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JP7568951B2 - 信号検出装置、キャリア位相回復装置、キャリア位相回復方法及びキャリア位相回復プログラム - Google Patents
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JP7568951B2 - 信号検出装置、キャリア位相回復装置、キャリア位相回復方法及びキャリア位相回復プログラム - Google Patents

信号検出装置、キャリア位相回復装置、キャリア位相回復方法及びキャリア位相回復プログラム Download PDF

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Description

本発明は、信号検出装置、キャリア位相回復装置、キャリア位相回復方法及びキャリア位相回復プログラムに関する。
近年の5G(5th Generation)サービスの開始、高精細動画サービス配信、IoT(Internet of Things)サービスの発展などに伴って、光ネットワークを流れる通信トラヒックは年々増加の一途をたどっている。増加する通信トラヒック需要に対する光ネットワークにおける対策として、例えば伝送路としての光ファイバの構造を変えずに、光ネットワークの端局に設置される光通信システム装置の高機能化、光増幅器や光スイッチの導入などの対策が行われてきた。
現在の大容量光ネットワークの基盤となっている光ファイバは、LAN(Local Area Network)などの近距離向けの局所的なネットワークを除くと、シングルモードファイバが用いられている。シングルモードファイバは、クラッド内に光信号の通路となる単一のコアを有しており、大容量光ネットワークで用いられるC帯やL帯などの波長帯では単一のモード伝搬のみを許容する光ファイバである。これにより、毎秒数テラビットに達する情報を長距離にわたり安定的に転送する大容量光ネットワークが実現されている。
デジタル信号処理技術と、コヒーレント送受信技術とを用いるデジタルコヒーレント伝送技術が、毎秒100ギガビット級の光伝送装置に商用導入されている。デジタルコヒーレント伝送技術は、コヒーレント受信方式と、超高速デジタル信号処理とを組み合わせた技術である。コヒーレント受信方式は、受信側における光と局部発振光との干渉光を検波する受信方式である。超高速デジタル信号処理は、信号をデジタル化した後に、信号光を生成する送信側光源及び局部発振光を生成する受信側光源における周波数や位相揺らぎに起因する位相成分の雑音を取り除く処理である。
デジタルコヒーレント伝送技術により、複雑な位相同期回路等を用いることなく、小型で安価な低消費電力な特性を持つ光送受信モジュール及びそれを用いた光トランシーバが実現されている。デジタルコヒーレント伝送技術の登場により、大容量光ネットワークを構成する光伝送時における受信感度の改善のみならず、光搬送波の振幅や位相や偏波に情報を載せることで情報伝送効率を飛躍的に向上させることが可能になっている。
光伝送システムにおけるデジタルコヒーレント伝送技術を用いた伝送方式の例として、単一モードファイバに対して直交偏波の2モードを使った偏波多重光伝送がある。偏波多重光伝送では、直交関係にある偏波にそれぞれ異なる情報を載せることができる。偏波多重光伝送が行われる際、光伝送路中では、直交関係にある偏波が複雑に混合し、偏波モードの直交軸が高速に変動する。そのため、このような偏波を、光デバイスを使って追従することは困難である。そこで、偏波ダイバーシティ構造に対応した受信装置では、混合した偏波多重光信号を受信し、受信した偏波多重光信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理を用いて分離する処理を行う。この処理は、無線通信システムで用いられる2×2MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)システムとしてモデル化することができる。これにより、分離した信号から偏波ごとの情報を取り出すことが可能になり、送受信機間での通信が確立する。
デジタルコヒーレント伝送技術を用いた伝送方式の別の例として、マルチモードの光ファイバにおける複数の空間モード(以下「モード」ともいう)を使ったモード多重光伝送がある。モード多重光伝送では、コア径をシングルモードファイバと比較して広げる。これにより、C帯などの既存波長帯においても、複数のモードを励振することができ、各モードにそれぞれ異なる情報を載せることができる。モード多重光伝送の場合においても、偏波多重光伝送の場合と同様に、モード多重された光信号は、マルチモードの光ファイバを伝搬中に複雑に混合する。モードダイバーシティ構造に対応した受信装置は、混合したモード多重された光信号を受信し、受信したモード多重された光信号をデジタル信号に変換し、励振されるモード数に応じた規模のMIMOデジタル信号処理を用いて分離する。
より具体的な例として、2つのLP(Linearly Polarized)モードを励振する数モードファイバを考える。2LPモード用の数モードファイバでは、基底モードとなるLP01モード、および高次モードとなるLP11モードが励振される。さらに、LP11モードの縮退2モード(これらをそれぞれ、LP11a,LP11bという)及び、各モードの偏波モード(これらをそれぞれ、X偏波、Y偏波という)とを活用することにより、2LPモード用の数モードファイバでは、LP01X、LP01Y、LP11aX、LP11aY、LP11bX、LP11bYの合計6つの空間モードにそれぞれ異なる情報を載せることができる。したがって、光ファイバの非線形光学効果を無視すれば、原理的には2LPモード用の数モードファイバは、既存のシングルモードファイバの3倍の伝送容量を達成することができる。
将来の大容量光基幹ネットワークを実現する上で、上記したマルチモードの光ファイバ中の伝搬光に情報を載せる空間分割多重伝送技術基盤を確立することが不可欠である。しかし、上記したデジタルコヒーレント伝送技術が適用されたコヒーレント送受信回路における光源およびその周辺回路構成については未検討の部分が多いと言われている。特に現時点における実験室レベルでの空間分割多重伝送実験の報告では、コヒーレント送受信回路における光源について、光源間の位相や周波数の同期性が暗黙のうちに仮定されているという事情がある。
既存のシングルモードファイバを伝送媒体とした伝送システムにおけるコヒーレント送受信回路では、送受信間の光源が一般に非同期のため受信信号に位相雑音成分や周波数オフセット成分が付加され、これらを除去する必要がある。この除去に用いられる代表的なアルゴリズムとしては、例えば、非特許文献1記載の拡張カルマンフィルタ型位相振幅補正法や、非特許文献2記載のBPS(Blind phase search)法が知られている。しかし、前者の拡張カルマンフィルタ型位相振幅補正法はシングルモード伝送用に設計されており、空間分割多重伝送には適用できない。後者のBPS法は、空間分割多重伝送に原理的には拡張可能であるが、非同期の光源の数だけテスト位相の組み合わせ数が指数関数的に増大するため、実装の観点から空間分割多重伝送には適用できない。
Lalitha Pakala et al., "Extended Kalman filtering for joint mitigation of phase and amplitude noise in coherent QAM systems", Optics Express,Vol.24 Issue6, pp.6391-6401, Mar 2016 Timo Pfau et al, "Hardware-efficient coherent digital receiver concept with feedforward carrier recovery for M-QAM constellations", Journal of Lightwave Technology, vol. 27, Issue. 8, pp989-999, April 2009
光源間の位相及び周波数の同期性を確保するためには、単一光源からの出力光を光分岐して光増幅する手法や、注入同期などの手法により実現可能である。しかしながら、同期性の所定の要求条件確保に要する新たなモニタ機構の追加などにより、装置サイズの大型化や消費電力の増大などの課題が懸念される。波長多重システム用途の波長可変半導体光源用の既存ウェハ製造プロセスの変更などにより、装置製造コストの増加の課題が懸念される。
上記事情に鑑み、本発明は、送信装置が生成する搬送波と、受信装置が生成する局部発振信号とが非同期である状態で複数信号を、同一伝送媒体を用いて伝送することを可能にする技術の提供を目的としている。
本発明の一態様は、各々に与えられる送信データ系列に基づいて、各々が有する搬送波生成部が出力する搬送波を変調して送信信号を生成し、生成した前記送信信号を、複数の信号を伝送する伝送路に送出する複数の送信部を備える送信装置と、前記伝送路が伝送する複数の信号を受信し、受信した受信信号を、各々が有する局部発振部が出力する局部発振信号に基づいて復調して受信データ系列を生成する複数の受信部を備える受信装置とを備える通信システムにおける前記受信装置が備える信号検出装置であって、前記受信データ系列に対してMIMO線形受信を行う際に用いる重み行列を算出する重み行列算出部と、複数の前記搬送波生成部と、複数の前記局部発振部とが非同期であるために生じる妨害成分を状態情報とし、事後の前記状態情報を、事前の前記状態情報に基づいて算出する予め定められる状態方程式と、前記送信データ系列を観測情報とし、前記状態方程式により算出する事後の前記状態情報と、前記受信データ系列と、前記重み行列とに基づいて、事後の前記状態情報が示す状態における前記観測情報を算出する予め定められる観測方程式とに対して、カルマンフィルタアルゴリズムを適用して前記妨害成分の事後状態推定値を算出し、算出した前記事後状態推定値に基づいて、前記妨害成分を除去した前記送信データ系列の推定系列を算出するキャリア位相回復部と、を備える信号検出装置である。
本発明の一態様は、上記の信号検出装置が備えるキャリア位相回復部を装置としたキャリア位相回復装置である。
本発明の一態様は、各々に与えられる送信データ系列に基づいて、各々が有する搬送波生成部が出力する搬送波を変調して送信信号を生成し、生成した前記送信信号を、複数の信号を伝送する伝送路に送出する複数の送信部を備える送信装置と、前記伝送路が伝送する複数の信号を受信し、受信した受信信号を、各々が有する局部発振部が出力する局部発振信号に基づいて復調して受信データ系列を生成する複数の受信部を備える受信装置とを備える通信システムにおける前記受信装置が行うキャリア位相回復方法であって、前記受信データ系列に対してMIMO線形受信を行う際に用いる重み行列を算出し、複数の前記搬送波生成部と、複数の前記局部発振部とが非同期であるために生じる妨害成分を状態情報とし、事後の前記状態情報を、事前の前記状態情報に基づいて算出する予め定められる状態方程式と、前記送信データ系列を観測情報とし、前記状態方程式により算出する事後の前記状態情報と、前記受信データ系列と、算出した前記重み行列とに基づいて、事後の前記状態情報が示す状態における前記観測情報を算出する予め定められる観測方程式とに対して、カルマンフィルタアルゴリズムを適用して前記妨害成分の事後状態推定値を算出し、算出した前記事後状態推定値に基づいて、前記妨害成分を除去した前記送信データ系列の推定系列を算出する、キャリア位相回復方法である。
