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JP7635506B2 - 音響部材用樹脂組成物、音響部材用フィルム、積層体及び音響部材用振動板 - Google Patents
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JP7635506B2 - 音響部材用樹脂組成物、音響部材用フィルム、積層体及び音響部材用振動板 - Google Patents

音響部材用樹脂組成物、音響部材用フィルム、積層体及び音響部材用振動板 Download PDF

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Description

本発明は、音響部材用樹脂組成物、音響部材用フィルム、音響部材用フィルムを備える積層体、並びに音響部材用フィルム及び積層体より成形される音響部材用振動板に関し、中でも電気音響変換器用振動板、特にスピーカー振動板として好適に使用することができる音響部材用樹脂組成物、音響部材用フィルム、積層体、及び音響部材用振動板に関する。
例えば、スマートフォン、PDA、ノートブックコンピューター、DVD、液晶テレビ、デジタルカメラ、携帯音楽機器等の小型電子機器の普及により、これら電子機器に使用される小型のスピーカー(通常、マイクロスピーカーと呼ばれる)や小型のレシーバ、さらにはマイクロホン、イヤホン等の小型の電気音響変換器の需要が高まっている。
一般に、電気音響変換器に用いられる振動板、特にスピーカー振動板には、音響輻射音圧レベルを維持するため密度が低いこと、歪を抑制して耐許容入力を大きく保持するため剛性が大きいことに加えて、再生周波数帯を広げるため弾性率が特定の範囲にあること、振動板の分割振動を抑え周波数特性を平坦にするため内部損失が大きいこと等が要求される。また、スピーカーの駆動源であるボイスコイル近傍や車載用スピーカー等に使用する場合には、振動板が高温に長時間曝されるため、このような使用条件下で十分に耐えうる耐熱性が必要となる。
このような電気音響変換器用振動板には、音響特性に優れる環状オレフィン系樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が過去から検討されてきた。例えば、特許文献1及び特許文献2には、環状オレフィン系樹脂を主成分とする振動板について開示されており、音響特性に優れる旨の記載がある。また、特許文献3には、振動板の音質の均一性を向上させることのできるポリエーテルエーテルケトン樹脂の振動板用フィルムの製造方法が開示されている。特許文献4には、優れた耐湿性、耐水性、耐熱性、軽量性、成形性、音質特性を得ることのできるポリアミド樹脂のスピーカー振動板用フィルムの製造方法が開示されている。
一方で、近年、小型電子機器の高機能化、高性能化に伴う電気音響変換器、特にスピーカーの小型化に伴い、より広い音域、特に低音での再生性の良い材料、すなわち弾性率が比較的低い材料が求められている。さらに、高出力化に伴い、使用環境温度が高温になるため、低温から高温まで音質の変化が少ない、すなわち低温から高温までの弾性率変化がより少ない材料も求められている。
特開平6-225383号公報 特開2011-176621号公報 特開2018-062153号公報 特開2016-167757号公報
しかしながら、特許文献1に記載の振動板は環状オレフィン系樹脂を単体又は4-メチルペンテン樹脂や各種フィラーを添加して使用しており、弾性率が高いことが懸念される。実際に、実施例に記載されている弾性率の値はいずれも2000MPaを超えており、音の再生性、特に低音での再生性に適さず、近年の振動板に求められる特性には合わない。
また、特許文献2に記載の振動板は、環状オレフィン系樹脂とオレフィン樹脂としてポリプロピレンをブレンドして使用しており、やはり弾性率が高いことが懸念される。さらに、環状オレフィン系樹脂とポリプロピレンの界面が弱いため、耐久性にも問題があることが、本発明者の検討で明らかとなった。
さらに、特許文献3、4に記載の振動板は、弾性率が高く音の再生性、特に低音での再生性に問題があり、加えて、吸水率が高いため、振動板使用時の環境湿度の変化や経時使用による吸水が、音質に影響を与えるといった問題があることも、本発明者の検討で明らかとなった。
本発明は、このような状況下でなされたものであり、弾性率が適切な範囲にあり、温度変化に伴う弾性率変化も小さく、さらに高い耐熱性を有する音響部材用樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得る樹脂組成物を見出すことに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]~[29]を提供する。
[1]20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が1100MPa以下であり、20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)との比(E100/E20)が0.5以上1.2以下である、音響部材用樹脂組成物。
[2]前記20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)の比(E100/E20)が0.5以上1以下である、上記[1]に記載の音響部材用樹脂組成物。
[3]20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が2000MPa以上である樹脂(a)と、20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が50MPa以下である樹脂(b)とを含む、上記[1]又は[2]に記載の音響部材用樹脂組成物。
[4]前記樹脂(b)の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)の比(E100/E20)が0.1以上1.1以下である、上記[3]に記載の音響部材用樹脂組成物。
[5]前記樹脂(a)の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)の比(E100/E20)が0.5以上1以下である、上記[3]又は[4]に記載の音響部材用樹脂組成物。
[6]前記樹脂(a)のガラス転移温度が140℃以上200℃以下である、上記[3]~[5]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[7]前記樹脂(b)の質量平均分子量が50000以上300000以下である、上記[3]~[6]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[8]前記樹脂(a)が環状オレフィン系樹脂(A)である、上記[3]~[7]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[9]前記樹脂(b)がスチレン系共重合体(B)である、上記[3]~[8]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[10]環状オレフィン系樹脂(A)及びスチレン系共重合体(B)を含む音響部材用樹脂組成物。
[11]20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が1MPa以上1100MPa以下である、上記[10]に記載の音響部材用樹脂組成物。
[12]100℃における引張貯蔵弾性率(E100)が1MPa以上1100MPa以下である、上記[10]又は[11]に記載の音響部材用樹脂組成物。
[13]20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)との比(E100/E20)が0.5以上1.2以下である、上記[10]~[12]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[14]前記環状オレフィン系樹脂(A)のガラス転移温度が140℃以上200℃以下である、上記[10]~[13]のいずれかに音響部材用樹脂組成物。
[15]前記スチレン系共重合体(B)の質量平均分子量が50000以上300000以下である、上記[10]~[14]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[16]前記環状オレフィン系樹脂(A)が、少なくとも多環式オレフィンを重合成分とするものである、上記[8]~[15]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[17]前記スチレン系共重合体(B)が、ブタジエン、イソプレン、エチレン、ブチレン、プロピレン、及びイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントとスチレンとの共重合体である、上記[9]~[16]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[18]前記スチレン系共重合体(B)に含まれるスチレン成分の割合が1質量%以上30質量%以下である、上記[9]~[17]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[19]前記スチレン系共重合体(B)が、スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体又はスチレン-イソブチレンジブロック共重合体である、上記[9]~[18]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[20]23℃、24時間浸漬時の吸水率が0.1%以下である、上記[1]~[19]のいずれかに記載の音響部材用樹脂組成物。
