JP7517151B2 - タイヤ及びタイヤのグリップ性能の評価方法 - Google Patents
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Description
本発明は、前記課題を解決し、慣らし走行前のグリップ性能、慣らし走行後のグリップ性能を両立したタイヤを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有するタイヤに関する。
(a)/(b)≧0.75 式(I)
微小硬度計又は薄膜硬度計を用いて、上記試験片調製工程により調製した試験片の測定面をタイヤ半径方向に沿ってマルテンス硬度を測定する測定工程と
を有するタイヤのグリップ性能の評価方法に関する。
第一の本発明のタイヤは、タイヤトレッド接地部において、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有する。これにより、慣らし走行前のグリップ性能、慣らし走行後のグリップ性能を両立できる。
(a)/(b)≧0.75 式(I)
なお、以下では、マルテンス硬度の最小値(a)を単にマルテンス硬度(a)とも記載し、マルテンス硬度の最大値(b)を単にマルテンス硬度(b)とも記載し、両者をまとめてマルテンス硬度(a)、(b)とも記載する。
本発明者らの検討の結果、良好なグリップ性能を得るためには、トレッドゴムにおいて、内剛外柔が理想であることが判明した。
すなわち、トレッド内部は、ゴムの倒れ込みを防ぎ、ゴムの路面に対する実接触面積を高く保つ観点から、また、操縦安定性でのコーナリングパワー確保の観点から、硬い方が良い。
一方、トレッド表層部は、路面の石骨材(8mmピッチ)のミクロな凹凸(80μm~0.1mm)にゴムがミクロ追従する観点から、柔らかい方が良い。追従させる方が、ゴムと路面の実接触面積を大きくでき、ヒステリシスロスを発生させやすく、グリップが良好である。
新品のタイヤにおいて、慣らし走行前のグリップ性能が不十分である場合がある原因について、上記考えに基づいて、検討した。
その結果、トレッドの表層0~100μm深さでは、ポリマーと可塑剤リッチ層が形成されて、加硫直後、すなわちタイヤ製造直後は柔らかい。しかし、タイヤを保管中に、酸素が浸透して、特に架橋密度が低い場合、特に老化防止剤が少ない場合、硬化し易いことが分かった。すなわち、タイヤを製造後、使用するまでの間にトレッドの表層において硬化が進行し、その結果、慣らし走行前のグリップ性能が低下することが判明した。
また、液状可塑剤、非イオン性界面活性剤自体にはグリップ性はないものの、ゴム中の樹脂の分散性を向上させたり、ブリードした樹脂又は被膜を可塑化したりする機能を有する。
10~200μmの間のいずれかの位置で、マルテンス硬度の最小値、最大値を生じるが、上記式(I)を満たすことは、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μm~200μmの範囲において、マルテンス硬度の最小値、最大値の差が小さいことを意味する。すなわち、上記式(I)を満たすことは、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μm~200μmの範囲において、局部的硬化が抑制されていることを意味する。よって、上記式(I)を満たすことにより、10μm~200μmの範囲において局部的硬化が抑制されており、路面のミクロな凹凸に追従し、実接触面積を大きくでき、慣らし走行前のグリップ性能を慣らし走行後のグリップ性能に近づけることが可能となり、慣らし走行前のグリップ性能、慣らし走行後のグリップ性能を両立できることが分かった。
これは、上記式(I)を満たすことにより、路面のミクロな凹凸に追従し、実接触面積を大きくでき、慣らし走行前のグリップ性能を慣らし走行後のグリップ性能に近づけることが可能となるため、良好な慣らし走行前のグリップ性能が得られると共に、ゴムブロックの倒れ込みを小さくできることで、ブロックエッジの浮き上がりを小さくできるため、良好な慣らし走行後のグリップ性能も得られ、慣らし走行前のグリップ性能、慣らし走行後のグリップ性能を両立できるものと推測される。
従って、上記式(I)を満たすトレッドゴムを有するタイヤは、慣らし走行前のグリップ性能、慣らし走行後のグリップ性能を両立できる。このように、本発明は、上記式(I)のパラメーターを満たすトレッドゴムを有するタイヤの構成にすることにより、慣らし走行前のグリップ性能、慣らし走行後のグリップ性能の両立という課題(目的)を解決するものである。すなわち、当該パラメーターは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、慣らし走行前のグリップ性能、慣らし走行後のグリップ性能の両立であり、そのための解決手段として、トレッドゴムを上記式(I)のパラメーターを満たす構成にしたものである。つまり、上記式(I)のパラメーターを満たすことが必須の構成要件である。
タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有する。
(a)/(b)≧0.75 式(I)
ここで、本明細書において、タイヤトレッド接地部とは、トレッドのうち、路面と接する部分を意味する。図2のタイヤ2では、トレッド4のトレッド面20を意味し、溝22は路面と接しないため、タイヤトレッド接地部に該当しない。
上記式(I)の下限は、好ましくは0.75、より好ましくは0.76、更に好ましくは0.78、特に好ましくは0.79、最も好ましくは0.80、より好ましくは0.83、より好ましくは0.85、より好ましくは0.90、より好ましくは0.92、より好ましくは0.93、より好ましくは0.94である。上記式(I)の上限は特に限定されないが、好ましくは1.00である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
