以下、図面を参照しながら、診断支援装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係る診断支援装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る診断支援装置の構成例を示す概略図である。
図1は、第1の実施形態に係る診断支援装置1を示す。診断支援装置1は、操作者(例えば、医師)による被検体の疾患(疾病)の診断を支援する装置である。診断支援装置1は、医用画像管理装置(画像サーバ)や、ワークステーションや、読影端末等であり、ネットワークを介して接続された医用画像システム上に設けられる。なお、診断支援装置1は、オフラインの装置であってもよい。
診断支援装置1は、処理回路11と、記憶回路12と、入力インターフェース13と、ディスプレイ14と、ネットワークインターフェース15とを備える。
処理回路11は、入力インターフェース13を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、診断支援装置1の動作を制御する。例えば、処理回路11は、プロセッサによって実現される。なお、処理回路11の機能については、図2を用いて後述する。
記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、及び光ディスク等によって構成される。記憶回路12は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。記憶回路12は、処理回路11において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータ等を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ14への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース13によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。なお、記憶回路12は、記憶部の一例である。
さらに、記憶回路12は、図2に示すように、遺伝子発現・変異情報U1と、エピジェネティック環境影響情報U2と、タンパク質発現情報U3と、シグナル伝達情報U4と、免疫機能情報U5と、内分泌機能情報U6と、病理情報U7と、画像診断情報U8と、生理学的情報U9と、身体所見・病状情報U10と、生体状態判定用データベース(Data Base)U11とを記憶する。情報U1~U10は、各種センサにより診断対象の被検体から取得されたものであってもよいし、入力インターフェース13を介して操作者により入力されたものであってもよいし、ネットワークインターフェース15を介して外部の装置から取得されたものであってもよい。
遺伝子発現・変異情報U1は、例えば、診断対象の被検体の特定の遺伝子の発現量と変異量とを示す生体情報である。例えば、遺伝子発現・変異情報U1は、シーケンサー又は遺伝子パネル等が用いられる遺伝子検査等により取得される。そして、取得された遺伝子発現・変異情報U1が、記憶回路12に記憶される。
エピジェネティック環境影響情報U2は、例えば、ヒストン修飾やメチル化等の被検体のエピゲノムに影響を与える後天的な環境要因による遺伝子発現の制御を示す生体情報である。例えば、操作者が、被検体に対して、被検体が1日あたりに吸っている煙草の本数、又は、1日あたりに浴びている紫外線の量等を問診する。又は、その結果としてのヒストン修飾やメチル化等の現象を検出し、それらの得られた環境要因情報や検査結果を示す情報がエピジェネティック環境影響情報U2として、記憶回路12に記憶される。
タンパク質発現情報U3は、被検体のタンパク質発現に関する生体情報である。例えば、タンパク質発現情報U3は、被検体の血中等の特定のタンパク質の量と、特定のタンパク質の基準となる量との比を示す情報である。被検体の特定のタンパク質の量は、バイオマーカの体外検査又は分光分析と、質量分析器(例えば、マススペクトルスコピー等)とにより取得される。また、特定のタンパク質の基準となる量は、例えば、被検体が健康な状態である場合の特定のタンパク質の量である。そして、得られた特定のタンパク質の量と、特定のタンパク質の基準となる量との比を示す情報が、タンパク質発現情報U3として記憶回路12に記憶される。
シグナル伝達情報U4は、被検体の細胞間及び細胞内のシグナル伝達に関する生体情報である。シグナル伝達情報U4は、抗体アレイ等により取得される。そして、取得されたシグナル伝達情報U4が、記憶回路12に記憶される。
免疫機能情報U5は、被検体の免疫機能に関する生体情報である。例えば、免疫機能情報U5は、被検体の血液の単位量あたりの白血球の数を示す情報である。このような白血球の数は、血液検査等により取得される。なお、免疫機能情報U5は、免疫に関係する特定の遺伝子の発現量及び変異量や、発現した抗体量そのものを示す情報であってもよい。このような情報は、検体検査装置や抗体検査、遺伝子チップ等により取得される。そして、取得された免疫機能情報U5が、記憶回路12に記憶される。
内分泌機能情報U6は、被検体の内分泌機能に関する生体情報である。例えば、内分泌機能情報U6は、被検体の血液の単位量あたりの特定のホルモンの量を示す情報である。このような特定のホルモンの量を示す情報は、血液検査等により取得される。
病理情報U7は、病理検査又は細胞診検査によって得られた被検体の各種の生体情報である。例えば、病理検査では、腫瘤の細胞が採取され、採取された細胞が、悪性であるか否かが判定される。このような判定の結果を示す情報が、病理情報U7として記憶回路12に記憶される。
画像診断情報U8は、被検体の臓器が描出された放射線診断画像と放射線診断画像の画像解析により得られる生体情報である。例えば、検査において、医師が、被検体の心臓が描出されたCT(Computed Tomography)画像の画像診断を行う。画像診断において、医師は、心臓に異常があるか否かを診断する。例えば、医師は、大動脈弁に注目し、心臓弁膜症であるか否かについての診断や、大動脈弁狭窄症であるか否かについての診断を行う。そして、診断結果を示す情報が、画像診断情報U8として記憶回路12に記憶される。なお、画像診断には、CT画像以外の画像の画像診断が含まれてよい。例えば、画像診断には、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置により得られたMR画像と、X線診断装置により得られたX線診断画像と、超音波診断装置により得られた超音波診断画像と、核医学診断装置により得られた核医学診断画像とのうち少なくとも1つの画像の画像診断が含まれてもよい。
生理学的情報U9は、例えば心電図により得られた被検体の心電波形に基づく心臓に関する生体情報等を指す。心電図検査において、被検体の心電波形は、心電計により得られる。また、心電波形から、R-R間隔等の心臓に関する情報が得られる。そして、このような心臓に関する情報が、生理学的情報U9として記憶回路12に記憶される。これ以外にも、生理学的情報U9には、脳波情報や、呼吸モニタの情報、体温、血圧等の様々な生理学的現象を示す情報が含まれる。
身体所見・病状情報U10は、被検体に対する問診によって得られた身体所見及び病状を示す生体情報である。例えば、医師は、被検体に対して問診を行うことにより身体所見及び病状を得る。例えば、身体所見には、被検体の身長及び体重等の人体レベルの情報が含まれる。このようにして得られた身体所見及び病状を示す情報が、身体所見・病状情報U10として記憶回路12に記憶される。
上述したように、記憶回路12は、情報U1~U10を記憶する。このように、記憶回路12は、被検体の遺伝子レベルの生体情報、分子・細胞レベルの生体情報、臓器レベルの生体情報、及び、人体レベルの生体情報を記憶する。すなわち、記憶回路12は、被検体の遺伝子レベルから人体レベルまでの包括的な複数種類の生体情報を記憶する。具体例を挙げて説明すると、記憶回路12は、被検体の遺伝子に関する生体情報、タンパク質に関する生体情報、シグナル伝達に関する生体情報、内分泌機能に関する生体情報、免疫機能に関する生体情報、環境影響に関する生体情報、及び、人体に関する生体情報を含む複数種類の生体情報を記憶する。
生体状態判定用データベースU11は、疾患に対する生体状態(ステータス)を判定する際に用いられるデータベースである。生体状態は、被検体の、ある疾患に対する関係度を意味し、被検体が、ある疾患に関係している度合いを示す指標である。より具体的には、この関係度は、被検体が、ある疾患に罹患している度合い(可能性)を示す指標、つまり、疾患Aの症状の重さを示す指標である。例えば、生体状態は、図5に示すように、被検体の「疾患A」の症状の重さに応じた「健康状態(罹患なし)」と、「中間状態」と、「疾患状態」と、「重篤・死亡」との4つに分類される。なお、詳細については後述する。
図3は、生体状態判定用データベースU11のデータ構造の一例を示す図である。
