プロピルカルボニルオキシ)シラン((2-PrCO)SiCl)[10.95]、ジアセトキシジフルオロシラン((MeCOSiF)[11.07]、メチルジフェニル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMePh)[11.23]、アセトキシジクロロメチルシラン((MeCO)SiClMe)[11.31]、トリメチル(2,4,6-トリフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,4,6-CCO)SiMe)[11.44]、トリメチル(6-ニトロテトラフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン([6-(ON)CCO]SiMe)[11.64]、トリメチル(2,6-ジフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,6-CCO)SiMe)[11.66]、テトラアセトキシシラン((MeCOSi)[11.77]、トリメチル(メチルスルホニルメチルカルボニルオキシ)シラン((MeSOCHCO)SiMe)[11.88]、トリメチル(フェニルスルホニルメチルカルボニルオキシ)シラン((PhSOCHCO)SiMe)[11.94]、トリクロロ(ホルミルオキシ)シラン((HCO)SiCl)[12.01]、アセトキシジクロロメチルシラン((MeCO)SiClMe)[12.04]、トリメチル(シアノメチルカルボニルオキシ)シラン(NCCHCO)SiMe)[12.16]、(tert-ブチルカルボニルオキシ)トリクロロシラン((tert-BuCO)SiCl)[12.29]、エトキシジメチル(トリクロロアセチルオキシ)シラン((CClCO)SiMe(OEt))[12.38]、トリメチル(ジクロロアセトキシ)シラン((CClHCO)SiMe)[12.54]、トリメチル(クロロジフルオロアセトキシ)シラン((CClFCO)SiMe)[12.83]、トリメチル(ヘプタフルオロプロピルカルボニルオキシ)シラン((CFCFCFCO)SiMe)[12.84]、トリメチル(テトラフルオロ-2-ピリジルカルボニルオキシ)シラン((2-CNCO)SiMe)[13.1
8]、トリメチル(ペンタフルオロエチルカルボニルオキシ)シラン((CFCFCO)SiMe)[13.19]、トリクロロ(4-ピリジルカルボニルオキシ)シラン((4-PyCO)SiCl)[13.22]、
トリメチル(ノナフルオロブチルカルボニルオキシ)シラン((CFCFCFCFCO)SiMe)[13.22]、ジクロロビス(ホルミルオキシ)シラン((HCO)SiCl)[13.33]、トリクロロ(ビニルカルボニルオキシ)シラン((CH=CHCO)SiCl)[13.40]、トリメチル(トリフルオロアセトキシ)シラン((CFCO)SiMe)[13.56]、トリクロロ(ベンゾイルオキシ)シラン((PhCO)SiCl)[13.84]、トリメチル(2-ニトロフェニルカルボニルオキシ)シラン([2-(ON)CCO]SiMe)[13.86]、トリクロロ(2-ピリジルカルボニルオキシ)シラン((2-PyCO)SiCl)[13.93]、トリメチル(ペンタフルオロ-2-プロペニルカルボニルオキシ)シラン((CF=CFCFCO)SiMe)[14.13]、ジクロロ(ホルミルオキシ)シラン((HCO)SiHCl)[14.30]、ジクロロ(ホルミルオキシ)メチルシラン((HCO)SiClMe)[14.55]、ビス(ベンゾイルオキシ)ジクロロシラン((PhCOSiCl)[14.97]、(アセトキシ)クロロジメチルシラン((MeCO)SiClMe)[15.10]、アセトキシジフルオロメチルシラン((MeCO)SiFMe)[15.11]、(ベンゾイルオキシ)トリフルオロシラン((PhCO)SiF)[15.21]、トリメチル(2,3,4,5-テトラフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((2,3,4,5-CHCO)SiMe)[15.63]、(クロロアセトキシ)トリメチルシラン((CClHCO)SiMe)[16.07]、(ベンゾイルオキシ)ジクロロメチルシラン((PhCO)SiClMe)[16.79]、(2-フルオロフェニルカルボニルオキシ)トリメチルシラン((2-CFHCO)SiMe)[16.84]、(2、4-ジフルオロフェニルカルボニルオキシ)トリメチルシラン((2、4-CCO)SiMe)[16.88]、((2,6-ジクロロ-4-ピリジルカルボニルオキシ)トリメチルシラン([4-(2,6-CClN)CO]SiMe)[17.03]、クロロ(ホルミルオキシ)ジメチルシラン((HCO)SiClMe)[17.19]、(ベンゾイルオキシ)ジクロロフェニルシラン((PhCO)SiClPh)[17.40]、アセトキシトリメチルシラン((MeCO)SiMe)[18.12]、(4-クロロフェニルカルボニルオキシ)トリメチルシラン((4-ClCCO2)SiMe)[18.17]、(ベンジルカルボニルオキシ)トリメチルシラン((PhCHCO)SiMe)[18.48]、(2,6-ジクロロフェニルカルボニルオキシ)トリメチルシラン((2,6-ClCO)SiMe)[18.50]、トリメチル(ペンタクロロフェニルカルボニルオキシ)シラン(CClCO)SiMe)[18.89]、(ホルミルオキシ)トリメチルシラン((HCO)SiMe)[19.29]等が挙げられる。
また、アシロキシシランが、2個のケイ素原子を有する化合物の場合、ΔUが20kcal/mol以下の化合物の具体例としては(角括弧内は、ΔUの計算値(kcal/mol)を示す。複数のアシロキシ基がある場合は、1個のアシロキシ基が脱炭酸反応を起こす場合の計算値を示す。)、1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシラン((CCO)MeSiSiMe(OCOC))[7.01]、1,1,2,2-テトラメチル-1-(ペンタフルオロフェニル)-2-(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシラン((C)MeSiSiMe(OCOC))[9.82]、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン(1,4-C(COSiMe)[9.94]、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシロキサン((CCO)MeSiOSiMe(OCOC))[10.16]、2,4,5,6-テトラフルオ