本発明の一態様は、コンピュータを、上記のキャリア位相回復装置として機能させるためのキャリア位相回復プログラムである。
本発明により、送信装置が生成する搬送波と、受信装置が生成する局部発振信号とが非同期である状態で複数信号を、同一伝送媒体を用いて伝送することが可能になる。
第1の実施形態の通信システムの構成を示すブロック図である。 第1の実施形態の記憶部が備える第1データベース部、第2データベース部及び第3データベース部のデータ構成を示す図である。 第1の実施形態のキャリア位相回復部の内部構成と、キャリア位相回復部が備える機能部の各々が、記憶部が備える第1データベース部、第2データベース部及び第3データベース部のいずれを利用するかを示すブロック図である。 第1の実施形態のキャリア位相回復部による処理の流れを示すフローチャートである。 第2の実施形態の通信システムの構成を示すブロック図である。 第2の実施形態の記憶部が備える第1データベース部、第2データベース部及び第3データベース部のデータ構成を示す図である。 第2の実施形態のキャリア位相回復部の内部構成と、キャリア位相回復部が備える機能部の各々が、記憶部が備える第1データベース部、第2データベース部及び第3データベース部のいずれを利用するかを示すブロック図である。 第2の実施形態のキャリア位相回復部による処理の流れを示すフローチャートである。 第3の実施形態の通信システムの構成を示すブロック図である。 第3の実施形態のキャリア位相回復部の内部構成と、キャリア位相回復部が備える機能部の各々が、記憶部が備える第1データベース部、第2データベース部及び第3データベース部のいずれを利用するかを示すブロック図である。 シミュレーション結果のグラフを示す図(その1)である。 シミュレーション結果のグラフを示す図(その2)である。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の通信システム100の構成を示すブロック図である。通信システム100は、送信装置1、受信装置2及び送信装置1と受信装置2の間を接続する伝送路3を備える。伝送路3は、例えば、マルチモードの光ファイバであり、複数の空間モードの光信号を伝送する。
送信装置1は、Nt個の送信部11-1~11-Ntと光結合部10を備える。ここで、Ntは、2以上の整数である。送信部11-1は、送信処理部12-1と搬送波生成部13-1を備える。送信部11-2~11-Ntの各々は、符号の枝番号に対応する送信処理部12-2~12-Nt及び搬送波生成部13-2~13-Ntを備える。
搬送波生成部13-1~13-Ntの各々は、搬送波、すなわちキャリアを生成する。第1の実施形態では、搬送波生成部13-1~13-Ntとして、信号光光源が適用され、搬送波生成部13-1~13-Ntの各々は、キャリアとなる連続光を出射する。送信処理部12-1~12-Ntの各々は、それぞれ独立した情報の系列であるデータ系列を送信データ系列として取り込む。なお、以下では、送信処理部12-1,12-2,…,12-Ntの各々が取り込む送信データ系列のそれぞれを、第1データ系列,第2データ系列,…第Ntデータ系列といい、第1データ系列~第Ntデータ系列のNt個の送信データ系列を成分とするベクトルを送信信号ベクトルxという。
送信処理部12-1~12-Ntの各々は、各々が取り込んだ第1データ系列~第Ntデータ系列を符号化する。送信処理部12-1~12-Ntの各々は、内部に光変調器を備える。送信処理部12-1~12-Ntの各々は、内部の光変調器を用いて、各々が符号化した電気信号の第1データ系列~第Ntデータ系列を変調信号として、各々に対応する搬送波生成部13-1~13-Ntが出射するキャリアの連続光を変調することにより、送信データ系列から光信号を生成する。
より詳細には、送信処理部12-1~12-Ntの各々が内部に備える光変調器の各々の電気入力には、送信処理部12-1~12-Ntの各々が符号化した第1データ系列~第Ntデータ系列の電気信号が印加される。送信処理部12-1~12-Ntの各々が内部に備える光変調器の各々の光入力には、各々に対応する搬送波生成部13-1~13-Ntが出射するキャリアの連続光が与えられる。ここで、一般的には、同期したNt系列の連続光を得るために、送信処理部12-1~12-Ntの各々が内部に備える光変調器に与える連続光として、単独の連続光を光分岐して光増幅する手法、または、注入同期を行う手法などが採用される。これに対して、第1の実施形態の送信装置1では、このような同期の手法を行う構成は必要とせず、搬送波生成部13-1~13-Ntが出射するキャリアの連続光の各々が、非同期の状態であってもよい。
光結合部10は、送信処理部12-1~12-Ntの各々は、生成したNt個の光信号を結合して、伝送路3に送出する。伝送路3は、Nt個の光信号を各空間モードの光信号として受信装置2に伝送する。
受信装置2は、光分岐部20、Nr個の受信部21-1~21-Nr及び信号検出部24を備える。ここで、Nrは、2以上の整数である。伝送路3を伝搬する各空間モードの光信号は、伝送路3を伝搬する間に混合する。光分岐部20は、各空間モードの光信号が混合した光信号をNr個の光信号に分岐する。
受信部21-1は、受信処理部22-1と局部発振部23-1を備え、同様に、受信部21-2~21-Nrの各々は、符号の枝番号に対応する受信処理部22-2~22-Nr及び局部発振部23-2~23-Nrを備える。局部発振部23-1~23-Nrの各々は、復調に用いられる局部発振信号を生成して出力する。第1の実施形態では、局部発振部23-1~23-Nrとして、局部発振光光源が適用され、局部発振部23-1~23-Nrの各々は、局部発振信号としてコヒーレント検波に用いられる連続光を出射する。
受信処理部22-1~22-Nrの各々は、内部にコヒーレント検波を行う復調器を備える。受信処理部22-1~22-Nrの各々は、内部に備える復調器に対して、各々に対応する局部発振部23-1~23-Nrが出射する連続光を与えて、各々に対して光分岐部20が出力する光信号に対してコヒーレント検波を行うことにより、光信号を復調して電気信号の受信データ系列を生成する。
ここで、伝送路3が伝送する光信号のモード数を「Nm」とした場合、送信部11-1~11-Ntの台数Ntと、受信装置2の受信部21-1~21-Nrの台数Nrと、Nmとの関係は、Nt≦Nr≦Nmである。独立信号の搬送モードとして、モード数Nmをどれぐらいの数にするかは、Nt≦Nm、かつNr≦Nmとなるように利用者によって予め定められる。MIMO通信では一般的に、Nt≦Nm、Nr≦Nmであるため、上記した条件であるNt≦Nr≦Nmの関係が成立する。なお、送信装置1においてNm以下のモードを励振していても、光ファイバの曲がりやねじれ、マイクロベンディング等のファイバ不完全性のために全モードの光が励振される場合がある。そのような場合に、良好なMIMOによる受信を行うためには、Nr=Nmとするのが望ましい。
信号検出部24は、デジタル信号処理部25、重み行列算出部26、記憶部27及びキャリア位相回復部28を備える。デジタル信号処理部25は、受信処理部22-1~22-Nrが生成したNr個の受信データ系列に対して、以下のデジタル信号処理を行う。デジタル信号処理部25は、伝送路3による伝送によりNr個の受信データ系列の各々の波形に生じた歪み等をデジタル信号処理により除去する。デジタル信号処理部25は、伝送路3による伝送によりNr個の受信データ系列の各々において生じた誤りをデジタル信号処理により訂正する。これにより、Nr個の受信データ系列を分離することができ、分離したNr個の受信データ系列に基づいて、Nt個の送信データ系列を推定することが可能になる。以下、デジタル信号処理部25がデジタル信号処理を行って出力するNr個の受信データ系列を成分とするベクトルを受信信号ベクトルyという。
重み行列算出部26は、デジタル信号処理部25がデジタル信号処理した受信信号ベクトルyに対して信号分離を行う手法の1つである平均最小二乗誤差(以下「MMSE」(Minimum Mean Square Error)ともいう)法を用いる際に必要となる重み行列Wを算出する。
記憶部27は、図2に示すように、第1データベース部31、第2データベース部32及び第3データベース部33を備える。第1データベース部31は、事前状態推定値、事後状態推定値、事前誤差共分散行列P、事後誤差共分散行列Pを記憶する。事前状態推定値と事後状態推定値は、ベクトルであり、それぞれ次式(1)、(2)として表される。
Figure 0007568951000001
Figure 0007568951000002
以下、本文では、式(1)の事前状態推定値を表す記号を、ベクトル^φと記載し、式(2)の事後状態推定値を表す記号を、ベクトル^φと記載する。
第2データベース部32は、システム雑音共分散行列Qと、観測雑音共分散行列Rとを記憶する。
第3データベース部33は、重み行列算出部出力データ、事前出力信号、カルマンゲイン行列G、補助行列A、補助行列B及び補助行列Cを記憶する。重み行列算出部出力データは、重み行列算出部26によって書き込まれるデータであり、重み行列Wと、受信信号ベクトルyとが含まれる。
事前出力信号は、ベクトルであり、次式(3)として表される。以下、本文では、次式(3)の事前出力信号を表す記号を、ベクトル^xと記載する。
Figure 0007568951000003
なお、サンプリング時刻を示す変数をkとした場合、記憶部27における、第1データベース部31、第2データベース部32及び第3データベース部33が記憶するベクトル及び行列のうちシステム雑音共分散行列Q及び観測雑音共分散行列Rを除くベクトル及び行列は、各々に対応するサンプリング時刻を示す変数kを付すことが正確な表記であるが、図2では、変数kを付さずに示している。ここで、変数kは、自然数であるが、以下において、予め定められる初期値を示す場合、変数kの値として「0」を示す場合もある。
キャリア位相回復部28は、搬送波生成部13-1~13-Ntの位相揺らぎに起因する妨害成分と、局部発振部23-1~23-Nrの位相揺らぎに起因する妨害成分とを推定する。キャリア位相回復部28は、推定した2つの妨害成分を除去した送信信号ベクトルxの推定系列を算出する。
第1の実施形態では、キャリア位相回復部28は、2つの妨害成分として、搬送波生成部13-1~13-Ntの各々の光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分と、局部発振部23-1~23-Nrの各々の光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分とを推定する。
ここで、搬送波生成部13-1~13-Ntの各々の光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分をφ ,φ ,…,φNt とし、局部発振部23-1~23-Nrの各々の光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分を、φ ,φ ,…,φNr とする。搬送波生成部13-1~13-Ntの各々の光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分φ ,φ ,…,φNt を成分とする列ベクトルである位相雑音成分ベクトルφを次式(4)として定義する。
Figure 0007568951000004