[21]上記[1]~[20]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる音響部材用フィルム。
[22]少なくとも一部がドーム形状及びコーン形状の少なくともいずれかに加工されてなるものである、上記[21]に記載の音響部材用フィルム。
[23]表面にタンジェンシャルエッジが付与されてなるものである上記[21]又は[22]のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
[24]電気音響変換器用振動板に用いる、上記[21]~[23]のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
[25]上記[21]~[24]のいずれかに記載の音響部材用フィルムと、前記音響部材用フィルムの少なくとも一方の面に設けられる粘着層とを有する、積層体。
[26]上記[21]~[24]のいずれかに記載の音響部材用フィルム、又は上記[25]に記載の積層体を成形してなる音響部材用振動板。
[27]スピーカー振動板である、上記[26]に記載の音響部材用振動板。
[28]上記[21]~[24]のいずれかに記載の音響部材用フィルム、又は上記[25]に記載の積層体を音響部材として用いる方法。
[29]上記[21]~[24]のいずれかに記載の音響部材用フィルム、又は上記[25]に記載の積層体の音響部材としての使用。
本発明によれば、弾性率が適切な範囲にあり、温度変化に伴う弾性率変化も小さく、さらに、優れた耐熱性を有する音響部材用樹脂組成物を提供することが可能となる。また、本発明の樹脂組成物からなる音響部材用フィルムを用いたスピーカー振動板等の電気音響変換器用振動板は、低温域から高温域までの音の再生性に優れ、高温等の使用環境が音質に影響を与えるといった問題も発生しにくいことが期待できる。
本発明の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板1の構造を示す断面図である。 本発明の他の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板11の構造を示す断面図である。 本発明の他の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板21の構造を示す平面図である。
[音響部材用樹脂組成物]
<第1の態様>
まず、本発明の第1の態様に係る音響部材用樹脂組成物(以下、音響部材用樹脂組成物を略して「樹脂組成物」と称することがある。)について詳細に説明する。第1の態様に係る樹脂組成物は、20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が1100MPa以下であり、20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)との比(E100/E20)が0.5以上1.2以下である。
本発明では、以上の構成により、弾性率が適切な範囲となり、かつ温度変化に伴う弾性率変化も小さいため、耐熱性に優れる。また、温度変化に伴う弾性率変化が小さいため、低温域から高温域までの音質変化が小さく音の再生性に優れ、かつ高温環境下における音質の低下などが発生しにくくなることが期待できる。
本発明の第1の態様に係る樹脂組成物は、上記のとおり、20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が1100MPa以下である。20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が1100MPaより大きくなると、音響部材、特に近年小型化する電気音響変換器用振動板に使用すると音の再生性、特に低音での再生性に問題が生じるおそれがある。
20℃における引張貯蔵弾性率(E20)は、1MPa以上、1100MPa以下であることが好ましく、10MPa以上、1050MPa以下であることがより好ましく、100MPa以上、1000MPa以下であることが更に好ましく、200MPa以上、900MPa以下であることがとりわけ好ましく、300MPa以上、800MPa以下であることが特に好ましい。20℃における引張貯蔵弾性率を上記範囲内とすると、成形時のハンドリング性を維持しつつ、音響部材、特に小型化する電気音響変換器用振動板に使用した場合にも優れた音響特性が得られやすくなる。
引張貯蔵弾性率は、JIS K7244-4:1999に準拠した動的弾性率測定から得られる値をいい、詳しくは実施例に記載のとおりである。以下で述べる引張貯蔵弾性率も同様である。なお、引張貯蔵弾性率を得るための試験片は、樹脂組成物又は樹脂単体から、例えばプレス成形、押出成形などによりフィルムを作製し、そのフィルムを試験片とするとよい。押出成形などの場合には、延伸しないように作製するとよいが、方向性があるので、MD(押出方向)及びTD(フィルム面内でMDに直交する方向)について測定して平均値を求めるとよい。プレス成形などのように方向性がない場合には、一方向のみ測定して、その測定値を引張貯蔵弾性率とする。
また、本発明の第1の態様に係る樹脂組成物は、100℃における引張貯蔵弾性率(E100)が、1MPa以上、1100MPa以下であることが好ましく、10MPa以上、1050MPa以下であることがより好ましく、100MPa以上、1000MPa以下であることが更に好ましく、150MPa以上、900MPa以下であることがとりわけ好ましく、200MPa以上、800MPa以下であることが特に好ましい。樹脂組成物の100℃における引張貯蔵弾性率がかかる範囲にあれば、成形時のハンドリング性を維持しつつ、耐熱性に優れやすい。また、高温域での弾性率変化が小さいため、高温環境下でも、優れた音響特性が得られることが期待される。
本発明の第1の態様に係る樹脂組成物は、20℃における引張貯蔵弾性率E20と100℃における引張貯蔵弾性率E100の比E100/E20が0.5以上1.2以下である。比E100/E20が0.5より小さくなったり、1.2より大きくなったりすると、温度変化に伴う弾性率変化が大きくなり、耐熱性が低下する。また、高温域での弾性率変化が大きいため、高温環境下における音質が低下しやすくなり、低温域から高温域まで音の再生性を優れたものにすることが難しくなる。
本発明の第1の態様に係る音響部材用樹脂組成物の比E100/E20は、0.55以上、1.1以下であることが好ましく、0.6以上、1以下であることが好ましく、0.65以上、0.97以下であることが更に好ましく、0.7以上、0.95以下であることが特に好ましい。E100/E20がかかる範囲であれば、成形性を維持しつつ、弾性率変化が小さいため耐熱性に優れる。そのため、高温環境下における音質の低下などを防止して、低温域から高温域まで音の再生性を優れたものにしやすくなる。
第1の態様に係る樹脂組成物の23℃、24時間浸漬時の吸水率は0.1%以下であることが好ましい。かかる範囲であれば、吸水による音質への影響を小さくすることができる。また、第1の態様に係る上記吸水率は、0.07%以下がより好ましく、0.05%以下が更に好ましく、0.03%以下が特に好ましい。なお、吸水率は、実施例で示すとおりに樹脂組成物からフィルムを作成し、そのフィルムを試験片として例えばJIS K7209:2000に準拠して測定することができる。
[樹脂(a)、(b)]
第1の態様に係る樹脂組成物は、20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が2000MPa以上である樹脂(a)と、20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が50MPa以下である樹脂(b)とを含むことが好ましい。このように引張貯蔵弾性率の異なる樹脂(a)、(b)を使用することで、樹脂組成物全体の弾性率を上記範囲内に維持しつつ、樹脂組成物からなるフィルム等の成形品の耐折強度などを高くして耐衝撃性を向上させやすくなり、音響部材として使用した際に亀裂や破損等が生じにくくなる。
樹脂(a)の引張貯蔵弾性率(E20)は、上記観点から、より好ましくは2150MPa以上、さらに好ましくは2300MPa以上であり、また、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは4000MPa以下、さらに好ましくは3000MPa以下である。
また、樹脂(b)の引張貯蔵弾性率(E20)は、上記観点から、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは15MPa以下、とりわけ好ましくは10MPa以下であり、特に好ましくは5MPa以下である。また、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1MPa以上である。
