以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
以下の各実施形態で共通する構成については同一の符号を付して明細書での重複説明を省略する。さらに、各実施形態で共通する使用方法及び作用効果についても重複説明を省略する。ここで、本明細書及び特許請求の範囲において「第1」、「第2」及び「第3」と記載する場合、それらは、異なる構成要素を区別するために用いるものであり特定の順序、優劣等を示すために用いるものではない。
本明細書中では、「コネクタ」としての電気コネクタ1,21,41,61の幅方向(長手方向)をX方向、前後方向(短手方向)をY方向、高さ方向(上下方向)をZ方向として説明する。そして、電気コネクタ1,21,41,61のZ方向における第1の基板2の側を「下側」とし、第2の基板4の側を「上側」として説明する(ただし、図4の記載では、上下をZ方向に反転して示している。)。しかしながら、これらによって電気コネクタ1,21,41,61の第1の基板2及び第2の基板4(以下ではこれらをまとめて「基板2,4」と記載する場合もある。)への実装方法、使用方法等を限定するものではない。
第1実施形態〔図1-図10〕
第1実施形態の電気コネクタ1は、図1で示すように、「対向部材」としての第1の基板2に実装される「第1のコネクタ」としてのプラグコネクタ3と、第2の基板4に実装される「第2のコネクタ」としてのソケットコネクタ5とを備える。そして、電気コネクタ1は、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが互いに嵌合することによって、第1の基板2と第2の基板4とが導通接続するように構成されている。
プラグコネクタ3
プラグコネクタ3は、図1及び図2で示すように、プラグハウジング6と、「第1の端子」としてのプラグ端子11とを備える。そして、図1で示すように、プラグコネクタ3は、第1の基板2の基板面に表面実装されることによって、第1の基板2と導通接触する表面実装型のコネクタとして構成されている。
プラグハウジング6
プラグハウジング6は、絶縁性樹脂の成型品として構成されている。プラグハウジング6は、図2で示すように、固定ハウジング7と、可動ハウジング8とを備える。これによって、プラグコネクタ3は、フローティングコネクタとして構成されている。
固定ハウジング7は、角筒形状とされている。固定ハウジング7は天面及び底面の双方に開口が形成されており、双方の開口の間は連通している。そして、固定ハウジング7は、X方向に沿う前面部7a及び背面部7bと、Y方向に沿う側面部7c,7cとを有する。さらに、固定ハウジング7には、前面部7aと背面部7bと側面部7c,7cとで囲まれた可動空間部7dが形成されている。
図5で示すように、前面部7a及び背面部7bにおける可動空間部7dに対向する板面には、それぞれプラグ端子11を固定するための端子収容孔7a1,7b1が形成されている。端子収容孔7a1,7b1は、X方向に沿って等間隔で複数並列に設けられている。そして、図1-図3で示すように、前面部7aと背面部7bのX方向における両端側には、プラグコネクタ3を第1の基板2に固定するための取付具7eが取り付けられている。
可動ハウジング8は、図2で示すように、上面に開口が形成された箱型形状とされている。可動ハウジング8は、図3で示すように、前面部8aと、背面部8bと、側面部8c,8cと、底面部8eとを有する。前面部8aと固定ハウジング7の前面部7aとの間、及び背面部8bと固定ハウジング7の背面部7bとの間には、可動空間部7dが形成されている。したがって、可動ハウジング8は、可動空間部7dの領域内において、固定ハウジング7に対して相対的にY方向に変位可能に構成されている。さらに、図2で示すように、側面部8cと固定ハウジング7の側面部7cとの間にも、可動空間部7dが形成されている。したがって、可動ハウジング8は、可動空間部7dの領域内において、固定ハウジング7に対して相対的にX方向でも変位可能に構成されている。
よって、電気コネクタ1では、このような固定ハウジング7に対する可動ハウジング8のX方向及びY方向の相対変位によって、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合させる際のX方向及びY方向の位置ずれを吸収することができる。さらに、電気コネクタ1では、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが嵌合した状態における固定ハウジング7に対する可動ハウジング8のX方向及びY方向の相対位置によっては、X方向及びY方向に加えられた振動を吸収することが可能である。これによって、電気コネクタ1は、X方向及びY方向の振動を受けた際に、プラグ端子11とソケット端子10との導通接触を維持することが可能に構成されている。
可動ハウジング8の固定ハウジング7に対するX方向及びY方向の相対変位は、可動空間部7dの内側に制限されている。さらに、図1-図3で示すように、可動ハウジング8の側面部8c,8cの下端には、それぞれX方向に沿って外方に突出する係止部8g,8gが設けられている。これに対して、固定ハウジング7には、係止部8g,8gのそれぞれが挿入される凹部7g,7gが設けられている。そして、図3で示すように、可動ハウジング8が固定ハウジング7に対してZ方向における上方に変位しても、係止部8gがそれぞれ凹部7gの内縁7g1に突き当たることで固定ハウジング7に対する可動ハウジング8の変位が規制される。
他方で、底面部8eは、その下端に、第1の基板2に対向する底端部8e1を有する(図3等参照)。そして、図3で示すように、可動ハウジング8が固定ハウジング7に対してZ方向における下方に変位しても、底端部8e1が第1の基板2に突き当たることで固定ハウジング7に対する可動ハウジング8の変位が規制される。こうして、プラグハウジング6は、可動ハウジング8の固定ハウジング7に対するX方向、Y方向、Z方向の相対変位を制限可能に構成されている。
可動ハウジング8は、図2、図3、図5等で示すように、Y方向における中央において、底面部8eから上方に突出する嵌合壁部8fを有する。嵌合壁部8fは、図2で示すように、前面部8aと対向してX-Z平面に沿う板面と、背面部8bと対向してX-Z平面に沿う板面とを有する平板形状とされている。各板面には、後述するプラグ端子11のプラグ接触部11eを収容する端子溝8f2が形成されている。そして、嵌合壁部8fと、プラグ接触部11eとは、ソケットハウジング9の受入口9d1に挿入される嵌合部3Aを構成する。嵌合部3Aは、ソケット端子10に復元力を生じさせる復元力形成部としての機能を有する。
さらに、可動ハウジング8は、ソケットコネクタ5が挿入される嵌合室8dを有しており、嵌合室8dは、前面部8aと、背面部8bと、側面部8c,8cと、底面部8eとによって囲まれた空間として形成されている(図2、図5等参照)。プラグ端子11と後述のソケット端子10は、この嵌合室8dで導通接触する(図5等参照)。
プラグ端子11
プラグ端子11は、導電性金属板を板厚方向に屈曲させた単一部品として形成されており、細片状でなる。プラグ端子11は、図5で示すように、基板接続部11aと、「取付部」としての固定部11bと、可動部11cと、可動ハウジング8に固定される基端部11dと、「第1の接触部」としてのプラグ接触部11eとを有する。プラグ端子11は、嵌合壁部8fを介してY方向で対向(背向)する端子対を形成する。
基板接続部11aは、第1の基板2の板面に沿う板状片としてプラグ端子11の端部に設けられている。プラグ端子11は、この基板接続部11aを第1の基板2に半田付けすることによって、第1の基板2に固定されるように構成されている。プラグ端子11は、固定部11bの代わりに基板接続部11aが「取付部」として可動部11cを支持するように構成することも可能である。
固定部11bは、基板接続部11aにつながり、X-Z平面に沿う板面を有する平板形状とされている。そして、固定部11bのX方向における両端側には、X方向に沿って突出する圧入突起がそれぞれ複数設けられている。プラグ端子11は、固定部11bの圧入突起が端子収容孔7a1,7b1の側壁に噛み込むことによって、固定ハウジング7に固定されるように構成されている。
可動部11cは、板面方向で屈曲させて形成されている。そして、可動部11cは、プラグハウジング6に固定されていない。このため可動部11cは、嵌合方向への押圧荷重(押圧力)及び抜去方向への引っ張り荷重(引っ張り力)が作用することによって弾性変形することができる。可動部11cは、可動ハウジング8に対するソケットコネクタ5の嵌合方向及び抜去方向で、可動ハウジング8と固定ハウジング7とを弾性的につなぎ、可動ハウジング8を固定ハウジング7に対して変位可能に支持するように構成されている。ここでは、可動ハウジング8に対するソケットコネクタ5の嵌合方向をZ方向における下方として、可動ハウジング8に対するソケットコネクタ5の抜去方向をZ方向における上方として説明する。
さらに、可動部11cは導電性金属板を屈曲させて形成されており、細片状でなる。よって、可動部11cは、一端側と他端側とがX方向で異なる位置にずれるように弾性変形することができる。したがって、可動部11cは、固定ハウジング7に対して可動ハウジング8を相対的にX方向に変位可能に支持している。よって、このような固定ハウジング7に対する可動ハウジング8のX方向の相対変位によって、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合させる際のX方向の位置ずれを吸収することができる。
可動部11cは、第1の伸長部11c1と、第1の屈曲部11c2と、第2の伸長部11c3と、第2の屈曲部11c4と、第3の伸長部11c5と、第3の屈曲部11c6とを有する。
