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JP7601068B2 - ロータコアとその製造方法ならびにモータ - Google Patents
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JP7601068B2 - ロータコアとその製造方法ならびにモータ - Google Patents

ロータコアとその製造方法ならびにモータ Download PDF

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Description

本発明は、電気自動車の駆動モータ等の高速モータに用いられるロータコアとその製造方法ならびに上記ロータコアを用いたモータに関するものである。
電気自動車に用いられる駆動モータは、小型化、高効率化の観点から高周波域で駆動されている。このようなモータとしては、ロータコアの内部に永久磁石を埋め込んだ内部磁石型モータ(IPMモータ)が多く採用されている。
上記IPMモータは、高速回転した時、ロータコア内に埋め込まれている磁石にロータの径方向に飛び出そうとする大きな遠心力が働く。さらに、自動車の加減速にともない、モータの回転数も大きく変化するため、磁石に加わる遠心力も常に変動することとなる。そのため、ロータコアには、磁気特性に優れていることの他に、引張強さや疲労強度等の強度特性にも優れていることも要求されている。
上記の要求に対しては、従来、SiやAlなどの元素を多量に添加したり、結晶粒径や結晶方位を制御したりすること等、主として材料面から強度特性の改善が図られてきた。しかし、このような合金元素の添加による強度特性の改善は、ロータコアを構成する鋼板を硬く、脆くするため、鋼板自体の製造性に悪影響を及ぼす。また、結晶粒径を小さくして強度特性を改善する方法は、仕上焼鈍温度の低温化により一定の効果は得られる。しかし、数十μm以下の微細な再結晶粒を安定的に得るには、焼鈍条件の厳格な制御が要求され、場合によっては加工組織が残存する組織となり、期待されるほどには磁気特性や強度特性が改善されないという問題がある。上記のように、ロータコアを構成する材料(鋼板)面からの強度特性改善には限界があった。
ところで、モータコアを製造方法する際、素材鋼板からコア形状の鋼板を採取する方法としては打抜加工が一般的に用いられているが、この打抜加工は、打抜いたときの切断面の粗さが大きくなる傾向がある。そのため、打抜き後の材料の疲労特性は、材料本来の疲労特性に比べて劣ることが知られている。
この問題に対し、例えば、特許文献1には、打抜加工等で形成した孔の端面に化学的溶解を施すことでロータコアの疲労特性を改善する技術が提案されている。また、特許文献2には、ロータコアの磁石挿入孔の内周面のブリッジ部側に液体を介してレーザを照射する「レーザピーニング」を適用することで、高強度なロータを得る技術が提案されている。さらに、特許文献3には、打抜加工で生じた塑性歪領域をせん断除去するシェービング加工を施す方法が、特許文献4には、打抜加工された端面の破断面にコイニング加工を施し、潰れ面を形成することでロータコアの疲労強度を向上する方法が提案されている。
特開2009-219306号公報 特開2005-124386号公報 国際公開第2011/129000号 国際公開第2018/012599号
しかしながら、上記の特許文献1に開示された方法は、化学的溶解以外の方法で一度、孔を形成し、その後、孔の端部を化学的溶解で処理を施すことになるので、生産性やコスト面に問題がある。さらに、化学的溶解による処理は、端面の結晶粒の方位差によって溶解速度が異なる。そのため、端面には、結晶粒界がある位置に段差(以下、この段差を「結晶粒界における段差」ともいう)が生じて、この部分に応力が集中するため、疲労特性の向上効果が十分に得られないという問題がある。また、特許文献2に開示されたレーザピーニングを施す方法は、生産性が劣るという問題がある。また、レーザ照射によって電磁鋼板が積層間を跨いで溶融した場合、溶融端面で短絡が生じて渦電流損が増大し、モータ効率が低下するという問題もある。また、特許文献3や4に開示されたコア形状に加工した鋼板の切断面を後処理で整える技術は、疲労強度を改善することができる反面、コアの寸法精度の厳格な制御や、モータの特性を大きく左右する設計因子であるエアギャップの制御が困難になる。そのため、モータ特性のばらつきが大きくなるという問題があり、疲労強度に優れたロータコアを得る最適な方法にはなり得なかった。また、上記の特許文献3および4に開示の技術は、素材鋼板から機械的な加工によりロータコアを製造しているため、高強度な鋼板の場合には、金型の摩耗などが激しいことや、品質管理の面でも問題があった。