樹脂(a)の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)の比(E100/E20)は0.5以上、1以下であることが好ましく、0.6以上、0.95以下であることがより好ましく、0.7以上、0.9以下であることが更に好ましい。樹脂(a)のE100/E20がかかる範囲であれば、実用的に使用できる樹脂により、樹脂組成物の温度変化に伴う弾性率変化を小さくしやすくなる。
また、樹脂(b)の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)の比(E100/E20)は例えば0.1以上、1.1以下であるが、0.15以上、1以下であることが好ましく、0.2以上、0.95以下であることがより好ましく、0.3以上、0.9以下であることが更に好ましい。樹脂(b)のE100/E20がかかる範囲であれば、実用的に使用できる樹脂により、樹脂組成物の温度変化に伴う弾性率変化を小さくしやすくなる。
樹脂(a)のガラス転移温度は140℃以上、200℃以下であることが好ましく、145℃以上、195℃以下であることがより好ましく、150℃以上、190℃以下であることが更に好ましく、155℃以上、185℃以下であることがとりわけ好ましく、160℃以上、180℃以下であることが特に好ましい。樹脂(a)のガラス転移温度がかかる範囲であれば、溶融成形性と耐熱性のバランスに優れやすくなる。なお、ガラス転移温度は、例えばJIS K7244-4:1999に準拠して、動的弾性率測定の引張損失係数(tanδ)のピークトップ温度として測定することができる。動的弾性率測定は、上記した引張貯蔵弾性率の測定と同様に行うとよい。
樹脂(b)の質量平均分子量は、例えば50000以上、300000以下であるが、700000以上、260000以下であることが好ましい。質量平均分子量を50000以上とすると、高温の弾性率を高い値に維持できるため、低温から高温の弾性率変化が小さくなり、樹脂(b)、さらには樹脂組成物の弾性率比(E100/E20)を大きい値に維持しやすくなる。また、300000以下とすることで、溶融粘度が高すぎず、溶融成形性に優れる傾向となる。これら観点から、樹脂(b)の質量平均分子量は、100000以上、200000以下がより好ましく、110000以上、180000以下が更に好ましく、120000以上、150000以下が特に好ましい。
なお、質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法の標準ポリスチレン分子量換算による質量平均分子量である。
樹脂(a)としては、弾性率が適切な範囲にあり、かつ、低温から高温までの弾性率変化が小さい樹脂であることが好ましく、例えば、具体的には、環状オレフィン系樹脂、非晶性ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルイミドスルホン、ポリアリレート、ポリメチルメタクリルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンなどが使用できる。これらの中では、耐熱性や溶融成形性に優れ、使用時の環境温度が変化した場合でも弾性率の変化が少なく、音質に与える影響がより少なくなり、また、極性が低く樹脂(b)の分散性に優れる観点から、環状オレフィン系樹脂が好ましい。また、樹脂(a)として環状オレフィン系樹脂を使用することで、樹脂組成物に耐吸水性を付与しやすくなり、経時の吸水が音質に与える影響を少なくできる。
なお、環状オレフィン系樹脂の具体的な説明は、後述する第2の態様で述べる環状オレフィン系樹脂(A)と同様であるので、その説明は省略する。
また、樹脂(b)としては、弾性率が適切な範囲にあり、かつ、低温から高温までの弾性率変化が小さい樹脂であることが好ましく、例えば、具体的には、スチレン系重合体、オレフィン系重合体、アミド系重合体、エステル系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ素系重合体、アクリル系重合体などが使用できる。これらの中では、弾性率を適切な範囲に調整しやすく、振動板と使用した場合に幅広い音域に対応することが可能になる観点から、共重合体のものが好ましく、スチレン系共重合体がより好ましい。また、樹脂(b)としてスチレン系重合体、特にスチレン系共重合体を使用することで、樹脂組成物に耐吸水性を付与しやすくなり、経時の吸水が音質に与える影響を少なくできる。
なお、スチレン系共重合体の具体的な説明は、後述する第2の態様で述べるスチレン系共重合体(B)と同様であるので、その説明は省略する。
樹脂組成物における樹脂(a)及び樹脂(b)の含有割合は、質量基準で、(a):(b)=99:1~1:99の範囲であることが好ましく、90:10~10:90の範囲であることがより好ましく、80:20~20:80の範囲であることが更に好ましく、70:30~30:70の範囲であることがとりわけ好ましく、60:40~40:60の範囲であることが特に好ましい。樹脂(a)と樹脂(b)の含有割合がかかる範囲であれば、樹脂組成物は弾性率が適切な範囲になりやすい。また、耐熱性も優れたものとなりやすい。
樹脂組成物は、樹脂(a)、樹脂(b)以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂成分(c)を含んでもよい。他の樹脂成分(c)は、20℃における引張貯蔵弾性率が、上記樹脂(a)、(b)で示した引張貯蔵弾性率(E20)の範囲外の樹脂であるとよく、例えば、後述する第2の態様で述べる他の樹脂成分(C)として列挙された各樹脂を使用できる。また、上記樹脂(a)、(b)で示した引張貯蔵弾性率(E20)の範囲外の樹脂であれば、スチレン系共重合体や環状オレフィン系樹脂であってもよい。
他の樹脂成分(c)を更に含む場合、他の樹脂成分(c)の含有量は、樹脂組成物において、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、3質量%以上であることがとりわけ好ましい。また、10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることがとりわけ好ましい。他の樹脂成分(c)を更に含む場合、その含有割合がかかる範囲であれば、本発明の効果を維持したまま適宜必要な効果を付与することができる。
第1の態様に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の各種添加剤を含んでいてもよい。
<第2の態様>
次に、本発明の第2の態様に係る音響部材用樹脂組成物について詳細に説明する。本発明の第2の態様に係る音響部材用樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(A)及びスチレン系共重合体(B)を含む樹脂組成物である。
環状オレフィン系樹脂(A)はガラス転移温度が高く、耐熱性に優れる。さらに、使用時の環境温度が変化した場合でも弾性率の変化が少なく、音質に与える影響が少ない。ここにスチレン系共重合体(B)を含むことで、弾性率を適切な範囲に調整することが可能となり、振動板と使用した場合に幅広い音域に対応することができる。さらに、環状オレフィン系樹脂(A)、スチレン系共重合体(B)共に吸水性が低いため、経時の吸水が音質に与える影響も少ない。
また、環状オレフィン系樹脂(A)及びスチレン系共重合体(B)を使用することで、樹脂組成物からなるフィルムの耐折強度などが高くなりやく、耐衝撃性に優れ、音響部材として使用した際に亀裂や破損等が生じにくくなる。
第2の態様に係る樹脂組成物における環状オレフィン系樹脂(A)及びスチレン系共重合体(B)の含有割合は、質量基準で、(A):(B)=99:1~1:99の範囲であることが好ましく、90:10~10:90の範囲であることがより好ましく、80:20~20:80の範囲であることが更に好ましく、70:30~30:70の範囲であることがとりわけ好ましく、60:40~40:60の範囲であることが特に好ましい。環状オレフィン系樹脂(A)とスチレン系共重合体(B)の含有割合がかかる範囲であれば、樹脂組成物は弾性率が適切な範囲にあり、かつ耐熱性にも優れる傾向となる。
[環状オレフィン系樹脂(A)]
本発明で用いる環状オレフィン系樹脂(A)は、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンを少なくとも重合成分とし、環状オレフィン由来の環構造を有する樹脂を意味する。環状オレフィン系樹脂(A)は、重合成分を重合することで得られる樹脂である。環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。
代表的な環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン類、シクロペンタジエン類またはジシクロペンタジエン類、ノルボルネン類とシクロペンタジエンとの縮合により得られる1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン類、ヘキサシクロ[6.6.1.1.1.0.0]ヘプタデセン-4類、1-ブテンとシクロペンタジエンとから合成される6-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンなどの多環式オレフィンが例示できる。
