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JP7545914B2 - 状態判断装置および車両 - Google Patents
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JP7545914B2 - 状態判断装置および車両 - Google Patents

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Description

本発明は、絶縁ゲート型の半導体素子の状態を判断する状態判断装置に関する。
IGBT、MOSFETなどの絶縁ゲート型の半導体素子は、負荷によってゲート絶縁膜や層間絶縁膜が経時劣化し、絶縁性が失われて故障する。そこで、半導体素子の故障を検知したり、故障を事前に予測する手段が重要とする。
特許文献1には、実運用回路の故障モードを予測する故障検出装置が記載されており、故障検出装置は、実運用回路と同一構造の3つの故障検出用回路と、故障検出用回路に負荷を与える負荷回路と、故障検出用回路の電気特性を測定してそれに基づき実運用回路の故障モードを予測する故障判定回路とを有することが記載されている。
特許文献2には、IGBTのスイッチング時のゲートリーク電流を積算し、そのしきい値を超えた場合に故障と判断する装置が記載されている。
特開2014-235060号公報 特開2003-143833号公報
しかし、特許文献1の方法では、故障検出用回路に実運用回路以上に負荷をかける必要があり、そのための回路スペースや余分な電力を必要とする問題があった。また、実運用回路の実際のデータを取っているわけではなく、故障検出用回路自体の故障は検出できないので、実運用回路の故障検出の精度が低かった。また、回路規模が大きくなることも問題であった。
また、特許文献2の方法では、ゲートリーク電流がμAオーダーで微小なため、別途増幅回路が必要であり、μsオーダーのサンプリング速度のセンサも必要となる問題があった。また、特許文献2では故障か否かの2値でしか判断できず、故障分類や故障予測をすることができない。
そこで本発明の目的は、絶縁ゲート型の半導体素子の状態を推定する装置であって、回路規模が小さく、状態の推定精度の高い状態判断装置を提供することである。
本発明は、絶縁ゲート型の半導体素子の状態を判断する状態判断装置であって、半導体素子のスイッチング動作時のゲート電圧の時間波形を取得するゲート電圧波形取得部と、ゲート電圧波形取得部により取得したゲート電圧の時間波形を記憶する波形記憶部と、波形記憶部に記憶された過去のゲート電圧の時間波形と、現在のゲート電圧の時間波形とを比較して半導体素子の絶縁膜の状態を判断する状態判断部と、を有し、状態判断部は、現在のゲート電圧の時間波形を、初期のゲート電圧の時間波形である正常波形と、正常波形の直後に発生し、その正常波形とは異なった波形形状である異常波形と、異常波形後の波形形状が安定しない過渡波形と、過渡波形後の波形形状が安定した安定波形と、の4種類に分類して、半導体素子の絶縁膜の状態を判断することを特徴とする状態判断装置である。
半導体素子のスイッチング動作時の初期のゲート電圧の時間波形を記憶する初期波形記憶部をさらに有し、状態判断部は、波形記憶部に記憶された過去のゲート電圧の時間波形と、現在のゲート電圧の時間波形と、初期波形記憶部に記憶された初期のゲート電圧の時間波形とを比較して半導体素子の絶縁膜の状態を判断してもよい。
半導体素子のスイッチング動作時の素子温度を取得する素子温度取得部をさらに有し、状態判断部は、半導体素子の絶縁膜の状態を判断するに際し、素子温度取得部により取得した素子温度と、現在のゲート電圧の時間波形との相関を考慮してもよい。
状態判断部は、現在のゲート電圧の時間波形を、初期のゲート電圧の時間波形である正常波形と、正常波形の直後に発生し、その正常波形とは異なった波形形状である異常波形と、異常波形後の波形形状が安定しない過渡波形と、過渡波形後の波形形状が安定した安定波形と、の4種類に分類して、半導体素子の絶縁膜の状態を判断してもよい。
状態判断部は、正常波形からの異常波形のゲート電圧の降下量を算出し、その降下量に基づき、半導体素子の絶縁膜の状態を判断してもよい。
状態判断部は、過渡波形のパルス数を算出し、そのパルス数に基づき、半導体素子の絶縁膜の状態を判断してもよい。