局部発振部23-1~23-Nrの各々の光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分φ ,φ ,…,φNr を成分とする列ベクトルである位相雑音成分ベクトルφを次式(5)として定義する。
Figure 0007568951000005
なお、本文では、「Nt」、「Nr」の添え字の「t」と「r」を下付き文字にはしていないが、式(4)、(5)に示すように、数式においては、見易さの観点から「Nt」及び「Nr」の添え字の「t」と「r」とを下付き文字として示しており、以下に示す数式においても同様に示すものとする。
ここで、位相雑音成分ベクトルφから算出されるベクトルθと、位相雑音成分ベクトルφから算出されるベクトルθとをそれぞれ、次式(6)、(7)として定義する。
Figure 0007568951000006
Figure 0007568951000007
式(6)のベクトルθの成分を対角成分に並べた行列Dを次式(8)として定義し、式(7)のベクトルθの成分を対角成分に並べた行列Dを次式(9)として定義する。
Figure 0007568951000008
Figure 0007568951000009
送信信号ベクトルxを次式(10)として定義し、受信信号ベクトルyを次式(11)として定義する。
Figure 0007568951000010
Figure 0007568951000011
受信信号ベクトルyが得られるまでに付加される雑音、言い換えると、通信路である伝送路3と、送信装置1の送信処理部12-1~12-Ntや受信装置2の受信処理部22-1~22-Nrや受信装置2のデジタル信号処理部25などの送受信回路によって付加される雑音をまとめた雑音ベクトルzを次式(12)として定義する。
Figure 0007568951000012
伝送路3の通信路行列を、Nr行Nt列のサイズの行列である通信路行列Hと定義する。この場合、次式(13)に示す関係が成り立つ。
Figure 0007568951000013
式(13)に示すベクトル及び行列に含まれる成分の値は、サンプリング時刻ごとに変化する値であり、サンプリング時刻を示す変数kを付すことが正確な表記であるが、ここでは、見易さのために簡略化してkを付さずに示している。なお、以下の数式の記載においても、数式の内容からサンプリング時刻を示す変数kを付すことが自明である場合には、変数kを省略して示す場合があるものとする。
重み行列算出部26が算出する重み行列Wを用いたMIMO線形受信の目的とは、デジタル信号処理部25がデジタル信号処理した受信信号ベクトルyに、重み行列Wを乗算することにより、通信路、すなわち伝送路3における空間チャネル間の結合を仮想的に解いて、Nt個の送信データ系列の推定系列を得ることである。これに対して、キャリア位相回復部28が行う処理の目的とは、位相雑音成分ベクトルφと、位相雑音成分ベクトルφとを縦に並べた(Nt+Nr)行の列ベクトルである位相雑音成分ベクトルφをサンプリング時刻ごとに推定し、MIMO線形受信により得られるNt個の送信データ系列の推定系列から更に、推定した位相雑音成分ベクトルφを除去することである。
キャリア位相回復部28は、予め定義する観測方程式及び状態方程式に対してカルマンフィルタアルゴリズムを適用して状態ごとに得られる観測情報に基づいて、位相雑音成分ベクトルφをサンプリング時刻ごとに推定する処理を行う。以下、カルマンフィルタアルゴリズムを用いる際に予め定義する必要のある観測方程式と、状態方程式とについて説明する。
重み行列算出部26が算出する重み行列Wの設計規範として、一般的なMMSE法が適用される場合、通信路行列Hがユニタリ行列でない場合、重み行列Wの乗算によって空間チャネル間の影響を完全に取り除くことができず干渉成分が残留することになる。この残留する干渉成分と、雑音ベクトルzとをまとめると、次式(14)として表すことができる。
Figure 0007568951000014
以下、本文では、式(14)の左辺の記号を~zと記載する。式(14)において、γは、伝送路3を伝搬した後の信号対雑音比であり、行列Fは、次式(15)により定義される行列である。次式(15)において、INtは、N行N列の単位行列である。
Figure 0007568951000015
受信信号ベクトルyから送信信号ベクトルxの推定系列を得るためには、キャリア位相回復部28が推定する位相雑音成分ベクトルφに基づいて、搬送波生成部13-1~13-Ntに起因する位相ずれの分の回転演算である行列D を乗算する演算と、局部発振部23-1~23-Nrに起因する位相ずれの分の回転演算であるベクトルθr*を乗算する演算を行った上で~zを除去する必要がある。この関係を式で示すと、次式(16)として表すことができる。
Figure 0007568951000016
式(16)は、送信信号ベクトルxの推定系列を観測情報とし、~zを観測雑音とする観測方程式ということができる。観測方程式の表記を簡略化するため、次式(17)に示す非線形関数h(φ)を定義する。
Figure 0007568951000017
式(17)の非線形関数h(φ)を用いることにより、式(16)の観測方程式を次式(18)として表すことができる。
Figure 0007568951000018
キャリア位相回復部28が推定する位相雑音成分ベクトルφに関する状態方程式は、次式(19)として表すことができる。
Figure 0007568951000019
式(19)において、ベクトルv(k)は、(Nt+Nr)行のベクトルである。ここで、受信部21-1~21Nrが行うコヒーレント検波の特性を考慮し、位相雑音成分ベクトルφの成分のうち特定の1つの成分を定常的な値、すなわち参照角とする。このように、位相雑音成分ベクトルφの成分のうち特定の1つの成分を参照角とする理由は、複数存在する最小二乗解から特定の解に限定するためである。特定の1つの成分の選び方は、任意に定めてもよい。ここでは、送信側の搬送波生成部13-1~13-Ntの各々の位相揺らぎに起因する位相雑音成分をφ ,φ ,…,φNt の中から参照角となる位相雑音成分としてφ を選択し、更に、一般性を失わないようにするため、φ =0とする。参照角を「0」にする理由は、例えば、QPSK(Quadra Phase Shift Keying)のような変調方式で変調された信号を送信する場合、参照角を0とすることで、他の未知数に対する最小二乗解も通信において意味のある解になることが期待されるためである。この場合、ベクトルv(k)は、次式(20)として表すことができる。
Figure 0007568951000020
上記の式(20)に示すように、ベクトルv(k)の第1の成分v(k)は、参照角であるため「0」であり、残りの(Nt+Nr-1)個のv(k)~vNt+Nr(k)の成分は、平均0、分散2πΔvTの白色雑音である。ここで、Δvは、搬送波生成部13-1~13-Nt及び局部発振部23-1~23-Nrの線幅であり、Tは、サンプリング周期である。
式(18)により示される観測方程式と、式(19)により示される状態方程式とに基づくカルマンフィルタアルゴリズムは、1.事前状態推定値更新、2.事前誤算共分散更新、3.カルマンゲイン更新、4.事後状態推定値更新、5.事後誤差共分散更新、6.信号出力値という一連の演算を繰り返すアルゴリズムになる。「1.事前状態推定値更新」の演算は、式(21)によって表される。
Figure 0007568951000021
上記の式(21)において、ベクトル^φ(k)は、式(1)に示した事前状態推定値であってサンプリング時刻が(k)の場合の事前状態推定値であり、ベクトル^φ(k-1)は、式(2)に示した事後状態推定値であってサンプリング時刻が(k-1)の事後状態推定値である。「2.事前誤差共分散更新」の演算は、次式(22)によって表される。
Figure 0007568951000022
上記の式(22)において、行列P(k)は、サンプリング時刻が(k)の場合の事前誤差共分散行列であり、行列P(k-1)は、サンプリング時刻が(k-1)の場合の事後誤差共分散行列である。式(22)の行列Qは、次式(23)により定義されるシステム雑音共分散行列であり、次式(23)のE[・]は、期待値演算を示す記号である。
Figure 0007568951000023
「3.カルマンゲイン更新」の演算は、次式(24)として表される。
Figure 0007568951000024
上記の式(24)において、行列G(k)は、カルマンゲイン行列である。式(24)の行列Rは、次式(25)により定義される観測雑音共分散行列であり、次式(25)のE[・]は、期待値演算を示す記号である。
Figure 0007568951000025
式(24)の行列Tは、次式(26)により定義される行列である。次式(26)から分かるように、行列Tは、その一部に、事前出力信号であるベクトル^xの成分である^x ~^xNt を含む行列である。
Figure 0007568951000026
なお、式(26)では、行列T(k)を、式の記載の見易さの観点からサンプリング時刻を示す変数kを省略して表記しているが、行列T(k)の成分は、サンプリング時刻ごとに変化する値であり、サンプリング時刻を考慮した正式な表記は、次式(27)である。
Figure 0007568951000027
「4.事後状態推定値更新」の演算は、次式(28)により表される。次式(28)において、ベクトル^x(k)は、式(3)に示したように事前出力信号であってサンプリング時刻が(k)の場合の事前出力信号である。式(28)のベクトルxHD(k)は、事前出力信号のベクトル^x(k)に対して所定の信号変調方式にしたがった仮判定を行うことにより得られる仮判定値ベクトルである。
Figure 0007568951000028
「5.事後誤差共分散更新」の演算は、次式(29)により表される。
Figure 0007568951000029
「6.信号出力値」の演算は、次式(30)により表される。式(30)の右辺のベクトル^x(k)が、送信信号ベクトルxの推定系列になる。
Figure 0007568951000030
図3は、上記のカルマンフィルタアルゴリズムを実行するキャリア位相回復部28が備える機能部と、各々の機能部が、記憶部27が備える第1データベース部31、第2データベース部32及び第3データベース部33のいずれを利用するかを示したブロック図である。キャリア位相回復部28は、時刻更新部41、事前状態推定値更新部42、事前誤差共分散更新部43、事前出力信号算出部44、補助行列算出部45、カルマンゲイン更新部46、事後状態推定値更新部47、事後誤差共分散更新部48及び出力信号算出部49を備える。
時刻更新部41は、カルマンフィルタアルゴリズムにおけるサンプリング時刻を示す変数k(以下「サンプリング時刻k」ともいう)を生成して出力する。事前状態推定値更新部42は、上記した「1.事前状態推定値更新」の演算を行う。事前誤差共分散更新部43は、上記した「2.事前誤算共分散更新」の演算を行う。事前出力信号算出部44は、上記した「4.事後状態推定値更新」の演算において用いられるサンプリング時刻kにおける事前出力信号ベクトル^x(k)と、上記した「3.カルマンゲイン更新」の演算において用いられるサンプリング時刻kにおける行列T(k)とを算出する。
補助行列算出部45は、上記した「3.カルマンゲイン更新」と「5.事後誤差共分散更新」の演算において用いられる次式(31)~式(33)により表される3つの補助行列A(k),B(k),C(k)を算出する。
Figure 0007568951000031