ロ-1,3-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン(1,3-C(COSiMe)[10.52]、2,3,5,6-テトラフルオロ-1-トリメチルシリル-4-(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン(1-MeSi-4-(MeSiOCO)C)[10.69]、1,1,3,3-テトラメチル-1-(ペンタフルオロフェニル)-3-(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシロキサン((C)MeSiOSiMe(OCOC))[11.66]、2,4,5,6-テトラフルオロ-1-トリメチルシリル-3-(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン(1-MeSi-3-(MeSiOCO)C)[11.73]等が挙げられる。
本実施態様に係る製造方法によれば、少なくとも1個のアシロキシ基を有するアシロキシシランを原料として、特定の塩基の存在下で、脱炭酸反応を行うことにより、Si-C結合を有するカルボシランを製造できる。
本実施態様における脱炭酸反応工程は、アシロキシシランのアシロキシ基からの脱炭酸によりSi-C結合を有するカルボシランが生成する工程である。アシロキシシランがモノアシロキシシランの場合の反応は、たとえば、下記のスキーム1で表すことができる。
Figure 0007497011000001
また、アシロキシシランとして、アシロキシ基を複数個有する化合物を使用する場合は、アシロキシ基が1個反応して生成するカルボシラン中に未反応のアシロキシ基が残存しているため、それらがさらに反応したカルボシランを与え得る。
たとえば、下記のスキーム2に示すように、アシロキシ基を2個有するアシロキシシラン(スキーム2中、アシロキシシランとして、モノシラン、ジシラン、ジシロキサン、およびジシロキシカルボニル化合物を例示する。)の反応では、アシロキシ基が1個反応して生成したカルボシラン((A)、(C)、(E)、(G))またはアシロキシ基が2個反応して生成したカルボシラン((B)、(D)、(F)、(H))を製造することができる。
Figure 0007497011000002
すなわち、本実施態様における脱炭酸反応工程では、アシロキシ基を複数個有する化合物を原料として使用する場合、アシロキシ基が1個または複数個反応して形成されるカルボシランを製造することができる。したがって、脱炭酸反応工程は、1種単独のカルボシランを得る工程であってもよく、複数種のカルボシランの混合物を得る工程であってもよい。
また、本実施態様に係る製造方法では、アシロキシシランを形成するための前工程を含んでいてもよい。前工程は、例えば、次の(4)~(6)のいずれかの工程であってよい。本実施態様では、前工程と、それに続く脱炭酸反応工程を連続的に行うことにより、カルボシランを製造することもできる。
(4)Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-OR’結合(R’は、炭素数1~3の炭化水素基を示す。)を有するアルコキシシランに、(RCO)O(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸無水物を反応させて形成する工程。
(5)Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-R”結合(R”は、アリル基を示す。)を有するアリルシランに、RCOH(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸を反応させて形成する工程。
(6)Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-Cl結合を有するクロロ
シランに、RCOH(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸を反応させて形成する工程。
R’で表される炭素数1~3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基等が挙げられる。
たとえば、アシロキシシランがモノアシロキシシランの場合、次のスキーム3に示すように、前工程において、モノアルコキシシラン、モノアリルシラン、またはモノクロロシランから、モノアシロキシシランを形成することができる。そして、脱炭酸反応工程において、生成したモノアシロキシシランを脱炭酸することにより、カルボシランを製造することができる。
Figure 0007497011000003
これらの前工程の反応では、触媒等の反応促進剤を必ずしも必要とはしないが、各種の反応促進剤を用いて反応を行うこともできる。
たとえば、(a)モノアルコキシシランとカルボン酸無水物の反応または(b)モノアリルシランとカルボン酸の反応では、無機系または有機系の固体酸、ルイス酸等の酸触媒を使用できる。
また、(c)クロロシランとカルボン酸の反応では、有機系または無機系の塩基を使用できる。
(4)~(6)の前工程は、それぞれ、下記の文献i~iiiに示すような従来公知の方法に準じて行うことができる。
文献i 国際公開第2016/143835号
文献ii Tetrahedron Lett.,892-895(1983)
文献iii Gmelin Handbook:Si:MVol.C,69,190-194
より具体的には、(4)、(5)の前工程における無機系または有機系の固体酸としては、プロトン型のゼオライト、陽イオン交換樹脂等を使用でき、ルイス酸としては、過塩
素酸鉄(III)、塩化鉄(III)、塩化ルテニウム(III)等の化合物(結晶水を含んでいてもよい。)を使用できる。
さらに、(6)の前工程における有機系または無機系の塩基としては、トリエチルアミン、N-メチルピロリジン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等を使用できる。
また、(4)~(6)の前工程における具体的な反応温度、反応時間に関しては、0~200℃程度、5分~6時間程度である。
アシロキシシランを形成する前工程においては、アシロキシシランをとくに単離精製する必要はなく、脱炭酸反応工程と合わせて、ワンポット的な工程で反応を行うことも可能である。このように、アシロキシシランを製造する前工程と、脱炭酸を行う脱炭酸反応工程とを、連続的に行うことにより、アルコキシシラン等から、カルボシランを効率よく製造できる点も、本実施態様に係る製造方法の特徴である。
なお、アシロキシシランからの脱炭酸反応工程においては、アシロキシ基(OCOR)の炭化水素基Rの種類または用いる塩基の種類によって、Rの構造が異性化する場合がある。
たとえば、Rが、ハロゲン原子等の置換基を1~4個有するフェニル基の場合、脱炭酸反応工程において、ハロゲン原子等のフェニル基上の位置が変化した異性体が生成する場合がある。
すなわち、本実施態様に係る製造方法において、Si-OCOR結合を有するアシロキシシランから、脱炭酸反応工程により、Si-R結合を有するカルボシランを製造する際、Rがハロゲン原子等の置換基を1~4個有するフェニル基の場合、ハロゲン原子等の位置が異なる構造異性体の混合物が生成する場合があるが、本実施態様に係る製造方法で得られるカルボシランには、それらの構造異性体の混合物も含められる。