また、環状オレフィンは、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばアルキル基(例えば、メチル基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-5アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基)、アルケニル基(例えば、プロペニル基などのC2-10アルケニル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5-10シクロアルケニル基など)、アルキリデン基(例えば、エチリデン基 などのC2-10アルキリデン基、好ましくはC2-5アルキリデン基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1-10アルコキシ基、好ましくはC1-6アルコキシ基);アシル基(例えば、アセチル基などのC2-5アシル基など);アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-10アルコキシ-カルボニル基);ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基(=O)、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基 など)などが挙げられる。環状オレフィンは、単独で又は2種以上組みあわせて置換基を有していてもよい。
具体的な環状オレフィンとしては、単環式オレフィン類、二環式オレフィン類、三環式オレフィン類、四環以上の多環式オレフィン類などの多環式オレフィン類などが挙げられる。
単環式オレフィン類としては、例えば、シクロアルケン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロC3-10アルケンなど)、シクロアルカジエン(例えば、シクロペンタジエンなどのシクロC3-10アルカジエン)などが挙げられる。
二環式オレフィン類としては、ビシクロアルケン、例えば、ノルボルネン類(例えば、2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5,5又は5,6-ジメチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-シアノ-2-ノルボルネン、5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン、5-フェニル-2-ノルボルネン、5-メチル-5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン、5,6-ジメトキシカルボニル-2-ノルボルネン、5,6-ジ(トリフルオロメチル)-2-ノルボルネン、7-オキソ-2-ノルボルネンなど)などのC4-20ビシクロアルケン;ビシクロアルカジエン、例えば、ノルボルナジエン類(例えば、2,5-ノルボルナジエン、5-メチル-2,5-ノルボルナジエン、5-シアノ-2,5-ノルボルナジエン、5-メトキシカルボニル-2,5-ノルボルナジエン、5-フェニル-2,5-ノルボルナジエン、5,6-ジメチル-2,5-ノルボルナジエン、5,6-ジ(トリフルオロメチル)-2,5-ノルボルナジエン、7-オキソ-2-ノルボルナジエンなど)などが挙げられる。
三環式オレフィン類としては、例えば、トリシクロアルケン、例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)などのC6-25トリシクロアルケンなど;トリシクロアルカジエン、例えば、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,7-ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,8-ジエンなどのC6-25トリシクロアルカジエンなどが挙げられる。
四環以上の多環式オレフィン類としては、例えば、テトラシクロアルケン(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8,9-ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンなどのC8-30テトラシクロアルケンなど)などの四環式オレフィン;例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC10-35ペンタシクロアルカジエン)などの五環式オレフィン;例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,1 4]-4-ヘプタデセンなどのC12-40ヘキサシクロアルケン)などの六環式オレフィンが挙げられる。
これらの環状オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、ノルボルネン類などの多環式オレフィンが好ましい。そして、環状オレフィン系樹脂が多環構造を有することがより好ましい。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンの単独又は共重合体(例えば、単環式オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体など)であってもよく、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体であってもよい。
共重合性単量体としては、共重合可能な限り特に限定されないが、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのC2-20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエンなどの非共役C5-20アルカジエン)などの鎖状オレフィンなどが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
共重合性単量体は、α-オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンなどのC2-10α-オレフィン類、特にC2-6α-オレフィン類)であってもよい。
さらに、本発明の目的を損なわない範囲内で、共重合性単量体として、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、共役ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど)などを用いてもよい。これらの共重合性単量体も単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体や、多環式オレフィン(例えば、二乃至六環式オレフィンなど)を重合成分とする樹脂、特に、多環式オレフィン(例えば、前記ノルボルネン類や前記ジシクロペンタジエン類などのノルボルネン骨格を有する単量体)とα-オレフィンとの共重合体であってもよい。特に、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体(例えば、エチレンとノルボルネン骨格を有する単量体との共重合体などのα-C2-4オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体など)は、オレフィン系重合体(エチレン系重合体など)と環状オレフィン重合体との性質を兼ね備え、かつ鎖状オレフィンの共重合比率を調整することにより、高分子量の重合体を得ることができる。
環状オレフィン系樹脂(A)が環状オレフィン(X)と鎖状オレフィン(Y)の共重合体である場合、その共重合比率(X:Y)はモル比で、99:1~1:99の範囲であることが好ましく、95:5:10~90であることがより好ましく、90:10~20:80であることが更に好ましく、85:15~30:70であることがとりわけ好ましく、80:20~40:60であることが特に好ましい。環状オレフィンと鎖状オレフィンの共重合比率がかかる範囲であれば、溶融成形性と耐熱性のバランスに優れる傾向となる。
環状オレフィン系樹脂は、付加重合により得られた樹脂であってもよく、開環メタセシス重合などの開環重合により得られた樹脂であってもよい。開環重合は、多環オレフィンを開環するとよく、例えばテトラシクロドデセンなどの三環以上のオレフィンを開環することが好ましい。また、環状オレフィン系樹脂(例えば、開環メタセシス重合により得られた樹脂など)は、水素添加された水添樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂は、結晶性又は非晶性樹脂であってもよく、通常、非晶性樹脂であってもよい。なお、環状オレフィン系樹脂は、慣用の重合方法により調製してもよい。重合方法としては、例えば、チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタロセン系触媒を用いた付加重合、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合などが挙げられる。