上記のように、モータ製造工程の面からのロータコアの強度特性の改善も、モータ特性や生産性、コストの面でも多くの問題が残されていた。
本発明は、従来技術が抱える上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、強度特性、特に疲労特性に優れるロータコアを提供し、その製造方法を提案するとともに、上記ロータコアを用いることでエアギャップの制御を容易にするモータを提供することにある。
発明者らは、上記の課題の解決に向け、ロータ形状に加工した鋼板(以降、「ロータコア材」とも称する)において、遠心力による応力集中が最も大きい部分がロータコアのブリッジ部(磁石を埋め込む孔と孔に挟まれた部分)であることに着目した。そして、ブリッジ部の疲労特性を向上する方策について鋭意検討を重ねた。その結果、ブリッジ部での鋼板切断面、すなわち、磁石を埋め込む孔の切断面を平滑化するだけでなく、その切断面に存在する段差であって結晶粒界の位置にある段差を0.5μm以下に低減することが有効である。また、そのためには、上記孔の形成を熱切断加工で行うとともに、上記熱切断加工の熱ビーム照射条件を適切化する必要があることを見出し、本発明を開発するに至った。
上記知見に基づく本発明は、素材鋼板から採取し、ロータコアの外周形状に加工してなる鋼板を積層して構成されるロータコアであって、上記鋼板には熱切断加工されてなる複数の孔が形成されてなり、かつ、上記孔の切断面に存在する、結晶粒界における段差の最大値が0.5μm以下であることを特徴とするロータコアである。
本発明の上記ロータコアにおける上記素材鋼板は、C:0.0005~0.01mass%、Si:7mass%以下、Mn:0.05~3mass%およびAl:3mass%以下を含有し、さらに任意選択的にP:0.001~0.1mass%、S:0.01mass%以下、Sn:0.001~0.1mass%、Sb:0.001~0.1mass%、Ca:0.0002~0.005mass%およびMg:0.0002~0.005%のうちから選ばれる少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる無方向性電磁鋼板であることを特徴とする。
また、本発明の上記ロータコアにおける上記素材鋼板は、鋼板表裏の表面から板厚の1/3までを表層部、鋼板表面から板厚の1/3より内側を中心部としたとき、上記表層部の表裏の平均Si含有量が中心部より1mass%以上高いことを特徴とする。
また、本発明の上記ロータコアは、上記熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする。
また、本発明の上記ロータコアは、上記ロータコアの形状に加工した鋼板の外周が熱切断加工されてなることを特徴とする。
また、本発明の上記ロータコアは、上記外周の熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする。
また、本発明の上記ロータコアは、上記孔の一部または全てに永久磁石を挿入してなることを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の成分組成を有する素材鋼板から採取したロータコア形状の鋼板に熱切断加工によって複数の孔を形成した後、上記鋼板を積層してロータコアを組み立てるロータコアの製造方法であって、上記熱切断加工では、熱ビームを鋼板表面の垂線に対して切り落とす孔側に1~5°傾斜させて照射することで、切断面に存在する結晶粒界における段差の最大値を0.5μm以下とすることを特徴とするロータコアの製造方法を提案する。