本実施態様における脱炭酸反応工程では、反応を促進するために、塩基触媒使用する。
塩基触媒としては、共役酸のpKaが8~50の範囲である化合物が挙げられる。当該化合物のpKaの範囲については、好ましくは9~45、より好ましくは10~42である。
共役酸のpKaについては、基本的には水中で測定した数値に基づくものであるが、アセトニトリル等の有機溶媒中で測定した数値を使用することもできる。
共役酸のpKaが8~50の範囲の化合物については、従来公知の各種の文献に示されているものなどが挙げられる。それら文献の具体例としては、たとえば、下記の参考文献(A)~(E)等が挙げられる。
(A)化学便覧基礎編II(改訂4版)、II-317、丸善、1993
(B)J.Am.Che.Soc.,79,5441(1957)
(C)Eur.J.Org.Chem.,4852(2006)
(D)J.Org.Chem.,70,1019(2005)
(E)メルク社ホームページのホスファゼン塩基の製品説明(https://www.sigmaaldrich.com/chemistry/chemical-synthesis/technology-spotlights/phosphazenes.html)
したがって、共役酸のpKaが8~50の範囲の化合物の具体例としては(括弧内は、水中での共役酸のpKaの数値と上記文献の記号を示す。また、*は、アセトニトリル中での共役酸のpKaの数値を示す。)、トリエチルアミン(10.72、A)、ジエチルアミン(10.98、B)、ジプロピルアミン(11.00、B)、ジブチルアミン(11.25、B)、ジイソプロピルアミン(11.05)、ジイソブチルアミン(10.50)、tert-ブチルシクロヘキシルアミン(11.23,B)、ベンジルメチルアミ
ン(9.58、B)、ベンジルエチルアミン(9.68、B)、ジ-sec-ブチルアミン(11.01、B)、ジメチルエチルアミン(9.99、B)、メチルジエチルアミン(10.29、B)、ジメチルプロピルアミン(9.99、B)、ジメチルブチルアミン(10.02、B)、ジメチルイソブチルアミン(9.91、B)、ジメチルイソプロピルアミン(10.30、B)、ジメチル-sec-ブチルアミン(10.40、B)、ジメチル-tert-ブチルアミン(10.52、B)、トリプロピルアミン(10.65、B)、トリブチルアミン(10.89、B)、ベンジルジメチルアミン(8.93、B)、ベンジルジエチルアミン(9.48、B)、N-エチルピペリジン(10.40、B)、N-メチルピペリジン(10.08、B)、N-メチルトリメチレンイミン(10.40、B)、N-メチルピロリジン(10.46、B)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(ABCO)(10.76、C)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(8.72、C)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(9.42、C)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)(9.81、C)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)(24.34*、D)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)(25.49*、D)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(17.95*、D)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)(28.4*,E)、tert-ブチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Bu)(26.9*、E)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)(27.6*、E)、tert-オクチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Oct)(26.5*、E)、1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P2-Et)(32.9*、E)、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)(33.5*、E)、1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Bu)(41.9*、E)、1-tert-オクチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Oct)(42.7*、E)等が挙げられる。
また、本実施態様に係る製造方法で用いられる塩基触媒としては、ホスファゼン化合物、二環式アミン化合物、グアニジン化合物、または、アミジン化合物から選ばれる塩基が好ましく使用される。
それらの具体例としては、共役酸のpKaが8~50の範囲の前記化合物、またはその他の化合物が挙げられる。たとえば、ホスファゼン化合物としては、P2-t-Bu、P4-t-Bu、BTPP、BEMP等、二環式アミン化合物としては、ABCO、DABCO等、グアニジン化合物としては、MTBD等、アミジン化合物としては、DBU、DBN等が挙げられる。
触媒活性の点では、上記化合物の中では、ホスファゼン化合物、二環式アミン化合物、またはグアニジン化合物がより好ましく、ホスファゼン化合物、または二環式アミン化合物がさらに好ましい。
さらに、本実施態様に係る製造方法で使用する塩基触媒としては、共役酸のpKaが8~50の範囲である化合物、ホスファゼン化合物、二環式アミン化合物、グアニジン化合物、またはアミジン化合物に由来する基を置換基または構成ユニットとして有する有機ポリマー系の固体化合物または無機系の固体化合物が挙げられる。これらの固体化合物は、公知の製造方法に準じて製造されたものであってもよく、各種の市販品であってもよい。
それらの固体化合物は、一般的な溶媒に不溶性のため、遠心分離、濾過等の方法により
、容易に反応液から分離および回収することができる。
上記固体化合物の具体例としては、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジソプロピルメチルアミン、メチルピペリジン、DBU、MTBD、BEMP、P2-t-Bu等に由来する基を有する、ポリスチレンゲル(スチレンとジビニルベンゼンの共重合体)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド等のポリアクリル酸誘導体;シリカゲル;ゼオライト;等が挙げられる。
