JP7587150B2 - 抵抗スポット溶接方法及び継手の製造方法 - Google Patents
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Description
近年、自動車分野では、低燃費化やCO2排出量削減を達成するための車体の軽量化や、衝突安全性を向上させるための車体の高剛性化がより求められており、その要求を満たすために、車体や部品等に高強度鋼板を使用するニーズが高まっている。
一方、高強度鋼板はその強度を達成するために母材の炭素当量が大きくなっており、スポット溶接では溶接部は加熱後直ちに急冷されるために、溶接部はマルテンサイト組織となり、溶接部及び熱影響部において硬度が上昇し、靭性が低下するようになる。
例えば、2段通電によるスポット溶接方法として、特許文献1には、炭素を0.15質量%以上含み、引張強さが980MPa以上である高強度鋼板を重ね合わせスポット溶接する方法であって、スポット溶接工程を、ナゲットを形成する第1通電工程、第1通電工程に続いて無通電とする冷却工程、冷却工程に続いてナゲットを軟化させる第2通電工程の3工程に分けて行い、その際、第1通電工程の電流をI1、第2通電工程の電流をI2とするとき、I2/I1を0.5~0.8とし、さらに冷却工程の時間tc(sec)を、鋼板板厚H(mm)に応じて、tmin=0.2×H2で計算される0.8×tmin以上、2.5×tmin以下の範囲とし、また第2通電工程の通電時間t2(sec)を、0.7×tmin以上、2.5×tmin以下の範囲とし、前記第1通電工程までの電極の加圧力よりも、前記冷却工程以降における電極の加圧力を大きくして溶接してスポット溶接継手を得るスポット溶接方法が開示されている。
800≦tct ・・・式(1)
0.5×Iw≦It≦Iw ・・・式(2)
500≦tt ・・・式(3)
前記板組のうち少なくとも1枚の鋼板は、
0.08≦C≦0.3(質量%)、
0.1≦Si≦0.8(質量%)、
2.5≦Mn≦10.0(質量%)、
P≦0.1(質量%)
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分を有する抵抗スポット溶接方法が開示されている。
また、特許文献2では、C含有量が0.08~0.3%の鋼板を用いることを必須としており、比較例として、C含有量が0.3%を超える鋼板を用いて3段通電を行った場合には継手強度が低下することが記載されている。
<1> 質量%で、C含有量が、0.30%超、0.70%以下である少なくとも1枚の鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、一対の電極で板厚方向に挟み込んで加圧しながら電流値I1(kA)で通電する第1通電工程と、
前記第1通電工程後、16ms以上200ms以下の時間tc1を無通電とする第1無通電工程と、
前記第1無通電工程後、下記式(1)を満たす電流値I2(kA)及び下記式(2)を満たす時間t2(ms)で通電する第2通電工程と、
0.6≦I2/I1≦1.1 ・・・(1)
50≦t2≦1000 ・・・(2)
前記第2通電工程後、下記式(3)及び下記式(4)を満たす時間tc2(ms)を無通電とする第2無通電工程と、
3.5×10-3×Ms2-3.3×Ms+1100<tc2≦9000 ・・・(3)
Ms(℃)=561-474×[C]-33×[Mn]-17×[Ni]-17×[Cr]-21×[Mo] ・・・(4)
前記第2無通電工程後、下記式(5)を満たす電流値I3(kA)及び下記式(6)を満たす時間t3(ms)で通電する第3通電工程と、
0.4≦I3/I1≦1.0 ・・・(5)
200≦t3 ・・・(6)
を連続して行う、抵抗スポット溶接方法。
前記式(3)におけるMsは、前記式(4)において[元素名]内に前記板組を構成する鋼板に含まれる各元素の質量%を代入して算出されるMs点を意味する。但し、前記板組を構成する少なくとも2枚の鋼板の組成が異なる場合は、前記板組を構成する全ての鋼板について前記式(4)により鋼板ごとに算出したMs点に、それぞれ前記板組の総厚に対する各鋼板の板厚比を乗じた値の加重平均のMs点を式(3)に代入する。
<2> 前記板組のうち、前記少なくとも1枚の鋼板は、質量%で、
P含有量が0.010%未満、
である
<1>に記載の抵抗スポット溶接方法。
<3> 前記板組のうち、前記少なくとも1枚の鋼板は、質量%で、
P含有量が0.010%未満、