本発明の上記ロータコアの製造方法に用いる上記素材鋼板は、鋼板表裏の表面から板厚の1/3までを表層部、鋼板表面から板厚の1/3より内側を中心部としたとき、上記表層部の表裏の平均Si含有量が中心部より1mass%以上高いことを特徴とする。
また、本発明の上記ロータコアの製造方法は、上記熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする。
また、本発明の上記ロータコアの製造方法は、上記ロータコアの形状に加工した鋼板の外周を熱切断加工することを特徴とする。
また、本発明の上記ロータコアの製造方法は、上記外周の熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする。
また、本発明は、上記のいずれかに記載のコアをロータコアに用いてなる、ロータコアとステータコアを有するモータであって、上記ロータコアの外径とステータコアの内径との最短距離が0.30mm以下であることを特徴とするモータである。
本発明によれば、エアギャップの設計の自由度を過度に制限することなく、疲労特性に優れたロータコアを提供することが可能となるので、モータの高効率化に加えて、モータに対する信頼性を大きく高めることができる。
ロータコアを構成する鋼板形状の一例を示す図である。 レーザ切断加工における傾斜角θを説明する図である。 疲労試験片を説明する図である。 疲労試験片の切断面の観察方法を説明する図である。
まず、本発明が対象とする高速モータ用のロータコアは、繰り返し遠心力が付与されるロータコアである。このロータコアは、通常、素材鋼板から打抜加工やレーザビーム等の熱ビームを用いた熱切断加工によりロータコアの外周形状に加工した鋼板(ロータコア材)を積層し、カシメ等で固定して組み立てたものである。そして、高効率化の観点から、IPMモータのロータコアには、複数の永久磁石が埋め込まれている。
ここで、図1に示すような形状を有するロータコアの場合、高速回転に起因する遠心力は、磁石を挿入する孔(磁石挿入孔)と孔との間に挟まれたブリッジ部(図1中のA部またはB部)に集中することが知られている。そのため、このような部分は、繰り返し付与される遠心力によって疲労破壊へと至り易くなる。
しかし、ロータコアの形状は、効率化の観点から決定されるため、変更することは難しい。そこで、従来から、先述した特許文献1~4で提案されているように、磁石挿入孔の切断面を改善してブリッジ部への応力集中を防止することが検討されて来た。しかし、上記従来技術では、疲労特性の向上効果の面のみならず、製造性の面からも改善の余地が多く残されていた。
そこで、発明者らは、上記問題点を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、後述するように、ロータコアの疲労特性を生産性よく向上するためには、磁石挿入孔を熱切断加工により形成するとともに、上記熱切断加工による切断面に存在する結晶粒界における段差を0.5μm以下に制御することが極めて有効であることを見出した。そして、上記段差0.5μm以下を実現するためには、熱切断加工によって磁石挿入孔を形成する際、図2に示すように、切断に用いる熱ビームを、鋼板表面の垂線に対して切り落とす孔側に1~5°の範囲で傾斜させて照射し、切断加工を行うことが重要であることも見出した。
なお、本発明において鋼板の切断に用いる熱切断加工に熱ビームは、レーザビーム、電子ビーム、プラズマビームやガス切断等があるが、以降、本発明に関する説明は、熱切断加工としてレーザ切断加工を用いた例で説明する。
以下、本発明を開発するに至った実験について説明する。
C:0.0015mass%、Si:3.7mass%、Mn:0.5mass%、Al:1.0mass%およびS:0.002mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、板厚0.20mmの電磁鋼板を素材に用いて、図1に示した形状を有するロータコア材を、以下の5つの方法で作製した。
・方法1:金型を用いた打抜加工(クリアランス:板厚の5%)
・方法2:方法1で得たロータコア材の切断面を機械研磨により平滑化