有機ポリマー系の固体化合物について、市販品の具体例を示すと、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、DBU、MTBD、BEMP、P2-t-Bu等に由来する基を有するものとしては、それぞれ、メルク社より市販されている、製品番号39205、製品番号31866、製品番号538736、製品番号595128、製品番号358754、製品番号536490、製品番号71477の化合物等が挙げられる。
本実施態様に係る製造方法においては、有機ポリマー系の固体化合物の中では、BEMP、P2-t-Bu、トリメチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、DBU、MTBD等に由来する基を有するものが好ましく、BEMP、P2-t-Bu等のホスファゼン化合物に由来する基を有するものがより好ましい。
さらに、シリカ、アルミナ等の無機系化合物に、共役酸のpKaが8~50の範囲の化合物、ホスファゼン化合物、二環式アミン化合物、グアニジン化合物、またはアミジン化合物を担持した無機系の固体化合物を用いることもできる。
また、有機ポリマー系の固体化合物と無機系の固体化合物を複数組み合わせて使用することができ、それらの固体化合物を、前記塩基性の化合物と組み合わせて使用することもできる。
原料に対する塩基触媒の量は任意に決めることができるが、原料のアシロキシシランに対するモル比または重量比では、通常は0.001~50程度で、好ましくは0.001~20程度、より好ましくは0.001~10程度である。
本実施態様における脱炭酸反応は、反応温度または反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。
反応温度は、通常は10℃以上、好ましくは10℃~600℃、より好ましくは10℃~400℃、さらに好ましくは50℃~300℃である。
さらに、反応圧力は、通常は0.01気圧~30気圧で、好ましくは0.01気圧~10気圧、より好ましくは0.01気圧~5気圧である。
反応時間は、原料の量、触媒の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性や効率を考慮すると、通常は1分~24時間、好ましくは1分~20時間、より好ましくは1分~16時間程度である。
反応を液相系で行う場合、溶媒の有無にかかわらず実施できるが、溶媒を用いる場合には、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン等の炭化水素、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アニソール、tert-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル等のニトリル;ジメチルアセトアミド、メチルアセトアミド等のアミド等;原料または触媒と反応するものを除いた各種の溶媒;等が使用可能である。反応温度において液体として存在する塩基触媒(例えば、NMP)を溶媒として使用してもよい。また、2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。
また、核磁気共鳴スペクトル分析で、反応生成物を分析する場合は、重アセトニトリル、重ベンゼン、重クロロホルム、重ホルムアミド、重テトラヒドロフラン等の重水素化された化合物を反応溶媒として使用することができる。
さらに、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
本実施態様における脱炭酸反応は、マイクロ波照射下で行うこともできる。本反応系では、原料のアシロキシシラン、シラノール等の誘電損失係数が比較的大きく、マイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下では原料、触媒等が活性化され、反応をより効率的に行うことができる。
マイクロ波照射反応では、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)等は、反応のスケール、種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3GHz~30GHzである。その中で好ましいのは、産業分野、科学分野、または医療分野で使用するために割り当てられたIMS周波数帯で、さらにその中でも、2.45GHz帯、5.8GHz帯等がより好ましい。
また、マイクロ波照射反応では、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
本実施態様における脱炭酸反応は、密閉系の反応装置でも進行するが、反応装置を開放系あるいは減圧系にして、共生成物のCOまたは反応生成物を反応系外に連続的に除去することにより、反応をより効率的に進行させることもできる。
本実施態様における製造方法で、前述の固体化合物を塩基触媒として用いる場合、脱炭酸反応工程後の塩基触媒の分離および回収は、濾過、遠心分離等の方法により容易に行うことができる。
また、生成したカルボシランの精製も、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
本実施態様に係る製造方法で製造されるカルボシランは、医薬、農薬、光学材料、電子材料等の各種機能性化学品または各種機能性材料を製造するための精密合成用試薬、中間体等として利用できる。
また、カルボシランにアシロキシ基が残存している場合は、アシロキシ基が高い反応性を有しているため、固体材料等の表面処理剤として用いることもできる。
アシロキシ基を有するカルボシランを用いた表面処理は、固体表面との反応効率が高いため、ガラス等の固体材料に対して、温和な条件下で迅速に表面処理を行うことが可能で、使用するカルボシランの種類に応じて、固体材料表面の親水性または疎水性を容易に制御することができる。
アシロキシ基を有するカルボシランを表面処理剤として用いる場合は、必要に応じて、トルエン、ヘキサン、アセトン等のカルボシランと反応しない有機溶剤で希釈して用いることもできる。
固体材料の表面処理の方法については、ディップ法(浸漬法)、キャスト法、スピンコート法、スプレーコート法等、従来公知の各種の方法により行うことができる。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例で使用した主な分析装置等は、以下の通りである。
・核磁気共鳴スペクトル分析(以下、NMRと称する場合がある。):ブルカー製 AVANCE III HD 600MHz(クライオプローブ装着)
・ガスクロマトグラフ分析(以下、GCと称する場合がある。):島津製作所製 GC-2014
・ガスクロマトグラフ質量分析(以下、GC-MSと称する場合がある。):島津製作所製 GCMS-QP2010Plus
(実施例1)
[前工程]
