以下、実施の形態に基づき、本発明を具体的に説明する。なお、以下においては、雪氷上路面での使用に際して効果が顕著に発揮されるスタッドレスタイヤを基本として説明するが、一般のタイヤについても同様に考えることができる。
1.本実施の形態に係る空気入りタイヤ
本実施の形態に係る空気入りタイヤは、トレッド部(以下、「トレッド」ともいう)が、トレッドゴム組成物から構成されたトレッド本体部と、トレッド本体部のトレッドゴム組成物よりもポリマー濃度が高いゴム組成物から構成された表層部とにより形成されており、表層部に、水溶性の無機フィラー(以下、「水溶性フィラー」ともいう)が含有されていることを特徴としている。
本発明者は、従来のタイヤでは、何故、装着した後、ある程度の距離を走行しなければ、トレッド本来のグリップ性能が発揮されないのか、その原因について検討した。
その結果、加硫後のタイヤのトレッドは、全体がトレッドゴム組成物で一様に形成されるのではなく、トレッドの最表面には、内層のトレッドゴム組成物よりもポリマー濃度が高いポリマーリッチな層(以下、「スキン層」ともいう)が、数10~100μm程度の厚みで形成されており、このスキン層が除去されて、トレッドが剥き出しになるまで、トレッド本来のグリップ性能が発揮されないことが分かった。
即ち、例えば、スタッドレスタイヤの場合、装着初期には、ポリマーリッチで表面の凹凸が少ないスキン層が氷路面などに接することになるため、スタッドレスタイヤとしての十分な氷上グリップ性能が発揮されず、アスファルト路面を100km程度走行したりして、スキン層を除去することにより、初めて、十分な氷上グリップ性能が発揮されることが分かった。
そして、このような現象は、スタッドレスタイヤ以外の一般のタイヤにおいても同様に発生しており、このスキン層の存在が、装着初期におけるグリップ性能の発揮を阻害していることが分かった。
そこで、本発明者は、このスキン層に水溶性フィラーを混入させることに思い至った。具体的には、加硫前の生タイヤのトレッドの表面に、水溶性フィラーを散布して、加硫を行う。これにより、水溶性フィラーがスキン層に取り込まれて、水溶性フィラーが混入されたスキン層がトレッドの表面に形成されることになるため、装着初期であっても、十分なグリップ性能を発揮させることができる。
即ち、水溶性フィラーリッチなスキン層が形成されると、一部の水溶性フィラーがトレッド表面に露出した状態のタイヤとなる。そして、このタイヤのトレッドが水に接触すると、露出している水溶性フィラーが水に溶解するため、トレッドの表面のスキン層には、水溶性フィラーが溶解した後の空隙が形成されて、微細な凹凸が形成される。そして、この微細な凹凸が路面に接すると、路面上の水が微細な凹凸を経由して除去されるため、装着直後であっても、十分なグリップ性能を発揮させることができる。
スキン層が順次摩耗されて本来のトレッド層が現れるまで、この空隙の形成と、水の除去が繰り返されて、グリップ性能が維持され、その後は、トレッド層本体が有するグリップ性能が十分に発揮される。水溶性フィラーリッチなスキン層は、従来のスキン層に比べて耐摩耗性が低いため、速やかにスキン層が摩耗して、短時間でトレッド層が現れる。この結果、装着初期から安定して十分なグリップ性能を発揮させることができる。なお、この耐摩耗性の低下は、スキン層の厚みが100μmと薄いため、タイヤ全体の摩耗性能への影響は少ない。
そして、このような効果は、グリップし難い雪氷路面上を走行するスタッドレスタイヤにおいて顕著に発揮され、雪氷路面上の水が微細な凹凸を経由して除去されることにより、装着直後であっても、直ちに、十分な氷上グリップ性能を発揮させることができる。
2.水溶性の無機フィラー
次に、本実施の形態において特徴的に使用される水溶性の無機フィラーについて説明する。
本実施の形態において、水溶性フィラーとしては、水への溶解性を有する無機フィラー(好ましくは多孔質)であれば、特に限定されることなく、使用することができ、例えば、常温(20℃)の水への溶解度が1g/100g水以上の材料を使用することができる。
一般的に、フィラーは、その見かけ比重が小さいほど、微粒子又は多孔質となる。ここで、フィラーの窒素吸着比表面積(N2SA)は、フィラーの細孔表面積を示しており、一般に粒子が多孔質でない平滑表面を有する場合、中央値粒度(メジアン径、D50)が0.7μmでN2SAが7m2/g、D50が0.5μmでN2SAが15m2/g、D50が0.3μmでN2SAが34m2/gの数学的関係にある。後述する実施例で水溶性フィラーとして使用している硫酸マグネシウムは、D50が7.3μmで、N2SAが9.0m2/gであることから、粒子径の割にN2SAが大きく、多孔質であることが分かる。
本実施の形態において、水溶性フィラーの中央値粒度は、100μm以下であり、90μm以下であることが好ましい。80μm以下であるとより好ましく、70μm以下であるとさらに好ましい。20μm以下であると特に好ましく、10μm以下であると最も好ましい。一方、0.4μm以上であることが好ましく、0.6μm以上であるとより好ましく、1.0μm以上であるとさらに好ましい。なお、ここで、中央値粒度(D50)はレーザー回折法にて測定することができ、レーザー回折散乱法によって得られた質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径を意味する。
中央値粒度(D50)の具体的な測定は、(株)島津製作所製SALD-2000J型を用い、室温で分散溶媒(トルエン)と分散剤(10質量%スルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム/トルエン溶液)との混合溶液に水溶性フィラーを分散させて得られた分散液に、超音波を照射しながら、5分間攪拌して試験液を得た後この試験液を回分セルに移し、1分後に測定する(屈折率:1.70-0.20i)。
また、グリップ性能と耐摩耗性のバランスの観点から、水溶性フィラーの見かけ比重は、0.70g/ml以下であり、0.65g/ml以下であることが好ましい。0.62g/ml以下であるとより好ましい。一方、0.20g/ml以上であると好ましく、0.30g/ml以上であるとより好ましい。0.40g/ml以上であるとさらに好ましく、0.55g/ml以上であると特に好ましい。なお、ここで、見かけ比重は、50mlメスシリンダーに見かけ容積で30ml量り取ったときの質量から算出して求められる値である。