・方法3:方法1で得たロータコア材の切断面を塩化第二鉄水溶液(45ボーメ、液温45℃)で10秒間処理
・方法4:レーザ切断加工(シングルモードファイバーレーザ、出力:300W、走査速度:10m/min、レーザビームの傾斜角θ=0°)
・方法5:レーザ切断加工(シングルモードファイバーレーザ、出力:300W、走査速度:10m/min、レーザビームの傾斜角θ=2°)
(上記方法4および5のレーザビームの傾斜角θは、図2に示したように、レーザビームの鋼板表面の垂線からの切り落とす孔側への傾斜角をいう)
次いで、上記ロータコア材のブリッジ部(図1中のA部)から、図3に示す形状(平行部の幅:1.0mm)のミクロな疲労試験片を切り出し、疲労試験に供した。この際、レーザ切断面である平行部の切断面(C部)の算術平均粗さRaをJIS B 0601-2001に準じて測定した。なお、疲労試験は、引張り-引張り(片振り)で応力比:0.1、周波数:20Hzの条件にて行い、10回の繰り返しにおいても破断が生じない最大応力を疲労強度とした。得られた結果を表1に示した。
Figure 0007601068000001
表1から、以下のことがわかる。
・方法1と方法2の比較から、機械研磨により疲労強度が向上していること、また、方法2と方法3の比較から、化学研磨を行うことでさらに疲労強度が向上していることがわかる。これは、機械研磨や化学研磨によって打抜加工した切断面の表面粗さRaが低減し、応力集中が緩和されたことによるものと考えられる。
・一方、方法4(傾斜角θ:0°)でレーザ切断加工した場合には、表面粗さRaは方法2と同レベルであるが、疲労強度は方法2には及ばない。しかし、傾斜角θを2°に設定した方法5では、表面粗さRaは方法2や方法4と同レベルであるにも拘わらず、方法1~5の中で最も高い疲労強度を示している。
そこで、この原因について調査するべく、試験片の切断面についてさらに詳細な調査を行った。具体的には、疲労試験片の平行部の切断面(図3のC部)を樹脂モールドに埋め込んで、光学顕微鏡を用いて切断面を観察した。具体的には、図4に示すように、樹脂モールドに埋め込んで、切断面に垂直な断面を観察する。埋め込んだ試料の観察面において、切断面に相当する端部を板厚方向に観察し、結晶粒界の位置に生じている段差を30点以上測定した。その結果、方法4の試験片は最も大きな段差が0.5μm超であったが、方法5の試験片では最大でも0.5μm以下であった。この結果から、単に切断面の表面粗さを小さくするだけでは疲労強度の向上には不十分であり、さらに切断面に存在する結晶粒界における段差をも低減することによって、初めて従来にない高い疲労強度を有するロータコアを得ることができることが明らかとなった。
ここで、レーザビームの傾斜角θを1~5°の範囲としてレーザ切断加工を行うことで結晶粒界の段差を小さくできるメカニズムは、現時点では十分に明らかとなっていないが、発明者らは、以下のように考えている。レーザ照射による鋼板の溶融、アシストガスによる溶融部の除去、そして溶融部の凝固という複数の物理現象が複雑に影響し合う。そのため、レーザを照射する角度を鋼板に対して垂直ではなく、所定の角度を持たせることで、結晶粒界という不連続境界に対して段差を生み出さない条件となり、切断面の性状が改善される。
本発明は、上記の新規な知見に基づき開発したものである。
ここで、磁石挿入孔を形成するのに使用するレーザの種類については、一般的に用いられているCOレーザやファイバーレーザなどを使用すればよく、特に制限はない。ただし、切断面に存在する結晶粒界における段差を0.5μm以下に制御するためには、パルスレーザよりも連続レーザの方が、加工面に沿って連続的に均一な加工が行えるため、好ましい。
また、レーザの出力や走査速度については、ドロスの発生や過度なスパッタリングを抑制可能な条件とすればよく、特に限定しない。また、本発明のレーザ切断加工においては、溶融した金属を吹き飛ばしてドロス付着を防止するためには、アシストガスを吹付けることが好ましい。吹き付けるガス種に制限は無く、圧縮空気やN、Arガスなどを用いることができる。
次に、本発明のロータコアに用いる鋼板は、以下の成分組成を有する無方向性電磁鋼板であることが好ましい。
C:0.0005~0.01mass%