図3において、「遺伝子発現・変異」の項目には、遺伝子発現・変異情報U1から算出された後述する定量スコアが登録される。「エピジェネティック環境影響」の項目には、エピジェネティック環境影響情報U2から算出された後述する定量スコアが登録される。「タンパク質発現(バイオマーカ)」の項目には、タンパク質発現情報U3から算出された後述する定量スコアが登録される。「シグナル伝達」の項目には、シグナル伝達情報U4から算出された後述する定量スコアが登録される。
また、「免疫機能」の項目には、免疫機能情報U5から算出された後述する定量スコアが登録される。「内分泌機能」の項目には、内分泌機能情報U6から算出された後述する定量スコアが登録される。「病理的な変化」の項目には、病理情報U7から算出された後述する定量スコアが登録される。「画像診断」の項目には、画像診断情報U8から算出された後述する定量スコアが登録される。「心電図」の項目には、生理学的情報U9から算出された後述する定量スコアが登録される。「身体所見・病状」の項目には、身体所見・病状情報U10から算出された後述する定量スコアが登録される。
生体状態判定用データベースU11には、複数の疾患A~疾患Nのそれぞれと、複数種類の生体情報のそれぞれとの相関(相関関係)を示す相関係数が登録されている。また、生体状態判定用データベースU11には、相関係数の確からしさを示す信頼度が登録されている。例えば、図3の例では、仮に、相関係数を「R」とし、信頼度を「S」とした場合に、疾患と生体情報との組み合わせごとに、「R/S」という表記で、相関係数及び信頼度が生体状態判定用データベースU11に登録されている。
例えば、生体状態判定用データベースU11は、「遺伝子発現・変異」の項目に登録される定量スコアの元となる遺伝子発現・変異情報U1と「疾患A」との組み合わせにおいて、遺伝子発現・変異情報U1と「疾患A」との相関を示す相関係数が、「0.8」であることを示す。疾患と生体情報との他の組み合わせにおいても、同様である。
本実施形態では、例えば、相関係数の範囲は、「-1」以上「1」以下の範囲である。例えば、ある疾患とある種類の生体情報との相関を示す相関係数が正の値である場合について説明する。この場合、相関係数が「1」に近づくほど、その種類の生体情報を要因として、その疾患に罹患する可能性が高くなるとともに、その疾患の症状が重くなると考えられる。
また、ある疾患とある種類の生体情報との相関を示す相関係数が負の値である場合について説明する。この場合、相関係数が「-1」に近づくほど、その種類の生体情報を要因として、その疾患に罹患しにくくなる可能性が高くなると考えられる。
また、ある疾患とある種類の生体情報との相関を示す相関係数が「0」又は「0」に近い数値である場合、この相関係数は、その種類の生体情報と、その疾患との相関がないことを示す。
また、例えば、生体状態判定用データベースU11は、遺伝子発現・変異情報U1と「疾患A」との相関を示す相関係数「0.8」の確からしさを示す信頼度が「A」であることを示す。他の信頼度についても、同様である。ここで、本実施形態では、信頼度は、「A」、「B」及び「C」のいずれかで示される。例えば、信頼度「A」は、信頼度「B」よりも信頼度が高く、信頼度「B」は、信頼度「C」よりも信頼度が高い。なお、信頼度「A」、「B」、「C」は、数値を示す。例えば、信頼度「A」は、「1.0」であり、信頼度「B」は、「0.7」であり、信頼度「C」は、「0.3」である。例えば、信頼度は、相関係数について、科学的な根拠がどの程度あるのかによっても定められる。また、信頼度は、例えば、ガイドライン、データベースに登録された臨床研究の内容、及び、論文内容等から定められてもよい。
図1の説明に戻って、入力インターフェース13は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路11に出力する。なお、診断支援装置1は、入力デバイスがディスプレイ14と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。また、入力デバイスは、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものに限られるものではない。例えば、入力回路が、診断支援装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路11へ出力する構成も入力インターフェース13の例に含まれる。なお、入力インターフェース13は、入力部の一例である。
ディスプレイ14は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示デバイスである。ディスプレイ14は、処理回路11に接続されており、処理回路11の制御に従って生成された各種の情報及び画像を表示する。なお、ディスプレイ14は、表示部の一例である。
ネットワークインターフェース15は、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。ネットワークインターフェース15は、各規格に応じた通信制御を行い、電話回線を通じてネットワークに接続することができる機能を有しており、これにより、診断支援装置1をネットワークに接続させることができる。なお、ネットワークインターフェース15は、通信部の一例である。
続いて、図2を用いて、診断支援装置1の機能について説明する。
図2は、診断支援装置1の機能を示すブロック図である。
処理回路11がプログラムを実行することによって、診断支援装置1は、スコア算出機能111と、取得機能112と、生体状態判定機能113と、表示制御機能114とを実現する。なお、機能111~114の全部又は一部は、診断支援装置1にASIC等の回路の機能として実現されるものであってもよい。スコア算出機能111は、解析部の一例である。取得機能112は、取得部の一例である。生体状態判定機能113は、判定部の一例である。表示制御機能114は、表示制御部の一例である。スコア算出機能111と、取得機能112と、生体状態判定機能113と、表示制御機能114とについては後述する。
ここで、例えば、処理回路11の構成要素である機能111~114は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶されている。処理回路11は、各プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路11は、処理回路11内に示された機能111~114を有することとなる。
なお、機能111~114の全ての処理機能がコンピュータによって実行可能な1つのプログラムの形態で、記憶回路12に記憶されていてもよい。例えば、このようなプログラムは、診断支援プログラムとも称される。この場合、処理回路11は、診断支援プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した診断支援プログラムを実行することで診断支援プログラムに対応する機能111~114を実現する。
以上、第1の実施形態に係る診断支援装置1の構成の一例について説明した。本願の発明者らは、鋭意検討の結果、全ての疾患は、遺伝性の要因と非遺伝性の要因とを含む複雑な要因が関係することを見出した。そして、本願の発明者らは、被検体の遺伝子レベルから人体レベルまでの包括的な複数種類の生体情報を用いて、被検体の生体状態を判定することで、精度が良好な判定結果を得られることを見出した。そこで、第1の実施形態に係る診断支援装置1は、生体状態を精度良く判定するために、被検体の遺伝子レベルから人体レベルまでの包括的な複数種類の生体情報を用いて、以下で説明する各種の処理を実行する。
スコア算出機能111は、記憶回路12に記憶された複数種類の生体情報のそれぞれに対して、生体情報の異常の度合いを判定する解析を行う。具体例を挙げて説明すると、スコア算出機能111は、複数種類の生体情報のそれぞれに対して、生体情報の異常の度合いを示すスコア(定量スコア)を得るための解析を行い、解析結果として定量スコアを得る。例えば、スコア算出機能111は、「0」以上「1」以下の範囲内の定量スコアを算出する。例えば、定量スコアは、「1」に近づくにつれて、生体情報が示す異常の状態の度合いが大きくなることを示す。スコア算出機能111は、このような定量スコアを、情報U1~U10のそれぞれについて算出する。定量スコアは、後述する生体状態判定機能113により生体状態が判定される際に用いられる。
一例を挙げて説明すると、スコア算出機能111は、遺伝子発現・変異情報U1に対する解析として、遺伝子発現・変異情報U1が示す特定の遺伝子の発現量及び変異量が多くなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「遺伝子発現・変異」の項目に登録する。
また、スコア算出機能111は、エピジェネティック環境影響情報U2に対する解析として、エピジェネティック環境影響情報U2が示す煙草の本数又は紫外線の量が多くなるほど、若しくは、メチル化のスコア等が大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「エピジェネティック環境影響」の項目に登録する。
また、スコア算出機能111は、タンパク質発現情報U3に対する解析として、タンパク質発現情報U3が示す比が「1」から遠ざかるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「タンパク質発現(バイオマーカ)」の項目に登録する。