状態判断部は、安定波形におけるゲート電圧の平坦さに基づき、半導体素子の絶縁膜の状態を判断してもよい。
状態判断部は、安定波形におけるゲート電圧の平均値に基づき、半導体素子の絶縁膜の状態を判断してもよい。
状態判断部は、安定波形におけるゲート電圧の分散に基づき、半導体素子の絶縁膜の状態を判断してもよい。
また本発明は、絶縁ゲート型の半導体素子と、半導体素子の状態を判断する上記本発明の状態判断装置と、有した車両である。
本発明によれば、絶縁ゲート型の半導体素子の状態を推定する装置について、回路規模を小さくすることができ、状態の推定精度も高くすることができる。
実施例1の状態判断装置の構成を示した図。 スイッチング波形の変化を示した図。 異常波形の前後でのゲート電圧の時間波形を示したグラフ。 異常波形の前後でのゲート電圧の時間波形と素子温度との相関を示したグラフ。 IGBT100の素子構造を示した図。 ゲート電圧の時間波形の推移を示したグラフ。 ゲート電圧の時間波形の分類のフローチャート。 ゲート電圧の時間波形の例を示した図。 ゲート電圧の時間波形の例を示した図。 ゲート電圧の時間波形の例を示した図。 ゲート電圧の振幅変化と亀裂の状態との対応を示した図。 ゲート電圧の平均値と亀裂の状態との対応を示した図。 ゲート電圧の分散と亀裂の状態との対応を示した図。
以下、本発明の実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
図1は、実施例1の状態判断装置の構成を示した図である。実施例1の状態判断装置は、車載のIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)100の故障の状態を判断する装置である。ここでIGBT100の故障状態は、具体的にはIGBTの絶縁膜(ゲート絶縁膜や層間絶縁膜)の状態であり、それに伴うゲート-エミッタ間の短絡の状態である。
(状態判断装置の構成)
次に、実施例1の状態判断装置の構成について説明する。図1のように、実施例1の状態判断装置は、初期波形記憶部10と、波形取得部11と、素子温度取得部12と、過去波形記憶部13と、故障状態判断部14と、を有している。実施例1の状態判断装置は、たとえばIGBT100のゲート駆動回路内にまとめて実装されていてもよい。
初期波形記憶部10は、IGBT100を所定の周波数f0、ゲート電圧V0、デューティー比D0でスイッチング動作させたときの初期のゲート電圧(ゲート-エミッタ間の電圧)の時間波形を取得して記憶する装置である。初期のゲート電圧の時間波形は、事前に取得して記憶しておいてもよいし、波形取得部11によって取得して記憶してもよい。
波形取得部11は、IGBT100をスイッチング動作させたときの現在のゲート電圧の時間波形を取得する装置である。
素子温度取得部12は、IGBT100をスイッチング動作させたときのIGBT100の素子温度の時間波形を取得する装置である。
過去波形記憶部13は、波形取得部11によって取得したゲート電圧の時間波形と、その時間波形の分類を記憶する装置である。時間波形の分類は、正常波形、異常波形、遷移波形、安定波形の4種類であり、詳しくは後述する。ゲート電圧の時間波形は、少なくとも1パルス分前の波形を記憶し、たとえば現在から数10パルス分遡って記憶する。
故障状態判断部14は、初期波形記憶部10に記憶された初期のゲート電圧の時間波形と、波形取得部11によって取得された現在のゲート電圧の時間波形と、素子温度取得部12によって取得された素子温度と、過去波形記憶部13に記憶された過去のゲート電圧の時間波形と、に基づき、IGBT100の故障の状態を判断する。その判断方法については後述する。
(ゲート電圧の時間波形と絶縁膜の状態の関連性)
実施例1の状態判断装置は、IGBT100のゲート電圧の時間波形により絶縁膜の状態を判断するものである。そこで、まずゲート電圧の時間波形と絶縁膜の状態の関連性を説明する。
IGBT100のパワーサイクル試験において、所定の周波数、デューティー比でスイッチングを繰り返すと、初期から数万サイクルの間はIGBT100のスイッチング波形(ゲート電圧、コレクタエミッタ間電圧、素子温度)に大きな変化は出ず、正常な応答波形を繰り返す(図2(a)参照)。
さらに数万サイクルのスイッチングを繰り返すと、ゲート電圧が急低下したりデューティー比が減少する異常波形が出現するようになる(図2(b)参照)。この異常波形は数サイクルで回復し、安定した波形に戻る。