S含有量が0.0100%以下、
である
<1>に記載の抵抗スポット溶接方法。
<4> 前記板組のうち、前記少なくとも1枚の鋼板は、質量%で、
Si含有量が0.10%超、
P含有量が0.010%未満、
S含有量が0.0100%以下、
である
<1>に記載の抵抗スポット溶接方法。
<5> 前記板組のうち、前記少なくとも1枚の鋼板は、質量%で、
Si含有量が0.10%超、
Mn含有量が15.00%以下、
P含有量が0.010%未満、
S含有量が0.0100%以下、
である
<1>に記載の抵抗スポット溶接方法。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の抵抗スポット溶接方法を用いた継手の製造方法。
なお、本開示において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。また、本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
そこで、本発明者らは、3段通電における2段目の通電の影響を調べるために、スポット溶接後の鋼板を板厚に垂直に切断、研磨し、金属組織を観察した。
質量%で、C含有量が、0.30%超、0.70%以下である少なくとも1枚の鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、一対の電極で板厚方向に挟み込んで加圧しながら電流値I1(kA)で通電する第1通電工程と、
前記第1通電工程後、16ms以上200ms以下の時間tc1を無通電とする第1無通電工程と、
前記第1無通電工程後、下記式(1)を満たす電流値I2(kA)及び下記式(2)を満たす時間t2(ms)で通電する第2通電工程と、
0.6≦I2/I1≦1.1 ・・・(1)
50≦t2≦1000 ・・・(2)
前記第2通電工程後、下記式(3)及び下記式(4)を満たす時間tc2(ms)を無通電とする第2無通電工程と、
3.5×10-3×Ms2-3.3×Ms+1100<tc2≦9000 ・・・(3)
Ms(℃)=561-474×[C]-33×[Mn]-17×[Ni]-17×[Cr]-21×[Mo] ・・・(4)
前記第2無通電工程後、下記式(5)を満たす電流値I3(kA)及び下記式(6)を満たす時間t3(ms)で通電する第3通電工程と、
0.4≦I3/I1≦1.0 ・・・(5)
200≦t3 ・・・(6)
を連続して行う。
前記式(3)におけるMsは、前記式(4)において[元素名]内に前記板組を構成する鋼板に含まれる各元素の質量%を代入して算出されるMs点を意味する。但し、前記板組を構成する少なくとも2枚の鋼板の組成が異なる場合は、前記板組を構成する全ての鋼板について前記式(4)により鋼板ごとに算出したMs点に、それぞれ前記板組の総厚に対する各鋼板の板厚比を乗じた値の加重平均のMs点を式(3)に代入する。
まず、第1通電工程として、質量%で、C含有量が、0.30%超、0.70%以下である少なくとも1枚の鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、一対の電極で板厚方向に挟み込んで加圧しながら電流値I1(kA)で通電する。
第1通電工程における電流値I1は所望のナゲット径が得られる電流値を用い、板組のうち最も薄い鋼板t(mm)とした場合、通電時間t1は10t-5から10t+50cycle(50Hz)などとすればよい。ナゲット径は4√t以上を狙うのが継手強度、散り発生回避の観点からよい。ナゲット径はさらに望ましくは5√t以上である。このような5√t以上のナゲット径を、散りを発生させずに形成するためには、第1通電工程の前に1cycle~80cycle(50Hz)のアップスロープを設定することが望ましい。また、第1通電工程の前に、第1通電工程より低い電流値で2~80cycleのプレ通電を行っても良い。
なおアップスロープ通電を行う場合、アップスロープの終了時の電流値を第1通電工程における電流値I1(kA)とし、第一通電工程の通電時間t1(ms)にはアップスロープにかかる時間を含めない。
また、板組に対する電極2A、2Bの加圧力は、散り発生を抑え、かつ安定してナゲットが得られるように、例えば2000~8000Nが挙げられる。加圧力は溶接中に一定であっても、変化させても良い。
以下、本開示における板組においてC含有量が0.30%超、0.70%以下である鋼板(以下、単に「鋼板」と称する場合がある。)について説明する。
