JP7616910B2 - 樹脂成形体及び樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、自動車においては、車載装置である情報通信機器の電子化が進行しており、情報通信機器の誘電損失を抑制するために、情報通信機器に使用されている電線を被覆する被覆材には誘電特性が優れる材料を選定する必要がある。
そこで、軟質性塩化ビニルの誘電特性の悪化を抑制するために、塩化ビニル系樹脂にポリオレフィン系樹脂を添加したものを採用することがある(例えば、特許文献2参照)。しかし、このような混合樹脂の場合、混合した樹脂の成形温度の違いから成形が困難である。
[1]塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ポリプロピレン系樹脂10~70質量部を有する成形体用樹脂組成物からなる樹脂成形体であって、前記樹脂成形体中の1cm2単位面積あたりにおける前記ポリプロピレン系樹脂の粒状塊の平均の大きさが1~25μmである樹脂成形体。
[2]前記塩化ビニル系樹脂は、軟化点(Ta)が50~80℃である、[1]に記載の樹脂成形体。
[3]前記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル共重合体である、[1]又は[2]に記載の樹脂成形体。
[4]前記ポリプロピレン系樹脂は、軟化点(Tb)が110~150℃である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[5]前記ポリプロピレン系樹脂の軟化点(Tb)と前記塩化ビニル系樹脂の軟化点(Ta)との差分(Tb-Ta)は、60~100℃である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[6]電線被覆材である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[7]塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ポリプロピレン系樹脂10~70質量部を有する成形体用樹脂組成物を調整する調整工程と、前記成形体用樹脂組成物を前記塩化ビニル系樹脂の軟化点(Ta)以上、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂の軟化点(Tb)以下の成形温度で成形する成形工程とを含む、樹脂成形体の製造方法。
[8]前記成形温度は、70~150℃である、[7]に記載の樹脂成形体の製造方法。
本発明の実施形態に係る樹脂成形体は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ポリプロピレン系樹脂10~70質量部を有する成形体用樹脂組成物からなる。樹脂成形体を形成する成形体用樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂の配合割合が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、10質量部未満であると、成形後の誘電率を十分に低下させることができず、誘電特性が優れる成形体が得られない。また、樹脂成形体を形成する成形体用樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂の配合割合が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、70質量部を超えると、ポリプロピレン系樹脂の軟化点以下での成形が困難となる。
上記観点から、成形体用樹脂組成物のポリプロピレン系樹脂の配合割合は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、20~60質量部であることが好ましく、25~55質量部であることがより好ましく、30~50質量部であることがさらに好ましい。
上記観点から、樹脂成形体中の1cm2単位面積当たりのポリプロピレン系樹脂の粒状塊の平均大きさは、1~25μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましく、1~15μmであることがさらに好ましい。
〈粒状塊の平均大きさの測定方法〉
樹脂成形体の断面から任意の箇所で1cm2を3箇所選択し、その範囲内の各粒状塊の最大径を透過型電子顕微鏡(TEM)によりを測定する。各箇所に存在するポリプロピレン系樹脂の各粒状塊の最大径を測定し、測定した最大径の平均値を算出し、樹脂成形体中の1cm2単位面積あたりにおけるポリプロピレン系樹脂の粒状塊の平均の大きさとする。このとき、ポリプロピレン系樹脂の粒状塊の一部しか撮影されてないものについては最大径の測定を行わない。
塩化ビニル系樹脂は、特に限定されず、塩化ビニル単量体の単独重合体の他、例えば、(1)塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体、(2)塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂をグラフトさせたグラフト共重合体等が挙げられる。さらに、これらの塩化ビニル系樹脂を塩素化した塩素化塩化ビニル系樹脂も挙げられる。これら塩化ビニル系樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
なお、上記平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K 6720-2:1999「プラスチック-塩化ビニルホモポリマー及びコポリマー(PVC)-第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