環状オレフィン系樹脂(A)のガラス転移温度は140℃以上、200℃以下であることが好ましく、145℃以上、195℃以下であることがより好ましく、150℃以上、190℃以下であることが更に好ましく、155℃以上、185℃以下であることがとりわけ好ましく、160℃以上、180℃以下であることが特に好ましい。環状オレフィン系樹脂(A)のガラス転移温度がかかる範囲であれば、溶融成形性と耐熱性のバランスに優れる傾向となる。
環状オレフィン系樹脂(A)の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)は、2000MPa以上であることが好ましい。環状オレフィン系樹脂(A)の弾性率(E20)を2000MPa以上とすると、樹脂組成物全体の弾性率を後述する所望の範囲内にしつつ、樹脂組成物からなるフィルムの耐折強度などを高くして耐衝撃性を向上させやすくなる。
環状オレフィン系樹脂(A)の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)は、より好ましくは2150MPa以上、さらに好ましくは2300MPa以上であり、また、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは4000MPa以下、さらに好ましくは3000MPa以下である。
環状オレフィン系樹脂(A)の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)の比(E100/E20)は0.5以上、1以下であることが好ましく、0.6以上、0.95以下であることがより好ましく、0.7以上、0.9以下であることが更に好ましい。環状オレフィン系樹脂(A)のE100/E20がかかる範囲であれば、実用的に使用できる樹脂により、樹脂組成物の温度変化に伴う弾性率変化を小さくしやすくなる。
環状オレフィン系樹脂(A)は上記方法で重合してもよく、市販のものを使用してもよい。市販のものとしては、日本ゼオン社製「ゼオノア」「ゼオネックス」、JSR社製「アートン」、三井化学社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「TOPAS」等が挙げられる。
[スチレン系共重合体(B)]
本発明で用いるスチレン系共重合体(B)は、スチレンと他成分との共重合体である。共重合する成分としては特に制限は無いが、自身がソフトセグメントとして機能し、スチレンをハードセグメントとするエラストマーを形成する成分であることが好ましい。具体的には、ブタジエン、イソプレン、エチレン、ブチレン、プロピレン、及びイソブチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のソフトセグメントであることが好ましい。
スチレン系共重合体(B)はブロック共重合体が好ましく、具体的には、スチレンより構成されるハードブロックと、上記ソフトセグメントを構成する共重合成分の1種又は2種以上より構成されるソフトブロックとを備えることが好ましい。
スチレン系共重合体(B)の具体例としては、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン共重合体(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-イソブチレン共重合体(SIB)、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)共重合体等が挙げられる。中でも、環状オレフィン系樹脂(A)への分散性や柔軟性、低温から高温にかけての弾性率変化が小さいという観点から、ソフトセグメントの共重合成分としてイソブチレンを含むことが好ましく、具体的にはイソブチレンとの共重合体であるSIBやSIBSが好ましく、SIBSがより好ましい。なお、上記具体例として記載した各共重合体は、ブロック共重合体であるとよく、例えばSIBはジブロック共重合体であり、SIBSはトリブロック共重合体であるとよい。
スチレン系共重合体(B)に含まれるスチレン成分の割合は1質量%以上、30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上、28質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上、25質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以上、23質量%以下であることがとりわけ好ましく、10質量%以上、20質量%以下であることが特に好ましい。スチレン成分の割合がかかる範囲であれば、常温でのハンドリング性を維持しつつ、スチレン由来のガラス転移温度付近で弾性率が低下しにくいため低温から高温の弾性率変化を小さくすることができ、樹脂組成物の弾性率比(E100/E20)を大きい値に維持しやすくなる。
スチレン系共重合体(B)の質量平均分子量は、例えば50000以上、300000以下であるが、70000以上、260000以下であることが好ましい。質量平均分子量を50000以上とすると、低温から高温の弾性率変化が小さくなり、樹脂組成物の弾性率比(E100/E20)を大きい値に維持しやすくなる。また、300000以下とすることで、溶融粘度が高すぎず、溶融成形性に優れる傾向となる。これら観点から、スチレン系共重合体(B)の質量平均分子量は、100000以上、200000以下がより好ましく、110000以上、180000以下がさらに好ましく、120000以上、150000以下が特に好ましい。
なお、質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法の標準ポリスチレン分子量換算による質量平均分子量であり、例えば、以下の条件で測定できる。
装置 :東ソー社製 HLC-8320GPC
カラム:4本連結
Shim-pack GPC-806C
Shim-pack GPC-804C
Shim-pack GPC-8025C
Shim-pack GPC-801C
長さ300mm、内径8.0mm
溶離液:クロロホルム
流速 :1ml/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
サンプル濃度:約0.3質量%(20mg/4ml)
注入量:20μl
スチレン系共重合体(B)の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)は、30MPa以下であることが好ましい。スチレン系共重合体(B)の引張貯蔵弾性率(E20)を30MPa以下とすることで、樹脂組成物全体の弾性率を上記範囲内に維持しつつ、樹脂組成物からなるフィルムの耐折強度などを高くして耐衝撃性を向上させやすくなる。これら観点から、スチレン系共重合体(B)の引張貯蔵弾性率(E20)は、より好ましくは20MPa以下、さらに好ましくは15MPa以下であり、とりわけ好ましくは10MPa以下であり、特に好ましくは5MPa以下である。また、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1MPa以上である。
また、スチレン系共重合体(B)の20℃における引張貯蔵弾性率E20と100℃における引張貯蔵弾性率E100の比E100/E20は、例えば0.1以上、1.1以下であるが、0.15以上、1以下であることが好ましく、0.2以上、0.95以下であることがより好ましく、0.3以上、0.9以下であることが更に好ましい。スチレン系共重合体(B)のE100/E20がかかる範囲であれば、実用的に使用できる樹脂により、樹脂組成物の温度変化に伴う弾性率変化も小さくしやすくなる。
樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(A)、スチレン系共重合体(B)以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂成分(C)を含んでもよい。他の樹脂成分(C)として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、脂肪族ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリフェニルサルホン、ポリエーテルイミドサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマー、またはこれらの共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。他の樹脂成分(C)を更に含む場合、他の樹脂成分(C)の含有量は、樹脂組成物において、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、3質量%以上であることがとりわけ好ましい。また、10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることがとりわけ好ましい。他の樹脂成分(C)を更に含む場合、その含有割合がかかる範囲であれば、本発明の効果を維持したまま適宜必要な効果を付与することができる。
第2の態様に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の各種添加剤を含んでいてもよい。