第1の伸長部11c1は、固定部11bの上端から伸長する細片状に形成されている。そして、第1の伸長部11c1は、固定部11bからZ方向における上方かつ、Y方向においてプラグ接触部11eに近づく方向に向けて傾斜して伸長している。よって、固定ハウジング7の前面部7aの側に固定されるプラグ端子11では、第1の伸長部11c1と前面部7aとの間に退避空間部7fが形成されている。他方で、固定ハウジング7の背面部7bの側に固定されるプラグ端子11では、第1の伸長部11c1と背面部7bとの間に退避空間部7fが形成されている。第1の伸長部11c1は、これらの退避空間部7fの内部でY方向及びZ方向に沿って弾性変形及び変位可能に構成されている。
したがって、可動部11cは、固定ハウジング7に対して可動ハウジング8を相対的にY方向及びZ方向に変位可能に支持している。そして、このような固定ハウジング7に対する可動ハウジング8のY方向の相対変位によって、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合させる際のY方向の位置ずれを吸収することができる。
第1の屈曲部11c2は、第1の伸長部11c1の上端につながり、略逆U字状に板面方向に折り返す形状でなる。そして、第1の屈曲部11c2は、第1の伸長部11c1よりも板幅が広く形成されており、剛性が高められている。
第2の伸長部11c3は、第1の屈曲部11c2において第1の伸長部11c1とは反対側の端部につながり、Z方向における下方に伸長している。この第2の伸長部11c3はY方向やZ方向に沿って弾性変位可能に構成されている。したがって、可動部11cは、固定ハウジング7に対して可動ハウジング8を相対的にY方向及びZ方向に変位可能に支持している。そして、このような固定ハウジング7に対する可動ハウジング8のY方向の相対変位によって、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合させる際のY方向の位置ずれを吸収することができる。
第2の屈曲部11c4は、第2の伸長部11c3の下端につながって、第2の伸長部11c3と第3の伸長部11c5とを連結している。そして、第2の屈曲部11c4は、板面方向で略直角に屈曲している。
第3の伸長部11c5は、第2の屈曲部11c4につながり、Y方向に沿って伸長する細片状でなる。この第3の伸長部11c5はZ方向やY方向に沿って弾性変位可能に構成されている。第1の屈曲部11c2、第2の屈曲部11c4及び第3の屈曲部11c6が更に屈曲する方向や伸長する方向に弾性変形すると、第3の伸長部11c5は、例えば第2の屈曲部11c4の側よりも第3の屈曲部11c6の側がZ方向における上方に変位する。第3の伸長部11c5がこのように傾斜することによって、後述のプラグ接触部11eをZ方向における上側に向けて弾性変位させることができる。逆に、第3の伸長部11c5が、例えば第2の屈曲部11c4の側よりも第3の屈曲部11c6の側でZ方向における下側に向けて変位するように傾斜すると、後述のプラグ接触部11eをZ方向における下側に向けて弾性変位させることができる(図11も参照)。
第3の屈曲部11c6は、第3の伸長部11c5と基端部11dとを連結している。そして、第3の屈曲部11c6は、第3の伸長部11c5から板面方向で略直角に上方に屈曲している。
基端部11dは、可動部11cにつながり、X-Z平面に沿う板面を有する平板形状とされている。そして、基端部11dのX方向における両端側には、X方向に沿って突出する圧入突起がそれぞれ複数設けられている。プラグ端子11は、基端部11dの圧入突起が端子溝8f2の側壁に噛み込むことによって、可動ハウジング8に固定されるように構成されている。
プラグ接触部11eは、基端部11dにつながり、嵌合壁部8fに沿って上方に伸長する板状片として設けられている。プラグ接触部11eの一面には、プラグ端子11が可動ハウジング8に固定された状態で嵌合空間に露出する接触面11e1が形成されている。電気コネクタ1は、この接触面11e1がソケット端子10と導通接触するように構成されている。そして、接触面11e1は、ソケット端子10に生じている復元力を解放する復元力解放部としての機能を有する。
ソケットコネクタ5
ソケットコネクタ5は、図4、図5等で示すように、ソケットハウジング9と、「第2の端子」としてのソケット端子10とを備える。そして、ソケットコネクタ5は、第2の基板4の基板面に表面実装されることによって、第2の基板4と導通接触する表面実装型のコネクタとして構成されている。
ソケットハウジング9
ソケットハウジング9は、絶縁性樹脂の成型品として構成されている。ソケットハウジング9は、図4で示すように、天面部9dに開口が形成された中空の箱型形状とされている。そして、ソケットハウジング9は、前面部9aと、背面部9bと、側面部9c,9cとを有する。前面部9a及び背面部9bのX方向における両端側の上部(図4における下部)には、第2の基板4に半田付けされる取付具9fが取り付けられている。
さらに、ソケットハウジング9は、前面部9aと背面部9bと側面部9c,9cとで囲まれた嵌合室9eと、天面部9dに形成され嵌合室9eに連通する開口である受入口9d1とを有する。図5等で示すように、受入口9d1は、プラグハウジング6の嵌合壁部8fと、プラグ端子11のプラグ接触部11eとからなる嵌合部3Aを受け入れることが可能に構成されている。これによって、電気コネクタ1は、ソケットコネクタ5とプラグコネクタ3とが嵌合可能に構成されている。
図4及び図5で示すように、前面部9a及び背面部9bにおける嵌合室9eに対向する内壁9g,9gには、それぞれソケット端子10が収容される端子収容孔9g1,9g1が形成されている。端子収容孔9g1,9g1は、X方向に沿って等間隔で複数並列にZ方向に伸長して設けられている。
ソケット端子10
ソケット端子10は、導電性金属板を板厚方向に折り曲げて形成されている。そして、ソケット端子10は、図5で示すように、基板接続部10aと、基端部10bと、「第2の接触部」としてのソケット接触部10cとを有する。ソケット端子10は、嵌合室9eを介して対向する端子対を形成する。
基板接続部10aは、第2の基板4の板面に沿う板状片としてソケット端子10の端部に設けられている。ソケット端子10は、この基板接続部10aを第2の基板4に半田付けすることによって、第2の基板4に固定されるように構成されている。
基端部10bは、基板接続部10aにつながり、X-Z平面に沿う板面を有する平板形状とされている。そして、基端部10bのX方向における両端側には、X方向に沿って突出する圧入突起がそれぞれ複数設けられている。ソケット端子10は、基端部10bの圧入突起がソケットハウジング9の内壁9gに設けられた端子収容孔9g1の側壁に噛み込むことによって、ソケットハウジング9に固定されるように構成されている。
ソケット接触部10cは、プラグ端子11と導通接触するソケット接点部10c1と、ソケット接点部10c1を弾性支持するソケットばね部10c2とを有する。
ソケットばね部10c2は、基端部10bの下端につながる細片状に形成されている。そして、ソケットばね部10c2は、嵌合状態にあるプラグコネクタ3のプラグ端子11との接触方向(Y方向)に傾斜しつつ下方に伸長するように構成されている。ソケット接点部10c1は、ソケットばね部10c2の下端側において、プラグ端子11との接触方向に向けてソケット端子10の板厚方向(Y方向)で山状に屈曲するように形成されている。そして、ソケット端子10は、その屈曲部分がソケット接点部10c1としてプラグ端子11のプラグ接触部11eと導通接触するように構成されている。ソケットばね部10c2の基端側は、その先端側に比べてソケットばね部10c2の板幅方向(X方向)に広く設けられている。これによって、ソケットばね部10c2の基端側の剛性が高められている。
ソケット接点部10c1よりも先端側には、嵌合状態にあるプラグコネクタ3のプラグ端子11から離れる方向(Y方向)に向けて傾斜する先端傾斜部10c3が形成されている。これによって、電気コネクタ1は、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが嵌合する際に、嵌合部3Aが先端傾斜部10c3に摺動しながらソケット接点部10c1を接触面11e1から離れる方向に向けて変位させるように構成されている。先端傾斜部10c3は、Y方向により小さく傾斜することによって、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合する際に電気コネクタ1に加えられる押圧荷重(押圧力)である挿入力をより小さくすることができる。他方で、先端傾斜部10c3は、Y方向により大きく傾斜することによって、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合する際のより大きな位置ずれを吸収することができる。
嵌合方法の説明〔図5-図10〕
以上のようなプラグコネクタ3と、ソケットコネクタ5とを有する電気コネクタ1は、第1の基板2と第2の基板4とを電気的に接続することができるように構成されている。ここでは、図5-図9で示すように、第1の基板2に接続されたプラグコネクタ3の上方から第2の基板4に接続されたソケットコネクタ5を嵌合させる場合について説明する。
図5で示すように、ソケットコネクタ5とプラグコネクタ3との嵌合前である初期状態において、可動ハウジング8は、第1の基板2から浮いた状態とされている。そして、可動ハウジング8の底端部8e1と第1の基板2との間には、初期可動間隙S1aが形成されている。ここでの初期可動間隙S1aは、例えば0.15mmとされる。この初期状態での可動ハウジング8は、第1の基板2に対して非接触で、プラグコネクタ3のプラグ端子11の可動部11cによる支持力でぶら下がったような状態である。よって、可動ハウジング8は、第1の基板2の側に弾性変位することが可能な状態である。