なお、本発明において、「軟化点」とは、樹脂などの物質が温度の上昇によって軟化し、変形を始めるときの温度を意味する。通常、物質の温度を上げたとき、物質が完全に液体となる温度を融点と呼ぶが、樹脂などの物質は、明確な融点を示さないで漸次軟化して溶融状態に至り、はっきりした状態の変化を特定しにくいため、融点と区別して軟化点と呼ぶことがある。ここでいう軟化点は、JIS K7206:2016「プラスチック-熱可塑性プラスチック-ビカット軟化温度(VST)の求め方」のA法に準拠して測定されるビカット軟化温度により表すことができる。
ポリプロピレン系樹脂は、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンを主成分とするエチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン-プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、プロピレンを主成分とするエチレン-プロピレンランダム共重合体を含有することが好ましい。また、誘電率低下の観点から、プロピレンを主成分とするエチレン-プロピレンブロック共重合体を含有してもよい。なお、ここで主成分とするとは共重合体中のプロピレン含有量が50質量%以上であることを意味する。
なお、軟化点は、JIS K7206:2016「プラスチック-熱可塑性プラスチック-ビカット軟化温度(VST)の求め方」のA法に準拠して測定されるビカット軟化温度により表すことができる。
また、本発明の樹脂成形体は、本発明の目的を損なわない範囲で添加剤が添加されてもよい。樹脂成形体に加えられる各種添加剤としては、熱安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、顔料、難燃剤、無機充填剤及び可塑剤等が挙げられる。添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
有機錫系安定剤としては、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、及びジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。上記安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記熱安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
内部滑剤としては特に限定されず、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等のワックス系滑剤が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明における樹脂成形体の製造方法は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ポリプロピレン系樹脂10~70質量部を有する成形体用樹脂組成物を調整する調整工程と、成形体用樹脂組成物を塩化ビニル系樹脂の軟化点(Ta)以上、かつ、ポリプロピレン系樹脂の軟化点(Tb)以下の温度で成形する成形工程とを含む。
成形手段としては、押出成形が好ましく、一軸押出機、二軸押出機、射出成型機等を用いて成形することができる。
本発明の樹脂成形体の製造方法で得られた樹脂成形体は、圧延機等で圧延することで所望の厚みの電線被覆材として用いることができる。
さらに、本発明における樹脂成形体の製造方法によれば、成形体用樹脂組成物を、ポリプロピレン系樹脂の軟化点(Tb)以下の温度に加温して成形することで、ポリプロピレン樹脂の全てが溶融せずに粒状塊として樹脂成形体中に残存するため、ポリプロピレン系樹脂の誘電率を維持することが可能となる。また、本発明における樹脂成形体の製造方法によれば、成形体用樹脂組成物を、塩化ビニル系樹脂の軟化点(Ta)以上の温度に加温して成形することで、成形時における塩化ビニル系樹脂のゲル過不足などの弊害を解消することができる。
[実施例1、比較例1,3]
塩化ビニル系樹脂(徳山積水社製、品番SL-P40)100質量部に、有機錫系安定剤(日東化成社製、品番ONZ-7F)2質量部、ワックス系滑剤(クラリアントジャパン社製、品番Wax OP)0.5質量部、さらに、ポリプロピレン系樹脂(セイシン社製、品番PPW-5J)を表1に示した割合で配合した後、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(株式会社カワタ社製)で攪拌混合して成形体用樹脂組成物を得た。そして、得られた成形体用樹脂組成物を表1に記載された温度に加熱したロールで混錬し、100℃に加熱したプレス機で成形品を作製することで、樹脂成形体を得た。
塩化ビニル系樹脂(徳山積水社製、品番TG40)100質量部に、有機錫系安定剤(日東化成社製、品番ONZ-7F)2質量部、ワックス系滑剤(クラリアントジャパン社製、品番Wax OP)0.5質量部、さらに、ポリプロピレン系樹脂(セイシン社製、品番PPW-5J)表1に示した割合で配合した後、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(株式会社カワタ社製)で攪拌混合して成形体用樹脂組成物を得た。そして、得られた成形体用樹脂組成物を表1に記載された温度に加熱したロールで混錬し、100℃に加熱したプレス機で成形品を作製することで、樹脂成形体を得た。