マルテンス硬度の最小値(a)は、下限は特に限定されないが、好ましくは0.05mgf/μm2以上、より好ましくは0.10mgf/μm2以上、更に好ましくは0.12mgf/μm2以上であり、好ましくは0.35mgf/μm2以下、より好ましくは0.30mgf/μm2以下、更に好ましくは0.25mgf/μm2以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
マルテンス硬度の最小値(a)、マルテンス硬度の最大値(b)は、押し込み深さが数mmのマクロな硬度である、タイヤの技術分野で用いられているShore(A)Hs(Shore(A)硬度)と大まかな相関があり、通常Hsが60~75であれば、マルテンス硬度の最大値(b)は0.10~0.30である。マルテンス硬度の最大値(b)は、好ましくは0.05mgf/μm2以上、より好ましくは0.10mgf/μm2以上、更に好ましくは0.13mgf/μm2以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは0.50mgf/μm2以下、より好ましくは0.45mgf/μm2以下、更に好ましくは0.40mgf/μm2以下、特に好ましくは0.35mgf/μm2以下、最も好ましくは0.30mgf/μm2以下、より最も好ましくは0.25mgf/μm2以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、マルテンス硬度(a)、(b)は、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値である。
なお、表中の↓は低下を、↑は増加を、→は影響なしを意味する。ここで、0.1以下の変動の場合も影響なしとした。
また、(1)と(2)の組み合わせ、(1)と(3)の組み合わせ、(1)と(2)と(3)の組み合わせも好適である。
より具体的には、上記手法に沿ってトレッド用ゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤを作製し、使用開始されるまで倉庫等でタイヤが保管されることにより、トレッドゴム内で配合剤の表層への移行、表層の硬化が進行し、前記(a)/(b)、前記マルテンス硬度(a)、前記マルテンス硬度(b)を満たすトレッドゴムを有するタイヤが得られる。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。好ましい態様は変性SBRの場合と同様である。
また、シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)、ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定でき、スチレン量は、1H-NMR測定によって測定できる。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスがより好ましい。また、マイクロクリスタリンワックス100質量%中の分岐アルカンの含有量が50質量%以上であることが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤(p-フェニレンジアミン系老化防止剤);2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミンがより好ましい。
なお、フェニレンジアミン系老化防止剤と共に、キノリン系老化防止剤を併用してもよいが、キノリン系老化防止剤はフェニレンジアミン系老化防止剤よりも移行速度が遅く、表層の軟化効果は低い傾向がある。
液状可塑剤としては、20℃で液体状態の可塑剤であれば特に限定されず、オイル、液状樹脂、液状ポリマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、オイル、液状樹脂が好ましい。
なお、レジンの軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
また、樹脂は、水添されていてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、テルペン系樹脂が好ましい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤が好ましい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤を併用することがより好ましい。
従来から、タイヤの技術分野で用いられているShore(A)Hs(Shore(A)硬度)は、押し込み針長さ2mm程度で、ゴムの試験、引張性能とも相関有り、タイヤの操縦性の指標として常用されている。しかし、グリップ性能(特に、初期グリップ性能)とHsは相関が無い場合があることが本発明者らの検討の結果明らかとなってきた。このように、従来は、グリップ性能(特に、初期グリップ性能)を評価する手法が存在しなかった。
第二の本発明は、このような課題を解決したものであって、上述の知見に基いて、タイヤのグリップ性能を評価する方法に関する発明である。
具体的には、第二の本発明のタイヤのグリップ性能の評価方法は、
タイヤのトレッドゴムから切り出した試験片であって、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面と、接地面と直交し、タイヤ半径方向に向かって延びる面である測定面とを有する試験片を調製する試験片調製工程と、
微小硬度計又は薄膜硬度計を用いて、前記試験片調製工程により調製した試験片の測定面をタイヤ半径方向に沿ってマルテンス硬度を測定する測定工程と
を有する。