第2の態様に係る樹脂組成物の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)は1MPa以上、1100MPa以下であることが好ましく、10MPa以上、1050MPa以下であることがより好ましく、100MPa以上、1000MPa以下であることが更に好ましく、200MPa以上、900MPa以下であることがとりわけ好ましく、300MPa以上、800MPa以下であることが特に好ましい。20℃における引張貯蔵弾性率がかかる範囲にあれば、成形時のハンドリング性を維持しつつ、音響部材、特に近年小型化する電気音響変換器用振動板に使用した場合にも優れた音響特性が得られやすくなる。
第2の態様に係る樹脂組成物の100℃における引張貯蔵弾性率(E100)は1MPa以上、1100MPa以下であることが好ましく、10MPa以上、1050MPa以下であることがより好ましく、100MPa以上、1000MPa以下であることが更に好ましく、150MPa以上、900MPa以下であることがとりわけ好ましく、200MPa以上、800MPa以下であることが特に好ましい。樹脂組成物の100℃における引張貯蔵弾性率がかかる範囲にあれば、成形時のハンドリング性を維持しつつ、耐熱性に優れやすい。
第2の態様に係る樹脂組成物の20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)の比(E100/E20)は0.5以上、1.2以下であることが好ましく、0.55以上、1.1以下であることがより好ましく、0.6以上、1以下であることが更に好ましく、0.65以上、0.97以下であることがとりわけ好ましく、0.7以上、0.95以下であることが特に好ましい。E100/E20がかかる範囲であれば、成形性を維持しつつ、弾性率変化が小さいため耐熱性に優れる。そのため、高温環境下における音質の低下などを防止して、低温域から高温域まで音の再生成を優れたものにしやすくなる。
第2の態様に係る樹脂組成物の23℃、24時間浸漬時の吸水率は0.1%以下であることが好ましい。かかる範囲であれば、吸水による音質への影響を小さくすることができる。また、第2の態様に係る上記吸水率は、0.07%以下がより好ましく、0.05%以下が更に好ましく、0.03%以下が特に好ましい。
(樹脂組成物の製造方法)
各態様における音響部材用樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、音響部材用樹脂組成物を構成する材料を溶融混練することで得ることができる。溶融混練をする混練機としては、単軸又は二軸押出機などの押出機、プラストミル等の公知の混練機を用いることができる。特に、2以上の樹脂を混合して用いる場合は、混練機の種類や混練条件の選択によって樹脂成分の分散状態を適宜調整することができ、これにより、所望の引張貯蔵弾性率を有する樹脂組成物を得ることが容易となる。
溶融温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、生産性等の観点から、230℃以上であることが好ましく、240℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることが更に好ましい。溶融温度は、300℃以下であることが好ましく、290℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。溶融温度がかかる範囲であれば、樹脂の分解や架橋を抑制しつつ、十分に流動させることが容易となる。
混練機としては、スクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが好ましくは15以上、より好ましくは20以上、好ましくは50以下、より好ましくは40以下である押出機が好ましい。かかる比を15以上とすることにより、樹脂成分の分散性を向上させ所望の引張貯蔵弾性率の樹脂組成物を得ることが容易となり、かかる比を50以下とすることにより、樹脂滞留時間が長くなったり樹脂温度が高くなりすぎたりすることによって、熱劣化に伴う変色、アウトガス、ゲル状異物等の発生を抑制しやすい傾向となる。
押出機のスクリュー構成としては、ニーディングユニット、特にらせん状のニーディングユニットを有している構造が、混練性向上のため好ましい。ニーディングユニットとしては1か所又は2か所が好ましい。
溶融混練時の吐出量Q(kg/hr)とスクリュー回転数Ns(rpm)との比Q/Nsは好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。この値を上記範囲とすることより、樹脂温度が高くなりすぎたり、滞留時間が長くなりすぎたりすることによる樹脂組成物の変色や異物の発生を抑制しつつ、各樹脂成分の分散性を向上させ、所望の引張貯蔵弾性率を有する樹脂組成物を得ることが容易となる。
また、混練機としては、連続捏和機も好ましく用いられる。連続捏和機とは、押出機のシリンダー内に回転自在に取り付けられたスクリューに複数個の回転ブレードが設けられ、さらに、それら複数個の回転ブレードの間に挿入された状態で、固定ブレードがシリンダー内に設けられている混練機である。スクリューが回転するとスクリュー軸に沿って移動する原材料が、回転ブレードと固定ブレードとの間に形成された隙間を、中心側から外周側に、更に外周側から中心側に送り込まれるというようにジグザグに通過して捏和されるため、圧縮、剪断、置換の3つの作用を効率よく原材料に与えることができ、単軸や二軸押出機よりも効果的に各成分の分散性を向上させることができる。ブレードの形状は特に制限はないが、例えば、扇形、菊形及び臼目形等のブレードを使用することができる。このような連続捏和機としては、例えば、ケミカルエンヂニアリング社製の「NES・KOシリーズ」等が挙げられる。
[音響部材用フィルム]
本発明の音響部材用フィルム(以下、「該フィルム」と称することがある。)は、上記第1の形態に係る音響部材用樹脂組成物、又は第2の形態に係る音響部材用樹脂組成物からなるフィルムである。
該フィルムの厚みは、1μm以上、100μm以下であることが好ましく、2μm以上、50μm以下であることがより好ましく、3μm以上、35μm以下であることが更に好ましく、4μm以上、20μm以下であることが特に好ましい。厚みがかかる範囲であれば、ハンドリング性と音質のバランスに優れ、さらに振動板の小型化、省スペース化にも寄与しやすい傾向となる。
(フィルムの製造方法)
該フィルムは、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって製造することができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されないが、生産性や厚み制御の観点から、押出成形、特にTダイ法が好ましい。また、Tダイにより押出成形された樹脂組成物は、例えばキャストロールにより引き取るとよい。
本発明のフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、フィルムの構成材料(すなわち、樹脂組成物)を、無延伸又は延伸フィルムとして成形して得ることができ、二次加工性の観点から、無延伸フィルムとして得ることが好ましい。なお、無延伸フィルムとは、シートの配向を制御する目的で、積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法でキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムも含まれる。
例えば、各構成材料を溶融混練して樹脂組成物を得た後、樹脂組成物を押出成形し、冷却することにより製造することができる。溶融混練には、単軸又は二軸押出機、プラストミル等の公知の混練機を用いることができる。溶融混練の詳細は上記のとおりである。
成形は、例えば、Tダイ等の金型を用いた押出成形により行うことができ、キャストロールを用いて冷却することが好ましい。
キャストロールの温度は、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。キャストロール温度の下限がかかる範囲であれば、フィルムとの密着性に優れ、急冷によるシワが入りにくく、外観良好なフィルムが得られやすい。
一方、キャストロールの温度は、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることが更に好ましい。キャストロールの温度の上限がかかる範囲であれば、フィルムがロールに貼り付き、その後離れる際に生じる貼り付き跡も生じにくく、外観良好なフィルムが得られやすい。なお、キャストロールとフィルムとの密着性を向上させるために、タッチロールや電気密着装置を使用することも好ましい。
また、無延伸フィルムの場合、例えば、樹脂組成物を構成する各成分を、上記溶融温度で溶融混練して樹脂組成物を得て、樹脂組成物をプレス成形によりフィルムとしてもよい。
[用途・使用態様]
本発明の音響部材用フィルムは、耐熱性に優れ、弾性率が特定の範囲にあり、低温から高温の弾性率変化が小さいため、音響部材、中でも音響部材用振動板として好適に使用することができる。
本発明の音響部材用フィルムは、具体的には、スピーカー、レシーバ、マイクロホン、イヤホン等の各種の電気音響変換器に使用でき、これらの中では、スピーカー振動板であることがより好ましく、特に携帯電話等のマイクロスピーカー振動板として好適に使用できる。