Cは、鋼の焼入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。C含有量が0.3%以下の鋼板のみを重ねてスポット溶接を行う場合は、本開示に係る抵抗スポット溶接方法を適用せずとも継手強度の確保が可能なため、本開示に係る抵抗スポット溶接方法では、少なくとも1枚の鋼板のC含有量は0.30%超とする。好ましくは、0.31%以上、さらに好ましくは、0.33%以上、さらに好ましくは0.35%以上である。
ただし、C含有量が0.70%を超えると靱性が低下しすぎ、本開示に係る抵抗スポット溶接方法を適用しても依然低いCTSしか得られないため、C含有量は0.70%以下とする。C含有量は、好ましくは、0.55%以下、さらに好ましくは0.48%以下である。
第1通電工程/I1:6800A、t1:500ms
第1無通電工程/tc1:70ms
第2通電工程/I2:5800A、t2:250ms
第2無通電工程/tc2:700ms
第3通電工程/I3:4000A、t3:1300ms
上昇率[%]=[(本発明通常条件CTS-単通電CTS)/単通電CTS]×100[%]
Pは、不純物であり、脆化を起こす元素である。P含有量が0.010%以上になると、継手強度を得ることが難しいので、上限を0.010%未満とすることが好ましい。より好ましくは0.009%以下である。
なお、P含有量は少ないほど好ましいが、P含有量を下げるほど脱Pコストが上昇する。また、本開示に係る抵抗スポット溶接方法によれば、図1に示したように、通常のP含有量である鋼板を用いた場合でも、P含有量を極めて低くした鋼板を用いて通電によってナゲットを形成した後、テンパー通電を行った場合と同等以上にCTSを向上させることができる。そのため、鋼板のP含有量を大きく下げる必要はなく、P含有量の下限値は、0.0005%であってもよい。
Sは、Pと同様に、不純物であり脆化を起こす元素である。また、Sは、鋼中で粗大なMnSを形成し、鋼の加工性を低下させるとともに継手強度も低下させる元素である。S含有量が0.0100%を超えると、所要の継手強度を得ることが難しく、また、鋼の加工性が低下するので、0.0100%以下とすることが望ましい。
なお、S含有量は少ないほど好ましいが、Pと同様の観点から、鋼板のS含有量の下限値は、0.0003%であってもよい。
Siは、固溶強化により、鋼の強度を高める元素である。Si含有量が0.10%以下であると継手強度が低下してしまうため下限を0.10%超とすることが好ましい。より好ましくは0.80%超である。
一方、Si含有量が高過ぎると、加工性が低下するとともに継手強度も低下するので、上限を3.5%又は3.0%としてもよい。
Mnは、鋼の強度を高める元素である。Mn含有量が15.00%を超えると、加工性が劣化するとともに継手強度も低下するので、上限を15.00%とすることが好ましい。鋼板の強度と加工性および継手強度をバランスよく確保するには、0.5~7.5%がより好ましい。さらに好ましくは、1.0~2.5%である。
Alは、脱酸作用をなす元素であり、また、フェライトを安定化し、セメンタイトの析出を抑制する元素である。Alは、脱酸、及び、鋼組織の制御のため含有させるが、Alは酸化し易く、Al含有量が3.00%を超えると、介在物が増加して加工性が低下するとともに継手強度も低下するので、3.00%以下とすることが好ましい。加工性を確保する点で、より好ましい上限は1.2%である。
Nは、鋼板の強度を高める元素であるが、鋼中で粗大な窒化物を形成し、鋼の成形性を劣化させる作用をなす元素である。N含有量が0.0100%を超えると、鋼の成形性の劣化、継手強度の低下が顕著となるので、0.0100%以下とすることが望ましい。
なお、鋼板の清浄度を高める観点から、Nは、ゼロ%であってもよい。Nを低減する生産コストの観点から下限値は、0.0001%であってもよい。
Tiは、析出物を形成し、鋼板組織を細粒とする元素であり、含有してもよい。含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.01%以上である。一方、過剰に含有すると、製造性が低下し、加工時に割れが生じるだけでなく継手強度の低下も起こすので、0.30%を上限とすることが好ましく、より好ましくは0.20%以下である。