Figure 0007568951000032
Figure 0007568951000033
カルマンゲイン更新部46は、上記の「3.カルマンゲイン更新」の演算を行う。ただし、式(24)に示した式に替えて、補助行列算出部45が算出する補助行列A(k)と、補助行列C(k)とを用いて、次式(34)の演算を行ってサンプリング時刻kのカルマンゲイン行列G(k)を算出する。
Figure 0007568951000034
事後状態推定値更新部47は、上記した「4.事後状態推定値更新」の演算を行う。事後誤差共分散更新部48は、上記した「5.事後誤差共分散更新」の演算を行う。ただし、式(29)に示した式に替えて、補助行列算出部45が算出する補助行列A(k)を用いた次式(35)の演算を行ってサンプリング時刻kの事後誤差共分散行列P(k)を算出する。
Figure 0007568951000035
出力信号算出部49は、上記した「6.信号出力値」の演算を行う。
(第1の実施形態のキャリア位相回復部による処理)
次に、図3、図4を参照しつつ、キャリア位相回復部28による処理について説明する。図4は、キャリア位相回復部28による処理の流れを示すフローチャートである。
以下に示す処理の前提として、重み行列算出部26は、デジタル信号処理部25が出力する受信信号ベクトルyを取り込むごとに、取り込んだ受信信号ベクトルyに対してMIMO線形受信を行う場合に適用する重み行列Wと、取り込んだ受信信号ベクトルyとに、サンプリング時刻を示す変数kを1から順に1ずつ増やして、W(k)、y(k)として第3データベース部33に書き込む処理を行う。言い換えると、第3データベース部33は、重み行列算出部出力データとして[W(1),y(1)],[W(2),y(2)],…という時系列のデータを記憶することになる。なお、重み行列算出部26は、例えば、送信装置1が周期的に送信信号ベクトルxに含めて送信する重み行列算出用のパイロットシンボルを予め内部の記憶領域に記憶させており、送信装置1が重み行列算出用のパイロットシンボルを送信した際に、デジタル信号処理部25が出力する受信信号ベクトルと、内部の記憶領域が記憶する重み行列算出用のパイロットシンボルとに基づいて、新たな重み行列Wの算出を行っているものとする。
第1データベース部31には、事後状態推定値の初期値としてベクトル^φ(0)が予め書き込まれており、事後誤差共分散行列の初期値として、事後誤差共分散行列P(0)が予め書き込まれているものとする。第2データベース部32には、システム雑音共分散行列Qが、式(20),(23)に基づいて予め算出されて書き込まれており、観測雑音共分散行列Rが、式(14),(25)に基づいて予め算出されて書き込まれているものとする。なお、式(25)において、~z(k)と、~z(k)は、変数としてサンプリング時刻kを含んでいるが、式(14)から分かるように~zは、送信パワーに変化がなければ定常的な値となる。そのため、観測雑音共分散行列Rの変化は、サンプリング時刻kの間隔に比べて十分に長い間隔での変化であり、観測雑音共分散行列Rを定常的な値とみなすことができるため、観測雑音共分散行列Rを式(14),(25)に基づいて予め算出することができる。
時刻更新部41は、サンプリング時刻kの初期値を「1」とし、初期値のサンプリング時刻(k=1)を事前状態推定値更新部42に出力する(ステップS1)。
事前状態推定値更新部42は、時刻更新部41からサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第1データベース部31から事後状態推定値であるベクトル^φ(k-1)を読み出して式(21)の演算、すなわち、読み出したベクトル^φ(k-1)を事前状態推定値であるベクトル^φ(k)とする演算を行う。事前状態推定値更新部42は、事前状態推定値であるベクトル^φ(k)を第1データベース部31に書き込んで更新する。第1データベース部31にサンプリング時刻k-1のベクトル^φ(k-1)が書き込まれている場合、事前状態推定値更新部42は、ベクトル^φ(k-1)を削除してベクトル^φ(k)を書き込んで更新する。事前状態推定値更新部42は、サンプリング時刻kを事前誤差共分散更新部43に出力する(ステップS2)。
事前誤差共分散更新部43は、事前状態推定値更新部42からサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第2データベース部32からシステム雑音共分散行列Qを読み出す。事前誤差共分散更新部43は、第1データベース部31から事後誤差共分散行列P(k-1)を読み出す。事前誤差共分散更新部43は、読み出したシステム雑音共分散行列Qと、事後誤差共分散行列P(k-1)とに基づいて、式(22)の演算を行って事前誤差共分散行列P(k)を算出する。事前誤差共分散更新部43は、算出した事前誤差共分散行列P(k)を第1データベース部31に書き込んで更新する。第1データベース部31にサンプリング時刻k-1の事前誤差共分散行列P(k-1)が書き込まれている場合、事前誤差共分散更新部43は、事前誤差共分散行列P(k-1)を削除して事前誤差共分散行列P(k)を書き込んで更新する。事前誤差共分散更新部43は、サンプリング時刻kを事前出力信号算出部44に出力する(ステップS3)。
事前出力信号算出部44は、事前誤差共分散更新部43からサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第1データベース部31から事前状態推定値であるベクトル^φ(k)を読み出す。事前出力信号算出部44は、第3データベース部33から重み行列W(k)と、受信信号ベクトルy(k)を読み出す。事前出力信号算出部44は、読み出した事前状態推定値であるベクトル^φ(k)と、重み行列W(k)と、受信信号ベクトルy(k)とに基づいて、次式(36)の演算を行って事前出力信号であるベクトル^x(k)を算出する。
Figure 0007568951000036
事前出力信号算出部44は、算出した事前出力信号であるベクトル^x(k)と、事前状態推定値であるベクトル^φ(k)と、重み行列W(k)と、受信信号ベクトルy(k)とに基づいて、式(26),(27)に示す行列T(k)を算出する。事前出力信号算出部44は、算出した事前出力信号であるベクトル^x(k)を第3データベース部33に書き込んで更新する。第3データベース部33にサンプリング時刻k-1のベクトル^x(k-1)が書き込まれている場合、事前出力信号算出部44は、ベクトル^x(k-1)を削除してベクトル^x(k)を書き込んで更新する。事前出力信号算出部44は、算出した行列T(k)と、サンプリング時刻kとを補助行列算出部45に出力する(ステップS4)。
補助行列算出部45は、事前出力信号算出部44が出力する行列T(k)を取り込む。補助行列算出部45は、事前出力信号算出部44から受けたサンプリング時刻kに基づいて、第1データベース部31から事前誤差共分散行列P(k)を読み出す。補助行列算出部45は、第2データベース部32から観測雑音共分散行列Rを読み出す。補助行列算出部45は、取り込んだ行列T(k)と、読み出した事前誤差共分散行列P(k)及び観測雑音共分散行列Rとに基づいて、式(31),(32),(33)の演算を行って補助行列A(k),B(k),C(k)を算出する。
補助行列算出部45は、算出した補助行列A(k),B(k),C(k)を第3データベース部33に書き込んで更新する。第3データベース部33にサンプリング時刻k-1の補助行列A(k-1),B(k-1),C(k-1)が書き込まれている場合、補助行列算出部45は、補助行列A(k-1),B(k-1),C(k-1)を削除して補助行列A(k),B(k),C(k)を書き込んで更新する。補助行列算出部45は、サンプリング時刻kをカルマンゲイン更新部46に出力する(ステップS5)。
カルマンゲイン更新部46は、補助行列算出部45からサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第3データベース部33から補助行列A(k),C(k)を読み出す。カルマンゲイン更新部46は、読み出した補助行列A(k),C(k)に基づいて、式(34)の演算を行ってカルマンゲイン行列G(k)を算出する。カルマンゲイン更新部46は、算出したカルマンゲイン行列G(k)を第3データベース部33に書き込んで更新する。第3データベース部33にサンプリング時刻k-1のカルマンゲイン行列G(k-1)が書き込まれている場合、カルマンゲイン更新部46は、カルマンゲイン行列G(k-1)を削除してカルマンゲイン行列G(k)を書き込んで更新する。カルマンゲイン更新部46は、サンプリング時刻kを事後状態推定値更新部47に出力する(ステップS6)。
事後状態推定値更新部47は、カルマンゲイン更新部46からサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第3データベース部33からカルマンゲイン行列G(k)と、事前出力信号であるベクトル^x(k)とを読み出す。事後状態推定値更新部47は、第1データベース部31から事前状態推定値であるベクトル^φ(k)を読み出す。事後状態推定値更新部47は、事前出力信号であるベクトル^x(k)に対して所定の信号変調方式にしたがった仮判定を行うことにより仮判定値ベクトルxHD(k)を算出する。
事後状態推定値更新部47は、算出した仮判定値ベクトルxHD(k)と、読み出した事前状態推定値であるベクトル^φ(k)、カルマンゲイン行列G(k)及び事前出力信号であるベクトル^x(k)とに基づいて、式(28)の演算を行って事後状態推定値であるベクトル^φ(k)を算出する。事後状態推定値更新部47は、算出した事後状態推定値であるベクトル^φ(k)を第1データベース部31に書き込んで更新する。第1データベース部31にサンプリング時刻k-1のベクトル^φ(k-1)が書き込まれている場合、事後状態推定値更新部47は、ベクトル^φ(k-1)を削除してベクトル^φ(k)を書き込んで更新する。事後状態推定値更新部47は、サンプリング時刻kを事後誤差共分散更新部48に出力する(ステップS7)。
事後誤差共分散更新部48は、事後状態推定値更新部47からサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第3データベース部33からカルマンゲイン行列G(k)と、補助行列A(k)とを読み出す。事後誤差共分散更新部48は、第1データベース部31から事後誤差共分散行列P(k)を読み出す。事後誤差共分散更新部48は、読み出したカルマンゲイン行列G(k)と、補助行列A(k)と、事前誤差共分散行列P(k)とに基づいて、式(35)の演算を行って事後誤差共分散行列P(k)を算出する。事後誤差共分散更新部48は、算出した事後誤差共分散行列P(k)を第1データベース部31に書き込んで更新する。第1データベース部31にサンプリング時刻k-1の事後誤差共分散行列P(k-1)が書き込まれている場合、事後誤差共分散更新部48は、事後誤差共分散行列P(k-1)を削除して事後誤差共分散行列P(k)を書き込んで更新する。事後誤差共分散更新部48は、サンプリング時刻kを出力信号算出部49に出力する(ステップS9)。
出力信号算出部49は、事後誤差共分散更新部48からサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第1データベース部31から事後状態推定値であるベクトル^φ(k)を読み出す。出力信号算出部49は、読み出した事後状態推定値であるベクトル^φ(k)に基づいて、式(30)の演算を行って送信信号ベクトルxの推定系列であるベクトル^x(k)を算出し、算出したベクトル^x(k)の成分である第1データ推定系列、第2データ推定系列、…、第Ntデータ推定系列を外部に出力する。