このような初期状態からプラグコネクタ3とソケットコネクタ5との嵌合が始められる。まずソケットコネクタ5をZ方向における下方(ソケットコネクタ5の嵌合方向)のプラグコネクタ3に向けて移動させることによって、プラグコネクタ3の嵌合部3Aがソケットコネクタ5の受入口9d1に挿入される。
図6で示すように、ソケットコネクタ5のソケット端子10の先端傾斜部10c3が嵌合部3Aの嵌合壁部8fの先端部8f1に突き当たる(ソケット端子10が可動ハウジング8と当接する。)。ソケットコネクタ5の嵌合室9eを介して対向するソケット端子10,10が有するソケット接点部10c1,10c1同士の間隔は、嵌合部3AのY方向の長さよりも短く設けられている。したがって、それらのソケット接点部10c1,10c1同士の間に嵌合部3Aを挿入するには、嵌合壁部8fの先端部8f1が、ソケット接点部10c1,10c1同士の間を押し広げる必要がある。
先端傾斜部10c3は、Y方向(嵌合状態にあるプラグコネクタ3のプラグ端子11から離れる方向)に向けて傾斜するように構成されている。このため、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合させるために加えられるZ方向における下方への力(ソケットコネクタ5の挿入力)は、先端傾斜部10c3,10c3同士が離れるY方向への力に変換される。他方で、先端傾斜部10c3は、ソケットコネクタ5の挿入力によって、嵌合壁部8fをZ方向における下方に押し込む。嵌合壁部8fが下方に押し込まれることによって、可動部11cに押圧荷重がかかり、可動部11cがZ方向における下向きに弾性変形する。そして、可動部11cには、その変形量に対応した復元力(ばね反力)が生じる。このように、挿入力は、ソケット接点部10c1,10c1同士を押し広げる力と、可動部11cを下方に押し込む力とに使われる。
こうして、図10で示すように、可動部11cに加わる押圧荷重に相当するばね反力が増加し始める。このばね反力の増加は、ソケット接点部10c1,10c1同士の間が押し広げられて、そこに嵌合部3Aが収まるようになるまで続く。すなわち、ソケット接点部10c1,10c1同士の間隔をより広げるためには、より大きなY方向への力が必要となり、そのためには、Y方向の力へと変換するためのより大きなZ方向における下方への力が必要となる。そして、より大きなZ方向における下方への力(ソケットコネクタ5の挿入力)が先端傾斜部10c3及び嵌合壁部8fを介して可動部11cに加わることによって、より大きく弾性変形した可動部11cにはより大きな復元力が生じる。
ソケット接点部10c1,10c1同士の間に嵌合壁部8fが収まって、プラグ接触部11eに対してソケット接点部10c1が接触する直前の時点では、図10で示すように、可動部11cの復元力(ばね反力)が最大となる。すなわち、このときの可動部11cは接続過程において最も撓んだ状態、換言すると最もZ方向における下方(ソケットコネクタ5の嵌合方向)に弾性変形した状態であり、可動部11cの復元力が一時的に最大となる。このときにはソケットコネクタ5の挿入力も最大となる。そして、可動部11cのZ方向における下向きの弾性変形は、ここで停止する。ここまでの間に可動部11cが下向きに弾性変形したことによって、可動ハウジング8は、Z方向における下向き、すなわち第1の基板2の側に押し込まれている。このときの押圧時可動間隙S1bは、例えば0.10mmとなっている。
プラグ接触部11e,11e同士のY方向における間隔は、Z方向における上下で一定に形成されている。このため、プラグ接触部11eに対してソケット接点部10c1が一旦接触した状態になると、ソケット接点部10c1,10c1同士の間隔をこれ以上広げる必要がなくなる。そして、ソケットばね部10c2,10c2による復元力は、嵌合壁部8fの板面に配置されているプラグ接触部11eが受け止める。このため、挿入力は、ソケット接点部10c1,10c1同士を押し広げる力には使われなくなる。したがって、これ以降においては、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合するために必要な挿入力は、低下する。このときプラグ接触部11e,11eは、ソケットばね部10c2,10c2の復元力によって、ソケット接点部10c1,10c1にY方向に押し込まれる接触圧力を受けている。
他方で、プラグ接触部11eに対してソケット接点部10c1が接触した状態になると(図7)、嵌合部3Aとソケット接触部10cとがY方向において重なって接触する部位がなくなる。このため、ソケット接触部10cは、嵌合部3Aを上から押さえ込む状態から、嵌合部3Aの側面に配置されているプラグ接触部11eをソケット接点部10c1がY方向に押し込む接触圧力を垂直抗力とする摩擦力によって支持する状態に切り替わる。この時点においてもソケット接点部10c1に対してソケットコネクタ5の挿入力がかかっているので、ソケット接点部10c1はプラグ接触部11eに対してZ方向における下方に位置ずれし始める。このため、プラグ接触部11eには、ソケット接点部10c1とプラグ接触部11eとの動摩擦係数と、ソケット接点部10c1の接触圧力との積である動摩擦力がZ方向における下方にかかるようになる。
これに対し、プラグ接触部11eには、可動部11cの復元力がZ方向における上方にかかっている。このとき、図10において実線で示す可動部11cの復元力は、図10において破線で示すプラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間における動摩擦力を超えている。すなわち、プラグ接触部11eと接触するソケット接点部10c1には、プラグ接触部11eとの間における動摩擦力によって、ソケット端子10がプラグ端子11を支持可能な力よりも大きな上方への復元力がかかった状態となっている。このため、可動部11cの復元力と、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間における動摩擦力との差によって、ソケット接点部10c1に対してプラグ接触部11eがZ方向における上方に位置ずれ(復元)する。これによって、可動ハウジング8は、可動部11cの復元力によってZ方向における上向きに変位する。
ここで、プラグコネクタ3をフローティングコネクタとするために、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間で作用する動摩擦力より復元力が小さい柔らかいばねを可動部11cに用いた場合には、可動部11cの復元力がプラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間で作用する動摩擦力を超えない。このため、可動部11cがそのような柔らかいばねで構成されていると、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合させる過程において、可動部11cの復元力のみでは可動ハウジング8をZ方向における上向きに変位させることができない。
これに対し、本実施形態の電気コネクタ1では、可動部11cが硬いばねによって構成されている。つまり、可動部11cの復元力は、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間で作用する動摩擦力を超えることが可能である。このため、可動部11cは、比較的小さな撓み(変位)に対しても復元力が大きく増加(変化)する特性を有する。したがって、電気コネクタ1では、図10で示すように、可動部11cの復元力が、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間で作用する動摩擦力を超える状態を容易に創り出すことができる。すなわち、本実施形態の電気コネクタ1では、可動部11cの復元力と、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間における動摩擦力との差を容易に創り出すことができる。よって、電気コネクタ1によれば、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を嵌合させるだけで、可動部11cの復元力によって可動ハウジング8をZ方向における上向きに変位させることができる。
さらに、この状態からプラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を押し込むと、図8で示すように、ソケット端子10のソケット接点部10c1がプラグ端子11のプラグ接触部11eに対してZ方向における下方に位置ずれする。こうして、プラグ接触部11eに対してソケット接点部10c1がZ方向における下方に位置ずれすることによって、嵌合壁部8fは嵌合室9eの奥側に誘導される。このとき、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5を押し込む挿入力は、その大半がプラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間の動摩擦力となる。