アシロキシシランを調製するために、ペンタフルオロ安息香酸(CCOH) 0.8mmol、アニソール 0.8mLの混合物を、反応容器中で撹拌しながら、クロロトリメチルシラン(MeSiCl) 0.8mmolおよびトリエチルアミン 1.6mmolを、室温で順次添加して、室温で約30分攪拌した。遠心分離で塩を分離し、上澄み液と塩をアニソール 0.8mLで洗浄した洗浄液を合わせて、NMR(核磁気共鳴スペクトル装置)およびGC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)で分析した結果、アシロキシシランのトリメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン((CCO)SiMe)が0.72mmol(収率90%)生成したことがわかった(表1-1参照)。
[脱炭酸反応工程]
前工程で得られたアシロキシシランのアニソール溶液(アシロキシシラン 約0.3mmolを含むアニソール 約0.65mLの溶液)に、P2-t-Bu 0.015mmolを添加し、100℃で20分間加熱した。反応溶液を、NMRおよびGC-MSで分析した結果、アシロキシシランの転化率は92%であり、カルボシランのトリメチル(ペンタフルオロフェニル)シラン((C)SiMe)が約0.265mmol(転化したアシロキシシランに対して収率96%)生成したことがわかった(表2-1参照)。
前工程で得られたアシロキシシランおよび脱炭酸反応工程で得られたカルボシランのNMR、GC-MSの測定結果は表3-1の通りであった。
Figure 0007497011000004
Figure 0007497011000005
表1-1および表1-2中の注釈を以下に示す。
1) 原料シランの種類
a:アルコキシシラン
b:アリルシラン
c:クロロシラン
2) ClSiMe3:クロロトリメチルシラン
(EtO)SiMe3:エトキシトリメチルシラン
(CH2=CHCH2)SiMe3:アリルトリメチルシラン
ClSiMe2Ph:クロロジメチルフェニルシラン
ClSiMe2(CH=CH2):クロロジメチルビニルシラン
ClSiMe2[(CH2)3CN]:クロロ(3-シアノプロピル)ジメチルシラン
(EtO)2SiMe2:ジエトキシジメチルシラン
Cl2SiMe2:ジクロロジメチルシラン
ClSiMe2SiMe2Cl:1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン
ClSiMe2OSiMe2Cl:1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン。
3) C6F5CO2H:ペンタフルオロ安息香酸
(C6F5CO)2O:ペンタフルオロ安息香酸無水物
2,3,5,6-F4C6HCO2H:2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸
2,4,6-F3C6H2CO2H:2,4,6-トリフルオロ安息香酸
2,6-F2C6H3CO2H:2,6-ジフルオロ安息香酸
2,6-Cl2C6H3CO2H:2,6-ジクロロ安息香酸
2-(O2N)C6F4CO2H:3,4,5,6-テトラフルオロ-2-ニトロ安息香酸
2-(O2N)C6H4CO2H:2-ニトロ安息香酸
CF3CF2CO2H:ペンタフルオロプロピオン酸
(CCl3CO)2O:トリクロロ酢酸無水物
1,3-C6F4(CO2H)2:テトラフルオロイソフタル酸
1,4-C6F4(CO2H)2:テトラフルオロテレフタル酸
(PhC≡C)CO2H:3-フェニルプロピオル酸
4) Et3N:トリエチルアミン
NMP:N-メチルピロリジン
Fe(ClO4)3・6H2O:過塩素酸鉄(III)6水和物
CBV780:USY系ゼオライトCBV780(ゼオリスト社製)
5) PhOMe:アニソール
DCB:o-ジクロロベンゼン
原料シランとして、bのクロロシランを使用し、反応促進剤としてEt3Nを用いた場合、反応で生成した塩を遠心分離で分離し、塩を溶媒で洗浄して、その洗浄液を反応溶液(上澄み溶液)と合わせて、アシロキシシランの溶液を調製した。溶媒量の中の角括弧内の数値は、洗浄液を合わせた溶媒量である。
6) (C6F5CO2)SiMe3:トリメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン
(2,3,5,6-F4C6HCO2)SiMe3:トリメチル(2,3,5,6-テトラフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン
(2,4,6-F3C6H2CO2)SiMe3:トリメチル(2,4,6-トリフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン
(2,6-F2C6H3CO2)SiMe3:トリメチル(2,6-ジフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン
(2,6-Cl2C6H3CO2)SiMe3:トリメチル(2,6-ジクロロフェニルカルボニルオキシ)シラン
[2-(O2N)C6F4CO2]SiMe3:トリメチル(3,4,5,6-テトラフルオロ-2-ニトロフェニルカルボニルオキシ)シラン
[2-(O2N)C6H4CO2]SiMe3:トリメチル(2-ニトロフェニルカルボニルオキシ)シラン
(C6F5CO2)SiMe2Ph:ジメチルフェニル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シ
ラン
(C6F5CO2)SiMe2(CH=CH2):ジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)(ビニル)シラン
(C6F5CO2)SiMe2[(CH2)3CN]:(3-シアノプロピル)ジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン
(CF3CF2CO2)SiMe3:トリメチル(ペンタフルオロプロピオニルオキシ)シラン
(CCl3CO2)SiMe3:トリメチル(トリクロロアセチルオキシ)シラン
(CCl3CO2)SiMe2(OEt):(エトキシ)ジメチル(トリクロロアセチルオキシ)シラン
1,3-C6F4(CO2SiMe3)2:2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン
1,4-C6F4(CO2SiMe3)2:2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン
(C6F5CO2)2SiMe2:ジメチルビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン
(C6F5CO2)SiMe2SiMe2(OCOC6F5):1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシラン
(C6F5CO2)SiMe2OSiMe2(OCOC6F5):1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシロキサン
(PhC≡C)CO2SiMe3:トリメチル(フェニルエチニルカルボニルオキシ)シラン