また、粒子の安定性や耐潮解性、さらに、グリップ性能と耐摩耗性のバランスの観点から、水溶性フィラーの水分率は、少ない方が好ましい。具体的には、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であるとより好ましい。0.3質量%以下であるとさらに好ましく、0.1質量%以下であると特に好ましい。なお、ここで、水分率は、250℃の恒温槽に1時間静置した際の減量率より求められる値である。
また、グリップ性能と耐摩耗性のバランスの観点から、水溶性フィラーの窒素吸着比表面積(N2SA)は、1.3m2/g以上であることが好ましく、3.0m2/g以上であるとより好ましく、4.0m2/g以上であるとさらに好ましい。5.0m2/g以上であると特に好ましく、8.0m2/g以上であると最も好ましい。一方、40m2/g以下であることが好ましく、30m2/g以下であるとより好ましく、20m2/g以下であるとさらに好ましい。なお、ここで、N2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値であり、N2SAが大きいほど多孔質であり、より好適に水分を吸収することができる。
本実施の形態において、水溶性フィラーとしては、加硫金型の腐食や損傷を招かないことや、人体を含む環境への影響を考慮すると、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の金属硫酸塩;塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の金属塩化物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩;等が挙げられる。なお、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記した各水溶性フィラーの内でも、金属硫酸塩がより好ましく、硫酸マグネシウムがさらに好ましい。また、硫酸マグネシウムの中でも、無水硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム2水和物、硫酸マグネシウム3水和物が好ましく、無水硫酸マグネシウムがより好ましい。また、硫酸ナトリウムも好ましく、無水硫酸ナトリウムがより好ましい。なお、これらについても、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
そして、本実施の形態において、成形された生タイヤのトレッド表面に散布されている水溶性フィラーの量としては、0.005~0.04g/cm2であることが好ましく、0.01~0.03g/cm2であるとより好ましく、0.012~0.017g/cm2であるとさらに好ましい。このような散布量とすることにより、スキン層における水溶性フィラーの含有率を10~80質量%として、適切な表面グリップ性能を装着初期から発揮させることができる。
なお、本実施の形態においては、さらに、非水溶性の無機フィラー(以下、「非水溶性フィラー」ともいう)を添加してもよい。この非水溶性フィラーは、水溶性フィラーと異なり、水に接触しても溶解せず、スキン層に残って路面を引っ掻くため、形成された微細な凹凸と路面(雪氷路面など)との間の摩擦抵抗がより大きくなり、さらに、グリップ性能(特に、氷上グリップ性能)が向上する。
具体的な非水溶性フィラーとしては、卵殻、テトラポッド型酸化亜鉛結晶体、もみ殻、タルク、酸化マグネシウム、鉄粉などが挙げられ、水溶性フィラーに対する添加率としては、3~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であるとより好ましく、10~15質量%であるとさらに好ましい。なお、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記した水溶性フィラーは、スタッドレスタイヤのトレッドゴム組成物においても使用することができ、このとき、水溶性フィラーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であるとより好ましく、3質量部以上であるとさらに好ましい。一方、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であるとより好ましく、30質量部以下であるとさらに好ましい。20質量部以下であると特に好ましい。
3.トレッドゴム組成物
前記したように、加硫時、タイヤのトレッド表面には、ポリマーリッチなスキン層が形成されることが避けられず、装着直後は、トレッド本来のグリップ性能を発揮させることができない。しかし、ある程度走行して、スキン層が除去された後は、トレッド本来のグリップ性能が発揮される必要がある。そこで、以下、トレッド本来のグリップ性能を発揮させるために、トレッドゴム組成物において使用される水溶性フィラー以外の各材料について説明する。
本実施の形態において、トレッドゴム組成物は、イソプレン系ゴムとブタジエンゴムとスチレンブタジエンゴムとを含有するゴム成分、水溶性微粒子、および液体可塑剤を含み、かつ所定のスチレンブタジエンゴムおよび液体可塑剤を有している。
(1)ゴム成分
本実施の形態において、トレッドゴム組成物のゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、SBR、BR、イソプレン系ゴムが好ましく、SBR、BRがより好ましい。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上であることが好ましく、35万以上であるとより好ましい。一方、400万以下であることが好ましく、300万以下であるとより好ましい。なお、ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求められる値である。
SBRのスチレン量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であるとより好ましく、15質量%以上であるとさらに好ましい。一方、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であるとより好ましく、35質量%以下であるとさらに好ましい。なお、ここで、SBRのスチレン含量は、1H-NMR測定により算出される値である。
SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、15質量%以上であるとさらに好ましい。一方、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であるとより好ましい。なお、ここで、SBRのビニル含量は、ブタジエン部のビニル含量(ブタジエン構造中のビニル基のユニット数量)のことを示し、1H-NMR測定により算出される値である。