Cは、磁気時効を起こして製品板の磁気特性を劣化させる元素であるので、極力低減するのが望ましく、本発明では0.01mass%以下に制限するのが好ましい。しかし、Cの極度の低減は、精錬コストの上昇を招くため、下限は0.0005mass%とする。より好ましくは0.0010~0.0040mass%の範囲である。
Si:7mass%以下
Siは、鋼の比抵抗を高めて鉄損を低減する元素であるため、モータ損失の低減に有効な元素である。また、鋼の強度を高めるためにも有効な元素である。上記の効果を得るためには0.5mass%以上含有していることが好ましい。しかし、7mass%を超える添加は、磁束密度の低下を招くほか、鋼が硬質化し、打抜加工等の機械加工でコア材を製造する際、切断面の性状、とくに切断面に存在する結晶粒界における段差を小さくすることが難しくなる。また、原料コストの上昇も招くので好ましくない。よって、Siは7mass%以下に制限するのが好ましい。より好ましくは2.5~6.5mass%の範囲であり、さらに好ましくは3.5~6.5mass%の範囲である。
Mn:0.05~3mass%
Mnは、Siと同様、鋼の比抵抗を高めて鉄損を低減したり、鋼の強度を高めたりするのに有効な元素である。また、熱間加工性を改善する元素でもある。上記効果を得るためには0.05mass%以上含有するのが好ましい。しかし、3mass%を超えると、磁束密度の低下を招くほか、鋼が硬質化して加工性の低下を招いたり、原料コストの上昇を招いたりする。よって、Mnは0.05~3mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.06~1.5mass%の範囲である。
Al:3mass%以下
Alも、Siと同様、鋼の比抵抗を高めて鉄損を低減したり、鋼の強度を高めたりするのに有効な元素である。上記効果を得るには0.0010mass%以上含有するのが望ましい。しかし、3mass%を超えると、磁束密度の低下を招くほか、鋼が硬質化して加工性の低下を招いたり、原料コストの上昇を招いたりするので、3mass%以下に制限するのが好ましい。より好ましくは0.1~1.5mass%の範囲である。
本発明に用いる鋼板は、上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物であるが、必要に応じて以下の成分を含有していてもよい。
P:0.001~0.1mass%
Pは、鋼の強度を高めて、打抜加工性を改善する効果がある。また、Pは、結晶粒界に偏析して、レーザ切断加工時に粒界とその近傍の鋼の融点を下げる作用があり、結晶粒界の段差の低減に有効であるので、0.001mass%以上添加するのが好ましい。しかし、0.1mass%を超えると、鋼が硬質化し過ぎて、圧延することが難しくなる他、原料コストの上昇を招く。よって、Pを添加する場合は、上限を0.1mass%とするのが好ましい。より好ましくは0.02~0.08mass%の範囲である。
S:0.01mass%以下
Sは、不可避的不純物として含有してくる元素であるが、結晶粒界に偏析して、レーザ切断加工時に粒界とその近傍の鋼の融点を下げる作用があり、結晶粒界の段差の低減に有効である。しかし、0.01mass%を超えると、レーザ切断加工に伴う加熱によってMn等と析出物を形成し、磁気特性の劣化を招くので、上限は0.01mass%とするのが好ましい。より好ましくは0.0020mass%以下である。
Sn:0.001~0.1mass%、Sb:0.001~0.1mass%
SnおよびSbは、結晶粒界に偏析してレーザ切断加工時に粒界とその近傍の鋼の融点を下げる作用があり、結晶粒界の段差の低減に有効であるので、それぞれ0.001mass%以上含有させることが好ましい。しかし、0.1mass%を超えると、圧延性が悪化し、原料コストも上昇するので、上限は0.1mass%とするのが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.02~0.08mass%の範囲である。
Ca:0.0002~0.005mass%、Mg:0.0002~0.005mass%