7) NMRによる収率(カルボン酸誘導体または原料シランに対するアシロキシシラン生成物の収率)
Figure 0007497011000006
Figure 0007497011000007
Figure 0007497011000008
Figure 0007497011000009
Figure 0007497011000010
表2-1~表2-5中の注釈を以下に示す。
1) (C6F5CO2)SiMe3:トリメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU
= 10.10 kcal/mol
(2,3,5,6-F4C6HCO2)SiMe3:トリメチル(2,3,5,6-テトラフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 10.34 kcal/mol
(2,4,6-F3C6H2CO2)SiMe3:トリメチル(2,4,6-トリフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 11.44 kcal/mol
(2,6-F2C6H3CO2)SiMe3:トリメチル(2,6-ジフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 11.66 kcal/mol
(2,6-Cl2C6H3CO2)SiMe3:トリメチル(2,6-ジクロロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 18.50 kcal/mol
[2-(O2N)C6F4CO2]SiMe3:トリメチル(3,4,5,6-テトラフルオロ-2-ニトロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 11.64 kcal/mol
[2-(O2N)C6H4CO2]SiMe3:トリメチル(2-ニトロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 13.86 kcal/mol
(C6F5CO2)SiMe2Ph:ジメチルフェニル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 10.10 kcal/mol
(C6F5CO2)SiMe2(CH=CH2):ジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)(ビニル)シラン、ΔU = 8.99 kcal/mol
(C6F5CO2)SiMe2[(CH2)3CN]:(3-シアノプロピル)ジメチル(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 10.01 kcal/mol
(CF3CO2)SiMe3:トリメチル(トリフルオロアセチルオキシ)シラン、ΔU = 13.56 kcal/mol
(CF3CF2CO2)SiMe3:トリメチル(ペンタフルオロプロピオニルオキシ)シラン、ΔU = 13.19 kcal/mol
(CCl3CO2)SiMe3:トリメチル(トリクロロアセチルオキシ)シラン、ΔU = 9.00 kcal/mol
(CCl3CO2)SiMe2(OEt):(エトキシ)ジメチル(トリクロロアセチルオキシ)シラン、ΔU = 12.38 kcal/mol
1,3-C6F4(CO2SiMe3)2:2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン、ΔU = 10.52 kcal/mol(1個目アシロキシ基脱炭酸)、11.73 kcal/mol(2個目アシロキシ基脱炭酸)
1,4-C6F4(CO2SiMe3)2:2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)ベンゼン、ΔU = 9.94 kcal/mol(1個目アシロキシ基脱炭酸)、10.69 kcal/mol(2個目アシロキシ基脱炭酸)
(C6F5CO2)2SiMe2:ジメチルビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 8.73 kcal/mol(1個目アシロキシ基脱炭酸)、9.26 kcal/mol(2個目アシロキシ基脱炭酸)
(C6F5CO2)SiMe2SiMe2(OCOC6F5):1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシラン、ΔU = 7.01 kcal/mol(1個目アシロキシ基脱炭酸)、9.82 kcal/mol(2個目アシロキシ基脱炭酸)
(C6F5CO2)SiMe2OSiMe2(OCOC6F5):1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシ)ジシロキサン、ΔU = 10.16 kcal/mol(1個目アシロキシ基脱炭酸)、11.66 kcal/mol(2個目アシロキシ基脱炭酸)
(PhC≡C)CO2SiMe3:トリメチル(フェニルエチニルカルボニルオキシ)シラン、ΔU = 6.76 kcal/mol
なお、実施例1~29および36~61は、アシロキシシランを製造する前工程と、アシロキシシランからカルボシランを製造する脱炭酸反応工程を、連続的なワンポット的工程で行ったものである。
2) 角括弧内は、表1の前工程例の番号。「-」は、市販品のアシロキシシランを使用し
たことを示す。
3) 括弧内は、前工程における収率を考慮したアシロキシシランのモル数。前工程無しで、市販品のアシロキシシランを使用した場合は、そのモル数。
4) P2-t-Bu:1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)
BEMP:2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン
BTPP:tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン
ABCO:1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン
DABCO:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
NMP:N-メチルピロリジン
P4-t-Bu:1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)
TMEDA:N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン
TMPDA:N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン
BEMP-Pol:BEMPユニット含有ポリマー(メルク社製、製品番号536490)
iPr2N-Pol:ジイソプロピルアミノ基含有ポリマー(メルク社製、製品番号538736)
MTBD-Pol:MTBDユニット含有ポリマー(メルク社製、製品番号358754)