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖および末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。中でも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
SBRとしては、油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。油展SBRを用いる場合、SBRの油展量、即ち、SBRに含まれる油展オイルの含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
SBRのガラス転移温度(Tg)は、-90℃以上であることが好ましく、-50℃以上であるとより好ましい。一方、0℃以下であることが好ましく、10℃以下であるとより好ましい。なお、ここで、ガラス転移温度は、JIS-K7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定して得られる値である。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であるとより好ましく、70質量%以上であるとさらに好ましい。一方、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であるとより好ましい。
BRとしては、特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、希土類系BRが好ましい。
希土類系BRは、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、シス含量が高く、かつビニル含量が低いという特徴を有している。希土類系BRとしては、タイヤ製造における汎用品を使用できる。
上記希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。中でも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
BRのシス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)は、90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であるとより好ましく、95質量%以上であるとさらに好ましい。なお、ここで、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
BRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、1.8質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であるとより好ましく、0.5質量%以下であるとさらに好ましい。0.3質量%以下であると特に好ましい。
BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用することができる。変性BRとしては、前述した変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であるとより好ましい。一方、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であるとより好ましく、30質量%以下であるとさらに好ましい。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、天然ゴムが好ましい。
ゴム成分100質量%中のSBR、BRの合計含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であるとより好ましく、70質量%以上であるとさらに好ましい。90質量%以上であると特に好ましく、100質量%であると最も好ましい。
(2)ワックス
本実施の形態において、トレッドゴム組成物は、ワックスを含有していることが好ましい。ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス等の天然系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスがより好ましい。また、マイクロクリスクリンワックス100質量%中の分岐アルカンの含有量が50質量%以上であることが好ましい。
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
ゴム成分100質量部に対するパラフィンワックスの含有量は、2.3質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であるとより好ましく、1.5質量部以下であるとさらに好ましい。1.3質量部以下であると特に好ましい。一方、0.3質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であるとより好ましく、0.8質量部以上であるとさらに好ましい。1.0質量部以上であると特に好ましい。
ゴム成分100質量部に対するマイクロクリスタリンワックスの含有量は、0.3質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であるとより好ましく、0.8質量部以上であるとさらに好ましい。1.0質量部以上であると特に好ましい。一方、3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であるとより好ましく、1.5質量部以下であるとさらに好ましい。
(3)老化防止剤
本実施の形態において、トレッドゴム組成物は、老化防止剤を含有していることが好ましい。老化防止剤としては特に限定されないが、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、フェニレンジアミン系老化防止剤は、表層部への移行速度が速くプリードする機能に優れている点で好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミンがより好ましい。なお、フェニレンジアミン系老化防止剤と共に、キノリン系老化防止剤を併用してもよいが、キノリン系老化防止剤はフェニレンジアミン系老化防止剤よりも移行速度が遅く、表層の軟化効果は低い傾向がある。
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
ゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量は、2.1質量部以上であることが好ましく、2.4質量部以上であるとより好ましい。一方、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であるとより好ましく、7質量部以下であるとさらに好ましい。
ゴム成分100質量部に対する老化防止剤の合計含有量は、2質量部以上であることが好ましく、2.4質量部以上であるとより好ましい。一方、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であるとより好ましく、8質量部以下であるとさらに好ましい。
(4)液状可塑剤
本実施の形態において、トレッドゴム組成物は、液状可塑剤を含有していることが好ましい。液状可塑剤としては、20℃で液体状態の可塑剤であれば特に限定されず、オイル、液状樹脂、液状ポリマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、オイル、液状樹脂が好ましい。
ゴム成分100質量部に対する液状可塑剤の含有量は、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であるとより好ましく、25質量部以上であるとさらに好ましい。35質量部以上であると特に好ましい。一方、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であるとより好ましく、60質量部以下であるとさらに好ましい。50質量部以下であると特に好ましい。なお、本明細書において、液状可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、またはその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、軽度抽出溶媒和物(MES:mild extraction solvates)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE:treated distillate aromatic extracts)などを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油、オレイン酸含有油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、プロセスオイルが好ましく、アロマ系プロセスオイル、オレイン酸含有油が好ましい。
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
液状樹脂としては、20℃で液体状態のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、クマロンインデン系樹脂が好ましい。
液状ポリマー(液状ジエン系ポリマー)としては、20℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(5)レジン
本実施の形態において、トレッドゴム組成物には、レジン(固体レジン:常温(25℃)で固体状態のレジン)を含有していることが好ましい。
レジンの軟化点は、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。一方、160℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。なお、レジンの軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
レジン(固体レジン)としては、特に制限されないが、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂は、水添されていてもよい。中でも、芳香族ビニル重合体、テルペン系樹脂が好ましい。
芳香族ビニル重合体とは、α-メチルスチレンおよび/またはスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体αーメチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、テルペン芳香族樹脂、芳香族変性テルペン樹脂が好ましく、芳香族変性テルペン樹脂がより好ましい。
上記テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素およびその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
上記テルペン化合物としては、また、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
上記レジン、液状樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であるとより好ましく、5質量部以上であるとさらに好ましい。一方、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であるとより好ましく、40質量部以下であるとさらに好ましい。30質量部以下であると特に好ましい。
(6)その他の材料
本実施の形態において、トレッドゴム組成物には、アミド化合物および/またはSP値9.0以上の非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
アミド化合物としては、特に限定されないが、脂肪酸アミド、脂肪酸アミドエステルが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、脂肪酸アミドが好ましく、脂肪酸アミドと脂肪酸アミドエステルの混合物がより好ましい。
アミド化合物は脂肪酸金属塩との混合物であってもよく、効果がより好適に得られるという理由から、アミド化合物は、脂肪酸金属塩との混合物であることが好ましい。
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル、モリブデンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、カルシウム、亜鉛などのアルカリ土類金属が好ましく、カルシウムがより好ましい。