また、スコア算出機能111は、シグナル伝達情報U4に対する解析として、シグナル伝達情報U4が示すシグナル伝達に関する情報が示す異常の度合いが大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「シグナル伝達」の項目に登録する。
また、スコア算出機能111は、免疫機能情報U5に対する解析として、免疫機能情報U5が示す白血球の数が示す異常の度合いが大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。なお、免疫機能情報U5が、免疫に関係する特定の遺伝子の発現量及び変異量を示す場合には、スコア算出機能111は、免疫に関係する特定の遺伝子の発現量及び変異量が多くなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「免疫機能」の項目に登録する。
また、スコア算出機能111は、内分泌機能情報U6に対する解析として、内分泌機能情報U6が示す特定のホルモンの量が示す異常の度合いが大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「内分泌機能」の項目に登録する。
また、スコア算出機能111は、病理情報U7に対する解析として、病理情報U7が示す判定結果が示す異常の度合いが大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「病理的な変化」の項目に登録する。
また、スコア算出機能111は、画像診断情報U8に対する解析として、画像診断情報U8が示す診断結果が示す異常の度合いが大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「画像診断」の項目に登録する。
また、スコア算出機能111は、生理学的情報U9に対する解析として、生理学的情報U9が示す心臓に関する情報が示す異常の度合いが大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「心電図」の項目に登録する。
なお、生理学的情報U9が脳波情報を示す場合には、スコア算出機能111は、脳波情報が示す異常の度合いが大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「心電図」の項目と同様に設けられた「脳波計」の項目(図示せず)に登録する。
また、スコア算出機能111は、身体所見・病状情報U10に対する解析として、身体所見・病状情報U10が示す身体所見及び病状が示す異常の度合いが大きくなるほど、値が大きくなるような定量スコアを解析結果として算出する。そして、スコア算出機能111は、算出した定量スコアを生体状態判定用データベースU11の「身体所見・病状」の項目に登録する。
上述したような方法で、スコア算出機能111は、複数種類の生体情報に対応する複数の定量スコアを算出し、複数の定量スコアを生体状態判定用データベースU11に登録する。
なお、スコア算出機能111は、上述したように定量スコアを自動的に算出しなくてもよい。例えば、スコア算出機能111は、操作者から、入力インターフェース13を介して、生体情報に対応する定量スコアを受け付けてもよい。そして、スコア算出機能111は、受け付けた定量スコアを、生体状態判定用データベースU11に登録してもよい。
取得機能112は、図3に示す生体状態判定用データベースU11から、複数の情報U1~U10の各情報と、複数の疾患(疾患A~N)との相関を示す相関係数を取得する。また、取得機能112は、スコア算出機能111によって算出された、複数種類の生体情報にそれぞれ対応する複数の定量スコアを取得する。
生体状態判定機能113は、生体状態判定用データベースU11を用いて、複数の疾患(疾患A~疾患N)のそれぞれについて、被検体の生体状態を判定する。
具体例を挙げて説明すると、取得機能112は、図3に示す生体状態判定用データベースU11から、遺伝子発現・変異情報U1と疾患Aとの相関を示す相関係数「0.8」を取得する。そして、取得機能112は、「遺伝子発現・変異」の項目から、遺伝子発現・変異情報U1から算出された定量スコアを取得する。そして、生体状態判定機能113は、取得した定量スコアと、取得した相関係数「0.8」との乗算値r1を算出する。
取得機能112は、遺伝子発現・変異情報U1以外の他の生体情報についても、同様の方法で、他の生体情報と疾患Aとの相関を示す相関係数と、他の生体情報から算出された定量スコアとを取得する。そして、生体状態判定機能113は、同様に、取得した相関係数と取得した定量スコアとの乗算値を算出する。
具体的には、生体状態判定機能113は、エピジェネティック環境影響情報U2から算出された定量スコアと、相関係数「0.5」との乗算値r2を算出する。また、生体状態判定機能113は、タンパク質発現情報U3から算出された定量スコアと、相関係数「0.65」との乗算値r3を算出する。また、生体状態判定機能113は、シグナル伝達情報U4から算出された定量スコアと、相関係数「0.2」との乗算値r4を算出する。
また、生体状態判定機能113は、免疫機能情報U5から算出された定量スコアと、相関係数「0.4」との乗算値r5を算出する。また、生体状態判定機能113は、内分泌機能情報U6から算出された定量スコアと、相関係数「0.01」との乗算値r6を算出する。また、生体状態判定機能113は、病理情報U7から算出された定量スコアと、相関係数「0.9」との乗算値r7を算出する。
また、生体状態判定機能113は、画像診断情報U8から算出された定量スコアと、相関係数「0.3」との乗算値r8を算出する。また、生体状態判定機能113は、生理学的情報U9から算出された定量スコアと、相関係数「0.0」との乗算値r9を算出する。また、生体状態判定機能113は、身体所見・病状情報U10から算出された定量スコアと、相関係数「0.1」との乗算値r10を算出する。
そして、生体状態判定機能113は、10次元の座標空間に、点r(r1,r2,r3,r4,r5,r6,r7,r8,r9,r10)を配置した場合の、10次元の座標空間の原点Oと点rとの間の距離を算出する。なお、算出された距離は、(r1,r2,r3,r4,r5,r6,r7,r8,r9,r10)を成分とするベクトルの大きさでもある。
そして、生体状態判定機能113は、算出した距離が「0」以上「1」以内の範囲の値となるように、算出した距離を正規化し、正規化された距離を関係度として算出する。この関係度は、被検体が疾患Aに関係している度合いを示す指標であり、疾患Aに対する被検体の生体状態を示す指標である。より具体的には、この関係度は、被検体が疾患Aに罹患している度合い(可能性)を示す指標であるとともに、疾患Aの症状の重さを示す指標である。関係度が「1」に近づくほど、被検体が疾患Aに罹患している度合いは高くなり、また、疾患Aの症状が重くなる。一方、関係度が「0」に近づくほど、被検体が疾患Aに罹患している度合いは低くなり、また、疾患Aの症状が軽くなる。
ここで、図4を参照して、定量スコアから関係度を算出する方法の一例について説明する。なお、先の図3を用いて、10種類の生体情報から生成された10個の定量スコアが生体状態判定用データベースU11に登録され、生体状態判定機能113が、10個の定量スコアを用いて関係度を算出する場合について説明した。一方、図4を用いた説明では、説明の便宜のため、3種類の生体情報から生成された3個の定量スコアSC1_1,SC2_1,SC3_1が生体状態判定用データベースU11に登録されているものとする。そして、図4を用いた説明では、生体状態判定機能113が、3個の定量スコアSC1_1,SC2_1,SC3_1を用いて、単一の疾患についての関係度を算出するものとして説明を行う。
図4は、定量スコアから関係度を算出する方法の一例について説明するための図である。
図4には、軸SC1、軸SC2及び軸SC3により形成される3次元空間が示されている。軸SC1は、定量スコアSC1_1の大きさを示す軸である。軸SC2は、定量スコアSC2_1の大きさを示す軸である。軸SC3は、定量スコアSC3_1の大きさを示す軸である。3つの軸SC1、軸SC2及び軸SC3は、互いに直交している。
図4の例において、生体状態判定機能113は、定量スコアSC1_1と、定量スコアSC1_1に対応する相関係数との乗算値R1´(図示省略)を算出する。また、生体状態判定機能113は、定量スコアSC2_1と、定量スコアSC2_1に対応する相関係数との乗算値R2´(図示省略)を算出する。また、生体状態判定機能113は、定量スコアSC3_1と、定量スコアSC3_1に対応する相関係数との乗算値R3´(図示省略)を算出する。
そして、生体状態判定機能113は、3次元の座標空間に、点R´(R1´,R2´,R3´)(図示省略)を配置した場合の、3次元の座標空間の原点Oと点R´との間の距離を算出する。なお、算出された距離は、(R1´,R2´,R3´)を成分とするベクトルの大きさでもある。