DBU-Pol:DBUユニット含有ポリマー(メルク社製、製品番号595128)
KF:フッ化カリウム
なお、ポリマー系の化合物は、減圧下、80℃で乾燥したものを使用した。
5) 触媒が低分子の場合のモル数。触媒がポリマーの場合は、塩基性ユニットのモル数。
6) PhOMe:アニソール
DCB:o-ジクロロベンゼン
NC(CH2)4CN:アジポニトリル
PhCN:ベンゾニトリル
THF:テトラヒドロフラン。
7) NMRによるアシロキシシランの転化率。
8) (C6F5)SiMe3:トリメチル(ペンタフルオロフェニル)シラン
(C6F4H)SiMe3:トリメチル(テトラフルオロフェニル)シラン
(C6F3H2)SiMe3:トリメチル(トリフルオロフェニル)シラン
(C6F2H3)SiMe3:トリメチル(ジフルオロフェニル)シラン
(C6Cl2H3)SiMe3:トリメチル(ジクロロフェニル)シラン
[2-(O2N)C6F4]SiMe3:トリメチル(テトラフルオロニトロフェニル)シラン
[C6H4(NO2)]SiMe3:トリメチル(ニトロフェニル)シラン
(C6F5)SiMe2Ph:ジメチルフェニル(ペンタフルオロフェニル)シラン
(C6F5)SiMe2(CH=CH2):ジメチル(ペンタフルオロフェニル)(ビニル)シラン
(C6F5)SiMe2[(CH2)3CN]:(3-シアノプロピル)ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シラン
(CF3)SiMe3:トリメチル(トリフルオロメチル)シラン
(CF3CF2)SiMe3:トリメチル(ペンタフルオロエチル)シラン
(CCl3)SiMe3:トリメチル(トリクロロメチル)シラン
(CCl3)SiMe2(OEt):(エトキシ)ジメチル(トリクロロメチル)シラン
1-(Me3Si)-3-(Me3SiOCO)C6F4:2,4,5,6-テトラフルオロ-1-トリメチルシリル-3-トリメチルシロキシカルボニルベンゼン
1,3-(Me3Si)2C6F4:2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-ビス(トリメチルシリル)ベンゼン
1-(Me3Si)-4-(Me3SiOCO)C6F4:2,3,5,6-テトラフルオロ-1-トリメチルシリル-4-トリメチルシロキシカルボニルベンゼン
1,4-(Me3Si)2C6F4:2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ビス(トリメチルシリル)ベンゼン
(C6F5)2SiMe2:ジメチルビス(ペンタフルオロフェニル)シラン
(C6F5)SiMe2SiMe2(OCOC6F5):1,1,2,2-テトラメチル-1-ペンタフルオロフェニル-2-ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシジシラン
(C6F5)SiMe2SiMe2(C6F5):1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ビス(ペンタフルオロフェニル)ジシラン
(C6F5)SiMe2OSiMe2(OCOC6F5):1,1,3,3-テトラメチル-1-ペンタフルオロフェニル-3-ペンタフルオロフェニルカルボニルオキシジシロキサン
(C6F5)SiMe2OSiMe2(C6F5):1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(ペンタフルオロフェニル)ジシロキサン
(PhC≡C)SiMe3:トリメチル(フェニルエチニル)シラン
9) NMRによる収率(転化したアシロキシシランに対するカルボシラン生成物の収率)。
10) フェニル基上のフッ素原子の位置が異なる3種類の異性体((C6F4H)SiMe3(P1)~(P3))が生成した。括弧内に(P1)~(P3)の収率を順に示した。(C6F4H)SiMe3(P1)は、トリメチル(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)シランと考えられる。
11) フェニル基上のフッ素原子の位置が異なる6種類の異性体((C6F3H2)SiMe3(P1)~(P6))が生成した。括弧内に(P1)~(P6)の収率を順に示した。(C6F3H2)SiMe3(P1)は、トリメチル(2,4,6-トリフルオロフェニル)シランと考えられる。
12) フェニル基上のフッ素原子の位置が異なる5種類の異性体((C6F2H4)SiMe3(P1)~(P5))が生成した。括弧内に(P1)~(P5)の収率を順に示した。(C6F2H4)SiMe3(P1)は、トリメチル(2,6-ジフルオロフェニル)シランと考えられる。
13) フェニル基上の塩素原子の位置が異なる4種類の異性体((C6Cl2H4)SiMe3(P1)~(P4))が生成した。括弧内に(P1)~(P4)の収率を順に示した。(C6Cl2H4)SiMe3(P1)は、トリメチル(2,6-ジクロロフェニル)シランと考えられる。
14) フェニル基上のニトロ基の位置が異なる2種類の異性体([C6H4(NO2)]SiMe3(P1)~(P2))が生成した。括弧内に(P1)および(P2)の収率を順に示した。[C6H4(NO2)]SiMe3(P1)は、トリメチル(2-ニトロフェニル)シランと考えられる。
15) 2個のアシロキシ基のうち、1個が脱炭酸した化合物と2個が脱炭酸した化合物とが生成した。括弧内に1個が脱炭酸した化合物および2個が脱炭酸した化合物の収率をこの順に示した。
Figure 0007497011000011
Figure 0007497011000012
Figure 0007497011000013
表3-1~表3-3中の注釈を以下に示す。
1) 各化合物の名称は、表1-1および表1-2の脚注6、または、表2-1~表2-5の脚注1と脚注8に記載。
2) 29Si NMRの化学シフト値。NMR溶媒として、C6D6を使用。緩和試薬Cr(acac)3(クロム(III)アセチルアセトナート)を添加して測定。
3) GC-MS:ガスクロマトグラフ質量分析計、EI法:電子衝撃イオン化法(70eV)。
4) 脱炭酸用の塩基触媒として、可溶性のホスファゼン化合物を使用した場合は、反応溶液にシリカゲルを添加して、ホスファゼン化合物を吸着除去した後に、反応溶液のGC-MSを測定した。
5) NMR溶媒として、CDCl3を使用した。
(実施例2~62)
反応条件(原料、塩基の種類、溶媒、温度、時間等)を変えて、実施例1と同様に反応および分析を行い、生成物の収率をNMRで測定した結果を、前工程に関しては表1-1および表1-2、脱炭酸反応工程に関しては表2-1~表2-5に示す。また、それらの生成物のNMR、GC-MSの測定結果は表3-1~表3-3の通りであった。
本発明のカルボシランの製造方法では、アシロキシシランからの脱炭酸反応が、特定の塩基触媒を用いることにより、効率よく進行した。