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、飽和脂肪酸としては、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などが挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エライジン酸などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。また、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸が好ましい。
脂肪酸アミドは、飽和脂肪酸アミドであっても不飽和脂肪酸アミドであってもよく、飽和脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、ベへニン酸アミドなどが挙げられ、不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、不飽和脂肪酸アミドが好ましく、オレイン酸アミドがより好ましい。
脂肪酸アミドエステルは、飽和脂肪酸アミドエステルであっても不飽和脂肪酸アミドエステルであってもよく、飽和脂肪酸アミドエステルとしては、ステアリン酸アミドエステル、ベヘニン酸アミドエステルなどが挙げられ、不飽和脂肪酸アミドエステルとしては、オレイン酸アミドエステル、エルカ酸アミドエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、不飽和脂肪酸アミドエステルが好ましく、オレイン酸アミドエステルがより好ましい。
アミド化合物としては、例えば、日油(株)、ストラクトール社、ランクセス杜等の製品を使用できる。
ゴム成分100質量部に対する、アミド化合物の含有量は、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であるとより好ましく、0.8質量部以上であるとさらに好ましい。一方、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であるとより好ましく、3質量部以下であるとさらに好ましい。2質量部以下であると特に好ましい。なお、アミド化合物が脂肪酸金属塩との混合物である場合、アミド化合物の含有量には、アミド化合物に含まれる脂肪酸金属塩量も含まれる。
SP値9.0以上の非イオン性界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、下記式(1)および/または下記式(2)で表される非イオン界面活性剤;プルロニック型非イオン界面活性剤;モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジラウリルエーテル、エチレングリコールジ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールジオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。これら、非イオン界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、プルロニック型非イオン界面活性剤がより好ましい。
(式(1)中、R
lは、炭素数6~26の炭化水素基を表す。dは整数を表す。)
(式(2)中、R
2及びR
3は、同一若しくは異なって、炭素数6~26の炭化水素基を表す。eは整数を表す。)
上記式(1)で表される非イオン界面活性剤としては、エチレングリコールモノオレエート、エチレングリコールモノパルミエート、エチレングリコールモノパルミテート、エチレングリコールモノパクセネート、エチレングリコールモノリノレート、エチレングリコールモノリノレネート、エチレングリコールモノアラキドネート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールモノセチルエート、エチレングリコールモノラウレート等が挙げられる。
上記式(2)で表される非イオン界面活性剤としては、エチレングリコールジオレエート、エチレングリコールジパルミエート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジパクセネート、エチレングリコールジリノレート、エチレングリコールジリノレネート、エチレングリコールジアラキドネート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジセチルエート、エチレングリコールジラウレート等が挙げられる。
上記プルロニック型非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物とも呼ばれ、一般的には、下記式(I)で表わされる非イオン界面活性剤である。下記式(I)で表されるように、プルロニック型非イオン界面活性剤は、両側にエチレンオキシド構造から構成される親水基を有し、この親水基に挟まれるように、プロピレンオキシド構造から構成される疎水基を有する。
プルロニック型非イオン界面活性剤のポリプロピレンオキシドブロックの重合度(上記式(I)のb)、及びポリエチレンオキシドの付加量(上記式(I)のa+c)は特に限定されず、使用条件・目的等に応じて適宜選択できる。ポリプロピレンオキシドブロックの割合が高くなる程ゴムとの親和性が高く、ゴム表面に移行する速度が遅くなる傾向がある。ポリプロピレンオキシドブロックの重合度としては、100以下であることが好ましく、10~70であるとより好ましく、10~60であるとさらに好ましい。20~60であると特に好ましく、20~45であると最も好ましい。同様に、ポリエチレンオキシドの付加量としては、100以下であることが好ましく、3~65であるとより好ましく、5~55であるとさらに好ましい。5~40であると特に好ましく、10~40であると最も好ましい。
プルロニック型非イオン界面活性剤としては、BASFジャパン(株)製のプルロニックシリーズ、三洋化成工業(株)製のニューポールPEシリーズ、旭電化工業(株)製のアデカプルロニックLまたはFシリーズ、第一工業製薬(株)製のエパンシリーズ、日油(株)製のプロノンシリーズまたはユニルーブ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非イオン性界面活性剤のSP値は、ゴム成分のSP値との差が大きい方が好ましく、具体的には、9.0~12であることが好ましく、9.1~11であるとより好ましく、9.2~10.5であるとさらに好ましい。