試験片調製工程では、図4のように、タイヤのトレッドゴムから、ゴム片を切り出す。切り出す際に、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面(図4のトレッド面20)がゴム片に残るように切り出す。そして、切り出したゴム片から、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面(図4のトレッド面20)と、接地面と直交し、タイヤ半径方向に向かって延びる面である測定面とを有する形状の試験片を調製する(図4参照)。試験片の測定面としては、図4で図示される2面(図4の測定面30)と、裏側に隠れた図示されていない2面の合計4面が存在するがいずれの面を測定面として採用してもよい。
ここで、図4(a)~(c)に示す通り、トレッド面20を有するようにゴム片を切り出す限り、タイヤのどの位置からゴム片を切り出してもよく、タイヤ周方向に沿って切り出しても、タイヤ周方向と異なる角度で切り出してもよい。
なお、図4のように、ゴム片を切り出すことにより測定面を形成してもよく、切り出したゴム片を更に加工することにより測定面を形成してもよい。
測定工程では、微小硬度計又は薄膜硬度計を用いて、前記試験片調製工程により調製した試験片の測定面をタイヤ半径方向に沿ってマルテンス硬度を測定する。
ここで、マルテンス硬度を測定する間隔としては特に限定されないが、生産性と精度とを両立できるという理由から、20μm刻みで測定することが好ましい。
薄膜硬度計としては、特に限定されないが、マルテンス硬度計、エリオニクス社製のナノインデンター「ENT-2100」、日本電気社製の薄膜硬度計MHA-400等が挙げられる。なかでも、薄膜硬度計が好ましい。
なお、本明細書において、表面粗さは、JIS B0601-2001で規定される中心線表面粗さRaである。
また、測定面における空気による酸化の影響を低減するため、実際に測定に供する測定面を形成してからマルテンス硬度を測定するまでの時間は、好ましくは6時間以下である。
評価工程では、測定工程により得られたマルテンス硬度の分布に基いて、グリップ性能を評価する。具体的には、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、上記式(I)を満たすか否かにより、グリップ性能(特に、慣らし走行前のグリップ性能、慣らし走行後のグリップ性能の両立)を評価すればよい。
<SBR1>:日本ゼオン(株)製のN9548(スチレン量:35質量%、ビニル含量:18質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
<SBR2>:日本ゼオン(株)製のNS612(スチレン量:15質量%、ビニル含量:30質量%)
<BR>:ランクセス(株)製のBUNA-CB25(Nd系触媒を用いて合成した希土類系BR、ビニル含量:0.7質量%、シス含量:97質量%、SP値:8.2)
<カーボンブラック>:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:114m2/g)
<シリカ1>:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
<シリカ2>:ローディア社製のZ115Gr(N2SA:115m2/g)
<水酸化アルミニウム>:Nabaltec社製のApyral200(N2SA:15m2/g)
<シランカップリング剤>:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3-トリエトキシシリルプロピルジスルフィド))
<αメチルスチレン樹脂>:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
<テルペン系樹脂>:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点:125℃)
<アロマオイル>:出光興産(株)製のAH-24(アロマ系プロセスオイル)
<液状クマロンインデン樹脂>:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)
<界面活性剤>:三洋化成工業(株)製のニューポールPE-64(プルロニック型非イオン界面活性剤(PEG/PPG-25/30コポリマー)(上記式(I)のa+c:25、b:30、SP値:9.2)
<WB16>:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミド及び脂肪酸アミドエステルの混合物、灰分割合4.5%)
<ステアリン酸>:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
<老化防止剤1>:住友化学(株)製のアンチゲン6C(6PPD、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン)
<老化防止剤2>:LANXESS社製のVulkanox4030(77PD、N,N'-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン)
<老化防止剤3>:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(TMQ、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
<パラフィンワックス>:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
<マイクロクリスタリンワックス>:日本精蝋(株)製のHi-Mic1080(マイクロクリスタリンワックス100質量%中の分岐アルカンの含有量:50.6質量%)
<酸化亜鉛>:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛2種