Nbは、微細な炭窒化物を形成し結晶粒の粗大化を抑制する元素であり、含有してもよい。含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.01%以上である。過剰に含有すると、靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手強度低下を引き起こすため、上限を0.30%とすることが好ましく、より好ましくは0.20%以下である。
Vは、微細な炭窒化物を形成し結晶粒の粗大化を抑制する元素であり、含有してもよい。含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.03%以上である。過剰に含有すると、靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手強度低下を引き起こすため、上限を0.30%とすることが好ましく、より好ましくは0.25%以下である。
Mo:2.00%以下
Cr及びMoは、鋼の強度の向上に寄与する元素であり、含有してもよい。含有効果を得るため、それぞれ0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは 0.05%以上である。ただし、Cr含有量が5.00%を超え、又はMo含有量が2.00%を超えると、酸洗時や熱間加工時に支障が生じることがあるだけでなく継手強度の低下を招くので、Cr含有量の上限は5.00%とすることが好ましく、Mo含有量の上限は2.00%とすることが好ましい。
Ni:10.00%以下
Cu及びNiは、鋼の強度の向上に寄与する元素であり、含有してもよい。含有効果を得るため、それぞれ0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは 0.10%以上である。ただし、Cu含有量が2.00%を超え、Ni含有量が10.00%を超えると、酸洗時や熱間加工時に支障が生じることがあるだけでなく継手強度の低下を招くことがあるので、Cu含有量の上限は2.00%とすることが好ましく、Ni含有量の上限は10.00%とすることが好ましい。
REM:0.050%以下
Mg:0.05%以下
Zr:0.05%以下
Ca、REM(rare earth metal)、Mg、及びZrは、脱酸後の酸化物や、熱間圧延鋼板中に存在する硫化物を微細化し、成形性の向上に寄与する元素であり、含有してもよい。ただし、Caの含有量が0.0030%を超え、REMの含有量が0.050%を超え、Mg、又はZrの各含有量が0.05%を超えると、鋼の加工性が低下する。そのため、Ca含有量の上限を0.0030%とし、REM含有量の上限を0.050%とし、Mg、及びZrの各含有量の上限を0.05%とすることが好ましい。
なお、含有効果を得るため、Ca含有量は0.0005%以上、REMは0.001%以上、Mgは0.001%以上、Zrは0.001%以上とすることが好ましい。
Bは、粒界に偏析して粒界強度を高める元素であり、含有してもよい。含有効果を得るため、0.0001%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.0008%以上である。一方、過剰に含有すると靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手強度の低下を引き起こすため、上限を0.0200%とすることが好ましく、より好ましくは0.010%以下である。
鋼板成分として、
C:0.30%超~0.70%、
Si:0.10%超、
Mn:15.00%以下、
P:0.010%未満、
S:0.0100%以下、
Al:3.00%以下、及び
N:0.0100%以下、を含み、
残部が鉄(Fe)および不純物からなる鋼板であってもよい。
上記成分組成の鋼板が、上記鉄(Fe)の一部に代えて、
Ti:0.30%以下、
Nb:0.30%以下、
V:0.30%以下、
Cr:5.00%以下、
Mo:2.00%以下、
Cu:2.00%以下、
Ni:10.00%以下、
Ca:0.0030%以下、
REM:0.050%以下、
Mg:0.05%以下、
Zr:0.05%以下、及び
B:0.0200%以下
の群から1種または2種以上の元素を含有してもよい。
板組を構成する全ての鋼板のC含有量が0.30%超、0.70%以下でもよいし、板組のうち一部の鋼板は、C含有量が0.30%以下又は0.70%超でもよい。
また、板組の総厚tも特に限定されないが、例えば、1.5~8.0mmが挙げられる。
第1通電工程後、16ms以上200ms以下の時間tc1を無通電とする。