ここで、電気コネクタ1の嵌合の際にプラグ接触部11eに対してソケット接点部10c1が接触し始めた箇所(プラグ接触部11eの上端。図7参照。)を基点としてソケット接点部10c1が所定の深さまで嵌合した箇所までの距離を「有効嵌合長」と称する。有効嵌合長は、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との導通接触が可能なZ方向における距離である。さらに、プラグ接触部11eに対するソケット接点部10c1のZ方向における下方への位置ずれが完了し、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが所定の相対位置で互いに導通接触している状態を「嵌合状態」と称する。そして、電気コネクタ1は、嵌合状態において、有効嵌合長がより長く確保されることによって、仮にプラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが相対的に位置ずれしたとしても、導通接触をより確実に維持することができる。
本実施形態の電気コネクタ1では、プラグ接触部11eに対してソケット接点部10c1が接触した時点から有効嵌合長の形成が始まる(図7)。そして、電気コネクタ1では、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが有効嵌合長を形成する過程において、ソケット接点部10c1がプラグ接触部11eに対してZ方向における下方に接点摺動する。それと同時に、可動部11cがZ方向における上方に復元することでプラグ接触部11eがZ方向における上方に変位する。
このように電気コネクタ1では、図10で示すように、可動部11cの復元力と、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間の動摩擦力との差を利用して可動ハウジング8の底端部8e1と第1の基板2との間に復元後可動間隙S1cが形成されている。このときに、電気コネクタ1では、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との有効嵌合長を形成するために、プラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5が嵌合されているだけで、他に特別な操作を必要としていない。そして、電気コネクタ1では、この操作のみで、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5との嵌合状態においてプラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが保持された状態で可動部11cがZ方向における上下両方向に弾性変形する構成とすることができる。
有効嵌合長を形成する過程では、ソケット接点部10c1,10c1同士がプラグ接触部11e,11eに対して動摩擦力を受けながらZ方向における下方に位置ずれしている。このときの挿入力は、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間の動摩擦力のみに近い状態で略一定となる。図10で示すように、可動部11cには、ソケット接点部10c1,10c1同士の位置ずれを生じさせるこの挿入力に対応して略一定値を示す復元力が生じている。このため、挿入力が加わり続けている可動部11cの撓みは、初期状態には戻らない。このとき、図8で示すように、復元後可動間隙S1cは、例えば0.10mm-0.15mmの間となっている。
ここで、コネクタには、共振等の振動が生じても確実に導通接触が維持できるZ方向での共振振幅量が想定されている。この共振振幅量は、例えば0.02mmとされている。可動部11cの復元力によって可動ハウジング8がZ方向における上向きに変位した時点での復元後可動間隙S1cは、この想定された共振振幅量を超える大きさであると良い。こうすることで、有効嵌合長を形成する過程において、仮にそれ以上に可動ハウジング8がZ方向における上向きに変位しなかった場合においても、所定の復元後可動間隙S1cが形成されることとなる。したがって、電気コネクタ1は、共振等の振動が生じても確実に導通接触が維持できることとなる。
その後、図9で示すように、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが嵌合状態となって、プラグ接触部11eに対するソケット接点部10c1のZ方向における下方への位置ずれが止まる。このとき、図9で示すように、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とにおける所定の有効嵌合長が形成されている。そして、可動ハウジング8は、第1の基板2に対して所望の嵌合高さとなる。このとき、復元後可動間隙S1cも、例えば0.10mm-0.15mmの間となる。
図6-図9で示すように、有効嵌合長を形成する際には、プラグ端子11及びプラグ端子11に装着された他の部材が第1の基板2に接触しない。このため、本実施形態によれば、プラグ端子11と第1の基板2との接触に起因する損傷、異物の発生等を防ぐことができる。
以上のような接続過程によって形成された復元後可動間隙S1cは、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との接続が完了した嵌合状態においても維持される。そして、この復元後可動間隙S1cは、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5との距離が縮むように変位した際には、接点が固定されたままZ方向に可動する可動ハウジング8の変位領域として利用される。
本実施形態では、可動ハウジング8がZ方向における上下で変位可能な復元後可動間隙S1cは、振動を受けて変位する電気コネクタ1の接続構造の振幅を超える大きさを有するように構成される。このため、本実施形態によれば、電気コネクタ1の接続構造が振動、衝撃を受けても、可動ハウジング8が復元後可動間隙S1cの範囲で振幅することができ、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との接触状態を維持することができる。
こうして、プラグ端子11とソケット端子10とは、最終的に正規の接触位置で互いに導通接触することができる。この嵌合状態で、対向するソケット端子10,10のソケット接点部10c1,10c1同士が同じ押圧荷重(押圧力)で嵌合部3Aに対して押圧接触する。これによって、ソケット端子10,10のソケット接触部10c,10cは、プラグ端子11の嵌合部3Aを挟持するようにプラグ接触部11eと導通接触することができる。
可動ハウジング8が第1の基板2に対して所望の嵌合高さに位置している状態から可動部11cの撓みが小さい場合には、その復元力も小さい。この嵌合状態でのプラグ接触部11eとソケット接点部10c1との静止摩擦力による保持力P(接触圧力)は、例えば基板2,4に発生する振幅によって、可動部11cがZ方向に弾性変形するためのばね力Qよりも大きいという関係が成立している。その上で、本実施形態によれば、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが有効嵌合長を形成する過程において、ソケット接点部10c1がプラグ接触部11eに対してZ方向における下方に接点摺動する。それと同時に、可動部11cがZ方向における上方に復元することでプラグ接触部11eがZ方向における上方に変位する。
すなわち、本開示の一態様では、コネクタ嵌合時にプラグコネクタ3に対してソケットコネクタ5が接触することで、可動部11cがZ方向における下方に弾性変形する。その後、ソケット接点部10c1がプラグ接触部11eに対してZ方向における下方に接点摺動し始めると、可動部11cはZ方向における下方に弾性変形した際のばね力Q(反力)を解放してZ方向における上方に復元するように構成されている。プラグ接触部11eは、可動部11cの復元とともにZ方向における下方への変位からZ方向における上方に戻ることができる。かつ、可動部11cのばね力Qが解放された状態で、プラグ接触部11eはソケット接点部10c1に対して所定の接触圧力での接触状態を維持することができる。
本実施形態では、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との有効嵌合長を形成するだけで、電気コネクタ1をこの関係が成立する構成とすることができる。その際に、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とが嵌合接続し、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが接点摺動することなく所定の接触位置を保持した状態で、可動部11cがZ方向における下方及び上方に弾性変形する構成とすることができる。よって、振動、衝撃によって基板2,4が振幅しても、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが互いに位置ずれすることなく接触状態を維持することができる。
本実施形態によれば、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との接続過程において、可動部11cが最も撓んだときの復元力は、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との有効嵌合長が形成される際の挿入力よりも大きいという関係が成立している。したがって、本実施形態によれば、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが接続して有効嵌合長を形成するだけで、「対向部材」としての第1の基板2とプラグコネクタ3の可動ハウジング8との間に復元後可動間隙S1cを形成することができる。