出力信号算出部49は、第3データベース部33を参照し、現在のサンプリング時刻kに1を加えたサンプリング時刻k+1に対応する受信信号ベクトルy(k+1)を第3データベース部33が記憶しているか否かを判定する(ステップS10)。出力信号算出部49は、サンプリング時刻k+1に対応する受信信号ベクトルy(k+1)を第3データベース部33が記憶していると判定した場合(ステップS10、Yes)、サンプリング時刻kを時刻更新部41に出力する。時刻更新部41は、サンプリング時刻kに1を加えた値を新たなサンプリング時刻kとし、新たなサンプリング時刻kを事前状態推定値更新部42に出力する(ステップS11)。その後、ステップS2以降の処理が行われる。
一方、出力信号算出部49は、サンプリング時刻k+1に対応する受信信号ベクトルy(k+1)を第3データベース部33が記憶していないと判定した場合(ステップS10、No)、処理を終了する。
上記の第1の実施形態の通信システム100において、伝送路3は、マルチモードの光ファイバであり、複数の空間モードにより複数の光信号を伝送する。送信装置1は、複数の送信部11-1~11-Ntを備えており、複数の送信部11-1~11-Ntの各々は、各々に与えられる送信データ系列に基づいて、各々が有する搬送波生成部13-1~13-Ntが出力する搬送波の連続光を変調して送信光信号を生成し、生成した送信光信号を伝送路3に送出する。受信装置2は、複数の受信部21-1~21-Nrを備えており、複数の受信部21-1~21-Nrは、伝送路3が複数の空間モードにより伝送する複数の光信号を受信し、受信した受信光信号を、各々が有する局部発振部23-1~23-Nrが出力する局部発振信号としての連続光に基づいて復調して受信データ系列を生成する。信号検出部24は、重み行列算出部26と、キャリア位相回復部28とを備えており、重み行列算出部26は、受信データ系列に対してMIMO線形受信を行う際に用いる重み行列Wを算出する。キャリア位相回復部28は、複数の搬送波生成部13-1~13-Ntと、複数の局部発振部23-1~23-Nrとが非同期であるために生じる妨害成分である複数の搬送波生成部13-1~13-Nt及び複数の局部発振部23-1~23-Ntの各々が有する光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分を状態情報とし、事後の状態情報を、事前の状態情報に基づいて算出する予め定められる状態方程式と、送信データ系列を観測情報とし、状態方程式により算出する事後の状態情報と、受信データ系列と、重み行列とに基づいて、事後の状態情報が示す状態における観測情報を算出する予め定められる観測方程式とに対して、カルマンフィルタアルゴリズムを適用して妨害成分の事後状態推定値を算出し、算出した事後状態推定値に基づいて、妨害成分である複数の搬送波生成部13-1~13-Nt及び複数の局部発振部23-1~23-Ntの各々が有する光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分を除去した送信データ系列の推定系列を算出する。
これにより、複数信号を同一伝送媒体の複数のモードで伝送する際、送信装置1が生成する搬送波と、受信装置2が生成する局部発振信号とが非同期であることにより生じる妨害成分である複数の搬送波生成部13-1~13-Nt及び複数の局部発振部23-1~23-Ntの各々が有する光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分を除去することができる。そのため、複数信号を同一伝送媒体の複数のモードで伝送するコヒーレント伝送において、送信装置1の搬送波生成部13-1~13-Ntの各々が有する光源と、受信装置2の局部発振部23-1~23-Nrの各々が有する光源において、非同期の光源を適用することが可能になる。言い換えると、送信装置1が生成する搬送波と、受信装置2が生成する局部発振信号とが非同期である状態で複数信号を同一伝送媒体の複数のモードで伝送することが可能になる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図5は、第2の実施形態の通信システム100aの構成を示すブロック図である。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。通信システム100aは、送信装置1、受信装置2a及び送信装置1と受信装置2aの間を接続する伝送路3を備える。
受信装置2aは、光分岐部20、Nr個の受信部21-1~21-Nr及び信号検出部24aを備える。信号検出部24aは、デジタル信号処理部25、重み行列算出部26、記憶部27a及びキャリア位相回復部28aを備える。記憶部27aは、図6に示すように、第1データベース部31a、第2データベース部32a及び第3データベース部33aを備える。
第1データベース部31aは、事前状態推定値、事後状態推定値、事前誤差共分散行列P 、事後誤差共分散行列Pを記憶する。事前状態推定値と事後状態推定値は、ベクトルであり、それぞれ次式(37)、(38)として表される。
Figure 0007568951000037
Figure 0007568951000038
以下、本文では、式(37)の事前状態推定値を表す記号を、ベクトル^ωと記載し、式(38)の事後状態推定値を表す記号を、ベクトル^ωと記載する。
第2データベース部32aは、システム雑音共分散行列Qと、観測雑音共分散行列Rとを記憶する。
第3データベース部33aは、重み行列算出部出力データ、ベクトル^xである事前出力信号、カルマンゲイン行列G、補助行列A、補助行列B及び補助行列Cを記憶する。重み行列算出部出力データは、第1の実施形態と同様に、重み行列算出部26によって書き込まれるデータであり、重み行列Wと、受信信号ベクトルyとが含まれる。なお、第1の実施形態の図2と同様に、図6においても、サンプリング時刻を示す変数kを付さずに示している。
キャリア位相回復部28aは、搬送波生成部13-1~13-Ntの位相揺らぎに起因する妨害成分と、局部発振部23-1~23-Nrの位相揺らぎに起因する妨害成分とを推定する。キャリア位相回復部28aは、検出した2つの妨害成分を除去した送信信号ベクトルxの推定系列を算出する。
第2の実施形態では、キャリア位相回復部28aは、2つの妨害成分として、搬送波生成部13-1~13-Ntの各々の光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分及び周波数オフセット成分という妨害成分と、局部発振部23-1~23-Nrの各々の光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分及び周波数オフセット成分という妨害成分とを推定する。
ここで、搬送波生成部13-1~13-Ntの各々の光源の周波数揺らぎに起因する周波数オフセット成分をψ ,ψ ,…,ψNt とし、局部発振部23-1~23-Nrの各々の光源の周波数揺らぎに起因する周波数オフセット成分を、ψ ,ψ ,…,ψNr とする。ここで、搬送波生成部13-1~13-Ntの各々の光源の周波数揺らぎに起因する周波数オフセット成分ψ ,ψ ,…,ψNt を成分とする列ベクトルである周波数オフセット成分ベクトルψを次式(39)として定義する。
Figure 0007568951000039
局部発振部23-1~23-Nrの各々の光源の周波数揺らぎに起因する周波数オフセット成分、ψ ,ψ ,…,ψNr を成分とする列ベクトルである周波数オフセット成分ベクトルψを次式(40)として定義する。
Figure 0007568951000040
キャリア位相回復部28aが推定する対象である位相雑音成分ベクトルφ,φと、周波数オフセット成分ベクトルψ,ψとを含むベクトルωを次式(41)により定義する。
Figure 0007568951000041
この場合、キャリア位相回復部28aが推定するベクトルωに関する状態方程式は、次式(42)として表すことができる。
Figure 0007568951000042
式(42)において、行列Mは、次式(43)として表され、ベクトルν(k)は、次式(44)として表される。
Figure 0007568951000043
Figure 0007568951000044
式(43),(44)において、次式(45)の記号は、m行n列の全成分を0とする行列を意味している。
Figure 0007568951000045
次式(46)の記号は、m行n列の単位行列のうち第(i,i)成分を0にした行列を意味している。
Figure 0007568951000046
式(44)の右辺に示すベクトルv(k)は、第1の実施形態において式(20)によって示したベクトルである。
第2の実施形態における観測方程式は、第1の実施形態と同様に、式(18)に示す式であり、式(18)により示される観測方程式と、式(42)により示される状態方程式とに基づくカルマンフィルタアルゴリズムは、1a.事前状態推定値更新、2a.事前誤算共分散更新、3a.カルマンゲイン更新、4a.事後状態推定値更新、5a.事後誤差共分散更新、6a.信号出力値という一連の演算を繰り返すアルゴリズムになる。「1a.事前状態推定値更新」の演算は、式(47)によって表される。
Figure 0007568951000047
上記の式(47)において、ベクトル^ω(k)は、式(37)に示した事前状態推定値であってサンプリング時刻が(k)の場合の事前状態推定値であり、ベクトル^ω(k-1)は、式(38)に示した事後状態推定値であってサンプリング時刻が(k-1)の場合の事後状態推定値である。「2a.事前誤差共分散更新」の演算は、次式(48)によって表される。
Figure 0007568951000048
上記の式(48)において、行列P(k)は、サンプリング時刻が(k)の場合の事前誤差共分散行列であり、行列P(k-1)は、サンプリング時刻が(k-1)の場合の事後誤差共分散行列である、行列Qは、次式(49)により定義されるシステム雑音共分散行列であり、次式(49)のE[・]は、期待値演算を示す記号である。
Figure 0007568951000049
「3a.カルマンゲイン更新」の演算は、次式(50)として表される。
Figure 0007568951000050
上記の式(50)において、行列G(k)は、第2の実施形態におけるカルマンゲイン行列であり、行列Rは、第1の実施形態と同様に、式(25)によって表される観測雑音共分散行列である。
行列Tは、次式(51)により定義される行列である。
Figure 0007568951000051
式(51)に示す行列Tは、第1の実施形態において、式(26)に示した行列である。なお、式(51)では、行列T(k)を、式の記載の見易さの観点からサンプリング時刻を示す変数kを省略して表記しているが、行列T(k)の成分は、サンプリング時刻ごとに変化する値であり、サンプリング時刻を考慮した正式な表記は、次式(52)である。
Figure 0007568951000052
「4a.事後状態推定値更新」の演算は、次式(53)により表される。
Figure 0007568951000053
「5a.事後誤差共分散更新」の演算は、次式(54)により表される。
Figure 0007568951000054