そして、生体状態判定機能113は、算出した距離が「0」以上「1」以内の範囲の値となるように、算出した距離を正規化し、正規化された距離D1を関係度として算出する。なお、図4には、正規化後の距離D1に対応する点R(R1,R2,R3)が示されている。点Rは、正規化に伴って点R´の位置が変更されたものである。すなわち、点Rは、点R´に対応する点である
ここで、図4において、球SPは、半径1の球である。本実施形態では、点Rは、球SPの内部及び表面に位置する。
そして、図4に示すように、原点Oと点Rとを結ぶ線分をさらに点R側から伸ばした線分と球SPの表面との交点を点Pとする。このとき、点Rと点Pとの距離D2が短いほど、被検体が疾患に罹患している度合いが高くなり、また、疾患の症状が重くなる。
図4を参照して、生体状態判定機能113が、単一の疾患を表す球SPにおいて、被検体の現在の生体状態を示す点R(R1,R2,R3)がどの位置にあるのかを判定することで、単一の疾患に対する生体状態を判定する場合について説明した。そして、生体状態判定機能113は、同様に、他の複数の疾患に対する生体状態についても判定する。すなわち、生体状態判定機能113は、全ての疾患A~疾患Nのそれぞれに対応する複数の球SPのそれぞれにおいて、被検体の現在の生体状態を示す点がどの位置にあるのかを判定することで、球SPの表面に配置される複数の疾患のそれぞれに対する生体状態を判定する。
なお、1つの球SPが、全ての疾患A~疾患Nを表していてもよい。例えば、生体状態判定機能113は、1つの球SPにおいて、全ての疾患A~疾患Nのそれぞれについての関係度に対応する点が、どの位置にあるかを判定することで、全ての疾患A~疾患Nのそれぞれに対する生体状態を判定してもよい。
図2の説明に戻って、生体状態判定機能113は、算出した関係度に基づいて、疾患Aに対する被検体の生体状態を判定する。例えば、生体状態判定機能113は、複数の閾値と関係度とを比較することにより、生体状態を判定する。
例えば、関係度が閾値「0」以上閾値「0.4」未満の範囲内である場合には、被検体が疾患Aに罹患していないと考えられる。このため、生体状態判定機能113は、関係度が閾値「0」以上閾値「0.4」未満の範囲内である場合には、被検体の生体状態が、疾患Aに罹患していない状態(健康状態)であると判定する。健康状態は、第1の状態の一例である。
また、例えば、関係度が閾値「0.6」以上閾値「0.9」未満の範囲内である場合には、被検体が疾患Aに罹患しており、また、被検体の疾患Aの症状が軽症であると考えられる。このため、生体状態判定機能113は、関係度が閾値「0.6」以上閾値「0.9」未満の範囲内である場合には、被検体の生体状態が、疾患Aに罹患しており、疾患Aの症状が軽症である状態(疾患状態)であると判定する。疾患状態は、第2の状態の一例である。
また、例えば、関係度が閾値「0.4」以上閾値「0.6」未満の範囲内である場合には、被検体の生体状態が、健康状態と疾患状態との間の状態(中間状態)であると考えられる。なお、中間状態とは、例えば、被検体が疾患Aに罹患していない状態であるものの、上記の「健康状態」よりも疾患状態に移行しやすい状態を指す。このため、生体状態判定機能113は、関係度が閾値「0.4」以上閾値「0.6」未満の範囲内である場合には、被検体の生体状態が、中間状態であると判定する。中間状態は、第3の状態の一例である。
また、例えば、関係度が閾値「0.9」以上閾値「1.0」以下の範囲内である場合には、被検体が疾患Aに罹患しており、また、被検体の疾患Aの症状が重症であるか、若しくは、被検体が死亡していると考えられる。このため、生体状態判定機能113は、関係度が閾値「0.9」以上閾値「1.0」以下の範囲内である場合には、被検体の生体状態が、疾患Aに罹患しており、また、疾患Aの症状が重症であるか、若しくは、死亡している状態(重症・死亡)であると判定する。重症・死亡は、第4の状態の一例である。
上述した方法により、生体状態判定機能113は、複数の定量スコア及び複数の相関係数に基づいて、疾患Aに対する被検体の生体状態を判定する。より具体的には、生体状態判定機能113は、複数の定量スコアと複数の相関係数とに基づいて、被検体と疾患Aとの関係度を算出し、算出した関係度に基づいて、疾患Aに対する被検体の生体状態を判定する。そして、生体状態判定機能113は、同様の方法により、被検体と疾患B~疾患Nのそれぞれとの関係度を算出し、算出した関係度に基づいて、疾患B~Nのそれぞれに対する被検体の生体状態を判定する。このように、生体状態判定機能113は、被検体の遺伝子レベルから人体レベルまでの包括的な複数種類の生体情報に対する解析により得られた複数の定量スコアに基づいて、疾患A~Nのそれぞれに対する被検体の生体状態を判定する。したがって、本実施形態に係る診断支援装置1は、被検体の生体状態を精度良く判定することができる。
また、生体状態判定機能113は、生体状態判定用データベースU11を用いて、複数の疾患(疾患A~疾患N)のそれぞれについて判定された生体状態の確からしさを示す総合信頼度を算出する。
まず、疾患Aについて判定された生体状態の確からしさを示す総合信頼度の算出方法の一例について説明する。
例えば、取得機能112は、生体状態判定用データベースU11から、疾患Aについて、遺伝子発現・変異情報U1に対応する相関係数「0.8」を取得する。また、取得機能112は、生体状態判定用データベースU11から、取得済みの相関係数「0.8」の確からしさを示す信頼度「A」を取得する。そして、生体状態判定機能113は、取得した相関係数「0.8」の絶対値と、取得した信頼度「A」との乗算値r11を算出する。
取得機能112は、遺伝子発現・変異情報U1以外の他の生体情報についても、同様の方法で、他の生体情報と疾患Aとの相関を示す相関係数と、この相関係数の確からしさを示す信頼度とを取得する。そして、生体状態判定機能113は、同様に、取得した相関係数の絶対値と取得した信頼度との乗算値を算出する。
具体的には、生体状態判定機能113は、エピジェネティック環境影響情報U2に対応する相関係数「0.5」の絶対値と、信頼度「B」との乗算値r12を算出する。また、生体状態判定機能113は、タンパク質発現情報U3に対応する相関係数「0.65」の絶対値と、信頼度「A」との乗算値r13を算出する。また、生体状態判定機能113は、シグナル伝達情報U4に対応する相関係数「0.2」の絶対値と、信頼度「B」との乗算値r14を算出する。
また、生体状態判定機能113は、免疫機能情報U5に対応する相関係数「0.4」の絶対値と、信頼度「B」との乗算値r15を算出する。また、生体状態判定機能113は、内分泌機能情報U6に対応する相関係数「0.01」の絶対値と、信頼度「C」とのの乗算値r16を算出する。また、生体状態判定機能113は、病理情報U7に対応する相関係数「0.9」の絶対値と、信頼度「A」との乗算値r17を算出する。
また、生体状態判定機能113、画像診断情報U8に対応する相関係数「0.3」の絶対値と、信頼度「B」との乗算値r18を算出する。また、生体状態判定機能113は、生理学的情報U9に対応する相関係数「0.0」の絶対値と、信頼度「C」との乗算値r19を算出する。また、生体状態判定機能113は、身体所見・病状情報U10に対応する相関係数「0.1」の絶対値と、信頼度「B」との乗算値r20を算出する。
そして、生体状態判定機能113は、下記の式(1)に従って、10個の乗算値r11~r20の和Qを総合信頼度として算出する。
Q=r11+r12+r13+r14+r15+r16+r17+r18+r19+r20 …(1)
なお、生体状態判定機能113は、和Qをそのまま総合信頼度として用いてもよいし、和QをA~Eの複数段階のうちのいずれかの段階に正規化した値を、総合信頼度として用いてもよい。例えば、総合信頼度「A」は、総合信頼度「B」よりも信頼度が高く、総合信頼度「B」は、総合信頼度「C」よりも信頼度が高い。また、総合信頼度「C」は、総合信頼度「D」よりも信頼度が高く、総合信頼度「D」は、総合信頼度「E」よりも信頼度が高い。なお、総合信頼度「A」、「B」、「C」、「D」、「E」は、数値を示す。例えば、総合信頼度「A」は、「1.0」であり、総合信頼度「B」は、「0.8」であり、総合信頼度「C」は、「0.6」である。また、例えば、総合信頼度「D」は、「0.4」であり、総合信頼度「E」は、「0.2」である。
上述した方法により、生体状態判定機能113は、複数の信頼度及び複数の相関係数に基づいて、疾患Aについて判定された生体状態の確からしさを示す総合信頼度を算出する。そして、生体状態判定機能113は、同様の方法により、疾患B~疾患Nのそれぞれについて判定された生体状態の確からしさを示す総合信頼度を算出する。
表示制御機能114は、複数の疾患A~疾患Nのそれぞれについて算出された関係度及び総合信頼度、及び、複数の疾患A~疾患Nのそれぞれについて判定された生体状態をディスプレイ14に表示させる。
図5は、第1の実施形態に係る関係度及び総合信頼度の表示の一例を示す図である。
例えば、図5に示すように、表示制御機能114は、疾患Aについて関係度「0.75」と疾患状態とを対応付けて、ディスプレイ14の表示領域14aに表示させる。これにより、操作者は、疾患Aについての被検体の生体状態が、疾患状態であることを容易に判断することができる。