音響部材用フィルムは、適宜二次加工して音響部材用振動板などの各種の音響部材に成形され、好ましくは電気音響変換器用振動板、特に好ましくはスピーカー振動板に成形される。
音響部材用フィルムは、例えば、該フィルムの少なくとも一部をドーム形状やコーン形状などに加工されるとよい。また、フィルムの表面にタンジェンシャルエッジが付与されたものでもよい。ドーム形状またはコーン形状に加工され、あるいは、タンジェンシャルエッジが付与される場合には、好ましくは音響部材用振動板、より好ましくはスピーカー振動板に使用される。
二次加工方法は特に限定されるものではないが、該フィルムのガラス転移温度や軟化温度を考慮して加熱し、プレス成形や真空成形等により成形するとよい。
(音響部材用振動板)
音響部材用振動板についてより詳細に説明すると、振動板の形状は特に制限されず、任意であり、円形状、楕円形状、オーバル形状等が選択できる。また、音響部材用振動板は、一般的に、電気信号などに応じて振動するボディと、ボディの周囲を囲むエッジを有する。振動板のボディは、通常、エッジにより支持される。振動板の形状は、上記のとおりドーム状、コーン状でもよいし、これらを組み合わせた形状でもよいし、振動板に使用されるその他の形状でもよい。
本発明の音響部材用フィルムは、音響部材用振動板の少なくとも一部を形成すればよく、例えば、振動板のボディ又はエッジが本発明の音響部材用フィルムにより形成され、振動板のエッジ又はボディが別の部材により形成してもよい。もちろん、ボディ及びエッジの両方が、本発明の音響部材用フィルムにより一体的に形成されてもよく、音響部材用振動板全体が、音響部材用フィルムにより形成されてもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係る振動板1の構造を示す図であり、平面視で円形の振動板1を、円の中心線を通る面で切断した断面図である。図1に示すように、振動板1は、ドーム部(ボディ)1aを中心に、ボイスコイル2に取り付ける凹嵌部1b、周縁部(エッジ)1c、および、その外周にフレーム等に貼り付ける外部貼付け部1dを有する。振動板1は、本発明の音響部材用フィルムにより成形される。
図2は、本発明の他の実施形態に振動板11の構造を示す図であり、平面視で円形の振動板11を、円の中心線を通る面で切断した断面図である。図2に示すように、マイクロスピーカー振動板11は、ドーム形状に加工されたドーム部(ボディ)11aを中心に、ボイスコイル2に取り付ける凹嵌部11b、コーン形状に加工されたコーン部11j、および、周縁部(エッジ)11cを有する。振動板11に例示するように、振動板は、一部がドーム形状に加工され、且つ、該一部を除く他の一部がコーン形状に加工されていてもよい。なお、マイクロスピーカー振動板11は、それぞれ周縁部11cを直接フレーム等に取り付けてもよく、他の部材を介してフレーム等に取り付けてもよい。
振動板の表面には、上記のとおり、タンジェンシャルエッジを付与してもよい。タンジェンシャルエッジは、例えば、横断面形状がV字状の溝などにより構成されるとよい。図3には、本発明の他の実施形態に係る振動板21の平面図を示す。振動板21は、円形のドーム部(ボディ)21aの外周縁部に、複数のタンジェンシャルエッジ21eが付与されたタンジェンシャルエッジ部21gと、タンジェンシャルエッジ部21gの外周に配置された複数のタンジェンシャルエッジ21fが付与されたタンジェンシャルエッジ部21hを有する。なお、図3では、径方向に沿って2つのタンジェンシャルエッジ部が設けられる例を示すが、タンジェンシャルエッジ部は径方向に沿って1つのみであってもよいし、3つ以上設けられてもよい。
なお、振動板は、上記の通りスピーカー振動板、中でもマイクロスピーカー振動板であることが好ましい。マイクロスピーカー振動板として好適に使用する観点から、振動板の大きさは、最大径が25mm以下、好ましくは20mm以下であり、また最大径が5mm以上のものが好適に用いられる。なお、最大径とは振動板の形状が円形状の場合には直径、楕円形状やオーバル形状の場合には長径を採用するものとする。
振動板は、本発明の音響部材用フィルム単体により成形されてもよいし、本発明の音響部材用フィルムと他の部材との複合材により成形されてもよい。例えば、上記の通り、エッジまたはボディのいずれかを他の部材により形成してもよい。また、音響部材用フィルムと、他の層との積層体により構成されてもよい。
積層体は、例えば、上記した音響部材用フィルムと、音響部材用フィルムの少なくとも一方の面に設けられる粘着層を有するとよい。積層体は、粘着層を有することで良好な減衰特性を備えやすくなる。
また、積層体は、上記した音響部材用フィルムを表裏層とし、粘着層を中間層とする積層体であることが好ましい。このような積層構造とすることにより、表裏層の音響部材用フィルムが有する耐熱性、耐衝撃性および成形性に加え、中間層が有する優れた減衰特性を積層体に付与することができる。このような積層体により構成される振動板を作製する方法は特に制限されない。例えば、一対の音響部材用フィルムを二次加工して表層および裏層を構成する成形体をそれぞれ作製し、これらを中間層に用いられる粘着剤を介して接着することにより作製する方法、または、一対の音響部材用フィルムを中間層に用いられる粘着剤を介して接着して積層フィルムを作製し、該積層フィルムを二次加工する方法等が挙げられる。
また、この場合、表層および裏層の厚みはそれぞれ1μm以上、30μm以下であることが好ましく、2μm以上、25μm以下であることがより好ましく、3μm以上、20μm以下であることが更に好ましい。一方、中間層厚みは3μm以上、50μm以下であることが好ましく、5μm以上、40μm以下であることがより好ましく、10μm以上、30μm以下であることが更に好ましい。中間層の材料種や各層の厚みがかかる構成であれば、各種機械特性や成形性を維持したまま減衰特性にも優れる振動板が得られやすい。
積層体は、上記した音響部材用フィルム及び粘着層に加えて、上記した音響部材用フィルム以外の樹脂フィルムを備えてもよい。樹脂フィルムに使用される樹脂成分としては、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビフェニルエーテルスルホン樹脂(PPSU)、結晶性ポリイミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂及びこれらの混合物などが挙げられる。
音響部材用フィルム以外の樹脂フィルムを備える場合、積層体としては、表裏層の一方を音響部材用フィルムとし、表裏層の他方を音響部材用フィルム以外の樹脂フィルムとし、粘着層を中間層とする積層体や、音響部材用フィルム/音響部材用フィルム以外の樹脂フィルム/粘着層の順に積層体された積層体、音響部材用フィルム/音響部材用フィルム以外の樹脂フィルム/粘着層/音響部材用フィルム以外の樹脂フィルム/音響部材用フィルムの順に積層された積層体等が挙げられる。
積層体に使用される粘着層は、粘着剤により形成されるとよい。粘着層に用いられる粘着剤の種類としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられるが、接着性の観点から、アクリル系またはシリコーン系粘着剤を用いることが好ましい。
さらに、振動板の二次加工適性や防塵性あるいは、音響特性の調整や意匠性向上等のために、本発明の音響部材用フィルムまたは成形した振動板の表面にさらに帯電防止剤や各種エラストマー(例えば、ウレタン系、シリコーン系、炭化水素系、フッ素系など)をコーティングや積層したり、金属を蒸着したり、スパッタリングあるいは、着色(黒色や白色など)したりするなどの処理を適宜行ってもよい。さらに、アルミニウムなどの金属や他のフィルムとの積層、あるいは、不織布との複合化などを適宜行ってもよい。
他のフィルムと積層する場合は、他のフィルムとしては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリビフェニルエーテルスルホン樹脂(PPSU)、結晶性ポリイミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂及びこれらの混合物等の樹脂からなるフィルムであることが引張貯蔵弾性率、耐熱性、二次加工性の点から好ましい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
1.樹脂組成物及びフィルムの製造
実施例及び比較例においては、以下の表1に示す原料を用い、表2に示す配合組成の樹脂組成物、及びフィルムを製造した。
(実施例1)
(A)-1:(B)-1=60:40(質量比)のドライブレンド物を原料として使用し、東洋精機製作所社製ラボプラストミルに投入して混練しながら溶融させた。この時、装置の温度は260℃、回転数は60rpm、混練時間は10分とした。このようにして作製した樹脂組成物を260℃で熱プレスし、厚み100μmの無延伸のフィルムを作製した。
(実施例2)
(A)-1:(B)-1=40:60(質量比)とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
(実施例3)
(A)-1:(B)-1=20:80(質量比)とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
(実施例4)