さらに数万サイクルのスイッチングを繰り返すと、IGBT100の故障に至り、正常なスイッチングができなくなる(図2(c))。
ここで、図2(b)のような異常波形が現れる原因は、ゲートエミッタ間で一瞬短絡が起き、リーク電流が流れることで電圧降下が起きたためであると考えられる。ゲートエミッタ間の短絡は、ゲートエミッタ間に存在している酸化膜(ゲート酸化膜や層間絶縁膜)に何らかの変化が起きたためと考えられる。たとえば、酸化膜に亀裂などが入り、ゲートエミッタ間の電気的耐圧が低下してリーク電流が発生した可能性がある。つまり、亀裂によって酸化膜の厚さが想定よりも薄くなり、その結果酸化膜を通過する電子のトンネル確率が高くなり、トンネル電流が増加した可能性がある。
酸化膜に亀裂が生じる原因は、IGBT100の駆動時の発熱による熱応力である。たとえば、片面冷却のIGBT100が発熱した場合、それが下部の銅板に伝わり銅版が熱応力により変形する。その変形による応力が半導体層や絶縁膜にも伝わり、最も硬い絶縁膜に大きな応力がかかり、絶縁膜に亀裂が生じる。
このように、異常波形が現れる原因は、酸化膜の亀裂等であると考えられるが、これは非可逆的な現象であるため、異常波形が生じた後に正常にスイッチングできる状態に戻ったとしても、スイッチング波形には何らかの形跡が残り、電気的特性に変化が現れるはずである。
そこで、異常波形前の正常波形と異常波形後の安定波形とで、IGBT100がオンのときのゲート電圧を比較したところ、図3のグラフのようになった。図3では、最大電圧値で規格化している。また、1パルスのオンの部分を示している。図3(a)は正常波形、図3(b)、(c)は波形が安定する前の過渡期の波形、図3(d)は安定波形におけるゲート電圧である。また、図3(d)は異常波形の発生から1000パルス後の波形である。
図3のように、安定波形におけるゲート電圧は、正常波形におけるゲート電圧と異なっていることがわかる。正常波形では、ゲート電圧はほぼ一定である。一方、異常波形の発生後さらに1000回スイッチング後では、ゲート電圧は右肩上がりの形状に収束して安定していることがわかる。つまり、IGBT100がオンになってから0~1s程度の間でゲート電圧が増加し、その後にゲート電圧が一定となる形状である。つまり、オンになった初期の段階ではゲートエミッタ間の抵抗値が変化し、リーク電流が流れて電圧が変動し、その後にリーク電流が収まって一定の状態に落ち着いていることがわかる。正常波形と安定波形の微小な変化を説明できる特徴量として、IGBT100がオンのときのゲート電圧の平均、分散、傾きなどが考えられる。
また、図3(b)、(c)のように、異常波形の発生から数十パルスの間はゲート電圧が不安定であるが、これは絶縁膜の亀裂が定まっていない、あるいは亀裂が進行中であるため、リーク電流が不安定となっているためと考えられる。一方、図3(d)のように、異常波形の発生から1000パルス後は、ゲート電圧の形状が安定しているが、これは亀裂の形状が安定した、あるいは亀裂の進行が停止したため、リーク電流が安定したためと考えられる。
(ゲート電圧の時間波形と素子温度の関連性)
また、図4は、異常波形前の正常波形と異常波形後の安定波形とで、IGBT100がオンのときのゲート電圧と、素子温度との相関を調べたグラフである。図4では、ゲート電圧、素子温度の最大値で規格化している。また、1パルスのオンの部分を示している。図4(a)は正常波形、図4(b)は異常波形の発生から30パルス後の波形、図4(c)は安定波形(異常波形の発生から1000パルス後の波形)のゲート電圧と素子温度を示している。
図4のように、ゲート電圧と素子温度は相関を有していることが示唆されている。特に、1000パルス後の波形では、オンになった初期の段階において素子温度が大きく上昇しているが、これと連動するようにしてゲート電圧も大きく増加している。この結果、素子温度の変化がゲート電圧の変化に影響していると考えられる。これは、素子温度の上昇によりIGBT100の電極や素子の抵抗値が上昇したり、電子がトンネル効果により絶縁膜を透過する確率が上昇するためと考えられる。