CaおよびMgは、安定な硫化物を形成し、母材鋼板の粒成長性を改善する効果があるので、それぞれ0.0002mass%以上含有させることが好ましい。しかし、0.005mass%を超えると、上記効果が飽和してしまうので、上限は0.005mass%とするのが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.001~0.004mass%の範囲である。
次に、本発明のレーザ切断加工を適用する対象について説明する。
本発明に用いる無方向性電磁鋼板は、板厚方向に1mass%以上のSi濃度傾斜を有することが好ましい。鋼板の渦電流損は、表皮効果により板厚の表層に集中するため、板厚表層のSi濃度を高めて比抵抗を大きくすることが渦電流損の低減に対して有効に作用する。この効果を十分に得るためには、鋼板の表層部と中心部とのSi濃度差を1mass%以上(表層部が中心部より1mass%以上高い)とすることが好ましい。ここで、上記のSi濃度差は、鋼板を板厚方向に3分割したとき、表裏の鋼板表面から板厚の1/3までの層を表層部、その間に挟まれた板厚中央の板厚の1/3の層を中心部としたとき、表裏の表層部のSi濃度の平均値と中心部のSi濃度との差のことをいう。また、上記Siの濃度差の測定は、鋼板断面のSi濃度分布をEPMAで測定してもよいし、全板厚の鋼板と、鋼板の両面から板厚の1/3を化学研磨などで溶解・除去した残りの板厚を1/3のSi濃度を湿式分析し、その差から求めてもよい。
表層に高Si層を有する電磁鋼板は、高周波域での鉄損などの磁気特性に優れる反面、打抜加工などの機械加工による切断面の性状を制御するのが難しい材料である。そのため、表層に高Si層を有する電磁鋼板には、本発明のレーザ切断加工を適用するのが極めて有効である。
また、モータ効率を向上する観点からは、モータを組み立てたときのロータコアの外径とステータコアの内径との間のギャップを小さくすることが有効である。しかし、従来の打抜加工では、切断面を字平滑化するには、ロータコアの外周面に何らかの追加処理することが必要となるため、上記ギャップを小さくすることは困難である。一方、本発明のレーザ切断加工を適用した場合には、ロータコアの外周面を凹凸の小さい、極めて平滑な面とすることができる。その結果、本発明のレーザ切断加工を適用した場合には、ロータコアの外径とステータコアの内径との間の最短距離を0.30mm以下とすることが可能となるので、モータ効率の向上に大きく寄与することができる。原理的には、レーザ切断時のカーフ幅以上であれば従来にない狭いエアギャップのモータが製造可能となる。
また、ロータコアを製造する際、本発明のレーザ切断加工を適用する箇所については、ロータコアの回転時に最も遠心力による応力集中が起こる部分とするのが最も有効である。しかし、さらにロータコアの外周にも適用することで、ロータコアの疲労強度をより確実に高めることができる。
さらに、本発明のレーザ切断加工は、磁石挿入孔の形成のみならず、磁石挿入孔と同様、遠心力による応力集中を受ける、ロータコアを冷却するための冷剤を流す冷却孔の形成にも適用することができる。したがって、本発明においては、レーザ切断加工で開けた孔のすべてに永久磁石が挿入されている必要はない。また、永久磁石は、磁石挿入孔の開口面積の一部に挿入されていればよく、全領域を占める必要はない。
なお、先述したように、上記説明においては、熱ビームとしてレーザビームを用いた切断加工(レーザ切断加工)を用いた例で説明してきたが、レーザビーム以外に、電子ビーム、プラズマビームやガス溶断等を用いた熱切断加工を用いてもよい。ただし、製造コスト低減や生産性向上、設備投資抑制等の観点からは、レーザ切断加工が最も好ましい。
表2に示した成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼を通常公知の精錬プロセスで溶製し、連続鋳造して鋼素材(スラブ)とした後、熱間圧延して板厚2.3mmの熱延板とした。次いで、この熱延板に1000℃×10sの熱延板焼鈍を施し、酸洗し、冷間圧延して表2に示した最終板厚の冷延板とした。次いで、上記冷延板に20vol%H-80vol%Nの雰囲気下で、表2に示した種々の温度で10s間保持する仕上焼鈍を施した。その後、上記鋼板表面に有機無機混合の絶縁被膜を被成して無方向性電磁鋼板(製品板)とした。