このとき、可動部11cの復元力を利用してプラグ接触部11eがZ方向における下向きに変位することを許容する復元後可動間隙S1cを形成することができる。その際に、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とを嵌合して嵌合状態を形成するだけで、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが摺動しなくなる。このように本実施形態によれば、嵌合状態を形成するにあたって、特殊な治具や特殊な操作が必要ないので、作業性に優れている。そして、本実施形態によれば、衝撃や振動を受けても摺動に伴うソケット接触部10c及びプラグ接触部11eの摩耗を防ぐことができる。
基板2,4の共振等の振動への対応
電気コネクタ1では、基板2,4が共振等によって特に大きくZ方向に振動することがある。この振動に対して、例えばプラグコネクタ3及びソケットコネクタ5のそれぞれの接触部間を滑らせることによって対応する構成であると、それぞれの端子には、摩耗、損傷等が生じるおそれがある。さらに、Z方向について、基板2,4の共振による相対的な振動の大きさ(相対振幅量)と比べて、接触部間において互いに滑って移動可能な距離が短い構成の場合には、大きな振動には対応できずに接触部間の接続が離れてしまうおそれもある。
ここで、本実施形態の可動部11cは、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とを接続する際に、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5とを嵌合する最大の嵌合力を受け止めることが可能な反力を生み出せる硬いばねによって構成されている。したがって、本実施形態では、柔らかいばねを用いた構成に比べて、基板2,4に共振等による振動が生じた場合に、可動部11cが容易に変形することを抑制することができる。
電気コネクタ1は、図10で示すように、嵌合状態におけるプラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが静止摩擦力による保持力Pを有するように構成されている。他方で、電気コネクタ1は、嵌合状態における可動部11cがZ方向に弾性変形する弾性力(復元力)によるばね力Qを有するように構成されている。そして、電気コネクタ1は、嵌合状態におけるプラグ接触部11eとソケット接点部10c1とがZ方向で相対的に位置ずれするのに必要な荷重(押圧荷重、引っ張り荷重)が、可動部11cがZ方向に弾性変形する荷重(押圧荷重、引っ張り荷重)よりも大きくなるように構成されている。すなわち、嵌合状態における電気コネクタ1は、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との保持力Pが、少なくとも可動部11cのばね力Qよりも大きくなるように構成されている。
プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との接続過程においては、硬いばねによって構成されている可動部11cが挿入力によって大きく変位するため、ばね力Qが急激に増加する。これによって、図10で示すように、可動部11cの復元力は、動摩擦力はおろか、嵌合状態におけるプラグ接触部11eとソケット接点部10c1との静止摩擦力による保持力Pを超える。このため、電気コネクタ1では、プラグコネクタ3に対するソケットコネクタ5の嵌合の際に、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との位置ずれを容易に生じさせることができる。
他方で、嵌合状態において振動等を受けた際の可動部11cの変位量は、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との接続過程における可動部11cの変位量と比べるとそもそも小さい。すなわち、嵌合状態での可動部11cは、その復元力が図10において二点鎖線で示す静摩擦係数と接触圧力との積である静止摩擦力による保持力Pを超えない範囲の変位量となっている。よって、可動部11cの変位量が小さいので、ばね力Qがそれほど大きくならずに、保持力Pがばね力Qよりも大きい状態を維持することができる。
こうして、電気コネクタ1は、電気コネクタ1にZ方向の振動が加わった際には、ソケット接点部10c1とプラグ接触部11eとが互いに位置ずれする前に、可動部11cがZ方向に弾性変形するように構成されている。すなわち、電気コネクタ1は、Z方向の振動が加わると、プラグ接触部11eがソケット接点部10c1に追従するように可動部11cがZ方向に弾性変形して振動を吸収することが可能に構成されている。そして、嵌合状態におけるソケット接点部10c1とプラグ接触部11eとは、可動部11cがZ方向に弾性変形している間に位置ずれすることがない
したがって、電気コネクタ1では、Z方向の振動が加わったとしても、ソケット接点部10c1とプラグ接触部11eとの導通接触状態を維持することができる。そして、ソケット端子10及びプラグ端子11の摩耗、めっきはがれ等を抑制することができる。よって、本実施形態によれば、より接続信頼性が高い電気コネクタ1とすることができる。
ソケット端子10をプラグ端子11に対して位置ずれさせるために必要な荷重の調整方法
ソケット端子10をプラグ端子11に対して位置ずれさせるために必要な荷重(押圧荷重、引っ張り荷重)は、ソケットばね部10c2の板厚、ばね長、材料等を変更することによって調整可能である。例えばソケットばね部10c2の板厚を厚くすること、ばね長をより短くすることによって、ソケット接点部10c1をプラグ端子11に対して位置ずれさせるために必要な荷重を大きくすることができる。
さらに、ソケットばね部10c2の板幅をより広くして、ソケットばね部10c2を硬くすることによって、ソケット接点部10c1をプラグ端子11に対してより強い力で接触させて、摩擦力を高めることができる。これらよっても、ソケット接点部10c1をプラグ端子11に対して位置ずれさせるために必要な荷重を大きくすることができる。
可動部11cを弾性変形させるために必要な荷重の調整方法
可動部11cを弾性変形させるために必要な荷重(押圧荷重、引っ張り荷重)は、板圧、ばね長、材料を変更することによって調整可能である。さらに、可動部11cの部分ごとに板幅を変えることによっても、弾性変形させるための荷重を調整することができる。本実施形態では、例えば第2の屈曲部11c4が、第1の伸長部11c1、第1の屈曲部11c2、第2の伸長部11c3、第3の伸長部11c5及び第3の屈曲部11c6と比べてより広い板幅を有する構成とすることができる。このような構成であると、Z方向の振動が加えられる際には、この第2の屈曲部11c4が最も弾性変形しにくくなる。これによって、Z方向で弾性変形させるためにより大きな荷重を必要とする可動部11cを形成することができる。
ところで、コネクタには、防振の観点から可動部分の固有値(Hz)を高くすることが求められることがある。これに対し、接触部間の接続過程において、可動部分が最も撓んだときの反力が挿入力よりも小さいような可動部分が柔らかいコネクタでは、可動部分のばね定数を高くすることができない。
その点において、本実施形態によれば、可動部11cには硬いばねが用いられている。すなわち、本実施形態によれば、可動部11cのばね定数を高くすることができる。このため、本実施形態によれば、可動部分が柔らかいコネクタと比べて可動部11cの固有値を高めることができる。
電気コネクタ1の取付対象物、例えば自動車用電装品では、共振点が2000Hzより低い周波数である場合が多い。このため、電気コネクタ1は、可動部11cの固有値が2000Hz以上であることが好ましく、3000Hz以上であることがより好ましい。これによって、電気コネクタ1が取付対象物の共振点と一致してしまうことを防ぐことができる。
本実施形態によれば、嵌合状態を形成した電気コネクタ1の接続構造は、プラグ接触部11eがZ方向における下向きに変位可能な復元後可動間隙S1cを有する。さらに、本実施形態によれば、嵌合状態において、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとの保持力Pは、接続構造、例えば基板2,4に発生する振幅によって、可動部11cがZ方向に弾性変形するためのばね力Qよりも大きいという関係が成立している。このため、本実施形態によれば、振動、衝撃によって電気コネクタ1の接続構造が振幅しても、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとが互いに位置ずれすることなく接触状態を維持することができる。
上述のとおり、本実施形態の電気コネクタ1によれば、X方向及びY方向に加えて、Z方向の振動をもプラグ端子11及びソケット端子10の摩耗を生じさせずに吸収することができる。したがって、本実施形態によれば、例えば自動車用電装品等、特に振動に対する耐性を要する部品に使用でき、かつ接続信頼性の高い電気コネクタ1とすることができる。そして、本実施形態によれば、基板2,4の共振によって特に大きな振動が生じる場合であっても、その振動を容易に吸収することができる電気コネクタ1とすることができる。
第2実施形態〔図11〕
第2実施形態の電気コネクタ21は、可動部11cと比べて可動部31cが柔らかいばねによって構成されている点で、第1実施形態とは異なる。これによって、電気コネクタ21では、プラグコネクタ23にソケットコネクタ5を嵌合させる際の可動部31c及び可動ハウジング28の動きが異なる。第2実施形態の電気コネクタ21は、それ以外については第1実施形態の電気コネクタ1と同様である。ここでは、プラグコネクタ23にソケットコネクタ5を嵌合させる際の第1実施形態とは異なる点について説明する。