(A)-1に代えて(A)-2を使用し、(A)-2:(B)-1=60:40(質量比)とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
(実施例5)
(A)-1に代えて(A)-2を使用し、(B)-1に代えて(B)-2を使用し、(A)-2:(B)-2=60:40(質量比)とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
(実施例6)
(A)-2:(B)-1=40:60(質量比)のドライブレンド物をΦ25mmのスクリューを備えた二軸押出機(L/D=38)に投入して、温度250℃、回転数120rpmで混練しながら溶融させ、Tダイを用いて押出温度250℃で押し出した。押し出された樹脂組成物は、120℃のキャストロールに引き取り、厚み100μmの無延伸のフィルムを作製した。
(実施例7)
(A)-2に代えて(A)-3を使用し、(A)-3:(B)-1=60:40(質量比)とした以外は実施例6と同様にしてフィルムを作製した。
(実施例8)
(A)-2に代えて(A)-3を使用し、(A)-3:(B)-1=50:50(質量比)とした以外は実施例6と同様にしてフィルムを作製した。
(比較例1)
(A)-1を単独で使用した以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
(比較例2)
(A)-2を単独で使用した以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
(比較例3)
(A)-3を単独で使用した以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
(比較例4)
ポリエーテルイミド((C)-1)をφ40mmのスクリューを備えた単軸押出機に投入して、温度380℃、回転数30rpmで混練しながら溶融させ、Tダイを用いて押出温度380℃で押し出した。押し出された樹脂は、230℃のキャストロールに引き取り、厚み100μmの無延伸のフィルムを作製した。
(比較例5)
ポリエーテルエーテルケトン((C)-2)をφ40mmのスクリューを備えた単軸押出機に投入して、温度380℃、回転数30rpmで混練しながら溶融させ、Tダイを用いて押出温度380℃で押し出した。押し出された樹脂は、230℃のキャストロールに引き取り、厚み100μmの無延伸のフィルムを作製した。
(比較例6)
ポリアミド9T((C)-3)をφ40mmのスクリューを備えた単軸押出機に投入して、温度320℃で混練しながら溶融させ、Tダイを用いて押出温度320℃で押し出した。押し出された樹脂は、120℃のキャストロールに引き取り、厚み100μmの無延伸のフィルムを作製した。
2.評価及び測定方法
上記実施例及び比較例における樹脂組成物、及びフィルムは、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。
(1)引張貯蔵弾性率
各実施例、比較例で得られたフィルムから5mm×8cmの試験片(厚み100μm)を切り出し、測定試料として得た。その測定試料を用いて、JIS K7244-4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用い、周波数10Hz、歪み0.1%、温度範囲20~400℃、加熱速度3℃/minで昇温させ、20℃及び100℃における引張貯蔵弾性率(E20、E100)を測定した。
なお、実施例6~8、比較例5の押出フィルムは方向性があるため、フィルムの縦方向(Tダイから樹脂組成物が押し出されてくる方向(MD))及び横方向(TD)について測定し、その平均値を引張貯蔵弾性率とした。比較例4、6は、MDが未測定であるため、参考値としてTDの値を示す。
(2)20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)の比(E100/E20
(1)の測定によって得られたそれぞれの値からE100/E20を算出した。
(3)吸水率
各実施例、比較例で得られたフィルムから10cm×10cmの試験片(厚み100μm)を切り出し、測定試料として得た。
JIS K7029:2000に準拠して、得られた測定試料を23℃で24時間、水に浸漬保持し、浸漬前後の質量変化から吸水率を測定した。
下記表2に、実施例1~8及び比較例1~6における評価測定結果をまとめ示す。
実施例1~8で使用した樹脂組成物は、20℃における引張貯蔵弾性率が適切な範囲にあり、例えば振動板として使用した際に音質及び再生性に優れるものと推定される。また、100℃における引張貯蔵弾性率及び比(E100/E20)が適切な範囲にあり弾性率変化が小さくまた耐熱性も優れており、さらに吸水率も低く低吸水性にも優れており、温度や湿度が音質及び再生性に与える影響も小さいものと推定される。
一方、比較例1~6で使用した樹脂組成物は弾性率が高く、例えば振動板として使用した際に音質、特に低温での音質・再生性に劣るものと推定される。また、比較例4~6では極性の高いスーパーエンジニアリングプラスチックを使用しているため、吸水率が高く、湿度が音質・再生性に与える影響も大きいものと推定される。
また、本発明者のこれまでの検討から、実施例1~8の樹脂組成物は、耐折強度等の耐衝撃性にも優れることが推察される。

Claims (19)

  1. 環状オレフィン系樹脂(A)及びスチレン系共重合体(B)を含み、前記環状オレフィン系樹脂(A)のガラス転移温度が140℃以上200℃以下であり、
    前記スチレン系共重合体(B)が、スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体又はスチレン-イソブチレンジブロック共重合体である、音響部材用樹脂組成物。
  2. 20℃における引張貯蔵弾性率(E20)が1MPa以上1100MPa以下である、請求項1に記載の音響部材用樹脂組成物。
  3. 100℃における引張貯蔵弾性率(E100)が1MPa以上1100MPa以下である、請求項1又は2に記載の音響部材用樹脂組成物。
  4. 20℃における引張貯蔵弾性率(E20)と100℃における引張貯蔵弾性率(E100)との比(E100/E20)が0.5以上1.2以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の音響部材用樹脂組成物。
  5. 樹脂組成物における前記環状オレフィン系樹脂(A)及び前記スチレン系共重合体(B)の含有割合は、質量基準で、(A):(B)=99:1~1:99の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の音響部材用樹脂組成物。
  6. 前記スチレン系共重合体(B)の質量平均分子量が50000以上300000以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の音響部材用樹脂組成物。
  7. 前記環状オレフィン系樹脂(A)が、少なくとも多環式オレフィンを重合成分とするものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の音響部材用樹脂組成物。
  8. 前記スチレン系共重合体(B)が、ブタジエン、イソプレン、エチレン、ブチレン、プロピレン、及びイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントとスチレンとの共重合体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の音響部材用樹脂組成物。
  9. 前記スチレン系共重合体(B)に含まれるスチレン成分の割合が1質量%以上30質量%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の音響部材用樹脂組成物。
  10. 23℃、24時間浸漬時の吸水率が0.1%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の音響部材用樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる音響部材用フィルム。
  12. 少なくとも一部がドーム形状及びコーン形状の少なくともいずれかに加工されてなるものである、請求項11に記載の音響部材用フィルム。
  13. 表面にタンジェンシャルエッジが付与されてなるものである請求項11又は12に記載の音響部材用フィルム。
  14. 電気音響変換器用振動板に用いる、請求項11~13のいずれか1項に記載の音響部材用フィルム。
  15. 請求項11~14のいずれか1項に記載の音響部材用フィルムと、前記音響部材用フィルムの少なくとも一方の面に設けられる粘着層とを有する、積層体。
  16. 請求項11~14のいずれか1項に記載の音響部材用フィルム又は請求項15に記載の積層体を成形してなる音響部材用振動板。
  17. スピーカー振動板である、請求項16に記載の音響部材用振動板。
  18. 請求項11~14のいずれか1項に記載の音響部材用フィルム、又は請求項15に記載の積層体を音響部材として用いる方法。
  19. 請求項11~14のいずれか1項に記載の音響部材用フィルム、又は請求項15に記載の積層体の音響部材としての使用。
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