なお、図3、4の測定に用いたIGBT100の素子構造は、図5の通りである。IGBT100は、Siからなるトレンチ型構造であり、基板101と、基板101上に形成されたp+層102と、p+層上に形成されたn+層103と、n+層103上に形成されたn-層104と、n-層104上に形成されたn+層105を有している。また、n-層103に達する深さのトレンチ112を有し、そのトレンチ112の底面から側面には膜状にゲート絶縁膜107が形成されている。トレンチ112は、ゲート絶縁膜107を介してゲート電極108により埋められている。また、n+層105のうちトレンチ112近傍の領域はp+領域106となっている。ゲート電極108上からp+領域106上にわたって層間絶縁膜111が設けられている。また、基板101の裏面にはコレクタ電極110が設けられ、層間絶縁膜111上、p+領域106上、n+層105上にわたってエミッタ電極109が設けられている。
(絶縁膜の状態の判断方法)
以上のように、異常波形の発生後のゲート電圧の時間波形および素子温度の変化には、絶縁膜の状態(電流リークの要因)の情報が含まれていることがわかる。実施例1の状態判断装置は、これを利用してIGBT100の絶縁膜の状態を判断するものである。以下、その判断方法について説明する。
実施例1の状態推定装置では、IGBT100をスイッチング動作させ、現在のゲート電圧の時間波形(1パルス分の波形)について、正常波形、異常波形、過渡波形、安定波形の4種類に分類する。正常波形は、初期のゲート電圧の時間波形であり、異常波形は、正常波形または安定波形の直後に、その正常波形または安定波形に対して波形が変化した波形である。その後異常波形が発生すると、過渡波形を経て安定波形に至る。図6のように、ゲート電圧の時間波形は、異常波形が発生する前の段階では正常波形であり、異常波形の発生直後はデューティー比が小さくなったり、オン時のゲート電圧がΔV減少したりし、その後に時間波形が変動する過渡波形となり、時間波形の変動が収まって安定波形となる。
(時間波形の分類)
4種類の時間波形の分類は、初期波形記憶部10に記憶された初期のゲート電圧の時間波形と、過去波形記憶部13に記憶された現在よりも1パルス前のゲート電圧の時間波形と、波形取得部11により取得した現在のゲート電圧の時間波形と、に基づいて行う。たとえば、図7のフローチャートにより分類する。
まず、波形取得部11により、IGBT100のスイッチング動作中における現在のゲート電圧の時間波形を取得する。また、素子温度取得部12により、IGBT100の素子温度を取得する(図7のステップS1)。
次に、故障状態判断部14は、ステップS1により取得した現在のゲート電圧の時間波形と、過去波形記憶部13に記憶された1パルス前のゲート電圧の時間波形とを比較して、両者に差があるかどうかを判定する(図7のステップS2)。
現在のゲート電圧の時間波形と、過去波形記憶部13に記憶された1パルス前のゲート電圧の時間波形とに差がないと判定された場合、故障状態判断部14は、現在のゲート電圧の時間波形と、初期波形記憶部10に記憶された初期のゲート電圧の時間波形とを比較して、両者に差があるかどうかを判定する(図7のステップS3)。
ステップS2、S3における差の判定は、たとえば、現在のゲート電圧の時間波形と1パルス前のゲート電圧の時間波形との時間毎の平均二乗誤差がしきい値以上であれば差があると判定する。
現在のゲート電圧の時間波形と、初期波形記憶部10に記憶された初期のゲート電圧の時間波形とに差がないと判定された場合、故障状態判断部14は、現在のゲート電圧の時間波形は正常波形であると判断する(図7のステップS4)。そして、現在のゲート電圧の時間波形と、その時間波形が正常波形である旨を過去波形記憶部13に記憶する。
一方、現在のゲート電圧の時間波形と、初期波形記憶部10に記憶された初期のゲート電圧の時間波形とに差があると判定された場合、故障状態判断部14は、現在のゲート電圧の時間波形は安定波形であると判断する(図7のステップS5)。そして、現在のゲート電圧の時間波形と、その時間波形が安定波形である旨を過去波形記憶部13に記憶する。
また、現在のゲート電圧の時間波形と、波形記憶部13に記憶された1パルス前のゲート電圧の時間波形とに差があると判定された場合、故障状態判断部14は、1パルス前のゲート電圧の時間波形が正常波形または安定波形であったか否かを、波形記憶部13に記憶された情報に基づき判定する(図7のステップS6)。