嵌合方法の説明〔図6-図11〕
図6で示す第1実施形態と同様に、まずソケットコネクタ5のソケット端子10の先端傾斜部10c3がプラグコネクタ23の嵌合壁部8fの先端部8f1に突き当たる。プラグコネクタ23に対してソケットコネクタ5を嵌合させるために加えられるZ方向における下方への挿入力は、先端傾斜部10c3,10c3同士が離れるY方向への力に変換される。他方で、先端傾斜部10c3は、加えられた挿入力によって嵌合壁部8fを下方に押し込む。嵌合壁部8fが下方に押し込まれることによって、可動部31cに負荷がかかり、可動部31cがZ方向における下向き(ソケットコネクタ5の挿入方向)に弾性変形する。そして、可動部31cには復元力(ばね反力)が生じる。このように、挿入力は、ソケット接点部10c1,10c1同士を押し広げる力と、可動部31cを下方に押し込む力とに使われる。こうして、図10で示すように、ばね反力(荷重)が増加し始める。
本実施形態では、図11で示すように、可動部31cが押し込まれる最中に、可動ハウジング28の底端部28e1と第1の基板2とが接触する。すなわち、このときの押圧時可動間隙S1oは、0mmとなる。そして、可動部31cのZ方向における下向きの弾性変形は停止する。このときの可動部31cは、接続過程において最も撓んだ状態であり、可動部31cの復元力も同様に一時的に最大となる。
底端部28e1と第1の基板2とが接触した状態で挿入力が増加することによって、嵌合壁部8fの先端部8f1が、ソケット接点部10c1,10c1同士の間を押し広げる。そして、図7で示すように、ソケット接点部10c1,10c1同士の間に嵌合部3Aが収まる。このときに挿入力が最大となる。ただし、本実施形態での挿入力は、可動部31cの復元力及びソケットばね部10c2,10c2による復元力と第1の基板2からの反力との合計と一致する。
本実施形態では、可動部31cの復元力と第1の基板2からの反力との合計が、図10における実線で示されている。そして、可動部31cの復元力と第1の基板2からの反力との合計は、図10において破線で示すプラグ接触部11eとソケット接触部10cとの間における動摩擦力を超えている。すなわち、プラグ接触部11eと接触するソケット接点部10c1には、プラグ接触部11eとの間における動摩擦力によって、ソケット端子10がプラグ端子31を支持可能な力よりも大きな上方への復元力がかかった状態となっている。このため、可動部31cの復元力と、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間における動摩擦力との差によって、ソケット接点部10c1に対してプラグ接触部11eがZ方向における上方に位置ずれ(復元)する。これによって、可動ハウジング28は、可動部31cの復元力によってZ方向における上向きに変位する。
ただし、底端部28e1と第1の基板2とが接触してからソケット接点部10c1,10c1同士の間に嵌合部3Aが収まるまでの間における可動部31cの復元力は、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとの間における動摩擦力よりも大きい。このため、可動ハウジング28は、可動部31cの復元力だけでもZ方向における上向きに変位することができる。
その後は、この状態からプラグコネクタ23に対してソケットコネクタ5を押し込むと、図8で示す第1実施形態と同様に、ソケット接点部10c1がプラグ接触部11eに対してZ方向における下方に位置ずれする。そして、図9で示す第1実施形態と同様に、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが嵌合状態となって、プラグ接触部11eに対するソケット接点部10c1のZ方向における下方への位置ずれが止まる。このとき、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとにおける所定の有効嵌合長が形成されている。
以上のように、第2実施形態では、可動部11cと比べて柔らかいばねによって構成されている可動部31cが用いられている。そして、可動部31cの復元力に加えて可動ハウジング28が第1の基板2に当たることによって、挿入力を受け止めるように構成されている。これによって、可動部31cは、可動部11cと比べてばね定数が低下するため、可動部31cが柔らかくなり応力の低減を図ることができる。
ここでは、可動ハウジング28の底端部28e1と第1の基板2との接触によって、挿入力を受け止める例が示された。しかしながら、挿入力は、プラグ端子31、プラグ端子31に装着された他の部材が第1の基板2、固定ハウジング7、プラグコネクタ23を第1の基板2に固定するための取付具7e等に接触することによって受け止めるように構成されていても良い。
なお、第2実施形態において、可動部31cが可動部11cと同様の硬いばねによって構成され、可動ハウジング28の底端部28e1と第1の基板2との間には、初期可動間隙S1aが小さく構成されていても良い。このような構成であっても、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとが接続して有効嵌合長を形成するだけで、「対向部材」としての第1の基板2とプラグコネクタ23の可動ハウジング28との間に復元後可動間隙S1cを形成することができる。さらに、この場合には、可動部31cが可動部11cと同様の硬いばねによって構成されているので、可動部11cと同様に可動部31cの固有値を高めることができる。
第3実施形態〔図12-図15〕
第3実施形態の電気コネクタ41は、ボトム嵌合タイプによって構成されている点で、第1実施形態とは異なる。第3実施形態の電気コネクタ41は、第1実施形態の電気コネクタ1とコネクタの形状が異なるものの、原理及び作用効果は同様である。
第3実施形態の電気コネクタ41は、図12で示すように、第1の基板42に実装される「第1のコネクタ」としてのボトムエントリコネクタ43と、第2の基板44に実装される「第2のコネクタ」としてのピンコネクタ45とを備える。
ボトムエントリコネクタ43
本実施形態のボトムエントリコネクタ43は、図13-図15で示すようにボトムハウジング46と、「第1の端子」としてのボトム端子51とを備える。ボトムエントリコネクタ43は、ボトムエントリコネクタ43は第1の基板42の一方面に表面実装されることによって、第1の基板42と導通接触する表面実装型のコネクタとして構成されている。さらに、ボトムエントリコネクタ43は、第1の基板42の他方面からピンコネクタ45のピン端子50を挿入して導通接続するように構成されている。そして、電気コネクタ41は、電気コネクタ1及び電気コネクタ21とはその嵌合方向及び抜去方向がZ方向における上下で逆となる。
ボトムハウジング46
ボトムハウジング46は、絶縁性樹脂の成型品として構成される。ボトムハウジング46は、固定ハウジング47と、可動ハウジング48とを備える。これによって、ボトムエントリコネクタ43は、フローティングコネクタとして構成されている。
固定ハウジング47は、外周壁47aと、天面壁47bとを有する。外周壁47aは、角筒形状とされている。天面壁47bには、ピン端子50とボトム端子51との接続状態を視認可能で、ピン端子50及びボトム端子51から生じる熱を放出可能な複数の天面開口47cが形成されている。外周壁47a及び天面壁47bの内側には、可動空間部47dが形成されている。可動ハウジング48は、可動空間部47dを三次元方向に変位可能として複数のボトム端子51に保持されている。固定ハウジング47の外周壁47aの背面におけるX方向の両側位置には、固定ハウジング47を第1の基板42に固定する取付部材が取り付けられている。固定ハウジング47の底面には底面開口47fが形成されており、ここから可動ハウジング48が可動空間部47dに挿入される。
可動ハウジング48は、X方向及びY方向で固定ハウジング47の可動空間部47dに収容可能な大きさを有する。可動ハウジング48は、角筒形状の外周壁48aを有する。外周壁48aのX方向の両側面には、変位規制突起が突出して形成されている。変位規制突起は、固定ハウジング47の可動空間部47dのX方向における両側に形成されている変位規制凹部の内部に突出して配置されている。可動ハウジング48の固定ハウジング47に対するX方向、Y方向及びZ方向における上方の相対変位は、変位規制突起と変位規制凹部とによって制限されている。可動ハウジング48の固定ハウジング47に対するZ方向における下方の相対変位は、変位規制突起と第1の基板42とによって制限されている。
外周壁48aの内部には、空間を分割する複数の隔壁48cが形成されている。外周壁48aと隔壁48cとで囲まれる内側空間は、ボトム端子51とピン端子50とが導通接触する複数の嵌合室48dとして構成されている。嵌合室48dの室内には、後述するボトム端子51の接触部51eが固定される。可動ハウジング48の下端は、第1の基板42の貫通孔42aを貫通して第1の基板42の裏面から突出している。可動ハウジング48の底面には、ピン端子50の挿入口48eが形成されている。ピン端子50は、挿入口48eから嵌合室48dに挿入される。
ボトム端子51
ボトム端子51は、「取付部」としての基板接続部51aと、「取付部」としての固定部51bと、可動部51cと、基端部51dと、「第1の接触部」としての接触部51eとを有する。こうしたボトム端子51の各機能部及びその形状は、打ち抜いた導電性金属板を屈曲させた単一部品として形成されている。