<硫黄>:細井化学工業(株)製のHK200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
<加硫促進剤1>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<加硫促進剤2>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間プレス加硫してタイヤ(サイズ:225/50R17、トレッドゴムのタイヤ半径方向の厚み:9mm)を得た。
市場に流通する新品のタイヤを再現するために、得られたタイヤを3ヶ月間、気温20~40℃の倉庫に静置し、試験用タイヤとした。
得られた試験用タイヤのトレッドゴムから、ゴム片を切り出した。切り出す際に、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面がゴム片に残るように切り出した。そして、切り出したゴム片から、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面と、接地面と直交し、タイヤ半径方向に向かって延びる面である測定面とを有する形状の試験片を調製した(図4参照)。
更に、空気による酸化の影響を低減するため、測定の直前(1時間前)に、調製した試験片の測定面の表面を500μm除去して、新たな測定面を形成した。そして、形成された新たな測定面の、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲に相当する範囲のマルテンス硬度をタイヤ半径方向に沿って測定した。そして、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)を決定した。
マルテンス硬度の測定方法は、以下の通りである。
エリオニクス社製のナノインデンター「ENT-2100」(薄膜硬度計)を用いて測定した。
測定条件は、以下の通りである。
温度:23℃
試験片の厚み(バーコビッチ圧子を押し込む方向の厚み):2mm
測定面の表面粗さ:0.2
荷重F:50mgf
バーコビッチ圧子の角度α:65.03°
バーコビッチ圧子の材質:DLC(Diamond-Like Carbon)コーティングされた鉄
押し込み深さh:7μm
押し込み深さhと圧子の角度αとに基づいて、下記数式によって面積As(h)(深さhにおける圧子の表面積(圧子と試料間の接触投影面積))が算出される。
As(h)=3×31/2×tanα/cosα×h2
圧子に加えられた荷重(最大試験荷重)Fと面積As(h)に基づいて、下記数式によってマルテンス硬度が算出される。
マルテンス硬度=F/As(h)
得られた試験用タイヤを車両(国産4WD2500cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面を走行し、ドライバーがグリップ感、応答性、ブレーキ減速性、周回軌道トレース性を官能評価した。結果は、比較例1を100としたときの指数で表示した(慣らし走行前グリップ性能指数)。指数が大きいほど、慣らし走行前のグリップ性能(ウェットグリップ性能)に優れることを示す。
慣らし走行前のグリップ性能(ウェットグリップ性能)を評価した後、更に、周回路を約70km、0.5時間走行し、トレッド面を深さ約10μm摩耗させた後、慣らし走行前のグリップ性能(ウェットグリップ性能)と同様に官能評価した。
結果は、比較例1を100としたときの指数で表示した(慣らし走行後グリップ性能指数)。指数が大きいほど、慣らし走行後のグリップ性能(ウェットグリップ性能)に優れることを示す。
フェニレンジアミン系老化防止剤の配合量が多いほど、また、パラフィンワックスの配合量が少ないほど、マイクロクリスタリンワックスを配合すると、マルテンス硬度(a)を小さくできる傾向がある。
液状可塑剤の配合量が多く、界面活性剤の配合量が多いほど、表面のフェニレンジアミン系老化防止剤の分布が均一となり、更にマルテンス硬度(a)を小さくできる傾向がある。
液状可塑剤の配合量が少ないと、フェニレンジアミン系老化防止剤の配合効果が小さく、マルテンス硬度(a)が大きくなる傾向がある。
液状可塑剤の配合量が少なく、かつ、レジンの配合量が多い場合であっても、界面活性剤、マイクロクリスタリンワックス等の使用で、マルテンス硬度(a)は小さくできる傾向がある。
シリカ量の配合量が多いほど、液状可塑剤の配合量も多くなり、マルテンス硬度(a)は小さくなる傾向がある。
タイヤは、摩耗していくものの、実際の路面との接触は1/10000の面積で、走行温度60℃以上になると、表層は劣化、内部からブリード物が析出してきて、新品時と同じ現象が常に再現していると推測される。
4 トレッド
20 トレッド面
22 溝
30 測定面
a タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置
b タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ200μmの位置
Claims (12)
- タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有し、
前記トレッドゴムが、ゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が3.4質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対する液状可塑剤の含有量が20質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が30質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以上であるゴム組成物を用いて作製されたゴムであるタイヤ。