たとえば、(CCO)SiMeの脱炭酸反応では、塩基触媒としてP2-t-Buを用いた場合、実施例1に示すように、アニソール中、100℃、20分の条件で、アシロキシシランの転化率が92%で、カルボシランの収率は、転化したアシロキシシランに対して96%であった。また、80℃、20分の条件でも、実施例2に示すように、転化率は70%で、収率は転化したアシロキシシランに対して96%であった。
一方、そのアシロキシシランの脱炭酸反応で効果的な触媒として知られていたKFを用いた場合は、比較例1に示すように、100℃、20分の条件では、アシロキシシランの転化率は3%、カルボシランの収率は0%で、脱炭酸反応の進行は観察されず、P2-t-Buの方が優れた触媒活性を示すことがわかった。
この結果は、本発明における塩基触媒を用いることにより、脱炭酸反応が、従来の触媒を用いる場合に比べて、効率よく進行することを示している。
さらに、本発明における塩基触媒を用いれば、アニソール(管理濃度:設定なし)のような有害性の低い溶媒中でも、反応が効率よく進行する。そのため、従来使用されていたジメチルホルムアミド(管理濃度:10ppm)のような有害物質を用いる必要がなく、安全性という点でも大きいメリットがある。
本発明の製造方法により、機能性化学品または機能性材料として有用なさまざまなカルボシランを、より効率的かつ安全に製造できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。

Claims (4)

  1. Si-OCOR結合(OCOはオキシカルボニル基のO-C(=O)を示す。Rは炭素数1~20の炭化水素基または水素原子を示し、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。)を有するアシロキシシランから、塩基触媒の存在下で、脱炭酸を行う脱炭酸反応工程を含む、Si-R結合を有するカルボシランの製造方法であって、次の(1)の条件または(1)および(2)の条件を満たし、アシロキシシランを形成する前工程を含んでいてもよい、カルボシランの製造方法。
    (1)前記塩基触媒が、ホスファゼン化合物;二環式アミン化合物;アミジン化合物;または、前記ホスファゼン化合物、前記二環式アミン化合物もしくは前記アミジン化合物に由来する基を有する、有機ポリマー系の化合物もしくは無機系の化合物;であり、
    前記ホスファゼン化合物が、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ ,4λ -カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)、1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ ,4λ -カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Bu)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、またはtert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)であり、
    前記二環式アミン化合物が、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(ABCO)または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)であり、
    前記アミジン化合物が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)または1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)である。
    (2)前記Si-OCOR結合のRが、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がハロゲン原子、ニトロ基、もしくはシアノ基で置換されたアルキル基もしくはアリール基;または、アルキニル基;である。
  2. 前記前工程が、次の(4)~(6)の何れかの工程であり、前記前工程と、前記前工程に続く脱炭酸反応工程とを連続的に行う、請求項1に記載の製造方法。
    (4)前記Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-OR’結合(R’は
    炭素数1~3の炭化水素基を示す。)を有するアルコキシシランに、(RCO)O(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸無水物を反応させて形成する工程。
    (5)前記Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-R”結合(R”はアリル基を示す。)を有するアリルシランに、RCOH(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸を反応させて形成する工程。
    (6)前記Si-OCOR結合を有するアシロキシシランを、Si-Cl結合を有するクロロシランに、RCOH(Rは、前記と同義である。)で表されるカルボン酸を反応させて形成する工程。
  3. 前記塩基触媒が、前記ホスファゼン化合物;前記二環式アミン化合物;前記アミジン化合物;または、前記ホスファゼン化合物、前記二環式アミン化合物もしくは前記アミジン化合物に由来する基を有する、有機ポリマー系の化合物;である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記Si-OCOR結合を有するアシロキシシランが、下記一般式(IA)~(ID)から選ばれるアシロキシシランである、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
    Si(OCOR)d (IA)
    RCO(SiRm1OCOR (IB)
    RCO(SiRO)m2(COR) (IC)
    (R 10 SiOCO)11 (ID)
    一般式(IA)~(ID)中、a、b、およびcは、それぞれ独立に、0または1であり;dは、1以上3以下の整数であり;a+b+c+d=4であり;m1およびm2は、それぞれ独立に、2以上の整数であり;Rは、前記と同義であり;R~R10は、それぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、またはハロゲン原子であり、前記炭化水素基または前記アルコキシ基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよく;e、f、およびgは、それぞれ独立に、0または1であり;e+f+g=3であり;hは、2~4の整数であり;R11は、炭素数1~20のh価の炭化水素基であり、前記h価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
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