1パルス前のゲート電圧の時間波形が正常波形または安定波形であった場合、故障状態判断部14は、現在のゲート電圧の時間波形は異常波形であると判断する(図7のステップS7)。そして、現在のゲート電圧の時間波形と、その時間波形が異常波形である旨を過去波形記憶部13に記憶する。
1パルス前のゲート電圧の時間波形が正常波形または安定波形でなかった場合、故障状態判断部14は、現在のゲート電圧の時間波形は過渡波形であると判断する(図7のステップS8)。そして、現在のゲート電圧の時間波形と、その時間波形が異常波形である旨を過去波形記憶部13に記憶する。
以上のようにして、故障状態判断部14は、現在のゲート電圧の時間波形が、正常波形、異常波形、過渡波形、安定波形のいずれであるかを判断する。他にも、事前に波形マップを準備して記憶しておき、k近傍法などを用いた一般的なクラスタリング法によって時間波形を分類してもよいし、深層学習を用いた分類などを用いて時間波形を分類してもよい。もちろん、複数の方法を組み合わせて分類してもよい。
また、時間波形の分類は、ゲート電圧の1パルスごとに繰り返し行う。これにより、時間波形を1パルスごとに正確に分類することができる。ただし、一定間隔ごとに分類を行ってもよく、たとえば数パルスごと、数十パルスごとに分類をおこなってもよい。この場合、異常波形や過渡波形は検出できない可能性があるが、正常波形と安定波形は検出可能であり、異常波形が発生したことは検出可能である。
(絶縁膜の状態の判断)
次に、故障状態判断部14は、現在のゲート電圧の時間波形の分類に基づき、絶縁膜の状態やIGBT100の故障リスクを判断する。
現在のゲート電圧の時間波形が正常波形である場合、故障状態判断部14は、IGBT100の絶縁膜には何も状態の変化が生じていないと判断する。また、IGBT100の故障リスクも低いと判断する。
現在のゲート電圧の時間波形が異常波形である場合、故障状態判断部14は、初期のゲート電圧の時間波形(正常波形)からの電圧降下量の最大値ΔVを算出する(図7参照)。この電圧降下量の最大値から、リーク電流の規模がわかり、絶縁膜に生じた亀裂の深さを推定することができる。これは、酸化膜の亀裂の深さが大きいほどトンネル効果により電流のリーク量が多くなるので、電圧の振幅が大きく低下するほど絶縁膜の亀裂が深い可能性が高いということである。
たとえば、正常波形に対して10%以下の電圧降下であれば、絶縁膜の亀裂は浅い、10%より大きく30%以下の電圧降下であれば、絶縁膜の亀裂は中程度、30%よりも大きな電圧降下であれば、絶縁膜の亀裂は深い、と判断する。また、50%以上の電圧降下であれば、IGBT100はすでに故障していると判断する。また、たとえば、異常波形が現れた回数を絶縁膜の亀裂の深さごとに記憶し、所定の回数以上となったらIGBT100の故障リスクが高いと判断する。もちろん、単純に異常波形が現れた回数によって故障リスクを判断してもよい。
現在のゲート電圧の時間波形が過渡波形である場合、過渡波形が何パルス連続するかをカウントして過去波形記憶部13に記憶する。つまり、異常波形の次のパルスから、安定波形のパルスの1つ前までのパルスまでのパルス数をカウントする。過渡波形のパルスの連続数は、絶縁膜の亀裂が発生した箇所の安定度の指標とすることができる。この安定度は、絶縁膜の亀裂が発生した箇所の応力に対する弱さの指標である。過渡波形のパルスの連続数が大きいほど、安定度が低く、絶縁膜の亀裂が発生した箇所は応力に対して弱いと考えられる。たとえば、過渡波形のパルスの連続数が所定のしきい値以上であれば、IGBT100の故障リスクが高いと判断する。また、過渡波形から安定波形に移行しないような場合は、IGBT100は故障と判断してよい。
現在のゲート電圧の時間波形が安定波形である場合、故障状態判断部14は、安定波形の形状に基づいて以下のように判断する。
現在のゲート電圧の時間波形について、故障状態判断部14は、ゲート電圧が平坦か否かを判断する。平坦であるかどうかは、たとえばオン時の電圧値の最大と最小の差によって判断し、差がしきい値以下であれば平坦と判断する。
オン時のゲート電圧が平坦である場合(図8参照)、温度に依存しないリーク電流が発生していると考えられる。これは、絶縁膜の亀裂の状態が温度変化に依存せず変化しないためと考えられる。このようなリーク電流の要因として、たとえば明確なリークパスが生じたことが考えられる。