また、表示制御機能114は、疾患Nについて関係度「0.86」と疾患状態とを対応付けて、ディスプレイ14の表示領域14aに表示させる。これにより、操作者は、疾患Nについての被検体の生体状態が、疾患状態であることを容易に判断することができる。
なお、図5の例では、疾患B~疾患Mについて、関係度及び生体状態の図示が省略されているが、疾患A及び疾患Nと同様に、判定された生体状態と算出された関係度とが対応付けられて表示領域14aに表示される。
このように、被検体の現在の生体状態が、疾患A~疾患Nのそれぞれにどの程度近いかを可視化される。これにより、操作者は、関係度を低減させるように健康アドバイスや支援を被検体に対して行うことができる。
本実施形態では、上述したように、診断支援装置1は、被検体の生体状態を精度良く判定することができる。そして、診断支援装置1は、精度良く判定された生体状態をディスプレイ14に表示させる。したがって、診断支援装置1は、疾患についての診断を操作者に精度良く行わせることができる。
また、例えば、図5に示すように、表示制御機能114は、疾患Aについての総合信頼度「C」を、ディスプレイ14の表示領域14aに表示させる。これにより、操作者は、疾患Aについて判定された「疾患状態」の確からしさが、「C」であることを把握することができる。
また、表示制御機能114は、疾患Nについての総合信頼度「E」を、ディスプレイ14の表示領域14aに表示させる。これにより、操作者は、疾患Nについて判定された「疾患状態」の確からしさが、「E」であることを把握することができる。
なお、図5の例では、疾患B~疾患Mについて、総合信頼度の図示が省略されているが、疾患A及び疾患Nと同様に、総合信頼度が表示領域14aに表示される。
このように、本実施形態に係る診断支援装置1は、判定された生体状態の確からしさを示す総合信頼度を疾患ごとに表示する。したがって、本実施形態に係る診断支援装置1によれば、判定された生体状態の確からしさを操作者に把握させることができる。この結果、例えば、操作者は、総合信頼度に応じて、追加の検査の実施等が必要かどうかを判断することができる。
図6は、診断支援装置の動作をフローチャートとして示す図である。図6において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。例えば、図6に示す処理は、入力インターフェース13を介して、操作者が生体状態を判定するための指示を処理回路11に入力した場合に実行される。
図6に示すように、スコア算出機能111は、記憶回路12に記憶された複数種類の生体情報のそれぞれに対して、定量スコアを算出する(ステップST1)。そして、生体状態判定機能113は、疾患A~疾患Nのそれぞれについて、複数の定量スコアと複数の相関係数とを用いて関係度を算出し、関係度に基づいて生体状態を判定する(ステップST2)。
そして、生体状態判定機能113は、疾患A~疾患Nのそれぞれについて、複数の相関係数及び複数の信頼度を用いて総合信頼度を算出する(ステップST3)。そして、表示制御機能114は、疾患A~疾患Nのそれぞれについて、生体状態、関係度及び総合信頼度をディスプレイ14に表示させ(ステップST4)、処理を終了する。例えば、ステップST4では、表示制御機能114は、上述したように、判定された生体状態と、関係度とを対応付けてディスプレイ14に表示させる。
以上、第1の実施形態に係る診断支援装置1について説明した。第1の実施形態に係る診断支援装置1によれば、上述したように、被検体の生体状態を精度良く判定することができる。
(第1の実施形態の変形例1)
上述した実施形態では、生体状態判定機能113が、疾患A~疾患Nのそれぞれについて、健康状態と、中間状態と、疾患状態と、重症・死亡との4つの生体状態のうち、いずれの生体状態であるのかを判定する場合について説明した。しかしながら、生体状態判定機能113による生体状態の判定方法は、これに限られない。そこで、変形例1では、生体状態判定機能113による生体状態の他の判定方法の一例について説明する。
例えば、変形例1に係る生体状態判定機能113は、少なくとも、健康状態と、中間状態と、疾患状態とのうち、いずれの生体状態であるのかを判定すればよい。すなわち、生体状態判定機能113は、明らかに重体でない被検体に対しては、重症・死亡の判定を行わないようにしてもよい。
変形例1によれば、重症・死亡の判定を行わない分、生体状態の判定処理の負荷を軽減することができる。また、変形例1によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第1の実施形態の変形例2)
また、上述した第1の実施形態では、生体状態判定機能113が、疾患ごとに、10個の相関係数を用いて、生体状態を判定する場合について説明した。しかしながら、生体状態判定機能113は、疾患ごとに、10個の相関係数のうち、特定の信頼度以上の信頼度に対応する相関係数を用いて生体状態を判定してもよい。そこで、このような変形例を第1の実施形態の変形例2として説明する。なお、変形例2の説明では、第1の実施形態と異なる点を主に説明する。
以下、信頼度「A」が「1.0」であり、信頼度「B」が「0.7」であり、信頼度「C」が「0.3」であり、特定の信頼度が「0.8」である場合について説明する。この場合、複数の信頼度「A」、「B」、「C」のうち、特定の信頼度「0.8」以上の信頼度は、信頼度「A」である。変形例2では、生体状態判定機能113は、信頼度「A」に対応する相関係数を用いて、疾患A~疾患Nのそれぞれについての生体状態を判定する。
例えば、生体状態判定機能113は、疾患Aについての生体状態を判定する場合、図2に示す生体状態判定用データベースU11の中から、信頼度「A」に対応する相関係数を用いる。例えば、生体状態判定機能113は、上から順に、信頼度「A」に対応する相関係数「0.8」、信頼度「A」に対応する相関係数「0.65」、信頼度「A」に対応する相関係数「0.9」を用いる。すなわち、生体状態判定機能113は、3次元の座標空間に、点r´(r1,r3,r7)を配置した場合の、3次元の座標空間の原点Oと点r´との間の距離を算出する。なお、算出された距離は、(r1,r3,r7)を成分とするベクトルの大きさでもある。
そして、生体状態判定機能113は、第1の実施形態と同様に、算出した距離が「0」以上「1」以内の範囲の値となるように、算出した距離を正規化し、正規化された距離を関係度として算出する。そして、生体状態判定機能113は、第1の実施形態と同様に、算出された関係度に基づいて、疾患Aについての生体状態を判定する。そして、生体状態判定機能113は、同様の方法で、疾患B~疾患Nのそれぞれについての生体状態を判定する。
変形例2によれば、診断支援装置1は、特定の信頼度以上の信頼度に対応する相関係数を用いて、生体状態を判定する。したがって、変形例2に係る診断支援装置1によれば、被検体の生体状態をさらに精度良く判定することができる。
(第1の実施形態の変形例3)
上述した第1の実施形態では、生体状態判定機能113が、図5に示す複数の閾値「0.4」、「0.6」及び「0.9」と、関係度とを比較することにより、疾患Aに対する生体状態を判定する場合について説明した。ここで、例えば、図5において、疾患Aについての関係度が「0.39」である場合、被検体の生体状態が健康状態であると判定されるものの、中間状態に移行しやすい状態でもある。他の生体状態においても同様である。また、他の疾患においても同様である。すなわち、閾値と関係度との差の絶対値が特定の値(例えば、0.2)以下である場合には、被検体は、生体状態判定機能113により判定された生体状態とは異なる生体状態に移行しやすい状態である。
そこで、変形例3では、生体状態判定機能113は、第1の実施形態と同様の処理を行うとともに、判定された生体状態とは異なる生体状態に移行しやすい状態であることを操作者に把握させるために、以下に説明する処理を実行する。なお、変形例3の説明では、第1の実施形態と異なる点を主に説明する。
例えば、生体状態判定機能113は、複数の閾値のそれぞれと、関係度との差の絶対値を算出する。これにより、複数の差の絶対値が算出される。そして、生体状態判定機能113は、複数の差の絶対値のそれぞれが、特定の値以下であるか否かを判定する。そして、生体状態判定機能113は、複数の差の絶対値のうち、少なくとも1つの絶対値が特定の値以下であると判定された場合には、判定された生体状態とは異なる生体状態に移行しやすい状態であることを示す情報を警告情報としてディスプレイ14に表示させる。すなわち、生体状態判定機能113は、複数の閾値のうち少なくとも1つの閾値と関係度との差の絶対値が特定の値以下である場合には、警告情報をディスプレイ14に表示させる。これにより、操作者は、判定された生体状態とは異なる生体状態に移行しやすい状態であることを把握することができる。
図7は、第1の実施形態の変形例3に係る警告情報の一例を示す図である。
図7に例示するように、閾値「0.6」と関係度「0.58」との差の絶対値が、特定の値以下である場合に、生体状態判定機能113は、警告情報として、テキストデータ「疾患状態に近い中間状態です」を生成し、生成したテキストデータをディスプレイ14の表示領域14aに表示させる。これにより、操作者は、判定された中間状態とは異なる疾患状態に移行しやすい状態であることを把握することができる。