基板接続部51aは、固定ハウジング47の正面の前方に突出する板状片として形成されている。ボトム端子51は、この基板接続部51aを第1の基板42に半田付けすることによって、第1の基板42に固定されるように構成されている。固定ハウジング47は、正面では基板接続部51aによって固定され、背面では例えば取付部材によって同様に半田付けにて固定されている。これによって、固定ハウジング47は、第1の基板42の裏面側から挿入される複数のピン端子50の挿入力を確実に受け止めることが可能に構成されている。
固定部51bは、基板接続部51aにつながり、固定ハウジング47の可動空間部47dに設けられた端子固定溝に対して圧入固定されるように構成されている。
可動部51cは、可動ハウジング48を固定ハウジング47に対して変位可能に支持するように構成されている。可動部51cは、S字形状部51c1と、第3の屈曲部51c4と、第1の伸長部51c5と、第4の屈曲部51c6と、第2の伸長部51c7とを有する。
S字形状部51c1は、固定部51bから上方に伸長してから上端で折り返される第1の屈曲部51c2と、下方に伸長してから下端で折り返される第2の屈曲部51c3とを有し、再度上方に伸長するように側面視でS字形状に構成されている。第3の屈曲部51c4は、S字形状部51c1の上端につながって、板面方向で略直角に後方に屈曲するように構成されている。第1の伸長部51c5は、第3の屈曲部51c4につながり、Y方向に沿って伸長する細片状でなる。第1の伸長部51c5は、第1実施形態の第3の伸長部11c5に相当する構成である。第4の屈曲部51c6は、第1の伸長部51c5の後端につながって、板面方向で略直角に下方に屈曲するように構成されている。第2の伸長部51c7は、第4の屈曲部51c6と基端部51dとにつながるように構成されている。
基端部51dは、可動部51cの第2の伸長部51c7とつながり、可動ハウジング48に設けられた第1の端子固定溝に対して圧入固定されるように構成されている。
接触部51eは、可動ハウジング48の嵌合室48dに収容されてピン端子50に対して導通接続するように構成されている。接触部51eは、押圧端子52と、接触受け部53とを有する。
押圧端子52は、ピン端子50に対してY方向における前方から後方に向けて押圧接触する押圧接点部52aと、基端部51dから片持ち梁状に伸長して押圧接点部52aを弾性支持する押圧ばね部52bとを有する。押圧接点部52aは、接触受け部53に向かって山形屈曲形状に突出して形成されている。
接触受け部53は、基端部51dとつながり、押圧端子52と対向位置するように構成されている。接触受け部53は、押圧接点部52aと対向する基端側が可動ハウジング48の第2の端子固定溝に対して圧入固定されている。したがって、接触受け部53は、それ自体が他の接触部51eの部分とは独立して可動ハウジング48に固定されている。接触受け部53は、押圧端子52との対向面に接触受け接点部53aと、接触受け部53において可動ハウジング48に固定されている部分から片持ち梁状に伸長して接触受け接点部53aを弾性支持する接触受けばね部53bとを有する。接触受け接点部53aは、押圧接点部52aに向かって山形屈曲形状に突出して形成されている。接触部51eは、押圧接点部52aと接触受け接点部53aとでピン端子50を挟み込んで導通接続するように構成されている。
ピンコネクタ45
本実施形態のピンコネクタ45は、図12で示すようにピンハウジング49と、ピン端子50とを備える。ピンコネクタ45は、ピンコネクタ45は第2の基板44の一方面に表面実装されることによって、第2の基板44と導通接触する表面実装型のコネクタとして構成されている。
ピンハウジング49
ピンハウジング49は、絶縁性樹脂の成型品として構成される。ピンハウジング49には、ピン端子50を保持するためのZ方向に貫通する端子保持孔が形成されている。
ピン端子50
ピン端子50は、ピンハウジング49に設けられた端子保持孔に対して圧入固定されており、その先端側が可動ハウジング48の嵌合室48dに挿入されて接触部51eに対して導通接続するように構成されている。
嵌合方法の説明〔図10及び図13-図15〕
以上のようなボトムエントリコネクタ43と、ピンコネクタ45とを有する電気コネクタ41は、第1の基板42と第2の基板44とを電気的に接続することができるように構成されている。ボトムエントリコネクタ43とピンコネクタ45との嵌合は、プラグコネクタ3とソケットコネクタ5との嵌合と上下で逆方向であるものの、その原理及び作用効果は同様である。ここでは、図13-図15で示すように、第1の基板42に接続されたボトムエントリコネクタ43の下方から第2の基板44に接続されたピンコネクタ45を嵌合させる場合について説明する。
図13で示すように、ピンコネクタ45とボトムエントリコネクタ43との嵌合前である初期状態において、可動ハウジング48の上端部48fと固定ハウジング47の天面壁47bとの間には、初期可動間隙S2aが形成されている。初期可動間隙S2aは、例えば0.15mmとされる。この初期状態での可動ハウジング48は、第1の基板42及び固定ハウジング47に対して非接触で、ボトム端子51による支持力でぶら下がったような状態である。よって、可動ハウジング48は、天面壁47bの側に弾性変位することが可能な状態である。このような初期状態からボトムエントリコネクタ43とピンコネクタ45との嵌合が始められる。まずピンコネクタ45を上方のボトムエントリコネクタ43に向けて移動させることによって、ピン端子50がボトムエントリコネクタ43の挿入口48eに挿入される。
まずピンコネクタ45のピン端子50の先端部分がボトムエントリコネクタ43の押圧接点部52a及び接触受け接点部53aの先端部分に突き当たる。このとき、図10で示すように、ピン端子50に対する押圧接点部52a及び接触受け接点部53aの接触圧力がかかることによって、可動部51cの復元力(ばね反力)が増加し始める。
対向する押圧接点部52aと接触受け接点部53aとの間隔は、ピン端子50のY方向の長さよりも短く設けられている。したがって、押圧接点部52aと接触受け接点部53aとの間にピン端子50を挿入する際には、ピン端子50が、押圧接点部52aと接触受け接点部53aとの間を押し広げる必要がある。
ボトムエントリコネクタ43に対してピンコネクタ45を嵌合させるために加えられるZ方向における上方への挿入力は、押圧接点部52aと接触受け接点部53aとが離れるY方向への力に変換される。他方で、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aを介して可動部51cに負荷がかかり、可動部51cがZ方向における上向き(ピンコネクタ45の挿入方向)に弾性変形する。そして、可動部51cには復元力(ばね反力)が生じる。このように、挿入力は、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aを押し広げる力と、可動部51cを上方に押し込む力とに使われる。
こうして、図10で示すように、ばね反力(荷重)が増加し始める。このばね反力の増加は、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aの間が押し広げられて、ピン端子50が収まるようになるまで続く。
図14で示すように、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aの間にピン端子50が収まる直前の時点で、図10で示すように、ばね反力(復元力)が最大となる。すなわち、このときの可動部51cは接続過程において最も撓んだ状態であり、可動部51cの復元力が一時的に最大となる。このときには挿入力も、最大となって可動部51cの復元力と一致する。そして、可動部51cのZ方向における上向きの弾性変形は、ここで停止する。ここまでの間に可動部51cが上向きに弾性変形したことによって、可動ハウジング48は、Z方向における上向き、すなわち天面壁47bの側に押し込まれている。このときの押圧時可動間隙S2bは、例えば0.10mmとなっている。
可動部51cは、ピン端子50が押圧端子52と接触受け部53とを押し広げて押圧接点部52a及び接触受け接点部53aを乗り越えた段階で最も撓んでいて大きな復元力を有する。このとき、図10において実線で示す可動部51cの復元力は、図10において破線で示す押圧接点部52aと接触受け接点部53aとの間の動摩擦力を超えている。すなわち、ピン端子50と接触する押圧接点部52a及び接触受け接点部53aには、ピン端子50との間の動摩擦力によって、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aがピン端子50を支持可能な力よりも大きな下方への復元力がかかった状態となっている。このため、可動部51cの復元力と、ピン端子50と押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとの間における動摩擦力との差によって、ピン端子50に対して押圧端子52及び接触受け部53がZ方向における下方に位置ずれ(復元)する。これによって、可動ハウジング48は、可動部51cの復元力によってZ方向における下向きに変位する。
他方で、ピン端子50は、ボトム端子51の押圧接点部52a及び接触受け接点部53aに対してZ方向における上方に位置ずれし始める。電気コネクタ41に加えられる押圧荷重(押圧力)である挿入力は、その大半が押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50との間の動摩擦力に使われるようになる。こうして、ピン端子50は、嵌合室48dの奥側に誘導される。
このように可動部51cの復元力と、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50との間の動摩擦力との差を利用して、可動ハウジング48の上端部48fと天面壁47bとの間に復元後可動間隙S2cが形成される。このとき、復元後可動間隙S2cは、例えば0.10mm-0.15mmの間となる。