斯くして得た製品板を素材として、図1に示した形状を有する鋼板(ロータコア材)を、表2に示した種々の方法で加工した。その後、上記ロータコア材のA部(図1参照)より図3に示した形状の疲労試験片を切り出し、疲労試験に供した。この際、試験片の平行部のレーザ切断面(C部、図3参照)に存在する結晶粒界における段差を前述した実験と同様にして測定した。また、疲労試験は、引張り-引張り(片振り)、応力比:0.1、周波数:20Hzの条件で実施し、10回の繰り返しにおいても破断が生じない最大応力を疲労強度とした。
上記測定の結果を、鋼成分、製造条件と併せて表2に示した。この結果から、高い疲労強度が得られているのは、レーザ切断面に存在する結晶粒界の段差の最大値が0.5μm以下のものであり、上記段差は、レーザ切断加工で傾斜角θを1~5°の範囲に設定した場合である。一方、上記条件を外れるレーザ切断加工や、打抜加工では、結晶粒界の段差を0.5μm以下にすることができず、高い疲労強度が得られていないことがわかる。中でも、傾斜角θを3~5°の範囲に設定した発明例は、レーザ切断面に存在する結晶粒界の段差が0.33μm以下となっている。
Figure 0007601068000002
C:0.01mass%、Si:2mass%、Mn:0.03mass%、Al:0.005mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼を通常公知の精錬プロセスで溶製し、連続鋳造した鋼素材(スラブ)とした。次いで、上記スラブを、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。次いで、この熱延板に1000℃×10sの熱延板焼鈍を施し、酸洗し、冷間圧延して最終板厚0.1mmの冷延板とした。次いで、上記冷延板に、四塩化珪素とNの混合ガス中で1200℃の熱処理することで鋼板表層のSi濃度を高める侵珪処理を施した。この際、四塩化珪素の濃度や、保持時間を調整してSi濃度分布が異なる種々の無方向性電磁鋼板(製品板)を製造した。
斯くして得た製品板について、Si濃度分布およびC含有量を測定した。また、実施例1と同様、上記製品板から、出力:200W、走査速度:30m/min、傾斜角θ:2°のレーザ切断加工条件で、図1の形状のロータコア材を採取し、ブリッジ部(A部)から疲労試験片を切り出して、疲労試験に供した。この際、試験片の平行部のレーザ切断面(C部、図3参照)に存在する結晶粒界の段差を測定した。また、疲労試験は、引張り-引張り(片振り)、応力比:0.1、周波数:20Hzの条件で実施し、10回の繰り返しにおいても破断が生じない最大応力を疲労強度とした。
上記の測定結果を表3に併記した。この結果から、侵珪処理を施した鋼板は、疲労強度が大きく向上していることがわかる。特に鋼板の表層部と板厚中心部とのSi濃度差を1mass%以上とした鋼板は、Siの平均含有量が同じでも、Si濃度が板厚方向で均一な鋼板に対して高い疲労強度が得られていることがわかる。
Figure 0007601068000003
本発明の技術は、磁石に遠心力が加わるIPMモータのロータコアに限定されるものではなく、磁石挿入孔を有しない、例えば、シンクロナスリラクタンスモータ等のロータコアや、モータ特性の向上のための磁気回路を構成する分野にも適用することができる。

Claims (20)

  1. 素材鋼板から採取し、ロータコアの外周形状に加工してなる鋼板を積層して構成されるロータコアであって、
    上記鋼板には熱切断加工されてなる複数の孔が形成されてなり、かつ、
    上記孔の切断面に存在する、結晶粒界における段差の最大値が0.33μm以下であることを特徴とするロータコア。
  2. 上記素材鋼板は、C:0.0005~0.01mass%、Si:7mass%以下、Mn:0.05~3mass%およびAl:3mass%以下を含有し、さらに任意選択的にP:0.001~0.1mass%、S:0.01mass%以下、Sn:0.001~0.1mass%、Sb:0.001~0.1mass%、Ca:0.0002~0.005mass%およびMg:0.0002~0.005%のうちから選ばれる少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる無方向性電磁鋼板であることを特徴とする請求項1に記載のロータコア。