なお、SP値は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出される溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。Hoy法とは、例えば、K.L.Hoy “Table of Solubility Parameters”,Solvent and Coatings Materials Research and Development Department,Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。
SP値9.0以上の非イオン性界面活性剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.1~5質量部であることが好ましく、0.5~3質量部であるとより好ましく、0.8~2質量部であるとさらに好ましい。
上記ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラックなどの補強性充填剤を含有していてもよい。これらの充填剤を含有させることにより、トレッドゴム組成物に適度の硬さが付与される。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、80m2/g以上であることが好ましく、110m2/g以上であるとより好ましく、150m2/g以上であるとさらに好ましい。そして、180m2/g以上、200m2/g以上、220m2/g以上となるに従って、さらに好ましくなり、230m2/g以上であると最も好ましい。一方、300m2/g以下であることが好ましく、280m2/g以下であるとより好ましく、250m2/g以下であるとさらに好ましい。なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じて、BET法で測定される値である。
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
220m2/g以上のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であるとより好ましく、15質量部以上であるとさらに好ましい。一方、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であるとより好ましく、30質量部以下であるとさらに好ましい。
シリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であるとより好ましく、60質量部以上であるとさらに好ましい。80質量部以上であると特に好ましい。一方、200質量部以下であることが好ましく、160質量部以下であるとより好ましく、150質量部以下であるとさらに好ましい。130質量部以下であると特に好ましい。
本実施の形態のトレッドゴム組成物において、充填剤(補強性充填剤)100質量%中のシリカの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であるとより好ましく、80質量%以上であるとさらに好ましい。90質量%以上であると特に好ましい。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
本実施の形態のトレッドゴム組成物がシリカを含有する場合、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であるとより好ましい。一方、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であるとより好ましい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、80m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であるとより好ましい。一方、400m2/g以下であることが好ましく、300m2/g以下であるとより好ましく、150m2/g以下であるとさらに好ましい。130m2/g以下であると特に好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217-2:2001によって求められる値である。
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であるとより好ましい。一方、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であるとより好ましく、40質量部以下であるとさらに好ましい。20質量部以下であると特に好ましく、10質量部以下であると最も好ましい。
本実施の形態のトレッドゴム組成物は、補強性充填剤として水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、タルク、珪藻土を含有してもよい。
水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積(N2SA)は、3~60m2/gであることが好ましく、6~50m2/gであるとより好ましく、10~40m2/gであるとさらに好ましい。
水酸化アルミニウムは、難水溶性であり、ゴム組成物中での凝集性は小さく、通常、ゴム組成物中で単粒子として存在する。そのため、ゴムの補強性を損じることが少ない。なお、水酸化アルミニウムのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であるとより好ましい。一方、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であるとより好ましく、40質量部以下であるとさらに好ましい。20質量部以下であると特に好ましく、15質量部以下であると最も好ましい。
本実施の形態のトレッドゴム組成物は、脂肪酸、好ましくはステアリン酸を含有してもよい。ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
脂肪酸(好ましくはステアリン酸)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であるとより好ましい。一方、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であるとより好ましい。
本実施の形態のトレッドゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であるとより好ましい。一方、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であるとより好ましい。