ここで、コネクタには、共振等の振動が生じても確実に導通接触が維持できるZ方向での共振振幅量が想定されている。この共振振幅量は、例えば0.02mmとされている。可動部51cの復元力によって可動ハウジング48がZ方向における下向きに変位した時点での復元後可動間隙S2cは、この想定された共振振幅量を超える大きさであると良い。こうすることで、この状態から仮に可動ハウジング48がZ方向における下向きに復元しなくても、復元後可動間隙S2cが形成されることとなる。したがって、電気コネクタ41は、共振等の振動が生じても確実に導通接触が維持できることとなる。
その後、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50とのZ方向での位置ずれが続く。このときの挿入力は、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50との間の動摩擦力のみに近い状態となるので、図10で示すように、挿入力に対応して可動部51cの復元力は略一定値を示す。この過程において、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50との有効嵌合長が形成される。
有効嵌合長を形成する際には、ボトム端子51及びボトム端子51に装着された他の部材が天面壁47bに接触しない。このため、本実施形態によれば、ボトム端子51と天面壁47bとの接触に起因する損傷、異物の発生等を防ぐことができる。
以上のような接続過程によって形成された復元後可動間隙S2cは、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50との接続が完了した嵌合状態においても維持される。そして、この復元後可動間隙S2cは、ボトムエントリコネクタ43とピンコネクタ45との距離が縮むように変位した際には、接点が固定されたままZ方向に可動する可動ハウジング48の変位領域として利用される。
こうして、ボトム端子51とピン端子50とは、最終的に正規の接触位置で互いに導通接触することができる。この嵌合状態で、対向する押圧接点部52a及び接触受け接点部53aが同じ押圧荷重(押圧力)でピン端子50に対して押圧接触する。これによって、ボトム端子51の押圧接点部52a及び接触受け接点部53aは、ピン端子50を挟持するようにピン端子50と導通接触することができる。
可動ハウジング48が天面壁47bに対して所望の嵌合高さに位置している状態から可動部51cの撓みが小さい場合には、その復元力も小さい。嵌合状態での押圧接点部52a及び接触受け接点部53aの静止摩擦力による保持力Pは、電気コネクタ41の接続構造、例えば基板42,44に発生する振幅によって可動部51cがZ方向に弾性変形するためのばね力Qよりも大きいという関係が成立している。このため、振動、衝撃によって基板42,44が振幅しても、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50とが互いに位置ずれすることなく接触状態を維持することができる。
本実施形態によれば、上述の接続過程において、可動部51cが最も撓んだときの復元力は、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50との有効嵌合長が形成される際の挿入力よりも大きいという関係が成立している。したがって、本実施形態によれば、有効嵌合長を形成するだけで、「対向部材」としての固定ハウジング47の天面壁47bとボトムエントリコネクタ43の可動ハウジング48との間に復元後可動間隙S2cを形成することができる。
このとき、可動部51cの復元力を利用して押圧接点部52a及び接触受け接点部53aがZ方向における下向きに変位することを許容する復元後可動間隙S2cを形成することができる。その際に、ボトムエントリコネクタ43とピンコネクタ45とを嵌合して嵌合状態を形成するだけで、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aとピン端子50とが摺動しなくなる。このように本実施形態によれば、嵌合状態を形成するにあたって、特殊な治具や特殊な操作が必要ないので、作業性に優れている。そして、本実施形態によれば、衝撃や振動を受けても摺動に伴うピン端子50、押圧接点部52a及び接触受け接点部53aの摩耗を防ぐことができる。
本実施形態では、上述の第2実施形態と同様に、有効嵌合長を形成する際に、ボトム端子51及びボトム端子51に装着された他の部材が天面壁47bに接触しても良い。これによって、可動部51cは、上端部48fと天面壁47bとが接触しない場合と比べてばね定数が低下するため、可動部51cが柔らかくなり応力の低減を図ることができる。
変形例〔図16-図18〕
本実施形態の変形例では、「コネクタ」は、「第1の接触部」と「第2の接触部」との接続過程において、「可動部」が最も撓んだときの復元力を低下させるために挿入力を低下させることが可能な構造を有するように構成することができる。このような構成は、上述のいずれの実施形態にも適用可能である。ここでは、第1実施形態の電気コネクタ1にこの変形例を適用した電気コネクタ61について説明する。
電気コネクタ1では、X方向に複数並列するとともにY方向において対向配置されるソケット接触部10cは、その全てがZ方向において同じ高さに配置されている。このような構成のソケット接触部10cに対してプラグコネクタ3の嵌合部3Aを挿入する際には、嵌合壁部8fの先端部8f1は、対向配置されるソケット接触部10cの間を一斉に押し広げる。このため、プラグ接触部11eに対してソケット接触部10cが接触し始める際には、一時的に挿入力が急激に増加する。
これに対し、本実施形態の変形例では、「第2の接触部」としてのソケット接触部70cのZ方向における高さは、例えばX方向で互い違いに異なる千鳥状に複数配置されている。すなわち、図16で示すように、電気コネクタ61は、ソケット接触部70cとして、Z方向における高さの低い低位置側接触部70c1と、Z方向における高さの高い高位置側接触部70c2との2つの群を有する接点ずらしの構成とされている。
嵌合方法の説明〔図16-図18〕
図16で示すように、まずプラグ接触部11eに対して低位置側接触部70c1が接触し始める。このとき、図17の実線で示すように、プラグ接触部11eに対する低位置側接触部70c1の接触圧力がかかることによって、押圧荷重(挿入力)が増加し始める。しかしながら、低位置側接触部70c1の数は、ソケット接触部10cの半分であるため、ソケット接触部10cよりも低い押圧荷重において挿入力が極大値となる。しかしながら、この挿入力は、低く抑えられているため、可動部11cの撓みも小さく抑えられている。
続いて図18で示すように、プラグ接触部11eに対して高位置側接触部70c2が接触し始める。このとき、図17の実線で示すように、プラグ接触部11eに対し、低位置側接触部70c1に加えて高位置側接触部70c2の接触圧力、すなわち全てのソケット接触部10cの接触圧力がかかることによって、挿入力がより増加する。しかしながら、この時点で低位置側接触部70c1の挿入力が既に減少し始めているので、挿入力は、図17の破線で示すソケット接触部10cと比べると低く抑えられている。このため、可動部11cの撓みも、ソケット接触部10cと比べると小さく抑えられている。
そして、挿入力が最大となった後には、第1実施形態と同様に、プラグ接触部11eとソケット接触部10cとの有効嵌合長が形成される。そして、可動ハウジング8は、可動部11cの復元力によってZ方向における上向きに変位して、第1の基板2に対して所望の嵌合高さとなる。このとき、復元後可動間隙S1cも、例えば0.02mm-0.15mmの間となる。
本実施形態の変形例によれば、電気コネクタ61は、プラグ接触部11eとソケット接触部70cとの接続過程において、可動部11cが最も撓んだときの復元力を低下させるために挿入力を低下させることが可能な構造を有する。このため、本実施形態の変形例によれば、プラグ接触部11eとソケット接触部70cとの接続過程において、可動部11cの最大撓み量を減らすことができる。
ここでは、ソケット接触部70cのZ方向における高さが、例えばX方向で互い違いに異なる千鳥状に複数配置されている構成を示した。しかしながら、この変形例による構成は、「第1の接触部」に適用することもできる。さらに、「第1の接触部」及び「第2の接触部」の双方に、この変形例による構成が適用されても良い。
前記実施形態では、プラグ接触部11eに対してソケット接点部10c1が接触した状態になると(図7)、可動部11cの復元力とプラグ接触部11eとソケット接点部10c1との間における動摩擦力との差によって、可動部11cが直ちに復元して、それとともにプラグ接触部11eも直ちにソケット接点部10c1に対してZ方向における上方に位置ずれ(復元)する例を示した。しかしながら、可動部11cの復元力と前記動摩擦力との差を小さくすることで、プラグ接触部11eとソケット接点部10c1とが摺動接触しながら、可動部11cが徐々に復元し、プラグ接触部11eがZ方向の上方に位置ずれするように構成することもできる。
本出願にて開示する「コネクタ」では、各実施形態及び変形例で示した構成を矛盾の生じない範囲で自由に組み合わせることができる。例えば第2実施形態における可動ハウジング28の底端部28e1と第1の基板2とが接触する構成は、第3実施形態の構成と組み合わされても良い。
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。