ここで、特に、慢性疾患及びがんでは、正常な状態を維持しようとする恒常性(Homeostasis)の維持が重要である。一般的に、生体システムは、生命活動を維持するために、冗長性と安定性を有する維持機構を有している。例えば、医師が被検体に対して一見して同じ状態と判断できる状態でも、実際には、真に問題が無く健康な状態で維持されている状態と、維持機構が最大限働いて何とか機能を維持している状態とがある。
生体の状態及び機能の実現には、複数の冗長経路を有した複雑なシステム(冗長機構)が用いられている。この冗長機構は、恒常性の維持に寄与している一方で、破綻寸前まで状態及び機能を維持しようとすることが多く、疾患の悪化を進める方向に働く。このため、詳細な状態を精度良く判定することが重要となる。
変形例3では、例えば、被検体の生体状態が疾患状態と判定されても、疾患状態と重症・死亡との境界を示す閾値と、関係度との差の絶対値が、特定の値以下である場合には、重症・死亡に移行しやすい状態であることを操作者が把握することができる。すなわち、維持機構が最大限働いて何とか機能を維持している情報を操作者は把握することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、定量スコアを用いずに、生体状態を判定する。そのため、第2の実施形態では、処理回路11は、図2に示すスコア算出機能111を備えずに、取得機能112と、生体状態判定機能113と、表示制御機能114とを備える。そして、取得機能112は、定量スコアを取得する必要はない。
第2の実施形態では、生体状態判定機能113は、状態方程式と観測方程式とを用いて、生体状態を推定する。
第2の実施形態では、例えば、被検体の現在の生体状態の推定には、離散的な誤差のある観測から、時々刻々と時間変化する量を推定するのに適するカルマンフィルターを、生体という非線形動的システムに応用した状態空間モデルを応用した例を説明する。例えば、過去のデータから未来を予測する時系列分析では、過去のデータが時系列に存在しない又は欠損値がある場合は、予測ができない又は予測精度が大きく劣化する。しかしながら、離散的なデータしか存在しない場合もあるし、観測した結果と実際の状態とが整合しない場合もある。第2の実施形態では、状態方程式と観測方程式とに分けてモデル化し、観測値を推定するとともに、実測値がある部分に関しては、予測水準に反映するという柔軟なモデルを構築する。なお、状態方程式については、マルコフ性を仮定する。
図8は、第2の実施形態における生体状態の推定方法の一例を説明するための図である。
図8は、状態空間モデルを概念的に示したものである。第2の実施形態では、生体状態判定機能113は、以下の状態方程式(2)と観測方程式(3)とを用いて、図8に示すように、現在の時刻tにおける被検体の生体状態Stと観測値Dtとを推定する。
St=G(St-1,at,ut) …(2)
Dt=F(Dt-1,bt,wt) …(3)
上述の状態方程式(2)において、「St-1」は、現在の時刻tから1ステップ前の時刻t-1における被検体の生体状態を示す変数である。「at」は、現在の時刻tの説明変数である。「ut」は、現在の時刻tのシステムノイズ及び生体のゆらぎ(以下、単に「システムノイズ」という)を示す変数である。
例えば、本実施形態では、4つの生体状態(健康状態、中間状態、疾患状態、重症・死亡)のそれぞれが数値化されて用いられる。したがって、「St-1」と「St」とは、数値として扱われる。「G」は、「St-1」と、「at」と、「ut」とを用いて、現在の時刻の被検体の生体状態Stを出力する関数である。また、初期値S0は、操作者により入力インターフェース13を介して処理回路11に入力されて、生体状態判定機能113により記憶回路12に記憶される。
上述の観測方程式(3)において、観測値Dtは、現在の時刻tにおける被検体の生体情報を示す変数である。例えば、観測値Dtは、血液検査により得られた「HbA1c」を示す生体情報である。「Dt-1」は、「St」である。「bt」は、現在の時刻tにおける説明変数である。「wt」は、現在の時刻tにおける観測ノイズを示す変数である。「F」は、「Dt-1」と、「bt」と、「wt」とを用いて、観測値Dtを出力する関数である。
図8に示すように、観測できない状態をモデルに組み込むことで、より複雑な生体状態の時系列モデルを構築することができる。また、生体状態判定機能113は、過去の生体状態に基づく現在の生体状態を、現在の観測値を基に補正し、より精度の高い現在の生体状態を判定することが可能となる。
例えば、生体状態判定機能113は、次の式(4)を用いて、より精度の高い、補正された現在の時刻の生体状態SAを推定する。
SA=SR+K(DR-DP) …(4)
上記式(4)において、「SA」は、補正された現在の時刻における被検体の生体状態を示す変数である。「SB」は、補正前の現在の時刻における被検体の生体状態を示す変数である。「K」は、カルマンゲインである。「DR」は、実際の観測値である。すなわち、「DR」は、実際の血液検査により得られた現在の時刻の「HbA1c」を示す生体情報である。「DP」は、予測された観測値である。すなわち、「DP」は、上記の観測方程式(3)により予測された現在の時刻の「HbA1c」を示す生体情報である。
生体状態判定機能113は、上記式(4)を用いて、現在の生体状態を補正することにより、より精度の高い現在の生体状態を判定することができる。
そして、生体状態判定機能113は、現在の生体状態を、複数の定量スコアに対して整合をとるようにさらに補正し、その状態から他の観測していない欠損値に対しても統計的に推定することで、観測・非観測を問わず、現在の時刻の生体状態が確定する。
現在の時刻の生体状態が、病気の状態(疾患状態及び重症・死亡)であれば、操作者は、確定診断を行ったり、総合信頼度が低ければ、追加の検査等を行うか否かの判断を行ったりする。
以上、第2の実施形態に係る診断支援装置1について説明した。第2の実施形態に係る診断支援装置1は、状態方程式と観測法定式とを用いて、被検体の生体状態を精度良く判定することができる。
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、生体状態判定機能113が、疾患ごとに、10個の定量スコアと、10個の相関係数とを用いて関係度を算出する場合について説明した。しかしながら、生体状態判定機能113は、10個の相関係数の代わりに、学習済みモデルを用いて、10個の定量スコアから、関係度を導出してもよい。そこで、このような実施形態を第3の実施形態として説明する。
第3の実施形態では、記憶回路12に、疾患A~疾患Nのそれぞれに対応する学習済みモデルが記憶されている。すなわち、記憶回路12には、14個の学習済みモデルが記憶されている。学習済みモデルは、10個の定量スコアの入力を受けて、生体状態を出力する。
例えば、疾患Aに対応する学習済みモデルは、診断支援装置1で生成されてもよいし、診断支援装置1以外の装置で生成されてもよい。以下、診断支援装置1以外の装置が、疾患Aに対応する学習済みモデルを生成する場合について説明する。以下の説明では、このような装置を、学習済みモデル生成装置と表記する。
学習済みモデル生成装置は、被検体の複数の生体情報の組み合わせと、疾患Aに対する生体状態との関係を学習することによって、疾患Aに対応する学習済みモデルを生成する。ここで、複数の生体情報とは、遺伝子発現・変異情報U1~U10のうち少なくとも2つ以上である。
例えば、学習済みモデル生成装置は、上記組み合わせと生体状態の組を学習用データ(教師データ)として機械学習エンジンに入力することによって、機械学習を行う。
このような機械学習の結果として、学習済みモデル生成装置は、上記組み合わせの入力に対して、生体状態を出力する学習済みモデルを生成する。このように、学習済みモデル生成装置は、被検体の遺伝子レベルから人体レベルまでの包括的な複数種類の生体情報を用いて学習済みモデルを生成する。このため、学習済みモデル生成装置は、精度の良い生体状態を出力する学習済みモデルを生成することができる。そして、学習済みモデル生成装置は、生成した学習済みモデルを、図示しないネットワークを介して、診断支援装置1に送信する。診断支援装置1は、受信した学習済みモデルを記憶回路12に記憶させる。
そして、診断支援装置1の生体状態判定機能113は、疾患Aに対応する学習済みモデルに10個の定量スコアを入力することで、生体情報を導出する。生体状態判定機能113は、同様の方法で、疾患B~疾患Nのそれぞれに対応する学習済みモデルに10個の定量スコアを入力することで、疾患B~疾患Nのそれぞれについての生体情報を導出する。
以上、第3の実施形態に係る診断支援装置1について説明した。第3の実施形態に係る診断支援装置1は、学習済みモデルを用いて、被検体の生体状態を精度良く判定することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、前述の第2の実施形態の追加機能として位置づけられる。第4の実施形態では、処理回路11の生体状態判定機能113が、被検体の情報U1~U10に基づいて疾患に対する被検体の生体状態の変化を算出するとともに、被検体の生体状態の変化と生活習慣・環境情報の変化とに基づいて、所定の被検体固有の観測値の正常範囲を算出するものである。