「6a.信号出力値」の演算は、次式(55)により表される。式(55)において、式(17)に示した非線形関数h(・)に、事後状態推定値であるベクトル^ω(k)を代入する式を示しているが、非線形関数h(・)の演算は、第1の実施形態の事後状態推定値であるベクトル^φ(k)を対象とする関数である。そのため、式(55)で示す演算は、実質的には、非線形関数h(・)に、ベクトル^ω(k)に含まれるベクトル^φ(k)を代入する演算であり、式(55)に示す関係が成り立つ。式(55)のベクトル^x(k)が、第2の実施形態における送信信号ベクトルxの推定系列になる。
Figure 0007568951000055
図7は、上記した第2の実施形態のカルマンフィルタアルゴリズムを実行するキャリア位相回復部28aが備える機能部と、各々の機能部が、記憶部27aが備える第1データベース部31a、第2データベース部32a及び第3データベース部33aのいずれを利用するかを示したブロック図である。キャリア位相回復部28aは、時刻更新部41、事前状態推定値更新部42a、事前誤差共分散更新部43a、事前出力信号算出部44a、補助行列算出部45a、カルマンゲイン更新部46a、事後状態推定値更新部47a、事後誤差共分散更新部48a及び出力信号算出部49aを備える。
事前状態推定値更新部42aは、上記した「1a.事前状態推定値更新」の演算を行う。事前誤差共分散更新部43aは、上記した「2.事前誤算共分散更新」の演算を行う。事前出力信号算出部44aは、上記した「4a.事後状態推定値更新」の演算において用いられるサンプリング時刻kにおける事前出力信号ベクトル^x(k)と、上記した「3a.カルマンゲイン更新」の演算において用いられるサンプリング時刻kにおける行列T(k)とを算出する。
補助行列算出部45aは、上記した「3a.カルマンゲイン更新」と「5a.事後誤差共分散更新」の演算において用いられる次式(56)~式(58)により表される3つの補助行列A(k),B(k),C(k)を算出する。
Figure 0007568951000056
Figure 0007568951000057
Figure 0007568951000058
カルマンゲイン更新部46aは、上記の「3a.カルマンゲイン更新」の演算を行う。ただし、式(50)に示した式に替えて、補助行列算出部45aが算出する補助行列A(k)と、補助行列C(k)とを用いて、次式(59)の演算を行ってカルマンゲイン行列G(k)を算出する。
Figure 0007568951000059
事後状態推定値更新部47aは、上記した「4a.事後状態推定値更新」の演算を行う。事後誤差共分散更新部48aは、上記した「5a.事後誤差共分散更新」の演算を行う。ただし、式(54)に示した式に替えて、補助行列算出部45aが算出する補助行列A(k)を用いた式(60)の演算を行って事後誤差共分散行列P(k)を算出する。
Figure 0007568951000060
出力信号算出部49aは、上記した「6a.信号出力値」の演算を行う。
(第2の実施形態のキャリア位相回復部による処理)
次に、図7、図8を参照しつつ、キャリア位相回復部28aによる処理について説明する。図8は、キャリア位相回復部28aによる処理の流れを示すフローチャートである。
以下に示す処理の前提として、第1の実施形態と同様に、重み行列算出部26は、デジタル信号処理部25が出力する受信信号ベクトルyを取り込むごとに、取り込んだ受信信号ベクトルyに対してMIMO線形受信を行う場合に適用する重み行列Wと、取り込んだ受信信号ベクトルyとに、サンプリング時刻を示す変数kを1から順に1ずつ増やして、W(k)、y(k)として第3データベース部33aに書き込む処理を行う。言い換えると、第3データベース部33aは、重み行列算出部出力データとして[W(1),y(1)],[W(2),y(2)],…という時系列のデータを記憶することになる。なお、重み行列算出部26は、例えば、送信装置1が周期的に送信信号ベクトルxに含めて送信する重み行列算出用のパイロットシンボルを予め内部の記憶領域に記憶させており、送信装置1が重み行列算出用のパイロットシンボルを送信した際に、デジタル信号処理部25が出力する受信信号ベクトルと、内部の記憶領域が記憶する重み行列算出用のパイロットシンボルとに基づいて、新たな重み行列Wの算出を行っているものとする。
第1データベース部31aには、事後状態推定値の初期値としてベクトル^ω(0)が予め書き込まれており、事後誤差共分散行列の初期値として、事後誤差共分散行列P(0)が予め書き込まれているものとする。第2データベース部32aには、システム雑音共分散行列Qが、式(44),(49)に基づいて予め算出されて書き込まれており、観測雑音共分散行列Rが、式(14),(25)に基づいて予め算出されて書き込まれているものとする。事前状態推定値更新部42aと事前誤差共分散更新部43aの各々は、内部の記憶領域に式(43)に示した行列Mを予め記憶させている。
時刻更新部41は、サンプリング時刻kの初期値を「1」とし、初期値のサンプリング時刻(k=1)を事前状態推定値更新部42aに出力する(ステップSa1)。
事前状態推定値更新部42aは、時刻更新部41からサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第1データベース部31aから事後状態推定値であるベクトル^ω(k-1)を読み出す。事前状態推定値更新部42aは、読み出した事後状態推定値であるベクトル^ω(k-1)と、内部の記憶領域が記憶する行列Mとに基づいて、式(47)の演算を行って事前状態推定値であるベクトル^ω(k)を算出する。事前状態推定値更新部42aは、算出した事前状態推定値であるベクトル^ω(k)を第1データベース部31aに書き込んで更新する。第1データベース部31aにサンプリング時刻k-1のベクトル^ω(k-1)が書き込まれている場合、事前状態推定値更新部42aは、ベクトル^ω(k-1)を削除してベクトル^ω(k)を書き込んで更新する。事前状態推定値更新部42aは、サンプリング時刻kを事前誤差共分散更新部43aに出力する(ステップSa2)。
事前誤差共分散更新部43aは、事前状態推定値更新部42aからサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第2データベース部32aからシステム雑音共分散行列Qを読み出す。事前誤差共分散更新部43aは、第1データベース部31aから事後誤差共分散行列P(k-1)を読み出す。事前誤差共分散更新部43aは、読み出したシステム雑音共分散行列Qと、事後誤差共分散行列P(k-1)と、内部の記憶領域が記憶する行列Mとに基づいて、式(48)の演算を行って事前誤差共分散行列P (k)を算出する。事前誤差共分散更新部43aは、算出した事前誤差共分散行列P (k)を第1データベース部31aに書き込んで更新する。第1データベース部31aにサンプリング時刻k-1の事前誤差共分散行列P (k-1)が書き込まれている場合、事前誤差共分散更新部43aは、事前誤差共分散行列P (k-1)を削除して事前誤差共分散行列P (k)を書き込んで更新する。事前誤差共分散更新部43aは、サンプリング時刻kを事前出力信号算出部44aに出力する(ステップSa3)。
事前出力信号算出部44aは、事前誤差共分散更新部43aからサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第1データベース部31aから事前状態推定値であるベクトル^ω(k)を読み出す。事前出力信号算出部44aは、第3データベース部33aから重み行列W(k)と、受信信号ベクトルy(k)を読み出す。事前出力信号算出部44aは、読み出した事前状態推定値であるベクトル^ω(k)に含まれるベクトル^φ(k)と、重み行列W(k)と、受信信号ベクトルy(k)とに基づいて、式(36)の演算を行って事前出力信号であるベクトル^x(k)を算出する。
事前出力信号算出部44aは、算出した事前出力信号であるベクトル^x(k)と、事前状態推定値であるベクトル^ω(k)と、重み行列W(k)と、受信信号ベクトルy(k)とに基づいて、式(26),(27)に示す行列T(k)を算出する。事前出力信号算出部44aは、算出した行列T(k)に基づいて、式(51),(52)に示す行列T(k)を算出する。事前出力信号算出部44aは、算出した事前出力信号であるベクトル^x(k)を第3データベース部33aに書き込んで更新する。第3データベース部33aにサンプリング時刻k-1のベクトル^x(k-1)が書き込まれている場合、事前出力信号算出部44aは、ベクトル^x(k-1)を削除してベクトル^x(k)を書き込んで更新する。事前出力信号算出部44aは、算出した行列T(k)と、サンプリング時刻kとを補助行列算出部45aに出力する(ステップSa4)。
補助行列算出部45aは、事前出力信号算出部44aが出力する行列T(k)を取り込む。補助行列算出部45aは、事前出力信号算出部44aから受けたサンプリング時刻kに基づいて、第1データベース部31aから事前誤差共分散行列P (k)を読み出す。補助行列算出部45aは、第2データベース部32aから観測雑音共分散行列Rを読み出す。補助行列算出部45は、取り込んだ行列T(k)と、読み出した事前誤差共分散行列P (k)及び観測雑音共分散行列Rとに基づいて、式(56),(57),(58)の演算を行って補助行列A(k),B(k),C(k)を算出する。
補助行列算出部45aは、算出した補助行列A(k),B(k),C(k)を第3データベース部33aに書き込んで更新する。第3データベース部33aにサンプリング時刻k-1の補助行列A(k-1),B(k-1),C(k-1)が書き込まれている場合、補助行列算出部45aは、補助行列A(k-1),B(k-1),C(k-1)を削除して補助行列A(k),B(k),C(k)を書き込んで更新する。補助行列算出部45aは、サンプリング時刻kをカルマンゲイン更新部46aに出力する(ステップSa5)。
カルマンゲイン更新部46aは、補助行列算出部45aからサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第3データベース部33aから補助行列A(k),C(k)を読み出す。カルマンゲイン更新部46aは、読み出した補助行列A(k),C(k)に基づいて、式(59)の演算を行ってカルマンゲイン行列G(k)を算出する。カルマンゲイン更新部46aは、算出したカルマンゲイン行列G(k)を第3データベース部33aに書き込んで更新する。第3データベース部33aにサンプリング時刻k-1のカルマンゲイン行列G(k-1)が書き込まれている場合、カルマンゲイン更新部46aは、カルマンゲイン行列G(k-1)を削除してカルマンゲイン行列G(k)を書き込んで更新する。カルマンゲイン更新部46aは、サンプリング時刻kを事後状態推定値更新部47aに出力する(ステップSa6)。
事後状態推定値更新部47aは、カルマンゲイン更新部46aからサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第3データベース部33aからカルマンゲイン行列G(k)と、事前出力信号であるベクトル^x(k)とを読み出す。事後状態推定値更新部47aは、第1データベース部31aから事前状態推定値であるベクトル^ω(k)を読み出す。事後状態推定値更新部47aは、事前出力信号であるベクトル^x(k)に対して所定の信号変調方式にしたがった仮判定を行うことにより仮判定値ベクトルxHD(k)を算出する。