無通電時間tc1が16ms未満では第2通電工程の前にナゲット端部が凝固しないおそれがある。一方、無通電時間tc1が200msを超えると、第2通電工程の前にナゲット端部が固まり過ぎるおそれがある。
ナゲット端部の凝固が不足した状態又は過度に凝固した状態での後通電(第2通電工程)を避け、ナゲット端部の凝固を適切に進めるために、第1通電工程後の無通電時間tc1は、16ms以上200ms以下とし、25ms以上160ms以下とすることが好ましく、30ms以上150ms以下とすることがより好ましい。
第2通電工程は、本発明者らが、鋼板のC量が0.3%超であっても、CTSを向上させることができることを発見した、重要な工程である。ナゲット内の溶融境界付近の結晶粒を整粒化し、CTS試験において、剥離方向に負荷される応力が最も高くなる部位の靭性を向上させる効果がある。
第1無通電工程後、下記式(1)を満たす電流値I2(kA)及び下記式(2)を満たす時間t2(ms)で通電する。
0.6≦I2/I1≦1.1 ・・・(1)
50≦t2≦1000 ・・・(2)
第2通電工程では第1通電工程でできた溶融境界を越えずにナゲット中央部を溶融させてナゲット端部付近に適切な熱を入れるために、第1通電工程の電流値(I1)に対する比(I2/I1)及び通電時間(t2)がそれぞれ上記の式(1)及び式(2)を満たす条件で通電を行う。
第2通電工程は、結晶粒制御熱処理に相当し、上記の式(1)及び式(2)を満たす電流値I2(kA)及び時間t2(ms)で通電を行うことでナゲットの結晶粒が変化し、継手強度を向上させることができる。
I2/I1は0.75~1.05、t2は200~600が好ましい。
第2通電工程後、下記式(3)及び下記式(4)を満たす時間tc2(ms)を無通電とする。
3.5×10-3×Ms2-3.3×Ms+1100<tc2≦9000 ・・・(3)
Ms(℃)=561-474×[C]-33×[Mn]-17×[Ni]-17×[Cr]-21×[Mo] ・・・(4)
式(3)におけるMsは、式(4)において[元素名]内に板組を構成する鋼板に含まれる各元素の質量%を代入して算出されるMs点を意味する。但し、板組を構成する少なくとも2枚の鋼板の組成が異なる場合は、板厚を考慮し、板組を構成する全ての鋼板について式(4)により鋼板ごとに算出したMs点に、それぞれ板組の総厚(全体の厚み)に対する各鋼板の板厚比を乗じた値の加重平均のMs点を式(3)に代入する。なお、式(4)における元素のうち、鋼板に含まれない元素についてはゼロを代入する。
Msave=Msα×(tα/t)+Msβ×(tβ/t)+Msγ×(tγ/t)
ただし、第2無通電時間tc2が9000msを超えると、十字引張における疲労強度が低下する場合がある。この理由として、第2無通電時間tc2に続く第3通電工程があるものの、溶接部に残留応力が強く残ってしまうことが考えられる。そのため、第2無通電時間tc2は9000ms以下である必要がある。
第2無通電工程後、下記式(5)を満たす電流値I3(kA)及び下記式(6)を満たす時間t3(ms)で通電する。
0.4≦I3/I1≦1.0 ・・・(5)
200≦t3 ・・・(6)
第3通電工程は、テンパー熱処理に相当し、電流値I3及び通電時間t3はMs点以下までに冷やされたナゲットを適切な焼戻し温度まで再加熱できればよい。実験の結果、第3通電工程の電流値(I3)では、第1通電工程の電流値(I1)に対する比(I3/I1)及び通電時間(t3)が、それぞれ式(5)及び式(6)を満たす条件で通電することで、靭性を向上させることができる。
なお、第3通電工程における通電時間が長過ぎると生産性を落としてしまうため、5000ms以下とすることが好ましい。また、第3通電工程後にダウンスロープを設けてもよい。ダウンスロープにより、液体金属脆性の割れ低減、ブローホール低減、遅れ破壊の抑制の効果により溶接部の特性がさらに向上する。なお、ダウンスロープ通電を行う場合、ダウンスロープの開始時の電流値を第3通電工程における電流値I3(kA)とし、第三通電工程の通電時間t3(ms)にはダウンスロープにかかる時間を含めない。
第3通電工程の後は、加圧だけで通電しない、いわゆる保持時間を設けることが液体金属脆性の割れ抑制のために好ましい。保持時間は5cycle(50Hz)以上が望ましい。
このような本開示に係る抵抗スポット溶接方法を適用する分野は特に限定されないが、例えば、車体の組立や部品の取付け等の工程に特に有効と考えられる。