  3. 上記素材鋼板は、鋼板表裏の表面から板厚の1/3までを表層部、鋼板表面から板厚の1/3より内側を中心部としたとき、上記表層部の表裏の平均Si含有量が中心部より1mass%以上高いことを特徴とする請求項1に記載のロータコア。
  4. 上記素材鋼板は、鋼板表裏の表面から板厚の1/3までを表層部、鋼板表面から板厚の1/3より内側を中心部としたとき、上記表層部の表裏の平均Si含有量が中心部より1mass%以上高いことを特徴とする請求項2に記載のロータコア。
  5. 上記熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のロータコア。
  6. 上記ロータコアの形状に加工した鋼板の外周が熱切断加工されてなることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のロータコア。
  7. 上記ロータコアの形状に加工した鋼板の外周が熱切断加工されてなることを特徴とする請求項5に記載のロータコア。
  8. 上記外周の熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする請求項6に記載のロータコア。
  9. 上記外周の熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする請求項7に記載のロータコア。
  10. 上記孔の一部または全てに永久磁石を挿入してなることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のロータコア。
  11. 上記孔の一部または全てに永久磁石を挿入してなることを特徴とする請求項5に記載のロータコア。
  12. 請求項2に記載の成分組成を有する素材鋼板から採取したロータコア形状の鋼板に熱切断加工によって複数の孔を形成した後、上記鋼板を積層してロータコアを組み立てるロータコアの製造方法であって、
    上記熱切断加工では、熱ビームを鋼板表面の垂線に対して切り落とす孔側に~5°傾斜させて照射することで、切断面に存在する結晶粒界における段差の最大値を0.5μm以下とすることを特徴とするロータコアの製造方法。
  13. 上記素材鋼板は、鋼板表裏の表面から板厚の1/3までを表層部、鋼板表面から板厚の1/3より内側を中心部としたとき、上記表層部の表裏の平均Si含有量が中心部より1mass%以上高いことを特徴とする請求項12に記載のロータコアの製造方法。
  14. 上記熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする請求項12または13に記載のロータコアの製造方法。
  15. 上記ロータコアの形状に加工した鋼板の外周を熱切断加工することを特徴とする請求項12または13に記載のロータコアの製造方法。
  16. 上記ロータコアの形状に加工した鋼板の外周を熱切断加工することを特徴とする請求項14に記載のロータコアの製造方法。
  17. 上記外周の熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする請求項15に記載のロータコアの製造方法。
  18. 上記外周の熱切断加工がレーザ切断加工であることを特徴とする請求項16に記載のロータコアの製造方法。
  19. 請求項1~4のいずれか1項に記載のコアをロータコアに用いてなる、ロータコアとステータコアを有するモータであって、
    上記ロータコアの外径とステータコアの内径との最短距離が0.30mm以下であることを特徴とするモータ。
  20. 請求項5に記載のコアをロータコアに用いてなる、ロータコアとステータコアを有するモータであって、
    上記ロータコアの外径とステータコアの内径との最短距離が0.30mm以下であることを特徴とするモータ。
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