使用した塩化ビニル系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の軟化点は、JIS K7206:2016「プラスチック-熱可塑性プラスチック-ビカット軟化温度(VST)の求め方」のA法に準拠して測定した。具体的には、100℃で3時間乾燥した樹脂を融点(Tm)+30℃で熱プレスをして、10mm×10mm×厚み5mmの試験片を作製した。作製した試験片に対して、昇温速度50℃/時、試験荷重10Nの条件で3回測定を行い、これらの平均値をビカット軟化温度とした。塩化ビニル系樹脂の軟化点(Ta)、ポリプロピレン系樹脂の軟化点(Tb)及び差分(Tb-Ta)を表1に示す。
得られた樹脂成形体の誘電率は、IEC62631-2-1「自動平衡ブリッジ法」に準拠して測定した。測定機器には、プレシジョンLCRメータ E4980A(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて、導電性銀ペイントの平行になった直径36mmの電極の間にセットし、室温(23℃)及び周波数1MHzの条件下で測定し、誘電率を得た。得られた誘電率は、下記基準で判定した。
《判定基準》
A(合格):誘電率が3.1(F/m)以下
B(不合格):誘電率が3.1(F/m)超
加熱したオープンロールミキサーで混練する際、5分以内にフロントロールに巻付き、その3分後の樹脂成形体シートの外観を観察し、下記基準で判定した。
《判定基準》
A(合格):外観が滑らかで、シートにたるみがない
B(不合格):樹脂の溶融によりシート成形が不可能であるが、混錬された破片を集めてプレスすることで成形体の作製が可能
C(不合格):樹脂の溶融によりシート成形が不可能
製造された樹脂成形体のうち、任意の3箇所から1cm2の切片をTEM用のサンプルとして切り取り、サンプル中のポリプロピレン系樹脂の粒状塊の最大径をTEMにて測定し、測定した最大径の平均値を算出し、樹脂成形体中の1cm2単位面積あたりにおけるポリプロピレン系樹脂の粒状塊の平均の大きさを得た。その結果を表1に示す。
※粒状塊の平均の大きさをTEMで測定することは困難であったため、レーザー顕微鏡にて測定した。(図4参照)
実施例1~3に示すように、誘電特性及び成形性が優れる樹脂成形体とするためには、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ポリプロピレン系樹脂10~70質量部の割合で配合され、ポリプロピレン系樹脂の軟化点以下で成形されることが必要である。
比較例1に示すように、ポリプロピレン系樹脂を添加していないと、ポリプロピレン系樹脂の軟化点以下での成形は合格であるが、誘電率が高くなり不合格である。
比較例2に示すように、ポリプロピレン系樹脂の配合量が多いと、ポリプロピレン系樹脂の軟化点以下の成形温度であったとしてもフロントロールに巻付かず、シート成形が不可能であり、成形性が不合格である。
比較例3,4に示すように、ポリプロピレン系樹脂の配合量が10~70質量部の範囲内であったとしても、成形温度がポリプロピレン系樹脂の軟化点を超えていることから、フロントロールに巻付かず、シート成形が不可能であり、成形性が不合格である。
また、例として、実施例1における樹脂成形体のTEM画像を図1に示し、比較例3における樹脂成形体のTEM画像を図2に示す。さらに、ポリオレフィン系樹脂の全体分布図として、実施例1における樹脂成形体のレーザー顕微鏡の画像を図3に示し、比較例における樹脂成形体3のレーザー顕微鏡の画像を図4に示す。図1~4に示すように、成形温度をポリプロピレン系樹脂の軟化点以下とすることで、粒状塊の平均大きさを1~25μmとすることができる。
Claims (7)
- 塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ポリプロピレン系樹脂10~70質量部を有する成形体用樹脂組成物からなる樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体中の1cm2単位面積あたりにおける前記ポリプロピレン系樹脂の粒状塊の平均の大きさが1~25μmであり、
前記ポリプロピレン系樹脂の軟化点(Tb)と前記塩化ビニル系樹脂の軟化点(Ta)との差分(Tb-Ta)は、60~100℃である、樹脂成形体。 - 前記塩化ビニル系樹脂は、軟化点(Ta)が50~80℃である、請求項1に記載の樹脂成形体。
- 前記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル共重合体である、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
- 前記ポリプロピレン系樹脂は、軟化点(Tb)が110~150℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 電線被覆材である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ポリプロピレン系樹脂10~70質量部を有する成形体用樹脂組成物を調整する調整工程と、
前記成形体用樹脂組成物を前記塩化ビニル系樹脂の軟化点(Ta)以上、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂の軟化点(Tb)以下の成形温度で成形する成形工程とを含み、
前記ポリプロピレン系樹脂の軟化点(Tb)と前記塩化ビニル系樹脂の軟化点(Ta)との差分(Tb-Ta)は、60~100℃である、樹脂成形体の製造方法。 - 前記成形温度は、70~150℃である、請求項6に記載の樹脂成形体の製造方法。
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