オン時のゲート電圧が平坦でない場合、故障状態判断部14は、素子温度取得部12によって取得した素子温度と、現在のゲート電圧の時間波形との相関を判断する。
現在のゲート電圧の時間波形が、素子温度と正の相関を有している場合、オン時のゲート電圧は右肩上がりの形状である(図9参照)。この場合、故障状態判断部14は、素子温度の上昇とともにIGBT100の電極や素子自体の抵抗値が上昇しているものと判断する。
一方、現在のゲート電圧の時間波形が、素子温度と負の相関を有している場合、オン時のゲート電圧は右肩下がりの形状である(図10参照)。この場合、故障状態判断部14は、ゲート電圧の下がり幅から、リーク電流が熱電子放出の影響か、poole-Frankel効果によるものであるかを判断することができる。下がり幅が小さい場合、素子温度上昇によるリーク電流の増加が小さいということであり、poole-Frankel効果によるものと推定できる。また、下がり幅が大きい場合、素子温度上昇によるリーク電流の増加が大きいということであり、熱電子放出の影響と推定できる。
また、ゲート電圧が平坦でない場合、故障状態判断部14は、ゲート電圧の振幅の変化量(オン時の電圧値の最大と最小の差)から、絶縁膜の亀裂の深さを判断する(図11参照)。絶縁膜の亀裂が深いほど、その地点の絶縁膜が薄くなりトンネル効果による電流のリークが大きくなる。そのため、ゲート電圧の振幅の変化量が大きいほど、絶縁膜の亀裂が深いと考えられる。
また、オン時のゲート電圧の平均値によって、絶縁膜全体の巨視的な亀裂の進行度が判断できる(図12参照)。ゲート電圧の平均値が低いほど、絶縁膜全体の巨視的な亀裂の進行が進んでいると考えられる。たとえば、正常波形に対して平均値が10%以下の低下であれば、進行度は低く、10%より大きく30%以下の低下であれば、進行度は中、30%よりも大きな電圧降下であれば、進行度は高、と判断する。また、50%以上の低下であれば、IGBT100はすでに故障していると判断する。
また、故障状態判断部14は、オン時のゲート電圧の分散の大きさによって、酸化膜の亀裂のパターンや規模の広がりを判断する(図13参照)。分散が大きいほど、様々な場所に様々なサイズの亀裂が生じているものと考えられる。
以上、実施例1の状態推定装置では、故障には至らない程度の絶縁膜の亀裂などによって微小に変化するゲート電圧の時間波形の変化を捉え、それにより絶縁膜の状態や故障の判断を行っている。そのため、回路規模を小さくすることができ、絶縁膜の状態や故障の判断を精度よく行うことができる。これにより、IGBT100のスイッチング周波数を変更したり、印加電圧を変更したりすることで正常時と同等の動作となるように変更したり、IGBT100の素子寿命を推定したり、メンテナンスの優先度を判定したりすることができる。
なお、実施例1はIGBT100の故障状態を判断するものであったが、本発明はIGBT100に限らず、絶縁ゲート型の半導体素子であれば任意の素子に適用できる。たとえば、FET、HFETなどにも本発明は適用可能である。また、半導体材料もSiに限らず任意の材料でよいし、ゲート絶縁膜や層間絶縁膜の材料もSiO2 に限らず任意でよい。
また、実施例1では、初期、現在、過去の3つのゲート電圧の時間波形と素子温度を考慮して絶縁膜の状態や故障の判断を行っているが、初期のゲート電圧の時間波形や素子温度は必ずしも考慮しなくてもよい。また、コレクタエミッタ間電圧、コレクタエミッタ間電流などをさらに考慮して絶縁膜の状態や故障の判断を行ってもよい。
実施例1の状態判断装置は、たとえば車両に搭載され、車両の駆動モータ用などのIGBTの絶縁膜の状態、故障判断に用いることができる。その場合、実施例1の状態推定装置の構成の一部ないし全部をIGBT100の制御ECU内に実装してもよいし、それよりも上位の制御ECU内に実装してもよい。たとえば、実施例1の状態推定装置のうち、初期波形記憶部10、過去波形記憶部13、故障状態判断部14をIGBT100の制御ECUよりも上位の制御ECU内に実装し、波形取得部11と素子温度取得部12をIGBT100の制御ECU内に実装してもよい。もちろん、車載以外の用途で使われている絶縁ゲート型の半導体素子の状態判断に対しても本発明は適用可能である。
本発明の状態判断装置は、半導体素子の寿命の推定やメンテナンス時期の判断などに利用できる。
10:初期波形記憶部
11:波形取得部
12:素子温度取得部
13:過去波形記憶部