本実施の形態のトレッドゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であるとより好ましい。一方、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であるとより好ましい。
本実施の形態のトレッドゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-べンゾチアリルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤を併用することが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)製等の製品を使用できる。
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であるとより好ましい。一方、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であるとより好ましい。
本実施の形態のトレッドゴム組成物は、前記した各材料の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、クレー、マイカなどの充填剤;等をさらに配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部以上であることが好ましい。
本実施の形態において、トレッドゴム組成物は、公知の方法を用いて、例えば、前記した各材料をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練することにより製造でき、その後、トレッドの形状に合わせて押出加工することにより、トレッドに成形される。
混練条件としては、加硫剤および加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは室温80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、乗用車用タイヤ(PCタイヤ)の場合、通常140~190℃であり、加硫時間は、通常5~15分である。
4.本実施の形態に係るタイヤの製造
次に、本実施の形態に係るタイヤの製造について説明する。
(1)生タイヤの成形工程
まず、上記トレッドゴム組成物から成形されたトレッドおよび、別途作製された他のタイヤ部材を用いて、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、生タイヤを成形する。
(2)水溶性フィラーの散布工程
次に、成形された生タイヤのトレッド表面に、予め、準備された水溶性フィラーの水溶液や有機溶媒分散液(以下、総称して「水溶性フィラー液」ともいう)を塗布する。このとき、乾燥後のトレッド表面における水溶性フィラーの散布量が0.005~0.04g/cm2となるように、塗布量を調整する。塗布された水溶性フィラー液が乾燥することにより、水溶性フィラーの粒子がトレッド表面に析出して、上記した量の水溶性フィラーがトレッド表面に散布された状態の生タイヤとすることができる。
このとき、水溶性フィラー液における水溶性フィラーの濃度は、トレッド表面への塗布の容易さを考慮して設定すればよいが、通常は、10~30質量%の濃度となるように調整することが好ましい。
なお、水溶性フィラー液を有機溶媒分散液として調製する場合、有機溶媒としては、炭化水素系有機溶剤、無水エタノール、ヘキサン等のいずれかを使用することが好ましく、これらを混合溶媒としてもよい。
また、前記したように、水溶性フィラーと併せて、非水溶性フィラーを、水溶性フィラーに対して、5~15質量%添加してもよい。
トレッド表面への塗布の具体的な手段としては、ハケ塗りやスプレー塗布など、公知の手段を採用することができる。
(3)加硫工程
次に、トレッド表面に水溶性フィラーが散布された生タイヤを、所定の加硫金型にセットし、加硫装置を用いて、加熱加圧する。
このとき、前記したように、トレッドの表面にはスキン層が形成されるが、本実施の形態においては、トレッド表面に水溶性フィラーが散布されているため、スキン層に水溶性フィラーが混入されて、一部の水溶性フィラーがトレッド表面に露出した状態のタイヤとなる。
そして、このようなタイヤは、トレッドが水に接触すると、露出している水溶性フィラーがスキン層から溶解して、トレッド表面に、平均径0.1~100μmの空隙を形成して微細な凹凸を形成するため、装着直後であっても、直ちに、十分な氷上グリップ性能を発揮させることができる。なお、空隙は、平均径が0.1~100μmであることが好ましいが、操縦安定性や氷上グリップ性能の観点から、1~80μmであることがより好ましく、10~70μmであるとさらに好ましい。
なお、空隙の平均径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察にて測定することができる。具体的には、走査型電子顕微鏡で写真撮影し、空隙の形状が球形の場合は球の直径、針状または棒状の場合は短径、不定形の場合は中心部からの平均径を径として、100個の空隙の径の平均値を平均径とすることにより求めることができる。
以上の各工程に基づいて、本実施の形態に係るタイヤを製造することにより、装着初期であっても、十分なグリップ性能(特に、氷上グリップ性能)が発揮されるタイヤを提供することができ、特に、乗用車用タイヤ(PCタイヤ)、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)として好適なタイヤを提供することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本実施例においては、同一配合のトレッドゴム組成物を用いて、生タイヤを成形し、トレッド表面への水溶性フィラーの散布の有無による氷上グリップ性能の相違について測定した。
1.評価用(実施例および比較例)のタイヤの作製
最初に、評価用(実施例および比較例)のタイヤを作製した。
以下に、実施例および比較例で用いた各種薬品について説明する。
<SBR1>:日本ゼオン(株)製のN9548(スチレン量:35質量%、ビニル含量:18質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
<SBR2>:日本ゼオン(株)製のNS612(スチレン量:15質量%、ビニル含量:30質量%)
<BR>:ランクセス(株)製のBUNA-CB25(Nd系触媒を用いて合成した希土類系BR、ビニル含量:0.7質量%、シス含量:97質量%、SP値:8.2)