(a)/(b)≧0.75 式(I) - タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有し、
前記トレッドゴムが、ゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が3.4質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対する液状可塑剤の含有量が20質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以上20質量部以下であるゴム組成物を用いて作製されたゴムであるタイヤ。
(a)/(b)≧0.75 式(I) - タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有し、
前記トレッドゴムが、ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が40質量%以上であり、ゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が3.4質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対する液状可塑剤の含有量が20質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以上であるゴム組成物を用いて作製されたゴムであるタイヤ。
(a)/(b)≧0.75 式(I) - タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有し、
前記トレッドゴムが、ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量が30質量%以下であり、ゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が3.4質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対する液状可塑剤の含有量が20質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以上であるゴム組成物を用いて作製されたゴムであるタイヤ。
(a)/(b)≧0.75 式(I) - タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有し、
前記トレッドゴムが、ゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が3.4質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対する液状可塑剤の含有量が20質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以上であり、芳香族ビニル重合体を含むゴム組成物を用いて作製されたゴムであるタイヤ。
(a)/(b)≧0.75 式(I) - タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲におけるマルテンス硬度の最小値(a)、最大値(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有し、
前記トレッドゴムが、ゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が3.4質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対する液状可塑剤の含有量が20質量部以上であり、ゴム成分100質量部に対する硫黄の含有量が1.50質量部以下であり、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以上であるゴム組成物を用いて作製されたゴムであるタイヤ。
(a)/(b)≧0.75 式(I) - 前記マルテンス硬度の最小値(a)が0.35mgf/μm2以下である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記マルテンス硬度の最大値(b)が0.05mgf/μm2以上である請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記トレッドゴムが、ゴム成分100質量部に対する、アミド化合物又はSP値9.0以上の非イオン性界面活性剤の含有量が0.1質量部以上であるゴム組成物を用いて作製されたゴムである請求項1~8のいずれかに記載のタイヤ。
- タイヤのトレッドゴムから切り出した試験片であって、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面と、接地面と直交し、タイヤ半径方向に向かって延びる面である測定面とを有する試験片を調製する試験片調製工程と、
微小硬度計又は薄膜硬度計を用いて、前記試験片調製工程により調製した試験片の測定面をタイヤ半径方向に沿ってマルテンス硬度を測定する測定工程と
を有するタイヤのグリップ性能の評価方法。 - 前記測定工程において、前記測定面のうち、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μm~200μmに相当する範囲について、マルテンス硬度を測定する請求項10記載のタイヤのグリップ性能の評価方法。
- マルテンス硬度を測定する前に、前記試験片調製工程により調製した試験片の測定面の表面を20μm以上除去して、新たな測定面を形成し、形成された新たな測定面のマルテンス硬度を測定する請求項10又は11記載のタイヤのグリップ性能の評価方法。
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