14:故障状態判断部
100:IGBT

Claims (9)

  1. 絶縁ゲート型の半導体素子の状態を判断する状態判断装置であって、
    前記半導体素子のスイッチング動作時のゲート電圧の時間波形を取得するゲート電圧波形取得部と、
    前記ゲート電圧波形取得部により取得したゲート電圧の時間波形を記憶する波形記憶部と、
    波形記憶部に記憶された過去のゲート電圧の時間波形と、ゲート電圧波形取得部により取得した現在のゲート電圧の時間波形とを比較して前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断する状態判断部と、
    を有し、
    前記状態判断部は、現在のゲート電圧の時間波形を、初期のゲート電圧の時間波形である正常波形と、正常波形の直後に発生し、その正常波形とは異なった波形形状である異常波形と、異常波形後の波形形状が安定しない過渡波形と、過渡波形後の波形形状が安定した安定波形と、の4種類に分類して、前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断する、
    ことを特徴とする状態判断装置。
  2. 前記半導体素子のスイッチング動作時の初期のゲート電圧の時間波形を記憶する初期波形記憶部をさらに有し、
    前記状態判断部は、波形記憶部に記憶された過去のゲート電圧の時間波形と、現在のゲート電圧の時間波形と、初期波形記憶部に記憶された初期のゲート電圧の時間波形とを比較して前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の状態判断装置。
  3. 前記半導体素子のスイッチング動作時の素子温度を取得する素子温度取得部をさらに有し、
    前記状態判断部は、前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断するに際し、前記素子温度取得部により取得した素子温度と、現在のゲート電圧の時間波形との相関を考慮する、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の状態判断装置。
  4. 前記状態判断部は、正常波形からの異常波形のゲート電圧の降下量を算出し、その降下量に基づき、前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断する、ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の状態判断装置。
  5. 前記状態判断部は、過渡波形のパルス数を算出し、そのパルス数に基づき、前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断する、ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の状態判断装置。
  6. 前記状態判断部は、安定波形におけるゲート電圧の平坦さに基づき、前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断する、ことを特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の状態判断装置。
  7. 前記状態判断部は、安定波形におけるゲート電圧の平均値に基づき、前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断する、ことを特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の状態判断装置。
  8. 前記状態判断部は、安定波形におけるゲート電圧の分散に基づき、前記半導体素子の絶縁膜の状態を判断する、ことを特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の状態判断装置。
  9. 車両の駆動モータ用である絶縁ゲート型の半導体素子と、
    前記半導体素子の状態を判断する請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の状態判断装置が実装されたECUと、
    有した車両。
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