<カーボンブラック>:キャポットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:114m2/g)
<シリカ1>:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
<シリカ2>:エボニックデグッサ社製のウルトラシルU9000Gr(N2SA:235m2/g)
<硫酸マグネシウム>:協和化学(株)製の試作品(無水硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径):7.3μm、見かけ比重:0.58g/ml、常温(20℃)の水への溶解度:255g/100g水、水分率:0.1質量%、N2SA:9.0m2/g、中央値粒度が100μm以下、見かけ比重が0.70g/ml以下の水溶性フィラーに相当)
<シランカップリング剤>:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3-トリエトキシシリルプロピルジスルフィド)
<αメチルスチレン樹脂>:Arizona chemical社製のSYLVARESSA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
<テルペン系樹脂>;ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点:125℃)
<アロマオイル>:出光興産(株)製のAH-24(アロマ系プロセスオイル)
<WB16>:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミド及び脂肪酸アミドエステルの混合物、灰分割合4.5%)
<ステアリン酸>:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
<老化防止剤1>:住友化学(株)製のアンチゲン6C(6PPD、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン
<老化防止剤2>:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(TMQ、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
<パラフィンワックス>:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
<酸化亜鉛>:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛2種
<硫黄>:細井化学工業(株)製のHK200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
<加硫促進剤1>:大内新興化学工業(株)製のノクセラー-NS(N-tert一ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<加硫促進剤2>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて、16本の生タイヤを作製した。
作製した生タイヤの半分を、そのまま、170℃の条件下で10分間プレス加硫して、比較例のタイヤ(サイズ:225/50R17)を得た。
残りの生タイヤについては、濃度20%の硫酸マグネシウム(上記と同じ硫酸マグネシウム)水溶液を用いて、乾燥後の硫酸マグネシウム散布量が0.01g/cm2となるように、トレッド表面に塗布する。そして、乾燥後は、比較例と同様に、170℃の条件下で10分間プレス加硫して、実施例のタイヤ(サイズ:225/50R17)を得た。
2.評価
得られた各タイヤを用いて、以下の項目について評価した。なお、評価は、タイヤを装着して走行を開始した直後と、100km走行後の2回行った。
(1)低温氷上グリップ性能
各タイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は-10~-6℃であった。各タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例のタイヤの100km走行後における測定値をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほど、低温氷上グリップ性能に優れることを示す。
(低温氷上グリップ性能)=(比較例のタイヤの100km走行後における制動停止距離)/(各タイヤにおける停止距離)×100
(2)高温氷上グリップ性能
各タイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は0~-5℃であった。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例のタイヤの100km走行後における測定値をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほど、高温氷上グリップ性能に優れることを示す。
(高温氷上グリップ性能)=(比較例のタイヤの100km走行後における制動停止距離)/(各タイヤにおける停止距離)×100
評価の結果を、表2に示す。また、走行直後におけるトレッドの最表面を、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製:VHX-6000)で観察した結果を示す光学顕微鏡写真を図1に示す(観察条件:リング照明、倍率500倍)。
表2に示すように、比較例のタイヤにおいては、低温氷上グリップ性能、高温氷上グリップ性能のいずれも、装着後間もない走行直後では、十分な性能が発揮できていないことが分かる。
このような結果となったのは、装着直後のタイヤには、トレッド表面に水溶性フィラーが殆ど含まれていないスキン層が形成されて、十分な氷上グリップ性能が発揮されなかったためである。
これに対して、実施例のタイヤにおいては、低温氷上グリップ性能、高温氷上グリップ性能のいずれも、装着直後から十分に性能が発揮されていることが分かる。
このような相違が出た理由としては、図1に示すように、装着直後の比較例のタイヤでは、トレッド表面に水溶性フィラーが殆ど含まれていないスキン層が形成されて、凹凸が殆どないため、十分な氷上グリップ性能が発揮されなかったのに対して、装着直後の実施例のタイヤでは、水溶性フィラーの溶解痕による空隙がトレッド表面に凹凸を形成させるため、十分な氷上グリップ性能が発揮されたためである。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。