表1において、P、S、Nは意図的に添加しなくても、成分分析は実施した。また、「<0.0002%」のように不等号による表記は、分析下限値未満であることを意味する。その他の元素は、意図的に添加しない場合、「-」を記載し、成分分析を実施していない。残部は、Fe及び不純物である。また、表1において、鋼板のC含有量が0.30%以下又は0.70%を超える値には下線を付した。なお、鋼板r及び鋼板sは、C含有量が0.30%以下であるが、鋼板のC含有量が0.30%超、0.70%以下の鋼板と組み合わせる発明例の板組に用いるために用意したものであり、下線は付していない。
この単通電CTSと比較して上昇率を取り、10%を超えるものを継手強度の向上効果があるものと判断した。
上昇率[%]=[(本開示の通電条件でのCTS-単通電のCTS)/単通電のCTS]×100
表2に示す条件のほか、No.43では第1通電工程の前に500msのアップスロープ通電を行い、また、No.44では第1通電工程の前に、電流6.7kA、通電時間500msのプレ通電を行った。
一方、No.2、7、20~31では、本開示の条件を満たさないため、単通電による抵抗スポット溶接を行った場合に比べ、CTSの上昇率が10%に満たず、むしろCTSが低下したものもあった。
2A、2B 電極
13 ナゲット
14 熱影響部(HAZ)
Claims (6)
- 質量%で、C含有量が、0.30%超、0.70%以下である少なくとも1枚の鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、一対の電極で板厚方向に挟み込んで加圧しながら電流値I1(kA)で通電してナゲットを形成する第1通電工程と、
前記第1通電工程後、16ms以上200ms以下の時間tc1を無通電とする第1無通電工程と、
前記第1無通電工程後、下記式(1)を満たす電流値I2(kA)及び下記式(2)を満たす時間t2(ms)で通電する第2通電工程と、
0.6≦I2/I1≦1.1 ・・・(1)
50≦t2≦1000 ・・・(2)
前記第2通電工程後、下記式(3)及び下記式(4)を満たす時間tc2(ms)を無通電とする第2無通電工程と、
3.5×10-3×Ms2-3.3×Ms+1100<tc2≦9000 ・・・(3)
Ms(℃)=561-474×[C]-33×[Mn]-17×[Ni]-17×[Cr]-21×[Mo] ・・・(4)
前記第2無通電工程後、下記式(5)を満たす電流値I3(kA)及び下記式(6)を満たす時間t3(ms)で通電する第3通電工程と、
0.4≦I3/I1≦1.0 ・・・(5)
200≦t3 ・・・(6)
を連続して行う、抵抗スポット溶接方法。
前記式(3)におけるMsは、前記式(4)において[元素名]内に前記板組を構成する鋼板に含まれる各元素の質量%を代入して算出されるMs点を意味する。但し、前記板組を構成する少なくとも2枚の鋼板の組成が異なる場合は、前記板組を構成する全ての鋼板について前記式(4)により鋼板ごとに算出したMs点に、それぞれ前記板組の総厚に対する各鋼板の板厚比を乗じた値の加重平均のMs点を式(3)に代入する。 - 前記板組のうち、前記少なくとも1枚の鋼板は、質量%で、
P含有量が0.010%未満である、
請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。 - 前記板組のうち、前記少なくとも1枚の鋼板は、質量%で、
P含有量が0.010%未満、
S含有量が0.0100%以下、
である
請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。 - 前記板組のうち、前記少なくとも1枚の鋼板は、質量%で、
Si含有量が0.10%超、
P含有量が0.010%未満、
S含有量が0.0100%以下、
である
請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。 - 前記板組のうち、前記少なくとも1枚の鋼板は、質量%で、
Si含有量が0.10%超、
Mn含有量が15.00%以下、
P含有量が0.010%未満、
S含有量が0.0100%以下、
である
請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。 - 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法を用いた継手の製造方法。
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