事後状態推定値更新部47aは、算出した仮判定値ベクトルxHD(k)と、読み出した事前状態推定値であるベクトル^ω(k)、カルマンゲイン行列G(k)及び事前出力信号であるベクトル^x(k)とに基づいて、式(53)の演算を行って事後状態推定値であるベクトル^ω(k)を算出する。事後状態推定値更新部47aは、算出した事後状態推定値であるベクトル^ω(k)を第1データベース部31aに書き込んで更新する。第1データベース部31aにサンプリング時刻k-1のベクトル^ω(k-1)が書き込まれている場合、事後状態推定値更新部47aは、ベクトル^ω(k-1)を削除してベクトル^ω(k)を書き込んで更新する。事後状態推定値更新部47aは、サンプリング時刻kを事後誤差共分散更新部48aに出力する(ステップSa7)。
事後誤差共分散更新部48aは、事後状態推定値更新部47aからサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第3データベース部33aからカルマンゲイン行列G(k)と、補助行列A(k)とを読み出す。事後誤差共分散更新部48aは、第1データベース部31aから事後誤差共分散行列P (k)を読み出す。事後誤差共分散更新部48aは、読み出したカルマンゲイン行列G(k)と、補助行列A(k)と、事前誤差共分散行列P (k)とに基づいて、式(60)の演算を行って事後誤差共分散行列P(k)を算出する。事後誤差共分散更新部48は、算出した事後誤差共分散行列P(k)を第1データベース部31aに書き込んで更新する。第1データベース部31aにサンプリング時刻k-1の事後誤差共分散行列P(k-1)が書き込まれている場合、事後誤差共分散更新部48aは、事後誤差共分散行列P(k-1)を削除して事後誤差共分散行列P(k)を書き込んで更新する。事後誤差共分散更新部48aは、サンプリング時刻kを出力信号算出部49に出力する(ステップSa9)。
出力信号算出部49aは、事後誤差共分散更新部48aからサンプリング時刻kを受けると、受けたサンプリング時刻kに基づいて、第1データベース部31aから事後状態推定値であるベクトル^ω(k)を読み出す。出力信号算出部49aは、読み出した事後状態推定値であるベクトル^ω(k)に基づいて、式(55)の演算を行って送信信号ベクトルxの推定系列であるベクトル^x(k)を算出し、算出したベクトル^x(k)の成分である第1データ推定系列、第2データ推定系列、…、第Ntデータ推定系列を外部に出力する。
出力信号算出部49aは、第3データベース部33aを参照し、現在のサンプリング時刻kに1を加えたサンプリング時刻k+1に対応する受信信号ベクトルy(k+1)を第3データベース部33aが記憶しているか否かを判定する(ステップSa10)。出力信号算出部49aは、サンプリング時刻k+1に対応する受信信号ベクトルy(k+1)を第3データベース部33が記憶していると判定した場合(ステップSa10、Yes)、サンプリング時刻kを時刻更新部41に出力する。時刻更新部41は、サンプリング時刻kに1を加えた値を新たなサンプリング時刻kとし、新たなサンプリング時刻kを事前状態推定値更新部42aに出力する(ステップSa11)。その後、ステップSa2以降の処理が行われる。
一方、出力信号算出部49aは、サンプリング時刻k+1に対応する受信信号ベクトルy(k+1)を第3データベース部33aが記憶していないと判定した場合(ステップSa10、No)、処理を終了する。
上記の第2の実施形態では、除外する妨害成分として、第1の実施形態の妨害成分である複数の搬送波生成部13-1~13-Nt及び複数の局部発振部23-1~23-Ntの各々が有する光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分に加えて、更に、複数の搬送波生成部13-1~13-Nt及び複数の局部発振部23-1~23-Ntの各々が有する光源の周波数揺らぎに起因する周波数オフセット成分を含めている。これにより、複数の搬送波生成部13-1~13-Nt及び複数の局部発振部23-1~23-Ntの各々が有する光源の位相揺らぎに起因する位相雑音成分と共に、複数の搬送波生成部13-1~13-Nt及び複数の局部発振部23-1~23-Ntの各々が有する光源の周波数揺らぎに起因する周波数オフセット成分を除去することが可能になる。そのため、複数信号を同一伝送媒体の複数のモードで伝送するコヒーレント伝送において、送信装置1の搬送波生成部13-1~13-Ntの各々が有する光源と、受信装置2の局部発振部23-1~23-Nrの各々が有する光源について非同期光源を適用することが可能になる。言い換えると、送信装置1が生成する搬送波と、受信装置2aが生成する局部発振信号とが非同期である状態で複数信号を同一伝送媒体の複数のモードで伝送することが可能になる。更に、第2の実施形態の通信システム100aでは、複数の搬送波生成部13-1~13-Nt及び複数の局部発振部23-1~23-Ntの各々が有する光源の周波数揺らぎに起因する周波数オフセット成分を除去するため、第1の通信システム100よりも高い精度で送信信号ベクトルの推定系列を推定することが可能となる
なお、上記の第1及び第2の実施形態では、デジタル信号処理部25がデジタル信号処理を行って出力するNr個の受信データ系列を成分とするベクトルを受信信号ベクトルyとしている。これに対して、デジタル信号処理部25を備えずに、重み行列算出部26が、受信処理部22-1~22-Nrが出力するNr個の受信データ系列を直接取り込むようにしてもよい。この場合、受信処理部22-1~22-Nrが出力するNr個の受信データ系列が受信信号ベクトルyとなる。
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、カルマンゲイン更新部46、46aは、式(28)及び式(53)において、事前信号推定値ベクトル^x(k)に対して所定の信号変調方式にしたがった仮判定を行うことにより得られる仮判定値ベクトルxHD(k)を用いていた。そのため、事前信号推定値ベクトル^x(k)の精度によっては、仮判定値ベクトルxHD(k)は誤りを含むことがあり、キャリア位相回復の性能を劣化させることになる。第3の実施形態では、仮判定値ベクトルxHD(k)に替えて予め定められるパイロットシンボルを用いて、キャリア位相回復の性能を劣化させないようにする構成を備える。
図9は、第3の実施形態による通信システム100bの構成を示すブロック図である。第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。通信システム100bは、送信装置1b、伝送路3及び受信装置2bを備える。送信装置1bは、送信部11b-1~11b-Nt及び光結合部10を備える。送信部11b-1は、送信処理部12b-1及び搬送波生成部13-1を備え、同様に、送信部11b-2~11b-Ntの各々は、符号の枝番号に対応する送信処理部12b-2~12b-Nt及び搬送波生成部13-2~13-Ntを備える。
送信処理部12b-1~12b-Ntは、第1の実施形態の送信処理部12-1~12-Ntが備える構成に加えて、各々が取り込む第1データ系列~第Ntデータ系列から生成する信号フレームの先頭等の予め定められるパイロットシンボルを周期的に挿入する。
受信装置2bは、光分岐部20、受信部21-1~21-Nr及び信号検出部24bを備える。信号検出部24bは、デジタル信号処理部25、重み行列算出部26、記憶部27及びキャリア位相回復部28bを備える。
キャリア位相回復部28bは、図10に示すように、第1の実施形態のキャリア位相回復部28が備えるカルマンゲイン更新部46に替えてカルマンゲイン更新部46bを備える他は、第1の実施形態のキャリア位相回復部28と同一の構成を有する。
キャリア位相回復部28bは、内部の記憶領域に、送信装置1bが挿入する予め定められるパイロットシンボルと、パイロットシンボルが挿入される周期を予め記憶する。ここで、パイロットシンボルは、送信信号ベクトルxと同様にNt個のデータ系列を含むベクトルである。
カルマンゲイン更新部46bは、式(28)の演算の一部、すなわち送信処理部12b-1~12b-Ntが周期的に挿入するパイロットシンボルが受信信号ベクトルy(k)に含まれるサンプリング時刻kのタイミングにおいて行う式(28)の演算において、仮判定値ベクトルxHD(k)に替えて、内部の記憶領域が予め記憶するパイロットシンボルを用いて演算を行う。
これにより、第3の実施形態では、仮判定値ベクトルxHD(k)の一部を、送信装置1bと、受信装置2bとにおいて既知であるパイロットシンボルに置き換えて演算を行うことから、事前信号推定値ベクトル^x(k)の精度が低い場合であっても、キャリア位相回復の性能を劣化させないようにすることが可能となる。
なお、第3の実施形態の構成は、第1の実施形態にパイロットシンボルを利用する構成を加えているが、第2の実施形態の通信システム100aに対しても同様にパイロットシンボルを利用する構成を加えることができ、それにより、式(53)の演算において、仮判定値ベクトルxHD(k)の一部に替えて、パイロットシンボルを適用することができ、事前信号推定値であるベクトル^x(k)の精度が低い場合であっても、キャリア位相回復の性能を劣化させないようにすることが可能となる。
上記の第3の実施形態では、送信処理部12b-1~12b-Ntは、信号フレームの先頭等の予め定められるパイロットシンボルを周期的に挿入するとしている。これに対して、数百シンボルごとにパイロットシンボルを周期的に挿入してもよいし、通信状況に応じてパイロットシンボルを挿入する周期を適応的かつ可変的に変えるようにしてもよい。ただし、パイロットシンボルを挿入する周期を可変にする場合、受信装置2bのキャリア位相回復部28bのカルマンゲイン更新部46bに対して、パイロットシンボルが挿入されるタイミングを通知する手段が必要となる。第3の実施形態のパイロットシンボルとして、第1及び第2の実施形態において、重み行列算出部26が、重み行列Wの算出に用いる重み行列算出用のパイロットシンボルを用いるようにしてもよい。
上記の第3の実施形態の構成により、送信装置1bがパイロットシンボルを送信するタイミングにおいて、式(28)の演算を行う際に、ベクトルxHD(k)に替えて、受信装置2bにおいて予め記憶するパイロットシンボルを用いて事後状態推定値であるベクトル^φ(k)を算出することができる。そのため、事前信号推定値であるベクトル^x(k)の精度が低い場合であっても、キャリア位相回復の性能を劣化させないようにすることが可能になり、第1及び第2の実施形態の構成に比べて、より精度よく妨害成分を除去した送信データ系列の推定系列を算出することが可能になる。
(シミュレーション結果)
図11は、2つの独立した送信データ系列の送信に対して、Nt=Nr=2である第1の実施形態の通信システム100を適用してモード多重伝送のシミュレーションを行った結果を示すグラフである。送信装置1の送信部11-1,11-2の送信処理部12-1,12-2は、各々が取り込む2つの独立した送信データ系列である第1データ系列のビット列及び第2データ系列のビット列を、信号変調速度10GBaudの16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)信号として変調して光信号を生成する。光結合部10は、送信処理部12-1,12-2が生成した2つの光信号を結合して、伝送路3に送出する。伝送路3において、2つの独立した送信データ系列に対応する光信号が等しいパワーで混合する。