なお、第4の実施形態に係る診断支援装置1Aの概略構成は、図1に示すものと同等であるので、説明を省略する。
図9は、第4の実施形態に係る診断支援装置1Aの機能を示すブロック図である。
処理回路11がプログラムを実行することによって、診断支援装置1は、取得機能112と、生体状態判定機能113と、表示制御機能114と、正常範囲算出機能115とを実現する。なお、機能112~115の全部又は一部は、診断支援装置1AにASIC等の回路の機能として実現されるものであってもよい。正常範囲算出機能115は、算出部の一例である。取得機能112と、生体状態判定機能113と、表示制御機能114と、正常範囲算出機能115とについては後述する。
ここで、例えば、処理回路11の構成要素である機能112~115は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶されている。処理回路11は、各プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路11は、処理回路11内に示された機能112~115を有することとなる。
なお、機能112~115の全ての処理機能がコンピュータによって実行可能な1つのプログラムの形態で、記憶回路12に記憶されていてもよい。例えば、このようなプログラムは、診断支援プログラムとも称される。この場合、処理回路11は、診断支援プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した診断支援プログラムを実行することで診断支援プログラムに対応する機能112~115を実現する。
記憶回路12は、所定の被検体に関する情報U1~U10のうち複数種類の生体情報を被検体ごとに記憶する。加えて、記憶回路12は、生活習慣情報及び環境情報のうち少なくとも一方を示す情報(以下、「生活習慣・環境情報」という)U12を被検体ごとに記憶する。
情報U1~U10と、生体状態判定用データベースU11とについては第1の実施形態で説明したとおりである。生活習慣・環境情報U12は、例えば、診断対象の被検体の、食事における塩分摂取量や、投薬における薬効等である。例えば、生活習慣・環境情報U12は、記憶回路12に記憶される。
取得機能112は、所定の被検体に関する情報U1~U10のうち複数種類の生体情報と、生活習慣・環境情報U12とを取得する。
生体状態判定機能113は、取得機能112によって取得された、所定の被検体における複数種類の生体情報に対する解析により得られた複数の解析結果に基づいて、疾患に対する所定の被検体の生体状態を判定し、また、生体状態の変化を判定する。生体状態の変化は、異なる時間的で判定された複数の生体状態間の差を意味する。例えば、生体状態の変化は、時刻tの生体状態Stの、前の時刻t-1の生体状態St-1との差「△St」である。時刻tにおける所定の被検体の生体状態Stは、上記式(2)から算出される。また、生体状態判定機能113は、生体状態の移行に関する状態移行シミュレーションにより、所定の被検体の過去の生活習慣・環境情報の変化に基づいて、将来における所定の被検体の生体状態の変化を推定することもできる。生体状態判定機能113は、個別化パラメータを反映した状態移行シミュレーションにおいて(例えば、上記式(2),(3))、所定の被検体に関する過去の生活習慣・環境情報の変化に基づく、ある環境変化に対する被検体個々の堅牢性スコアに基づいて将来の生体状態の変化を推定し、予測に使用する将来の個別化パラメータを修正し、修正後の個別化パラメータを用いた状態移行シミュレーションによる予測を行うことも可能である。個別化パラメータとは、前述の説明変数、システムノイズ、観測ノイズ等を意味する。
又は、時刻tの生体状態Stは、別の方法で判定することも可能である。例えば、取得機能112は、センサによる被検体の観測値と、生活習慣情報及び環境情報のうち少なくとも一方を含む生活習慣・環境情報とを被検体ごとに記憶する記憶回路12から、所定の被検体における観測値と生活習慣・環境情報とを取得する。そして、生体状態判定機能113は、取得機能112によって取得された、所定の被検体における観測値と生活習慣・環境情報とに基づいて、疾患に対する前記所定の被検体の生体状態を判定する。その場合、時刻tにおける所定の被検体の生体状態Stは、時刻tにおける生活習慣・環境情報Ctと観測値Dtとから、次の式(5)から算出される。
St=f(Ct,Dt) …(5)
図10は、疾患に対する所定の被検体の生体状態の一例を示す図である。
図10は、複数の疾患(例えば、疾患A~C,N)が球表面に配置された中で、時刻tにおける所定の被検体の生体状態Stがどこに位置するかを示す状態配置図である。所定の被検体の生体状態Stは、全ての疾患からの距離により球の内部の所定位置に一意に決まるものである。なお、生体状態Stが球の中心が、いずれの疾患とも相関「0」の位置である。各疾患からの距離が相関係数(-1~1)を示し、半径より近づけばプラス側、遠ざかればマイナスの相関を意味する。例えば、図10に示す例では、所定の被検体の生体状態Stは、疾患Aには近いが、疾患Nからは遠い状態であることを意味する。
図9の説明に戻って、正常範囲算出機能115は、生体状態判定機能113によって評価された所定の被検体の生体状態の変化と、取得機能112によって取得された生活習慣・環境情報の変化とに基づいて、所定の被検体の生活習慣・環境情報における、所定の被検体の観測値の正常範囲を算出する。生活習慣・環境情報の変化は、異なる時間的で取得された複数の生活習慣・環境情報間の差を意味する。例えば、生活習慣・環境情報の変化は、時刻tの生活習慣・環境情報Ctの、前の時刻t-1の生活習慣・環境情報Ct-1との差「△Ct」である。
例えば、正常範囲算出機能115は、生活習慣・環境情報の変化に対する生体状態の変化の割合(△St/△Ct)に基づいて、所定の被検体における、生活習慣・環境情報の変化に対するロバスト性をスコア化して堅牢性スコアを得る。そして、正常範囲算出機能115は、堅牢性スコアに基づいて、所定の被検体の観測値Dtの正常範囲を算出する。例えば、複数の時刻において所定の被検体に係る複数の堅牢性スコアが算出されるので、正常範囲算出機能115は、それらの堅牢性スコアのバラツキ(標準偏差又は分散)から観測値Dtの正常範囲を算出すればよい。
表示制御機能114は、正常範囲算出機能115によって算出された所定の被検体固有の観測値の正常範囲を、所定の被検体の観測値とともにディスプレイ14に表示することができる。また、表示制御機能114は、所定の被検体の観測値の正常範囲と、将来の生活習慣・環境情報に基づく観測値とをディスプレイ14に表示することもできる。
図11は、正常範囲の表示例を示す図である。
図11は、所定の被検体の観測値Dtの時間変化と、正常範囲とを示す。時刻tにおいて被検体の観測値の正常範囲が算出される。そして、その次の時刻、つまり、将来の時刻t+1の食事においてある量の塩分摂取を行おうとする場合(又は、将来の時刻t+1の食事においてある量の塩分摂取を行った直後)、その塩分摂取量が被検体の観測値Dt+1である血圧値がどのように変化するか、また、血圧値Dt+1がその被検体にとって正常範囲のものかを被検体に提示することができる。
図11に示す場合、時刻t+1の食事における塩分摂取量が大きく被検体の血圧値は上昇することが予測されるが、予測された血圧値は、その被検体にとっては正常範囲内であることを示す。この表示により、被検体は、時刻t+1の食事において安心して塩分を摂取することができる。
続いて、所定の被検体の観測値の正常範囲を算出する意義と、その方法について説明する。
被検体の違い、つまり、個人差により、同じ食物を摂取しても血糖値や脂質の上昇/下降等の体質の特性(傾向)が異なる場合があり、また、同じ薬を投与しても薬効の特性(例えば、薬物の代謝の薬効)が異なることがある。また、被検体の体質の特性や、それによる個人差に関する議論や研究も多くなされてきた。1つの疾患ガイドラインによれば、それらのバラツキのある個人差を総括して、例外はあるものの、多くの人が分布する特性の範囲を「正常」として統計的に規定し、臨床判断が行われてきた。
一方で、近年のゲノム解析技術やタンパク質・メタボローム解析技術の進歩に伴い、特性の違いとその違いを生じさせる要因とが徐々に解明されてきている。それに伴い、被検体の特性に合った治療や投薬の選択を行う個別化医療(Personalized Medicine)や、Precision Medicineの考えが進んできた。
例えば、コンパニオン診断などはその一例に当たる。コンパニオン診断は、糖負荷試験や、運動負荷を掛けた状態に対する心臓の機能を観察する心負荷試験や、遺伝的な素因に基づいて薬効や副作用を予測し、被検体に対して適切な投薬等の治療を行うものである。
被検体の特性に合わせた適切な治療を行うためには、その被検体がどのような生物学的特徴(例えば、情報U1~U10)を持っていて、その被検体が食事を摂ったり、薬を飲んだりした際にどのような反応をするのかを正しく把握し、また、予測して、治療方針を立てる必要がある。