なお、シミュレーションにおいて、伝送路3を伝搬した後の信号対雑音比γは、17dBであると仮定している。送信装置1が備える2つの搬送波生成部13-1,13-2と、受信装置2が備える2つの局部発振部23-1,23-2の線幅は、100kHzであると仮定している。さらに、第1データ系列の変調に用いられる搬送波生成部13-1に起因するデジタル信号段での位相φ を参照角に定めてφ =0としている。
図11に示す6つのグラフにおいて、横軸は、シンボル番号であり、縦軸は、位相雑音を示している。位相雑音の単位は[rad]である。図11において、左側の列のグラフ(A1),(B1),(C1)の各々は、搬送波生成部13-2、局部発振部23-1、局部発振部23-2における実際に発生した位相雑音量を示している。これに対して、右側の列のグラフ(A2),(B2),(C2)は、キャリア位相回復部28が搬送波生成部13-2、局部発振部23-1、局部発振部23-2の各々に対して推定した位相雑音量である。搬送波生成部13-2に対応するグラフ(A1)とグラフ(A2)と、局部発振部23-1に対応するグラフ(B1)とグラフ(B2)と、局部発振部23-2に対応するグラフ(C1)とグラフ(C2)の各々を比較すると分かるように、キャリア位相回復部28は、搬送波生成部13-2、局部発振部23-1、局部発振部23-2に起因するシンボルごと、すなわちサンプリング時刻ごとの位相雑音量を精度よく推定していることが分かる。
図12は、上記したシミュレーションの条件下で、第1の実施形態の通信システム100と、第3の実施形態の通信システム100bとにおいて、更に、搬送波生成部13-1,13-2及び局部発振部23-1,23-2の各光源の線幅を変化させて位相雑音の推定を行った場合の結果を示すグラフである。図12に示すグラフにおいて、縦軸は、BER(Bit Error Rate)であり、横軸は、線幅シンボル時間積である。線幅シンボル時間積とは、例えば、線幅シンボル時間積の値が、10-4である場合、光源の線幅1MHzに対応する。なお、第3の実施形態の通信システム100bにおいて、送信処理部12b-1,12b-2は、10シンボルに1回の周期でパイロットシンボルの挿入を行っている。
図12のグラフから分かるように、第1の実施形態の通信システム100のキャリア位相回復部28は、線幅シンボル時間積が10-4程度まで精度よく位相雑音を推定できていることが分かる。これに対して、第3の実施形態の通信システム100bのキャリア位相回復部28bは、パイロットシンボルの挿入により、線幅シンボル時間積が10-4よりも大きくなっても第1の実施形態のキャリア位相回復部28よりも低いBERで位相雑音の推定ができていることが分かる。
なお、上記の第1及び第2の実施形態において、重み行列算出部26は、例えば、重み行列算出用のパイロットシンボルを用いて新たな重み行列Wの算出を行うとしている。これに対して、第1の実施形態の場合には、キャリア位相回復部28の出力信号算出部49が、式(30)に基づいて算出するベクトル^x(k)を重み行列算出部26にフィードバックし、重み行列算出部26が、フィードバックされたベクトル^x(k)に基づいて新たな重み行列Wを算出するようにしてもよい。第2の実施形態の場合には、キャリア位相回復部28aの出力信号算出部49aが、式(55)に基づいて算出するベクトル^x(k)を重み行列算出部26にフィードバックし、重み行列算出部26が、フィードバックされたベクトル^x(k)に基づいて新たな重み行列Wを算出するようにしてもよい。
上記の第1から第3の実施形態の通信システム100,100a,100bは、空間多重光伝送システムを対象としているが、第1から第3の実施形態に示した構成は、空間多重光伝送システムに限定されるものではなく、無線通信システム、衛星通信システム、磁気記録媒体、チップ間通信などのあらゆる通信システムにおいて、MIMO型信号処理を行う場合に複数信号に重畳する妨害成分の除去に適用することが可能である。なお、無線によって伝送を行う通信システムの場合、伝送路3は、無線電波が伝搬する空間に対応することになる。搬送波生成部13-1~13-Ntは、無線電波の搬送波になる電気信号の搬送波を生成することになり、送信処理部12-1~12-Nt,12b-1~12b-Ntは、電気信号の搬送波を用いて送信データ系列を変調することになる。送信装置1,1bは、光結合部10を備えず、送信処理部12-1~12-Nt,12b-1~12b-Ntの各々に接続される複数の送信アンテナによって送信が行われることになる。局部発振部23-1~23-Nrは、復調に用いる電気信号の局部発振波を生成することになる。受信装置2,2a,2bは、光分岐部20を備えず、受信処理部22-1~22-Nrの各々に接続する複数の受信アンテナを用いて無線信号を受信し、受信した無線信号を電気信号の局部発振波によって復調することになる。
上述した第1から第3の実施形態における信号検出部24,24a,24bを単体の装置である信号検出装置として構成し、構成した信号検出装置を受信装置2,2a,2bが備えるようにしてもよいし、第1から第3の実施形態におけるキャリア位相回復部28,28a,28bを単体の装置であるキャリア位相回復装置として構成し、構成したキャリア位相回復装置を信号検出部24,24a,24bが備えるようにしてもよい。
信号検出部24,24a,24bを単体の装置である信号検出装置として構成した場合、信号検出装置をコンピュータとプログラムで実現するようにしてもよい。第1から第3の実施形態におけるキャリア位相回復部28,28a,28bを単体の装置であるキャリア位相回復装置として構成した場合、キャリア位相回復装置をコンピュータとプログラムで実現するようにしてもよい。その場合、これらのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。また、これらのプログラムをインターネット等のネットワークを通じて提供するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータ」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
MIMO型の通信処理を行う通信システムに適用できる。
100…通信システム、1…送信装置、2…受信装置、3…伝送路、10…光結合部、11-1~11-Nt…送信部、12-1~12-Nt…送信処理部、13-1~13-Nt…搬送波生成部、20…光分岐部、21-1~21-Nr…受信部、22-1~22-1Nr…受信処理部、23-1~23-Nr…局部発振部、24…信号検出部、25…デジタル信号処理部、26…重み行列算出部、27…記憶部27、28…キャリア位相回復部

Claims (8)

  1. 各々に与えられる送信データ系列に基づいて、各々が有する搬送波生成部が出力する搬送波を変調して送信信号を生成し、生成した前記送信信号を、複数の信号を伝送する伝送路に送出する複数の送信部を備える送信装置と、前記伝送路が伝送する複数の信号を受信し、受信した受信信号を、各々が有する局部発振部が出力する局部発振信号に基づいて復調して受信データ系列を生成する複数の受信部を備える受信装置とを備える通信システムにおける前記受信装置が備える信号検出装置であって、
    前記受信データ系列に対してMIMO線形受信を行う際に用いる重み行列を算出する重み行列算出部と、
    複数の前記搬送波生成部と、複数の前記局部発振部とが非同期であるために生じる複数の位相雑音成分を含む妨害成分を状態情報とし、事後の前記状態情報を、事前の前記状態情報に基づいて算出する予め定められる状態方程式と、前記送信データ系列を観測情報とし、前記状態方程式により算出する事後の前記状態情報と、前記受信データ系列と、前記重み行列とに基づいて、事後の前記状態情報が示す状態における前記観測情報を算出する予め定められる観測方程式とに対して、カルマンフィルタアルゴリズムを適用して前記妨害成分の事後状態推定値を算出し、算出した前記事後状態推定値に基づいて、前記妨害成分を除去した前記送信データ系列の推定系列を算出するキャリア位相回復部と、
    を備える信号検出装置。
  2. 前記妨害成分は、
    複数の前記搬送波生成部の位相揺らぎに起因する第1の位相雑音成分及び複数の前記局部発振部の位相揺らぎに起因する第2の位相雑音成分を含む成分である、
    請求項1に記載の信号検出装置。
  3. 前記妨害成分は、
    前記第1の位相雑音成分及び前記第2の位相雑音成分に加えて、複数の前記搬送波生成部の周波数揺らぎに起因する第1の周波数オフセット成分及び複数の前記局部発振部の周波数揺らぎに起因する第2の周波数オフセット成分を含む成分である、
    請求項2に記載の信号検出装置。
  4. 前記キャリア位相回復部は、
    前記妨害成分の事後状態推定値を算出する際、前記観測方程式に基づいて算出する前記観測情報と、当該観測情報を仮判定して得られる前記送信データ系列の仮判定値とに基づいて算出する前記事後状態推定値を算出するか、または、前記送信装置がパイロットシンボルとして送信する前記送信データ系列と、前記観測方程式に基づいて算出する前記観測情報とに基づいて前記事後状態推定値を算出する、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の信号検出装置。
  5. 前記伝送路は、複数のモードにより前記複数の信号を伝送するマルチモード光ファイバを含む光伝送路であり、
    前記搬送波生成部は、前記搬送波である連続光を出射する信号光光源であり、
    前記局部発振部は、前記局部発振信号である連続光を出射する局部発振光光源であり、
    前記受信部が行う復調は、前記局部発振光光源が出射する連続光に基づくコヒーレント検波である、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の信号検出装置。
  6. 請求項1から5のいずれ一項に記載の信号検出装置が備えるキャリア位相回復部を装置としたキャリア位相回復装置。
  7. 各々に与えられる送信データ系列に基づいて、各々が有する搬送波生成部が出力する搬送波を変調して送信信号を生成し、生成した前記送信信号を、複数の信号を伝送する伝送路に送出する複数の送信部を備える送信装置と、前記伝送路が伝送する複数の信号を受信し、受信した受信信号を、各々が有する局部発振部が出力する局部発振信号に基づいて復調して受信データ系列を生成する複数の受信部を備える受信装置とを備える通信システムにおける前記受信装置が行うキャリア位相回復方法であって、
    前記受信データ系列に対してMIMO線形受信を行う際に用いる重み行列を算出し、
    複数の前記搬送波生成部と、複数の前記局部発振部とが非同期であるために生じる複数の位相雑音成分を含む妨害成分を状態情報とし、事後の前記状態情報を、事前の前記状態情報に基づいて算出する予め定められる状態方程式と、前記送信データ系列を観測情報とし、前記状態方程式により算出する事後の前記状態情報と、前記受信データ系列と、算出した前記重み行列とに基づいて、事後の前記状態情報が示す状態における前記観測情報を算出する予め定められる観測方程式とに対して、カルマンフィルタアルゴリズムを適用して前記妨害成分の事後状態推定値を算出し、
    算出した前記事後状態推定値に基づいて、前記妨害成分を除去した前記送信データ系列の推定系列を算出する、
    キャリア位相回復方法。
  8. コンピュータを、請求項6に記載のキャリア位相回復装置として機能させるためのキャリア位相回復プログラム。
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