一方で、生体には、その生命活動を維持するために病的な状態に移行することのないように維持しようとする「恒常性維持機構」が存在する。「恒常性維持機構」により、生体内の塩分濃度や様々なミネラル、アミノ酸、その他のバイオマーカ、そして体温や血圧、心拍に至る様々な状態が、食事や運動等の日常的な活動により短期的な変動は生じるものの、長期的にはある一定の正常範囲内に留まるように制御されている。
このように、適切な治療方針を立てるためには、「恒常性維持機構」に関わる生活習慣と環境とのうち少なくとも一方に係る生活習慣・環境情報を加味して被検体個人の特性を推定することが適切である。
ここで、被検体の薬効の特性を意味する被検体個々の薬物反応性を「R」(Response)とすると、薬物反応性Rは、周知のとおり、係数fにより、次の式(6)で表される。ここで、「C」は、その被検体の作用部位の薬物濃度(Concentration)であり、生活習慣・環境情報と定義することができる。また、「E」は、その被検体の作用部位の組織感受性「Sensitivity」である。
R=f(C・E) …(6)
上記式(6)における被検体の作用部位の薬物濃度Cを、現在の時刻tにおける被検体の生活習慣・環境情報Ctと定義することができる。また、上記式(6)における被検体の作用部位の組織感受性Eを、現在の時刻tにおける被検体の生体状態の変化「△St/△Ct」と定義することができる。さらに、上記式(6)における被検体の薬物反応性Rを、現在の時刻tにおける被検体の生体状態Stと定義することができる。
第4の実施形態では、正常範囲算出機能115は、被検体の生体状態の変化「△St/△Ct」の値により、被検体の薬物反応性R、つまり、生体状態の変化に対する被検体の堅牢性(ロバスト性)を評価し、被検体の個別化された観測値の正常範囲を算出するものである。また、上記式(6)を用いて被検体への投薬に対する被検体の個別化された観測値の正常範囲について説明したがその場合に限定されるものではない。被検体の塩分摂取量に対する被検体の個別化された観測値の正常範囲についても同様である。
例えば、食塩感受性の人種的特異性及び遺伝的素因について説明する。正常範囲算出機能115は、被検体の各食事(間食を含めてもよい)からの塩分摂取量「Ct」と、IoTやウェアラブルデバイスによる被検体の各血圧の値「St」とに基づいて、被検体の生体状態の変化「△St/△Ct」を算出する。それにより、正常範囲算出機能115は、生体状態の変化に対する被検体のロバスト性を日常的に評価して被検体に提示することができる。
具体的には、正常範囲算出機能115は、1回の食事に含まれる塩分量をレシピに沿って算出する。例えば、外食であっても、正常範囲算出機能115は、注文した一食の中に含まれる塩分量をレシピに沿って算出し、客である被検体に提示することもできる。また、正常範囲算出機能115は、注文履歴に基づいて、自動的に食事に含まれる塩分量をその食事が被検体に与えた生活習慣(又は環境)の変化△Ctを、食事を摂取した時間とともに「生活習慣・環境情報」として算出する。
また、ある時刻に、被検体があるお菓子を摂取した場合にも同様に考えることができる。お菓子の袋には、「栄養(Nutrition)」の情報が付与されている。そこで、正常範囲算出機能115は、その情報をIC(Integrated Circuit)チップやRFID(Radio Frequency Identification)リーダ等で取得し、必要に応じて被検体がそれを食べたことを認識した上で、「栄養」に含まれる塩分量の変化を△Ctとして算出する。
さらに、自宅での被検体による自炊による食事では、正常範囲算出機能115は、使用された調味料の量の変化△Ctを算出することもできる。また、複数人数分の食事では、正常範囲算出機能115は、食事摂取量の個人入力や、画像認識等による個人摂取量の推定、又は、標準的な摂取量に基づく推定などにより、調理された食事全体に含まれる塩分量との割合から、被検体個人の摂取した塩分量を推定し、その変化△Ctを算出することもできる。調味料に関しては、一振り何グラムとか、パッケージ化されたものであれば、その中に含まれている塩分量をパッケージに付与されたICチップより読み取るなどの方法で取得可能である。
一方で、生体状態判定機能113は、ウェアラブルデバイス等により被検体の生体状態Stを連続的に計測することで、被検体の生体状態の変化△Stを評価(算出)することが可能である。例えば、被検体の生体状態の変化△Stは、血圧の変化、心拍数の変化△Dt等によるものと考えることができる。ここでは、便宜上、被検体の生体状態の変化△Stが血圧の変化△Dtによるものとして説明する。血圧を計測する時刻は、例えば食後1時間の急性期の変化を観察したいのか、数か月や年のオーダでの慢性期の変化を観察したいのかで変わる。糖負荷試験などでも同様であるが、生体状態判定機能113は、被検体の生体状態の変化△Stを、塩分摂取直前の血圧と、影響を観測したい時期の血圧との差分△Dtから上記式(6)から算出することができる。
なお、被検体の血圧は、被検体の運動等の活動や、ストレスその他の心身の活動により影響を受け変化する。そのため、生体状態判定機能113は、それらの観測したい状態に影響を与える事象変化との多変量での影響として算出することも可能である。また、生体状態判定機能113は、時刻tにおける塩分摂取以外の影響因子をその他のシステムノイズut(上記式(2))と仮定し、ウェアラブルデバイス等の観測系で生じる変化因子を観測ノイズwt(上記式(3))として、状態方程式や観測方程式を設定することもできる。また、塩分摂取量の変化△Ctを、ある長期間の総摂取量として変化を観測することも可能となる。
このようにして観測された塩分摂取量の変化△Ctと、変化を観測したいタイムスパンでの血圧変化△Stにより、生体状態の変化「△St/△Ct」が算出される。生体状態の変化「△St/△Ct」が小さければ、設定した程度の塩分摂取による負荷では観測値の変化が小さく、ロバスト性や塩分負荷の耐性を持っていると言える。
こうして得られた生体状態の変化「△St/△Ct」の値は、被検体個々の塩分負荷に対する耐性・堅牢性を反映した数値であり、このデータの蓄積により、個人の個別化された、異常値を示すことのない負荷範囲を、正常範囲として規定することができる。
これまでの実施形態では、塩分摂取の変化と血圧という状態変化にフォーカスして説明したが、塩分摂取に限らず、様々な物質に対する状態変化と耐性・堅牢性について、例えば個人の安静時(起床時)の数値を基準とした場合に、次のように被検体ごとにスコアリングし、個別化されたそれぞれの生活習慣・環境情報の変化に対する正常範囲をロバストな範囲として規定することができる。
(1)ロバスト負荷領域:10%の変動範囲に収まる負荷の領域
(2)準ロバスト負荷領域:30%の変動範囲
(3)変動境界領域:30~50%
(4)高負荷領域:50%以上
また、生体状態の変化「△St/△Ct」や、前述によりスコア化された被検体個々の堅牢性スコアに基づいて、生活習慣・環境情報Cに関連する時刻tの説明変数atと、時刻tのシステムノイズutとを設定した状態方程式(上記式(2))や、時刻tの説明変数btと、時刻tの観測ノイズwtの設定による観測方程式(上記式(3))により、状態変化による被検体個人の状態変化(影響)を推定し、また、予測することが可能となる。
実際には、例に挙げた血圧変動には、単純に塩分摂取だけによる短期的・長期的な変化だけでなく、変動に影響する他のミネラルや薬物、運動負荷、周囲の温度変化、ストレスや自律神経系の影響による変化など、マルチパラメトリックに影響しており、それらのシステム変動への影響を重み付けして、被検体個人のシステムノイズutはリアルタイムに設定する必要がある。つまり、時刻tのシステムノイズutは、出力に影響する要因ごとの生活習慣・環境情報Ctに重み付けされた数値となる。
以上、第4の実施形態に係る診断支援装置1について説明した。第4の実施形態に係る診断支援装置1によれば、食事等の環境変化や薬物反応性の個人差を反映した、個別化された生体状態の予測が可能となる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態及び変形例によれば、被検体の生体状態を精度良く判定することができる。
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)と、GPU(Graphics Processing Unit)と、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)と、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)と、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)と、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限られず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能が実現されるようにしてもよい。さらに、図2における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。